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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/06/10

 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン

論文タイトル
Chromid-like secondary replicons as predicted key sites of biosynthetic gene clusters in Ktedonobacteria
論文タイトル(訳)
 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン
DOI
10.1128/msystems.00197-26
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
矢部 修平他
所属
理化学研究所 環境資源科学研究センター ホロビオント・レジリエンス研究チーム
著者からのひと言
 クテドノバクテリアは培養例が限られ、これまで十分に研究されてこなかった細菌群です。本研究では、この細菌群が多様な生合成遺伝子クラスターをもち、それらがクロミド様の大型二次レプリコンに集積している可能性を示しました。創薬微生物の代表格である放線菌に続く、新たな微生物資源としての展開が期待されます。

抄訳

 土壌微生物は、医薬品や農薬などの候補となる多様な二次代謝産物を生み出す重要な生物資源である。しかし、多くの土壌細菌系統では、その生合成能や、それを支えるゲノム構造が十分に理解されていない。本研究では、火山土壌から新たに分離したKtedonobacteria株、メタゲノム由来ゲノム、公共ゲノムを統合し、計183ゲノムを対象に生合成遺伝子クラスター(BGC)を比較解析した。その結果、1,546個のBGCを同定し、その多くが既知データベース中のBGCとは大きく異なることを示した。さらに、長鎖リードによる高品質ゲノム解析から、クロミド様の特徴をもつ大型二次レプリコンが複数の系統で見出され、BGCや可動性関連遺伝子がそこに濃縮していることが明らかとなった。本成果は、Ktedonobacteriaが未開拓の二次代謝資源であることを示すとともに、微生物の二次代謝能の多様化を支えるゲノム構造の理解に貢献するものである。

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2026/06/09

腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である

論文タイトル
TusDCB-mediated tRNA sulfur modification is required for virulence and intestinal fitness in enterohemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である
DOI
10.1128/iai.00186-26
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
佐藤百美佳、 平川 秀忠 他
所属
国立大学法人群馬大学 医学部医学科 細菌学
著者からのひと言
本研究では、これまで病原性との関連がほとんど知られていなかった「tRNAの硫黄修飾」に着目しました。細菌は単に病原因子を持つだけでなく、それらを適切なタイミングで作り出す仕組みが必要です。TusDCBはその根幹を支える翻訳制御に関与し、腸管出血性大腸菌の病原性や環境ストレス耐性に重要な役割を果たしていました。本研究が、新しい感染症制御法の開発につながることを期待しています。また、本研究は学部学生を中心とした日々の研究活動から生まれた成果であり、基礎研究と人材育成の重要性を示すものでもあります。

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は、重度の出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす重要な食中毒の原因菌である。しかし、抗菌薬の使用によって毒素放出が促進される危険性があるため、有効な治療法は限られている。
本研究では、タンパク質合成に関わるtRNAの硫黄修飾を担うTusDCB複合体に着目し、その病原性への役割を解析した。TusDCBの機能を欠失させると、III型分泌装置(T3SS)関連遺伝子の発現および病原因子EspBの産生が低下し、ヒト赤血球に対する溶血活性やマウス腸管感染モデルにおける病原性が著しく減弱した。また、酸や酸化ストレスに対する抵抗性も低下した。さらに、プロテオーム解析により、EHECの薬剤耐性や病原性の増強に寄与するインドールシグナル産生に関与するTnaAなど複数のタンパク質の発現低下が認められた。これらの結果から、TusDCBは病原因子発現のみならず、細菌の環境適応や生存能力を支える重要な因子であり、新たな抗病原性治療標的となる可能性が示された。

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2026/06/08

同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立

論文タイトル
Establishment of Tumor Organoids, Carcinoma-Associated Fibroblasts, and Counterpart Fibroblasts from the Same Esophageal Cancer Patient
論文タイトル(訳)
同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立
DOI
10.3791/69548-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (230), e69548
著者名(敬称略)
筆頭著者:張霈宁、連絡著者:小林哲夫 他
所属
順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座

抄訳

食道扁平上皮がんでは、治療抵抗性や再発が大きな課題である。がん関連線維芽細胞(CAF)は、がん微小環境を構成する主要な細胞であり、がんの進展や治療応答に重要な役割を果たす。従来の研究では、長期間培養されたがん細胞株と患者由来CAFを組み合わせることが多く、両者の遺伝的背景の違いが実験結果の再現性や信頼性に影響する可能性があった。本論文では、同一の食道扁平上皮がん患者の手術検体から、がんオルガノイド、CAF、さらに非がん部由来の対照線維芽細胞(CF)を同時に樹立する方法を紹介する。本手法で樹立した細胞群を用いることにより、患者間差を抑えた条件でがん細胞とCAFの相互作用を解析することが可能である。その研究成果は、CAFによるがん増殖や薬剤抵抗性の機序解明、さらには個別化治療の開発の基盤となることが期待される。

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2026/06/04

新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Prevotella mikamonis sp. nov., isolated from equine clinical specimens
論文タイトル(訳)
新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007112
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
 (兼 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター)
著者からのひと言
馬の呼吸器感染症由来検体から新たなPrevotella属細菌を発見し、新種 Prevotella mikamonis sp. nov. として提唱しました。本菌は、日本の嫌気性菌感染症研究を牽引してきた三鴨廣繁(みかもひろしげ)博士にちなんで命名されています。本研究は、馬に関連する嫌気性細菌の未知の多様性を明らかにしたものであり、獣医領域における感染症理解と微生物分類学の発展に新たな知見を提供します。

抄訳

本研究では、日本において馬の呼吸器感染症由来検体から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌5株について、表現型、生化学的性状およびゲノム情報に基づく包括的な分類学的解析を実施した。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、これらの菌株は既知の近縁種とは明確に区別される独立したクラスターを形成した。ゲノムのGC含量は46.7%であり、主要な菌体脂肪酸としてC16:0、3-OH-C16:0および3-OH-iso-C16:0が検出された。さらに、全ゲノム比較により平均ヌクレオチド同一性(ANIb)およびデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーション(dDDH)を解析したところ、近縁種であるPrevotella phocaeensisおよびPrevotella merdaeの基準株に対し、それぞれ73.1%未満および28.6%未満と、新種提唱の基準値を大きく下回る結果が得られた。これらの表現型および遺伝学的特徴を総合的に評価した結果、本菌株群はPrevotella属の新種に相当すると判断され、
新種 Prevotella mikamonis sp. nov. を提唱した。本研究は、馬の呼吸器感染症に関連する嫌気性細菌の多様性解明に貢献するとともに、新たな病原細菌の分類学的知見を提供するものである。

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2026/06/04

共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性

論文タイトル
Boson peak in covalent network glasses: Isostaticity and marginal stability
論文タイトル(訳)
共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性
DOI
10.1073/pnas.2528998123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.22 e2528998123
著者名(敬称略)
水野英如 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
著者からのひと言
一見すると、窓ガラスと砂団子はまったく異なるものに見えます。しかし本研究は、両者が硬さを獲得する背後に、「自由度と拘束数の釣り合い」という共通の物理原理が働いていることを明らかにしました。物理学のおもしろさは、このように異なる現象の奥に潜む普遍的な仕組みを見いだせる点にあります。本研究は、身近な砂の詰まりから窓ガラスの本質に迫り、物理学の魅力と威力を示す研究です。

抄訳

窓ガラスは、私たちの暮らしの中で身近にあり、当たり前のように使われている材料である。しかし、その主成分であるシリカガラスがどのように硬さを獲得し、なぜ低周波領域に特有の振動励起である「ボソンピーク」を示すのかは、長く未解明の問題であった。本研究は、この身近でありながら謎を残すシリカガラスの硬さの起源を、砂団子が固まる仕組みである「ジャミング転移」の物理と結びつけて調べた。分子動力学シミュレーションにより、シリカガラスのシリコン原子と酸素原子から成る共有結合ネットワークを解析したところ、このネットワークが、砂団子が剛性を獲得する状態と同じく、自由度と拘束数がちょうど釣り合った「等拘束性」の状態にあることが明らかになった。等拘束的なネットワークは安定と不安定の境界にある臨界的な骨格であり、そこにファンデルワールス力やクーロン力などの弱い相互作用が加わることで、実際のガラスは有限の剛性を獲得する。さらに、ボソンピークもこの等拘束的ネットワークに由来することを示した。本成果は、身近な窓ガラスの背後に、砂団子と共通する普遍的な物理原理が潜んでいることを明らかにし、ガラスの剛性と振動特性を統一的に理解するものである。

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2026/06/01

両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症

論文タイトル
Hypertrophic pulmonary osteoarthropathy in bilateral distal tibia and fibula
論文タイトル(訳)
両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症
DOI
10.1136/bcr-2025-269739
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 5
著者名(敬称略)
井上 文太 他
所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 足の外科
著者からのひと言
足の外科外来を受診した両側足関節痛の患者が、実は肺がんに伴う肥大性肺性骨関節症(HPOA)であった症例です。稀な疾患であるため、認知度が低く診断に難渋しますが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見が診断の手がかりとなります。原因不明の両側足関節痛では本疾患を念頭に置き、すみやかに原疾患(特に肺悪性腫瘍)の全身検索を行うことが重要です。

抄訳

肥大性肺性骨関節症(HPOA)は、四肢の骨膜新生、関節痛、ばち指を特徴とするまれな症候群であり、多くは肺疾患に続発する。整形外科的疾患と誤診されやすく、全身評価の遅れにつながりうる。本症例は、両側足関節痛を主訴に足の外科外来を受診した60歳代後半の男性である。単純X線およびCTにて両側脛骨・腓骨に左右対称性の骨膜新生を認め、MRIでは骨膜の浮腫・炎症を認める一方で骨髄浮腫は認めず、HPOAの診断を支持する所見であった。両手指および足趾のばち指も確認された。全身検索の結果、右肺尖部に腫瘍を認め、気管支鏡により肺腺癌と診断された。右上葉切除術後、両側足関節痛は速やかに消失し、JSSF足関節・後足部スケールおよびSAFE-Qの各スコアも術後1年で著明に改善した。下肢の骨膜新生をきたす疾患の鑑別は多岐にわたるが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見はHPOAを示唆する重要な診断手がかりである。原因不明の両側足関節痛に際しては本疾患を念頭に置き、原因疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する全身評価を行うことが重要である。

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2026/05/25

ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性

論文タイトル
High-density microdroplet cultivation reveals the essential role of microbial interactions in the growth of environmental microbes
論文タイトル(訳)
ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性
DOI
10.1128/mbio.03953-25
ジャーナル名
mBio
巻号
Vol.17, No.5
著者名(敬称略)
Eun-Young Seo 鈴木 陸太 青井 議輝 他
所属
広島大学大学院 統合生命科学研究科 代謝変換制御学研究室 青井グループ
著者からのひと言
本論文ではこれまで培養の難しかった微生物を培養する新たな手段として、ドロップレットを用いた超高菌体密度での微生物培養手法を提案しています。これまで実現不可能だった高いレベルでの相互作用を実現することで、増殖の困難な微生物の培養を可能にしました。99%の微生物が現在まで培養されていないと言われていますが、本手法はこれらの微生物の大部分を培養可能にするポテンシャルを持っており、我々は現在、新たな微生物を資源化することに取り組んでいます。

抄訳

環境中の微生物の大多数は依然として培養されておらず、その生理機能や生態学的役割の理解は大きく制限されている。微生物間相互作用は、培養できない微生物の成長を支える重要な要因の一つと考えられてきたが、それらが培養可能性に与える影響は十分には解明されていない。 本研究では、純粋培養を維持しつつ微生物間相互作用を促進し、さらに単一細胞レベルでの観察を可能にする新しいドロップレット共培養手法を開発した。この培養手法により、環境微生物の培養効率は従来の寒天平板法から大幅に向上(約10倍)し、従来は培養が困難であった分類群の増殖も確認された。また、純菌株を用いて微生物群集内での増殖の様子を観察した結果、微生物間相互作用がいくつかの微生物の増殖にとって重要であることが明確に示された。本研究の知見は、微生物の培養における相互作用の重要性を強調するとともに、利用可能な微生物バイオマスの大幅な拡張、微生物群集の制御、そしてこれまで認識されていなかった微生物間相互作用の解明に向大きく貢献するものである。

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2026/05/20

膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している

論文タイトル
Transmembrane ROOM proteins ensure rooms for germ cells by maintaining intercellular bridges
論文タイトル(訳)
膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している
DOI
10.1073/pnas.2522264123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.19 e2522264123
著者名(敬称略)
杉浦健太 佐藤健 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
著者からのひと言
卵母細胞が正常に形成されるためには各生殖細胞に雌性核が1つずつ含まれた”個室“となる必要がありますが、この仕組みはあまりわかっていません。細胞間橋や細胞分裂溝に局在してアクトミオシン系と協調して働く因子のなかでも膜貫通タンパク質はあまり知られておらず、ROOMタンパク質の解析により得られる知見は生殖細胞、卵母細胞の形成だけではなく、その他の細胞の分裂や細胞間橋形成等の理解にも役立つ可能性があります。

抄訳

多くの有性生殖を行う動物において、生殖細胞は不完全な細胞分裂の結果として合胞体を形成し、くびれた細胞間橋を介して細胞質成分を共有しています。この合胞体の状態が維持できないと、将来の卵母細胞の形成に異常が生じ、不妊となることが知られています。しかしながら、これらの過程を制御する分子メカニズムはいまだ不明な点が多く残されています。本研究では、線虫(Caenorhabditis elegans)の成体生殖腺の合胞体において、生殖細胞の細胞区画維持に不可欠な構成要素として、パラログである膜貫通タンパク質ROOM-1およびROOM-2を同定しました。これらのタンパク質は生殖細胞と細胞質コアを繋ぐ細胞間橋においてF-アクチンと共に特異的に局在しており、両者を欠損すると生殖腺内における個々の生殖細胞の区画化が不全となり、卵母細胞が形成されず子孫を残せないことが判明しました。また、ROOMタンパク質は細胞間橋を構成するアクトミオシン制御因子と共局在し、これらの局在は相互依存していることが明らかとなりました。以上のことから、ROOMタンパク質は、アクトミオシン複合体と協調して生殖細胞-細胞質コア間の細胞間橋を安定化し不完全な細胞分裂を維持することで、生殖細胞のための「Room」を確保していることが明らかとなりました。

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2026/05/18

潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序

論文タイトル
Immunological mechanism behind reactivated cryptococcosis in persistently infected mice following FTY720 treatment
論文タイトル(訳)
潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序
DOI
10.1128/iai.00612-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
𠮷田  美智子 他
所属
東北大学病院 総合感染症科
著者からのひと言
既存モデルでは困難であった,有莢膜株を用いた臨床に即した新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した点が本研究の強みである.本モデルは再活性化解析にも応用可能であり,本研究で構築した新規マウスモデルを用いたさらなる研究により,潜在性クリプトコックス感染の新規診断法,予防戦略,さらには免疫応答を標的とした補助治療の開発につながる可能性がある.

抄訳

クリプトコックス症は,Cryptococcus neoformans species complex(CNSC)による侵襲性真菌感染症であり,Th1免疫応答による肉芽腫形成が感染制御に重要である.CNSCは初感染後に潜在性感染状態へ移行し,免疫制御が破綻すると再活性化すると考えられるが,その機序は十分解明されていない.本研究では,CNSCの主要T細胞抗原であるChitin deacetylase 2(Cda2)特異的CD4陽性T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(CnT-Ⅱマウス)を用いて,肺肉芽腫形成を伴う新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した.本モデルに多発性硬化症治療薬であるFingolimod(FTY720)を投与したところ,肺内IFN-γおよびIL-12レベルの低下に伴い肉芽腫構造の破綻を認め,その後,肺内生真菌数が増加し,内因性再燃を示唆する変化を認めた.また,IFN-γ産生CD4陽性エフェクターメモリーT細胞(Tem)が著減していた.以上より,潜在性感染状態の維持にはCD4陽性Tem細胞が重要である可能性が示され,FTY720はCD4陽性Tem細胞の減少を介してTh1免疫応答を障害し,内因性再燃を促進すると考えられた.

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2026/05/18

チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる

論文タイトル
Tubulin acetylation deficiency promotes axonemal turnover and increases cytoplasmic microtubules
論文タイトル(訳)
チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる
DOI
10.1091/mbc.E26-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 6
著者名(敬称略)
久保 智広 他
所属
山梨大学大学院 総合研究部 医学域 解剖学講座構造生物学教室
著者からのひと言
チューブリン翻訳後修飾の中でも、アセチル化は古くから最も研究が進められてきた修飾の一つです。私たちは、微小管研究に適した単細胞緑藻類クラミドモナスを用いて、チューブリンアセチル化が完全に欠損した株を作製しました。その結果、鞭毛および細胞質性微小管の動態に大きな異常が生じることを見出しました。このような現象はこれまで報告されておらず、単細胞モデルを用いた研究の有用性を示す結果であると考えています。

抄訳

微小管を構成するチューブリンは、多様な翻訳後修飾を受ける。本研究では、鞭毛・繊毛研究のモデル生物である単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、チューブリンアセチル化が細胞全体の微小管動態に果たす役割を追究した。クラミドモナスでは、チューブリンアセチル化は鞭毛軸糸およびルートレット微小管と呼ばれる一部の細胞質性微小管に観察される。αチューブリンアセチル基転移酵素1 (αTAT1)をゲノム編集によりノックアウトした変異株atat1-1を樹立したところ、atat1-1ではチューブリンアセチル化が完全に消失していた。ダイオアリオンアッセイによる解析から、atat1-1では軸糸のターンオーバー頻度が著しく増加することが明らかになった。加えて、興味深いことに、atat1-1ではルートレット微小管だけでなく全ての細胞質性微小管の量が有意に増加していた。これらの結果は、チューブリンアセチル化が軸糸微小管の安定性維持に関与するとともに、細胞全体の微小管の動態制御を担っていることを示唆するものである。

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2026/05/15

植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される

論文タイトル
Two-step, long-distance nuclear migration guided by distinct actin networks prior to plant root hair formation
論文タイトル(訳)
植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag141
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 5, May 2026, pgag141,
著者名(敬称略)
高塚 大知 他
所属
国立大学法人奈良国立大学機構・奈良女子大学・研究院自然科学系
著者からのひと言
植物細胞は一般に動物細胞よりも巨大化する能力が高いことが広く知られている。しかし、そのように巨大化した植物細胞内で、空間的な位置情報を精確に統御し、適切な細胞内構造を形成する仕組みについては、殆ど理解が進んでいない。本研究は、植物細胞内において、核が多段階の過程を経て長距離移動することを示した初めての例であり、植物細胞における細胞内構造制御の新たな原理を明らかにした独自性の高い研究である。

抄訳

植物細胞の特徴の一つは、細胞体積を劇的に増大させる能力である。そのような巨大化した細胞内で、必要に応じて核が最適な位置へ移動することは細胞が機能を果たすのに不可欠である。しかし、核が巨大な植物細胞内を精確に、長距離移動する仕組みは未解明であった。本研究では、根の表皮細胞から伸びる管状構造である根毛が形成される前に、核が空間的に厳密に規定された目的地まで、約50 µmの長距離を精確に移動すること、そしてその移動が二段階で進行し、それぞれが異なるアクチンアイソフォームから構成される別々のF-actinネットワークによって誘導されることを示した。さらに、目的地で活性化される低分子量GTPaseシグナルがF-actin形成を促進することを発見した。低分子量GTPaseシグナル依存的なF-actin形成は、第二段階の核移動には必須である一方、第一段階には必要ないことも見出した。これらの結果は、巨大な植物細胞内で核の精確な移動を保証する、複雑で段階的な仕組みの存在を示すものである。

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2026/05/14

一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布

論文タイトル
Diversity and geographical distribution of potential carbon monoxide oxidizers using molybdenum-containing enzymes in the ocean
論文タイトル(訳)
一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布
DOI
10.1128/msphere.00062-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
今浦 由就 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

海洋では化学反応により一酸化炭素(CO)が生じ、その90%は原核生物(CO酸化菌)に消費されると推定されている。CO酸化菌は、鍵酵素のCOデヒドロゲナーゼ(CODH)を用い、COをエネルギー源として利用する。CODH遺伝子を持つ原核生物(潜在的CO酸化菌)は海洋において少なくとも8つの原核生物門に属し、群集の10–20%を占めると考えられてきたが、その多様性は過大評価されていた。本研究では過大評価を除いた方法で潜在的CO酸化菌を探索した。その結果、9門233種(うち207種は新たに潜在的CO酸化菌と同定)が検出され、原核生物の0.1–6.7%が潜在的CO酸化菌であると推定された。233種のうち優占11種は20種の原核生物と共起し、共起の相手は種ごとに異なった。11種はCODH以外に共通の遺伝子を持たず、潜在的CO酸化菌-原核生物の相互作用には共通の分子的基盤が存在しないと示唆された。

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2026/05/13

進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ

論文タイトル
Evolution-guided prioritization identifies a tissue-specific phosphorylation switch on herpes simplex virus 1 UL7 regulating viral replication and pathogenicity
論文タイトル(訳)
進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ
DOI
10.1128/jvi.00200-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
オミクス解析の進展により、生物学は“データ不足”から“候補過剰”の時代へ移行しつつある。本研究は、Simplexvirus属における進化的保存性を利用することで、膨大なHSV-1リン酸化情報から機能的重要性の高い修飾部位を効率的に抽出できる可能性を示した。進化情報とリン酸化プロテオーム情報を統合する本アプローチは、ビッグデータ時代における効率的な生命機能探索戦略として発展することが期待される。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)タンパク質には多数のリン酸化部位が同定されているが、その大部分の機能的意義は不明なままである。本研究では、リン酸化プロテオーム情報とSimplexvirus属におけるアミノ酸保存性を統合した抽出戦略を構築し、機能的重要性が高いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、UL7 Tyr-89に着目し解析を行ったところ、リン酸化模倣変異はUL7欠損変異と類似して、ウイルス粒子形成、培養細胞での増殖、さらにマウス中枢神経系および眼における病原性を低下させた。一方、非リン酸化変異は培養細胞や眼では大きな影響を示さず、中枢神経系でのみHSV-1増殖と病原性を低下させた。これらの知見より、UL7 Tyr-89リン酸化は組織特異的にUL7機能を微調整する抑制性スイッチとして働くことが示唆された。本研究で採用した進化情報に基づく抽出戦略は、HSV-1タンパク質における機能的リン酸化部位の効率的な同定に寄与することが期待される。

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2026/05/12

ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する

論文タイトル
A phage-derived reconfigurable effector associated with an actinobacterial contractile nanomachine tailors bacterial responses to competition
論文タイトル(訳)
ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する
DOI
10.1128/jb.00532-25
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Ahead of Print
著者名(敬称略)
永久保 利紀 他
所属
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系/高等研究院/MiCS
ライデン大学 客員研究員
著者からのひと言
この論文では、何らかのきっかけで細菌のゲノムに残された「ウイルスの残骸」がその細菌の役に立っていることを示しています。「ウイルスの残骸」はその機能を容易に改変可能なタンパク質のモジュール構造に落とし込み、細菌が外部から受ける選択圧への柔軟な対応を可能にすることで、自らを保持する細菌の繁栄に貢献しその存在を維持している可能性があります。その機能中枢が、ウイルスの感染機構に由来していると思われる点も注目されます。

抄訳

収縮性注入機構(CISs)は、ファージ尾部から派生したナノマシンであり、細菌を中心とした原核生物に広く分布している。CISsはエフェクターと呼ばれる特定のタンパク質を格納し、様々な生物学的プロセスを仲介するエフェクターを射出する。本研究では、ファージの感染機構の一部から派生した新規エフェクター群の発見について報告する。CISsが最も高度に保存されている細菌群である放線菌のモデル種Streptomyces lividansにおいて、細胞内CISの一種であるSLPのエフェクターSle1が同定された。Sle1はSLPに格納され、S. lividansの細胞膜関連プロテオーム画分の割合を増加させ、最終的に細菌間競争に対する本菌の適応を促す。Sle1ホモログは放線菌において広く分布している。以上の結果は、ファージの感染機構が細菌によって環境適応を補助する因子として取り込まれてきたことを示唆している。

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2026/05/12

LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する

論文タイトル
LRBA organizes distinct vesicular trafficking systems in distal nephron segments for water and sodium conservation
論文タイトル(訳)
LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する
DOI
10.1073/pnas.2525505123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2525505123
著者名(敬称略)
長岡 可楠子 安藤 史顕 他
所属
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野
著者からのひと言
LRBA欠損症は、これまで主に「免疫の病気」と考えられてきましたが、本研究により、LRBAが腎臓にも発現し、水と塩の保持を担うことが明らかになりました。患者レジストリ解析とモデルマウスの解析を統合することで、腎臓の体液恒常性維持機構を新たに解明した点が本研究の特徴です。本成果は、LRBA欠損症に「尿濃縮障害」という新たな病態概念を加えるものであり、脱水症や電解質異常への早期治療介入の必要性を示しています。

抄訳

LRBA欠損症は、慢性的な下痢や繰り返す感染症を特徴とする先天性免疫異常症に分類される疾患として知られていますが、免疫系以外の表現型については十分に解明されていませんでした。本研究では、LRBA欠損症患者の国際共同レジストリ解析、LRBA欠損症モデルマウスの病態解析、腎臓膜タンパクの網羅的解析を組み合わせることで、LRBA欠損症において尿濃縮力障害、多尿、電解質異常が生じることを明らかにしました。その機序として、LRBAが腎臓集合管ではAQP2・AQP4水チャネルの小胞輸送を担い、さらに遠位尿細管ではSPAKキナーゼの小胞輸送を介して塩輸送体の活性制御を担うことを解明しました。LRBAは腎臓において水と塩を協調的に保持する役割を有し、尿中への喪失を防いでいました。LRBA欠損症患者の診療では、脱水症への注意が必要となる一方で、一部の変異では抗利尿薬デスモプレシンが多尿の治療へ有効となる可能性を示せており、遺伝子変異に応じた個別化医療への発展が期待されます。

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2026/05/11

スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定

論文タイトル
Molecular epidemiology of rodent-borne Leptospira spp. in Sri Lanka: identification of novel sequence types
and previously unrecognized reservoir animals
論文タイトル(訳)
スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定
DOI
10.1099/jmm.0.002133
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 3
著者名(敬称略)
Nipun Rathnayake 小泉 信夫 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部-第四室
著者からのひと言
本研究では、スリランカのネズミ類における病原性レプトスピラの遺伝的多様性を明らかにし、ヒト感染に関与する新たな保菌動物を同定した。さらに、これまで未報告であった新規シーケンスタイプも検出され、スリランカにおける多様なレプトスピラ感染環の存在が示された。本研究成果は、レプトスピラ症の感染源解明と制御対策の構築に貢献すると期待される。

抄訳

レプトスピラ症は,全世界で発生する人獣共通感染症であり、特に熱帯地域で流行がみられる。スリランカは本症の流行地域の一つであり、病原体(レプトスピラ属菌)、保菌動物、ならびに環境・職業要因が複雑に関与することで、公衆衛生上の問題となっている。
本研究では、ヒト患者由来レプトスピラとネズミ類が保有するレプトスピラとの遺伝学的関連性を明らかにするため、スリランカのKurunegala、Anuradhapura、Badullaの3地区に生息するネズミ類におけるレプトスピラの遺伝的多様性を調査した。
その結果、257検体中33検体(12.8%)から病原性レプトスピラDNAが検出され、陽性個体はBandicota bengalensisMus boodugaRattus rattus、およびVandeleuria sp.の4種であった。flaB遺伝子配列解析および多遺伝子座配列タイピング(MLST)により、検出されたレプトスピラ種はLeptospira borgpeterseniiL. interrogansL. kirschneri、およびL. licerasiaeであり、2つの新規シーケンスタイプ(ST389およびST392)を含む計5種類のシーケンスタイプが同定された。また、R. rattusがヒト感染に関与するL. interrogans ST49の、M. boodugaL. borgpetersenii ST144およびL. licerasiaeの保菌動物であることが示された。

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2026/05/11

原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例

論文タイトル
Dendriform pulmonary ossification in fibrosing interstitial lung disease with primary biliary cholangitis
論文タイトル(訳)
原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-271743
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 4
著者名(敬称略)
尾形 朋之 他
所属
茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター 呼吸器内科
著者からのひと言
間質性肺疾患に伴う微細結節影では、肉芽腫性疾患のみならず樹枝状肺骨化症(DPO)も重要な鑑別となります。本症例は、骨条件CTでの再評価と経気管支鏡下クライオバイオプシーにより診断に至りました。背景因子として慢性微小誤嚥の関与も示唆され、DPOの病態理解にも示唆を与える症例です。

抄訳

Dendriform pulmonary ossification(DPO)は、肺内に樹枝状の骨形成を認める稀な病態であり、UIPパターンを呈する肺線維症との関連が知られている。今回、無症候性の原発性胆汁性胆管炎(PBC)を有する80歳代男性において、胸部CTで両側下葉の非特異的なすりガラス影と線維化に加え、胸膜下に微小結節の出現を認めたため、PBCに関連した肉芽腫性の間質性肺炎が疑われた。しかし、経気管支鏡下クライオバイオプシー(TBLC)では肉芽腫は認められず、UIPパターンの線維化とともに肺胞内の骨化が確認された。これを受けてCTを骨条件で再評価したところ、微小結節は高吸収の樹枝状構造として描出され、DPOに合致する所見であることが確認された。本報告は、間質性肺炎に付随するDPOの臨床的意義と、TBLCの有用性を示すものである。

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2026/05/07

ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見

論文タイトル
Structural insights into biased signaling at chemokine receptor CCR7
論文タイトル(訳)
ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見
DOI
10.1073/pnas.2533975123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2533975123
著者名(敬称略)
田中 康太郎 堤 尚孝 他
所属
東京科学大学 総合研究院 細胞構造生理学研究室(CeSPL)
著者からのひと言
同一の受容体に結合するリガンドが、いかにして異なる細胞内反応を引き起こすのか。本研究は、この謎に対し、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析、計算機シミュレーション、薬理解析を組み合わせて迫ったものである。静的な構造だけでなく、受容体の動的な振る舞いまで捉えた本成果が、副作用を抑え必要な薬効だけを引き出す画期的な創薬へと繋がることを期待している。

抄訳

GPCRの一種であるケモカイン受容体CCR7は、免疫細胞の遊走を制御し、適応免疫応答やがんのリンパ節転移において重要な役割を担う。CCR7の内因性リガンドである2種類のケモカイン(CCL19およびCCL21)は、同一受容体に結合するにもかかわらず、細胞内のシグナル経路を異なるバランスで活性化する「バイアスシグナル伝達」を引き起こすが、その構造的メカニズムは未解明であった。
本研究では、各リガンドが結合したCCR7がGタンパク質を活性化する様子をクライオ電子顕微鏡により高分解能で可視化した。この構造を基に、計算機シミュレーションで受容体の動的な構造変化を解析し、薬理解析と組み合わせることで、リガンドの結合様式の差異が受容体に異なる構造変化を誘起し、シグナル分子を選択的に活性化する精緻な仕組みを解明した。本成果は、副作用を低減し目的の薬効のみを誘導する、次世代の免疫疾患治療薬や抗がん剤の開発基盤となることが期待される。

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2026/05/01

ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見

論文タイトル
Factors contributing to the frequent interspecies transmission of G4P[6] Rotavirus alphagastroenteritidis
strains from pigs to humans in Vietnam: molecular epidemiological insights
論文タイトル(訳)
ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間 伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見
DOI
10.1099/mgen.0.001685
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 4
著者名(敬称略)
金子 美穂 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染分子解析学分野
著者からのひと言
ロタウイルスA(RVA)は、小児における重症胃腸炎の主要な原因の一つであり、動物由来株のヒトへの種間伝播が報告されている。本研究では、ヒトとブタの双方で検出されるP[6]遺伝子型VP4に着目した。P[6]のアミノ酸特性と宿主糖鎖との相互作用との関連を示した点は、ウイルスの宿主適応機構の理解に重要な示唆を与える。また、動物由来株が比較的高頻度でヒトへ種間伝播しているにもかかわらず、持続的なヒト-ヒト間伝播には至っていないことから、ヒト宿主への適応には追加的な遺伝的要因が必要である可能性が示された。本研究の成果は、動物由来ロタウイルスの進化およびヒト適応機構の理解を深めるとともに、感染対策やワクチン開発に向けた基盤的知見を提供する。

抄訳

アジアの一部地域では、ブタ由来ロタウイルス(RVA)、特にG4P[6]株がヒトから比較的高頻度で検出されている。本研究では、ベトナム小児から検出されたG4P[6]株の起源と高頻度検出の要因を分子疫学的に解析した。2年間に収集したRVA陽性糞便1,252検体中28検体(2.2%)がG4P[6]株単独感染に起因し、23株の全ゲノム解析により、いずれもヒトRVAとのリアソートメントを伴わないブタ由来株と確認された。一部のG4P[6]株に全ゲノムが一致するクラスターが認められ、限定的なヒト-ヒト間伝播の可能性が示唆された一方、多くの株は遺伝的に異なっており、ブタからヒトへの複数回の独立した種間伝播が推測された。さらに系統解析から、本研究株を含むブタ様RVAのP[6]は典型的ヒトRVAのP[6]とは遺伝的に異なり、それぞれのP[6]株の検出頻度には地理的差異が認められた。加えて、アミノ酸配列解析によりブタ様P[6]に特徴的な残基が同定され、一部は既知のヒト細胞表面糖鎖への結合部位に対応していた。以上より、本事例は持続的なヒト-ヒト間伝播株の出現ではなく、頻回な種間伝播に起因すると考えられ、ブタ様P[6]のアミノ酸特性が種間伝播を促進し得る可能性が示された。

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2026/04/30

quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ

論文タイトル
quickARSC: standalone package and web interface for profiling elemental stoichiometry of proteomes
論文タイトル(訳)
quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ
DOI
10.1128/mra.00031-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
西野 聡 吉澤 晋 他
所属
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門(微生物)
著者からのひと言
詳細はGitHub Wikiをご確認ください。
https://github.com/stsnsn/quickARSC/wiki 

抄訳

本稿では、原核生物の塩基配列またはアミノ酸配列のFASTAファイルから元素組成指標(ARSC)を計算するコマンドラインツール quickARSC を紹介する。quickARSCでは、タンパク質またはプロテオームの窒素、炭素、硫黄組成指標を算出可能である。本ツールはgz圧縮済みファイルや並列計算に対応しており、パイプなどを用いてシームレスにUNIXコマンドと接続できる。
併せて、FASTAファイルをアップロードすることでこれらの指標を計算可能なWebページを公開した。このページではGenome Taxonomy Database r226.0に登録されている143,614種の代表原核生物プロテオームにおける事前計算済みデータも提供している。ユーザーはGUI操作のみでこれらの情報を検索・取得可能である。

 

 

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