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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2025/03/17

Streptococcus mutans の細胞壁糖転移酵素が本菌のマウス各臓器への分布に与える影響

論文タイトル
Cell wall glycosyltransferase of Streptococcus mutans impacts its dissemination to murine organs
論文タイトル(訳)
Streptococcus mutans の細胞壁糖転移酵素が本菌のマウス各臓器への分布に与える影響
DOI
10.1128/iai.00097-24
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Vol. 93 No. 3
著者名(敬称略)
瀧澤 智美 他
所属
日本大学松戸歯学部 感染免疫学講座

抄訳

う蝕病原細菌のStreptococcus mutansは全身疾患に関与することが知られている。本菌が産生するグルカン合成酵素や細胞壁の糖転移酵素(RgpI)はう蝕病原因子であることが報告されている。そこで、これらの酵素が全身疾患へ関与する可能性について検討した。RgpI遺伝子を欠損したS. mutans、グルカン合成能が低下した変異株、野生株にルシフェラーゼ遺伝子を組込んだ菌体を作成後、マウスへ経尾静脈接種し、各臓器への分布を調べた。その結果、脾臓と腎臓からルシフェラーゼによる強い発光シグナルが検出された。野生株を接種したマウスで最も強く、これに比較すると低グルカン合成変異株を接種したマウスでは弱い発光であった。これら2種類の菌体を接種したマウスでは血中から炎症性サイトカインが検出され、生存率が減少した。一方、RgpI欠損株を接種したマウスでは発光量、血中の炎症性サイトカイン量が最も低く生存率100%であった。したがって、RgpIは全身疾患における病原因子である可能性が示唆された。

 

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2025/03/14

中温絶対寄生性の新属新種バクテリアMinisyncoccus archaeiphilusの記載と、新科 Minisyncoccaceae、新目 Minisyncoccales、新綱 Minisyncoccia、およびCandidatus Patescibacteria/candidate phyla radiation を新門 Minisyncoccotaとして提案

論文タイトル
Minisyncoccus archaeiphilus gen. nov., sp. nov., a mesophilic, obligate parasitic bacterium and proposal of Minisyncoccaceae fam. nov., Minisyncoccales ord. nov., Minisyncoccia class. nov. and Minisyncoccota phyl. nov. formerly referred to as Candidatus Patescibacteria or candidate phyla radiation
論文タイトル(訳)
中温絶対寄生性の新属新種バクテリアMinisyncoccus archaeiphilusの記載と、新科 Minisyncoccaceae、新目 Minisyncoccales、新綱 Minisyncoccia、およびCandidatus Patescibacteria/candidate phyla radiation を新門 Minisyncoccotaとして提案
DOI
10.1099/ijsem.0.006668
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology Volume 75 Issue 2
著者名(敬称略)
中島 芽梨 Masaru K. Nobu(延優) 成廣 隆 黒田 恭平 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
著者からのひと言
未知バクテリアの巨大系統群であるCPRはヒトなどの動物や、自然環境、廃水処理場などの人工生態系内に普遍的に存在していますが、培養の困難さからそれらが生態系や人工バイオプロセスおよびそれが支えるバイオ産業などにどのような影響を与えるのか不明な点が数多く残されていました。我々は、自由に利用可能なCPRバクテリアの培養に成功し、公的な菌株保存機関に寄託することで世界中の研究者が利用できるようにしました。これにより、CPRバクテリアに関する研究分野の発展が期待されます。

抄訳

産業技術総合研究所の黒田恭平、中島芽梨、成廣隆らと、海洋研究開発機構のMasaru K. Nobu(延優)は、北海道大学、東北大学と共同で、メタン生成アーキアに寄生する超微小バクテリアの培養に成功し、新属新種として記載しました。共同研究グループは、廃水処理システムにおいて中心的な役割を担うメタン生成アーキアに寄生してその生理活性を低下させるバクテリアを、世界に先駆けて発見しており、今回その培養に成功しました。本研究は、約40億年前に進化的に分かれ、生物学的に大きく異なっているアーキアに寄生するバクテリアを培養した世界初の例です。「Minisyncoccus archaeiphilus」と命名したこのバクテリアは、寄生できる宿主の範囲が非常に狭く、宿主アーキアの特定部位にのみ感染することが観察されました。さらに、本培養株が属する未知バクテリア巨大系統群である「Candidate phyla radiation (CPR)」を新門「Minisyncoccota」と命名しました。本研究において系統学的に整理し、分離株を公的菌株保存機関へ寄託することにより、これまで謎に包まれていたCPRに属するバクテリアの生理や生態学的役割の理解が進むことが期待されます。

 

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2025/03/12

日本発の甲状腺クリーゼガイドラインは有用である:前向き多施設レジストリ研究より

論文タイトル
Prospective Multicenter Registry–Based Study on Thyroid Storm: The Guidelines for Management From Japan Are Useful
論文タイトル(訳)
日本発の甲状腺クリーゼガイドラインは有用である:前向き多施設レジストリ研究より
DOI
10.1210/clinem/dgae124
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 1, January 2025
著者名(敬称略)
古川 安志 赤水 尚史 他
所属
隈病院/和歌山県立医科大学 内科学第一講座 
著者からのひと言
甲状腺クリーゼの致死率は10%を超えると報告されてきた。その予後を改善すべく、著者らはこれまでに診断基準の確立、全国疫学調査による実態調査を行い、さらに世界初の診療ガイドラインを作成してきた。今回、同ガイドラインの妥当性を検証するために、全国多施設前向きレジストリ調査を行った。その結果、登録された患者が前回の調査に比してより重症であるにも関わらず、致死率が5.5%と半減していることが判明し、同ガイドラインの有用性が示された。

抄訳

背景:甲状腺機能亢進症(TS)の死亡率は10%以上と報告されている。
目的:日本甲状腺学会と日本内分泌学会が提唱した2016年のTS診療ガイドラインの有効性を評価した。
方法:WEBプラットフォーム(REDCap)を用いて、前向きに全国の多施設から患者登録を行ってもらうレジストリ研究を実施した。即ち、新規発症時にTS患者が登録され、その後入院後30日目と180日目に各患者の臨床情報と予後が報告された。
結果:4年間で 110例のTS患者が登録された。APACHE IIスコアの中央値は13点であり、以前の全国疫学調査のスコアである10点よりも高くより重症であった(p=0.001)。それにもかかわらず、30日目の死亡率は5.5%と、前回の全国調査の10.7%に比較して約半減していた。左室駆出率低下、低BMI、ショック、38℃以上の発熱がないことが予後不良因子であった。当診療ガイドラインに従わなかった場合、ガイドラインに従った場合の死亡率より有意に高かった(50% vs 4.7%, p=0.01)。
結論:予後は前回の全国調査よりも良好であり、半減していた。診療ガイドラインに従った場合、死亡率は有意に低値であった。以上より、本ガイドラインはTS診療に有用であることが示された。

 

 

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2025/03/12

ファージ特異的抗体:ファージセラピー成功の障壁となるか?

論文タイトル
Phage-specific antibodies: are they a hurdle for the success of phage therapy?
論文タイトル(訳)
ファージ特異的抗体:ファージセラピー成功の障壁となるか?
DOI
10.1042/EBC20240024
ジャーナル名
Essays in Biochemistry
巻号
Essays Biochem (2024) 68 (5): 633–644
著者名(敬称略)
鷲﨑 彩夏 安藤 弘樹 他
所属
岐阜大学大学院 医学系研究科 ファージバイオロジクス研究講座
著者からのひと言
本総説が公表されるにあたり、当研究室の満仲 耀(みつなか ひかる)さんのイラストがEssays in Biochemistryのカバーイメージに採用されました。ファージ特異的抗体に対して ”barrier” をまとった改変型ファージを描いています。ぜひご覧ください。

抄訳

薬剤耐性菌の蔓延に伴い、ファージセラピーが注目されている。ファージセラピーは細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を利用した細菌感染症に対する治療法であり、その有効性は多数報告されてきた。一方、治療中に産生されるファージ特異的抗体は体内でのファージの代謝を早めたり、ファージを中和して細菌への感染能を失わせたりするため、ファージセラピーへの影響が懸念されている。ファージ特異的抗体については、in vitroや非臨床試験などで研究が進められており、例えば、ファージを修飾することで抗体に認識されにくくする、血中での半減期を伸ばす、といった研究が報告されている。しかしながら、臨床試験ではファージ特異的抗体の影響について相反する結果が得られており議論が続いている。本総説ではファージ特異的抗体に焦点をあて、具体的な臨床試験の結果を挙げながらファージ特異的抗体がファージセラピーに与える影響について解説する。さらに、ファージ特異的抗体の影響を最小限にする取り組みについても紹介する。

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2025/03/12

甲状腺クリーゼに対するヨウ素の効果:観察研究

論文タイトル
Potassium Iodide Use and Patient Outcomes for Thyroid Storm: An Observational Study
論文タイトル(訳)
甲状腺クリーゼに対するヨウ素の効果:観察研究
DOI
10.1210/clinem/dgae187
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 2, February 2025
著者名(敬称略)
松尾 裕一郎
所属
東京大学大学院医学系研究科 社会医学専攻 臨床疫学・経済学
著者からのひと言
理論的には、ヨウ素はバセドウ病による甲状腺中毒症に対して効果が期待されるが、バセドウ病以外の疾患による甲状腺中毒症では効果を期待できない。今回の研究では、甲状腺クリーゼにおいてもその傾向が確認され妥当な結果である。一方で実際の臨床場面では、甲状腺クリーゼの診断段階では背景の甲状腺疾患が明確に特定できないこともある。本研究でバセドウ病の診断が無い患者でもヨウ素の投与により院内死亡率は上昇しなかったことから、たとえ初診時に背景の甲状腺疾患が不明であってもヨウ素を投与することは許容されると考えられる。

抄訳

【背景】多くの臨床ガイドラインにおいて、甲状腺クリーゼの初期治療として抗甲状腺薬、β遮断薬、ステロイドに加えてヨウ素の使用が推奨されている。しかし、甲状腺クリーゼに対するヨウ素の臨床効果を検証した研究は乏しい。【方法】厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班のデータベースを利用した後ろ向きコホート研究を実施した。2010年7月から2022年3月までに甲状腺クリーゼにより入院した患者を同定し、入院2日以内にヨウ素を投与された患者(ヨウ素投与群)と投与されなかった患者(ヨウ素非投与群)の院内死亡を、ロジスティック回帰分析により比較した。また、背景疾患としてのバセドウ病の診断の有無で層別化したサブグループ解析も実施した。【結果】3,188人(ヨウ素投与群 2,350人、ヨウ素非投与群 838人)の甲状腺クリーゼ患者が対象となり、粗院内死亡率はそれぞれ6.1%と7.8%であった。ヨウ素非投与群を対照とするヨウ素投与群の院内死亡の調整後オッズ比は0.91(95%信頼区間 0.62–1.34)で有意差を認めなかった。バセドウ病患者では調整後オッズ比 0.46(95%信頼区間 0.25–0.88)とヨウ素投与群で院内死亡率が有意に低く、非バセドウ病患者では調整後オッズ比 1.11(95%信頼区間 0.67–1.85)と有意差を認めなかった。【結論】バセドウ病による甲状腺クリーゼ患者では、ヨウ素の投与により院内死亡率が低下する可能性が示唆される。

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2025/03/11

RNA結合タンパク質NrdAの過剰発現によるAspergillus属糸状菌の二次代謝の変化

論文タイトル
Overexpression of the RNA-binding protein NrdA affects global gene expression and secondary metabolism in Aspergillus species
論文タイトル(訳)
RNA結合タンパク質NrdAの過剰発現によるAspergillus属糸状菌の二次代謝の変化
DOI
10.1128/msphere.00849-24
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Vol. 10 No. 2
著者名(敬称略)
門岡 千尋 二神 泰基 他
所属
鹿児島大学 農学部 附属焼酎・発酵学教育研究センター
著者からのひと言
Aspergillus 属を含むチャワンタケ亜門のゲノムにおいて、nrdA 遺伝子は、クエン酸合成酵素遺伝子 citAおよびクエン酸輸送体遺伝子 yhmAと共にシンテニー領域に存在しています。私たちは白麹菌におけるクエン酸高生産機構の全容解明を目指しており、NrdAの研究を開始しました。このシンテニーに意味があるのかは未だ不明ですが、NrdAが二次代謝に関与することが明らかになりました。

抄訳

酵母において、RNA結合タンパク質Nrd1はRNA polymerase IIによる転写の終結に関与する。本研究では、Aspergillus属糸状菌においてNrdA(Nrd1のホモログ)の機能を解析し、二次代謝への関与を明らかにした。まず、白麹菌Aspergillus kawachiiにおいてRNA免疫沈降(RIP)解析を行い、NrdAがタンパク質コード遺伝子の約32%のmRNAと相互作用することが示唆された。また、NrdAの過剰発現が二次代謝に影響を及ぼすことが示唆された。そこで、モデル菌Aspergillus nidulans、病原性糸状菌Aspergillus fumigatus、黄麹菌Aspergillus oryzaeにおいてNrdAを過剰発現させた結果、ペニシリンなどの二次代謝産物の生産量が変化することが確認された。

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2025/03/11

バンドパスフィルターを通過した222-nm遠紫外線によって生成される活性酸素種は大腸菌に対する殺菌機序において重要な役割を果たす

論文タイトル
Reactive oxygen species generated by irradiation with bandpass-filtered 222-nm Far-UVC play an important role in the germicidal mechanism to Escherichia coli
論文タイトル(訳)
バンドパスフィルターを通過した222-nm遠紫外線によって生成される活性酸素種は大腸菌に対する殺菌機序において重要な役割を果たす
DOI
10.1128/aem.01886-24
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Vol.91 No.2
著者名(敬称略)
成田 浩司 中根 明夫 他
所属
弘前大学大学院医学研究科感染生体防御学講座
著者からのひと言
我々の研究室はfiltered 222-nm Far-UVCの病原体への殺菌有効性だけでなく、哺乳類での安全性についての研究を進めてきました。近年、医療環境や食品衛生分野等の感染リスクが高い領域の有人環境で、filtered 222-nm Far-UVCが利用され始めています。光回復は紫外線殺菌の課題の一つでした。殺菌用途において、filtered 222-nm Far-UVCにおける光回復阻害は大きなメリットです。光回復阻害の機序が明らかになることで、filtered 222-nm Far-UVCによる新たな殺菌戦略の構築が期待されます。

抄訳

従来から殺菌に使用されている紫外線(254-nm UVC)は哺乳類に対し有害である。一方、バンドパスフィルターを装着したKrClエキシマランプが発するUVC(filtered 222-nm Far-UVC)は殺菌作用を持つが哺乳類に対する安全性が高い。254-nm UVCは細菌にDNA損傷の一種であるシクロブタン型ピリミジン二量体 (CPD) を誘導し殺菌作用を示す。しかし細菌は光回復によってCPDを修復し増殖能を回復する。ところがfiltered 222-nm Far-UVCで大腸菌に誘導されたCPDは光回復で修復されなかった。さらにfiltered 222-nm Far-UVCを照射された大腸菌では活性酸素種(ROS)、カルボニル化タンパク質の増加、菌体の形態変化が見られた。これらの結果からfiltered 222-nm Far-UVCによって生成されたROSがその殺菌機序に重要な役割を果たしている可能性がある。

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2025/03/10

腹部肥満および心血管イベントリスクの簡便な人体計測指標としての体型指数(ABSI: a body shape index)

論文タイトル
A Body Shape Index as a Simple Anthropometric Marker of Abdominal Obesity and Risk of Cardiovascular Events
論文タイトル(訳)
腹部肥満および心血管イベントリスクの簡便な人体計測指標としての体型指数(ABSI: a body shape index)
DOI
10.1210/clinem/dgae282
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 109, Issue 12, December 2024
著者名(敬称略)
梶川 正人 東 幸仁 他
所属
広島大学病院 未来医療センター
著者からのひと言
ABSIは、体重、血管内皮機能、心血管リスク因子、および死亡率の独立した危険因子です。 さらに、ABSIは、代謝異常に関連する病態を識別する能力において、body mass index(身体重比)よりも優れています。ABSIは、臨床において、さまざまなリスクパラメータの評価や治療戦略の決定に活用できる包括的なツールとなり得ます。また、心血管イベントの有効な予測因子となり得ることが期待されます。

抄訳

A Body Shape Index(ABSI)は、心血管リスク因子と関連していることが報告されている。しかし、ABSIと心血管イベント発生率との関連についての情報はない。本研究では、FMD-Jレジストリおよび広島大学血管機能レジストリのデータベースから1,857名の対象者を抽出し、ABSIと心血管イベント(心血管疾患による死亡、非致死性急性冠症候群、非致死性脳卒中)との関連を検討した。心血管イベントを予測するためのABSIのROC曲線下面積は、BMIおよび女性のウエスト周囲径よりも優れていた。中央値41.6か月の追跡期間中に、56名が死亡(23名は心血管疾患による死亡)、16名が非致死性急性冠症候群、14名が非致死性脳卒中を発症した。主要心血管イベントの発生率は、高ABSI群において、低ABSI群に比し、有意に高値であった。多変量解析により、高ABSIは心血管イベントの独立した予測因子であることが示された。心血管リスクの評価において、ABSIの計算を実施することが推奨される。

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2025/03/10

原発性副甲状腺機能亢進症における腫瘍体積を術前臨床データから予測する

論文タイトル
Predicting Tumor Volume in Primary Hyperparathyroidism From Preoperative Clinical Data
論文タイトル(訳)
原発性副甲状腺機能亢進症における腫瘍体積を術前臨床データから予測する
DOI
10.1210/clinem/dgae185
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 2, February 2025
著者名(敬称略)
中居 伴充 他
所属
東京女子医科大学 内分泌外科
著者からのひと言
原発性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺腫瘍の体積と臨床データとの相関について解析しました。臨床内分泌領域の分野で権威ある雑誌に掲載され光栄です。今後も医療における臨床上の疑問点(Clinical Question)を提示し、妥当性の高い答えを得るために、不断に学び続けます。そして細心の注意を払い論文化すること、そのプロセスを繰り返すことで身に付く態度を臨床実践の態度に繋げ、患者のために精進していきます。

抄訳

〔背景〕本研究は、原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)における責任病変の腫瘍体積を術前臨床データから予測することを目的とする。PHPTの治療には副甲状腺摘出術が有効であり、術前診断には超音波検査、CT、MIBIシンチグラフィーが用いられるが、外科治療が不成功に終わることもある。責任病変のサイズと術前臨床データの関連が想定され、予測モデルも開発されているが、多数例での検討は少ない。〔方法〕2000年1月~2021年12月に当科で手術を受けたPHPT患者1106人を対象に、摘出した副甲状腺腫瘍の体積と術前臨床データの関連を多変量解析で評価した。〔結果〕腫瘍体積は術前血中intact PTH値(相関係数0.557)およびCa値(相関係数0.345)と正の相関を示した。重回帰分析では、男性、ln-PTH(intact PTHを対数変換したもの)、Ca値が腫瘍体積の有意な予測因子であり、モデルの調整済R²は0.325であった。〔結論〕術前血中intact PTH値は腫瘍体積と相関するが、正確な予測には限界があるものの、大まかな推定には活用可能である。

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2025/03/07

Sagittal adjusting screwと骨折整復デバイスを用いた胸腰椎破裂骨折に対する最小侵襲治療

論文タイトル
Minimally Invasive Treatment for Thoracolumbar Burst Fracture Using Sagittal Alignment Screws and A Trauma Reduction Device
論文タイトル(訳)
Sagittal adjusting screwと骨折整復デバイスを用いた胸腰椎破裂骨折に対する最小侵襲治療
DOI
10.3791/66957
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (213), e66957
著者名(敬称略)
小川 穣示 岡野 市郎 他
所属
昭和大学医学部 整形外科学講座

抄訳

Sagittal adjusting screw(SAS)は、可動性のある鞍状のヘッドを持つmonoaxial screwであり、矢状面においてロッドの可動性を許容し、胸腰椎破裂骨折に用いられる。専用の整復デバイスを併用することで、伸展力によるligamentotaxisを利用した椎体高・脊柱管内突出骨片の整復および角度矯正が可能である。また、SASシステムは経皮的に使用可能な最小侵襲手技として用いることが可能であり、従来のシャンツスクリューや通常の多軸椎弓根スクリューと比較して、多くの点で優れている。本プロトコールでは、胸腰椎破裂骨折の治療におけるSASシステムについて各ステップを概説し、整復および固定術の手技について手術動画を用いて解説する。また、単一施設のSASシステムを使用した症例シリーズにおいて、術後の後弯角変化率および椎体高変化率について提示する。

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