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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/08/26

Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究

論文タイトル
Risk factors for mortality in Stenotrophomonas maltophilia bacteraemia: a 22-year retrospective study in a Japanese acute care hospital.
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究
DOI
10.1099/acmi.0.001194.v3
ジャーナル名
Access microbiology
巻号
Access Microbiology 2026;8:001194.v3
著者名(敬称略)
田沼 道也 他
所属
NTT東日本関東病院 薬剤部
著者からのひと言
Stenotrophomonas maltophiliaに関する国内での知見は依然として限られています。本研究の結果が、S. maltophilia感染症の予後改善や効果的な感染対策の推進に貢献することを期待します。

抄訳

Stenotrophomonas maltophiliaは、院内感染の原因菌として知られるグラム陰性菌であり、高い死亡率との関連が報告されている。しかし、その死亡リスク因子については見解が一致していない。そこで本研究では、22年間にわたるS. maltophilia菌血症の43例を対象に死亡リスク因子について後方視的に解析した。その結果、死亡率は44.2%であった。単変量解析では、Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) スコア、中心静脈カテーテル (CVC) 留置、中心静脈栄養、および糖尿病が死亡と有意に関連していた。多変量解析では、SOFAスコアおよびCVC留置が独立した死亡リスク因子であることが示唆された。一方、適切な抗菌薬治療は全体の死亡率低下とは有意な関連を示さなかった。さらに、CVC留置患者においては、カテーテル抜去が生存率の改善と有意に関連していた。以上より、S. maltophilia菌血症においてSOFAスコアおよびCVC留置は死亡率と関連する重要な因子であることが示された。また、抗菌薬治療の有用性は疾患重症度によって異なる可能性が示唆された。

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2026/08/25

天然変性タンパク質の自己組織化様式と、アミノ酸配列に符号化された局所構造バイアスとの相関関係

論文タイトル
Sequence-encoded conformational biases correlate with self-assembly modes of intrinsically disordered proteins.
論文タイトル(訳)
天然変性タンパク質の自己組織化様式と、アミノ酸配列に符号化された局所構造バイアスとの相関関係
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag189
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 7, July 2026, pgag189
著者名(敬称略)
小林 凌河 関山 直孝 他
所属
京都大学 理学研究科
著者からのひと言
一般的なタンパク質との対比から、IDPはしばしば構造のないタンパク質と言われます。しかし、アミロイド線維化や相分離といった秩序立った自己組織化は、本当にそんなランダムな分子から生じるのでしょうか?本研究はこうした素朴な疑問に始まり、「IDPには構造がないのではなく、そのアミノ酸配列には自己組織化を方向付ける局所構造バイアスが書き込まれている」という新たなIDP観の提示に繋がりました。IDPの物性理解に新しい視点を提供できれば幸いです。

抄訳

天然変性タンパク質(IDP)は、相分離による凝縮体形成やアミロイド線維化などの自己組織化を介して様々な生理機能や疾患に関わります。しかし、IDPがどちらの自己組織化様式をとるのかを方向付ける仕組みは十分解明されていませんでした。そこで本研究では、アミノ酸配列に符号化された「5残基単位の構造選好性(局所構造バイアス)」が自己組織化を規定すると仮説を立てました。このバイアスを定量化した「5残基スコア」を開発し、強バイアス領域の配置のみが異なる人工IDP群「lag-series IDPs」を設計しました。その自己組織化特性を検証した結果、強バイアス領域は伸長したβシート様構造をとりやすく、この領域がアミノ酸配列上で密に配置された場合には凝縮体からアミロイド線維への転移が促進され、分散配置された場合には線維化が抑制されることが判明しました。本研究は局所構造バイアスがIDPの自己組織化様式を規定することを示唆しており、IDP物性の構造学的理解に寄与する成果です。

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2026/08/25

未培養細菌門WOR-3として知られていた新規細菌門Caldifarciminota門に属する通性嫌気性好熱性細菌の新属新種Caldifarcimen microaerophilum

論文タイトル
Caldifarcimen microaerophilum gen. nov., sp. nov., a facultatively anaerobic, thermophilic bacterium of a novel bacterial phylum, Caldifarciminota phyl. nov., formerly called candidate phylum WOR-3, description of Caldifarciminaceae fam. nov., Caldifarciminales ord. nov. and Caldifarciminia classis nov.
論文タイトル(訳)
未培養細菌門WOR-3として知られていた新規細菌門Caldifarciminota門に属する通性嫌気性好熱性細菌の新属新種Caldifarcimen microaerophilum
DOI
10.1099/ijsem.0.007229
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
International journal of systematic and evolutionary microbiology 76 7 (2026): n. pag.
著者名(敬称略)
森浩二、日高皓平、玉澤聡、細山哲、玉木秀幸、掛川武、花田智
所属
製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター
著者からのひと言
培養株としてsy37株を分離し、その性状や系統分類的位置を明らかにしたことで新しい細菌門を本論文で提案し、Caldifarciminota門は有効に公表された49番目の細菌門として承認されました。

抄訳

未培養細菌門WOR-3は、イエローストーン国立公園から得られた環境クローン配列として初めてその存在が認識され、世界各地の多様な環境から検出されてきました。しかし、これまでに培養株の報告が無く、その生理学的特徴などは全く解明されていませんでした。私たちは太平洋にある水曜海山の深海底熱水から未培養細菌門WOR-3に属する最初の培養株である偏性嫌気性好熱性グラム陰性細菌sy37株の分離に成功しました。sy37株は繊毛を持つ非運動性の長桿菌で、硫黄又は酸素を電子受容体として呼吸により増殖しました。sy37株の表現型の特徴と16S rRNA遺伝子及びゲノム配列を用いた系統解析の結果に基づき、sy37株を新属新種Caldifarcimen microaerophilumとして提案します。また、Caldifarcimen属を基準属として、未培養細菌門WOR-3をPseudomonadati界に属する新しい細菌門としてCaldifarciminota門を提案します。

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2026/08/25

魚類皮膚粘膜微生物叢は1日以内に環境微生物群集に類似する方向へ迅速かつ可逆的に変化する

論文タイトル
Rapid and reversible fish skin mucosal microbiota shift toward environmental microbial communities within a day.
論文タイトル(訳)
魚類皮膚粘膜微生物叢は1日以内に環境微生物群集に類似する方向へ迅速かつ可逆的に変化する
DOI
10.1128/spectrum.00522-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00522-26
著者名(敬称略)
今村 千絵、古田 芳一、田中 秀典
所属
豊田中央研究所
著者からのひと言

抄訳

魚は常に環境水に暴露され、皮膚粘液菌叢は環境水菌叢から強い影響を受けているが、その変化の速さや程度は十分に明らかでない。本研究では、ヤリタナゴ(Tanakia lanceolata)を人工アクアポニックス環境と自然環境に近い池の間で繰り返し移動させ、皮膚菌叢の経時変化と再現性を解析した。16S rRNA遺伝子アンプリコン解析の結果、皮膚菌叢は移動後1日以内に急速に再構成され、移動前よりも移動先の環境水菌叢に類似した。この傾向は複数回の移動を含む2回の独立実験で一貫して認められた。また、環境ごとにコア皮膚菌叢は大きく異なり、移動に伴って増減または置換した。さらに、皮膚および環境水菌叢のα多様性は池で増加し、アクアポニックス環境で低下した。以上より、魚類皮膚菌叢が急速な環境変化に応答する高い生態学的可塑性を有することが示された。

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2026/08/24

巨大ウイルスの系統を見直す:フルティヴォウイルスの発見により明らかになった、マモノウイルス科と新規マネスウイルス科を統合する新規の目の設定について

論文タイトル
Refining a giant virus lineage: a novel order unifying Mamonoviridae and "Manesviridae," unveiled by the discovery of furtivovirus.
論文タイトル(訳)
巨大ウイルスの系統を見直す:フルティヴォウイルスの発見により明らかになった、マモノウイルス科と新規マネスウイルス科を統合する新規の目の設定について
DOI
10.1128/jvi.02031-25
ジャーナル名
Journal of virology
巻号
J Virol 100:e02031-25
著者名(敬称略)
ぺ ジワン, 武村 政春
所属
東京理科大学 大学院理学研究科
著者からのひと言
日本で発見されたメドゥーサウイルスを含むこのウイルスのグループは、未だにその分類が明確ではありませんが、私たち真核生物の起源や進化と密接に関係していると考えられている、とても面白い巨大ウイルスです。その仲間で本論文の主役であるフルティヴォウイルスは鎌倉から、そして同じ仲間のウシクウイルスは茨城からそれぞれ見つかっています。日本産のこれら巨大ウイルスの進化史を見つめることで、私たち人間を含めた真核生物の起源にも迫れるのです!

抄訳

メドゥーサウイルスを含むマモノウイルス科と、クランデスティノウイルスを含む関連ウイルスは、これら二つのグループ間でゲノムサイズや宿主域に大きな隔たりがあり、進化的起源や分類は未確定のままでした。本研究では、単細胞真核微生物ヴェルムアメーバを宿主として、新たな巨大ウイルス・フルティヴォウイルスを分離し、解析しました。このウイルスはおよそ56万塩基対のゲノムをもち、最も近縁なクランデスティノウイルスと特徴を共有していました。興味深いことに、核膜の崩壊と核質内での新生ウイルス粒子のパッケージングを特徴とする、宿主の細胞核に強く依存した独自の複製戦略が明らかになりました。巨大ウイルス全体を見渡した分子系統解析および比較ゲノム解析の結果、フルティヴォウイルス、クランデスティノウイルス、ウシクウイルス、ウサルパティウイルスが明確な単系統群を形成することが示されたため、この未分類だったウイルスグループに対して「マネスウイルス科」という新科を提唱しました。この新科はマモノウイルス科の姉妹群として位置づけられ、ウイルス粒子サイズは類似しているもののゲノムサイズと宿主が異なるこれら二つの科間の進化的関係を明らかにしました。さらに我々は、これら二つの科を統合する新目の設立を提案しました。これらの結果から、この系統のウイルスの多様性がより拡大し、巨大ウイルス全体におけるマモノウイルス科・マネスウイルス科の進化史に、新たな知見をもたらすことが期待できます。

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2026/08/24

馬鼻疽の迅速診断を目的としたラテラルフローアッセイの開発

論文タイトル
Development of lateral flow assays for the rapid diagnosis of glanders in equids.
論文タイトル(訳)
馬鼻疽の迅速診断を目的としたラテラルフローアッセイの開発
DOI
10.1128/spectrum.00154-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00154-26
著者名(敬称略)
新保 了, 木村 享史 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究科比較病理学教室
著者からのひと言
本研究は、「結核と鼻疽の制圧プロジェクト」(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)2020~2025)の一環として実施されました。
https://www.amed.go.jp/program/list/20/01/001.html
https://www.jica.go.jp/oda/project/1900802/

抄訳

本研究では、鼻疽菌 Burkholderia mallei による人獣共通感染症「鼻疽」の迅速診断を目的として、抗体検出用ラテラルフローアッセイ(LFA)を3種類開発した。抗原には、間接ELISAで有用とされたHcp1、GroEL、全菌体抽出液(WCL)を用い、金コロイド標識組換えプロテインGで抗原結合抗体の発色を行った。モンゴルで収集した陽性31例・陰性51例のウマ血清で評価した結果、Hcp1-LFAは感度・特異度とも100%、WCL-LFAは感度100%、特異度98.0%を示した。GroEL-LFAは感度100%であったが特異度は90.2%と低かった。Hcp1およびWCL-LFAは無症状馬にも高感度で、日本由来の他疾患60例では交差反応を認めなかった。さらに、全LFAは37℃で16週間以上安定して機能した。以上より、Hcp1およびWCLを用いたLFAは、簡便・迅速・高精度で、資源の限られた流行地域における現場診断に有用であることが示された。

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2026/08/24

 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響

論文タイトル
Metabolic and muscular effects of switching from somatropin to somapacitan in adults with growth hormone deficiency
論文タイトル(訳)
 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響
DOI
10.1210/clinem/dgag153
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 9, September 2026, Pages e2096–e2107
著者名(敬称略)
大井(葉)佑夏, 山本 雅昭 他
所属
神戸大学大学院医学系研究科内科学講座 糖尿病・内分泌・総合内科学分野
糖尿病・内分泌内科学部門
著者からのひと言
 ソマパシタンは、成人成長ホルモン分泌不全症に対して承認された週1回投与の成長ホルモン製剤である。本研究は、連日製剤からソマパシタンへの切り替え群と連日製剤継続群を、実臨床下で世界で初めて52週間前向きに比較した。両群で除脂肪量を含む代謝指標に大きな差はみられなかった一方、ソマパシタン群では握力および身体機能の改善が示され、週1回製剤の新たな臨床的意義が明らかとなった。

抄訳

 成人成長ホルモン分泌不全症57例を対象に、連日GH製剤から週1回ソマパシタンへ切り替えた群と連日投与を継続した群を52週間、前向き観察研究で比較した。主要評価項目であるDXAによる全身除脂肪量の変化には群間差を認めなかった(平均差−0.2 kg)。IGF-1 SDSの上昇は連日群で大きく、ソマパシタン群では脂肪量増加を認めた一方、HDLコレステロール、握力、Timed Up and Go Testが改善した。新たな安全性上の懸念はなく、週1回製剤は身体機能を改善する可能性が示されたが、長期的な代謝への影響は今後の検討を要する。

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2026/08/24

ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する

論文タイトル
Restricting efferocytosis pathway to CD91 via phosphatidylserine-targeting chimeric protein augments antitumor immune responses
論文タイトル(訳)
ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.05.013
ジャーナル名
Molecular Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 4729-4742
著者名(敬称略)
溝手 雄 他
所属
大阪国際がんセンター 次世代がん医療開発研究センター先進探索研究領域 がん免疫療法開発部
著者からのひと言
 新規人工タンパク質であるPStRAPを用いると、細胞が生体内で処理されるときの目印であるホスファチジルセリンを利用して、がんに対する免疫反応を誘導することができました。PStRAPは理論上、従来の化学療法や放射線療法、免疫チェックポイント阻害剤などの細胞死を伴う治療法の効果を増強すると考えられます。今回の研究結果を基にした臨床試験を経て、PStRAPがこれまでにない革新的な免疫治療となることが期待されます。

抄訳

ホスファチジルセリン(PS)は、アポトーシス細胞膜上に表出する代表的なeat-meシグナルであり、MFG-E8などの複数の分子によって認識されてエフェロサイトーシスを促進し、免疫寛容を誘導する。この機序を制御するため、MFG-E8由来のPS認識ドメインと、免疫刺激性貪食受容体として知られるCD91のリガンドであるRAPからなる新規キメラタンパク質PStRAPを設計した。PStRAPは、PSが露出したアポトーシス細胞を、本来の免疫抑制性経路ではなく、CD91を介した免疫刺激性経路によって貪食させる。PStRAP存在下では、アポトーシス細胞の貪食効率、および細胞傷害性T細胞への交差提示能が上昇し、強力な抗腫瘍獲得免疫応答が誘導された。さらに、脂質ナノ粒子に封入したPStRAP mRNAと抗がん剤を併用投与すると、PStRAPは抗がん剤単独の抗腫瘍効果を優位に増強した。これらの結果は、PStRAPがCD91を介したアポトーシス細胞の貪食を誘導し、効果的な抗腫瘍獲得免疫応答を始動させ得ることを示唆している。

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2026/08/24

微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害

論文タイトル
Selective saccular plasticity under microgravity links peripheral transcriptomic remodeling to postflight vestibular dysfunction
論文タイトル(訳)
微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害
DOI
10.1073/pnas.2605593123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2605593123
著者名(敬称略)
安部 力 他
所属
福井大学 学術研究院医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 生理学分野

抄訳

長期宇宙飛行から地球に帰還した宇宙飛行士では、ふらつきや歩行障害などの前庭機能低下がみられますが、そのメカニズムは十分に解明されていません。本研究では、国際宇宙ステーション(ISS)で35日間飼育したマウスの内耳から、重力を感知する球形嚢と卵形嚢を個別に採取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、球形嚢では神経伝達やシナプス機能に関連する多数の遺伝子が変化した一方、卵形嚢では大きな変化を認めませんでした。さらに、157~328日間ISSに滞在した宇宙飛行士を調べたところ、地球帰還直後には球形嚢機能が選択的に低下し、姿勢のふらつきも増加していました。また、微弱な前庭電気刺激により帰還後の姿勢バランスが改善しました。これらの結果は、球形嚢が重力環境の変化に応じて分子・機能の両面で適応する可能性を示しており、将来の長期宇宙飛行における重力再適応や前庭リハビリテーションへの応用が期待されます。

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2026/08/24

進化実験とトランスクリプトーム解析から明らかになったペースオブライフシンドロームの表現型・分子基盤

論文タイトル
Integrating experimental evolution and transcriptomics reveals the phenotypic and molecular architecture of the pace-of-life syndrome
論文タイトル(訳)
進化実験とトランスクリプトーム解析から明らかになったペースオブライフシンドロームの表現型・分子基盤
DOI
10.1073/pnas.2610487123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (33) e2610487123
著者名(敬称略)
松村 健太郎 他
所属
東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系
著者からのひと言
行動の進化が、寿命や繁殖、さらには遺伝子発現とどのように結びついているのかを、長期的な進化実験を通して調べました。小さな甲虫を用いた研究ですが、動物の行動と「生き方」の進化的なつながりを理解する一助になれば幸いです。

抄訳

動物では、活発に行動する個体ほど短命で、活動性の低い個体ほど長寿になるという「ペースオブライフシンドローム(POLS)」仮説が提唱されています。しかし、こうした行動と生活史形質の関連が進化的にどのように形成されるのかは十分に分かっていません。本研究では、コクヌストモドキを用いて、歩行運動活性に対する長期的な人為選抜によって確立した高活動系統と低活動系統を比較しました。その結果、高活動系統では低活動系統と比べて寿命が短い一方、孵化率が高いことが明らかになりました。さらにトランスクリプトーム解析により、高活動系統と低活動系統の間で発現量の異なる遺伝子を特定しました。これらの結果は、運動活性への選択に伴って、寿命や繁殖、遺伝子発現にも進化的変化が生じることを示しています。本研究は、POLSの進化的・分子的基盤を理解するための新たな知見を提供するものです。 

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2026/08/21

哺乳類ネクチン4オルソログはモルビリウイルスの受容体として広い許容性を示すが、イルカネクチン4は、その例外である

論文タイトル
Broad permissiveness of mammalian nectin-4 orthologs for morbilliviruses: a notable exception in dolphin nectin-4.
論文タイトル(訳)
哺乳類ネクチン4オルソログはモルビリウイルスの受容体として広い許容性を示すが、イルカネクチン4は、その例外である
DOI
10.1099/jgv.0.002319
ジャーナル名
The Journal of general virology
巻号
Journal of General Virology 2026;107:002319
著者名(敬称略)
冨永 みづき 竹田 誠
所属
東京大学大学院医学系研究科・医学部・微生物学 微生物学教室
著者からのひと言

抄訳

モルビリウイルスには、麻疹ウイルスやイヌジステンパーウイルスなど、ヒトやさまざまな動物に感染するウイルスが含まれ、免疫細胞と上皮細胞に感染することを特徴とします。本研究では、モルビリウイルスが上皮細胞に感染する際に利用する「ネクチン4」という分子に注目し、動物種によるネクチン4の違いが、それぞれのウイルスがどの動物(ヒト、イルカ、コウモリ、イヌ、アザラシなど)に感染できるかに関係しているのかを調べました。その結果、いずれのモルビリウイルスも、多くの動物種のネクチン4を利用できる一方、イルカのネクチン4だけは、わずか1つのアミノ酸の違いによって、一部のウイルスに利用されにくいことが分かりました。これらの結果から、ネクチン4のわずかな違いも、モルビリウイルスがどの動物に感染できるかを決める要因の一つであることが明らかになりました。

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2026/08/20

飼育下チーター集団における猫コロナウイルスの縦断的検出と遺伝学的解析

論文タイトル
Longitudinal detection and genetic characterization of feline coronavirus in a captive cheetah population
論文タイトル(訳)
飼育下チーター集団における猫コロナウイルスの縦断的検出と遺伝学的解析
DOI
10.1099/jgv.0.002317
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology 2026;107:002317
著者名(敬称略)
(筆頭著者)土岐 朋義 (連絡著者)高野 友美
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医伝染病学研究室 
著者からのひと言
FIP)は猫コロナウイルスが引き起こす命に関わる病気です。チーターはFIPを特に発症しやすいとされてきました。私たちは動物園の協力を得て、同じチーターたちを3年半追い続けました。この間、群れへの出入りは一頭もありません。何度も検査を重ねると、同じ群れで暮らしていても、ウイルスとの付き合い方は一頭ごとにまるで違うことが分かってきました。FIPを発症しやすいとされるチーターでも、ウイルスを持つ多くの個体は発症せずに元気に暮らしています。この差はどこから生まれるのか?チーターを見続けることがその答えに近づく道だと考えています。

抄訳

猫コロナウイルス(FCoV)はイエネコのほか希少ネコ科動物であるチーターにも感染する。FCoVは時に致死性の猫伝染性腹膜炎(FIP)を引き起こすが、飼育下チーター集団での長期的な感染動態や遺伝的多様性については情報が乏しい。そこで国内の単一動物園で暮らす17頭のチーターを3.5年間追跡し、糞便中のFCoV RNAとウイルス遺伝子配列を調べた。FCoVは閉鎖集団内で複数年にわたって維持され、RNAの検出パターンには個体ごとに大きな幅があった。無症状個体とFIP発症個体から得た準完全長ゲノムは、どちらもI型FCoVに属した。N遺伝子とS遺伝子のターゲット解析では集団内に複数のハプロタイプが見つかり、個体内で優勢となる配列も時間とともに入れ替わった。配列多様性はS遺伝子内でも一様ではなく、S1/S2開裂部位領域が1058/1060領域を上回った。非侵襲的な糞便モニタリングと遺伝子解析を組み合わせれば、希少ネコ科動物でもFCoVの長期的な維持と配列変化を追うことが可能である。
 

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2026/08/19

LC-MS/MSを用いた血中および尿中ビタミンD代謝物濃度の関連

論文タイトル
Evaluation of correlations between serum and urinary vitamin D metabolites using LC-MS/MS.
論文タイトル(訳)
LC-MS/MSを用いた血中および尿中ビタミンD代謝物濃度の関連
DOI
10.1042/BSR20260223
ジャーナル名
Bioscience reports
巻号
Biosci Rep (2026) 46 (7): BSR20260223
著者名(敬称略)
筆頭著者:呉詩星、連絡著者:石嶺 南生
所属
信州大学医学部附属病院臨床検査部
著者からのひと言
血清のビタミンD代謝物比(VMR)が有用な指標になるという報告はすでにありましたが、尿でも同様のことが言えるという報告はこれまでなく、期待半分・手探り半分での検証でした。実際に尿中の代謝物が血清指標よりもPTHとの関連を強く示したときは、期待通りとはいえ驚きもありました。日々の検査業務の中で、患者さんの負担をどう減らせるかは常に意識してきたテーマで、尿という切り口には以前から関心がありました。一方で、なぜ尿中代謝物の方がPTHとの関連をより鋭敏に捉えるのか、そのメカニズムの解明は今後の課題の一つと捉えています。

抄訳

ビタミンDの充足状態を評価するには、通常、血清中の25-ヒドロキシビタミンD値の測定が用いられる。採血によらず尿検体だけで同様の評価が可能になれば、被験者の負担軽減に加え、より簡便な運用も期待できる。 本研究では、健康診断で得られた病院職員506名分の血清および尿検体を対象に、高感度な誘導体化試薬(DAP-PA)とLC-MS/MSを組み合わせた分析系を用いて、微量な尿中ビタミンD代謝物の精密な定量を行った。その結果、尿中の24,25-ジヒドロキシビタミンD3および23,25-ジヒドロキシビタミンD3は、血清25-ヒドロキシビタミンD値と強い正の相関を示した(ρ > 0.7)。この結果は、尿検査が血中のビタミンD状態を反映する指標となり得ることを示唆している。 さらに、骨代謝を調整する副甲状腺ホルモン(PTH)との関連を検討したところ、尿中の代謝物およびビタミンD代謝物比(VMR)は、従来指標である血清25-ヒドロキシビタミンDよりも強い負の相関を示した。この結果は、尿中代謝物がPTHとの関連をより鋭敏に捉えている可能性を示唆する。 以上より、尿中ビタミンD代謝物、特に24,25-ジヒドロキシビタミンD3、23,25-ジヒドロキシビタミンD3、およびVMRは、血清に代わる非侵襲的な指標となり得る可能性が示された。非侵襲的なビタミンD評価法の一つとして、今後の応用可能性が期待される。

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2026/08/18

油脂酵母によるグリセロールからの細胞外多糖生産におけるアンモニウムイオン濃度依存性:生産細胞の可視化

論文タイトル
Ammonium ion concentration-dependent production of extracellular polysaccharides from glycerol by an oleaginous yeast: visualization of the producer cells.
論文タイトル(訳)
油脂酵母によるグリセロールからの細胞外多糖生産におけるアンモニウムイオン濃度依存性:生産細胞の可視化
DOI
10.1128/spectrum.00429-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00429-26
著者名(敬称略)
竹川 そよか、ほか4名、 河井 重幸
所属
石川県立大学生物資源工学研究所環境生物工学研究室(河井研究室)
著者からのひと言
最初、棄てるべき培地上澄みの粘性に気づいたのが全てでした。

抄訳

油脂化学(オレオケミカル)産業の廃棄物由来粗グリセロールまたは精製グリセロールを原料として、油脂生産性酵母 Rhodotorula toruloides NBRC 8766 株がマンノース比率 90% 以上、分子量 10,000 k 以上の高分子細胞外多糖(EPS)を生産することを見出した。さらに本研究では、培地中のアンモニウムイオンNH4+濃度が EPS 生産を左右する鍵因子であり、NH4+濃度が 38 mM 以上となり培地が pH 2.0 以下に酸性化することが EPS 生産に必須であることを明示した。顕微鏡観察により、EPS 生産細胞は未成熟な脂質滴と毛羽状の EPS を纏った明瞭な2層構造の細胞壁を持つのに対し、非生産細胞は明瞭な脂肪滴と1層構造の細胞壁、豊富な細胞内多糖顆粒を有することが確認された。得られた知見はEPSや油脂の生産性向上に向けた生産メカニズムのさらなる解明の基盤となる。

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2026/08/18

荷電特性、疎水性および形状を考慮した膜ろ過における保守的なウイルス除去指標の選定

論文タイトル
Resilient performance indicator virus for membrane filtration considering surface charge, hydrophobicity, and morphology.
論文タイトル(訳)
荷電特性、疎水性および形状を考慮した膜ろ過における保守的なウイルス除去指標の選定
DOI
10.1128/aem.00035-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e00035-26
著者名(敬称略)
安井 碧 他
所属
京都大学 大学院工学研究科 都市環境工学専攻
著者からのひと言

抄訳

実規模の浄水および下水処理プロセスにおけるウイルス除去能を評価するための指標として環境水や下水処理水中に高濃度で存在するウイルスが調査されてきた。しかし、水処理工程の除去能評価のための適切な指標については、現在も議論が続いている。 本研究は、表面電荷、疎水性および形状が膜ろ過時のウイルス除去に及ぼす影響を評価し、膜ろ過において除去されにくい保守的な指標ウイルス候補を特定することを目的とする。形状の異なる三種のウイルス(MS2、PMMoV、およびAiV)を選定し、ゼータ電位と接触角を測定した。これらの結果と膜ろ過試験の結果を比較することで膜ろ過による除去に表面電荷、疎水性および形状がもたらす影響を評価した。 膜ろ過試験において、棒状のPMMoVは3つのウイルスの中で中程度の疎水性であったにもかかわらず、最も高い除去率を示した。本研究の結果は、棒状ウイルスが膜ろ過で除去されやすいことを示しており、球状ウイルスの方が、より安全側に立った除去率評価ができる指標となる可能性を示唆している。

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2026/08/18

子宮頸部前がん病変にみられる染色体整列異常ECACの分子機構とその意義

論文タイトル
High-risk HPV E6 induces an aneuploidy-prone chromosome congression defect through destabilization of CENP-E.
論文タイトル(訳)
子宮頸部前がん病変にみられる染色体整列異常ECACの分子機構とその意義
DOI
10.1128/jvi.00625-26
ジャーナル名
Journal of virology
巻号
J Virol 100:e00625-26
著者名(敬称略)
瀬下 奈々美(共同筆頭著者)、堀 花那子(共同筆頭著者)、野澤 竜介(連絡著者)
所属
公益財団法人がん研究会 がん研究所 実験病理部
著者からのひと言
高リスク型HPVは、E6やE7を介してp53やRBなどのがん抑制機構を破綻させることで発がんを促進することが知られています。本研究では、それに加えて、E6がCENP-Eを不安定化し、染色体整列異常ECACを引き起こすという新たな作用を明らかにしました。興味深いことに、この作用は複数の高リスク型HPVで認められる一方、HPV18ではほとんど認められませんでした。HPV遺伝子型による発がん過程の違いを理解する手がかりになる結果だと考えています。

抄訳

子宮頸がんの前がん病変である高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性の子宮頸部異形成では、ECAC (Ectopic Chromosome Around Centrosome)と呼ばれる特徴的な染色体整列異常が観察される。本研究では、高リスク型HPVがコードするE6タンパク質が、分裂期モータータンパク質CENP-Eを不安定化し、ECACを誘導することを明らかにした。さらにECACの誘導は複数の高リスク型HPV由来のE6に共通して観察され、E6を長期間発現した細胞では異数性細胞が蓄積した。これらの結果は、子宮頸部前がん病変におけるECACの分子基盤を明らかにするとともに、E6によるECACの持続的な誘導が発がん初期の染色体不安定性獲得に寄与する可能性を示す。

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2026/08/18

模擬土壌下での種固有のグルコース無機化作用:Bacillus subtilis および Streptomyces cinnamoneus の単独・共培養からの知見

論文タイトル
Species-specific glucose mineralization in artificial soil: insights from Bacillus subtilis and Streptomyces cinnamoneus mono- and co-cultures.
論文タイトル(訳)
模擬土壌下での種固有のグルコース無機化作用:Bacillus subtilis および Streptomyces cinnamoneus の単独・共培養からの知見
DOI
10.1128/spectrum.00605-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00605-26
著者名(敬称略)
藤原 奏、濱本 亨 他
所属
東北大学 農学部 土壌立地学分野
著者からのひと言
土壌は非常に複雑な地球環境であり、生物多様性のホットスポットの一つです。本研究では、これまで困難であった個々の土壌微生物動態をモニタリングするため、自然環境を模倣した模擬土壌システムを構築しました。本アプローチが、個々の微生物レベルでの物質循環メカニズムを解明するための重要な基盤となることが期待されます。

抄訳

自然土壌は非常に複雑で不均一なため、個々の微生物がどれだけ炭素循環(CO2放出)に関与しているかを定量的に評価することは困難でした。本研究では、自然土壌を再現した「模擬土壌」を活用し、代表細菌であるB.subtilisS.cinnamoneusの単独・共培養を行い、グルコース分解に伴うCO2放出量を測定した。その結果、前者は迅速にグルコースを分解する一方、後者は緩やかに分解するという顕著な差を明らかにした。さらに、共培養下では、前者の割合が高まるほどCO2放出量が増加した。模擬土壌が個々の微生物の代謝や相互作用を解明する有効な手法であることを示す成果であり、将来的な土壌炭素循環モデルの開発に期待される。

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2026/08/17

日本の乳牛における薬剤耐性Mycoplasma bovisの迅速検出・サーベイランスに向けたマルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシングの応用

論文タイトル
Application of multiplex PCR-based nanopore sequencing for rapid detection and surveillance of antimicrobial-resistant Mycoplasma bovis in Japanese dairy cattle
論文タイトル(訳)
日本の乳牛における薬剤耐性Mycoplasma bovisの迅速検出・サーベイランスに向けたマルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシングの応用
DOI
10.1128/spectrum.01242-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e01242-26
著者名(敬称略)
臼井 優 他
所属
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 衛生・環境学分野 食品衛生学ユニット
著者からのひと言
牛の臨床現場で問題となっている薬剤耐性Mycoplasma bovisについて、解決の糸口となる研究となっています。
今後、この方法が普及して、牛由来Mycoplasma bovisの実態が解明されていくことが期待されます。

抄訳

Mycoplasma bovisは牛に乳房炎や呼吸器疾患を引き起こし、酪農業に大きな経済的損失をもたらす。従来の培養検査および薬剤感受性試験には約2週間を要するため、経験的な抗菌薬使用や耐性菌の出現を招くことから、迅速な検査法が求められている。本研究では、染色体上の薬剤耐性関連変異を検出し、M. bovisの薬剤感受性を6時間以内に推定できる、マルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシング法を開発した。日本の牛から2013–2016年および2023–2025年に分離された329株を用いて、7種類の抗菌薬に対する最小発育阻止濃度と遺伝子型との関連を解析した結果、特定の変異と薬剤感受性との明確な関連が認められた。さらに、近年の分離株では、マクロライド・テトラサイクリン耐性関連変異およびgyrA–parC二重変異が顕著に増加していた。本法は、低コストのフローセルを用いて最大24検体を同時解析でき、M. bovisの薬剤感受性の迅速な遺伝学的予測と耐性動向のサーベイランスに有用な手法となる。
 

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2026/08/17

ヒトiPS由来三次元心組織を用いたHFpEFモデルの開発とSGLT2阻害薬による治療機序の解明

論文タイトル
Human iPSC-derived engineered heart tissue model of diastolic dysfunction in heart failure with preserved ejection fraction
論文タイトル(訳)
ヒトiPS由来三次元心組織を用いたHFpEFモデルの開発とSGLT2阻害薬による治療機序の解明
DOI
10.1016/j.stem.2026.06.007
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Cell Stem Cell, 2026; 33, 1339-1353.e7
著者名(敬称略)
谷 英典 遠山 周吾 他
所属
藤田医科大学東京 先端医療研究センター
著者からのひと言
ヒトiPS由来心筋細胞は開発当初から疾患モデルや創薬応用への期待が高かったものの多くの課題がありました。我々の研究室ではより良いモデル作成のために様々な課題を乗り越え、こうしたモデルを今回報告することができました。本研究で確立されたヒト由来HFpEFモデルは、病態解明や加齢研究への応用だけでなく、新規治療薬の開発や薬効評価、さらには患者ごとの個別化医療にも役立つ研究基盤として今後のさらなる研究の発展が期待されます。

抄訳

心臓の収縮機能が保たれているにもかかわらず拡張機能が低下する心不全、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)は、高齢化で患者数が増加の一途を辿る中、有効な治療法がほとんど確立されていない。本研究では、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞、心外膜細胞、血管内皮細胞などを組み合わせた三次元心筋組織を用いて、培養組織に高脂肪酸と一酸化窒素の産生を阻害するNOS阻害薬を加えることで、心臓の収縮機能は保たれたまま、拡張機能だけが低下するHFpEF特有の病態を再現した。このモデルでは、BNPの上昇、線維化、カルシウム動態異常、ミトコンドリア障害など、HFpEF患者にみられる特徴が認められた。さらに、このモデルに複数の心不全治療薬を投与した結果、SGLT2阻害薬がこの病態を改善することを見出し、作用機序として、血管内皮細胞におけるeNOS-NO-cGMP-PKGシグナルの回復や、細胞内のNa⁺やCa²⁺過負荷を軽減することで、炎症や心筋障害の改善に寄与することが示唆された。
 

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2026/08/12

輪番割当問題の密度閾値予想の証明

論文タイトル
Proof of the density threshold conjecture for pinwheel scheduling.
論文タイトル(訳)
輪番割当問題の密度閾値予想の証明
DOI
10.1073/pnas.2530214123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (32) e2530214123
著者名(敬称略)
河村 彰星
所属
京都大学数理解析研究所
著者からのひと言
素朴な設定でありながら解析の難しい問題でしたが、大規模計算の手法がうまく効いて予想の解決に至ったのは幸運でした。人間が読める「きれいな」証明が今後得られる望みも捨ててはいませんが、ともあれ近年のAIをはじめとする計算機技術の著しい進歩は、数学研究に新たな可能性と展開をもたらしつつあります。コンピュータの高度な探索・検証能力の活用は、今後も従来の枠組みを超えて我々の数学的理解を大きく進展させるものと期待しています。

抄訳

輪番割当問題では、いくつかある仕事のそれぞれについて、連続する○○日には必ず一度以上やるべしという日数が指定されており、これを満し続けながら毎日いずれか一つだけ仕事をしたい。勿論これが可能であるには指定された日数の逆数の和が 1 以下である必要がある。一方この逆数和が 5/6 以下なら十分である、という陳と銭(1993)の予想が示されたので報告する。証明は有限個の場合を計算機で確かめることでなされた。この有限個で十分であることは、日数を整数から実数へ適切に拡張する議論により示される。この考え方を使うと、仕事が二種類以内であれば逆数和 1 以下が十分であることも簡単に証明できる。また竹叢伐採問題の高速な 4/3 近似算法も得られる。

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