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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2020/09/07

ダイナクチンサイドアームの構造多型性とp150サブユニットのドメイン構成

論文タイトル
Conformational diversity of dynactin sidearm and domain organization of its subunit p150
論文タイトル(訳)
ダイナクチンサイドアームの構造多型性とp150サブユニットのドメイン構成
DOI
10.1091/mbc.E20-01-0031
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 12(1201–1313)
著者名(敬称略)
斎藤 慧, 豊島 陽子 他
所属
東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

抄訳

 ダイナクチンは微小管上で働くモータータンパク質ダイニンの運動機能を制御するタンパク質複合体である。微小管との結合やダイニン機能制御に重要な部位の「サイドアーム」については詳細構造が知られていなかった。本研究では、電子顕微鏡観察を用いてサイドアームの柔らかく多様な構造について報告する。金ナノ粒子標識と欠損体の解析により、サイドアーム中のp150サブユニットのドメイン構成とコイルドコイル1(ダイニン結合部位)の構造変化が分かった。さらに、サイドアーム全体が複数の特徴的な構造をとり、それらの割合は溶液の塩濃度に応じて変化した。ダイナクチンの構造多型性は、ダイニンや微小管との結合様式の理解の手掛かりとなるであろう。

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2020/09/02

1型糖尿病の3病型間で膵島抗原特異的CD4陽性T細胞のフェノタイプは異なる

論文タイトル
Distinct Phenotypes of Islet Antigen-Specific CD4+ T Cells Among the 3 Subtypes of Type 1 Diabetes
論文タイトル(訳)
1型糖尿病の3病型間で膵島抗原特異的CD4陽性T細胞のフェノタイプは異なる
DOI
10.1210/clinem/dgaa447
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.105 No.10 (dgaa447)
著者名(敬称略)
中條 大輔 他
所属
富山大学附属病院 臨床研究管理センター/第一内科

抄訳

1型糖尿病は膵島抗原特異的細胞性免疫による膵β細胞の破壊を介したインスリン分泌不全によって発症すると推測されているが、各病型(急性発症1型:AT1D、緩徐進行1型:SP1D、劇症1型:FT1D)における発症様式と細胞性免疫反応の関連は明らかではない。そこで我々は、病型間で膵島抗原特異的CD4陽性T細胞のフェノタイプの差異を検討した。各病型の患者と健常者より採取した末梢血単核球を4種の膵島抗原ペプチド(GAD65, Preproinsulin (PPI), IGRP, ZnT8)で刺激し、2日後の培養上清中のサイトカイン測定(ex-vivo assay)と、8日後のCD4陽性T細胞中のサイトカイン発現解析(expansion assay)を行った。In-vivo assayでは、AT1DにおけるGAD65特異的なIL-6・IP-10の反応、PPI特異的なIP-10の反応が亢進していた。FT1DではGAD65およびPPI特異的なG-CSFの反応が亢進していた。Expansion assayでは、AT1DにおけるGAD65およびPPI特異的Th1細胞の増加を認め、SP1DではGAD65特異的Th2細胞が増加していた。FT1Dでは全膵島抗原に対するTr1反応が極度に低下していた。これらT細胞フェノタイプの差異が1型糖尿病の発症様式と関連している可能性が示唆された。

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2020/09/01

STAT2上で麻疹ウイルスV蛋白質が結合する部位は,IRF9結合部位と重複する

論文タイトル
The Measles Virus V Protein Binding Site to STAT2 Overlaps That of IRF9
論文タイトル(訳)
STAT2上で麻疹ウイルスV蛋白質が結合する部位は,IRF9結合部位と重複する
DOI
10.1128/JVI.01169-20
ジャーナル名
Journal of Virology 
巻号
Journal of Virology  Volume 94, Issue 17
著者名(敬称略)
永野 悠馬、尾瀬 農之 他
所属
北海道大学 大学院先端生命科学研究院

抄訳

 宿主の免疫因子と結合して,宿主免疫系を阻害する機構が多くのウイルスにおいて報告されている。とりわけ,50以上ものサイトカイン信号を捌くことができるJAK-STAT経路は,多くのRNAウイルスに標的にされている。本論文では,その中で最も研究の進んでいるウイルスの1つである,パラミクソウイルス属麻疹ウイルスV蛋白質やそのN末端領域,C末端領域を精製し,ヒトのSTAT1およびSTAT2分子との直接の相互作用を評価した。これまでの細胞生物学による研究から,N末端領域はSTAT1分子と,C末端領域はSTAT2分子と相互作用することが報告されていたが,等温滴定型熱量計を使用した定量化から,C末端領域とSTAT2の相互作用は,N末端領域とSTAT1の相互作用より30倍強いことがわかった。また,本来IRF9がSTAT2に結合することによって転写因子複合体ISGF3が形成され,核移行の後に抗ウイルス蛋白質発現を活性化するが,V蛋白質はIRF9とSTAT2の結合を阻害することを明らかにしたことにより,免疫系阻害機構の分子実体が解明できた。

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2020/08/28

べん毛形成の開始点であるMSリングのビブリオ属における構築メカニズムの解明

論文タイトル
Assembly Mechanism of a Supramolecular MS-Ring Complex To Initiate Bacterial Flagellar Biogenesis in Vibrio Species
論文タイトル(訳)
べん毛形成の開始点であるMSリングのビブリオ属における構築メカニズムの解明
DOI
10.1128/JB.00236-20
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 202, Issue 16
著者名(敬称略)
寺島 浩行、平野圭一、本間道夫 他
所属
名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻 生体膜機能グループ

抄訳

細菌べん毛は、細菌の持つ運動器官であり、回転モーターとして機能する。細菌べん毛の構築は、細胞質膜上のMSリングの形成によって開始される。MSリングは、2回膜貫通型タンパク質FliFが数十個集合して構成される。べん毛の本数や形成位置は、ビブリオ属菌ではFlhFとFlhGによって制御されている。しかしながら、ビブリオ属菌におけるMSリングの形成を開始する因子や、MSリング形成におけるFlhFの関与については明らかにされていない。本研究において、我々は、FlhFがビブリオ属菌のMSリング形成を促進することを示した。大腸菌内でビブリオFliFを単独で発現させた場合、MSリング形成はほとんど起こらなかった。一方で、FlhFとの共発現によってMSリングが効率的に形成された。また、FlhF がFliFを細胞極に局在させることが明らかとなった。興味深いことに、FlhF以外にも、MSリングでCリングを形成するFliGとの共発現によってもMSリングの形成が促進された。一連の結果は、FlhF、FliGがFliFの適切な空間的/時間的制御を行い、MSリング形成及び最終的にはべん毛形成を制御していることを示唆している。

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2020/08/26

細胞質流動が線虫受精卵における極性決定因子を押し流して精子侵入点の逆側で後極化を可能にする

論文タイトル
Cytoplasmic streaming drifts the polarity cue and enables posteriorization of the Caenorhabditis elegans zygote at the side opposite of sperm entry
論文タイトル(訳)
細胞質流動が線虫受精卵における極性決定因子を押し流して精子侵入点の逆側で後極化を可能にする
DOI
10.1091/mbc.E20-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 16(1651-1821)
著者名(敬称略)
木村 健二, 木村 暁
所属
関西学院大学 理工学部・生命科学科

抄訳

 生物の発生過程における体軸の決定には、細胞の極性化が必要である。その際、極性化の決定因子の細胞内における位置が体軸決定に重要となる。線虫C. elegansの受精卵では、精子由来の前核/中心体からなる複合体(SPCC)の位置が前後軸における後極側を決める。SPCCは受精から約30分後に近くの細胞表層の収縮性を緩め始め、これは極性化に必要なSymmetry Breaking (SB)と呼ばれている。しかし、SBまでにSPCCの位置がどのようにして決まるのか不明なままであった。今回、受精直後に生じる細胞内の流れ(細胞質流動)がSPCCを押し流し、ランダムに位置を変えることを発見した。この流れは確率的にふるまい、時おりSB前にSPCCを精子侵入点の反対側まで持っていくことがわかった。今回の結果は、線虫の発生過程が型通りに進む前に、細胞質流動の確率的な特性が極性決定に重要な因子の位置を決定することを示した。

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2020/08/24

アポトーシスのブレブにおける形質膜と細胞質の協調的な変化

論文タイトル
Coordinated changes in cell membrane and cytoplasm during maturation of apoptotic bleb
論文タイトル(訳)
アポトーシスのブレブにおける形質膜と細胞質の協調的な変化
DOI
10.1091/mbc.E19-12-0691
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 8(725–857)
著者名(敬称略)
青木 佳南, 池ノ内 順一 他
所属
九州大学理学部生物学科情報生物学講座 代謝生理学

抄訳

 ブレブは、一時的にアクチン細胞骨格による裏打ちが失われた形質膜の球状突起構造でありアポトーシスを起こした細胞で活発に形成されることが知られる。私たちは近年、癌細胞の遊走過程に形成されるブレブの分子機構を明らかにした(Aoki et al. PNAS 2016)。アポトーシスの初期には小型のアポトーシスが多数形成されるが、次第に大型化する。最終的には、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)などの炎症の制御に関わる分子がブレブの内部に集積し、効率良くブレブが免疫細胞に取り込まれることで、周辺の免疫細胞の応答性を修飾する役割を担う。本研究では、細胞遊走の際に形成されるブレブとアポトーシス時のブレブの分子機構の共通性と相違点の解明に取り組んだ。研究の結果、両者の基本的なブレブの形成・退縮の分子機構は共通しているが、カスパーゼによって切断を受け活性化する2つのタンパク質ROCK1キナーゼと脂質スクランブラーゼXkr8の活性の変化によって、アポトーシスに特徴的なブレブの経時的なダイナミクスの変化が引き起こされることが明らかになった。

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2020/08/19

前立腺癌原因遺伝子SPOPは前立腺癌細胞におけるトポイソメラーゼ2AのDNA上からの解離に必須である

論文タイトル
SPOP is essential for DNA–protein cross-link repair in prostate cancer cells: SPOP-dependent removal of topoisomerase 2A from the topoisomerase 2A-DNA cleavage complex
論文タイトル(訳)
前立腺癌原因遺伝子SPOPは前立腺癌細胞におけるトポイソメラーゼ2AのDNA上からの解離に必須である
DOI
10.1091/mbc.E19-08-0456
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 6(397–510)
著者名(敬称略)
渡辺 隆太, 前川 大志, 東山 繁樹 他
所属
愛媛大学 プロテオサイエンスセンター 細胞増殖・腫瘍制御部門

抄訳

 SPOP (speckle-type BTB/POZ protein)は、cullin-3 (CUL3)型ユビキチンE3複合体の基質認識受容体である。前立腺癌患者の約15%においてSPOPの基質タンパク質結合領域にアミノ酸点変異が存在するが、野生型SPOPや前立腺癌由来SPOP変異体の細胞機能は不明な点が多い。本研究では、DNA恒常性におけるSPOPの機能解析を行った。我々の細胞はDNA複製時に生じる新生DNA鎖の絡み合い (DNA複製ストレス)を解消するために、トポイソメラーゼにより積極的に新生DNA鎖を切断し、絡み合いを解消した後、DNAを修復するというDNA-protein crosslink repair機能を有している。解析の結果、SPOPは当該プロセスにおいてトポイソメラーゼ2AのDNA鎖からの解離に必須であることが分かった。前立腺癌細胞において、SPOPの発現抑制及び、前立腺癌由来SPOP変異体を過剰発現する事で、トポイソメラーゼ2AがDNA鎖上に強く蓄積し、DNA double strand breaks (DSBs)が発生した。DSBsの長期的な蓄積はgenome instabilityを引き起こす。SPOPは通常、genome instabilityを防ぐ「門番」として機能しており、前立腺癌由来SPOP変異体が発現する事で、この機能が破綻し、genome instabilityが生じ、前立腺癌が発症するモデルが示唆される。

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2020/07/27

脂質膜変形タンパク質を介した膜変形における両親媒性脂質の多様性の役割

論文タイトル
The roles of the diversity of amphipathic lipids in shaping membranes by membrane-shaping proteins
論文タイトル(訳)
脂質膜変形タンパク質を介した膜変形における両親媒性脂質の多様性の役割
DOI
10.1042/BST20190376
ジャーナル名
Biochemical Society Transactions
巻号
Biochemical Society Transactions Vol.48 No.3 (837–85)
著者名(敬称略)
北又 学, 末次 志郎 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学 (末次研究室)

抄訳

 細胞の脂質組成は、細胞の種類や細胞小器官によって異なる。これらの生体膜を構成するのは主にリン脂質であり、リン脂質は親水性の頭部と疎水性の尾部(脂肪酸)から構成される。生体内の様々な生命現象において、生体膜に脂質膜変形タンパク質が結合することで膜の形態は制御される。これまでの脂質膜変形タンパク質の脂質結合では、負電荷をもつホスファチジルセリンやホスホイノシチド等の脂質の頭部が重要であると認識されてきた。
 最近の研究により、タンパク質の疎水性アミノ酸と脂質間の隙間に露出した脂肪酸が相互作用が見出されてきた。リン脂質間の隙間の大きさは、脂肪酸の種類によって異なり、脂質膜変形タンパク質の膜変形能は脂肪酸組成によって制御されることが報告されている。脂質組成における頭部の種類と脂肪酸の多様性は、リン脂質間の隙間の大きさと膜の表面電荷に多様性を与える。
 このレビューでは、脂質の頭部と尾部の脂肪酸の多様性がどのように脂質膜変形タンパク質の膜変形能を調節しているか紹介している。

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2020/07/22

IgA腎症で変動するmicroRNAについてモデルマウスを用いて解析する方法

論文タイトル
Detection of microRNA Expression in the Kidneys of Immunoglobulin a Nephropathic Mice
論文タイトル(訳)
IgA腎症で変動するmicroRNAについてモデルマウスを用いて解析する方法
DOI
10.3791/61535
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (161), e61535, doi:10.3791/61535 (2020)
著者名(敬称略)
金子 昌平 他
所属
自治医科大学附属さいたま医療センター 腎臓内科

抄訳

IgA腎症は末期腎不全に至る原因不明の原発性糸球体腎炎である。近年、microRNAがIgA腎症の病態や発症に関与すると報告されており、将来の新規バイオマーカーや新規治療対象になり得ることから、今後のさらなる研究が必要とされる。しかし、ヒト腎臓をサンプルとする研究は侵襲が大きく、一方で小動物を用いて研究する方法は確立していない。我々はIgA腎症モデルマウス(HIGAマウス)を用いてIgA腎症とmicroRNAの関連について解析する方法を報告した。HIGAマウスの腎臓からtotal RNAを抽出し、逆転写PCR法を実施することにより、IgA腎症で変動するmicroRNAを定量的に評価する事が出来る。この方法によりヒト腎臓を採取することなくIgA腎症とmicroRNAの関連について解析することが可能となる。

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2020/07/22

SARS-CoV-2とインフルエンザA型ウィルスの重複感染

論文タイトル
Coinfection with SARS-CoV-2 and influenza A virus
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2とインフルエンザA型ウィルスの重複感染
DOI
10.1136/bcr-2020-236812
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 13, Issue 7
著者名(敬称略)
近藤 友喜 , 宮崎 晋一 他
所属
市立四日市病院 呼吸器内科

抄訳

 症例は57歳、日本人男性で、インフルエンザ罹患後の遷延する発熱にて当科入院となった。入院6日前、発熱、乾性咳嗽にて近医受診し、インフルエンザ迅速検査キットはA型が陽性であった。 抗インフルエンザ薬投与にも関わらず自覚症状の改善に乏しく、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査が陽性であったため入院対応となった。既往歴には異形狭心症、糖尿病があり、海外渡航歴、 濃厚接触歴はなかった。入院時、発熱、呼吸苦、味覚・嗅覚障害を認め、酸素飽和度は91%(室内気であった。採血上、白血球増多はなく、肝機能障害、CRP・フェリチン高値を認め、プロカルシトニン は陰性であった。胸部CTでは両肺野胸膜直下にスリガラス影を認め、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に矛盾しなかった。シクレソニド、ファビピラビルなどを投与し、自覚症状は軽快し、 入院1か月後、外来管理となった。
 SARS-CoV-2はインフルエンザウィルスと重複感染することは稀であり、単独感染と比較して、その臨床的特徴に差異は認められない。SARS-CoV-2の流行期では、他の病原体が検出されても、COVID-19の 可能性を常に考慮する必要がある。

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2020/07/09

転写因子NRF3はがん抑制因子をユビキチン非依存的に分解することでがん増悪を促進する

論文タイトル
NRF3-POMP-20S Proteasome Assembly Axis Promotes Cancer Development via Ubiquitin-Independent Proteolysis of p53 and Retinoblastoma Protein
論文タイトル(訳)
転写因子NRF3はがん抑制因子をユビキチン非依存的に分解することでがん増悪を促進する
DOI
10.1128/MCB.00597-19
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 40, Issue 10
著者名(敬称略)
和久 剛、小林 聡 他
所属
同志社大学大学院生命医科学研究科 遺伝情報研究室

抄訳

がん抑制因子の働きが失われる場合の多くはDNAに傷が入る遺伝子変異に起因すると考えられてきたが、近年ではがん抑制因子が遺伝子変異していない癌患者も数多く報告されてきている。しかし、そのような遺伝子変異を伴わないがん増悪メカニズムには不明な点が多く残されていた。本研究では、がん抑制因子の働きを阻害する新たながん遺伝子として転写因子NRF3(NFE2L3)を発見した。NRF3は大腸癌をはじめとする様々なヒト腫瘍組織で発現が上昇していた。またNRF3過剰発現によって腫瘍が大きくなり転移しやすくなることをマウス解析によって確認した。興味深いことに、NRF3はタンパク質分解酵素であるプロテアソームの活性を上昇させ、p53やRetinoblastomaなどのがん抑制因子のタンパク質をユビキチン非依存的に分解することを見出した。このように本研究では、NRF3は遺伝子変異ではなく、タンパク質分解活性を異常に高めることでがん抑制因子の機能を阻害することを明らかにした。

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2020/07/09

転写因子NFE2L1とNFE2L3は翻訳制御を介して癌細胞のプロテアソーム活性を補完的に維持する

論文タイトル
NFE2L1 and NFE2L3 Complementarily Maintain Basal Proteasome Activity in Cancer Cells through CPEB3-Mediated Translational Repression
論文タイトル(訳)
転写因子NFE2L1とNFE2L3は翻訳制御を介して癌細胞のプロテアソーム活性を補完的に維持する
DOI
10.1128/MCB.00010-20
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 40, Issue 14
著者名(敬称略)
和久 剛、小林 聡 他
所属
同志社大学大学院生命医科学研究科 遺伝情報研究室

抄訳

タンパク質分解酵素であるプロテアソームは、正常な細胞だけでなく癌細胞の生存や増殖にも必須である。我々はこれまでに、NFE2L1(NRF1)がプロテアソーム構成遺伝子を発現誘導する転写因子であることを報告してきた、また最近になり、そのホモログであるNFE2L3(NRF3)が腫瘍増大や転移促進に寄与することを発見し、NFE2L1とNFE2L3がプロテアソーム制御を介してがん増悪に関与する可能性を見出しつつあったが、その詳細は不明なままだった。本研究では、NFE2L3が翻訳調節因子CPEB3を直接転写することでNFE2L1の翻訳を制御し、癌細胞のプロテアソーム構成遺伝子の発現を補完的に維持していることを明らかにした。またNFE2L3-CPEB3-NFE2L1軸の異常が、プロテアソーム阻害作用を有する抗がん剤ボルテゾミブへの薬剤抵抗性や大腸癌患者の予後不良にも影響を及ぼすことを確認した。以上の本研究成果は、NFE2L3を標的とした新たな抗がん剤開発につながると期待できる。

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2020/07/09

芳香族化合物生産菌の育種に利用可能なプラスミド非依存型のフェニルアラニンおよびチロシン高生産大腸菌を作製するための染色体工学的手法

論文タイトル
Chromosome Engineering To Generate Plasmid-Free Phenylalanine- and Tyrosine-Overproducing Escherichia coli Strains That Can Be Applied in the Generation of Aromatic-Compound-Producing Bacteria
論文タイトル(訳)
芳香族化合物生産菌の育種に利用可能なプラスミド非依存型のフェニルアラニンおよびチロシン高生産大腸菌を作製するための染色体工学的手法
DOI
10.1128/AEM.00525-20
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 86, Issue 14
著者名(敬称略)
駒 大輔 他
所属
地方独立行政法人大阪産業技術研究所 環境技術研究部

抄訳

 フェニルアラニンおよびチロシン生産菌の開発では、合成経路の遺伝子発現にプラスミドが用いられるのが一般的である。一方、プラスミド非依存型の生産菌は培養コストと安全性の点で優れているが、目的物の収量や収率が低い。そこで本研究では、大腸菌の染色体DNAを改変し、プラスミド非依存型にもかかわらず優れた収量や収率を示す生産菌の作製を試みた。
 中央代謝経路とシキミ酸経路の10種類の遺伝子(aroAaroBaroCaroDaroEaroGfbraroLpheAfbrppsA、およびtktA)をT7lacプロモーターに連結して大腸菌の染色体へ導入したところ、当該菌株は非常に高い収量と収率でフェニルアラニンを生産した。導入したPheAfbr遺伝子をtyrAfbr遺伝子に変更することで、優れたチロシン生産菌を作製することにも成功した。さらに導入した10種類の遺伝子のうち、aroDaroE、およびaroLを除いた7種類が優れた菌株を作製するために必要な最小遺伝子セットであることを明らかにした。育種した生産菌は、チロソールやフェニル乳酸などを高生産するための有用な宿主として利用できることを実証した。

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2020/07/08

ラットにおけるStreptococcus mutans誘発性重度う蝕が及ぼす感染性心内膜炎に対する病原性の検討

論文タイトル
Contribution of Severe Dental Caries Induced by Streptococcus mutans to the Pathogenicity of Infective Endocarditis
論文タイトル(訳)
ラットにおけるStreptococcus mutans誘発性重度う蝕が及ぼす感染性心内膜炎に対する病原性の検討
DOI
10.1128/IAI.00897-19
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 88, Issue 7
著者名(敬称略)
野村 良太、又吉 紗綾、仲野 和彦 他
所属
大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)

抄訳

 う蝕の主要な病原細菌であるStreptococcus mutansは、感染性心内膜炎(Infective endocarditis; IE)の起炎菌でもある。心疾患患者では心内膜や弁膜に内皮傷害を生じやすく、侵襲的な歯科処置で生じる菌血症によって、IE発症リスクが高まることが知られている。S. mutansの菌体表層には、コラーゲン結合タンパク(Collagen-binding protein; CBP)を発現している株が存在し、内皮傷害部位に付着しやすいことからIEに対する病原性への関与が取りざたされている。本研究では、重度う蝕病変部に存在するCBP 陽性S. mutansが、歯冠の崩壊により露出した毛細血管を介して傷害を受けた心臓弁に到達し、IEを発症する可能性について検討した。
  18日齢のラットの口腔内にCBP陽性S. mutansを5日間連続して投与するとともに、スクロース56%配合う蝕誘発性飼料を常時与えることによりう蝕を誘発させた。その後、90日齢になったラットの右頸動脈より全身麻酔下にてカテーテルを挿入して大動脈弁に傷害を与えた。これらのラットでは長期的な飼育を行うほどう蝕が重症化し、心臓検体からS. mutansが分離される割合が増加した。特に、う蝕の進行により約半数の歯の歯冠が崩壊した場合に、心臓弁からS. mutansが分離されるリスクが有意に増加することが明らかになった。本研究結果から、心疾患患者において重度のう蝕病変を放置することは、IEの発症リスクを高めることが示唆された。

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2020/07/07

AMPKはSRSF1のリン酸化を介して選択的スプライシングを制御する

論文タイトル
AMP-activated protein kinase regulates alternative pre-mRNA splicing by phosphorylation of SRSF1
論文タイトル(訳)
AMPKはSRSF1のリン酸化を介して選択的スプライシングを制御する
DOI
10.1042/BCJ20190894
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Biochemical Journal Vol.477 No.12 (2237–2248)
著者名(敬称略)
松本 英里, 鈴木 司 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科

抄訳

 AMP-activated protein kinase (AMPK)は、細胞内のエネルギー恒常性に関与するセリン・スレオニンキナーゼである。近年、AMPKの活性化剤であるメトホルミンは選択的スプライシングに影響を与えることが報告されているものの、AMPKがどの基質を介して選択的スプライシングを制御するかに関しては不明であった。
 本論文では、AMPKの新たな基質としてスプライシング因子であるserine/arginine-rich splicing factor 1 (SRSF1)を同定した。AMPKはSRSF1のRNA認識モチーフ領域内に存在するSer133を直接リン酸化し、これによりRNA認識モチーフを介したSRSF1とRNAとの結合が抑制された。また、マクロファージ刺激タンパク質受容体をコードするRon遺伝子はSRSF1依存的に選択的スプライシング制御を受けるが、実際に、AMPKの活性状態の変化によってSRSF1を介したRon遺伝子のスプライシングパターンの変化も確認できた。
 これらの結果から、AMPKはSRSF1をリン酸化することでRNAとの結合を阻害し、選択的スプライシングを制御することが明らかとなった。

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2020/07/06

膵神経内分泌腫瘍において、オートファジー阻害剤クロロキンは小胞体ストレスを介してアポトーシスを誘導する

論文タイトル
Chloroquine induces apoptosis in pancreatic neuroendocrine neoplasms via endoplasmic reticulum stress
論文タイトル(訳)
膵神経内分泌腫瘍において、オートファジー阻害剤クロロキンは小胞体ストレスを介してアポトーシスを誘導する
DOI
10.1530/ERC-20-0028
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Vol.27 No.7 (431–439)
著者名(敬称略)
仲野 健三, 増井 俊彦 他
所属
京都大学肝胆膵・移植外科/小児外科

抄訳

オートファジー阻害剤のクロロキン(CQ)が神経内分泌細胞株の増殖を抑制する報告はあるが、そのメカニズムと高分化膵神経内分泌腫瘍に対する効果は明らかとなっていない。本研究では低分化、高分化膵神経内分泌腫瘍(PanNEN)におけるCQの増殖抑制メカニズムを検討した。PanNEN細胞株のMIN6, QGP-1にCQを投与するとアポトーシスが誘導された。電子顕微鏡画像で小胞体の拡張を認め、小胞体ストレス応答の主要経路であるPERK-eIF2α-ATF4経路のATF4、その下流のCHOPの発現亢進を認め、この経路を介したアポトーシスが示唆された。MIN6, QGP-1は遺伝子変異を伴う低分化神経内分泌癌株であることから、高分化PanNENにおける効果を検討するため、Men1+/ΔN3-8マウスにCQの誘導体であるヒドロキシクロロキン(HCQ)を投与したところ、腫瘍の縮小効果を認めた。HCQ投与群の腫瘍部ではCHOP陽性細胞が大部分を占め、アポトーシスが誘導されていた。これらの結果から、CQ/HCQは低分化および高分化のPanNENいずれにおいて小胞体ストレスを介したアポトーシスを誘導し、有効な治療法となる可能性が示唆された。

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2020/06/29

組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。

論文タイトル
Measurement of the AST to LD Ratio in Parathyroid Tissue Suspension Can Precisely Differentiate a
Hyperfunctioning Parathyroid
論文タイトル(訳)
組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。
(英文タイトルではLDHをLDと表記してある。)
DOI
10.1210/clinem/dgaa264
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.105 No.8 (dgaa264)
著者名(敬称略)
菊森 豊根 他
所属
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科

抄訳

原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療の際に、責任病変の摘出の確認は主に凍結切片の術中迅速病理検査により行われている。しかし、病理医不足は発展途上国で深刻であり、責任病変摘出の確認が容易に行えない。我々のグループは最近、正常副甲状腺の可能性がある組織の懸濁液中のAST/LDH(ともに一般生化学的検査項目であり、日常的に測定されている。)比が0.27より高い場合、その組織が副甲状腺であることを明らかにした(Kikumori et al. Surgery, 2020, p385-9)。
今回の研究では、副甲状腺機能亢進症を来す副甲状腺過形成や腺腫組織が懸濁液中のAST/LDH比により、副甲状腺組織と判別可能かを検討した。22名の原発性副甲状腺機能亢進症の症例で得られた副甲状腺過形成または腺腫を対象とした。他の組織のデータは以前の我々の報告を用いた(上記引用文献)。
この検討により、機能亢進状態の副甲状腺は懸濁液中のAST/LDH比が0.36より高い場合、100%の精度で他の組織と判別できることが示された。
この研究により、組織懸濁液中のAST/LDH比が迅速病理検査の代替として原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科治療の際の新たな責任病変確認手段となりうることが示された。

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2020/06/24

2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析

論文タイトル
Characterization of tick-borne encephalitis virus isolated from a tick in central Hokkaido in 2017
論文タイトル(訳)
2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析
DOI
10.1099/jgv.0.001400
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology Volume 101, Issue 5
著者名(敬称略)
髙橋 侑嗣、好井 健太朗 他
所属
長崎大学 感染症共同研究拠点 研究部門

抄訳

 ダニ媒介性脳炎はユーラシア大陸の広域で発生しているダニ媒介性の重要な人獣共通感染症です。日本では北海道において重症脳炎患者が発生し、疫学調査によって北海道を含む日本の各地で原因となるダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)が分布している可能性が示唆されていますが、北海道南部の一部地域以外からはウイルスは分離されていませんでした。
 今回、我々は札幌市付近の道央地域でマダニの捕集を行い、マダニからのTBEV分離を試みた所、札幌市内で捕集されたマダニからTBEVが分離されました。分離されたウイルス株の解析を行った所、以前に北海道南部で分離されたウイルス株とは異なる遺伝子グループに属する事が分かり、国内に複数回ウイルスが侵入している可能性が示されました。また病原性について解析した所、ウイルスの非構造蛋白領域の遺伝子の相違によって、脳内での病原性が影響を受ける事が明らかになりました。
 今回の研究成果は日本におけるTBEVの疫学的危険度を評価する上での重要な知見となるとともに、ウイルスの性状解析による予防・治療法開発の進展へとつながるものと考えられます。

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2020/06/22

ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす

論文タイトル
A Peptidoglycan Amidase Activator Impacts Salmonella enterica Serovar Typhimurium Gut Infection
論文タイトル(訳)
ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす
DOI
10.1128/IAI.00187-20
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 88, Issue 6
著者名(敬称略)
中村 奈央、三木 剛志 他
所属
北里大学薬学部 微生物学教室

抄訳

 サルモネラ属のネズミチフス菌は感染性胃腸炎の原因菌である。本菌は腸管内に定着することにより、感染を成立させるが、その定着メカニズムの全貌は明らかになっていない。これまでに、私たちはネズミチフス菌のペプチドグリカン(PG)アミダーゼに依存した細胞分裂が腸管内定着に寄与することを明らかにした。PGアミダーゼは特異的な活性化因子により制御されていることから、本研究では、ネズミチフス菌が保持するPGアミダーゼの活性化因子であるNlpDおよびEnvCがサルモネラの腸感染にどのような影響を及ぼすか否かを明らかにした。
 マウスを用いた感染実験より、EnvCを発現しないネズミチフス菌株(envC変異株)では野生株と比較して、腸管内定着レベルが減弱した。また、誘導される腸炎レベルも減弱していた。PGアミダーゼを発現しないネズミチフス菌株における腸管内定着レベルの減弱は、胆汁酸に対する抵抗能の減弱が原因であったが、驚いたことに、envC変異株では走化性運動の減弱が主な要因であった。
 本研究により、ネズミチフス菌の腸感染におけるPGアミダーゼ活性化因子の新たな役割が明らかになり、EnvCは本菌の腸感染を制御するためのターゲットとなる可能性が示唆された。

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2020/06/02

ワオキツネザルのメスを惹き付けるオスの匂い―霊長類のフェロモン様物質の同定に初めて成功―

論文タイトル
Key Male Glandular Odorants Attracting Female Ring-Tailed Lemurs
論文タイトル(訳)
ワオキツネザルのメスを惹き付けるオスの匂い―霊長類のフェロモン様物質の同定に初めて成功―
DOI
10.1016/j.cub.2020.03.037
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology April 16,2020
著者名(敬称略)
白須未香、伊藤聡美(以上筆頭著者)、今井啓雄、東原 和成(以上連絡著者)
所属
東京大学農学生命科学研究科 生物化学研究室(白須・東原) 京都大学霊長類研究所 ゲノム細胞研究部門(伊藤・今井)

抄訳

 多くの動物において、配偶者選択や同性間の縄張りあらそいなど、種の繁殖のために必須な行動には、体臭を介した嗅覚コニュニケーションが重要な役割を果たしています。我々は、特徴的な嗅覚コミュニケーションを行うワオキツネザルに注目し、ヒトを含む霊長類で初めて、異性を惹き付けるフェロモン様効果のある匂い物質の同定に成功しました。
 ワオキツネザルのオスは、手首の内側にある臭腺を自身の長い尻尾にこすりつけてその尻尾を大きくゆらし、メスへのアピールや他オス個体への威嚇を行います。我々は、行動観察により、メス個体が、繁殖期のオスの前腕腺分泌液の匂いをより長く、より注意深く嗅ぐ一方で、非繁殖期の分泌液にはあまり興味を示さないことを明らかにしました。
 次に、分泌液の成分分析を行い、繁殖期の分泌液中には、体内の男性ホルモン(テストステロン)の増加に伴い、フローラル・フルーティー様の香りを持つ三種類の長鎖アルデヒド群が増加していることを見出しました。さらに、これらの成分のみを染み込ませた綿球に対しては、繁殖期のメスのみが興味を示し、非繁殖期のメスは興味を示さないことが分かりました。すなわち、今回同定されたオスの繁殖期を特徴づける匂い成分が、メスを誘引するフェロモン様の匂いシグナルとして機能していることがわかりました。
 本成果は、未だ謎の多い霊長類の嗅覚コミュニケーションの実態を物質レベルで裏付ける最初の知見であると同時に、野生での絶滅が危惧されるワオキツネザルの繁殖管理や保全に役立つと考えられます。

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