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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2026/01/13

周波数領域サーモリフレクタンス法による熱物性測定

論文タイトル
The Frequency Domain Thermoreflectance Technique for Thermal Property Measurements
論文タイトル(訳)
周波数領域サーモリフレクタンス法による熱物性測定
DOI
10.3791/68908-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (226), e68908
著者名(敬称略)
Alesanmi R. Odufisan(Northwestern University)、 塩見 淳一郎(東京大学) 他
所属
東京大学 工学系研究科 総合研究機構/機械工学専攻 熱エネルギー工学研究室/塩見・李・浅野研究室
著者からのひと言
FDTR法は,レーザー光を用いて材料に触れることなく,非常に小さな領域で熱の伝わり方を調べることができる計測手法です.サーモリフレクタンス法は近年,広く用いられるようになっていますが,本論文ではFDTR法を実際に運用するための基本的な測定手順や注意点を整理し,材料の境界部分において熱の流れがどのように変化するかを具体例とともに紹介しています.FDTR装置の新規導入や測定条件の検討を行う際の参考資料としてご活用いただければ幸いです.

抄訳

周波数領域サーモリフレクタンス(FDTR)法は,材料の熱物性を非破壊かつマイクロスケールの空間分解能で評価できる光学的計測手法である.本手法では,周波数変調したポンプレーザーによって試料表面に周期的な温度変化を与え,プローブレーザーを用いてその局所的な熱応答を検出する.得られた信号を熱輸送モデルに基づいて解析することで,試料の熱伝導率などの熱物性を評価できる.本論文では,FDTR法の実装方法や局所熱伝導率測定の具体的な手順を体系的に解説するとともに,レーザー条件が測定結果に与える影響や誤差要因,不確かさの評価について詳述する.さらに,具体例として単結晶シリコン基板間の界面近傍を対象とした熱伝導率イメージングを行い,界面が局所的な熱輸送特性に影響を与える様子を可視化する.FDTR法は,熱電材料などにおける界面熱抵抗の理解や,材料・デバイス設計の高度化に貢献するものである.

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2026/01/07

カルバペネム耐性非発酵グラム陰性桿菌による人工呼吸器関連肺炎マウスモデルにおけるセフィデロコルの有効性と薬物動態学的評価

論文タイトル
Efficacy of cefiderocol in murine models of ventilator-associated pneumonia caused by carbapenem-resistant non-fermenting Gram-negative bacilli, with pharmacokinetic evaluation
論文タイトル(訳)
カルバペネム耐性非発酵グラム陰性桿菌による人工呼吸器関連肺炎マウスモデルにおけるセフィデロコルの有効性と薬物動態学的評価
DOI
10.1128/spectrum.02568-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
太田 賢治 賀来 敬仁 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学
著者からのひと言
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は重症度および死亡率が高く、迅速かつ適切な抗菌薬治療が重要な病態です。しかし、カルバペネム耐性緑膿菌やアシネトバクター属菌が原因菌となる場合、有効な治療選択肢は極めて限られます。本研究では、カルバペネム耐性菌にも有効なセフィデロコルの有効性を薬物動態の観点を含めて検証し、原因菌により必要な投与量が異なる可能性を示しました。動物実験ではありますが、本研究成果が治療困難な薬剤耐性菌感染症に対する治療戦略構築において活用されることを期待しています。

抄訳

本研究では、カルバペネム耐性Pseudomonas aeruginosa(CR-Pa)および Acinetobacter baumannii(CR-Ab)を用いて人工呼吸器関連肺炎(VAP)マウスモデルを構築し、新規抗菌薬であるセフィデロコルの有効性を評価した。セフィデロコルの投与設計は薬物動態解析に基づき、血中遊離薬物濃度が各菌の最小発育阻止濃度(MIC)を上回る時間(fT>MIC)を指標とした。fT>MIC 70%で投与量を設定した場合、CR-Ab感染VAPモデルでは生存率の改善および肺内菌量の有意な減少が認められた。一方、CR-Pa感染VAPモデルでは同条件で十分な殺菌効果は得られず、fT>MIC 90%以上で明確な菌量減少が確認された。本研究は、原因菌によって必要なセフィデロコル投与量が異なる可能性を示し、PK/PDに基づく合理的な治療戦略構築に重要な知見を提供する。

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2026/01/06

2023~2025年における日本・東京での二系統薬剤耐性Mycoplasma genitaliumの拡大

論文タイトル
Spread of dual-class drug-resistant Mycoplasma genitalium in Tokyo, Japan, 2023–2025
論文タイトル(訳)
2023~2025年における日本・東京での二系統薬剤耐性Mycoplasma genitaliumの拡大
DOI
10.1128/aac.01367-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
大町竜羽 今井一男 他
所属
埼玉医科大学病院 臨床検査医学 (中央検査部)
著者からのひと言
Mycoplasma genitaliumは性感染症の1種で、近年は不妊や早産との関連が報告されており、公衆衛生上の重要性が高まっています。薬剤耐性、とりわけキノロン系薬剤に対する高度耐性を有するクローンが拡大した場合、治療は極めて困難となります。本研究の結果は、薬剤耐性率の動向把握に加え、遺伝子型解析を含めた継続的な監視体制の構築の必要性、ならびに性感染症領域におけるさらなる抗菌薬適正使用推進が早急に求められていることを示しました。

抄訳

マクロライド耐性関連変異(MRMs)およびフルオロキノロン耐性関連変異(QRMs)を有する Mycoplasma genitalium(MG)の増加は世界的な問題であるが、日本における耐性状況や遺伝的多様性に関する情報は限られている。本研究では、2023~2025年に東京で採取されたMG陽性患者162例188検体を対象に、耐性変異解析、mgpBおよびMG309による分子疫学解析、ならびに治療成績との関連を検討した。その結果、MRMsは94.4%、QRMsであるparC変異は93.7%、gyrA変異は22.5%に認められ、MRMsとQRMsを併せ持つ二系統薬剤耐性株は89.4%を占めた。parCおよびgyrA変異を有する高度キノロン耐性株に対するキノロン治療失敗率は52.4%と高率であった。さらに、mgpBアリル79、140、161、184を有する耐性クローンの出現が確認された。以上より、東京における二系統薬剤耐性株の拡大が示され、継続的な分子監視と抗菌薬適正使用の重要性が示唆された。

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2026/01/06

免疫不全状態の日本人患者から分離された新規 Mycobacterium 属(新種)の完全ゲノム配列

論文タイトル
Complete genome sequence of a new Mycobacterium sp. nov. from a compromised Japanese individual
論文タイトル(訳)
免疫不全状態の日本人患者から分離された新規 Mycobacterium 属(新種)の完全ゲノム配列
DOI
10.1128/mra.00421-25
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
浅井信博 三鴨廣繁 他
所属
愛知医科大学医学部 臨床感染症学講座

抄訳

本報告は、血液悪性腫瘍を有する免疫不全の日本人患者から分離された新規Mycobacterium(strain AMU20-3851;“Mycobacterium nagakutense”として言及)の完全ゲノム配列を提示するアナウンスメントである。菌は血液培養(約90時間)で検出され、Ogawa培地で培養後、フェノール/クロロホルム法でDNA抽出し、PacBio Sequel II(HiFi/CCS)でシーケンスを実施した。得られたHiFiリードをhifiasmでアセンブルし、dnaA開始に調整、NCBI PGAPで注釈付けした。染色体は6,056,820 bp、G+C 68%で、5,822遺伝子を予測し、平均311×の深度で決定された。ANI解析では近縁種(M. diernhoferi 90.5%など)と種境界以下であり、新種の比較ゲノム・系統解析の基盤データとなる。データはGenBank(GCF_043974665.1)等に登録済みである。

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2026/01/05

放射線治療晩期障害として生じた肋骨骨折を契機に発生したchronic expanding hematomaの一例

論文タイトル
Chronic expanding haematoma caused by rib fractures after radiation therapy
論文タイトル(訳)
放射線治療晩期障害として生じた肋骨骨折を契機に発生したchronic expanding hematomaの一例
DOI
10.1136/bcr-2025-268331
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 18, Issue 12
著者名(敬称略)
永田宗大 他
所属
東京大学医学部附属病院 心臓外科・呼吸器外科
著者からのひと言
chronic expanding hematomaは完全切除が望ましいとされるが、手術侵襲は大きく周囲臓器の損傷などの合併症の懸念もある。放射線由来のCEHの手術方法の選択には、原疾患に対して放射線治療を選択した経緯や耐術能も念頭に置く必要がある。本症例では神経症状の改善を目的としたアプローチにより良好な経過を得ることができた。今後の治療選択の一助となることを期待する。

抄訳

chronic expanding hematoma(CEH)は緩徐に増大する血腫と定義され、多くは慢性感染症や外科手術を契機に発生する。今回、放射線治療後の晩期障害として生じた肋骨骨折を契機に、左胸郭出口部に発生したCEHの手術症例を経験した。血腫による腕神経叢の圧排に伴う手指尺側の痺れ症状を呈しており、画像精査及び生検を行いCEHと診断された。三次元CTでのシミュレーションをもとに、左鎖骨上窩に小切開をおき、鏡視下併用で血腫を確認し被膜を含め可及的に除去しえた。術直後より神経症状は改善し現在、術後1年経過も血腫の再発は認めていない。

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2026/01/05

短腸症候群を有する小児に生じた症候性ビタミンA欠乏症

論文タイトル
Symptomatic vitamin A deficiency in a paediatric patient with short bowel syndrome
論文タイトル(訳)
短腸症候群を有する小児に生じた症候性ビタミンA欠乏症
DOI
10.1136/bcr-2025-268985
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 18, Issue 12
著者名(敬称略)
髙橋 達也 他
所属
国立成育医療研究センター神経内科
著者からのひと言
先進国ではまれと考えられがちなビタミンA欠乏症が、短腸症候群の小児では実臨床で失明リスクを伴う現実的な問題となり得ることを示した重要な症例です。とくに「TPNやSPNをしていれば安全」という思い込みへの警鐘として、夜盲や結膜乾燥といった初期眼症状を見逃さず、即座に血清レチノールを測定する実践的メッセージが臨床医に強く響く論文です。

抄訳

【背景】短腸症候群(short bowel syndrome: SBS)では脂溶性ビタミンの欠乏が生じやすいが、先進国において症候性ビタミンA欠乏症はまれである。
【症例】思春期早期の男児。ヒルシュスプルング病類縁疾患であるHypoganglionosis(腸管神経節細胞僅少症)に対する手術後に重症SBSとなり、乳児期より在宅補助的静脈栄養(SPN)を継続していた。夜盲を主訴に受診し、結膜乾燥およびビトー斑を認めた。血清レチノール値は4.2 µg/dLと著明低値であったが、ビタミンD・E・Kは正常範囲内であった。
【治療と経過】吸収障害を考慮し、ビタミンA 10万IUを筋注で1・2日目および2週後に投与したところ、夜盲および眼所見は速やかに改善した。
【考察】SBSでは胆汁酸依存性が最も高いビタミンAが選択的に欠乏しやすく、SPN施行中であっても症候性欠乏を来す可能性がある。眼症状を契機とした早期診断と迅速な補充療法が失明予防に重要である。

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2026/01/05

標準的リガンド結合ドメイン内のEGF特異的O-グルコース糖鎖伸長構造の違いはDLL1/4 - NOTCH1シグナル伝達を制御する

論文タイトル
Differential O -glucose elongation on a specific EGF repeat within the canonical ligand–binding domain regulates DLL1/4-NOTCH1 signaling
論文タイトル(訳)
標準的リガンド結合ドメイン内のEGF特異的O-グルコース糖鎖伸長構造の違いはDLL1/4 - NOTCH1シグナル伝達を制御する
DOI
10.1073/pnas.2504827122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.43 e2504827122
著者名(敬称略)
塚本 庸平 竹内 英之 他
所属
静岡県立大学薬学部 生化学分野
著者からのひと言
糖鎖生物学の観点で見ると、タンパク質上の糖鎖構造として本論文で報告したNeu5Ac-Galactose-Glucoseという構造は、我々の知る限り、これまでに知られていなかったものである。さらにこの構造を合成するのはラクトース合成酵素のB4GALT1であることが明らかになったが、一般的にその際に必要となるラクトアルブミンの非存在下でも、この構造は合成されることも明らかになった。Notch受容体研究の観点では、たった一か所の糖鎖修飾の変化がNotchシグナルを大きく変化させることを報告している。このように糖鎖生物学、Notch受容体研究の両面で興味深い発見を報告している。

抄訳

Notchは多細胞生物の発生、分化、恒常性に重要なシグナル伝達受容体である。Notchは細胞外に多数の上皮増殖因子 (EGF) 様リピートと呼ばれる構造を持つ。このNotchの機能はEGFに存在する複数の翻訳後修飾に制御されていることが知られている。その一つであるO-グルコース糖鎖はこれまでキシロース二残基により伸長されることが知られていた。しかし、筆者らは、精密な質量分析法を用いて、O-グルコースがガラクトースとN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)によっても伸長されうることを発見した。この新たに発見した構造はNOTCH1とNOTCH3の特定のEGFのみに付加する。さらに、EGF内の糖鎖修飾部位ではない特定のアミノ酸に強く依存して存在していることが明らかになった。この構造の機能として、NotchとNotchリガンドであるDLL1およびDLL4との結合を抑制し、Notchシグナルを抑制していることが明らかになった。さらに、リンパ球前駆体細胞においては、DLL1およびDLL4によるNotchシグナル依存的なT細胞への分化を抑制することも明らかになった。これらの発見はO-結合型糖鎖修飾による複雑なNotch受容体制御機構の理解に貢献する。

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2025/12/22

生体イメージングで捉える関節内白血球の動態解明

論文タイトル
In Vivo Imaging Uncovers the Migratory Behavior of Leukocytes within the Joints
論文タイトル(訳)
生体イメージングで捉える関節内白血球の動態解明
DOI
10.3791/68091-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (226), e68091
著者名(敬称略)
宮部 千恵 宮部 斉重 他
所属
聖マリアンナ医科大学 免疫学・病害動物学 宮部研究室
著者からのひと言
本動画論文の最大の魅力は、「論文を読むだけでは分からない細胞の動き」を実際に目で見て理解できる点にあります。関節という観察が難しい臓器での免疫細胞挙動を、手技・セットアップ・解析まで含めて動画で学べるため、研究室への導入や再現性の高い実験系構築に直結します。インビボイメージングに興味をもち、関節炎研究、免疫学、創薬評価に携わる研究者にとって、実践的なコンテンツです。

抄訳

関節炎研究において、免疫細胞が関節へどのように遊走・浸潤し、炎症を形成するのかを「生きたまま」観察することは長年の課題であった。本論文では、独自に確立した関節内インビボイメージング技術を用い、マウス関節内における白血球の動態をリアルタイムかつ高解像度で可視化する手法を詳細に紹介している。本動画を通じて、白血球の血管外遊走、関節組織内での遊走様式、炎症環境に応じた挙動変化を視覚的に理解することが可能である。本手法は、関節炎の病態解明のみならず、抗炎症薬や免疫調節薬の作用評価、創薬研究における新たな評価基盤として高い汎用性を有しており、基礎研究者から臨床研究者まで幅広い分野での活用が期待される。

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2025/12/18

ゼブラフィッシュ胚を用いた組換えヒトノロウイルスの作出

論文タイトル
Recovery of infectious recombinant human norovirus using zebrafish embryos
論文タイトル(訳)
ゼブラフィッシュ胚を用いた組換えヒトノロウイルスの作出
DOI
10.1073/pnas.2526726122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.49 e2526726122
著者名(敬称略)
小瀧 将裕 小林 剛 他
所属
大阪大学 微生物病研究所 ウイルス免疫分野
著者からのひと言
私たちの研究グループは、これまでノロウイルスと同様に急性胃腸炎を引き起こすロタウイルスなど、いくつかのRNAウイルスで人工合成系を開発してきました。本研究では、これまでに培ってきたウイルス人工合成技術に加え、ノロウイルスが安定的に増殖できるゼブラフィッシュに着目することで、感染性ノロウイルスの人工合成に世界で初めて成功しました。今後は、本研究成果をさらに発展させることで、ノロウイルスのワクチンや治療薬の開発へとつなげていきたいと考えています。

抄訳

ヒトノロウイルス(ノロウイルス)は急性胃腸炎を引き起こし、感染者数や社会的損失の大きさから、最も重要な腸管感染症病原体の一つである。しかし、ワクチンや治療薬の開発は依然として遅れている。その主な要因として、実用的なノロウイルスの人工合成系が確立されていないことが挙げられる。
本研究では、ゼブラフィッシュを用いたノロウイルス培養系を活用し、感染性を有するノロウイルスの人工合成系を確立した。まず、ノロウイルスゲノム由来cDNAを培養細胞に導入し、培養上清をゼブラフィッシュ胚へ注入することで、組換えノロウイルスの作製に成功した。作製した組換えウイルスは、ヒト腸管オルガノイドにおいても増殖能を示し、感染性が確認された。さらに、培養細胞を介さずに、ノロウイルスゲノム由来cDNAをゼブラフィッシュ胚に直接注入することで、より効率的な人工合成系の開発に成功した。加えて、本技術を用いることで、レポーター遺伝子挿入ウイルスや異なる遺伝子型間のキメラウイルスの作製が可能であることも実証した。
本研究成果により、ウイルス複製機構の解析やノロウイルスワクチンおよび治療薬の開発が飛躍的に進展すると期待される。

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2025/12/18

Tppp3は細胞内の微小管構造形成とスフィンゴ脂質恒常性を介して呼吸器繊毛における基底小体の配置と繊毛膜の独立性を制御する

論文タイトル
Tppp3 determines basal body positioning and identity of respiratory cilia via microtubule assembly and sphingolipid homeostasis
論文タイトル(訳)
Tppp3は細胞内の微小管構造形成とスフィンゴ脂質恒常性を介して呼吸器繊毛における基底小体の配置と繊毛膜の独立性を制御する
DOI
10.1073/pnas.2503931122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.49 e2503931122
著者名(敬称略)
酒井 敬史 篠原 恭介 他
所属
東京農工大学大学院工学府生命工学専攻
著者からのひと言
私たちの身体を守るうえで欠かせない気管の繊毛は、絶えず外界からの異物を運び出す「流れ」をつくっています。この流れが乱れないためには、繊毛が細胞内で正しく配置され、個々が独立した構造を保つ必要があります。本研究では、これまで注目されてこなかった Tppp3 というタンパク質が、繊毛の配置や膜構造に関与していることを発見しました。繊毛の機能を支える細胞内メカニズムを理解することで、さまざまな呼吸器疾患の背景にある問題に新しい視点から迫れると期待しています。

抄訳

気管の内側には、繊毛と呼ばれる毛様構造が密に並び、外から侵入する細菌やウイルスを粘液とともに排出しています。気管の繊毛は1つの細胞から数百本も生えていますが、それらが同じ方向へ揃い、さらに各繊毛膜が互いに融合せず独立して存在する仕組みは、十分に理解されていませんでした。本研究では、細胞骨格の一つである微小管に関連するタンパク質 Tppp3 のマウス呼吸器繊毛細胞における役割を解析しました。その結果、Tppp3が細胞内微小管構造を制御することによって、繊毛の根元にある基底小体の向きと配置を決定づけていることを明らかにしました。さらに、Tppp3は繊毛膜に存在するセラミドの量を調節し、繊毛膜同士の融合を防いでいることを示しました。加えて、Tppp3は嗅覚を担う嗅覚神経細胞でも微小管構造の形成に関与し、ニオイの感知に必須な繊毛形成を支えていることが分かりました。これらの成果は、呼吸器疾患や嗅覚障害の背景にある細胞レベルのメカニズムを理解に新たな視点を提示しています。

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