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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/08/24

 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響

論文タイトル
Metabolic and muscular effects of switching from somatropin to somapacitan in adults with growth hormone deficiency
論文タイトル(訳)
 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響
DOI
10.1210/clinem/dgag153
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 9, September 2026, Pages e2096–e2107
著者名(敬称略)
大井(葉)佑夏, 山本 雅昭 他
所属
神戸大学大学院医学系研究科内科学講座 糖尿病・内分泌・総合内科学分野
糖尿病・内分泌内科学部門
著者からのひと言
 ソマパシタンは、成人成長ホルモン分泌不全症に対して承認された週1回投与の成長ホルモン製剤である。本研究は、連日製剤からソマパシタンへの切り替え群と連日製剤継続群を、実臨床下で世界で初めて52週間前向きに比較した。両群で除脂肪量を含む代謝指標に大きな差はみられなかった一方、ソマパシタン群では握力および身体機能の改善が示され、週1回製剤の新たな臨床的意義が明らかとなった。

抄訳

 成人成長ホルモン分泌不全症57例を対象に、連日GH製剤から週1回ソマパシタンへ切り替えた群と連日投与を継続した群を52週間、前向き観察研究で比較した。主要評価項目であるDXAによる全身除脂肪量の変化には群間差を認めなかった(平均差−0.2 kg)。IGF-1 SDSの上昇は連日群で大きく、ソマパシタン群では脂肪量増加を認めた一方、HDLコレステロール、握力、Timed Up and Go Testが改善した。新たな安全性上の懸念はなく、週1回製剤は身体機能を改善する可能性が示されたが、長期的な代謝への影響は今後の検討を要する。

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2026/08/24

ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する

論文タイトル
Restricting efferocytosis pathway to CD91 via phosphatidylserine-targeting chimeric protein augments antitumor immune responses
論文タイトル(訳)
ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.05.013
ジャーナル名
Molecular Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 4729-4742
著者名(敬称略)
溝手 雄 他
所属
大阪国際がんセンター 次世代がん医療開発研究センター先進探索研究領域 がん免疫療法開発部
著者からのひと言
 新規人工タンパク質であるPStRAPを用いると、細胞が生体内で処理されるときの目印であるホスファチジルセリンを利用して、がんに対する免疫反応を誘導することができました。PStRAPは理論上、従来の化学療法や放射線療法、免疫チェックポイント阻害剤などの細胞死を伴う治療法の効果を増強すると考えられます。今回の研究結果を基にした臨床試験を経て、PStRAPがこれまでにない革新的な免疫治療となることが期待されます。

抄訳

ホスファチジルセリン(PS)は、アポトーシス細胞膜上に表出する代表的なeat-meシグナルであり、MFG-E8などの複数の分子によって認識されてエフェロサイトーシスを促進し、免疫寛容を誘導する。この機序を制御するため、MFG-E8由来のPS認識ドメインと、免疫刺激性貪食受容体として知られるCD91のリガンドであるRAPからなる新規キメラタンパク質PStRAPを設計した。PStRAPは、PSが露出したアポトーシス細胞を、本来の免疫抑制性経路ではなく、CD91を介した免疫刺激性経路によって貪食させる。PStRAP存在下では、アポトーシス細胞の貪食効率、および細胞傷害性T細胞への交差提示能が上昇し、強力な抗腫瘍獲得免疫応答が誘導された。さらに、脂質ナノ粒子に封入したPStRAP mRNAと抗がん剤を併用投与すると、PStRAPは抗がん剤単独の抗腫瘍効果を優位に増強した。これらの結果は、PStRAPがCD91を介したアポトーシス細胞の貪食を誘導し、効果的な抗腫瘍獲得免疫応答を始動させ得ることを示唆している。

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2026/08/24

微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害

論文タイトル
Selective saccular plasticity under microgravity links peripheral transcriptomic remodeling to postflight vestibular dysfunction
論文タイトル(訳)
微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害
DOI
10.1073/pnas.2605593123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2605593123
著者名(敬称略)
安部 力 他
所属
福井大学 学術研究院医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 生理学分野

抄訳

長期宇宙飛行から地球に帰還した宇宙飛行士では、ふらつきや歩行障害などの前庭機能低下がみられますが、そのメカニズムは十分に解明されていません。本研究では、国際宇宙ステーション(ISS)で35日間飼育したマウスの内耳から、重力を感知する球形嚢と卵形嚢を個別に採取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、球形嚢では神経伝達やシナプス機能に関連する多数の遺伝子が変化した一方、卵形嚢では大きな変化を認めませんでした。さらに、157~328日間ISSに滞在した宇宙飛行士を調べたところ、地球帰還直後には球形嚢機能が選択的に低下し、姿勢のふらつきも増加していました。また、微弱な前庭電気刺激により帰還後の姿勢バランスが改善しました。これらの結果は、球形嚢が重力環境の変化に応じて分子・機能の両面で適応する可能性を示しており、将来の長期宇宙飛行における重力再適応や前庭リハビリテーションへの応用が期待されます。

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2026/08/24

進化実験とトランスクリプトーム解析から明らかになったペースオブライフシンドロームの表現型・分子基盤

論文タイトル
Integrating experimental evolution and transcriptomics reveals the phenotypic and molecular architecture of the pace-of-life syndrome
論文タイトル(訳)
進化実験とトランスクリプトーム解析から明らかになったペースオブライフシンドロームの表現型・分子基盤
DOI
10.1073/pnas.2610487123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (33) e2610487123
著者名(敬称略)
松村 健太郎 他
所属
東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系
著者からのひと言
行動の進化が、寿命や繁殖、さらには遺伝子発現とどのように結びついているのかを、長期的な進化実験を通して調べました。小さな甲虫を用いた研究ですが、動物の行動と「生き方」の進化的なつながりを理解する一助になれば幸いです。

抄訳

動物では、活発に行動する個体ほど短命で、活動性の低い個体ほど長寿になるという「ペースオブライフシンドローム(POLS)」仮説が提唱されています。しかし、こうした行動と生活史形質の関連が進化的にどのように形成されるのかは十分に分かっていません。本研究では、コクヌストモドキを用いて、歩行運動活性に対する長期的な人為選抜によって確立した高活動系統と低活動系統を比較しました。その結果、高活動系統では低活動系統と比べて寿命が短い一方、孵化率が高いことが明らかになりました。さらにトランスクリプトーム解析により、高活動系統と低活動系統の間で発現量の異なる遺伝子を特定しました。これらの結果は、運動活性への選択に伴って、寿命や繁殖、遺伝子発現にも進化的変化が生じることを示しています。本研究は、POLSの進化的・分子的基盤を理解するための新たな知見を提供するものです。 

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2026/08/21

哺乳類ネクチン4オルソログはモルビリウイルスの受容体として広い許容性を示すが、イルカネクチン4は、その例外である

論文タイトル
Broad permissiveness of mammalian nectin-4 orthologs for morbilliviruses: a notable exception in dolphin nectin-4.
論文タイトル(訳)
哺乳類ネクチン4オルソログはモルビリウイルスの受容体として広い許容性を示すが、イルカネクチン4は、その例外である
DOI
10.1099/jgv.0.002319
ジャーナル名
The Journal of general virology
巻号
Journal of General Virology 2026;107:002319
著者名(敬称略)
冨永 みづき 竹田 誠
所属
東京大学大学院医学系研究科・医学部・微生物学 微生物学教室
著者からのひと言

抄訳

モルビリウイルスには、麻疹ウイルスやイヌジステンパーウイルスなど、ヒトやさまざまな動物に感染するウイルスが含まれ、免疫細胞と上皮細胞に感染することを特徴とします。本研究では、モルビリウイルスが上皮細胞に感染する際に利用する「ネクチン4」という分子に注目し、動物種によるネクチン4の違いが、それぞれのウイルスがどの動物(ヒト、イルカ、コウモリ、イヌ、アザラシなど)に感染できるかに関係しているのかを調べました。その結果、いずれのモルビリウイルスも、多くの動物種のネクチン4を利用できる一方、イルカのネクチン4だけは、わずか1つのアミノ酸の違いによって、一部のウイルスに利用されにくいことが分かりました。これらの結果から、ネクチン4のわずかな違いも、モルビリウイルスがどの動物に感染できるかを決める要因の一つであることが明らかになりました。

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2026/08/20

飼育下チーター集団における猫コロナウイルスの縦断的検出と遺伝学的解析

論文タイトル
Longitudinal detection and genetic characterization of feline coronavirus in a captive cheetah population
論文タイトル(訳)
飼育下チーター集団における猫コロナウイルスの縦断的検出と遺伝学的解析
DOI
10.1099/jgv.0.002317
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology 2026;107:002317
著者名(敬称略)
(筆頭著者)土岐 朋義 (連絡著者)高野 友美
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医伝染病学研究室 
著者からのひと言
FIP)は猫コロナウイルスが引き起こす命に関わる病気です。チーターはFIPを特に発症しやすいとされてきました。私たちは動物園の協力を得て、同じチーターたちを3年半追い続けました。この間、群れへの出入りは一頭もありません。何度も検査を重ねると、同じ群れで暮らしていても、ウイルスとの付き合い方は一頭ごとにまるで違うことが分かってきました。FIPを発症しやすいとされるチーターでも、ウイルスを持つ多くの個体は発症せずに元気に暮らしています。この差はどこから生まれるのか?チーターを見続けることがその答えに近づく道だと考えています。

抄訳

猫コロナウイルス(FCoV)はイエネコのほか希少ネコ科動物であるチーターにも感染する。FCoVは時に致死性の猫伝染性腹膜炎(FIP)を引き起こすが、飼育下チーター集団での長期的な感染動態や遺伝的多様性については情報が乏しい。そこで国内の単一動物園で暮らす17頭のチーターを3.5年間追跡し、糞便中のFCoV RNAとウイルス遺伝子配列を調べた。FCoVは閉鎖集団内で複数年にわたって維持され、RNAの検出パターンには個体ごとに大きな幅があった。無症状個体とFIP発症個体から得た準完全長ゲノムは、どちらもI型FCoVに属した。N遺伝子とS遺伝子のターゲット解析では集団内に複数のハプロタイプが見つかり、個体内で優勢となる配列も時間とともに入れ替わった。配列多様性はS遺伝子内でも一様ではなく、S1/S2開裂部位領域が1058/1060領域を上回った。非侵襲的な糞便モニタリングと遺伝子解析を組み合わせれば、希少ネコ科動物でもFCoVの長期的な維持と配列変化を追うことが可能である。
 

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2026/08/19

LC-MS/MSを用いた血中および尿中ビタミンD代謝物濃度の関連

論文タイトル
Evaluation of correlations between serum and urinary vitamin D metabolites using LC-MS/MS.
論文タイトル(訳)
LC-MS/MSを用いた血中および尿中ビタミンD代謝物濃度の関連
DOI
10.1042/BSR20260223
ジャーナル名
Bioscience reports
巻号
Biosci Rep (2026) 46 (7): BSR20260223
著者名(敬称略)
筆頭著者:呉詩星、連絡著者:石嶺 南生
所属
信州大学医学部附属病院臨床検査部
著者からのひと言
血清のビタミンD代謝物比(VMR)が有用な指標になるという報告はすでにありましたが、尿でも同様のことが言えるという報告はこれまでなく、期待半分・手探り半分での検証でした。実際に尿中の代謝物が血清指標よりもPTHとの関連を強く示したときは、期待通りとはいえ驚きもありました。日々の検査業務の中で、患者さんの負担をどう減らせるかは常に意識してきたテーマで、尿という切り口には以前から関心がありました。一方で、なぜ尿中代謝物の方がPTHとの関連をより鋭敏に捉えるのか、そのメカニズムの解明は今後の課題の一つと捉えています。

抄訳

ビタミンDの充足状態を評価するには、通常、血清中の25-ヒドロキシビタミンD値の測定が用いられる。採血によらず尿検体だけで同様の評価が可能になれば、被験者の負担軽減に加え、より簡便な運用も期待できる。 本研究では、健康診断で得られた病院職員506名分の血清および尿検体を対象に、高感度な誘導体化試薬(DAP-PA)とLC-MS/MSを組み合わせた分析系を用いて、微量な尿中ビタミンD代謝物の精密な定量を行った。その結果、尿中の24,25-ジヒドロキシビタミンD3および23,25-ジヒドロキシビタミンD3は、血清25-ヒドロキシビタミンD値と強い正の相関を示した(ρ > 0.7)。この結果は、尿検査が血中のビタミンD状態を反映する指標となり得ることを示唆している。 さらに、骨代謝を調整する副甲状腺ホルモン(PTH)との関連を検討したところ、尿中の代謝物およびビタミンD代謝物比(VMR)は、従来指標である血清25-ヒドロキシビタミンDよりも強い負の相関を示した。この結果は、尿中代謝物がPTHとの関連をより鋭敏に捉えている可能性を示唆する。 以上より、尿中ビタミンD代謝物、特に24,25-ジヒドロキシビタミンD3、23,25-ジヒドロキシビタミンD3、およびVMRは、血清に代わる非侵襲的な指標となり得る可能性が示された。非侵襲的なビタミンD評価法の一つとして、今後の応用可能性が期待される。

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2026/08/18

油脂酵母によるグリセロールからの細胞外多糖生産におけるアンモニウムイオン濃度依存性:生産細胞の可視化

論文タイトル
Ammonium ion concentration-dependent production of extracellular polysaccharides from glycerol by an oleaginous yeast: visualization of the producer cells.
論文タイトル(訳)
油脂酵母によるグリセロールからの細胞外多糖生産におけるアンモニウムイオン濃度依存性:生産細胞の可視化
DOI
10.1128/spectrum.00429-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00429-26
著者名(敬称略)
竹川 そよか、ほか4名、 河井 重幸
所属
石川県立大学生物資源工学研究所環境生物工学研究室(河井研究室)
著者からのひと言
最初、棄てるべき培地上澄みの粘性に気づいたのが全てでした。

抄訳

油脂化学(オレオケミカル)産業の廃棄物由来粗グリセロールまたは精製グリセロールを原料として、油脂生産性酵母 Rhodotorula toruloides NBRC 8766 株がマンノース比率 90% 以上、分子量 10,000 k 以上の高分子細胞外多糖(EPS)を生産することを見出した。さらに本研究では、培地中のアンモニウムイオンNH4+濃度が EPS 生産を左右する鍵因子であり、NH4+濃度が 38 mM 以上となり培地が pH 2.0 以下に酸性化することが EPS 生産に必須であることを明示した。顕微鏡観察により、EPS 生産細胞は未成熟な脂質滴と毛羽状の EPS を纏った明瞭な2層構造の細胞壁を持つのに対し、非生産細胞は明瞭な脂肪滴と1層構造の細胞壁、豊富な細胞内多糖顆粒を有することが確認された。得られた知見はEPSや油脂の生産性向上に向けた生産メカニズムのさらなる解明の基盤となる。

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2026/08/18

荷電特性、疎水性および形状を考慮した膜ろ過における保守的なウイルス除去指標の選定

論文タイトル
Resilient performance indicator virus for membrane filtration considering surface charge, hydrophobicity, and morphology.
論文タイトル(訳)
荷電特性、疎水性および形状を考慮した膜ろ過における保守的なウイルス除去指標の選定
DOI
10.1128/aem.00035-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e00035-26
著者名(敬称略)
安井 碧 他
所属
京都大学 大学院工学研究科 都市環境工学専攻
著者からのひと言

抄訳

実規模の浄水および下水処理プロセスにおけるウイルス除去能を評価するための指標として環境水や下水処理水中に高濃度で存在するウイルスが調査されてきた。しかし、水処理工程の除去能評価のための適切な指標については、現在も議論が続いている。 本研究は、表面電荷、疎水性および形状が膜ろ過時のウイルス除去に及ぼす影響を評価し、膜ろ過において除去されにくい保守的な指標ウイルス候補を特定することを目的とする。形状の異なる三種のウイルス(MS2、PMMoV、およびAiV)を選定し、ゼータ電位と接触角を測定した。これらの結果と膜ろ過試験の結果を比較することで膜ろ過による除去に表面電荷、疎水性および形状がもたらす影響を評価した。 膜ろ過試験において、棒状のPMMoVは3つのウイルスの中で中程度の疎水性であったにもかかわらず、最も高い除去率を示した。本研究の結果は、棒状ウイルスが膜ろ過で除去されやすいことを示しており、球状ウイルスの方が、より安全側に立った除去率評価ができる指標となる可能性を示唆している。

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2026/08/18

子宮頸部前がん病変にみられる染色体整列異常ECACの分子機構とその意義

論文タイトル
High-risk HPV E6 induces an aneuploidy-prone chromosome congression defect through destabilization of CENP-E.
論文タイトル(訳)
子宮頸部前がん病変にみられる染色体整列異常ECACの分子機構とその意義
DOI
10.1128/jvi.00625-26
ジャーナル名
Journal of virology
巻号
J Virol 100:e00625-26
著者名(敬称略)
瀬下 奈々美(共同筆頭著者)、堀 花那子(共同筆頭著者)、野澤 竜介(連絡著者)
所属
公益財団法人がん研究会 がん研究所 実験病理部
著者からのひと言
高リスク型HPVは、E6やE7を介してp53やRBなどのがん抑制機構を破綻させることで発がんを促進することが知られています。本研究では、それに加えて、E6がCENP-Eを不安定化し、染色体整列異常ECACを引き起こすという新たな作用を明らかにしました。興味深いことに、この作用は複数の高リスク型HPVで認められる一方、HPV18ではほとんど認められませんでした。HPV遺伝子型による発がん過程の違いを理解する手がかりになる結果だと考えています。

抄訳

子宮頸がんの前がん病変である高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性の子宮頸部異形成では、ECAC (Ectopic Chromosome Around Centrosome)と呼ばれる特徴的な染色体整列異常が観察される。本研究では、高リスク型HPVがコードするE6タンパク質が、分裂期モータータンパク質CENP-Eを不安定化し、ECACを誘導することを明らかにした。さらにECACの誘導は複数の高リスク型HPV由来のE6に共通して観察され、E6を長期間発現した細胞では異数性細胞が蓄積した。これらの結果は、子宮頸部前がん病変におけるECACの分子基盤を明らかにするとともに、E6によるECACの持続的な誘導が発がん初期の染色体不安定性獲得に寄与する可能性を示す。

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2026/08/18

模擬土壌下での種固有のグルコース無機化作用:Bacillus subtilis および Streptomyces cinnamoneus の単独・共培養からの知見

論文タイトル
Species-specific glucose mineralization in artificial soil: insights from Bacillus subtilis and Streptomyces cinnamoneus mono- and co-cultures.
論文タイトル(訳)
模擬土壌下での種固有のグルコース無機化作用:Bacillus subtilis および Streptomyces cinnamoneus の単独・共培養からの知見
DOI
10.1128/spectrum.00605-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00605-26
著者名(敬称略)
藤原 奏、濱本 亨 他
所属
東北大学 農学部 土壌立地学分野
著者からのひと言
土壌は非常に複雑な地球環境であり、生物多様性のホットスポットの一つです。本研究では、これまで困難であった個々の土壌微生物動態をモニタリングするため、自然環境を模倣した模擬土壌システムを構築しました。本アプローチが、個々の微生物レベルでの物質循環メカニズムを解明するための重要な基盤となることが期待されます。

抄訳

自然土壌は非常に複雑で不均一なため、個々の微生物がどれだけ炭素循環(CO2放出)に関与しているかを定量的に評価することは困難でした。本研究では、自然土壌を再現した「模擬土壌」を活用し、代表細菌であるB.subtilisとS.cinnamoneusの単独・共培養を行い、グルコース分解に伴うCO2放出量を測定した。その結果、前者は迅速にグルコースを分解する一方、後者は緩やかに分解するという顕著な差を明らかにした。さらに、共培養下では、前者の割合が高まるほどCO2放出量が増加した。模擬土壌が個々の微生物の代謝や相互作用を解明する有効な手法であることを示す成果であり、将来的な土壌炭素循環モデルの開発に期待される。

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2026/08/17

日本の乳牛における薬剤耐性Mycoplasma bovisの迅速検出・サーベイランスに向けたマルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシングの応用

論文タイトル
Application of multiplex PCR-based nanopore sequencing for rapid detection and surveillance of antimicrobial-resistant Mycoplasma bovis in Japanese dairy cattle
論文タイトル(訳)
日本の乳牛における薬剤耐性Mycoplasma bovisの迅速検出・サーベイランスに向けたマルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシングの応用
DOI
10.1128/spectrum.01242-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e01242-26
著者名(敬称略)
臼井 優 他
所属
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 衛生・環境学分野 食品衛生学ユニット
著者からのひと言
牛の臨床現場で問題となっている薬剤耐性Mycoplasma bovisについて、解決の糸口となる研究となっています。
今後、この方法が普及して、牛由来Mycoplasma bovisの実態が解明されていくことが期待されます。

抄訳

Mycoplasma bovisは牛に乳房炎や呼吸器疾患を引き起こし、酪農業に大きな経済的損失をもたらす。従来の培養検査および薬剤感受性試験には約2週間を要するため、経験的な抗菌薬使用や耐性菌の出現を招くことから、迅速な検査法が求められている。本研究では、染色体上の薬剤耐性関連変異を検出し、M. bovisの薬剤感受性を6時間以内に推定できる、マルチプレックスPCRベースのナノポアシーケンシング法を開発した。日本の牛から2013–2016年および2023–2025年に分離された329株を用いて、7種類の抗菌薬に対する最小発育阻止濃度と遺伝子型との関連を解析した結果、特定の変異と薬剤感受性との明確な関連が認められた。さらに、近年の分離株では、マクロライド・テトラサイクリン耐性関連変異およびgyrA–parC二重変異が顕著に増加していた。本法は、低コストのフローセルを用いて最大24検体を同時解析でき、M. bovisの薬剤感受性の迅速な遺伝学的予測と耐性動向のサーベイランスに有用な手法となる。
 

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2026/08/17

ヒトiPS由来三次元心組織を用いたHFpEFモデルの開発とSGLT2阻害薬による治療機序の解明

論文タイトル
Human iPSC-derived engineered heart tissue model of diastolic dysfunction in heart failure with preserved ejection fraction
論文タイトル(訳)
ヒトiPS由来三次元心組織を用いたHFpEFモデルの開発とSGLT2阻害薬による治療機序の解明
DOI
10.1016/j.stem.2026.06.007
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Cell Stem Cell, 2026; 33, 1339-1353.e7
著者名(敬称略)
谷 英典 遠山 周吾 他
所属
藤田医科大学東京 先端医療研究センター
著者からのひと言
ヒトiPS由来心筋細胞は開発当初から疾患モデルや創薬応用への期待が高かったものの多くの課題がありました。我々の研究室ではより良いモデル作成のために様々な課題を乗り越え、こうしたモデルを今回報告することができました。本研究で確立されたヒト由来HFpEFモデルは、病態解明や加齢研究への応用だけでなく、新規治療薬の開発や薬効評価、さらには患者ごとの個別化医療にも役立つ研究基盤として今後のさらなる研究の発展が期待されます。

抄訳

心臓の収縮機能が保たれているにもかかわらず拡張機能が低下する心不全、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)は、高齢化で患者数が増加の一途を辿る中、有効な治療法がほとんど確立されていない。本研究では、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞、心外膜細胞、血管内皮細胞などを組み合わせた三次元心筋組織を用いて、培養組織に高脂肪酸と一酸化窒素の産生を阻害するNOS阻害薬を加えることで、心臓の収縮機能は保たれたまま、拡張機能だけが低下するHFpEF特有の病態を再現した。このモデルでは、BNPの上昇、線維化、カルシウム動態異常、ミトコンドリア障害など、HFpEF患者にみられる特徴が認められた。さらに、このモデルに複数の心不全治療薬を投与した結果、SGLT2阻害薬がこの病態を改善することを見出し、作用機序として、血管内皮細胞におけるeNOS-NO-cGMP-PKGシグナルの回復や、細胞内のNa⁺やCa²⁺過負荷を軽減することで、炎症や心筋障害の改善に寄与することが示唆された。
 

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2026/08/12

輪番割当問題の密度閾値予想の証明

論文タイトル
Proof of the density threshold conjecture for pinwheel scheduling.
論文タイトル(訳)
輪番割当問題の密度閾値予想の証明
DOI
10.1073/pnas.2530214123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (32) e2530214123
著者名(敬称略)
河村 彰星
所属
京都大学数理解析研究所
著者からのひと言
素朴な設定でありながら解析の難しい問題でしたが、大規模計算の手法がうまく効いて予想の解決に至ったのは幸運でした。人間が読める「きれいな」証明が今後得られる望みも捨ててはいませんが、ともあれ近年のAIをはじめとする計算機技術の著しい進歩は、数学研究に新たな可能性と展開をもたらしつつあります。コンピュータの高度な探索・検証能力の活用は、今後も従来の枠組みを超えて我々の数学的理解を大きく進展させるものと期待しています。

抄訳

輪番割当問題では、いくつかある仕事のそれぞれについて、連続する○○日には必ず一度以上やるべしという日数が指定されており、これを満し続けながら毎日いずれか一つだけ仕事をしたい。勿論これが可能であるには指定された日数の逆数の和が 1 以下である必要がある。一方この逆数和が 5/6 以下なら十分である、という陳と銭(1993)の予想が示されたので報告する。証明は有限個の場合を計算機で確かめることでなされた。この有限個で十分であることは、日数を整数から実数へ適切に拡張する議論により示される。この考え方を使うと、仕事が二種類以内であれば逆数和 1 以下が十分であることも簡単に証明できる。また竹叢伐採問題の高速な 4/3 近似算法も得られる。

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2026/08/10

One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析

論文タイトル
One Health genomic insights into environmental and animal reservoirs of community-associated Clostridioides difficile in Japan.
論文タイトル(訳)
One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析
DOI
10.1128/aem.00397-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e00397-26
著者名(敬称略)
吉澤 定子 他
所属
東邦大学 医学部 医学科(大森病院)
著者からのひと言

抄訳

Clostridioides difficile(C. difficile)は抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌であるが、近年では医療機関外で発症する市中関連感染(CA-CDI)の増加が世界的な課題となっている。本研究では、日本国内で採取した下痢外来患者、伴侶動物、家畜、野生動物および土壌由来検体を対象として、C. difficileの分離および全ゲノム解析を実施し、One Healthの観点から分子疫学的解析を行った。その結果、公園土壌および伴侶動物から高率に菌が検出され、コアゲノムSNP解析により、患者由来株と公園土壌由来株、ならびに犬由来株と公園土壌由来株の一部が近縁である可能性が明らかとなった。一方、これらの結果は感染伝播の方向性を示すものではなく、人・動物・環境の間で共通する環境リザーバーの存在を示唆する知見である。本研究は、日本におけるCA-CDIの疫学を理解する上でOne Healthの視点が重要であることを示すとともに、環境リザーバーの役割の解明や今後の公衆衛生対策の基盤となる知見を提供するものである。

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2026/08/10

ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題

論文タイトル
Massive gas-forming iliopsoas abscess during bevacizumab-containing chemotherapy for recurrent sigmoid colon cancer: a diagnostic challenge
論文タイトル(訳)
ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題
DOI
10.1136/bcr-2026-275685
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e275685
著者名(敬称略)
中川 直貴、永坂 岳司 ほか
所属
川崎医科大学附属病院 臨床腫瘍科
著者からのひと言
がん薬物療法中の感染症では、薬剤性有害事象、腫瘍の進展、医療デバイス関連感染などが重なり、原因を一つに絞れないことがあります。本症例は、早期CTと救急・放射線科・臨床腫瘍科の連携が患者救命に直結した実例です。

抄訳

再発S状結腸癌に対してカペシタビン・オキサリプラチン・ベバシズマブによる治療中であった50歳代女性に、発熱、腹痛、下痢、意識障害を契機として巨大なガス産生性左腸腰筋膿瘍を発症した症例を報告しました。CTで後腹膜から腎周囲に及ぶ多房性膿瘍を確認し、緊急CTガイド下ドレナージと広域抗菌薬治療を行いました。膿瘍培養は腸管由来を示唆する多菌種性・嫌気性菌を含む所見で、尿培養とは一致しませんでした。腫瘍再発、過去の腸管由来菌血症、尿管ステント、ベバシズマブ投与など複数の要因が重なった可能性があり、がん治療中の腹痛・発熱では早期CT、多職種連携、原因を一つに決めつけない診断姿勢が重要であることを示しました。
 

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2026/08/10

手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究

論文タイトル
Automatic acromegaly detection using deep learning on hand images: a multicenter observational study.
論文タイトル(訳)
手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究
DOI
10.1210/clinem/dgag027
ジャーナル名
The Journal of clinical endocrinology and metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 8, August 2026, Pages e1994–e2005
著者名(敬称略)
大町 侑香, 福岡 秀規
所属
神戸大学 医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
著者からのひと言
AIによる身体所見の評価は疾患の早期発見に大きな可能性を秘めていますが、社会実装にはプライバシーへの配慮が欠かせません。私たちはその課題に着目し、個人が特定されにくい「手」の画像を用いたAIモデルを開発しました。手に異常を呈する疾患は先端巨大症以外にも数多く存在します。本研究を第一歩として、さまざまな疾患の早期発見につながるAI技術の実用化を目指していきたいと考えています。

抄訳

先端巨大症は成長ホルモン過剰分泌により特徴的な顔貌や手足の肥大を呈するが、症状が緩徐に進行するため診断遅延が多く、早期診断法の開発が課題である。本研究では、プライバシー保護の観点から顔画像ではなく手背および握り拳画像を用いたAIスクリーニングモデルを開発した。全国15施設で716例(先端巨大症317例、対照399例)を登録し、ResNet-50を基盤とした深層学習モデルを構築・評価した。その結果、感度0.89、特異度0.91、ROC-AUC 0.96、PR-AUC 0.95と高い診断性能を示し、内分泌専門医10名を上回る精度を示した。本研究は、手背と握り拳画像を用いて高精度な先端巨大症検出を実現した初めての報告であり、健診やプライマリケア、遠隔医療におけるスクリーニングツールとしての実用化が期待される。希少疾患である先端巨大症のみならず、関節リウマチなどの他の疾患への応用を目指している。一方、本モデルは専門医の診断を代替するものではなく、臨床判断を補完する補助ツールとしての活用が望まれる。

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2026/08/07

共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る

論文タイトル
Symbiotic Escherichia coli strains can better colonize host stinkbugs and outcompete natural symbiotic bacteria, but confer less fitness benefit.
論文タイトル(訳)
共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る
DOI
10.1128/mbio.00951-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio 17:e00951-26
著者名(敬称略)
Wenjin Cai 森山 実 深津 武馬 他
所属
産業総合技術研究所 モレキュラーバイオシステム研究部門 バイオシステム多様性研究グループ
著者からのひと言
長い共進化の過程を共にしてきた昆虫と共生微生物の相互依存関係は極めて安定なものと考えていましたが、実験室で人為的に作出した共生進化大腸菌が、本来の共生細菌を定着能力で上回り、駆逐してしまったことは、私たちにとっても驚きの発見でした。

抄訳

多くの昆虫は体内に共生微生物を保有し、世代を超えて受け継ぎながら、緊密な相利共生関係を築いてきた。長い共生進化の過程においては、こうした共生微生物の置換が幾度となく起こり、多様な共生系を生み出す要因となっている。しかし、微生物置換の具体的な進化プロセスには依然として不明な点が多い。最近私たちは、Pantoea属の相利共生細菌を中腸共生器官に保有するチャバネアオカメムシにおいて、共生器官に定着可能な人工共生進化大腸菌の作出に成功した。この共生進化大腸菌と本来の共生細菌を競合感染させたところ、共生進化大腸菌は本来の共生細菌を上回る定着能力を示す一方で、宿主昆虫の適応度への貢献は劣ることが判明した。自然界において長期にわたり共進化してきた本来の共生細菌を上回る共生能力が、非共生細菌である大腸菌で実験室において短期間に進化したという驚くべき知見である。本研究成果は、宿主にとって不利益であっても高い定着能力を備えた「裏切り者 cheater」的な感染戦略をもつ細菌が、共生進化にどのような影響を与えるかについて、実験的に検証可能なモデル系を提示するものである。

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2026/08/07

高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連

論文タイトル
Loneliness and Resting-State Functional Brain Connectivity Among Older Adults: A Proportional Correlation
論文タイトル(訳)
高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連
DOI
10.1176/appi.neuropsych.20230167
ジャーナル名
The Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences
巻号
Volume 37, Number 1
著者名(敬称略)
今井 鮎  松岡 照之 他
所属
京都府立医科大学大学院 医学研究科 精神機能病態学
著者からのひと言
本研究は、孤独感は認知症のリスク因子であるだけでなく、認知症前駆期の神経変性に伴う早期徴候である可能性も示唆している。両者の因果関係を明らかにするためには今後の縦断研究が期待される。

抄訳

孤独感は認知症のリスクを高めると報告されているが、その機序は十分には解明されていない。そこで、43名の高齢者(健忘型軽度認知障害13名、正常認知機能30名)を対象に孤独感と安静時機能的MRIによる機能的脳結合との関連を調べた。孤独感は改訂版UCLA孤独感尺度を用いて評価した。先行研究で孤独感との関連が報告されている両側の海馬、視床、前部島皮質、扁桃体、外側前頭前野、内側前頭前野、後部帯状回、前部帯状回をシード領域とし、CONN toolboxを用いたROI-to-ROI解析により全脳の関心領域との機能的結合を解析した。その結果、孤独感が強いほど、右海馬と左外側頭頂葉との機能的結合は強く、左扁桃体と左前頭弁蓋、および左扁桃体と右縁上回との機能的結合は弱かった。これらの結果から、孤独感は海馬、頭頂葉、前頭葉、扁桃体の機能異常と関連し、これらの脳領域はアルツハイマー病や軽度認知障害で異常が認められることから、孤独感は認知症に関連した脳機能変化と関連する可能性が示唆された。

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2026/08/07

血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺

論文タイトル
Hypoglossal nerve palsy secondary to cervical spondylosis mimicking angio-oedema
論文タイトル(訳)
 血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺
DOI
10.1136/bcr-2025-267982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e267982
著者名(敬称略)
福井遼太  上田 剛士 他
所属
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科
著者からのひと言
 片側性の舌腫脹では、舌癌などの腫瘍性病変をはじめとした局所病変が鑑別に挙がりますが、血管性浮腫や神経原性浮腫でも同様の所見を呈することがあります。本症例では、舌偏位やMRI所見に加え、環椎後頭関節周囲まで注意深く診察・画像評価することが診断につながりました。「舌の腫れ」という症候を局所病変だけでなく、神経学的・解剖学的な視点から捉えることの重要性を示す症例として、日常診療の一助となれば幸いです。

抄訳

 50歳代男性が、急性に発症した右側の舌腫脹、構音障害、嚥下障害を主訴に受診した。片側性の舌腫脹が目立ったことから当初は血管性浮腫が疑われたが、その後も右方への舌偏位が持続し、右舌下神経麻痺と診断した。画像を再検討すると、右舌下神経管出口部に骨棘を認め、環椎後頭関節の変形性変化、関節液貯留および周囲の骨髄浮腫を伴っており、頸椎症による舌下神経の圧迫が原因と考えられた。舌下神経麻痺では慢性期には舌萎縮を呈する一方、急性期には神経原性浮腫による舌腫脹が前景に立ち、舌偏位が目立たない場合がある。MRIで舌浮腫が正中を境に片側に限局する場合は、神経原性浮腫を示唆する手掛かりとなり得る。また、片側性舌腫脹では血管性浮腫のみならず舌下神経麻痺を鑑別に挙げ、その原因として腫瘍性病変や内頸動脈解離などを除外するとともに、頸椎症も考慮することが重要である。

 

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