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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/10/13

 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構

論文タイトル
Step-by-step maturation mechanism of the binary toxin pore revealed by cryo-EM analysis
論文タイトル(訳)
 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構
DOI
10.1073/pnas.2627537123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2627537123
著者名(敬称略)
筆頭著者:山田 等仁  連絡著者:津下 英明 
所属
京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科
著者からのひと言
 膜孔はいかにして出来上がるのか。まず、モノマーとして発現したタンパク質は、プロテアーゼによってプロ配列が切断され、7量体の可溶性プレ膜孔を形成します。さらにβバレルからなる「注射針」が形成され、膜に穴をあける膜孔へと成熟します。本研究では、これまで謎であったプレ膜孔が出来上がる過程を明らかにしました。段階を踏んで巧妙かつ合理的に膜孔が組み上がっていく仕組みは、まさに驚きです。

抄訳

膜孔形成タンパク質はそれがリング状に集合して多量体となり、細胞膜等に貫通する孔を形成し、感染や免疫、細胞殺傷に関与することが知られています。膜孔形成タンパク質は最初に不活性のプレ膜孔を形成し、その後に膜貫通型の膜孔に構造変化することが知られていましたが、これがどのような順序で進行するかは深く理解されてきませんでした。我々は細菌が産生する膜孔形成タンパク質の研究に取り組み、膜孔への構造変化が立体的な制約によって停止した試料「Ibロゼッタ」を得ることに成功し、クライオ電子顕微鏡を用いて構造解析を行いました。その結果、プレ膜孔と膜孔に加え、その中間段階に対応する複数の構造を解明することができました。これによって、プレ膜孔から膜孔への構造変化は、段階的かつドミノ倒しのように秩序だって進行することが明らかになりました。本研究から得られた知見は、膜孔形成タンパク質の分子メカニズムの理解を深めるだけでなく、膜孔を利用した研究用ナノデバイスの設計等への応用が期待されます。

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2026/10/13

ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明

論文タイトル
Uncovering the role of dimerization on dynamics and inhibitor stability in human versus Xenopus LTA4H.
論文タイトル(訳)
ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明
DOI
10.1016/j.bpj.2026.03.027
ジャーナル名
Biophysical journal
巻号
Biophysical Journal, 2026; 125, 4300-4312
著者名(敬称略)
Gert-Jan Bekker, Sandhya P. Tiwari
所属
大阪大学 蛋白質研究所
著者ウェブサイト
著者からのひと言
This work is an exploration of the impact of oligomer assembly on small molecule stability in a very special, bifunctional enzyme. We are currently pursuing protein engineering efforts to switch the dimer/monomer states of human and X. laevis LTA4H, to better understand how their conformational dynamics and inhibition are altered.

抄訳

ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)は、炎症を促進するロイコトリエンB4の生合成の最終段階を担う酵素です。M1ファミリーの金属ペプチダーゼに属し、エポキシド加水分解酵素とアミノペプチダーゼの二つの活性を持ちます。本研究では、LTA4H阻害剤ベスタチンの結合が酵素の構造動態に及ぼす影響を調べました。ヒトの単量体とX. laevisの二量体のX線結晶構造を基に、阻害剤の有無および単量体・二量体の条件で全原子分子動力学シミュレーションを行い、比較解析しました。その結果、X. laevisの二量体ではサブユニット間の相互作用が活性部位とC末端ドメインの連動を変化させ、ベスタチンの結合を不安定にすることが示唆されました。この影響は、サブユニットを単独にすると弱まりました。本研究は、創薬において静的な構造だけでなく、酵素の会合状態と動的な性質を考慮する重要性を示しています。

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2026/10/13

thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加

論文タイトル
Patagonian Ice Sheet discharge enhanced by AMOC slowdown through thermal bipolar seesaw
論文タイトル(訳)
thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加
DOI
10.1073/pnas.2532733123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (38) e2532733123
著者名(敬称略)
粕谷 拓人 他
所属
国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境研究部門 地球表層システム研究センター

抄訳

全球の気候を調節する重要な役割を担う大西洋子午面循環(AMOC:Atlantic Meridional Overturning Circulation)は、将来的な弱化が懸念されているものの、遠隔地への影響には不明点が多く残されている。最終氷期に繰り返し発生したAMOCの弱化は、その影響が北大西洋から遠く離れた地域へどのように波及するかを理解する手がかりとなる。本研究では、南東太平洋チリ沖で得られた海底堆積物記録と気候モデル実験を組み合わせ、当時のAMOC弱化が南半球中・高緯度域に及ぼした影響を調査した。その結果、AMOCの弱化に応答して、パタゴニア氷床からの堆積物や融解水の流出が繰り返し増加したことを示す証拠を得た。数値シミュレーションからは、AMOC弱化に伴う南太平洋の海水温上昇と南半球偏西風帯の強化が、パタゴニアを含む南半球中・高緯度域の降水量の増加や氷床縁辺部での融解を促進した可能性が示された。本研究は、両半球間の熱の再分配(thermal bipolar seesaw)を介した大気・海洋循環の変化を通じて、AMOCの弱化が南半球中・高緯度域にまで広範な気候変動を引き起こし得ることを示している。

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2026/10/06

HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序

論文タイトル
Digenic HNF1A and ABCC8 variants provide mechanistic insight into early-onset diabetes
論文タイトル(訳)
HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序
DOI
10.1210/clinem/dgag183
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 10, October 2026, Pages 2827–2836
著者名(敬称略)
本田 真希江 堀川 幸男 他
所属
岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学
中部国際医療センター ゲノム医療研究センター・健康管理センター
著者からのひと言
MODY疑い例では、一つの原因遺伝子が同定されても、他の病的バリアントが発症時期や病態を修飾する可能性がある。本研究は、HNF1AとABCC8の病的バリアントの相加的作用を機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

抄訳

MODY様家系の発端者にHNF1A、HNF1B、ABCC8の3遺伝子に4変異を同定した。機能解析の結果、HNF1A p.Ser551Lysfs*2は転写活性が野生型の約5%に低下し、ABCC8 p.Arg298Cysはチャネル活性が77%に低下した。一方、HNF1Bともう片方のABCC8のバリアントは野生型と同等であった。家系解析ではHNF1AとABCC8の病的バリアントをそれぞれ糖尿病罹患した父と母から継承し、両変異を有する発端者は両親より早期に発症していた。子宮内高血糖曝露に加えてHNF1AとABCC8の病的バリアントが相加的に作用してMODYの発症に寄与することを機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

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2026/10/02

同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性

論文タイトル
The diagnostic potential of combined quantitative polymerase chain reaction and next-generation sequencing using the same primers for periprosthetic joint infection.
論文タイトル(訳)
同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性
DOI
10.1128/spectrum.04128-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e04128-25
著者名(敬称略)
植田 成実
所属
日本赤十字社 和歌山医療センター 整形外科
著者からのひと言
本研究では、整形外科領域でこれまでほとんど検討されてこなかった低バイオマス検体のNGS解析に着目し、qPCRによる菌量評価と各種対照、汚染除去解析を組み合わせ、NGS結果を信頼して解釈するための定量的な境界を検討しました。本手法はPJI診断のみならず、低バイオマス検体を扱う他の診療領域におけるNGSの信頼性向上と今後の発展にもつながることを期待しています。

抄訳

人工関節周囲感染症(PJI)では、培養検査で原因菌を同定できない症例があり、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子診断が期待されている。一方、低バイオマス検体では環境由来のコンタミネーションが結果に影響するが、整形外科領域では十分な定量的検討が行われていなかった。本研究では、16S rRNA遺伝子V1–V2可変領域を標的とした同一プライマーによる定量PCR(qPCR)とNGS(Fusion Method)を行い、QIIMEによるシーケンス解析に加え、定量positive control、negative controlおよびmock communityを用いた検証と、decontamによる汚染候補配列の除去を行った。 qPCRは高い再現性を示し、NGSで細菌を安定して同定できる菌量に基づく定量カットオフを設定した。また、培養陰性例でも細菌を検出し、その後の臨床経過と一致する症例を認めた。qPCRによる菌量評価と汚染除去の併用により、低バイオマス検体におけるNGS結果の信頼性を高められる可能性が示された。

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2026/10/02

SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例

論文タイトル
Critical airway obstruction associated with extensive subglottic inflammatory slough and oedema following severe acute respiratory syndrome SARS-CoV-2 infection in a child
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例
DOI
10.1136/bcr-2026-273982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e273982
著者名(敬称略)
太田 陽一朗 大村 和弘 他
所属
東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室
著者からのひと言
 SARS-CoV-2感染では、典型的なクループの好発年齢を超えた小児であっても、広範な炎症性付着物や高度な声門下浮腫により、急速に重篤な気道閉塞へ進展するリスクがあります。本症例を通して、適切な喉頭評価、耳鼻咽喉科・麻酔科・小児科等が緊急時に連携できる体制構築、そして迅速な気道確保の重要性を共有できれば幸いです。

抄訳

本症例は、SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物と高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児の1例である。基礎疾患のない学童期児が咽頭痛と進行性呼吸困難で受診した。喉頭内視鏡検査で声帯周囲に広範な炎症性付着物を認め直ちに手術室へ搬送した。搬送中に意識消失と酸素飽和度の80%への低下を認めたが、ビデオ喉頭鏡下に閉塞物質を除去したところ自発呼吸と意識が回復した。高度な声門下浮腫のため内径4.5 mmのチューブで気管挿管を行った。翌日に自己抜管を認めたが、アドレナリン吸入とデキサメタゾン投与により再挿管を回避し、保存的加療のもと第10病日に退院した。本症例は、SARS-CoV-2感染がクループ好発年齢を超えた小児にも重篤な気道閉塞を引き起こし得ることを示し、適切な設備環境と多職種連携による迅速な気道管理の重要性を示唆している。

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2026/10/01

ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Anaerostipes stercorihominis sp. nov., isolated from human faeces.
論文タイトル(訳)
ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007276
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 2026;76:007276
著者名(敬称略)
田辺 倫己、久富 敦、坂本 光央、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部
著者からのひと言
酪酸産生菌はヒトの健康維持に重要な役割を担う腸内細菌で、“腸内での酪酸産生菌の減少は万病の元”なのではないかと考えています。本菌がヒトの健康に及ぼす影響はまだわかっていませんが、本研究成果がヒトのウェルビーイングにつながればと考えています。

抄訳

Anaerostipes属は健常成人の腸内における主要な酪酸産生菌属の一つであり、腸内における存在量の低下は様々な疾病発症と関連する可能性が示唆されている。我々はヒト腸内有用菌の分離を進める中で、健常成人腸内から 17EGHSPOS18-1T 株を取得した。本菌株について多相分類学的な評価を行い、本菌がAnaerostipes属に分類される新種の酪酸産生菌であることを明らかにし、Anaerostipes stercorihominisとして提唱した。本菌種は近縁種と比較して利用可能な炭水化物の種類が限られており、この特徴はゲノム上にコードされる糖加水分解酵素の種類や数が限られていることと一致した。また、他のAnaerostipes菌種と同様に、糖からだけでなく、乳酸からも酪酸を産生する能力があることが明らかとなった。これは他の酪酸産生菌ではあまり見られない特徴であり、ビフィズス菌などの共生細菌が産生する乳酸からも酪酸を産生する能力があることから、ヒトの健康維持に重要な役割を担っている可能性も考えられた。 さらに、本研究を進める過程で、これまで別種として報告されていたAnaerostipes hominisとAnaerostipes faecisは同一種であることを明らかにし、A. faecisをA. hominisに統合することを提案した。

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2026/10/01

 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸

論文タイトル
Signatures of branched-chain fatty acids derived from a kidney reservoir confer stable chemical individuality on domestic cats
論文タイトル(訳)
 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸
DOI
10.1016/j.cub.2026.07.045
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 2026; 36, 4340-4353.e20
著者名(敬称略)
市沢翔太 宮崎雅雄 他
所属
岩手大学 農学部生命科学科
著者からのひと言
約20年前、ネコのフレーメン反応を観察したことから、「ネコは尿のにおいから相手の何を読み取っているのか」という疑問を持ちました。本研究は、その素朴な疑問を追い続けた末にたどり着いた成果です。腎臓に蓄えられた分岐鎖脂肪酸が、長期間変わりにくい「 においの個性 」をつくることを明らかにしました。途中で研究が中断した時期もありましたが、多くの共同研究者に支えられ、ようやく一つの形にまとめることができました。

抄訳

 動物は尿などのにおいを手掛かりに相手を識別しますが、時間とともに変化するにおいが、どのようにして安定した個体情報を保つのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、ネコのフレーメン反応を手掛かりに尿中成分を解析し、13種類の特殊な分岐鎖脂肪酸を同定しました。これらの種類と比率は個体ごとに異なる一方、同じ個体では採尿日が違っても比較的安定し、尿を室温で24時間置いた後も個体特有の組成が保たれました。さらに、ネコ自身が個体ごとに異なる分岐鎖脂肪酸の組成を嗅ぎ分けられることを行動試験で示しました。また、分岐鎖脂肪酸を含む脂質が腎臓皮質の脂肪滴に蓄積していることを発見し、この脂肪滴が個体特有の化学情報を安定して尿へ供給する貯蔵庫として働く可能性を示しました。さらに、ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、イリオモテヤマネコなどのネコ科動物でも関連する尿成分や腎臓の脂肪滴が確認され、その特徴がネコ科の進化の中で多様化してきた可能性が示されました。

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2026/09/30

 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす

論文タイトル
Tire wear particles impact a roadside wild plant species
論文タイトル(訳)
 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす
DOI
10.1016/j.cub.2026.06.087
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 36, R943-R944
著者名(敬称略)
都築洋一 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科
附属生態調和農学機構

抄訳

道路交通は現代の人間社会の基盤となる要素です。近年、タイヤと路面の摩擦によって発生する「タイヤ摩耗粒子」は、広範な生物に対して毒性を持つことが懸念されています。これまでの研究では水生生態系や農作物への影響が調査されてきましたが、道路近くに位置する公園や 路傍の緑化帯といった都市緑地への影響はほとんど解明されていませんでした。本研究では、日本で一般的な路傍雑草種であるイヌムギに対してタイヤ摩耗粒子の曝露実験を行いました。その結果、タイヤ摩耗粒子はシュート(地上部)および根の成長を著しく阻害することが実証されました。さらに、根における酸化ストレスを有意に上昇させました。これらの知見は、都市緑地生態系においてタイヤ摩耗粒子汚染が身近な野草にも害を与えていることを示しており、都市の緑地生態系全体へどのような影響が広がっているのか、詳しく調べる必要性を示しています。

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2026/09/29

Streptomyces属における二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの発現を制御するラクトン骨格含有シグナル分子制御系の分布

論文タイトル
Distribution of lactone-signaling system for expression of secondary metabolite biosynthetic gene clusters in Streptomyces species
論文タイトル(訳)
Streptomyces属における二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの発現を制御するラクトン骨格含有シグナル分子制御系の分布
DOI
10.1042/EBC20250059
ジャーナル名
Essays in Biochemistry
巻号
Essays Biochem 19 August 2026; 70 (2): 175–186
著者名(敬称略)
手島 愛子 荒川 賢治 他
所属
広島大学大学院統合生命科学研究科 
生物工学プログラム 微生物ケミカルバイオロジー研究室

抄訳

多くのStreptomyces属放線菌は、二次代謝産物生合成遺伝子クラスター(BGC)の発現を誘導するシグナル分子・受容体システムを有している。これまでに発見されたシグナル分子は、γ-ブチロラクトン、γ-ブテノライド、フランの3つのグループに分類され、アベノライド型を除くこれらの分子は、AfsAタンデムリピートドメインをもつ酵素によって生合成される。59個のafsAホモログ遺伝子についてゲノム上の配置を解析したところ、その86%(51/59)が、対応すると推定されるシグナル分子受容体遺伝子の近傍に位置していた。このことから、BGC発現に関与するシグナル分子・受容体システムは、遺伝子の位置関係から予測できる可能性が示された。一方、S. griseusではafsAと受容体遺伝子arpAが約3.91 Mb離れて存在するなど例外も認められた。シグナル分子と受容体の対応関係を明らかにすることは、シグナル分子による転写抑制解除を利用して休眠BGCを活性化する、新たなゲノムマイニング戦略につながると期待される。

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2026/09/28

DnaAによるロバストなssDNA結合を支える複製起点の自由度

論文タイトル
Origin flexibility governs robust ssDNA engagement by the DnaA initiator
論文タイトル(訳)
DnaAによるロバストなssDNA結合を支える複製起点の自由度
DOI
10.1073/pnas.2615469123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (38) e2615469123
著者名(敬称略)
清原菜々杜、尾崎 省吾 他
所属
九州大学 薬学研究院 分子生物薬学分野
著者からのひと言
この発見は、生命が進化の過程でゲノム配列を変化させながらもDNA複製という基本機能を維持してきたしくみを理解する上で重要な手がかりとなります。また、DnaAは細菌の増殖に必須のタンパク質であることから、その働きを標的とした新たな抗菌薬開発への応用も期待されます。

抄訳

DNA複製はすべての生物に必須の生命現象です。しかし、その開始点となるDNA配列は細菌の種類によって大きく異なります。それにもかかわらず、細菌は正確にDNA複製を開始し、自身のゲノムを次世代へ受け継いでいます。なぜDNA配列が変化しても複製開始という重要な機能が維持されるのかは、これまでよくわかっていませんでした。

九州大学大学院薬学研究院・分子生物薬学分野の尾崎省吾准教授、片山勉教授、大学院薬学府の清原菜々杜大学院生らの研究グループは、DNA複製開始タンパク質DnaAが、この問題を解く鍵となることを明らかにしました。細菌では、DnaAタンパク質が複製開始点に集まって開始複合体を形成し、DNAの一部がほどけて生じた1本鎖DNAに結合することでDNA複製が始まります。研究グループは、この1本鎖DNA結合のメカニズムを詳しく解析し、DnaAがDNA配列の違いや配置の変化を一定程度許容できる“遊び”、すなわち自由度を持つことを見出しました。DnaAは、離れた場所にある1本鎖DNAを開始複合体へと引き寄せながら結合できるだけでなく、多様な配列にも柔軟に対応できます。このようなDnaAによる柔軟なDNA認識機構によって、複製開始システムは進化に伴うDNA配列の変化を許容し、多様なDNA複製開始点から正確にDNA複製を開始できると考えられます。

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2026/09/28

霊長類黄斑変性モデルにおけるゲノム編集網膜オルガノイドの長期機能的シナプス統合

論文タイトル
Long-term functional synaptic integration of genome-edited retinal organoids in a primate model of macular degeneration.
論文タイトル(訳)
霊長類黄斑変性モデルにおけるゲノム編集網膜オルガノイドの長期機能的シナプス統合
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.06.037
ジャーナル名
Molecular therapy : the journal of the American Society of Gene Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 5444-5461
著者名(敬称略)
尾崎 充崇 万代 道子 他
所属
神戸市立神戸アイセンター病院研究センター
著者からのひと言

抄訳

網膜変性疾患に対する再生医療として網膜オルガノイド(RO)移植が期待されるが、霊長類黄斑部で宿主双極細胞が移植視細胞と機能的シナプスを再形成できるかは不明であった。本研究では、ON双極細胞を欠失させたゲノム編集ヒトES細胞由来網膜オルガノイド(ISL1−/−)を、レーザー誘発黄斑部視細胞変性モデルのカニクイザルに移植した。免疫組織化学・微細構造解析・局所黄斑網膜電図(FMERG)により、宿主の桿体・錐体双極細胞がいずれも移植片へ樹状突起を伸長しシナプスを形成することを確認。移植部位でのFMERGは信号対雑音比が低く2000回加算平均を要するなど検出感度上の技術的困難があったが、複数時点での応答の再現性から、4眼中2眼でON双極細胞応答が最大21.6%有意に改善し、最長2年間安定して維持された。うち1眼ではOFF経路の接続性が移植13か月後に遅発性に向上した。これは霊長類黄斑における宿主-移植片間の長期機能的シナプス統合を詳細に示した初の報告であり、ISL1−/− ROが黄斑変性における中心視機能回復の有望な戦略であることを示唆する。

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2026/09/24

11β-HSD2は、母体ストレス下でPer1誘導を伴う胎仔のグルココルチコイド曝露を緩衝する

論文タイトル
11β-HSD2 buffers fetal glucocorticoid exposure inducing Per1 expression under maternal stress.
論文タイトル(訳)
11β-HSD2は、母体ストレス下でPer1誘導を伴う胎仔のグルココルチコイド曝露を緩衝する
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag286
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 9, September 2026, pgag286
著者名(敬称略)
八木田和弘 他
所属
京都府立医科大学 大学院医学研究科 統合生理学
著者からのひと言

抄訳

概日時計は生体に約24時間周期の時間秩序を与え、動的恒常性を支える普遍的な細胞機能である。哺乳類では概日時計は器官形成期の完了後に発生する。我々はこれまで、概日時計の発生が細胞自律的にプログラムされ、鍵因子CLOCK/BMAL1が体節形成を司る分節時計に干渉することを見出し、初期発生における概日時計の抑制に生理的意義がある可能性を示してきた。本研究では、母体―胎児間コミュニケーションに着目し、概日時計の同調因子でもあるグルココルチコイド(GC)の胚への移行を制御する11β-HSD2の役割を解析した。野生型と11β-HSD2欠損胚を同一母体に移植したところ、通常状態では両者の羊水中GC濃度の差は小さかったが、母体ストレスによるGC上昇時には欠損胚でのみ顕著なGC移行を認めた。一方、分節時計や体節形成への明らかな影響は認めなかった。以上より、11β-HSD2は急激な母体GC曝露から胚を保護する防御機構として働き、これと細胞自律的な概日時計抑制が協調して、器官形成期の発生プログラムを外因性の時間シグナルから隔離している可能性が示唆された。

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2026/09/24

 日本の城崎温泉から分離されたThermus株の完全ゲノム配列

論文タイトル
Complete genome sequences of Thermus strains isolated from Kinosaki Hot Spring in Japan
論文タイトル(訳)
 日本の城崎温泉から分離されたThermus株の完全ゲノム配列
DOI
10.1128/mra.00315-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiol Resour Announc 15:e00315-26
著者名(敬称略)
大道 春輝 宮崎健太郎 他
所属
大阪大学 生物工学国際交流センター 分子微生物学研究室
著者からのひと言
Thermus 属は、高温環境に適応した好熱菌で、耐熱性DNAポリメラーゼの発見を通じてPCRの発展にも大きく貢献してきました。一方で、その多様性にはまだ分かっていない部分も多く残されています。今回、40~80℃という幅広い温度域で生育するユニークな Thermus 株を発見しました。 極限環境には、まだ見ぬ Thermus が存在しているかもしれません。こうした株を見つけ、そのゲノムを一つひとつ読み解くことが、Thermus の新たな特徴や可能性を見いだすことにつながると考えています。

抄訳

本研究では、兵庫県の城崎温泉から分離した高度好熱菌 Thermus 属5株について、完全ゲノム配列を決定しました。Oxford NanoporeによるロングリードとIlluminaによるショートリードを組み合わせたハイブリッドアセンブリを用いて解析した結果、T. thermophilus 2株、T. brockianus 1株、T. brevis 2株に分類されました。特に、T. brevis については、本研究が初の完全ゲノム配列の報告となります。また、T. thermophilus および T. brockianus では既知の Thermus 属メガプラスミドと相同性を示す大型環状DNAが確認された一方、T. brevis では認められず、関連遺伝子は染色体上に存在していました。本研究で得られたゲノム情報は、Thermus 属の多様性の理解を深め、今後の好熱菌研究を支える基盤となることが期待されます。

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2026/09/15

Sclerotinia sclerotiorumの菌核から分離されたSphingobacterium kitahiroshimenseの全ゲノム解析

論文タイトル
Complete genome sequence of Sphingobacterium kitahiroshimense strain Ss8-5,isolated from a sclerotium of Sclerotinia sclerotiorum
論文タイトル(訳)
Sclerotinia sclerotiorumの菌核から分離されたSphingobacterium kitahiroshimenseの全ゲノム解析
DOI
10.1128/mra.00846-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiol Resour Announc 15:e00846-26
著者名(敬称略)
岩渕 望
所属
横浜国立大学 大学院環境情報研究院
著者からのひと言
「菌核」は、メラニンを含む黒く厚い外壁を持つ、カビの頑丈な休眠カプセルです。今回報告したのは、その中から分離した細菌1株の全ゲノムという、一見地味な成果です。しかし解析を進めるうちに、Sphingobacterium属が菌核という特殊な環境に広く定着し、菌核を構成する多糖まで利用している可能性が見えてきました。たった一つのゲノム情報から、菌核における細菌の知られざる生存戦略が垣間見えてきています。

抄訳

植物病原糸状菌の中には「菌核」と呼ばれる休眠構造を形成し、土壌中で長期間生存するものがいます。しかし、この菌核内部に生息する細菌については、これまでほとんど注目されてきませんでした。本研究では、400種以上の植物に感染し、菌核病による深刻な農業被害をもたらすSclerotinia sclerotiorumの菌核から細菌の分離を試み、Ss8-5株を単離しました。さらに、全ゲノム解析の結果、1つの環状ゲノムが得られ、Ss8-5株はSphingobacterium kitahiroshimenseであると推定されました。この結果は、植物病原菌の休眠構造の中に、これまで知られていなかった細菌が共存している可能性を示すものです。今後は、得られたゲノム情報をもとに代謝機能や糸状菌との相互作用メカニズムを解析し、菌核内における生態的役割の解明を目指します。

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2026/09/14

日本で分離されたメトロニダゾール低感受性 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列解析

論文タイトル
Complete genome sequence of Prevotella bivia GTC18476: a clinical isolate with reduced susceptibility to metronidazole in Japan
論文タイトル(訳)
日本で分離されたメトロニダゾール低感受性 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列解析
DOI
10.1128/mra.00688-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiol Resour Announc 15:e00688-26
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
著者からのひと言
当研究グループは、長野県で患者由来検体から分離された偏性嫌気性細菌 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列を解読しました。解析の結果、本株が2本の環状染色体と1本のプラスミドを有することを明らかにしました。また、メトロニダゾールに対する低感受性に関連する可能性のある薬剤耐性関連遺伝子 nimK を同定しました。本株のようなメトロニダゾール低感受性を示す P. bivia の分離報告は日本では限られており、本成果は、P. bivia のゲノム構造や薬剤耐性に関する理解を深め、嫌気性菌感染症の診断・治療および薬剤耐性監視に資する基盤情報となります。

抄訳

本研究では、長野県で患者検体から分離された偏性嫌気性菌 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列を決定した。Oxford Nanopore TechnologiesによるロングリードシーケンスとDNBSEQによるショートリードシーケンスを組み合わせたハイブリッドアセンブリにより、本株が2本の環状染色体(1.30 Mb、1.21 Mb)および1本のプラスミド(19 kb)から構成されることを明らかにした。ゲノム解析の結果、2,088個のコード配列、12個のrRNA遺伝子、50個のtRNA遺伝子を同定するとともに、メトロニダゾール低感受性に関連する可能性のある薬剤耐性遺伝子 nimK を検出した。本研究で得られた完全ゲノム情報は、P. bivia のゲノム構造および薬剤耐性機構の理解を深めるとともに、比較ゲノム解析や嫌気性菌の薬剤耐性監視に資する基盤データとなる。

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2026/09/11

付着・侵入性大腸菌におけるrfaG依存的な細胞表層生合成は1型線毛の発現と腸管内定着を支える

論文タイトル
rfaG-dependent cell envelope biogenesis supports type 1 fimbrial expression and intestinal colonization in adherent-invasive Escherichia coli
論文タイトル(訳)
付着・侵入性大腸菌におけるrfaG依存的な細胞表層生合成は1型線毛の発現と腸管内定着を支える
DOI
10.1099/mic.0.001766
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology 2026;172:001766
著者名(敬称略)
三木 剛志 他
所属
東北医科薬科大学 薬学部 微生物学教室
著者からのひと言
付着・侵入性大腸菌(AIEC)はクローン病との関連が注目されている腸内細菌です。本研究では、rfaGに依存した細胞表層生合成が1型線毛の発現を支え、AIECの腸管内定着に重要な役割を果たすことを明らかにしました。病原細菌が腸管環境に適応し、定着するための新たな分子基盤の理解につながる成果と考えています。

抄訳

付着・侵入性大腸菌(AIEC)は病原性共生菌であり、1型線毛を介した腸管上皮への付着・侵入は、その病原性発現に重要な役割を果たす。本研究では、LPS生合成に関わるRfaGをコードするrfaG遺伝子の欠失により、1型線毛の発現が著しく低下することを見いだした。この変化には、1型線毛発現のON/OFFを決定するfimSの相変異が関与していた。さらに、rfaG欠失株ではマウス腸管内への定着能も低下した。以上の結果から、rfaG依存的な細胞表層生合成が1型線毛の発現を制御し、AIECの腸管内定着を支えることが明らかになった。本研究は、細胞表層構造の形成と病原因子発現を結びつける新たな機構を示すものである。

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2026/09/11

核内ストレス体によるスプライシング制御を支える温度感知機構

論文タイトル
Thermo-sensing mechanisms of splicing control by nuclear stress bodies
論文タイトル(訳)
核内ストレス体によるスプライシング制御を支える温度感知機構
DOI
10.1016/j.molcel.2026.06.034
ジャーナル名
Molecular Cell
巻号
Molecular Cell, 2026; 86, 3449-3465.e8
著者名(敬称略)
上野剛志 廣瀬哲郎 他
所属
大阪大学大学院 生命機能研究科 RNA生体機能研究室
著者からのひと言
 「るつぼ機構」は数ある非膜オルガネラの作動機構の一つですが、その実体解明はほとんど進んでいません。本研究で明らかになったリン酸化による酵素の局在制御は、「るつぼ機構」の要となる機構で、さらにそれを制御する温度センサーの同定は、「るつぼ機構」の全貌理解に向けた大きな一歩です。

抄訳

核内ストレス体(nSB)は、熱ストレス時にHSATIII lncRNA上に形成される非膜オルガネラで、ストレスからの回復期にpre-mRNAスプライシングを制御している。この機構では、nSBがストレス時にスプライシング因子SRSFを集積し、回復期にSRSFキナーゼCLK1を局在させることで、基質と酵素が濃縮された「るつぼ」を形成し、SRSFのリン酸化反応を効率化している。本研究では、CLK1の温度依存的なnSB局在にSer341リン酸化が必要であり、PP1がストレス時にSer341を脱リン酸化し、回復期にRIOK2が再リン酸化することで、CLK1が回復期特異的にnSBへ局在できることを見出した。さらに、PP1阻害因子PPP1R2が温度センサーとして機能し、ストレス時にPP1から解離してPP1を活性化することを発見した。以上から、多層的な温度感知機構が回復期特異的な「るつぼ形成」を可能にし、温度依存的なスプライシング制御を実現することが示された。

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2026/09/11

小型GAD67プロモーターを用いた抑制性ニューロン標的AAV遺伝子治療によるてんかん発作抑制

論文タイトル
A compact GAD67 promoter enables inhibitory neuron-targeted AAV gene therapy for seizure suppression
論文タイトル(訳)
小型GAD67プロモーターを用いた抑制性ニューロン標的AAV遺伝子治療によるてんかん発作抑制
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.06.007
ジャーナル名
Molecular Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 5510-5526
著者名(敬称略)
深井悠貴 平井宏和 他
所属
群馬大学未来先端研究機構 ウイルスベクター開発研究センター
著者からのひと言
薬剤抵抗性てんかんでは、新たな作用機序に基づく治療法の開発が求められています。本研究では、抑制性ニューロンで特異的に働く超小型プロモーターcmGAD67とGABA合成酵素であるGAD65を組み合わせ、神経回路の興奮・抑制バランスを遺伝子治療によって是正する新たなアプローチです。cmGAD67搭載AAVは、てんかんのみならず、興奮・抑制バランスの異常を伴うさまざまな神経疾患への応用も期待されます。

抄訳

てんかんでは、神経回路における興奮と抑制のバランスが崩れ、過剰な神経活動が生じる。本研究では、抑制性ニューロンに選択的に遺伝子を発現させる410塩基対の小型GAD67プロモーター「cmGAD67」を開発した。cmGAD67は、AAVベクターへの搭載に適した小ささでありながら、強い転写活性と高い抑制性ニューロン特異性を示し、特にパルブアルブミン陽性介在ニューロンに効率よく遺伝子を発現させた。さらに、cmGAD67を用いてGABA合成酵素GAD65を発現するAAVベクターをマウスに投与したところ、脳内GABA量が増加し、複数のてんかんモデルマウスにおいて異常脳活動やてんかん発作が抑制され、不安様行動や生存率も改善した。本成果は、薬剤抵抗性てんかんに対する新たな遺伝子治療法の開発につながることが期待される。

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2026/09/10

 N型糖鎖のBisecting GlcNAcはシナプス成熟を制御する

論文タイトル
Bisecting GlcNAc in N-glycan regulates synaptic maturation
論文タイトル(訳)
 N型糖鎖のBisecting GlcNAcはシナプス成熟を制御する
DOI
10.1042/BCJ20260379
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Biochem J 7 October 2026; 483 (10): 1877–1890
著者名(敬称略)
橋本 雄太 木塚 康彦 他
所属
東海国立大学機構 岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 (iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター
著者からのひと言
 脳における糖鎖の機能はまだまだわかっていないことが多いです。本論文で、糖鎖の脳における機能が一つ明らかにできました。次の課題は、Bisecting GlcNAcという糖鎖の部分構造が、どうやってタンパク質の相互作用や局在を制御するのか、その詳細なメカニズムを明らかにすることです。それによって、糖鎖の本質的な機能の解明に貢献したいです。

抄訳

 タンパク質の最も豊富な翻訳後修飾の一つであるN型糖鎖は多様な構造を持つ。N型糖鎖の部分構造であるBisecting GlcNAcは、脳、特にニューロンに豊富に存在する。これまで、Bisecting GlcNAcの増加とアルツハイマー病態との関連は明らかにされてきたが、生理的条件の脳での本糖鎖の機能は不明であった。これを明らかにするため、本論文ではBisecting GlcNAc合成酵素MGAT3の欠損マウスを用い、ニューロンの形態や活動を評価した。その結果、MGAT3欠損ニューロンは野生型マウスのニューロンより突起が短く、さらにシナプス後部を形成するスパインが未成熟な形態をしていた。また、MGAT3欠損マウス脳では、痛み刺激後の神経活動の低下も認められた。さらに本マウスでは、興奮性シナプスの形成や活動に不可欠なグルタミン酸受容体の細胞内分布およびその調節に関わるTARP分子との相互作用の異常が認められた。これらのことから、Bisecting GlcNAcは生理的な脳におけるシナプスの成熟に関わることが明らかになった。

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