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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2025/03/24

抗凝固療法下のBlack hole sign: Warfarinとdirect oral anticoagulantの比較

論文タイトル
Black Hole Sign under Anticoagulant Therapy: A Retrospective Comparison of Warfarin and Direct Oral Anticoagulants
論文タイトル(訳)
抗凝固療法下のBlack hole sign: Warfarinとdirect oral anticoagulantの比較
DOI
10.3174/ajnr.A8528
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology March 2025, 46 (3) 489-494
著者名(敬称略)
佐藤 広崇 他
所属
旭川医科大学 脳神経外科学講座
著者からのひと言
本研究は日々の臨床から着想した研究です。現場で働く多くの医療者従事者の方に読んで頂ければ幸いです。

抄訳

背景と目的: 脳内出血 (ICH) は抗凝固薬の最も重篤な副作用です。本研究はICHの血腫拡大を予測するBlack hole sign (BH)の頻度がワルファリン(Wf)とdirect oral anticoagulant (DOAC)の間で異なるという仮説を立て、検証しました。
方法: 本研究は抗凝固療法中に脳出血を発症した患者を対象としました。血腫体積はABC/2法で測定し、BHの有無は内服情報を知らない放射線科医が判定しました。本研究は血腫体積が 12.5 ml 以上増加した場合を「血腫拡大」と定義しました。
結果:多変量ロジスティック回帰分析の結果、脳室穿孔の有無 (p=0.02、オッズ比 (OR): 3.51、95% 信頼区間 (CI): 1.32 – 10.2) および BH (p<0.01、オッズ比: 4.86、95% CI: 1.73 – 14.3) が血腫拡大症例と非血腫拡大症例の間で有意差を認めました。BHの頻度はWf症例とDOAC症例間で有意差を認めました(p<0.01)。また、BHの有無はWf症例で血腫量の増加と関連していましたが(p=0.05)、DOAC症例では血腫量の増加と関連していませんでした(p=0.14)。
結語: BHはWf症例で頻繁に認めた。また、DOAC内服中のICH症例よりもWf内服中のICH症例の方が BHの信頼性が高いことを示した。

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2024/09/06

脳血管内治療における低線量モードButterfly CBCTの画質評価

論文タイトル
Image Quality Evaluation for Brain Soft Tissue in Neuro -endovascular Treatment by Dose-reduction Mode of Dual-axis “Butterfly” Scan
論文タイトル(訳)
脳血管内治療における低線量モードButterfly CBCTの画質評価
DOI
10.3174/ajnr.A8472
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Accepted Manuscripts
著者名(敬称略)
細尾 久幸 他
所属
筑波大学附属病院 脳卒中科/筑波大学 医学医療系 脳卒中予防治療学講座
著者からのひと言
同一平面上のみならず垂直方向の振り子状の動きも加わった撮像法Butterfly CBCTは、従来のCBCTと比較し画質が向上した。本撮像法は、若干高線量であったため、今回線量低減モードを用いた。結果、線量が減ってもアーティファクト軽減、後頭部を除くコントラスト改善がみられた。これら結果から、例えば早期脳虚血性変化検出には通常モード、出血性合併症検出には70%線量、複数回治療や小児では50%線量を選択するなど、目的に応じた使い分けを提案する。

抄訳

【背景】脳血管内治療において出血性合併症を検出のため、Flat panel CBCTによるCT like imageの撮像は必須である。従来のCBCTと比較し、1軸平面に加え、垂直方向の振り子様の動きも加わったButterfly CBCTでは、画質が向上したが若干高線量だった。本研究では、線量を低減したButterfly CBCTの画質を評価した。【方法】予定脳血管内治療症例で、70%線量と50%線量Butterfly CBCTに振り分け、従来のCBCTと画質を比較した。【結果】20例ずつ計40例。従来のCBCTと比較し70%線量Butterflyではアーティファクト軽減、コントラストおよび皮髄境界識別能改善がみられた。50%線量ではアーティファクト軽減、後頭部を除くコントラスト軽減は認めたが、皮髄境界識別能は改善なかった。【結論】線量を低減しても、Butterfly CBCTの軌道により、アーチファクト軽減、コントラスト向上、皮髄境界識別能の改善を認めた。しかし、特に骨の干渉のある後頭部においては、コントラストや皮髄境界識別能に、線量低減の影響がみられた。

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2024/07/10

頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症に対する最適な治療手技

論文タイトル
Optimal endovascular therapy technique for isolated intracranial atherothrombotic stroke-related large vessel occlusion in the acute to subacute stage
論文タイトル(訳)
頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症に対する最適な治療手技
DOI
10.3174/ajnr.A8399
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology July 2024
著者名(敬称略)
別府 幹也 内田 和孝 他
所属
別府 幹也:済生会野江病院
内田 和孝:兵庫医科大学 脳神経外科
著者からのひと言
現時点では、ICAD-LVOに対する最適な治療手技は確立していません。一方、機械的血栓回収のみでは、すぐに再閉塞をきたす症例を経験することもあります。本研究は、GP IIb/IIIa阻害薬が未承認である我が国においてのリアルワールドの結果を反映していると考えています。この研究結果が臨床医の一助になれば幸いです。

抄訳

背景と目的
欧米と比較し頻度の高い頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症(ICAD-LVO)に対する血管内治療 (EVT)は、機械的血栓回収術 (MT)無効例が多く、開通しても早期再閉塞率が高いため、最適な治療手技は確立していない。本研究では、日本国内において、頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症(ICAD-LVO)に対する最適な血管内治療 (EVT)検討した。
方法と対象
2017年1月から2019年12月の間、国内51施設で行われた多施設共同観察研究で、Tandem Groupを除く509例を対象とした。EVT治療手技を、MT単独 (MT-only)、経皮的血管形成術 (PTA)、ステント留置術 (Stent)の3群に分類した。EVT中に一度でもPTAを施行した群はPTA群、手技中にStentを留置した群はStent群に分類した。主要評価項目は、EVT後90日以内の治療血管の再閉塞、副次評価項目は治療直後の再開通率、90日後の転帰、90日以内の頭蓋内出血とした。
結果
MT-only群(207例)、PTA群(226例)、Stent群(76例)に分類し比較検討した。患者背景は心不全の既往や、M2閉塞はMT-only群で多く、VA閉塞は、Stent群で多かった 。抗血小板薬は、発症後、特に治療中に抗血小板薬を追加した症例がPTA群、Stent群で多かった。70%以上の残存狭窄は、MT-only群で多く、術中合併症は、PTA群、Stent群で多かった。主要評価項目である再閉塞は、MT-only群で多く、MT-only群に対するPTA群の調整ハザード比は0.48(95%信頼区間0.29–0.80)であった。また再閉塞患者の83.5%は、治療10日以内に再閉塞し、特に62%の患者は治療2日以内に再閉塞を認めた。副次評価項目である治療直後のTICI 2b以上の有効再開通率は、PTA群、Stent群で高く、90日後の転帰や頭蓋内出血は、3群間で有意差がなかった。
結語
ICAD-LVOに対するEVTにおいて、PTA群は有意に再閉塞率が低かった。GP IIb/IIIa阻害薬が未承認である我が国において、ICAD-LVOと診断した場合は、PTAが第一選択肢になり得る。また、再閉塞患者の62%は、2日以内に再閉塞するため、ICAD-LVOを疑えば、できるだけ早期に抗血小板薬を開始することが望まれる。

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2024/06/24

3D-FIESTAを用いた嗅球測定のパーキンソン病と非典型パーキンソン症候群の鑑別における有用性

論文タイトル
Usefulness of Olfactory Bulb Measurement in 3D-FIESTA in Differentiating Parkinson Disease from Atypical Parkinsonism
論文タイトル(訳)
3D-FIESTAを用いた嗅球測定のパーキンソン病と非典型パーキンソン症候群の鑑別における有用性
DOI
10.3174/ajnr.A8275
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology June 2024
著者名(敬称略)
井手 智 他
所属
産業医科大学 放射線科学講座
著者からのひと言
この論文の新規性は、嗅球の面積計測が日常診療で遭遇するさまざまなパーキンソン症候群とパーキンソン病の鑑別に有用であること、さらに病初期においても鑑別が可能であることを示した点にある。嗅球面積測定は簡便な手法であり、3D-FIESTAは約2分で撮像が可能であるため、パーキンソニズムの精査におけるMRI検査に組み入れることができる。臨床的あるいは通常の画像診断でパーキンソン症候群との鑑別が難しい症例において、診断の一助となることが期待される。

抄訳

本研究はパーキンソン病(PD)で病初期から嗅覚障害を生じることに注目し、MRIによる嗅球萎縮の評価が非典型パーキンソン症候群(AP)との鑑別において有用であることを示した研究である。108名のPD、13名の皮質基底核症候群(CBS)、15名の多系統萎縮症(MSA)、17名の進行性核上性麻痺(PSP)、および39名の年齢を一致させた健常群を対象に、3D-FIESTAで嗅球面積の計測およびグループ間比較を行った。結果として、PDでは平均4.2 mm²で、健常群(6.6 mm²)、CBS(5.4 mm²)、MSA(6.5 mm²)、PSP(5.4 mm²)よりも有意に小さいことが判明した。さらに、本態性振戦などの非変性パーキンソン症候群との比較でも、PDでは嗅球面積が有意に小さかった。ROC解析で、嗅球面積の測定はPDとAPの鑑別において高い診断精度を示し、AUCは0.87、最適カットオフ値は5.1 mm²、偽陽性率は18%であった。発症から2年以内の症例でも、PDの嗅球面積はAPよりも有意に小さかった。本研究の結果から、3D-FIESTAによる嗅球面積の計測はPDとAPを区別するための有望な手法であることが示唆された。

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2024/05/20

頭蓋底腫瘍に対するdistal balloon protection techniqueを用いた内頸動脈由来栄養動脈の塞栓術について

論文タイトル
Tumor Embolization via the Meningohypophyseal and Inferolateral Trunk in Patients with Skull Base Tumors Using the Distal Balloon Protection Technique
論文タイトル(訳)
頭蓋底腫瘍に対するdistal balloon protection techniqueを用いた内頸動脈由来栄養動脈の塞栓術について
DOI
10.3174/ajnr.A8169
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology May 2024, 45 (5) 618-625
著者名(敬称略)
山城 慧 他
所属
福岡大学 医学部 脳神経外科
(研究時所属:藤田医科大学 岡崎医療センター 脳神経外科)
著者からのひと言
頭蓋底腫瘍の多くは腫瘍摘出によって治療されますが、血流豊富な腫瘍では腫瘍摘出前に栄養動脈を塞栓することがあります。本論文では頭蓋底腫瘍に対する腫瘍塞栓術の中でも、特に塞栓が難しく合併症リスクの高い内頸動脈由来腫瘍栄養動脈の塞栓術に関する新しい手術方法について論じています。本論文の方法を用いることで、頭蓋底腫瘍における術前塞栓の適応が広がることが期待されます。

抄訳

【目的】頭蓋底腫瘍はしばしばmeningohypophyseal trunk (MHT)やinfelolateral trunk (ILT)由来の栄養血管を有しているが、通常これらの血管は強く蛇行しており、マイクロカテーテルの挿入が難しい。我々は以前より、MHTやILTに対してカテーテル挿入ができない場合でも対応できるようdistal balloon protection techniqueを用いて腫瘍塞栓術を行ってきた。本研究ではその有効性と合併症リスクについて報告する。
【方法】2010年から2023年の間に藤田医科大学で頭蓋底腫瘍に対してdistal balloon protection techniqueを用いてMHTまたはILTの術前塞栓術を行った患者を対象とした。この手技では、眼動脈分岐部でバルーンを用いて内頸動脈を一時的に閉塞させた上でマイクロカテーテルをMHTまたはILT近傍まで誘導して塞栓粒子を対象血管に向けて注入し、内頸動脈に逆流した塞栓粒子を吸引した後に内頸動脈遮断を解除した。
【結果】21回の手術で合計25本のMHTとILTが塞栓された。これら25本の動脈のうちマイクロカテーテルが挿入できたのは9本(36.0%)のみであったが、全例(100%)で効果的な塞栓が確認された。永続的合併症は1例(4.8%)のみで、ILT塞栓例で網膜中心動脈が閉塞し視野欠損が生じた。塞栓性脳梗塞に起因する永続的合併症は観察されなかった。
【結論】Distal balloon protection techniqueを用いることで対象血管にカテーテルを挿入しなくても十分な塞栓効果が得られ、本法はMHTやILTにカテーテルが挿入できない場合のsalvage techniqueとして有用と考えられる。 

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2022/12/23

ダイナミック造影MRIパラメータと正規化ADC値による上咽頭癌と頭蓋底骨髄炎の鑑別

論文タイトル
Dynamic Contrast‐Enhanced MRI Parameters and Normalized ADC Values Could Aid Differentiation of Skull Base Osteomyelitis from Nasopharyngeal Cancer
論文タイトル(訳)
ダイナミック造影MRIパラメータと正規化ADC値による上咽頭癌と頭蓋底骨髄炎の鑑別
DOI
10.3174/ajnr.A7740
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
December 2022
著者名(敬称略)
馬場 亮 他
所属
ミシガン大学放射線科神経放射線部門/東京慈恵会医科大学放射線医学講座

抄訳

背景と目的
頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌との鑑別は時に困難である。本研究ではダイナミック造影MRIと正規化ADC値を用いて頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌の違いを検討することを目的とした。
材料と方法
本研究では治療前にダイナミック造影MRIと拡散強調像が施行された頭蓋底骨髄炎8例と上咽頭癌12例を対象とした。
関心領域におけるダイナミック造影MRIの定量的パラメータとADC値を解析した。正規化ADC値は病変部の値を正常脊髄の値で割ることによって算出した。
結果
頭蓋底骨髄炎の1分間あたりの細胞外血管外腔と血漿の間の移行速度定数(Kep)は上咽頭癌より有意に低かった(中央値0.43 vs 0.57; p = 0.04)。Kepの最適カットオフ値は0.48であった(曲線下面積0.78; 95%信頼区間0.55−1)。頭蓋底骨髄炎の正規化平均ADC値は上咽頭癌よりも有意に高かった(中央値1.9 vs 0.87; p < 0.001)。正規化平均 ADC値 の最適カットオフ値は 1.55 であった(曲線下面積0.96; 95%信頼区間0.87−1)。
ダイナミック造影MRI(Kepと細胞外血管外腔の割合[Ve])の組み合わせの曲線下面積は0.89(95%信頼区間0.73-1)、ダイナミック造影MRIのパラメータと正規化平均ADC値の組み合わせの曲線下面積は0.98(95%信頼区間0.93-1)であった。
結論
ダイナミック造影MRIの定量的パラメータと正規化ADC値は頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌の鑑別に有用な可能性がある。ダイナミック造影MRIの定量的パラメータと正規化ADC値の組み合わせはそれぞれを単独で使用した場合よりも優れていた。

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2022/07/28

ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別

論文タイトル
Normalized Parameters of Dynamic Contrast-Enhanced Perfusion MRI and DWI-ADC for
Differentiation between Posttreatment Changes and Recurrence in Head and Neck Cancer
論文タイトル(訳)
ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別
DOI
10.3174/ajnr.A7567
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Volume 43, Issue.7 (July 2022)
著者名(敬称略)
馬場 亮 他
所属
ミシガン大学放射線科神経放射線部門/東京慈恵会医科大学放射線医学講座

抄訳

【背景と目的】
頭頸部癌の画像検査による経過観察において、良性の治療後変化と再発の鑑別は臨床的に重要である。本研究の目的は正規化したdynamic contrast-enhanced MRI(DCE-MRI)とADCによる両者の鑑別の有用性を検討することである。
【患者と方法】
本研究ではDWI-ADCによる経過観察目的のDCE-MRIを受けた頭頸部癌の既往がある患者51名(25名が再発、26名が良性の治療後変化)を対象とした。 関心領域と参照領域の定量的、半定量的DCE-MRIパラメータとADCを解析した。正規化DCE-MRIパラメータと正規化DWI-ADCパラメータは関心領域を参照領域で割ることにより算出した。
【結果】
正規化した血漿の占める容積の割合(Vp)、細胞外血管外腔と血漿との間の体積移動定数(Ktrans)、曲線下面積(AUC)、wash in (WI)(nVp、nKtrans、nAUC、nWI)は再発が良性治療後変化より有意に高値であった(p = 0.003 - <0.001)。 正規化平均ADCは再発が良性治療後変化より有意に低値であった(p<0.001)。有意差のある正規化DCE-MRIパラメータ(nVp、nVe、nKtrans、nAUC、nWI)とnADCmeanの組み合わせの受信者動作特性曲線下面積は、0.97(95%信頼区間、0.93-1)であった。
【結論】
正規化DCE-MRIパラメータ、nADCmeanおよびそれらの組み合わせは頭頸部癌の再発と良性治療後変化を鑑別するのに有用であった。

 

 

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2022/06/16

MRI ADC値は血栓回収術を行った症例におけるDWI reversalに関連する(後方視的コホート研究)

論文タイトル
ADC Level is Related to DWI Reversal in Patients Undergoing Mechanical Thrombectomy: A Retrospective Cohort Study
論文タイトル(訳)
MRI ADC値は血栓回収術を行った症例におけるDWI reversalに関連する(後方視的コホート研究)
DOI
10.3174/ajnr.A7510
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Volume 43, Issue 6(2022)
著者名(敬称略)
梅村 武部、波多野 武人 他
所属
小倉記念病院 脳神経外科

抄訳

 一般的に急性期脳梗塞におけるMRI DWI高信号領域は、脳梗塞として不可逆性変化を来しているものと考えられる。そのため超急性期の主幹動脈閉塞例では、DWI高信号となっていない領域の救済目的に血栓回収術が行われる。しかし実臨床では主幹動脈再開通症例で術後DWI高信号が改善している例を時折認める。DWI 画像の高信号域はADC値による質的診断が可能である。
 本研究では、脳梗塞急性期において血栓回収術により有効再開通が得られた症例について、初回MRI におけるDWI 高信号領域が術後改善するかどうかを、術翌日のMRI DWI画像で判定した。初回DWI高信号領域のADC 値を全て測定し、術後に改善した症例とそうでない症例の間にADC値の差があるかどうかを調査した。ADC 値 (領域平均値) は 520 × 10-6mm2/s をカットオフ値とし、この値より高ければ再開通により高信号は改善し、その領域の神経学的機能も取り戻すことがわかった。
 今回の研究により、DWI 高信号領域はADC値 (領域平均値) が520 × 10-6mm2/s以上であれば、まだ不可逆性の変化を来しておらず、再開通治療による救済可能であり神経細胞のviabilityが残っていることが示唆された。

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2022/02/08

高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化

論文タイトル

An Investigation of Water Diffusivity Changes along the Perivascular Space in Elderly Subjects
with Hypertension

論文タイトル(訳)
高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化
DOI
10.3174/ajnr.A7334
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 43 No.1
著者名(敬称略)
菊田 潤子 他
所属
順天堂大学医学部附属順天堂医院

抄訳

近年、脳内の老廃物排泄機構としてのGlymphatic system仮説が注目されている。Glymphatic systemは、脳脊髄液が動脈の血管周囲腔から脳実質内に流入し、間質液との交換とともに脳実質内の老廃物を洗い流し、静脈血管周囲腔から排泄するという仮説である。本研究は高血圧患者の血管周囲腔に沿った水拡散係数(The analysis along the perivascular space index:ALPS index)の変化を調査した。まず、高血圧患者群63例、対照群63例の頭部MRIの拡散強調画像を用いて、左右大脳半球とその平均値のALPS indexを算出した。次に、高血圧患者群と対照群のALPS indexの群間比較を行った。さらに、すべての被験者の左右大脳半球、およびその平均値のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、脈圧値の相関関係を調査した。その結果、高血圧患者群は対照群と比較して左大脳半球と平均ALPS indexが有意に低く(P <0.05)、左右大脳半球とその平均のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、および脈圧値に有意な負の相関がみられた。本研究は、高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化を認め、高血圧症がGlymphatic systemの障害を引き起こす可能性が示唆された。

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2021/08/17

頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価

論文タイトル
Assessment of MR Imaging and CT in Differentiating Hereditary and Nonhereditary Paragangliomas
論文タイトル(訳)
頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価
DOI
10.3174/ajnr.A7166
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 42 No.7
著者名(敬称略)
太田 義明 他
所属
ミシガン大学神経放射線

抄訳

背景: 頭頸部の傍神経節腫は,コハク酸脱水素酵素ファミリーの遺伝子変異と関連することが報告されている。本研究は、頭頸部の傍神経節腫におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異を従来型C TとM R Iの画像的特徴や拡散強調画像により検出できるかどうかを評価したものである。 方法: 2015年1月から2020年1月の観察期間で、48病変(コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陽性30病変、コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陰性18病変を対象とした。従来型CTとMRIの画像的特徴とADC値を上記2群間で比較した。診断性能における2群間の差はt-testを用いて評価した。P値<.05を有意とした。 結果: ADCの平均値と最大値、正規化されたADCの平均値と最大値に2群間で統計的な有意差が認められた。従来型C TとM R Iの画像的特徴やA D Cの最小値、正規化されたADC値には有意差は認められなかった。 結論: ADC値は、頭頸部のコハク酸デヒドロゲナーゼ変異陽性を検出できる画像バイオマーカーである。

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