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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/05/12

ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する

論文タイトル
A phage-derived reconfigurable effector associated with an actinobacterial contractile nanomachine tailors bacterial responses to competition
論文タイトル(訳)
ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する
DOI
10.1128/jb.00532-25
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Ahead of Print
著者名(敬称略)
永久保 利紀 他
所属
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系/高等研究院/MiCS
ライデン大学 客員研究員
著者からのひと言
この論文では、何らかのきっかけで細菌のゲノムに残された「ウイルスの残骸」がその細菌の役に立っていることを示しています。「ウイルスの残骸」はその機能を容易に改変可能なタンパク質のモジュール構造に落とし込み、細菌が外部から受ける選択圧への柔軟な対応を可能にすることで、自らを保持する細菌の繁栄に貢献しその存在を維持している可能性があります。その機能中枢が、ウイルスの感染機構に由来していると思われる点も注目されます。

抄訳

収縮性注入機構(CISs)は、ファージ尾部から派生したナノマシンであり、細菌を中心とした原核生物に広く分布している。CISsはエフェクターと呼ばれる特定のタンパク質を格納し、様々な生物学的プロセスを仲介するエフェクターを射出する。本研究では、ファージの感染機構の一部から派生した新規エフェクター群の発見について報告する。CISsが最も高度に保存されている細菌群である放線菌のモデル種Streptomyces lividansにおいて、細胞内CISの一種であるSLPのエフェクターSle1が同定された。Sle1はSLPに格納され、S. lividansの細胞膜関連プロテオーム画分の割合を増加させ、最終的に細菌間競争に対する本菌の適応を促す。Sle1ホモログは放線菌において広く分布している。以上の結果は、ファージの感染機構が細菌によって環境適応を補助する因子として取り込まれてきたことを示唆している。

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2026/05/12

LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する

論文タイトル
LRBA organizes distinct vesicular trafficking systems in distal nephron segments for water and sodium conservation
論文タイトル(訳)
LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する
DOI
10.1073/pnas.2525505123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2525505123
著者名(敬称略)
長岡 可楠子 安藤 史顕 他
所属
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野
著者からのひと言
LRBA欠損症は、これまで主に「免疫の病気」と考えられてきましたが、本研究により、LRBAが腎臓にも発現し、水と塩の保持を担うことが明らかになりました。患者レジストリ解析とモデルマウスの解析を統合することで、腎臓の体液恒常性維持機構を新たに解明した点が本研究の特徴です。本成果は、LRBA欠損症に「尿濃縮障害」という新たな病態概念を加えるものであり、脱水症や電解質異常への早期治療介入の必要性を示しています。

抄訳

LRBA欠損症は、慢性的な下痢や繰り返す感染症を特徴とする先天性免疫異常症に分類される疾患として知られていますが、免疫系以外の表現型については十分に解明されていませんでした。本研究では、LRBA欠損症患者の国際共同レジストリ解析、LRBA欠損症モデルマウスの病態解析、腎臓膜タンパクの網羅的解析を組み合わせることで、LRBA欠損症において尿濃縮力障害、多尿、電解質異常が生じることを明らかにしました。その機序として、LRBAが腎臓集合管ではAQP2・AQP4水チャネルの小胞輸送を担い、さらに遠位尿細管ではSPAKキナーゼの小胞輸送を介して塩輸送体の活性制御を担うことを解明しました。LRBAは腎臓において水と塩を協調的に保持する役割を有し、尿中への喪失を防いでいました。LRBA欠損症患者の診療では、脱水症への注意が必要となる一方で、一部の変異では抗利尿薬デスモプレシンが多尿の治療へ有効となる可能性を示せており、遺伝子変異に応じた個別化医療への発展が期待されます。

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2026/05/11

スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定

論文タイトル
Molecular epidemiology of rodent-borne Leptospira spp. in Sri Lanka: identification of novel sequence types
and previously unrecognized reservoir animals
論文タイトル(訳)
スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定
DOI
10.1099/jmm.0.002133
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 3
著者名(敬称略)
Nipun Rathnayake 小泉 信夫 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部-第四室
著者からのひと言
本研究では、スリランカのネズミ類における病原性レプトスピラの遺伝的多様性を明らかにし、ヒト感染に関与する新たな保菌動物を同定した。さらに、これまで未報告であった新規シーケンスタイプも検出され、スリランカにおける多様なレプトスピラ感染環の存在が示された。本研究成果は、レプトスピラ症の感染源解明と制御対策の構築に貢献すると期待される。

抄訳

レプトスピラ症は,全世界で発生する人獣共通感染症であり、特に熱帯地域で流行がみられる。スリランカは本症の流行地域の一つであり、病原体(レプトスピラ属菌)、保菌動物、ならびに環境・職業要因が複雑に関与することで、公衆衛生上の問題となっている。
本研究では、ヒト患者由来レプトスピラとネズミ類が保有するレプトスピラとの遺伝学的関連性を明らかにするため、スリランカのKurunegala、Anuradhapura、Badullaの3地区に生息するネズミ類におけるレプトスピラの遺伝的多様性を調査した。
その結果、257検体中33検体(12.8%)から病原性レプトスピラDNAが検出され、陽性個体はBandicota bengalensisMus boodugaRattus rattus、およびVandeleuria sp.の4種であった。flaB遺伝子配列解析および多遺伝子座配列タイピング(MLST)により、検出されたレプトスピラ種はLeptospira borgpeterseniiL. interrogansL. kirschneri、およびL. licerasiaeであり、2つの新規シーケンスタイプ(ST389およびST392)を含む計5種類のシーケンスタイプが同定された。また、R. rattusがヒト感染に関与するL. interrogans ST49の、M. boodugaL. borgpetersenii ST144およびL. licerasiaeの保菌動物であることが示された。

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2026/05/11

原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例

論文タイトル
Dendriform pulmonary ossification in fibrosing interstitial lung disease with primary biliary cholangitis
論文タイトル(訳)
原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-271743
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 4
著者名(敬称略)
尾形 朋之 他
所属
茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター 呼吸器内科
著者からのひと言
間質性肺疾患に伴う微細結節影では、肉芽腫性疾患のみならず樹枝状肺骨化症(DPO)も重要な鑑別となります。本症例は、骨条件CTでの再評価と経気管支鏡下クライオバイオプシーにより診断に至りました。背景因子として慢性微小誤嚥の関与も示唆され、DPOの病態理解にも示唆を与える症例です。

抄訳

Dendriform pulmonary ossification(DPO)は、肺内に樹枝状の骨形成を認める稀な病態であり、UIPパターンを呈する肺線維症との関連が知られている。今回、無症候性の原発性胆汁性胆管炎(PBC)を有する80歳代男性において、胸部CTで両側下葉の非特異的なすりガラス影と線維化に加え、胸膜下に微小結節の出現を認めたため、PBCに関連した肉芽腫性の間質性肺炎が疑われた。しかし、経気管支鏡下クライオバイオプシー(TBLC)では肉芽腫は認められず、UIPパターンの線維化とともに肺胞内の骨化が確認された。これを受けてCTを骨条件で再評価したところ、微小結節は高吸収の樹枝状構造として描出され、DPOに合致する所見であることが確認された。本報告は、間質性肺炎に付随するDPOの臨床的意義と、TBLCの有用性を示すものである。

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2026/05/07

ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見

論文タイトル
Structural insights into biased signaling at chemokine receptor CCR7
論文タイトル(訳)
ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見
DOI
10.1073/pnas.2533975123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2533975123
著者名(敬称略)
田中 康太郎 堤 尚孝 他
所属
東京科学大学 総合研究院 細胞構造生理学研究室(CeSPL)
著者からのひと言
同一の受容体に結合するリガンドが、いかにして異なる細胞内反応を引き起こすのか。本研究は、この謎に対し、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析、計算機シミュレーション、薬理解析を組み合わせて迫ったものである。静的な構造だけでなく、受容体の動的な振る舞いまで捉えた本成果が、副作用を抑え必要な薬効だけを引き出す画期的な創薬へと繋がることを期待している。

抄訳

GPCRの一種であるケモカイン受容体CCR7は、免疫細胞の遊走を制御し、適応免疫応答やがんのリンパ節転移において重要な役割を担う。CCR7の内因性リガンドである2種類のケモカイン(CCL19およびCCL21)は、同一受容体に結合するにもかかわらず、細胞内のシグナル経路を異なるバランスで活性化する「バイアスシグナル伝達」を引き起こすが、その構造的メカニズムは未解明であった。
本研究では、各リガンドが結合したCCR7がGタンパク質を活性化する様子をクライオ電子顕微鏡により高分解能で可視化した。この構造を基に、計算機シミュレーションで受容体の動的な構造変化を解析し、薬理解析と組み合わせることで、リガンドの結合様式の差異が受容体に異なる構造変化を誘起し、シグナル分子を選択的に活性化する精緻な仕組みを解明した。本成果は、副作用を低減し目的の薬効のみを誘導する、次世代の免疫疾患治療薬や抗がん剤の開発基盤となることが期待される。

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2026/05/01

ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見

論文タイトル
Factors contributing to the frequent interspecies transmission of G4P[6] Rotavirus alphagastroenteritidis
strains from pigs to humans in Vietnam: molecular epidemiological insights
論文タイトル(訳)
ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間 伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見
DOI
10.1099/mgen.0.001685
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 4
著者名(敬称略)
金子 美穂 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染分子解析学分野
著者からのひと言
ロタウイルスA(RVA)は、小児における重症胃腸炎の主要な原因の一つであり、動物由来株のヒトへの種間伝播が報告されている。本研究では、ヒトとブタの双方で検出されるP[6]遺伝子型VP4に着目した。P[6]のアミノ酸特性と宿主糖鎖との相互作用との関連を示した点は、ウイルスの宿主適応機構の理解に重要な示唆を与える。また、動物由来株が比較的高頻度でヒトへ種間伝播しているにもかかわらず、持続的なヒト-ヒト間伝播には至っていないことから、ヒト宿主への適応には追加的な遺伝的要因が必要である可能性が示された。本研究の成果は、動物由来ロタウイルスの進化およびヒト適応機構の理解を深めるとともに、感染対策やワクチン開発に向けた基盤的知見を提供する。

抄訳

アジアの一部地域では、ブタ由来ロタウイルス(RVA)、特にG4P[6]株がヒトから比較的高頻度で検出されている。本研究では、ベトナム小児から検出されたG4P[6]株の起源と高頻度検出の要因を分子疫学的に解析した。2年間に収集したRVA陽性糞便1,252検体中28検体(2.2%)がG4P[6]株単独感染に起因し、23株の全ゲノム解析により、いずれもヒトRVAとのリアソートメントを伴わないブタ由来株と確認された。一部のG4P[6]株に全ゲノムが一致するクラスターが認められ、限定的なヒト-ヒト間伝播の可能性が示唆された一方、多くの株は遺伝的に異なっており、ブタからヒトへの複数回の独立した種間伝播が推測された。さらに系統解析から、本研究株を含むブタ様RVAのP[6]は典型的ヒトRVAのP[6]とは遺伝的に異なり、それぞれのP[6]株の検出頻度には地理的差異が認められた。加えて、アミノ酸配列解析によりブタ様P[6]に特徴的な残基が同定され、一部は既知のヒト細胞表面糖鎖への結合部位に対応していた。以上より、本事例は持続的なヒト-ヒト間伝播株の出現ではなく、頻回な種間伝播に起因すると考えられ、ブタ様P[6]のアミノ酸特性が種間伝播を促進し得る可能性が示された。

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2026/04/30

quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ

論文タイトル
quickARSC: standalone package and web interface for profiling elemental stoichiometry of proteomes
論文タイトル(訳)
quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ
DOI
10.1128/mra.00031-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
西野 聡 吉澤 晋 他
所属
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門(微生物)
著者からのひと言
詳細はGitHub Wikiをご確認ください。
https://github.com/stsnsn/quickARSC/wiki 

抄訳

本稿では、原核生物の塩基配列またはアミノ酸配列のFASTAファイルから元素組成指標(ARSC)を計算するコマンドラインツール quickARSC を紹介する。quickARSCでは、タンパク質またはプロテオームの窒素、炭素、硫黄組成指標を算出可能である。本ツールはgz圧縮済みファイルや並列計算に対応しており、パイプなどを用いてシームレスにUNIXコマンドと接続できる。
併せて、FASTAファイルをアップロードすることでこれらの指標を計算可能なWebページを公開した。このページではGenome Taxonomy Database r226.0に登録されている143,614種の代表原核生物プロテオームにおける事前計算済みデータも提供している。ユーザーはGUI操作のみでこれらの情報を検索・取得可能である。

 

 

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2026/04/21

Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる

論文タイトル
Alternative microexon splicing code for a four-amino acid peptide of PTPRD governs behavioral development
論文タイトル(訳)
Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる
DOI
10.1073/pnas.2515310123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.15 e2515310123
著者名(敬称略)
今井彩子 吉田知之 他
所属
富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座

抄訳

マイクロエクソンは3~27ヌクレオチドから構成され、神経細胞で選択的に利用されることから神経系のタンパク質の機能を修飾する微小ゲノム素子として近年、注目されている。本研究ではシナプスの形成と再編を担う細胞接着タンパク質(シナプスオーガナイザー)をコードするPtprd遺伝子のもつ3つのマイクロエクソンの調節機構とその生理的な意義に注目した。これらのマイクロエクソンの選択的スプライシングは遺伝的なプログラムと環境依存的なプログラムに従って脳内で時空間的に調節されることがわかった。3つのマイクロエクソンのうちの1つは僅か4アミノ酸のペプチドをコードし、この遺伝的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスでは感覚、運動、情動、社会性など広範な行動に大きな異常が観察された。一方、環境依存的な選択的スプライシングプログラムを欠失したマウスはある種の学習と記憶ができなくなった。本研究からシナプスオーガナイザータンパク質内の僅か4アミノ酸のペプチドの使い方が行動の発達を大きく左右することが示された。今回の知見は、精神疾患や神経発達障害の発病機構の解明、さらには高度で複雑なヒトの脳機能や個性を作り出す仕組みの解明に繋がるものとして期待される。

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2026/04/15

メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する

論文タイトル
Three cholecystokinin receptors differentially regulate reproduction, digestion, lipid metabolism, and growth in medaka
論文タイトル(訳)
メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する
DOI
10.1530/JOE-25-0353
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JOE-25-0353
著者名(敬称略)
村下 幸司 他
所属
福井県立大学 海洋生物資源学部 先端増養殖科学科
著者からのひと言
本研究は、メダカをモデルとして3種のコレシストキニン(Cck)受容体が、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ異なって制御することを明らかにした。特に、Cck受容体が脂質代謝や体成長の調節に関与することを示した初めての報告であり、Cckの生理機能を従来の枠組みから拡張するものとなる。

抄訳

コレシストキニン(Cck)は、消化、摂食および生殖の制御に関与する多機能ペプチドホルモンである。本研究では、メダカ(Oryzias latipes)において3種のCck受容体遺伝子(cck1r、cck2ra、cck2rb)が欠損したノックアウト系統を作製し、それぞれの生理機能を解析した。cck1r欠損魚では消化酵素分泌の低下と成長遅延が認められ、消化制御および初期成長における重要性が示された。cck2ra欠損魚では軽微な生殖能の低下と脂質蓄積の増加が観察された。一方、cck2rb欠損魚では雌の不稔、顕著な脂質蓄積および成熟期以降の成長促進が認められた。さらに網羅的遺伝子発現解析により、脂質代謝および成長制御における各受容体の機能特異性が支持された。

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2026/04/14

Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定

論文タイトル
Identification of the C9-hydrogenase for 9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) and the 7α-dehydratase essential for initiating β-oxidation of the B-, C-, and D-rings in steroid degradation by Comamonas testosteroni TA441
論文タイトル(訳)
Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定
DOI
10.1128/aem.02331-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
堀之内 正枝
所属
理化学研究所Kim表面界面科学研究室
著者からのひと言
細菌による好気的ステロイド分解の分解経路および関連遺伝子の大半は長らく不明であり、TA441株を用いた一連の研究で初めてステロイド骨格の分解がほぼ明らかになったものの、細菌がこの分解系を持つメリット、この分解系の環境中での役割についてはまだ不明である。その解明にはより広範囲の分解細菌の解析が必要だが、遺伝的に遠い細菌では酵素のアミノ酸配列の相同性も低くなる。立体構造での検索が可能になれば、新たな一面が見えてくるかもしれない。

抄訳

Comamonas testosteroni TA441株は、ステロイド骨格の分解経路が最も詳細に解明されている、好気的ステロイド分解細菌のモデル株である。TA441株と同様の分解経路は、他のプロテオバクテリアや結核菌などの放線菌を含む幅広い属の細菌に存在する。本研究では新たにCD環開裂に必須なhydrogenase(ScdB)およびdehydratase(ScdH)を同定した。AlphaFoldによるモデリングでは、TA441株のステロイド分解に関わるhydrogenaseのうち5種がScdBと類似構造をとる事が示され、ScdHは、BCD環の分解に関与するScdYおよびScdNと同様のホモヘキサマー構造を形成すると予測された。同様に他の酵素も解析した結果、TA441のC12βdehydrataseが、アミノ酸配列のidentityが約28%しかないClostridium scindensの胆汁酸7α dehydratase BaiEと強い構造的類似性を示すことが明らかになった。

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2026/04/09

変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子

論文タイトル
Phenotypic characterization of signature-tagged mutants identifies physiological determinants of Vibrio vulnificus fitness
論文タイトル(訳)
変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子
DOI
10.1128/aem.02505-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学 獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
短時間内に宿主体内で増殖し、重篤な病態へと陥れるNSTI起因菌の病原性の基礎には、宿主環境への適応とそれを制御する遺伝子群が有機的繋がりを持って機能しており、毒素等の古典的因子による病原性の発揮を支えていることが明らかとなった。この発見は、NSTI起因菌による、迅速な組織侵襲機構を説明し得るものであると共に、細菌の病原性研究に、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

抄訳

Vibrio vulnificusは、ヒトへの感染後、極めて短期間のうちに壊死性軟部組織感染症(NSTI)や敗血症を引き起こす。本研究では、本菌が宿主体内での増殖に必要とする遺伝子群を網羅的に同定した。同定した37遺伝子の変異株について、マウスNSTIモデルにおける増殖能、運動性、莢膜形成、および好中球抵抗性などの表現型を解析した。 その結果、本菌の生体内増殖は、運動性、細胞内シグナル制御、代謝、およびストレス耐性等の生理機能に強く依存していることが明らかとなった。特に、莢膜や細胞傷害性といった従来の「病原因子」とは独立して、宿主環境への適応に直接寄与する制御・代謝関連因子が多数見出された。 
本研究の結果は、V. vulnificusが代謝を含む生理機能をダイナミックに変化させて宿主環境に適応し、病原因子の時空間制御に繋げることで、迅速な組織侵襲を可能にしていることを示している。これは、細菌の病原性を「毒素の有無」という従来の枠組みから解き放ち、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

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2026/04/08

アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定

論文タイトル
Identification of two Wolbachia genes with cell proliferation-inhibitory activity in Ostrinia cultured cells
論文タイトル(訳)
アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定
DOI
10.1128/mbio.00074-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
勝間 進 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 昆虫遺伝研究室
著者からのひと言
ボルバキアは蚊を介したウイルス等の媒介抑制などにおいて、応用上重要な細胞内共生細菌です。さらには、宿主の性や生殖を操作するという点で、基礎生物学的にも注目されています。一方、感染・移植技術や遺伝子操作法が確立していないことから、その遺伝子機能の解析はあまり進んでいません。本研究はアワノメイガとそれに感染するオス殺しボルバキアを対象に、培養細胞を利用した機能解析例を報告したものになります。ボルバキア研究の発展に貢献できれば幸いです。

抄訳

細胞内共生細菌であるボルバキアは、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っています。基礎生物学的にも応用上も重要な共生細菌ですが、ボルバキア遺伝子の機能解析については非常に遅れています。その理由としては、確立した移植方法がないこと、そして遺伝子操作法が存在しないことが挙げられます。本研究では、アワノメイガにおいてオス殺しを引き起こすボルバキア(wFur)とアワノメイガ由来の培養細胞を用いて、ボルバキア移植方法を構築しました。その結果、非感染細胞へのwFur移植が細胞毒性を伴う細胞増殖抑制を引き起こすことがわかりました。さらに、wFur遺伝子を非感染アワノメイガ培養細胞で発現させる発現スクリーニングによって、w52w75と名付けた細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子を発見しました。これら2つの遺伝子はwFur感染におけるアワノメイガの細胞増殖抑制に関与している可能性が考えられます。

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2026/04/02

Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda

論文タイトル
Reclassification of the genus Dysgonomonas and description of Dysgonomonas reticulitermitis sp. nov. and Viscerimonas tarda gen. nov., sp. nov. from the gut of the subterranean termite Reticulitermes speratus
論文タイトル(訳)
Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda
DOI
10.1099/ijsem.0.007031
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 1
著者名(敬称略)
高橋 一樹 坂本 光央 他
所属
理化学研究所 バイオリソース研究センター(BRC)微生物材料開発室 (JCM)
著者からのひと言
腸内や環境中で注目されるDysgonomonas属の分類学的曖昧さに真正面から取り組み、ゲノム指標と生理学的特性を統合して再定義した点が本研究の大きな魅力である。属レベルの再編成に加え、新属・新種の提案により、本群の多様性と進化的関係に新たな視点を提供し、今後の機能解析や生態学研究の基盤を大きく前進させる重要な成果といえる。

抄訳

2000年に設立されたDysgonomonas属はBacteroidales目に属し、現在9種が知られるが、その分類基準は十分に整理されていない。本研究ではコアゲノム系統解析、平均アミノ酸同一性、保存タンパク質割合などのゲノム指標と生理学的特性に基づき再評価を行った。その結果、本属は少なくとも3つの属レベル系統群に分かれることが示され、Dysgonomonas(狭義)、新属Indolivaga、新属Pseudodysgonomonasを提案した。さらにシロアリ腸内から分離した2株について、1株はDysgonomonas属の新種、もう1株は新属・新種Viscerimonas tardaとして提案した。

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2026/03/31

ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析

論文タイトル
Efficacy and Safety of Stent-Assisted Coiling with Low-Profile Visualized Intraluminal Support versus Neuroform Atlas for Unruptured Internal Carotid Aneurysms: A Propensity Score–Matched Analysis
論文タイトル(訳)
ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析
DOI
10.3174/ajnr.A9034
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
March 2026, 47 (3) 671-677
著者名(敬称略)
長山 剛太 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科

抄訳

ステント併用コイル塞栓術(SAC)は広頸の未破裂脳動脈瘤に広く用いられているが、異なるステント間の直接比較データは乏しい。本研究は、直径10mm未満の未破裂内頸動脈(ICA)動脈瘤を対象に、編み込み型のLVISステントとオープンセル型のNeuroform Atlasステントの安全性・有効性を比較検討した。 3施設において2017年から2023年の間にSACを施行した247名・287病変を対象に後方視的解析を行い、傾向スコアマッチングにより各群46例ずつを抽出した。術後1年時点での完全閉塞率(Raymond class I)は、**LVIS群52%に対してAtlas群24%**と、LVIS群が有意に高率であった(P=.007)。術直後の完全閉塞率および体積塞栓率(VER)もLVIS群で有意に優れていた。一方、虚血・出血性合併症、再開通率、再治療率は両群間で差を認めなかった。 以上より、10mm未満の未破裂ICA動脈瘤においてLVISステントは、周術期合併症を増加させることなく、Neuroform Atlasと比較して有意に高い完全閉塞率を達成することが示された。

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2026/03/30

カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築

論文タイトル
Establishment of an in vivo-based assay using a silkworm infection model for phenotypic evaluation of antimicrobial drug combinations against Mycobacterium abscessus
論文タイトル(訳)
カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築
DOI
10.1128/aac.01665-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
八木 瑛穂 内田 龍児 他
所属
東北医科薬科大学 薬学部天然物化学教室
著者からのひと言
本研究では、カイコM. abscessus感染モデルを用いて、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的かつ網羅的に評価可能なin vivo評価系を確立しました。従来のin vitro評価では捉えきれなかった薬剤間相互作用を、用量依存的に可視化できる点が特徴です。さらに、in vivo評価指標であるFEDIを導入し、相乗・拮抗作用を定量的に判定可能としました。本手法は、抗菌薬併用療法の合理的設計に資する新たな評価基盤となることが期待されます。

抄訳

非結核性抗酸菌Mycobacterium abscessusは高度な薬剤耐性を示し、治療には多剤併用療法が不可欠であるが、併用効果の評価は主にin vitro系に依存している。本研究では、カイコ(Bombyx mori)感染モデルを用い、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的に評価可能なin vivo表現型評価系を構築した。本評価系では、複数用量の組み合わせを網羅的に検討することで、用量依存的な薬剤間相互作用を生存率に基づいて評価できる。さらに、in vivoにおける併用効果を定量化する指標としてfractional effective dose index(FEDI)を導入し、相乗・拮抗作用の判定を可能とした。クラリスロマイシン+アミカシンにおける拮抗作用およびイミペネム+セフォキシチンにおける相乗効果は、既報のin vitro結果と同様の傾向を示し、本評価系の有用性が示された。本手法は倫理的負担が少なく、哺乳類モデルでは困難な多数条件の系統的評価を可能とすることから、抗菌薬併用療法の最適化および前臨床段階における有用な評価基盤となることが期待される。

 

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2026/03/30

日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見

論文タイトル
Thirteen-Year Trends and Advancements of Endovascular Therapy for Dural Arteriovenous Fistulas in Japan: Insights from a Nationwide Study of 6470 Procedures
論文タイトル(訳)
日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見
DOI
10.3174/ajnr.A8840
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
November 2025, 46 (11) 2273-2278
著者名(敬称略)
村井 智 他
所属
川崎医科大学 脳神経外科
著者からのひと言
本論文は、全国6470件という大規模データを用いて、日本の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の進歩を明らかにした点が大きな特徴です。Onyx®などの導入により治療成績が向上した一方で、安全な普及には指導医の関与が重要であることも示しました。新しい技術の恩恵を最大限に活かすには、教育体制の充実も不可欠である伝える意義深い報告です。

抄訳

頭蓋内硬膜動静脈瘻は比較的まれな疾患であるが、静脈梗塞やくも膜下出血を引き起こすことがある。本研究では日本脳神経血管内治療学会の全国レジストリー (JR-NET)に登録された2007年から2019年の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療6470例を解析し、治療方法や治療成績の変化を検証した。その結果、Onyx®などの析出型液体塞栓物質が導入されたことで、従来は直達手術が行われることの多かったテント部や前頭蓋窩の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の件数が約5倍に増加し、経動脈的塞栓術の完全閉塞率も有意に向上した。一方で、これらの新しい塞栓物質の使用は合併症リスクとも関連していたが、学会認定指導医による監督下で治療を行うことで、そのリスクが低減されることも示された。

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2026/03/30

シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
 

論文タイトル
Intrinsic period stability of the cyanobacterial circadian oscillator across in vitro and in vivo conditions
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
DOI
10.1073/pnas.2526714123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2526714123
著者名(敬称略)
三輪 久美子 他
所属
大阪大学 生命惑星進化学グループ
著者からのひと言
本研究は、約25年にわたり、故近藤特別教授の研究室でこつこつと積み重ねてきた成果です。実験で、シアノバクテリアの細胞内や試験管内のとてもきれいなリズムを見るたびに、1ミリメートルの500分の1程度しかない小さな微生物の中に、これほど正確な時計を生み出す仕組みがあるという事実に、いつも驚かされます。

抄訳

多くの生物は昼夜の環境変化に適応するため、約24時間周期の体内時計を備えています。体内時計は気温や光が変わっても周期がほとんど変わらず、高い精度で保たれることが知られています。シアノバクテリアの体内時計は試験管内で再現することができ、3つの時計タンパク質(KaiC、KaiA、KaiB)を試験管の中で混合すると、KaiCの活性が約24時間周期のリズムを示します。しかし、細胞内では遺伝子の働きも関わるため、時計の正確さを決めているのがタンパク質か細胞全体かは長年の課題でした。本研究では、細胞内と試験管内のリズムを比較し、時計の精度がKaiCという単一タンパク質の性質に備わっていることを明らかにしました。さらに、細胞内では周期がわずかに調整され、地球の昼夜のリズムに近づく可能性も示されました。これらの結果は、生物が正確に時間を刻む仕組みの理解を大きく前進させるものです。

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2026/03/25

インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する

論文タイトル
N-glucosylation of indole-3-acetyl amino acids modulates auxin metabolism and growth traits in Oryza sativa
論文タイトル(訳)
インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する
DOI
10.1073/pnas.2527570123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2527570123
著者名(敬称略)
善治 杏菜, 秦 毅実彦, 瀬上 紹嗣, 榊原 均 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 植物情報分子研究室
著者からのひと言
本研究では、オーキシン代謝にこれまで見落とされていた「分岐経路」を見出し、成長ホルモンの働きを支える新しい調節概念を提示しました。代謝中間体の行き先が環境応答や形質に影響することを示した点は、基礎科学として重要であると同時に、作物の適応性や肥料利用効率の改良にもつながる知見です。ホルモン代謝の再解釈を通じて、植物の成長制御の理解を一歩進めた成果と考えています。

抄訳

植物ホルモンであるオーキシン(インドール酢酸、IAA)は、根や穂の形成など作物の成長と収量を左右する重要な因子である。本研究では、イネにおいてIAAのアミノ酸結合体に糖を付加する酵素IAAspGTを同定し、オーキシン代謝に新たな分岐経路が存在することを明らかにした。IAAはアミノ酸結合後に酸化反応により不可逆的に不活性化されるが、本酵素はアミノ酸結合体を酸化される前にN-グルコシル化することで、再利用可能な安定な代謝プールへと変換する機能を持つ。さらに、この酵素活性には品種間差が存在し、高活性型対立遺伝子は低栄養条件下での根系発達や穂への同化産物配分に影響を与えることが示された。本成果は、オーキシン代謝の新たな制御機構を提示するとともに、環境適応性や肥料利用効率に優れた作物育種への応用可能性を示すものである。

 

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2026/03/24

未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較

論文タイトル
Feasibility and Safety of 8F Guiding Catheter Navigation in Transradial Neurointervention for Unruptured Intracranial Aneurysms: A Propensity Score–Matched Comparison of Sheath-Based versus Sheathless Approaches
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較
DOI
10.3174/ajnr.A8987
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
February 2026, 47 (2) 363-370
著者名(敬称略)
府賀 道康 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科
著者からのひと言
経橈骨動脈アプローチでは、大口径デバイス使用時の安全性が常に課題となります。本研究は、未破裂脳動脈瘤治療における8Frガイディングカテーテル使用時に、8Frシース併用がシースレス法と比べて橈骨動脈閉塞や攣縮を抑えつつ、成功率や他の合併症を損なわない可能性を示しました。TRAの実践を一歩前進させる知見です。

抄訳

近年、脳血管内治療では、穿刺部合併症の少なさや患者負担の軽減から、経橈骨動脈アプローチ(TRA)が広く用いられている。一方、8Frのような大口径デバイス使用時には、橈骨動脈閉塞や攣縮などのアクセス部合併症が懸念されるため、挿入システム全体の外径を抑える目的でシースレス法が選択されることも多い。しかし、8Frシース併用法とシースレス法を直接比較した検討はこれまで限られていた。本研究では、未破裂脳動脈瘤に対して8Frガイディングカテーテルを用いてTRAで治療した症例を後方視的に解析し、8Frシース併用群とシースレス群を比較した。傾向スコアマッチ後の解析では、手技成功率に有意差を認めなかった一方、シース併用群では橈骨動脈閉塞および橈骨動脈攣縮の発生率が有意に低かった。アクセス部・非アクセス部合併症の増加も認めず、未破裂脳動脈瘤に対するTRAにおいて、8Frシース併用は実行可能かつ安全であり、適切な症例では有用な選択肢となる可能性が示された。

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2026/03/18

脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化

論文タイトル
Digital FDG-PET Detects MYD88 Mutation-Driven Glycolysis in Primary CNS Lymphoma
論文タイトル(訳)
脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化
DOI
10.3174/ajnr.A8935
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
January 2026, 47 (1) 117-125
著者名(敬称略)
佐々木麻結 立石 健祐 他
所属
横浜市立大学脳神経外科
著者からのひと言
本研究では、dFDG-PETにおけるFDG集積の亢進が、MYD88遺伝子変異に関連する明確な神経画像学的特徴として同定されました。この知見は、PCNSLにおける画像検査を用いた遺伝学的分類を支援するツールとして、dFDG-PETが有する潜在的な有用性を示唆するものであり、また今後の個別化治療戦略への応用が期待されるところです。

抄訳

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)におけるFDG-PET所見と糖代謝関連遺伝子異常との関連は十分に解明されていない。本研究では、解糖系活性を促進する主要な遺伝子異常であるMYD88変異を、半導体PETにより非侵襲的に検出可能か検討した。PCNSL 54例(55病変)を対象に、SUVmaxおよび腫瘍対背景比(TBR)とMYD88変異との関連を解析した。その結果、半導体FDG-PETではMYD88変異例でSUVmaxおよびTBRが有意に高値を示し、TBRは高い診断能(AUC=0.913)を示した。多変量解析でも両指標は独立した予測因子であった。さらにトランスクリプトーム解析により、MYD88変異例で解糖系関連遺伝子の発現亢進が確認された。以上より、半導体FDG-PETはMYD88変異に伴う代謝亢進を反映する有用な非侵襲的診断法となり得る。

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