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日本人論文紹介:一覧

2024/10/01

頸部腫瘤の甲状腺癌転移スクリーニングにおける穿刺針洗浄液中サイログロブリンのカットオフ値について

論文タイトル
Cutoff value of thyroglobulin in needle aspirates for screening neck masses of thyroid carcinoma
論文タイトル(訳)
頸部腫瘤の甲状腺癌転移スクリーニングにおける穿刺針洗浄液中サイログロブリンのカットオフ値について
DOI
10.1530/ERC-24-0067
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Accepted Manuscripts ERC-24-0067
著者名(敬称略)
坂本 耕二 他
所属
日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科学教室

抄訳

穿刺吸引細胞診で用いた針の洗浄液中サイログロブリン測定(FNA-Tg)は甲状腺癌リンパ節転移の診断に有用であるが、そのカットオフ値は特に頸部腫瘤のスクリーニング検査において定まっていない。そのため当院で術前FNAC、FNA-Tg施行後病理検査を行った甲状腺外の頸部腫瘤病変を対象に後方視的研究を行った。210病変中57病変が甲状腺由来で、甲状腺由来病変ではFNA-Tg値が有意に高く(p:0.001)、ROC曲線で特異度100%となる最小のFNA-Tg値をカットオフとすると32.2ng/mlであった。甲状腺乳頭癌症例では、FNACよりもFNA-Tgの感度が高かった。今回のFNA-Tgのカットオフ値は、リンパ節以外の病変や甲状腺以外の転移リンパ節が比較的高値だったため、過去の報告より高くなった。FNA-Tgを頸部腫瘤のスクリーニング検査として用いるのであれば、より高いカットオフ値を設定する必要がある。

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2024/09/12

間質流の再現による多層化した小腸組織モデルの開発

論文タイトル
Construction of multilayered small intestine-like tissue by reproducing interstitial flow
論文タイトル(訳)
間質流の再現による多層化した小腸組織モデルの開発
DOI
10.1016/j.stem.2024.06.012
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Volume 31, Issue 9
著者名(敬称略)
出口 清香、高山 和雄 他
所属
京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 高山研究室
著者からのひと言
本研究によって、間質流という力学刺激の臓器形成における重要性を見出すことができました。今後も、間質流のみならず、臓器構築に寄与する様々な力学刺激を探索したいと考えています。

抄訳

胎児期の小腸組織は、小腸の側底側に接続した血管から染み出す体液が形成する間質流に晒されている。そのため、発生を模倣しながらヒトES/iPS細胞から小腸組織を構築するためには、間質流を考慮した培養系が望ましい。本研究では、マイクロ流体デバイスを用いて間質流を再現した条件で、ヒトES/iPS細胞から小腸組織(マイクロ小腸システム)の構築を試みた。マイクロ小腸システムの小腸上皮細胞は、間質流に晒されることで発達した柔毛様構造を有する上皮層を構築し、その直下には間質層が整列していた。さらに、間質流を作用したマイクロ小腸システムは、小腸上皮細胞から分泌された粘液層を有していた。これらの結果から、マイクロ小腸システムは粘液層および上皮層、間質層から構成される、生体小腸に類似した多層構造を有することが分かった。また、マイクロ小腸システムは、薬物動態研究や腸管感染症研究に応用できることを確認した。今後、マイクロ小腸システムを普及させ、各種腸管疾患研究を加速したい。

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2024/09/12

転写因子Ikzf1はFoxp3と結合して制御性T細胞の遺伝子発現を抑制し、自己免疫応答および抗腫瘍免疫応答を制限する

論文タイトル
Transcription factor Ikzf1 associates with Foxp3 to repress gene expression in Treg cells and limit autoimmunity and anti-tumor immunity
論文タイトル(訳)
転写因子Ikzf1はFoxp3と結合して制御性T細胞の遺伝子発現を抑制し、自己免疫応答および抗腫瘍免疫応答を制限する
DOI
10.1016/j.immuni.2024.07.010
ジャーナル名
Immunity
巻号
Volume 57, Issue 9
著者名(敬称略)
市山 健司 他
所属
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター

抄訳

制御性T細胞(Treg)は免疫自己寛容の確立において中心的な役割を担う細胞である。Tregのマスター転写因子Foxp3は、他の転写因子や修飾酵素と相互作用することで複合体を形成し、特定の遺伝子発現を制御することが知られている。しかしながら、これら相互作用のTregにおける生理的意義はこれまで不明であった。今回我々は、転写因子Ikzf1が自身のexon 5領域(IkE5)を介してFoxp3と相互作用することを見出した。さらに、Treg特異的にIkE5を欠損させることでFoxp3とIkzf1の相互作用を阻害すると、TregはIFN-yの過剰産生を介した機能障害を示し、その結果として、致死性の自己免疫疾患の発症および強力な抗腫瘍免疫応答が引き起こされることが明らかとなった。以上の結果から、Ikzf1とFoxp3の相互作用はTregの機能維持に必須であり、今後、この相互作用を標的とした自己免疫疾患や癌に対する新たな治療法の開発に繋がることが期待される。

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2024/09/11

膵β細胞においてCREBはMafAプロモーターを近位のE-boxとCCAATモチーフを介して活性化する

論文タイトル
CREB activates the MafA promoter through proximal E-boxes and a CCAAT motif in pancreatic β-cells
論文タイトル(訳)
膵β細胞においてCREBはMafAプロモーターを近位のE-boxとCCAATモチーフを介して活性化する
DOI
10.1530/JME-24-0023
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JME-24-0023
著者名(敬称略)
會田 侑希 片岡 浩介
所属
横浜市立大学 生命医科学研究科 生体機能医科学研究室
著者からのひと言
本論文では、MafA遺伝子の転写制御を調べる中で、転写因子CREBが本来の結合配列CREに依存せずに転写を活性化することを見出し、報告しました。β細胞では、CREBはCREに加えてNF-Yにも依存するようで、そのような遺伝子としてIslet1やNkx6.1を見出しました。これらもβ細胞で重要な転写因子で、それらの発現がインクレチンによって制御される仕組みにアプローチできたと考えています。

抄訳

InsulinやGlut2遺伝子を標的とする転写因子MafAは、β細胞の機能に必須である。二型糖尿病に伴うβ細胞の機能不全は、MafAの発現低下によって起きると考えられている。一方、二型糖尿病の治療薬でもあるインクレチンは、転写因子CREBを活性化してMafAの発現上昇を促すが、その詳細は不明であった。ChIP-seqによるとCREBはMafA遺伝子の遠位β細胞エンハンサーとプロモーターの両方に結合していた。エンハンサーにはCREBの結合配列CREがあり、活性化に必須なことをレポーターアッセイで示した。一方でプロモーターにはCRE配列がなく、β細胞転写因子NeuroD1の結合配列E-boxとユビキタスな転写因子NF-Yの結合配列CCAATの両方が活性化に必要であった。ゲノム全体でもCREBはCCAAT配列の近傍に結合しており、NF-Yを介したDNAへのアクセスも重要なことが示唆された。

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2024/09/10

医療機関間での血清クレアチニン値乖離が単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の診断に至った一例

論文タイトル
Discrepant serum creatinine concentrations caused by paraprotein interference preceding diagnosis of monoclonal gammopathy of undetermined significance
論文タイトル(訳)
医療機関間での血清クレアチニン値乖離が単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の診断に至った一例
DOI
10.1136/bcr-2023-256242
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
Vol.17 Iss.4 (2024)
著者名(敬称略)
小原 幸、稲葉 亨、中田 徹男、的場 聖明
所属
京都薬科大学 病態薬科学系 - 臨床薬理学分野
著者からのひと言
クレアチニン値に乖離を認めたことより、精査の結果MGUSが診断された症例を経験しました。本ケースは自動検体測定装置からのアラート発出も無く、偽検査結果も極端な基準値からの逸脱でなかったことより、偽結果がそのまま患者本人に返却されました。臨床医は、血液検査結果に乖離を認めた際、本症例の様なパラプロテイン干渉による偽結果も念頭に置き、診療に携わる必要があると考えられました。

抄訳

かかりつけ医療機関と他医での健康診断の際の血清クレアチニン値に乖離が生じており、精査の結果パラプロテイン干渉による検査値異常が見いだされ、MGUSの診断に至った一例を経験した。 症例は70歳代男性。労作性狭心症等で内服薬による加療を受けていた。健康診断を別医療機関で受診し、クレアチニン高値 (1.75 mg/dL)により、腎機能障害を指摘された。かかりつけ医療機関でのクレアチニン値(0.87 mg/dL)と乖離が見られたため、臨床検査部、検査試薬企業検査部とともに精査をすすめた。患者同一検体を用いて、2医療機関で使用されたクレアチニン測定キットを含む複数のキットでの測定結果を、リファレンスとして測定した液体クロマトグラフィーによる結果と検証した。クレアチニン値の測定キットは全て酵素法であったが、検診時の採用キットのみ測定の第一過程で検査試薬添加時に検体の混濁が認められ、最終検査結果に影響を与えたと考えられた。パラプロテイン干渉が疑われ、Mタンパク血漿(monoclonal γgl 0.3 g/dL, IgG-λ)が認められ、MGUSと診断された。検査機関により、血液検査結果に乖離がある場合、パラプロテイン血症による偽結果も念頭におき診療する必要があると考えられる。

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2024/09/06

脳血管内治療における低線量モードButterfly CBCTの画質評価

論文タイトル
Image Quality Evaluation for Brain Soft Tissue in Neuro -endovascular Treatment by Dose-reduction Mode of Dual-axis “Butterfly” Scan
論文タイトル(訳)
脳血管内治療における低線量モードButterfly CBCTの画質評価
DOI
10.3174/ajnr.A8472
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Accepted Manuscripts
著者名(敬称略)
細尾 久幸 他
所属
筑波大学附属病院 脳卒中科/筑波大学 医学医療系 脳卒中予防治療学講座
著者からのひと言
同一平面上のみならず垂直方向の振り子状の動きも加わった撮像法Butterfly CBCTは、従来のCBCTと比較し画質が向上した。本撮像法は、若干高線量であったため、今回線量低減モードを用いた。結果、線量が減ってもアーティファクト軽減、後頭部を除くコントラスト改善がみられた。これら結果から、例えば早期脳虚血性変化検出には通常モード、出血性合併症検出には70%線量、複数回治療や小児では50%線量を選択するなど、目的に応じた使い分けを提案する。

抄訳

【背景】脳血管内治療において出血性合併症を検出のため、Flat panel CBCTによるCT like imageの撮像は必須である。従来のCBCTと比較し、1軸平面に加え、垂直方向の振り子様の動きも加わったButterfly CBCTでは、画質が向上したが若干高線量だった。本研究では、線量を低減したButterfly CBCTの画質を評価した。【方法】予定脳血管内治療症例で、70%線量と50%線量Butterfly CBCTに振り分け、従来のCBCTと画質を比較した。【結果】20例ずつ計40例。従来のCBCTと比較し70%線量Butterflyではアーティファクト軽減、コントラストおよび皮髄境界識別能改善がみられた。50%線量ではアーティファクト軽減、後頭部を除くコントラスト軽減は認めたが、皮髄境界識別能は改善なかった。【結論】線量を低減しても、Butterfly CBCTの軌道により、アーチファクト軽減、コントラスト向上、皮髄境界識別能の改善を認めた。しかし、特に骨の干渉のある後頭部においては、コントラストや皮髄境界識別能に、線量低減の影響がみられた。

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2024/08/20

加齢造血幹細胞はSDHAF1を介したミトコンドリアATP産生によって代謝可塑性を獲得する

論文タイトル
SDHAF1 confers metabolic resilience to aging hematopoietic stem cells by promoting mitochondrial ATP production
論文タイトル(訳)
加齢造血幹細胞はSDHAF1を介したミトコンドリアATP産生によって代謝可塑性を獲得する
DOI
10.1016/j.stem.2024.04.023
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Cell Stem Cell Volume 31 Issue 8
著者名(敬称略)
綿貫慎太郎、小林 央、田久保圭誉 他
所属
東北大学大学院医学系研究科、国立国際医療研究センター研究所
著者からのひと言
この論文の最初の着想は、加齢造血幹細胞が解糖系を欠失した状況でも生存可能という現象の発見でした。そこから足かけ6年以上かかりましたが、単一細胞ATP測定技術や少数細胞の同位体トレーサー解析など総力を結集して、当初のきっかけであった解糖系に留まらない加齢造血幹細胞の生存を優位にさせる代謝プログラムを明らかにし、幹細胞の老化の新たな一面を明らかにできたと考えています。

抄訳

幹細胞は加齢に伴って数と機能が低下すると一般に考えられていますが、血液を産生する造血幹細胞(HSC)は、加齢により数が増加するという一見矛盾する挙動を示します。本研究では、加齢マウスを用いた実験で、HSCが老化に伴い、通常であれば細胞死を招くような様々な代謝ストレスに対して耐性を持ち、生存優位性を獲得することを発見しました。さらに、加齢HSCでは、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体の活性を上昇させるSDHAF1が蓄積し、その結果、酸化的リン酸化によるATPの産生が増強され、代謝ストレスに対する耐性が向上することが判明しました。実際に、若齢HSCにSDHAF1を過剰発現させると、加齢HSCと同様の代謝特性や細胞死耐性が見られました。これらの研究結果から、加齢HSCは単なる機能低下した細胞ではなく、エネルギー代謝の観点から見ると“強い”HSCであることが明らかになりました。この知見に基づき、加齢に関連する血液異常を改善する新たな治療法の開発が期待されます。

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2024/08/16

細胞外の脂質代謝は線維芽細胞との相互作用を介してマスト細胞成熟とアナフィラキシー感受性を制御する

論文タイトル
Lipid-orchestrated paracrine circuit coordinates mast cell maturation and anaphylaxis through functional interaction with fibroblasts
論文タイトル(訳)
細胞外の脂質代謝は線維芽細胞との相互作用を介してマスト細胞成熟とアナフィラキシー感受性を制御する
DOI
10.1016/j.immuni.2024.06.012
ジャーナル名
Immunity
巻号
Volume 57 Issue 8
著者名(敬称略)
武富 芳隆, 村上 誠 他
所属
東京大学 大学院医学系研究科

抄訳

マスト細胞の成熟はアレルギー感受性と関連する。線維芽細胞のSCFとマスト細胞のSCF受容体(Kit)のシグナル伝達に加え、接着因子やIL-33などがマスト細胞成熟に関わることが示唆されてきたが、その分子機序は不明であった。脂質関連分子の欠損マウスの表現型スクリーニングを通じ、リン脂質分解酵素PLA2G3、PGD₂の合成酵素L-PGDSと受容体DP1、リゾリン脂質LPAの受容体LPA₁がマスト細胞成熟不全とアナフィラキシー低応答性を示すことを見出した。PLA2G3はマスト細胞から分泌され、細胞外小胞のリン脂質を分解し、線維芽細胞由来のLPA産生酵素ATXと協調してLPAを動員した。LPAは線維芽細胞のLPA₁受容体を活性化し、インテグリンによる細胞接着、IL-33シグナル、PGD₂-DP1受容体シグナル、ATX-LPA₁の発現を統括することにより、マスト細胞成熟を誘導した。このことから、本経路を標的とした創薬はマスト細胞が関連するアレルギー疾患の予防治療に有効であることが期待される。

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2024/08/13

放射光X線µCTを用いた非破壊・3次元可視化によるグラニュール汚泥の微生物・空隙分布の解明

論文タイトル
Nondestructive and three-dimensional visualization by identifying elements using synchrotron radiation microscale X-ray CT reveals microbial and cavity distributions in anaerobic granular sludge
論文タイトル(訳)
放射光X線µCTを用いた非破壊・3次元可視化によるグラニュール汚泥の微生物・空隙分布の解明
DOI
10.1128/aem.00563-24
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
浦崎 幹八郎 諸野 祐樹 久保田 健吾 他
所属
東北大学 大学院環境科学研究科
著者からのひと言
微生物は多様な環境に生息しています。その群集構造に影響を与える要因の一つが、周囲の物理的環境です。本研究では、従来のアプローチでは難しかったバイオフィルム中の微生物分布を、放射光X線μCTを用いて3次元的に非破壊検出することに成功しました。この技術では、約200nmのボクセルサイズにより個々の微生物細胞を識別可能で、微生物とその生息環境との関係解明に有用だと考えています。

抄訳

微生物とその周囲の生息環境の関係を理解するために、放射光X線µCTを利用した非破壊3次元微生物可視化法を開発した。全ての微生物細胞をオスミウム染色するためにオスミウム・チオカルボヒドラジド・オスミウム法を、特定の系統群の微生物を金標識するためにgold in situ hybridization法を、それぞれ採用した。染色したサンプルは、エポキシ樹脂に包埋しCT撮影を行った。L3吸収端前後の撮影画像を用いた減算法により、オスミウムと金のシグナルをそれぞれ可視化した。Escherichia coliとComamonas testosteroniの混合物を用いてプロトコルを最適化したところ、オスミウム染色した細胞は検出できたが、金標識した細胞は検出できなかった。次に、嫌気性グラニュール汚泥にも本技術を適用し、微生物細胞と細胞外高分子物質の分布を可視化した。その結果を基に汚泥中の空隙分布を可視化したところ、大きさの異なる多数の独立した空隙が確認された。開発した方法は、他の様々な環境サンプルにも適用可能である。

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2024/08/01

単純ヘルペスウイルス1型のICP22とFACTの相互作用がウイルス遺伝子発現および病原性に与える影響

論文タイトル
Impact of the interaction between herpes simplex virus 1 ICP22 and FACT on viral gene expression and pathogenesis
論文タイトル(訳)
単純ヘルペスウイルス1型のICP22とFACTの相互作用がウイルス遺伝子発現および病原性に与える影響
DOI
10.1128/jvi.00737-24
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
劉 少聰、丸鶴 雄平、川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
ICP22欠損ウイルスの表現型から、ICP22がHSV-1の効率的な遺伝子発現に必要であることは長く知られていましたが、その機能発現機構には不明な点が多く残されていました。この論文によりICP22とFACTの相互作用がHSV-1の遺伝子発現に貢献することが明らかになったことで、「ICP22はFACTの機能を制御し、HSV-1遺伝子の転写を促進する」という、ICP22の機能発現機構の一端を明らかにすることができました。

抄訳

Facilitates chromatin transcription(FACT)は、ヌクレオソームと相互作用し、RNAポリメラーゼII (pol II)の下流および上流でヌクレオソームの解離と再構成を制御することで転写を促進する。先行研究では、HSV-1(単純ヘルペスウイルス1型)タンパク質ICP22が感染細胞においてFACTと相互作用し、FACTをウイルスDNAにリクルートすることが報告されていたが、ウイルス生活環における両者の相互作用の意義は不明であった。本研究は、ICP22がFACTと効率的に相互作用する為に必要な最小ドメインとして、ICP22内の5つの塩基性アミノ酸から成るクラスターを同定した。この塩基性アミノ酸クラスターにアラニン置換変異を導入した組換えHSV-1は、感染細胞におけるUL54、 UL38、 及びUL44のmRNA量、ウイルスDNAにおけるpol II結合量、感染マウスの致死率が野生株と比較して有意に低下した。更に、FACT阻害剤であるCBL0137はHSV-1感染によるマウスの致死率を有意に低下させた。これらの結果は、ICP22とFACTの相互作用が効率的なHSV-1遺伝子発現と病原性に必要であり、FACTがHSV感染症の治療標的となることを示唆する。

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