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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/10/21

 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす

論文タイトル
Skin-resident CXCR6+ memory CD4+ T cells and dendritic cells form dermal perivascular hubs that drive relapse in allergic dermatitis
論文タイトル(訳)
 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす
DOI
10.1016/j.immuni.2026.09.010
ジャーナル名
Immunity
巻号
Immunity, October 12, 2026
著者名(敬称略)
椛島 健治 他
所属
京都大学大学院医学研究科 皮膚科学
著者からのひと言
 本研究は、途中で何度も挫折しそうになる困難に直面しましたが、そのたびに筆頭著者の朝比奈良太君が粘り強く乗り越え、ようやく実を結んだものです。今回同定した分子機構は、アトピー性皮膚炎の再燃を防ぐ、すなわち対症療法にとどまらない、より根本的な治療法の開発につながる可能性を秘めています。さらに、この仕組みはアトピー性皮膚炎に限らず、他の慢性炎症性疾患にも共通する可能性があり、今後の幅広い疾患への応用を期待しています。

抄訳

 アトピー性皮膚炎は、治療によって症状が改善しても再発を繰り返すことが多い。その背景には、皮膚に長期間残存する組織常在性メモリーT細胞(TRM細胞)の関与が示唆されているが、その維持機構は十分に解明されていなかった。
本研究では、複数のアレルギー性皮膚炎モデルを用いて、CXCR6を発現するCD4陽性TRM細胞が、炎症の再発を迅速に誘導する病原性細胞集団であることを明らかにした。さらに、これらの細胞は皮膚の血管周囲でCD301b陽性樹状細胞(cDC2)と集積し、CXCL16–CXCR6を介した相互作用によって局所で維持されることを見いだした。このシグナルを阻害すると、病原性TRM細胞の増殖と維持が抑制された。
興味深いことに、ヒトのアトピー性皮膚炎においても、IL-13阻害薬による治療で症状が改善した後の皮膚に、同様の細胞集積が残存していた。
本研究は、アトピー性皮膚炎が再発する仕組みの一端を解明するとともに、CXCL16–CXCR6経路を標的とした再発予防につながる新たな治療戦略の可能性を示した。

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2026/10/20

細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する

論文タイトル
Quiescence to proliferation transition regulates asynchronous mitochondrial DNA replication dynamics
論文タイトル(訳)
細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する
DOI
10.1073/pnas.2602028123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2602028123
著者名(敬称略)
宮川 清、細谷 紀子
所属
東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 放射線分子医学部門
著者からのひと言
 ミトコンドリアDNAでは、細胞核DNAとは異なり、リーディング鎖とラギング鎖の複製が同期しないことが知られていましたが、なぜ極めて単純な環状構造DNAにこの非同期複製が必要とされるかは長年不明でした。今回その1分子解析によって生物学的意義の一つが解明されたことによって、エネルギー代謝と細胞機能の関係について今後新しい展開が期待されます。

抄訳

一つのヒト細胞は数百から数千コピーのミトコンドリアDNAを有しますが、その一部のみが細胞周期に関係なく複製します。リーディング鎖とラギング鎖の非同期複製がミトコンドリアDNAの主な複製機構とされていますが、これまでは、細胞内で刻々と変化するDNA複製動態を観察することが難しかったために、その制御機構の解明は困難でした。本論文は、各鎖の複製開始部位と時間を鑑別するミトコンドリアDNA1分子解析法を用いることにより、細胞の休止期から増殖期への移行過程では、ミトコンドリアDNAの鎖特異的な複製頻度が動的に解離し、複製・転写に必要な分子の要求度が変化することを示しました。すなわち、この過程では、ミトコンドリアRNAポリメラーゼの複製開始における要求度が高まるとともに、DNA障害部位でDNA再プライミングを行うプライマーゼ-ポリメラーゼの要求度が低下します。このように、単鎖レベルで正確にミトコンドリアDNA複製頻度を定量化することで、休止期から増殖期への移行過程におけるミトコンドリアDNA複製機構の動的な性状が明らかになりました。

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2026/10/19

 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス

論文タイトル
Trans- and cis-interaction dynamics of cadherin complexes on membranes visualized by high-speed atomic force microscopy
論文タイトル(訳)
 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス
DOI
10.1073/pnas.2620441123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2620441123
著者名(敬称略)
西口 茂孝 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
モレキュラーバイオシステム研究部門
著者からのひと言
 細胞間接着タンパク質の機能は、隣り合う膜間の結合 (トランス結合) と同一膜上の結合 (シス結合) によって異なることが推察されていますが、これらの相互作用を識別して解析することは実現されていませんでした。本研究では、高速原子間力顕微鏡と人工膜システムを組み合わせることによって、膜タンパク質のトランス、シス結合を識別しながらリアルタイムで解析することを可能にしました。様々な膜タンパク質の相互作用解析に応用可能な成果です。

抄訳

 カドヘリンは、細胞同士を接着させ、動物のからだを形成・維持するために重要な細胞間接着タンパク質です。カドヘリンによる細胞間接着には、向かい合う細胞間のトランス相互作用と、同じ細胞膜上のシス相互作用による分子の集合が重要と考えられています。しかし、膜上でこれらの相互作用がどのように形成され、カドヘリンがどのように集合するのか、その動的な過程は十分にわかっていませんでした。本研究では、カドヘリンのトランス・シス相互作用を人工膜上に再構成し、高速原子間力顕微鏡を用いて直接観察しました。その結果、トランス結合したカドヘリンが向きや位置を変えながら動的に相互作用する様子や、シス相互作用を介した多様な相互作用パターンを捉えました。さらに、過去に報告された結晶構造とは異なる複合体構造も観察され、カドヘリンが膜上で複数の会合経路を介して動的かつ多様な構造を形成することが示唆されました。

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2026/10/19

 S-アデノシル-L-ホモシステインはYBT1 ABCトランスポーターを介して寿命を延長する適応応答(ホルミシス)を誘導する

論文タイトル
S-adenosyl-L-homocysteine triggers an adaptive response that extends lifespan through the YBT1 ABC transporter
論文タイトル(訳)
 S-アデノシル-L-ホモシステインはYBT1 ABCトランスポーターを介して寿命を延長する適応応答(ホルミシス)を誘導する
DOI
10.1073/pnas.2621286123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2621286123
著者名(敬称略)
益村晃司 川嵜紗矢佳 水沼正樹 他
所属
広島大学大学院統合生命科学研究科 生物工学プログラム 健康長寿学研究室
著者からのひと言
「適度なストレスは体に良い」とされる仕組みが、世界で初めて解明されました。これまで、軽微なストレスが寿命を延ばす現象は知られていましたが、「どの程度なら健康に良く、どこからが悪影響か」という境界線は長年の謎でした。今回、細胞内の特定の酵素がその運命を握るスイッチであることや、ストレスが若返りシグナルを起動する仕組みを特定しました。

抄訳

 細胞やDNAに傷をつける「悪玉」とされてきた活性酸素(ROS)ですが、軽微なストレスはむしろ細胞の防御力を高めて寿命を延ばす「善玉(ホルミシス効果)」として機能します。しかし、「どの程度のストレスなら善玉になり、どこを超えると悪玉になるのか」という運命の境界線(閾値)は、世界の老化研究において長年の大きな謎でした。
本研究では、メチオニン代謝物であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の量を調節する「SAH加水分解酵素」の活性を適度に(部分的に)抑えることで、細胞内で一過性のマイルドなROS(善玉)が発生し、これが引き金となって寿命が延長することを世界で初めて定量的に明らかにしました。逆に、阻害が強すぎると悪玉ROSが溜まり短命になるという「二面性」の境界線を握るスイッチが、まさにこの酵素であることを突き止めました。
さらに、この長寿効果の下流で働く鍵因子として、液胞膜(リソソーム)に存在するABCトランスポーター「Ybt1」を特定しました。通常は排出ポンプと考えられているYbt1が、老化を促進する代謝物質・S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)を液胞内へ空間的に「隔離」するという、これまで知られていなかった役割を担っていることを立証しました。これにより細胞内が疑似的な「メチオニン制限状態」となり、若返りシグナルであるAMPKの活性化やTORC1の抑制、オートファジーが引き起こされて寿命が延長します。
本研究の成果は、食事制限を伴わない健康寿命の延伸や、メチオニンに依存して増殖するがん細胞を標的とした新たな治療戦略の確立に大きく貢献するものと期待しています。

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2026/10/19

TCR–mTORC1シグナルはTETタンパク質の翻訳促進を介して制御性T細胞におけるFoxp3発現のエピジェネティックな安定化を促す

論文タイトル
TCR–mTORC1 signaling promotes epigenetic stabilization of Foxp3 expression in regulatory T cells via TET protein translation
論文タイトル(訳)
TCR–mTORC1シグナルはTETタンパク質の翻訳促進を介して制御性T細胞におけるFoxp3発現のエピジェネティックな安定化を促す
DOI
10.1073/pnas.2612904123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2612904123
著者名(敬称略)
筆頭著者:木下 誠秀.連絡著者:中島 啓、堀 昌平
所属
東京大学大学院薬学系研究科 免疫・微生物学教室
著者からのひと言
私たちの体の細胞は、周囲からさまざまな刺激を受け、異なる性質や機能を獲得します。しかし、こうした一過性の刺激が、どのように遺伝子の働きを長期にわたって変化させ、細胞の性質を安定的に維持するのか、その仕組みは十分に分かっていません。本研究では、制御性T細胞をモデルとして、細胞外からの刺激がDNA脱メチル化を促し、細胞の性質を安定化させる分子機構の一端を明らかにしました。この発見が、細胞分化と細胞記憶の仕組みの解明に貢献するとともに、免疫寛容の成立と維持の理解を深め、将来的には制御性T細胞を用いた細胞療法の開発にもつながることを期待しています。

抄訳

制御性T細胞(Treg)は、病的な免疫応答を抑え、免疫寛容の維持に重要な役割を果たしています。その機能を安定して維持するには、マスター転写因子Foxp3の持続的な発現が不可欠であり、これにはFoxp3遺伝子の発現を制御するエンハンサー領域(TSDR)がT細胞受容体(TCR)刺激依存的にDNA脱メチル化を受けることが重要です。しかし、TCR刺激がどのような仕組みでDNA脱メチル化を誘導するのかは不明でした。本研究では、培養系で誘導したTregを用い、強く持続するTCRシグナルがmTORC1を活性化し、DNA脱メチル化を担うTET2とTET3の翻訳を促進することで、TSDRのDNA脱メチル化を促進し、Foxp3発現の安定化と免疫抑制機能の獲得につながることを明らかにしました。さらに、マウス生体内でもmTORC1がFoxp3のエピジェネティックな制御に関与することを示しました。本成果は、抗原受容体シグナルとエピジェネティックな遺伝子発現制御を結びつける新たな分子機構を明らかにし、安定したTregを用いた細胞療法の開発にもつながると期待されます。

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2026/10/19

ランダムPCR法とナノポア全ゲノムシーケンシングによる血液培養陽性化前の真菌血流感染症の検出

論文タイトル
Random PCR-based nanopore whole-genome sequencing enables pre-positivity detection of fungal bloodstream infections
論文タイトル(訳)
ランダムPCR法とナノポア全ゲノムシーケンシングによる血液培養陽性化前の真菌血流感染症の検出
DOI
10.1128/spectrum.00478-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00478-26
著者名(敬称略)
吉岡 育哲、内田 百岳、 高橋 弘喜 他
所属
千葉大学真菌医学研究センター 微生物資源分野 微生物創生プロジェクト
著者からのひと言
本研究で強調したい点は、従来の血液培養システムで陽性と判定される前の段階で、血液培養検体から原因真菌を直接同定できることである。宿主由来DNAの選択的除去とリアルタイムナノポアシーケンシング技術を組み合わせることで、約7時間で菌種レベルの同定が可能となった。本技術により、臨床現場で適切な抗真菌薬治療をより早期に開始できるようになり、生命を脅かす重篤な真菌血流感染症患者の予後改善に貢献することが期待される。

抄訳

真菌による血流感染症は致死率の高い重篤な感染症であり、患者の予後改善には原因真菌の迅速かつ正確な同定が重要である。しかし、従来の血液培養法では、原因真菌の検出・同定までに数日を要することが課題となっている。本研究では、ランダムPCR法とナノポアシーケンシング技術を組み合わせ、血液培養が陽性となる前の段階で原因真菌を検出・同定する新たな解析手法を開発した。本手法では、血液培養検体から宿主由来DNAを選択的に除去した後、真菌DNAを増幅し、リアルタイムで全ゲノムシーケンシング解析を行う。これにより、検体処理から約7時間で原因真菌を菌種レベルで同定することが可能となった。さらに、得られたゲノム情報は薬剤耐性関連変異の検出や菌株間の遺伝的関連性の解析にも活用できる。本技術は、真菌血流感染症の早期診断と適切な抗真菌薬治療の迅速な開始を可能にし、患者の予後改善に貢献することが期待される。

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2026/10/15

シロアリ腸内菌によるセルロース分解と共役した細胞外電子移動

論文タイトル
Cellulose-fueled extracellular electron transfer in termite gut microbes.
論文タイトル(訳)
シロアリ腸内菌によるセルロース分解と共役した細胞外電子移動
DOI
10.1128/aem.01272-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e01272-26
著者名(敬称略)
Xiao Deng 他
所属
国立研究開発法人物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター バイオ材料分野 電気化学ナノバイオグループ
著者からのひと言

抄訳

シロアリは、木材の主成分であるセルロースを効率よく分解できる生き物です。その秘密を支えているのが、腸内にすむセルロース分解微生物です。本研究では、シロアリ腸内細菌がセルロースを分解しながら、細胞の外へ電子を放出して「電流」を生み出すという「細胞外電子移動」を行うことを発見しました。さらに、細菌自身が「電子メディエーター」を分泌し、それが細胞内で生じた電子を細胞の外へ運ぶ過程で重要な役割を果たすことを発見しました。また、生きたシロアリからそのまま取り出した腸内微生物群そのものでも、セルロース代謝と共役した電流生成が確認されました。これは、シロアリ腸内菌が木質バイオマスに蓄えられたエネルギーを電気として取り出す仕組みの一端を示すものです。将来的には、廃木材などの未利用バイオマスから電気や有用物質を生み出す、環境調和型バイオ技術への応用が期待されます。

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2026/10/15

亜テルル酸耐性と糖発酵試験を用いた高病原性Klebsiella pneumoniaeの表現型スクリーニング

論文タイトル
Phenotypic screening of hypervirulent Klebsiella pneumoniae using tellurite resistance and carbohydrate fermentation testing
論文タイトル(訳)
亜テルル酸耐性と糖発酵試験を用いた高病原性Klebsiella pneumoniaeの表現型スクリーニング
DOI
10.1128/spectrum.01838-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e01838-26
著者名(敬称略)
大山 晃司 鈴木 匡弘 他
所属
藤田医科大学 医学部 微生物学講座
著者からのひと言
高病原性Klebsiella pneumoniaeを一般の臨床検査室で簡便に識別することは容易ではありません。従来、string testが簡便なスクリーニング法として用いられてきましたが、その判別性能には限界があります。本研究では、亜テルル酸耐性と糖発酵試験を組み合わせることで、高病原性K. pneumoniaeを簡便にスクリーニングできる可能性を示しました。

抄訳

高病原性Klebsiella pneumoniae(hvKp)は重篤な侵襲性感染症を引き起こすが、一般の臨床検査室で簡便にスクリーニングすることは難しい。本研究では、K. pneumoniae species complex 193株を対象に、亜テルル酸耐性と糖発酵試験を評価した。全ゲノム解析により、5つの病原性関連遺伝子のうち4つ以上を保有する株を高病原性株と定義した。高病原性株とter遺伝子の保有には強い関連があり、亜テルル酸添加培地での発育はter遺伝子の保有状況とよく一致した。亜テルル酸カリウムとアドニトールを添加したマッコンキー寒天培地を用いた高病原性株のスクリーニング法は、感度86.8%、特異度89.6%で、従来のstring test(感度73.5%、特異度72.0%)と比較して高い判別性能を示した。また、ST23の全株がズルシトール発酵陽性、L-ソルボース発酵陰性を示した。本法は、hvKpの簡便なスクリーニングに有用である可能性があり、糖発酵パターンは特定の高病原性関連系統の推定同定にも役立つと考えられた。

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2026/10/15

浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性

論文タイトル
Fine-scale structural diversification among closely related Legionella pneumophila isolates from a bath-associated environmental reservoir.
論文タイトル(訳)
浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性
DOI
10.1128/aem.01127-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e01127-26
著者名(敬称略)
中嶋 直樹 他
所属
神奈川県衛生研究所 微生物部
著者からのひと言
本研究では、個々の検体から多数のコロニーを分離して解析することで、同一浴場環境中に存在するレジオネラ属菌のゲノム構造の多様性を明らかにしました。本研究が、レジオネラ属菌の環境中での多様化の理解や、感染源調査におけるゲノム解析手法の検討に役立てば幸いです。

抄訳

レジオネラ症の感染源調査では、コアゲノム一塩基変異(cgSNV)解析が分離株間の遺伝的近縁性の評価に用いられるが、近縁株間に存在するゲノム構造の違いを十分に捉えられない可能性がある。本研究では、レジオネラ症患者および関連する浴場施設の環境試料から分離されたLegionella pneumophila 138株を対象に、cgSNV解析と比較ゲノム構造解析を組み合わせ、近縁株間のゲノム多様性を調査した。cgSNV解析では全株間のSNV差が最大20であり、臨床由来株が遺伝的に均一な系統を形成する一方、環境由来株には多様な遺伝子型が認められた。さらに、代表48株のコンプリートゲノム配列を比較した結果、ゲノムシンテニーはほぼ保存されていたものの、挿入配列(IS)、特にIS256の挿入位置に顕著な多様性が認められた。同一のcgSNV遺伝子型を共有する株間でもIS挿入パターンが異なっており、ISに関連した構造的変異がコアゲノムSNVの蓄積とは独立して生じ得ることが示唆された。

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2026/10/13

 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構

論文タイトル
Step-by-step maturation mechanism of the binary toxin pore revealed by cryo-EM analysis
論文タイトル(訳)
 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構
DOI
10.1073/pnas.2627537123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2627537123
著者名(敬称略)
筆頭著者:山田 等仁  連絡著者:津下 英明 
所属
京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科
著者からのひと言
 膜孔はいかにして出来上がるのか。まず、モノマーとして発現したタンパク質は、プロテアーゼによってプロ配列が切断され、7量体の可溶性プレ膜孔を形成します。さらにβバレルからなる「注射針」が形成され、膜に穴をあける膜孔へと成熟します。本研究では、これまで謎であったプレ膜孔が出来上がる過程を明らかにしました。段階を踏んで巧妙かつ合理的に膜孔が組み上がっていく仕組みは、まさに驚きです。

抄訳

膜孔形成タンパク質はそれがリング状に集合して多量体となり、細胞膜等に貫通する孔を形成し、感染や免疫、細胞殺傷に関与することが知られています。膜孔形成タンパク質は最初に不活性のプレ膜孔を形成し、その後に膜貫通型の膜孔に構造変化することが知られていましたが、これがどのような順序で進行するかは深く理解されてきませんでした。我々は細菌が産生する膜孔形成タンパク質の研究に取り組み、膜孔への構造変化が立体的な制約によって停止した試料「Ibロゼッタ」を得ることに成功し、クライオ電子顕微鏡を用いて構造解析を行いました。その結果、プレ膜孔と膜孔に加え、その中間段階に対応する複数の構造を解明することができました。これによって、プレ膜孔から膜孔への構造変化は、段階的かつドミノ倒しのように秩序だって進行することが明らかになりました。本研究から得られた知見は、膜孔形成タンパク質の分子メカニズムの理解を深めるだけでなく、膜孔を利用した研究用ナノデバイスの設計等への応用が期待されます。

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2026/10/13

ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明

論文タイトル
Uncovering the role of dimerization on dynamics and inhibitor stability in human versus Xenopus LTA4H.
論文タイトル(訳)
ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明
DOI
10.1016/j.bpj.2026.03.027
ジャーナル名
Biophysical journal
巻号
Biophysical Journal, 2026; 125, 4300-4312
著者名(敬称略)
Gert-Jan Bekker, Sandhya P. Tiwari
所属
大阪大学 蛋白質研究所
著者ウェブサイト
著者からのひと言
This work is an exploration of the impact of oligomer assembly on small molecule stability in a very special, bifunctional enzyme. We are currently pursuing protein engineering efforts to switch the dimer/monomer states of human and X. laevis LTA4H, to better understand how their conformational dynamics and inhibition are altered.

抄訳

ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)は、炎症を促進するロイコトリエンB4の生合成の最終段階を担う酵素です。M1ファミリーの金属ペプチダーゼに属し、エポキシド加水分解酵素とアミノペプチダーゼの二つの活性を持ちます。本研究では、LTA4H阻害剤ベスタチンの結合が酵素の構造動態に及ぼす影響を調べました。ヒトの単量体とX. laevisの二量体のX線結晶構造を基に、阻害剤の有無および単量体・二量体の条件で全原子分子動力学シミュレーションを行い、比較解析しました。その結果、X. laevisの二量体ではサブユニット間の相互作用が活性部位とC末端ドメインの連動を変化させ、ベスタチンの結合を不安定にすることが示唆されました。この影響は、サブユニットを単独にすると弱まりました。本研究は、創薬において静的な構造だけでなく、酵素の会合状態と動的な性質を考慮する重要性を示しています。

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2026/10/13

thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加

論文タイトル
Patagonian Ice Sheet discharge enhanced by AMOC slowdown through thermal bipolar seesaw
論文タイトル(訳)
thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加
DOI
10.1073/pnas.2532733123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (38) e2532733123
著者名(敬称略)
粕谷 拓人 他
所属
国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境研究部門 地球表層システム研究センター

抄訳

全球の気候を調節する重要な役割を担う大西洋子午面循環(AMOC:Atlantic Meridional Overturning Circulation)は、将来的な弱化が懸念されているものの、遠隔地への影響には不明点が多く残されている。最終氷期に繰り返し発生したAMOCの弱化は、その影響が北大西洋から遠く離れた地域へどのように波及するかを理解する手がかりとなる。本研究では、南東太平洋チリ沖で得られた海底堆積物記録と気候モデル実験を組み合わせ、当時のAMOC弱化が南半球中・高緯度域に及ぼした影響を調査した。その結果、AMOCの弱化に応答して、パタゴニア氷床からの堆積物や融解水の流出が繰り返し増加したことを示す証拠を得た。数値シミュレーションからは、AMOC弱化に伴う南太平洋の海水温上昇と南半球偏西風帯の強化が、パタゴニアを含む南半球中・高緯度域の降水量の増加や氷床縁辺部での融解を促進した可能性が示された。本研究は、両半球間の熱の再分配(thermal bipolar seesaw)を介した大気・海洋循環の変化を通じて、AMOCの弱化が南半球中・高緯度域にまで広範な気候変動を引き起こし得ることを示している。

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2026/10/06

HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序

論文タイトル
Digenic HNF1A and ABCC8 variants provide mechanistic insight into early-onset diabetes
論文タイトル(訳)
HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序
DOI
10.1210/clinem/dgag183
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 10, October 2026, Pages 2827–2836
著者名(敬称略)
本田 真希江 堀川 幸男 他
所属
岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学
中部国際医療センター ゲノム医療研究センター・健康管理センター
著者からのひと言
MODY疑い例では、一つの原因遺伝子が同定されても、他の病的バリアントが発症時期や病態を修飾する可能性がある。本研究は、HNF1AとABCC8の病的バリアントの相加的作用を機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

抄訳

MODY様家系の発端者にHNF1A、HNF1B、ABCC8の3遺伝子に4変異を同定した。機能解析の結果、HNF1A p.Ser551Lysfs*2は転写活性が野生型の約5%に低下し、ABCC8 p.Arg298Cysはチャネル活性が77%に低下した。一方、HNF1Bともう片方のABCC8のバリアントは野生型と同等であった。家系解析ではHNF1AとABCC8の病的バリアントをそれぞれ糖尿病罹患した父と母から継承し、両変異を有する発端者は両親より早期に発症していた。子宮内高血糖曝露に加えてHNF1AとABCC8の病的バリアントが相加的に作用してMODYの発症に寄与することを機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

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2026/10/02

同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性

論文タイトル
The diagnostic potential of combined quantitative polymerase chain reaction and next-generation sequencing using the same primers for periprosthetic joint infection.
論文タイトル(訳)
同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性
DOI
10.1128/spectrum.04128-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e04128-25
著者名(敬称略)
植田 成実
所属
日本赤十字社 和歌山医療センター 整形外科
著者からのひと言
本研究では、整形外科領域でこれまでほとんど検討されてこなかった低バイオマス検体のNGS解析に着目し、qPCRによる菌量評価と各種対照、汚染除去解析を組み合わせ、NGS結果を信頼して解釈するための定量的な境界を検討しました。本手法はPJI診断のみならず、低バイオマス検体を扱う他の診療領域におけるNGSの信頼性向上と今後の発展にもつながることを期待しています。

抄訳

人工関節周囲感染症(PJI)では、培養検査で原因菌を同定できない症例があり、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子診断が期待されている。一方、低バイオマス検体では環境由来のコンタミネーションが結果に影響するが、整形外科領域では十分な定量的検討が行われていなかった。本研究では、16S rRNA遺伝子V1–V2可変領域を標的とした同一プライマーによる定量PCR(qPCR)とNGS(Fusion Method)を行い、QIIMEによるシーケンス解析に加え、定量positive control、negative controlおよびmock communityを用いた検証と、decontamによる汚染候補配列の除去を行った。 qPCRは高い再現性を示し、NGSで細菌を安定して同定できる菌量に基づく定量カットオフを設定した。また、培養陰性例でも細菌を検出し、その後の臨床経過と一致する症例を認めた。qPCRによる菌量評価と汚染除去の併用により、低バイオマス検体におけるNGS結果の信頼性を高められる可能性が示された。

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2026/10/02

SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例

論文タイトル
Critical airway obstruction associated with extensive subglottic inflammatory slough and oedema following severe acute respiratory syndrome SARS-CoV-2 infection in a child
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例
DOI
10.1136/bcr-2026-273982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e273982
著者名(敬称略)
太田 陽一朗 大村 和弘 他
所属
東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室
著者からのひと言
 SARS-CoV-2感染では、典型的なクループの好発年齢を超えた小児であっても、広範な炎症性付着物や高度な声門下浮腫により、急速に重篤な気道閉塞へ進展するリスクがあります。本症例を通して、適切な喉頭評価、耳鼻咽喉科・麻酔科・小児科等が緊急時に連携できる体制構築、そして迅速な気道確保の重要性を共有できれば幸いです。

抄訳

本症例は、SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物と高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児の1例である。基礎疾患のない学童期児が咽頭痛と進行性呼吸困難で受診した。喉頭内視鏡検査で声帯周囲に広範な炎症性付着物を認め直ちに手術室へ搬送した。搬送中に意識消失と酸素飽和度の80%への低下を認めたが、ビデオ喉頭鏡下に閉塞物質を除去したところ自発呼吸と意識が回復した。高度な声門下浮腫のため内径4.5 mmのチューブで気管挿管を行った。翌日に自己抜管を認めたが、アドレナリン吸入とデキサメタゾン投与により再挿管を回避し、保存的加療のもと第10病日に退院した。本症例は、SARS-CoV-2感染がクループ好発年齢を超えた小児にも重篤な気道閉塞を引き起こし得ることを示し、適切な設備環境と多職種連携による迅速な気道管理の重要性を示唆している。

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2026/10/01

ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Anaerostipes stercorihominis sp. nov., isolated from human faeces.
論文タイトル(訳)
ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007276
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 2026;76:007276
著者名(敬称略)
田辺 倫己、久富 敦、坂本 光央、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部
著者からのひと言
酪酸産生菌はヒトの健康維持に重要な役割を担う腸内細菌で、“腸内での酪酸産生菌の減少は万病の元”なのではないかと考えています。本菌がヒトの健康に及ぼす影響はまだわかっていませんが、本研究成果がヒトのウェルビーイングにつながればと考えています。

抄訳

Anaerostipes属は健常成人の腸内における主要な酪酸産生菌属の一つであり、腸内における存在量の低下は様々な疾病発症と関連する可能性が示唆されている。我々はヒト腸内有用菌の分離を進める中で、健常成人腸内から 17EGHSPOS18-1T 株を取得した。本菌株について多相分類学的な評価を行い、本菌がAnaerostipes属に分類される新種の酪酸産生菌であることを明らかにし、Anaerostipes stercorihominisとして提唱した。本菌種は近縁種と比較して利用可能な炭水化物の種類が限られており、この特徴はゲノム上にコードされる糖加水分解酵素の種類や数が限られていることと一致した。また、他のAnaerostipes菌種と同様に、糖からだけでなく、乳酸からも酪酸を産生する能力があることが明らかとなった。これは他の酪酸産生菌ではあまり見られない特徴であり、ビフィズス菌などの共生細菌が産生する乳酸からも酪酸を産生する能力があることから、ヒトの健康維持に重要な役割を担っている可能性も考えられた。 さらに、本研究を進める過程で、これまで別種として報告されていたAnaerostipes hominisとAnaerostipes faecisは同一種であることを明らかにし、A. faecisをA. hominisに統合することを提案した。

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2026/10/01

 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸

論文タイトル
Signatures of branched-chain fatty acids derived from a kidney reservoir confer stable chemical individuality on domestic cats
論文タイトル(訳)
 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸
DOI
10.1016/j.cub.2026.07.045
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 2026; 36, 4340-4353.e20
著者名(敬称略)
市沢翔太 宮崎雅雄 他
所属
岩手大学 農学部生命科学科
著者からのひと言
約20年前、ネコのフレーメン反応を観察したことから、「ネコは尿のにおいから相手の何を読み取っているのか」という疑問を持ちました。本研究は、その素朴な疑問を追い続けた末にたどり着いた成果です。腎臓に蓄えられた分岐鎖脂肪酸が、長期間変わりにくい「 においの個性 」をつくることを明らかにしました。途中で研究が中断した時期もありましたが、多くの共同研究者に支えられ、ようやく一つの形にまとめることができました。

抄訳

 動物は尿などのにおいを手掛かりに相手を識別しますが、時間とともに変化するにおいが、どのようにして安定した個体情報を保つのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、ネコのフレーメン反応を手掛かりに尿中成分を解析し、13種類の特殊な分岐鎖脂肪酸を同定しました。これらの種類と比率は個体ごとに異なる一方、同じ個体では採尿日が違っても比較的安定し、尿を室温で24時間置いた後も個体特有の組成が保たれました。さらに、ネコ自身が個体ごとに異なる分岐鎖脂肪酸の組成を嗅ぎ分けられることを行動試験で示しました。また、分岐鎖脂肪酸を含む脂質が腎臓皮質の脂肪滴に蓄積していることを発見し、この脂肪滴が個体特有の化学情報を安定して尿へ供給する貯蔵庫として働く可能性を示しました。さらに、ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、イリオモテヤマネコなどのネコ科動物でも関連する尿成分や腎臓の脂肪滴が確認され、その特徴がネコ科の進化の中で多様化してきた可能性が示されました。

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2026/09/30

 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす

論文タイトル
Tire wear particles impact a roadside wild plant species
論文タイトル(訳)
 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす
DOI
10.1016/j.cub.2026.06.087
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 36, R943-R944
著者名(敬称略)
都築洋一 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科
附属生態調和農学機構

抄訳

道路交通は現代の人間社会の基盤となる要素です。近年、タイヤと路面の摩擦によって発生する「タイヤ摩耗粒子」は、広範な生物に対して毒性を持つことが懸念されています。これまでの研究では水生生態系や農作物への影響が調査されてきましたが、道路近くに位置する公園や 路傍の緑化帯といった都市緑地への影響はほとんど解明されていませんでした。本研究では、日本で一般的な路傍雑草種であるイヌムギに対してタイヤ摩耗粒子の曝露実験を行いました。その結果、タイヤ摩耗粒子はシュート(地上部)および根の成長を著しく阻害することが実証されました。さらに、根における酸化ストレスを有意に上昇させました。これらの知見は、都市緑地生態系においてタイヤ摩耗粒子汚染が身近な野草にも害を与えていることを示しており、都市の緑地生態系全体へどのような影響が広がっているのか、詳しく調べる必要性を示しています。

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2026/09/29

Streptomyces属における二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの発現を制御するラクトン骨格含有シグナル分子制御系の分布

論文タイトル
Distribution of lactone-signaling system for expression of secondary metabolite biosynthetic gene clusters in Streptomyces species
論文タイトル(訳)
Streptomyces属における二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの発現を制御するラクトン骨格含有シグナル分子制御系の分布
DOI
10.1042/EBC20250059
ジャーナル名
Essays in Biochemistry
巻号
Essays Biochem 19 August 2026; 70 (2): 175–186
著者名(敬称略)
手島 愛子 荒川 賢治 他
所属
広島大学大学院統合生命科学研究科 
生物工学プログラム 微生物ケミカルバイオロジー研究室

抄訳

多くのStreptomyces属放線菌は、二次代謝産物生合成遺伝子クラスター(BGC)の発現を誘導するシグナル分子・受容体システムを有している。これまでに発見されたシグナル分子は、γ-ブチロラクトン、γ-ブテノライド、フランの3つのグループに分類され、アベノライド型を除くこれらの分子は、AfsAタンデムリピートドメインをもつ酵素によって生合成される。59個のafsAホモログ遺伝子についてゲノム上の配置を解析したところ、その86%(51/59)が、対応すると推定されるシグナル分子受容体遺伝子の近傍に位置していた。このことから、BGC発現に関与するシグナル分子・受容体システムは、遺伝子の位置関係から予測できる可能性が示された。一方、S. griseusではafsAと受容体遺伝子arpAが約3.91 Mb離れて存在するなど例外も認められた。シグナル分子と受容体の対応関係を明らかにすることは、シグナル分子による転写抑制解除を利用して休眠BGCを活性化する、新たなゲノムマイニング戦略につながると期待される。

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2026/09/28

DnaAによるロバストなssDNA結合を支える複製起点の自由度

論文タイトル
Origin flexibility governs robust ssDNA engagement by the DnaA initiator
論文タイトル(訳)
DnaAによるロバストなssDNA結合を支える複製起点の自由度
DOI
10.1073/pnas.2615469123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (38) e2615469123
著者名(敬称略)
清原菜々杜、尾崎 省吾 他
所属
九州大学 薬学研究院 分子生物薬学分野
著者からのひと言
この発見は、生命が進化の過程でゲノム配列を変化させながらもDNA複製という基本機能を維持してきたしくみを理解する上で重要な手がかりとなります。また、DnaAは細菌の増殖に必須のタンパク質であることから、その働きを標的とした新たな抗菌薬開発への応用も期待されます。

抄訳

DNA複製はすべての生物に必須の生命現象です。しかし、その開始点となるDNA配列は細菌の種類によって大きく異なります。それにもかかわらず、細菌は正確にDNA複製を開始し、自身のゲノムを次世代へ受け継いでいます。なぜDNA配列が変化しても複製開始という重要な機能が維持されるのかは、これまでよくわかっていませんでした。

九州大学大学院薬学研究院・分子生物薬学分野の尾崎省吾准教授、片山勉教授、大学院薬学府の清原菜々杜大学院生らの研究グループは、DNA複製開始タンパク質DnaAが、この問題を解く鍵となることを明らかにしました。細菌では、DnaAタンパク質が複製開始点に集まって開始複合体を形成し、DNAの一部がほどけて生じた1本鎖DNAに結合することでDNA複製が始まります。研究グループは、この1本鎖DNA結合のメカニズムを詳しく解析し、DnaAがDNA配列の違いや配置の変化を一定程度許容できる“遊び”、すなわち自由度を持つことを見出しました。DnaAは、離れた場所にある1本鎖DNAを開始複合体へと引き寄せながら結合できるだけでなく、多様な配列にも柔軟に対応できます。このようなDnaAによる柔軟なDNA認識機構によって、複製開始システムは進化に伴うDNA配列の変化を許容し、多様なDNA複製開始点から正確にDNA複製を開始できると考えられます。

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