抄訳
抗体は研究・診断・治療に必須のタンパク質であり、大腸菌を用いた安価で簡便な生産方法が求められている。大腸菌で機能的抗体断片を発現させる場合、N端にペリプラズム移行シグナルペプチドを付加し、酸化的環境にあるペリプラズムに移行させ、S-S結合をもった正しい立体構造で発現させる必要がある。ペリプラズム画分はホスト由来のタンパク質が少なく、浸透圧ショックにより抽出できるため、目的抗体断片の精製に大変有利であるが、発現量が少ないという欠点がある。我々は、このペリプラズム移行シグナルペプチドに隣り合うアミノ酸配列、すなわち単鎖抗体のN端アミノ酸配列による大腸菌ペリプラズム内単鎖抗体発現の変化を調べた。この部分に3アミノ酸からなるランダム配列ライブラリーを挿入し、ダイレクトクローニング法 [1] を用いて、スクリーニングを行い、もっとも発現を高くする配列の同定を試みた。その結果、単鎖抗体のペリプラズム内発現を2倍以上に高めるN端ペプチド配列の同定に成功した。
[1] Hanyu Y, Kato M. Screening antibody libraries with colony assay using scFv-alkaline phosphatase fusion proteins. Molecules. 25(12) (2020).