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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2022/08/23

フィブロネクチン及びインテグリンα5によるアクチン細胞骨格の再構築ならびに脂肪分化制御機構の解明

論文タイトル
Regulatory roles of fibronectin and integrin α5 in reorganization of the actin cytoskeleton and completion of adipogenesis
論文タイトル(訳)
フィブロネクチン及びインテグリンα5によるアクチン細胞骨格の再構築ならびに脂肪分化制御機構の解明
DOI
10.1091/mbc.E21-12-0609
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 33, Issue 9
著者名(敬称略)
上瀧 萌、信末 博行 他
所属
藤田医科大学 がん医療研究センター 遺伝子制御研究部門

抄訳

我々はこれまでに、細胞の形を決定するアクチン細胞骨格の動態変化が、転写調節因子MKL1を直接制御することで、脂肪分化を誘導することを明らかにしてきた。一方で、脂肪前駆細胞は分化に伴って、細胞外マトリックス(ECM)とその受容体であるインテグリンの発現を変化させ、自らの分化に至適な微小環境を再構築することが知られている。しかし、脂肪分化プロセスにおいてアクチン細胞骨格とECMの再構築がお互いにどのように制御し合うかについては未解明のままであった。本論文では、アクチンの脱重合を開始として、MKL1が阻害されると、細胞が自律的にフィブロネクチン-インテグリンα5の経路を抑制することで、脂肪細胞特有のアクチン細胞骨格への再構築が誘導され、成熟脂肪細胞へと終末分化することを明らかにした。

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2022/08/16

ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出

論文タイトル
Fluorescent In Situ Hybridization and 5-Ethynyl-2'-Deoxyuridine Labeling for Stem-like Cells in the Hydrozoan Jellyfish Cladonema pacificum
論文タイトル(訳)
ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出
DOI
10.3791/64285
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64285
著者名(敬称略)
冨士田壮佑(筆頭)、倉永英里奈、三浦正幸、中嶋悠一朗(責任・連絡) 
所属
東北大学大学院生命科学研究科(冨士田, 倉永)
東京大学大学院薬学系研究科(三浦、中嶋)

抄訳

イソギンチャク、サンゴ、クラゲなどの刺胞動物は、固着性のポリプや遊泳性のメデューサなど多様な形態と生活様式を示す。ヒドラやネマトステラといった刺胞動物のポリプの発生・再生には幹細胞や増殖細胞が寄与する。しかしながら、ほとんどのクラゲ、特にメデューサの段階での基礎的な細胞メカニズムはほとんど不明であることから、特定の細胞タイプを識別するための方法を開発することが重要である。本論文では、ヒドロ虫綱クラゲ Cladonema pacificum(和名:エダアシクラゲ)の幹細胞様の増殖細胞を可視化するプロトコルを報告する。Cladonemaに特徴的な分岐した触手は成体まで継続的に成長し、再生能力を維持するため、増殖細胞や幹細胞によって組織化される細胞メカニズムを研究するための研究モデルとなる。幹細胞マーカーを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により幹細胞様細胞を検出し、S期マーカーである5-ethynyl-2'-deoxyuridine(EdU)のパルス標識により増殖細胞を同定することが可能である。FISHとEdU標識の両方を組み合わせることで、活発に増殖している幹細胞を検出することができ、この技術は非モデル生物である他のクラゲや動物種にも広く応用することが可能である。

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2022/08/12

げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用

論文タイトル
Application of Passive Head Motion to Generate Defined Accelerations at the Heads of Rodents
論文タイトル(訳)
げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用
DOI
10.3791/63100
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63100
著者名(敬称略)
筆頭著者:前川 貴郊、 連絡著者:澤田 泰宏
所属
国立障害者リハビリテーションセンター研究所運動機能系障害研究部

抄訳

運動は様々な病気や運動器機能障害に効果を持つことが広く認められており、脳の疾患に対しても効果的であることが分かっている。しかしながら、運動効果の分子メカニズムの詳細は分かっていない。多くの身体運動、特にジョギングやウォーキングなどの有酸素運動では、足の着地時に頭部を含めた全身に衝撃が加わる。このことから、運動が持つ全身の恒常性維持の効果に物理的刺激を介した調節機構が関与している可能性が考えられる。この仮説を検証するために、適度な速度で運動させた時にげっ歯類の頭部に加わる加速度と同程度の上下方向の加速度を、受動的上下動によって、マウスの頭部に加えた。受動的頭部上下動は、脳内組織液を流動させ、前頭前皮質の神経細胞に物理的刺激を与え、セロトニン2A受容体の分布を細胞の表面から内部へと変化させ、セロトニンに対する応答性を低下させた。以上より、受動的頭部上下動が脳機能を調節し得ることが明らかとなった。本論文では受動的頭部振動を与える方法を記載している。

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2022/08/08

CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法

論文タイトル
Whole-Kidney Three-Dimensional Staining with CUBIC
論文タイトル(訳)
CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法
DOI
10.3791/63986
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63986
著者名(敬称略)
長谷川 頌、南學 正臣
所属
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

抄訳

腎臓病が進行するメカニズムには未解明の点が多く、その原因の一つとして腎臓の構造や機能を立体的・包括的に把握する手段がないことが挙げられる。腎臓には様々な構造が存在するが、既存の病理学的手法は組織の断面の観察にとどまっており、障害による腎臓の構造や機能の変化を3次元で捉えることができなかった。
組織透明化は3次元構造を保ったまま組織の内部構造を観察するために発展してきた手法である。著者たちは東京大学システムズ薬理学教室との共同研究で、組織透明化手法CUBICと3次元免疫染色を組み合わせてマウス腎臓の様々な構造(交感神経、動脈、糸球体、近位尿細管、集合管)を可視化する手法を確立し、それを応用することで「急性腎障害後の腎交感神経障害 (Kidney Int. 2019;96:129-138.)」および「糖尿病腎症における腎エネルギー代謝変化 (Kidney Int. 2020;97:934-950.)」など様々な腎臓病の病態を明らかにしてきた。
本論文は、上記の研究で用いた腎臓の3次元病態解析の詳細な手順をビデオプロトコルの形で解説したものである。

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2022/08/03

後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する

論文タイトル
Comprehensive Understanding of Inactivity-induced Gait Alteration in Rodents
論文タイトル(訳)
後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する
DOI
10.3791/63865
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63865
著者名(敬称略)
太治野  純一(筆頭)、伊藤 明良(連絡) 他
所属
オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンター
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻

抄訳

生体における廃用性変化は筋や骨の萎縮にとどまらず、動作の質的変化にも及ぶことが知られている。これらの動作変化を包括的に評価するため、ビデオ画像の3次元動作解析が近年用いられるようになった。しかし、統一された指標や評価基準は確立されておらず、同手法の普及を妨げる一因となっている。
そこで本論文では、3次元動作解析の手順を普遍的な形で示すことを目的に、後肢懸垂モデルラットの歩行動作解析を実施した。
Wistarラットを尾部懸垂によって後肢を免荷する懸垂群と通常飼育の対象群に分け、介入2週間後のトレッドミル上の歩行を3次元動作解析装置を用いて評価した。対象群と較べ、懸垂群では立脚相における膝・足関節の過伸展および股関節高位を示した。
3次元動作解析は客観性など利点が多い反面、検者によって実験手順が異なるなど普遍的な用法の周知は不足している。同手法の普及のためには、個別応用の元となる汎用性の高い基礎的知見が多く共有されることが望まれる。

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2022/08/01

アディポネクチンは、糖ならびに脂質代謝の概日リズムを制御する

論文タイトル
Adiponectin regulates the circadian rhythm of glucose and lipid metabolism
論文タイトル(訳)
アディポネクチンは、糖ならびに脂質代謝の概日リズムを制御する
DOI
10.1530/JOE-22-0006
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Journal of Endocrinology Volume 254: Issue 2 Pages: 121–133
著者名(敬称略)
和田 平、榛葉 繁紀 他
所属
日本大学 薬学部 薬学科 健康衛生学研究室

抄訳

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され、糖・脂質代謝を調節するサイトカインである。血清アディポネクチン濃度は日内変動を示すが、アディポネクチンの効果が時間依存的であるかどうかは不明である。そこで本研究では、糖・脂質代謝の概日リズム形成におけるアディポネクチンの役割を解析した。アディポネクチン欠損により、マウスの活動量ならびに摂食量が増加した。またアディポネクチン欠損は、マウス肝臓および血清脂質レベルの概日リズムに変化を与えた。肝臓からの超低密度リポタンパク質-トリグリセリド分泌において時間依存性が認められたが、これはアディポネクチン欠損により失われた。また、アディポネクチン欠損マウスの耐糖能は、休息期では正常であったが活動期では低下していた。この活動期における耐糖能の低下は、インスリン分泌能の低下と関連していた。これらの結果は、アディポネクチンが肝臓の代謝の概日リズムの一部を制御していることを示唆している。

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2022/07/28

ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別

論文タイトル
Normalized Parameters of Dynamic Contrast-Enhanced Perfusion MRI and DWI-ADC for
Differentiation between Posttreatment Changes and Recurrence in Head and Neck Cancer
論文タイトル(訳)
ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別
DOI
10.3174/ajnr.A7567
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Volume 43, Issue.7 (July 2022)
著者名(敬称略)
馬場 亮 他
所属
ミシガン大学放射線科神経放射線部門/東京慈恵会医科大学放射線医学講座

抄訳

【背景と目的】
頭頸部癌の画像検査による経過観察において、良性の治療後変化と再発の鑑別は臨床的に重要である。本研究の目的は正規化したdynamic contrast-enhanced MRI(DCE-MRI)とADCによる両者の鑑別の有用性を検討することである。
【患者と方法】
本研究ではDWI-ADCによる経過観察目的のDCE-MRIを受けた頭頸部癌の既往がある患者51名(25名が再発、26名が良性の治療後変化)を対象とした。 関心領域と参照領域の定量的、半定量的DCE-MRIパラメータとADCを解析した。正規化DCE-MRIパラメータと正規化DWI-ADCパラメータは関心領域を参照領域で割ることにより算出した。
【結果】
正規化した血漿の占める容積の割合(Vp)、細胞外血管外腔と血漿との間の体積移動定数(Ktrans)、曲線下面積(AUC)、wash in (WI)(nVp、nKtrans、nAUC、nWI)は再発が良性治療後変化より有意に高値であった(p = 0.003 - <0.001)。 正規化平均ADCは再発が良性治療後変化より有意に低値であった(p<0.001)。有意差のある正規化DCE-MRIパラメータ(nVp、nVe、nKtrans、nAUC、nWI)とnADCmeanの組み合わせの受信者動作特性曲線下面積は、0.97(95%信頼区間、0.93-1)であった。
【結論】
正規化DCE-MRIパラメータ、nADCmeanおよびそれらの組み合わせは頭頸部癌の再発と良性治療後変化を鑑別するのに有用であった。

 

 

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2022/07/26

クッシング症候群副腎腺腫におけるステロイド合成酵素DNAメチル化の解析

論文タイトル
Association of DNA methylation with steroidogenic enzymes in Cushing’s adenoma
論文タイトル(訳)
クッシング症候群副腎腺腫におけるステロイド合成酵素DNAメチル化の解析
DOI
10.1530/ERC-22-0115
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Volume 29: Issue 8 Pages: 495–502
著者名(敬称略)
児玉尭也、沖 健司 他
所属
広島大学大学院 分子内科学(内科学第二)

抄訳

【背景】コルチゾール産生腺腫(CPA)における副腎ステロイド合成酵素のDNAメチル化によるコルチゾール合成機構はわかっていない.CPAにおけるステロイド合成酵素のDNAメチル化レベルを同定し,遺伝子発現との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】CPA25例と非機能性副腎皮質腺腫(NFA)6例を対象に,DNAメチル化ビーズアレイ解析とRNAシークエンス解析を行った.
【結果】CYP17A1遺伝子は,NFAに比べCPAで低メチル化を示し,転写領域2箇所のメチル化レベルが有意に低かった.また,CYP17A1遺伝子の3 領域でメチル化レベルとmRNA発現量が逆相関した.PRKACA変異CPAでは,GNAS変異CPAと比較し,CYP17A1遺伝子の低メチル化傾向を認めた.CYP17A1遺伝子のメチル化レベルとmRNA発現量を用いたクラスタリング解析で,PRKACA変異CPAはNFAおよびGNAS変異CPAと明確に区別された.
【考察】CPAでは,CYP17A1遺伝子の低メチル化がCYP17A1転写を制御し,特に,PRKACA変異CPAで,その関連が強かった.

 

 

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2022/07/25

グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明

論文タイトル
Structural basis for heme detoxification by an ATP-binding cassette–type efflux pump in gram-positive pathogenic bacteria
論文タイトル(訳)
グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明
DOI
10.1073/pnas.2123385119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS2022  Vol. 119  No. 27  e2123385119
著者名(敬称略)
中村寛夫、久野玉雄、白水美香子他
所属
理化学研究所生命機能科学研究センタータンパク質機能・構造研究チーム

抄訳

ヘムは生物にとって重要なタンパク質コファクターであるが遊離状態では毒にもなる。病原菌は主に宿主のヘモグロビンのヘムを鉄源として奪い増殖するが、このとき生ずる遊離ヘムの毒性を回避するためにグラム陽性細菌ではヘムに特異的なATP-binding cassette (ABC)排出ポンプ(HrtBA)が働いていると考えられている。本研究では組換え大腸菌を用いたHrtBAタンパク質によるヘム解毒、生化学的機能解析、エックス線結晶構造解析を行った。その結果、ヘムは難溶性であることから細胞膜にインターカレートして毒性を発揮するが、HrtBAの膜貫通ドメインの細胞膜外葉付近に結合すること、ATPがHrtBAの細胞質側にあるヌクレオチド結合ドメインに結合すると膜貫通ドメインのヘム結合部位が収縮してヘムが解離すること、ATP加水分解でこれらのステップがターンオーバーすることで細胞膜からヘムが汲み出されることがわかった。HrtBAを欠損したグラム陽性細菌は血液中では増殖が抑制されることから本研究による生化学アッセイや立体構造に基づく阻害剤スクリーニングはグラム陽性細菌によって引き起こされる敗血症や髄膜炎の予防、治療に貢献できると思われる。



図。ヘム排出ポンプHrtBAが細胞膜からヘムを汲みだす出すモデル
ATPが結合していない時(フリー型)ではHrtB膜貫通ヘリクスが横にずれていて、細胞膜にあるヘムが膜貫通ヘリクスに結合する(ヘム型)。ヘムが細胞膜外葉付近に結合していることがわかる。このあと、ATPがHrtAサブユニットに結合すると、膜貫通ヘリクスが縮小してヘムが追い出される。ボールモデルはヘムを認識するアスパラギン酸で、ヘムが配位するとATP加水分解活性が上昇する働きに必要なアミノ酸である。

 

 

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2022/07/20

インプリンティング疾患を除いたSGA性低身長における病的コピー数異常および病的遺伝子バリアントの関与

論文タイトル
Pathogenic Copy Number and Sequence Variants in Children Born SGA With Short Stature Without Imprinting Disorders
論文タイトル(訳)
インプリンティング疾患を除いたSGA性低身長における病的コピー数異常および病的遺伝子バリアントの関与
DOI
10.1210/clinem/dgac319
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Volume 107, Issue 8, August 2022, Pages e3121–e3133
著者名(敬称略)
原 香織 (筆頭著者), 鏡 雅代 (連絡著者) 他
所属
国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部

抄訳

SGA性低身長症 (SGA-SS) の原因は、インプリンティング疾患 (IDs)、病的コピー数異常 (PCNVs)、成長に関連する遺伝子の病的遺伝子バリアントなど、多岐に渡るが、これらを包括的に検討した報告は非常に少ない。
本研究では、原因不明SGA-SS 140例に対し、はじめに臨床像評価とメチル化解析を実施し、IDs 46例 (Silver-Russell症候群 42例、その他のIDs 4例) を除外した。次に、十分な検体量を有する86例に対してarray Comparative Genomic Hybridization解析、次世代シーケンシングを実施し、PCNVs 8例、候補遺伝子バリアント 11例 (pathogenic 5例、Variants of unknown significance 6例) を同定した。
本研究は、IDsを除いたSGA-SSにおけるPCNVsおよび病的遺伝子バリアントの正確な寄与を明確にした。

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2022/07/19

生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察

論文タイトル
In vivo Chronic Two-Photon Imaging of Microglia in the Mouse Hippocampus
論文タイトル(訳)
生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察
DOI
10.3791/64104
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e64104
著者名(敬称略)
亀井 亮佑、岡部 繁男 他
所属
東京大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学

抄訳

脳の免疫細胞であるミクログリアは、シナプス可塑性や神経活動を調節し、神経回路の維持に寄与している。近年、ミクログリアの脳領域ごとの不均一性が注目され、特に海馬では、神経回路の発達やその記憶に関連した機能に、ミクログリアによるシナプスリモデリングが関与しているようだ。海馬ミクログリアの挙動を生体内で観察する意義は大きいが、手術により生じる炎症が問題となる。
本論文では、マウス海馬CA1全層のミクログリアを、生体内で慢性的に二光子観察する方法を解説する。この方法では、術直後の炎症は数週以内に鎮静化し、以降1か月以上にわたって、静止型ミクログリアの突起の形態変化を解析することができる。ラミファイド型ミクログリアの長期かつ高分解能なイメージングには、手術侵襲の最小化とイメージング手法の最適化が肝要である。神経細胞とミクログリアとの二色イメージング法も提示し、海馬の複数細胞種の相互作用の観察基盤を提供する。本手法により、海馬におけるミクログリア機能の解明が進展することが期待される。

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2022/07/19

切除可能大腸癌における次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査の実臨床への適用について

論文タイトル
Real-world application of next-generation sequencing-based test for surgically resectable colorectal cancer in clinical practice
論文タイトル(訳)
切除可能大腸癌における次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査の実臨床への適用について
DOI
10.2217/fon-2022-0122
ジャーナル名
Future Oncology
巻号
Vol.18 No.24(2022)
著者名(敬称略)
小桐雅世、清島 亮 他
所属
慶應義塾大学医学部一般・消化器外科

抄訳

目的:本研究は患者から前向きに収集されたreal world dataを解析することにより、切除可能大腸癌における次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル検査の意義について評価することを目的とした。
方法:2018年7月から2020年2月までに当院で根治手術を受けた大腸癌患者107名を対象とし、NGSデータと臨床病理学的所見との相関を評価した。
結果: ステージは、Iが28例(26.2%)、IIが40例(37.4%)、IIIが32例(29.9%)、IVが7例(6.5%)であった。病的意義のあるactionable遺伝子は97.2%の症例に認められた。共発現解析により、TP53とAPC遺伝子変異は早期癌でより頻繁に見られた。コピー数変化(CNA)は、右側結腸と早期癌で有意に少なかった。相同組換え修復欠損(HRD)は進行癌でより多く同定され、高HRDは高リスクステージIIの同定に有用であった。
結論:HRDは実臨床において新たな有用性を示す可能性があると考えられた。

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2022/07/08

植物透明化技術によるイネの芽や茎の深部の蛍光観察

論文タイトル
Deep Fluorescence Observation in Rice Shoots via Clearing Technology
論文タイトル(訳)
植物透明化技術によるイネの芽や茎の深部の蛍光観察
DOI
10.3791/64116
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64116
著者名(敬称略)
新美陽子 水多陽子 他
所属
名古屋大学大学院生命農学研究科
名古屋大学高等研究院・トランスフォーマティブ生命分子研究所

抄訳

 近年、屈折率の均一化や自家蛍光物質の除去によって、生物体内の構造を保ったまま立体的に観察する透明化技術が開発されている。しかしイネでは、根や葉など薄い組織の観察のみにとどまっていた。その原因として、茎など硬く厚い組織や、茎頂など撥水性の葉に包まれた組織は透明化溶液が浸透しにくいといった点が挙げられる。
 そこで本論文では、プロトコルの最適化をおこない、適切な組織固定ののちにビブラトームで目的部位以外を取り除き、透明化試薬に浸漬した。その結果、透明化試薬の浸透性および均一性が向上し、さらに処理時間が短縮された。共焦点顕微鏡で観察したところ、茎から茎頂、そして幼穂までの内部構造を広視野、かつ連続的に観察することができた。
 本手法はイネだけでなく、硬くて厚い組織や層構造を持つ植物など、これまで透明化が困難であった他の植物にも有効であると考えられる。



【図の説明】
イネの形質転換体の幼穂(左)から茎基部(右)までの蛍光画像。黄色のシグナルは核に局在するOsMADS15-mOrangeの蛍光、水色のシグナルは蛍光色素で染色した細胞壁を示す。

 

 

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2022/07/07

甲状腺ホルモン脱ヨード酵素に対する化合物スクリーニングとコホート研究の併用解析

論文タイトル
High-throughput Screening in Combination With a Cohort Study for Iodothyronine Deiodinases
論文タイトル(訳)
甲状腺ホルモン脱ヨード酵素に対する化合物スクリーニングとコホート研究の併用解析
DOI
10.1210/endocr/bqac090
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 163, Issue 8, August 2022, bqac090
著者名(敬称略)
山内 一郎 他
所属
京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学

抄訳

甲状腺ホルモン脱ヨード酵素には、DIO1、DIO2、DIO3の3種類があり、甲状腺ホルモンの活性化あるいは不活化を行っている。本研究ではDIO1、DIO2、DIO3それぞれについて新規調節因子を探索するため、2480種類からなる化合物ライブラリーに対しスクリーニングを実施した。プロモーターアッセイを基盤とした独自のハイスループットアッセイを構築し、プロモーター特異性の確認、細胞毒性の除外、再現性・用量依存性の確認を経て、ヒット化合物を確定した。ヒット化合物について、我々の診療科のコホートの後ろ向き解析を用いた検証に進んだ。具体的には、ヒット化合物内服前後の甲状腺機能の測定結果が存在した症例を解析し、アドレナリン受容体作動薬であるリトドリン、PDE5阻害薬であるタダラフィル、複数のチロシンキナーゼ阻害薬の内服によって有意な甲状腺機能の変化が見られた。マウスへの投与実験も行い、リトドリンは甲状腺におけるDIO2の発現を増加させ、コホート研究の結果と同様に遊離T3/遊離T4比を上昇させることを明らかとした。さらには、本論文で提示したヒット化合物のリストから新たな研究への着想が生まれると期待される。

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2022/06/30

化学物質刺激による線虫C. elegansの連合学習と記憶の形成

論文タイトル
Aversive Associative Learning and Memory Formation by Pairing Two Chemicals in Caenorhabditis elegans
論文タイトル(訳)
化学物質刺激による線虫C. elegansの連合学習と記憶の形成
DOI
10.3791/64137
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64137
著者名(敬称略)
澁谷 海大、丸山 一郎 他
所属
沖縄科学技術大学院大学情報処理生物学ユニット

抄訳

線虫C. elegansは細胞や分子レベルでの学習や記憶の研究に適したモデル生物である。その神経系は比較的単純で、全てのニューロンの化学的・電気的シナプスによる繋がりが連続超薄切片の電子顕微鏡画像から再構成されている。本論文では、プロパノールと塩酸をそれぞれ条件刺激、無条件刺激としてC. elegansに学習させ、短期記憶と長期記憶を形成させる方法を詳述する。C. elegansはプロパノールに引き寄せられ、塩酸を避ける性質がある。ところが、プロパノールと塩酸を同時に連合学習させると、C. elegansはプロパノールに引き寄せられなくなる。さらに、短期記憶と長期記憶形成の両方に、NMDA受容体が必須であることが、C. elegans突然変異体の解析から判明した。C. elegansでは6種類の介在ニューロンでのみNMDA受容体が発現していることから、これらの介在ニューロンが形成するネットワークに記憶が保存されていると考えられる。

介在ニューロンAVAを蛍光タンパク質でラベルしたC. elegans

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2022/06/29

前核期胚顕微注入でのノックインマウスおよびFloxマウスの作製

論文タイトル
Zygote Microinjection for Creating Gene Cassette Knock-in and Flox Alleles in Mice
論文タイトル(訳)
前核期胚顕微注入でのノックインマウスおよびFloxマウスの作製
DOI
10.3791/64161
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64161
著者名(敬称略)
谷本 陽子、三上 夏輝 他
所属
筑波大学生命科学動物資源センター
筑波大学 トランスボーダー医学研究センター
筑波大学実験動物学研究室

抄訳

CRISPR-Cas技術の発展は、迅速かつ容易な遺伝子改変マウスの作製を可能にした。特にノックアウトマウスや点変異マウスは、マウス前核期胚に電気穿孔でCRISPR因子(および一本鎖DNAドナー)を導入する簡便な方法で作出できる。その一方、1000塩基対以上の遺伝子カセットノックイン(KI)マウスやFloxマウスは、主にCRISPR因子と二本鎖DNAドナーを前核期胚に顕微注入することで作製される。
筑波大学生命科学動物資源センターは、日本を含む数カ国の大学・研究所・製薬会社からの依頼を受けて、これまでに200種類以上の遺伝子カセットKIマウス系統と110種類以上のFloxマウス系統を前核期胚顕微注入法で作製してきた。これらのゲノム編集マウス作製プロジェクトには、BALB/c・C3H/HeJ・C57BL/6Nなどの近交系マウスを用いたものもあるが、そのほとんどはC57BL/6J近交系マウスを用いたものである。電気穿孔法と異なり、様々な近交系マウスの前核期胚顕微注入は容易ではない。しかし、単一近交系遺伝背景の遺伝子カセットKIマウスやFloxマウスは、遺伝子ヒト化マウス・蛍光レポーターマウス・コンディショナルノックアウトマウスモデルにおいて極めて重要である。そこで本論文では、C57BL/6Jマウスの前核期胚にCRISPR因子と二本鎖DNAドナーを顕微注入し、遺伝子カセットKIマウスおよびFloxマウスを作製するためのプロトコルを紹介する。更に、過排卵誘発や胚移植などの周辺技術と作製タイムラインについても概説する。

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2022/06/29

NG-Test CARBA 5はカルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌を高い精度で検出できる

論文タイトル
Evaluation of NG-Test CARBA 5 for the detection of carbapenemase-producing Gram-negative bacilli
論文タイトル(訳)
NG-Test CARBA 5はカルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌を高い精度で検出できる
DOI
10.1099/jmm.0.001557
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 71, Issue 6(2022)
著者名(敬称略)
斉藤 開、中野 竜一 他
所属
奈良県立医科大学 医学部 医学科 微生物感染症学

抄訳

昨今カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)が世界の公衆衛生上の大きな脅威となっている。CPEの検出法としてCIM法などが知られているが、結果を得るまで1日ほど必要となる。近年、簡便かつ迅速(判定15分)にCPEを検出できるNG-Test CARBA 5が販売された。NG-Test CARBA 5はイムノクロマト法によって、臨床上重要なカルバペネマーゼであるIMP, KPC, VIM, OXA-48, NDM(Big 5)を検出できることから、臨床現場での応用が期待されている。 本研究では、臨床現場でも分離される各種薬剤耐性菌に対するNG-Test CARBA 5の精度評価を目的とした。カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌116株(Big 5 107株、Big 5以外9株)とカルバペネマーゼ非産生グラム陰性桿菌48株を用いたところ、感度99.1%(106/107)、特異度100%(57/57)と非常に高い精度で判定されることがわかった。臨床現場において、NG-Test CARBA 5を最初のスクリーニングとして実施することで、迅速診断が可能となり、さらにはポイントオブケア (POCT) 検査としても有効活用されることが期待された。

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2022/06/27

透析患者における副甲状腺摘出術とシナカルセト塩酸塩の比較

論文タイトル
Parathyroidectomy vs Cinacalcet Among Patients Undergoing Hemodialysis
論文タイトル(訳)
透析患者における副甲状腺摘出術とシナカルセト塩酸塩の比較
DOI
10.1210/clinem/dgac142
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Volume 107, Issue 7, July 2022, Pages 2016–2025
著者名(敬称略)
駒場 大峰 他
所属
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科

抄訳

透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症を管理する上で,副甲状腺摘出術(PTx)とシナカルセト塩酸塩はともに有効な治療手段であるが,両者の直接比較はこれまでなされていない。そこで我々は日本透析医学会統計調査データベースを用いて,2008~2009年の間にPTxが実施された症例955例とシナカルセトが処方された症例8228例の生命予後を比較した。傾向スコアマッチング(1:3)により,PTx群894例,シナカルセト群2682例が抽出された。PTx群はシナカルセト群と比較し,治療介入後にintact PTH値,血清補正カルシウム値,血清リン値はいずれも大きく低下した。6年間の観察期間中にPTx群は201例,シナカルセト群は736例が死亡し,PTxはシナカルセト処方と比較し有意な死亡リスクの低下に関連していた(ハザード比0.78,95%信頼区間0.67-0.91)。この関連性はintact PTH値 500 pg/mL以上,血清補正カルシウム値10 mg/dL以上の症例においてより強く観察された(ともに交互作用P <0.001)。厳格なPTH管理が予後の改善につながるか,今後の重要な検討課題と考えられる。

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2022/06/16

MRI ADC値は血栓回収術を行った症例におけるDWI reversalに関連する(後方視的コホート研究)

論文タイトル
ADC Level is Related to DWI Reversal in Patients Undergoing Mechanical Thrombectomy: A Retrospective Cohort Study
論文タイトル(訳)
MRI ADC値は血栓回収術を行った症例におけるDWI reversalに関連する(後方視的コホート研究)
DOI
10.3174/ajnr.A7510
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Volume 43, Issue 6(2022)
著者名(敬称略)
梅村 武部、波多野 武人 他
所属
小倉記念病院 脳神経外科

抄訳

 一般的に急性期脳梗塞におけるMRI DWI高信号領域は、脳梗塞として不可逆性変化を来しているものと考えられる。そのため超急性期の主幹動脈閉塞例では、DWI高信号となっていない領域の救済目的に血栓回収術が行われる。しかし実臨床では主幹動脈再開通症例で術後DWI高信号が改善している例を時折認める。DWI 画像の高信号域はADC値による質的診断が可能である。
 本研究では、脳梗塞急性期において血栓回収術により有効再開通が得られた症例について、初回MRI におけるDWI 高信号領域が術後改善するかどうかを、術翌日のMRI DWI画像で判定した。初回DWI高信号領域のADC 値を全て測定し、術後に改善した症例とそうでない症例の間にADC値の差があるかどうかを調査した。ADC 値 (領域平均値) は 520 × 10-6mm2/s をカットオフ値とし、この値より高ければ再開通により高信号は改善し、その領域の神経学的機能も取り戻すことがわかった。
 今回の研究により、DWI 高信号領域はADC値 (領域平均値) が520 × 10-6mm2/s以上であれば、まだ不可逆性の変化を来しておらず、再開通治療による救済可能であり神経細胞のviabilityが残っていることが示唆された。

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2022/06/14

LAG-3は安定なペプチド-MHCクラスII複合体を認識することによりT細胞の機能を弱めて自己免疫応答およびがん免疫応答を抑制する

論文タイトル
Binding of LAG-3 to stable peptide-MHC class II limits T cell function and suppresses autoimmunity and anti-cancer immunity
論文タイトル(訳)
LAG-3は安定なペプチド-MHCクラスII複合体を認識することによりT細胞の機能を弱めて自己免疫応答およびがん免疫応答を抑制する
DOI
10.1016/j.immuni.2022.03.013
ジャーナル名
Immunity
巻号
Volume 55, Issue 5(2022)
著者名(敬称略)
丸橋拓海、岡崎 拓 他
所属
東京大学 定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野

抄訳

免疫チェックポイント分子LAG-3は、がん免疫療法においてPD-1とCTLA-4に次ぐ有望な薬剤標的として注目されている。最近、LAG-3とPD-1に対する阻害抗体の併用療法が悪性黒色腫の治療に有効であることが臨床試験で確認され、FDAにより承認された。一方で、抑制性分子の機能解析が容易でないことなどもあり、LAG-3の基礎研究は後回しにされている。特に、どの分子がLAG-3のリガンドとして働き、LAG-3に抑制機能を発揮させるのかという基本的な問題さえ未解決である。今回我々は、安定なペプチド-MHCクラスII複合体をリガンドとしてLAG-3が抑制機能を発揮することを明らかにした。これによりT細胞の機能がLAG-3によって弱められ、自己免疫疾患の発症が抑制されるとともに、がん免疫が減弱してしまうことを示した。LAG-3の機能が発揮されるメカニズムの解明により、LAG-3を標的とした治療法の研究開発を科学的根拠に基づいて進めることが可能となり、効果的かつ安全な新規治療法の開発につながると期待される。

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