本文へスキップします。

【全】メガメニュー
H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/07/31

難治性末梢性T細胞リンパ腫非特定型に対し、ゲムシタビン単剤が同種造血幹細胞移植への橋渡しとなった1例

論文タイトル
Single-agent gemcitabine enabling successful bridging to allogeneic haematopoietic stem-cell transplantation in refractory peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified
論文タイトル(訳)
難治性末梢性T細胞リンパ腫非特定型に対し、ゲムシタビン単剤が同種造血幹細胞移植への橋渡しとなった1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268692
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
北川 智也 他
所属
関西電力病院 血液内科

抄訳

末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)は不均一性が高く、再発・難治例の予後は不良です。本症例は20歳代男性で、brentuximab vedotin併用CHP療法、SMILE療法、pralatrexate療法のいずれにも抵抗性を示しました。その後、ゲムシタビン単剤療法により不確定な完全寛解(CRu)が得られ、骨髄非破壊的処置による同種造血幹細胞移植へ移行することができました。移植後36か月時点でも再発なく経過しています。また、治療経過を通じて白血球/リンパ球比(LLR)が病勢と概ね並行して推移しており、簡便な補助的指標となる可能性が示唆されました。本症例は、難治性PTCL-NOSにおいて、ゲムシタビン単剤が毒性を抑えつつ移植への橋渡し治療となり得る可能性を示すものです

論文掲載ページへ

2026/07/31

光合成酸素発生系における脂肪族アミノ酸からカルボキシレート配位子の翻訳後生成

論文タイトル
Posttranslational generation of carboxylate ligands from aliphatic side chains in the photosynthetic oxygen-evolving complex
論文タイトル(訳)
光合成酸素発生系における脂肪族アミノ酸からカルボキシレート配位子の翻訳後生成
DOI
10.1073/pnas.2610028123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2610028123
著者名(敬称略)
水江 初音 野口 巧 他
所属
名古屋大学大学院理学研究科物理科学領域
著者からのひと言
光合成による酸素発生は、太古の地球環境を大きく変え、生命の進化に大きな影響を与えました。この酸素発生を担う光化学系Ⅱにおける酸素発生系が、脂肪族アミノ酸をはじめとする様々なアミノ酸から、触媒中心であるマンガンクラスターのカルボキシレート配位子を翻訳後修飾によってタンパク質レベルで生成する能力を有することが明らかとなりました。この能力は、24億年以前に起こった光合成酸素発生の起源と進化に重要な役割を果たしたと考えられます。

抄訳

光合成酸素発生は、光化学系Ⅱの酸素発生系に存在するMn4CaO5クラスターによって触媒される。この反応は約24億年前の大酸化イベント以前に始まったと考えられるが、光化学系Ⅱの進化の過程で酸素発生系がどのように形成されたかは未だ不明である。我々は以前、シアノバクテリアにおけるMn4CaO5クラスターのアスパラギン酸/グルタミン酸配位子をヒスチジンやアスパラギン/グルタミンに改変した変異体において、これらのアミノ酸残基が翻訳後に本来のカルボキシレート残基に変換されることを見出した。本研究では、反応性置換基を持たない脂肪族アミノ酸が同様なアミノ酸変換を起こすか否かを調べた。その結果、アスパラギン酸配位子D1-Asp170をバリン/ロイシン/イソロイシンに、またグルタミン酸配位子D1-Glu189をロイシン/イソロイシンに改変した変異体では、これらの脂肪族アミノ酸がアスパラギン酸/グルタミン酸またはそれらの誘導体に翻訳後変換され、酸素発生活性を回復することが示された。これらの結果は、翻訳後アミノ酸変換による配位子形成が、光合成酸素発生系に本来備わっている一般的な特性であることを示している。このことは、翻訳後アミノ酸変換が光合成酸素発生の起源と進化に重要な役割を果たしたという我々の仮説を支持するものである。

論文掲載ページへ

2026/07/31

液胞リパーゼAtg15の膜認識と活性化を支える構造・分子機構

論文タイトル
Structural and mechanistic basis for membrane recognition and activation of the vacuolar lipase Atg15
論文タイトル(訳)
液胞リパーゼAtg15の膜認識と活性化を支える構造・分子機構
DOI
10.1073/pnas.2601290123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2601290123
著者名(敬称略)
堀江 (川俣)朋子1 境 祐二2
所属
1 東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター
2 横浜市立大学 理学部 理学科 生命ナノシステム科学研究科
著者からのひと言
細胞の中では、不要な膜を分解しながら、液胞膜などの大切な膜は守らなければなりません。本研究では、分子動力学シミュレーションと酵母・試験管内での実験を組み合わせ、脂質分解酵素Atg15が活性化され、分解対象の膜に優先的に働く仕組みを明らかにしました。計算による予測を実験で確かめることで、切断、膜結合、膜曲率認識という多段階の制御が見えてきました。細胞が膜を「安全に壊す」巧妙な仕組みを、ぜひご覧ください。

抄訳

オートファジーでは、細胞質成分を取り込んだオートファゴソームが液胞へ融合し、液胞内のオートファジックボディーなどの膜が分解される。しかし、脂質分解酵素Atg15が、周囲の液胞膜を傷つけることなく標的となる内腔膜に作用する仕組みは不明であった。
本研究では、酵母を用いた細胞内解析と試験管内実験に、全原子・粗視化分子動力学シミュレーションを組み合わせ、Atg15の活性化と膜認識機構を明らかにした。ジスルフィド結合は触媒コアの構造を安定化し、切断前のC末端領域は活性中心を閉じた状態に固定していた。C末端の切断後、膜への結合によって活性中心が開き、脂質が触媒部位へ到達できるようになった。さらにAtg15は、平坦な膜よりも小胞に相当する正の曲率をもつ膜に優先的に結合した。これらの結果から、Atg15は構造安定化、切断、膜結合、膜曲率認識という多段階の制御により、分解対象となる内腔膜を安全かつ優先的に分解すると考えられる。

論文掲載ページへ

2026/07/31

ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小サブユニットM20は、自己脱リン酸化の抑制によりMYPT1の抑制性リン酸化を増強する

論文タイトル
Small subunit M20 augments inhibitory phosphorylation of MYPT1 in myosin light chain phosphatase by inhibiting autodephosphorylation
論文タイトル(訳)
 ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小サブユニットM20は、自己脱リン酸化の抑制によりMYPT1の抑制性リン酸化を増強する
DOI
10.1073/pnas.2534343123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2534343123
著者名(敬称略)
山下哲生1、平野勝也1,2
所属
1香川大学医学部自律機能生理学
2現・福岡歯科大学
著者からのひと言
本研究の特筆すべき成果は、出芽酵母発現系を用いて長大な天然変性領域をもつ完全長MYPT1を含むMLCP複合体を高純度で再構成し、発見以来30年にわたり機能不明であったM20の機能を明らかにしたことです。本成果は、MLCPの新たな調節原理を示すものであり、高血圧や血管疾患、がんなど、MLCPが関与する病態の解明や治療法開発の基盤となることが期待されます。

抄訳

 ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素(MLCP)は、ミオシン軽鎖を脱リン酸化し、平滑筋の弛緩やさまざまな細胞機能を調節します。MLCPを構成する三つのサブユニット(PP1c, MYPT1, M20)のうち、M20が酵素機能にどのように関与するかは明らかではありませんでした。本研究では、M20の有無で再構成したMLCPを生化学的に比較するとともに、高速原子間力顕微鏡を用いてその分子動態を観察しました。M20を欠くMLCPでは、MYPT1を介した複合体間の会合によってスーパー二量体が形成され、MYPT1の自己脱リン酸化が促進されました。これに対し、M20はMYPT1のC末端領域に結合して複合体間の会合を妨げ、Thr696およびThr853のリン酸化状態を維持しました。以上から、M20はMLCPの高次構造を変化させることにより自己脱リン酸化を制御し、酵素の抑制状態を調節することが示されました。本研究は、平滑筋収縮や細胞運動に関わるMLCPの新たな調節原理を提示するものです。

論文掲載ページへ

2026/07/29

大腸菌 ST131 のパンデミック動態に迫る地域(コミュニティ)基盤のワンヘルス・アプローチ

論文タイトル
A community-based One Health approach to the pandemic dynamics of Escherichia coli ST131
論文タイトル(訳)
大腸菌 ST131 のパンデミック動態に迫る地域(コミュニティ)基盤のワンヘルス・アプローチ
DOI
10.1128/aac.00007-26
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
前田 愛子 佐藤 豊孝 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院 衛生学分野 獣医衛生学教室
著者からのひと言

抄訳

薬剤耐性菌の世界的拡散はゲノム研究で解明が進むが、採取期間や地域の不均一さから、パンデミック確立の詳細過程は不明であった。本研究では国際的高リスククローンであるフルオロキノロン耐性(FQ-R)大腸菌 ST131 に着目し、札幌圏を対象に統一期間(2021–2022年)でヒト・伴侶動物・下水・家畜を統合し、世帯レベルまで捉えるワンヘルス枠組みを構築した。大腸菌2,358株のうち FQ-R 235株(ST131 88株を含む)をゲノム解析した結果、ST131 は高いクローン多様性の中に明確な集団構造をもち、ヒトと伴侶動物で共有されるサブクラスターが認められた。コアゲノム SNP 解析からは、健常人の保菌、無症候のヒト間伝播、世帯内のヒト–伴侶動物間伝播が示唆された。これら保菌株は多様な耐性遺伝子・病原因子を保有し臨床株と酷似しており、院内へ拡散が示唆された。国際ゲノムとの統合解析では、札幌の伝播が ST131 の世界的拡大の一部であることが示された。本研究は地域社会から世界規模への耐性菌拡散を解明する拡張可能なモデルであり、地域・世帯レベルでの介入の必要性を示す。

論文掲載ページへ

2026/07/17

トランスポゾンシーケンシングとパンゲノムの統合解析による、Mycobacterium avium subsp. hominissuisにおける共通および系統特異的必須遺伝子の同定

論文タイトル
Integrated analysis of transposon insertion sequencing and pangenome reveals core and lineage-specific essential genes in Mycobacterium avium subsp. hominissuis
論文タイトル(訳)
トランスポゾンシーケンシングとパンゲノムの統合解析による、Mycobacterium avium subsp. hominissuisにおける共通および系統特異的必須遺伝子の同定
DOI
10.1099/mgen.0.001753
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 6
著者名(敬称略)
澤井 宏太郎  港 雄介 他
所属
藤田医科大学 感染症研究センター 感染症創薬創薬研究部門
著者からのひと言
これまでMAHの研究では、日本の臨床で問題となっているEA系統株とは異なる遺伝系統の株が用いられることが多く、EA系統株の性質は十分に理解されていませんでした。本研究では、EA系統株と他系統株の比較解析を行い、MAHでは菌株によって必須遺伝子の構成が大きく異なることを明らかにしました。特に、当初の予想よりも共通必須遺伝子や系統内で保存される必須遺伝子が少なかった点は、MAHの多様性を理解するうえで重要な知見です。

抄訳

結核菌の類縁菌である非結核性抗酸菌(NTM)に起因する肺疾患(NTM-PD)が近年増加しており、世界的に問題となっている。NTMの一種である Mycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)は、NTM-PDの主要な原因菌である。MAHは結核菌と同様に複数の遺伝系統が存在し、系統ごとに特有の地理的分布と宿主適応性を示す。本研究では、日本の患者環境由来のMAH 3株を対象にゲノム解析を実施した。その結果、これら3株は日本および韓国の患者由来株で多く見られる東アジア(EA)系統に属することが明らかとなった。次に、公開済みMAH 23株の全ゲノム配列を含めたパンゲノム解析を実施し、異なるMAH系統間で保存されている3,313個のコア遺伝子を同定した。さらに、トランスポゾンシーケンシングによって3株の必須遺伝子を網羅的に同定し、既報のSC3系統株であるMAC109の必須遺伝子と比較した。多くの必須遺伝子はコア遺伝子に由来していた一方で、EA系統とSC3系統に共通する必須遺伝子に加え、系統特異的な必須遺伝子も同定された。

論文掲載ページへ

2026/06/30

近接標識用偽型ウイルスを用いた宿主細胞側ウイルス接着因子の同定

論文タイトル
Pseudovirus-mediated proximity labeling identifies candidate host cell membrane proteins involved in viral attachment
論文タイトル(訳)
近接標識用偽型ウイルスを用いた宿主細胞側ウイルス接着因子の同定
DOI
10.1128/jvi.00507-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
100(5):e0050726
著者名(敬称略)
小谷 典弘
所属
埼玉医科大学 医学部 薬理学
著者からのひと言
任意のウイルスのウイルス受容体候補をスクリーニングできる方法です。

抄訳

ウイルス感染は、COVID-19パンデミックに代表されるように、人類にとって重大な脅威である。被害を軽減するためには、原因ウイルスの生物学的特性を理解し対処することが不可欠となる。
本研究では、各種ウイルスの結合・感染に重要な宿主細胞側分子群(ウイルス受容体等)を同定する新手法を報告する。これら分子群はウイルス結合部位近傍に局在すると考えられるため、近接標識技術(proximity labeling: PL)を利用して特異的に標識・同定する手法を着想した。PL酵素をウイルス表面に発現する偽型ウイルスを作製し、宿主細胞に処理後、PL反応でこれら分子群を標識した。本法により、インフルエンザ偽型ウイルスを作製し、複数の候補分子を同定した。CHO細胞を用いたウイルス結合実験により、Neurophlin-1がインフルエンザウイルスの宿主細胞への結合に重要である可能性が示唆された。
本法は簡便かつ迅速に結果が得られるため、緊急解析が必要なパンデミックウイルスを含む、幅広いエンベロープウイルスに適用可能である。

論文掲載ページへ

2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae
members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania
triglochinis
」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

論文掲載ページへ

2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania triglochinis」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

論文掲載ページへ

2026/06/12

 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例

論文タイトル
T-cell large granular lymphocyte leukaemia with pure red cell aplasia harbouring a somatic STAT3 P715L mutation
論文タイトル(訳)
 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268958
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
岡本 裕介 石山 賢一 他
所属
京都大学大学院医学研究科 血液内科学
著者からのひと言
 T-LGLLではSTAT3変異の多くがSH2ドメインに集中することが知られているが、本症例は初めてSH2ドメイン外のSTAT3 P715L体細胞変異を同定した点で極めて興味深い。さらに、病理学的にSTAT3活性化を証明し、シクロスポリンに良好な治療反応を示したことから、希少変異であっても臨床的意義を有する可能性が示された。分子異常と自己免疫性血球減少症との関連を考える上で、診断・病態解明・治療戦略に新たな視点を提供する症例報告である。

抄訳

本症例は、進行性貧血を契機に診断された50歳代女性のT細胞性大顆粒リンパ球白血病(T-LGLL)に伴う赤芽球癆(PRCA)の報告である。骨髄検査では赤芽球系の著明な減少を認め、末梢血フローサイトメトリーおよびT細胞受容体遺伝子再構成解析により単クローン性CD8陽性細胞傷害性T細胞の増殖が確認された。さらにNGS解析によりSTAT3遺伝子のP715L体細胞変異を同定した。この変異はこれまでSTAT3 gain-of-function(GOF)症候群における生殖細胞系列変異として報告されていたが、T-LGLLにおける体細胞変異としての報告はなかった。骨髄生検ではCD8陽性T細胞におけるリン酸化STAT3の核内集積が確認され、P715L変異によるSTAT3シグナルの恒常的活性化が示唆された。患者はシクロスポリン治療により徐々に造血能が改善し、6か月以内に輸血依存から離脱した。本症例は、T-LGLLにおけるSTAT3変異スペクトラムを拡張するだけでなく、SH2ドメイン外のSTAT3変異が疾患発症や治療反応性に関与する可能性を示した重要な症例である。

論文掲載ページへ

2026/06/11

 動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。

論文タイトル
Animals have expanded the evolutionary legacy of unicellular ancestors in blood cells
論文タイトル(訳)
動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。
DOI
10.1073/pnas.2528110123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.23 e2528110123
著者名(敬称略)
長畑 洋佑 河本 宏 他
所属
京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野
スペイン国バルセロナ 進化生物学研究所(筆頭著者現所属)
著者からのひと言
(河本)私達の研究室は、造血幹細胞が分化していく際に、マクロファージへ分化する能力が長く保持されているというミエロイド基本型モデルを、20年以上前に提唱しました。今回の成果は、ミエロイド基本型モデルが、7億年の血液細胞の進化過程を反映している事を示す集大成的な成果であり、とても感慨深く思います。
(長畑)T細胞、マスト細胞、赤血球、血小板が近縁であるということは、驚くべきことであり、重要な知見になると考えます。また、7億年前の先祖の遺産が、血液細胞として我々の体内を巡っていると思うと、遠い祖先も身近に感じることができます。

抄訳

本研究では、様々な動物と単細胞生物における、多種多様な細胞の遺伝子発現プロファイルを比較する手法を開発することで、血液細胞の起源と多様化の歴史を7億年前の単細胞生物時代の祖先にまで遡って明らかにしました。①まず、動物の祖先は、まだ単細胞生物であった頃の遺伝子プログラムを用いて、マクロファージ様の血液細胞として誕生させました。その後、動物進化の過程で、②寄生虫感染症に対抗してマクロファージからマスト細胞が分岐し、③そのマスト細胞から原始的なT細胞が、④マクロファージから原始的なB細胞が、⑤再びマスト細胞から赤血球が、それぞれ分岐していった事がわかりました。この7億年間の進化の記憶は、造血・分化過程として、現在生きる我々の体内にも刻まれていることもわかりました。私達の体内を巡る血液細胞は、単細胞生物時代の祖先が私達に遺したレガシーをうまく拡張・発展させたものと言えます。

論文掲載ページへ

2026/06/11

 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上

論文タイトル
Utilizing vmTracking to Improve the Accuracy of Multi-Animal Pose Estimation in Rodent Social Behavior Studies
論文タイトル(訳)
 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上
DOI
10.3791/69506-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (225), e69506
著者名(敬称略)
筆頭著者:畦地 裕統 連絡著者:畦地 裕統
所属
同志社大学大学院脳科学研究科 システム神経科学分野 認知行動神経機構部門
著者からのひと言
動物の行動を定量的に解析するには、個体ごとの動きを正確に追跡したデータが必要です。しかし、複数個体が自由に行動する場面では、接触や遮蔽により個体識別が不安定になるため、データの精度が低下し、社会行動の定量評価にも影響します。本論文では、仮想マーカーを用いて既存のマーカーレス姿勢推定を補強するvmTrackingの手順を紹介しています。多個体行動解析の信頼性を高めるために有用な内容です。

抄訳

げっ歯類の社会行動研究では、動物が自由に動き回る環境下で、より自然な相互作用を評価する必要性が高まっている。そのためには、複数個体の姿勢を正確に追跡することが重要であるが、現在のマーカーレス多個体姿勢追跡ツールでは、遮蔽や密集場面、特に個体同士を視覚的に区別しにくい条件で精度が低下しやすい。本研究で提示する仮想マーカー追跡(vmTracking)は、仮想マーカーを用いてフレーム間の個体識別を維持し、困難な条件下での多個体姿勢追跡精度を向上させる手法である。本手法は標準的な追跡ワークフローに組み込むことができ、既存のマーカーレス多個体動画データにも適用可能である。本稿では仮想マーカーの割り当て方法と、ラベル付けされた動画における動物追跡の手順を示す。vmTrackingにより得られる高精度な多個体追跡データは、自由行動下で生じる社会的相互作用行動を、より信頼性高く定量解析することを可能にする。

論文掲載ページへ

2026/06/10

SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析

論文タイトル
Combinatorial analysis of clinical and genomic data used to assess the association between SARS-CoV-2 mutations and disease severity
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag191
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 6, June 2026, pgag191,
著者名(敬称略)
石渡 早織、谷本 幸介、 武内 寛明  他
所属
東京科学大学 医歯学総合研究科 ハイリスク感染症研究マネジメント学分野

抄訳

2019年末に出現し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを引き起こしたsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)は、ゲノム進化を経て、アルファ、デルタ、オミクロン株などの懸念される変異株を生み出した。本研究ではSARS-CoV-2変異が感染者の重症度に及ぼす影響を評価することを目的とし、東京科学大学病院に入院した310名の患者由来のウイルスゲノムデータと臨床データの統合解析を行なった。解析の結果、統計的有意に重症度と関連する変異が64個同定された。オミクロン株は一般的にデルタ株よりも症状が軽いとされているが、本研究ではオミクロン株の中にも重症化と統計的有意に関連する変異が同定された。SARS-CoV-2のゲノム情報と臨床情報のレトロスペクティブ解析は、ウイルス変異の生物学的意義の解明に有用であると考えられる。

論文掲載ページへ

2026/06/10

 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン

論文タイトル
Chromid-like secondary replicons as predicted key sites of biosynthetic gene clusters in Ktedonobacteria
論文タイトル(訳)
 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン
DOI
10.1128/msystems.00197-26
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
矢部 修平他
所属
理化学研究所 環境資源科学研究センター ホロビオント・レジリエンス研究チーム
著者からのひと言
 クテドノバクテリアは培養例が限られ、これまで十分に研究されてこなかった細菌群です。本研究では、この細菌群が多様な生合成遺伝子クラスターをもち、それらがクロミド様の大型二次レプリコンに集積している可能性を示しました。創薬微生物の代表格である放線菌に続く、新たな微生物資源としての展開が期待されます。

抄訳

 土壌微生物は、医薬品や農薬などの候補となる多様な二次代謝産物を生み出す重要な生物資源である。しかし、多くの土壌細菌系統では、その生合成能や、それを支えるゲノム構造が十分に理解されていない。本研究では、火山土壌から新たに分離したKtedonobacteria株、メタゲノム由来ゲノム、公共ゲノムを統合し、計183ゲノムを対象に生合成遺伝子クラスター(BGC)を比較解析した。その結果、1,546個のBGCを同定し、その多くが既知データベース中のBGCとは大きく異なることを示した。さらに、長鎖リードによる高品質ゲノム解析から、クロミド様の特徴をもつ大型二次レプリコンが複数の系統で見出され、BGCや可動性関連遺伝子がそこに濃縮していることが明らかとなった。本成果は、Ktedonobacteriaが未開拓の二次代謝資源であることを示すとともに、微生物の二次代謝能の多様化を支えるゲノム構造の理解に貢献するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/09

腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である

論文タイトル
TusDCB-mediated tRNA sulfur modification is required for virulence and intestinal fitness in enterohemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である
DOI
10.1128/iai.00186-26
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
佐藤百美佳、 平川 秀忠 他
所属
国立大学法人群馬大学 医学部医学科 細菌学
著者からのひと言
本研究では、これまで病原性との関連がほとんど知られていなかった「tRNAの硫黄修飾」に着目しました。細菌は単に病原因子を持つだけでなく、それらを適切なタイミングで作り出す仕組みが必要です。TusDCBはその根幹を支える翻訳制御に関与し、腸管出血性大腸菌の病原性や環境ストレス耐性に重要な役割を果たしていました。本研究が、新しい感染症制御法の開発につながることを期待しています。また、本研究は学部学生を中心とした日々の研究活動から生まれた成果であり、基礎研究と人材育成の重要性を示すものでもあります。

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は、重度の出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす重要な食中毒の原因菌である。しかし、抗菌薬の使用によって毒素放出が促進される危険性があるため、有効な治療法は限られている。
本研究では、タンパク質合成に関わるtRNAの硫黄修飾を担うTusDCB複合体に着目し、その病原性への役割を解析した。TusDCBの機能を欠失させると、III型分泌装置(T3SS)関連遺伝子の発現および病原因子EspBの産生が低下し、ヒト赤血球に対する溶血活性やマウス腸管感染モデルにおける病原性が著しく減弱した。また、酸や酸化ストレスに対する抵抗性も低下した。さらに、プロテオーム解析により、EHECの薬剤耐性や病原性の増強に寄与するインドールシグナル産生に関与するTnaAなど複数のタンパク質の発現低下が認められた。これらの結果から、TusDCBは病原因子発現のみならず、細菌の環境適応や生存能力を支える重要な因子であり、新たな抗病原性治療標的となる可能性が示された。

論文掲載ページへ

2026/06/08

同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立

論文タイトル
Establishment of Tumor Organoids, Carcinoma-Associated Fibroblasts, and Counterpart Fibroblasts from the Same Esophageal Cancer Patient
論文タイトル(訳)
同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立
DOI
10.3791/69548-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (230), e69548
著者名(敬称略)
筆頭著者:張霈宁、連絡著者:小林哲夫 他
所属
順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座

抄訳

食道扁平上皮がんでは、治療抵抗性や再発が大きな課題である。がん関連線維芽細胞(CAF)は、がん微小環境を構成する主要な細胞であり、がんの進展や治療応答に重要な役割を果たす。従来の研究では、長期間培養されたがん細胞株と患者由来CAFを組み合わせることが多く、両者の遺伝的背景の違いが実験結果の再現性や信頼性に影響する可能性があった。本論文では、同一の食道扁平上皮がん患者の手術検体から、がんオルガノイド、CAF、さらに非がん部由来の対照線維芽細胞(CF)を同時に樹立する方法を紹介する。本手法で樹立した細胞群を用いることにより、患者間差を抑えた条件でがん細胞とCAFの相互作用を解析することが可能である。その研究成果は、CAFによるがん増殖や薬剤抵抗性の機序解明、さらには個別化治療の開発の基盤となることが期待される。

論文掲載ページへ

2026/06/04

新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Prevotella mikamonis sp. nov., isolated from equine clinical specimens
論文タイトル(訳)
新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007112
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
 (兼 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター)
著者からのひと言
馬の呼吸器感染症由来検体から新たなPrevotella属細菌を発見し、新種 Prevotella mikamonis sp. nov. として提唱しました。本菌は、日本の嫌気性菌感染症研究を牽引してきた三鴨廣繁(みかもひろしげ)博士にちなんで命名されています。本研究は、馬に関連する嫌気性細菌の未知の多様性を明らかにしたものであり、獣医領域における感染症理解と微生物分類学の発展に新たな知見を提供します。

抄訳

本研究では、日本において馬の呼吸器感染症由来検体から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌5株について、表現型、生化学的性状およびゲノム情報に基づく包括的な分類学的解析を実施した。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、これらの菌株は既知の近縁種とは明確に区別される独立したクラスターを形成した。ゲノムのGC含量は46.7%であり、主要な菌体脂肪酸としてC16:0、3-OH-C16:0および3-OH-iso-C16:0が検出された。さらに、全ゲノム比較により平均ヌクレオチド同一性(ANIb)およびデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーション(dDDH)を解析したところ、近縁種であるPrevotella phocaeensisおよびPrevotella merdaeの基準株に対し、それぞれ73.1%未満および28.6%未満と、新種提唱の基準値を大きく下回る結果が得られた。これらの表現型および遺伝学的特徴を総合的に評価した結果、本菌株群はPrevotella属の新種に相当すると判断され、
新種 Prevotella mikamonis sp. nov. を提唱した。本研究は、馬の呼吸器感染症に関連する嫌気性細菌の多様性解明に貢献するとともに、新たな病原細菌の分類学的知見を提供するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/04

共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性

論文タイトル
Boson peak in covalent network glasses: Isostaticity and marginal stability
論文タイトル(訳)
共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性
DOI
10.1073/pnas.2528998123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.22 e2528998123
著者名(敬称略)
水野英如 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
著者からのひと言
一見すると、窓ガラスと砂団子はまったく異なるものに見えます。しかし本研究は、両者が硬さを獲得する背後に、「自由度と拘束数の釣り合い」という共通の物理原理が働いていることを明らかにしました。物理学のおもしろさは、このように異なる現象の奥に潜む普遍的な仕組みを見いだせる点にあります。本研究は、身近な砂の詰まりから窓ガラスの本質に迫り、物理学の魅力と威力を示す研究です。

抄訳

窓ガラスは、私たちの暮らしの中で身近にあり、当たり前のように使われている材料である。しかし、その主成分であるシリカガラスがどのように硬さを獲得し、なぜ低周波領域に特有の振動励起である「ボソンピーク」を示すのかは、長く未解明の問題であった。本研究は、この身近でありながら謎を残すシリカガラスの硬さの起源を、砂団子が固まる仕組みである「ジャミング転移」の物理と結びつけて調べた。分子動力学シミュレーションにより、シリカガラスのシリコン原子と酸素原子から成る共有結合ネットワークを解析したところ、このネットワークが、砂団子が剛性を獲得する状態と同じく、自由度と拘束数がちょうど釣り合った「等拘束性」の状態にあることが明らかになった。等拘束的なネットワークは安定と不安定の境界にある臨界的な骨格であり、そこにファンデルワールス力やクーロン力などの弱い相互作用が加わることで、実際のガラスは有限の剛性を獲得する。さらに、ボソンピークもこの等拘束的ネットワークに由来することを示した。本成果は、身近な窓ガラスの背後に、砂団子と共通する普遍的な物理原理が潜んでいることを明らかにし、ガラスの剛性と振動特性を統一的に理解するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/01

両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症

論文タイトル
Hypertrophic pulmonary osteoarthropathy in bilateral distal tibia and fibula
論文タイトル(訳)
両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症
DOI
10.1136/bcr-2025-269739
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 5
著者名(敬称略)
井上 文太 他
所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 足の外科
著者からのひと言
足の外科外来を受診した両側足関節痛の患者が、実は肺がんに伴う肥大性肺性骨関節症(HPOA)であった症例です。稀な疾患であるため、認知度が低く診断に難渋しますが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見が診断の手がかりとなります。原因不明の両側足関節痛では本疾患を念頭に置き、すみやかに原疾患(特に肺悪性腫瘍)の全身検索を行うことが重要です。

抄訳

肥大性肺性骨関節症(HPOA)は、四肢の骨膜新生、関節痛、ばち指を特徴とするまれな症候群であり、多くは肺疾患に続発する。整形外科的疾患と誤診されやすく、全身評価の遅れにつながりうる。本症例は、両側足関節痛を主訴に足の外科外来を受診した60歳代後半の男性である。単純X線およびCTにて両側脛骨・腓骨に左右対称性の骨膜新生を認め、MRIでは骨膜の浮腫・炎症を認める一方で骨髄浮腫は認めず、HPOAの診断を支持する所見であった。両手指および足趾のばち指も確認された。全身検索の結果、右肺尖部に腫瘍を認め、気管支鏡により肺腺癌と診断された。右上葉切除術後、両側足関節痛は速やかに消失し、JSSF足関節・後足部スケールおよびSAFE-Qの各スコアも術後1年で著明に改善した。下肢の骨膜新生をきたす疾患の鑑別は多岐にわたるが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見はHPOAを示唆する重要な診断手がかりである。原因不明の両側足関節痛に際しては本疾患を念頭に置き、原因疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する全身評価を行うことが重要である。

論文掲載ページへ

2026/05/25

ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性

論文タイトル
High-density microdroplet cultivation reveals the essential role of microbial interactions in the growth of environmental microbes
論文タイトル(訳)
ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性
DOI
10.1128/mbio.03953-25
ジャーナル名
mBio
巻号
Vol.17, No.5
著者名(敬称略)
Eun-Young Seo 鈴木 陸太 青井 議輝 他
所属
広島大学大学院 統合生命科学研究科 代謝変換制御学研究室 青井グループ
著者からのひと言
本論文ではこれまで培養の難しかった微生物を培養する新たな手段として、ドロップレットを用いた超高菌体密度での微生物培養手法を提案しています。これまで実現不可能だった高いレベルでの相互作用を実現することで、増殖の困難な微生物の培養を可能にしました。99%の微生物が現在まで培養されていないと言われていますが、本手法はこれらの微生物の大部分を培養可能にするポテンシャルを持っており、我々は現在、新たな微生物を資源化することに取り組んでいます。

抄訳

環境中の微生物の大多数は依然として培養されておらず、その生理機能や生態学的役割の理解は大きく制限されている。微生物間相互作用は、培養できない微生物の成長を支える重要な要因の一つと考えられてきたが、それらが培養可能性に与える影響は十分には解明されていない。 本研究では、純粋培養を維持しつつ微生物間相互作用を促進し、さらに単一細胞レベルでの観察を可能にする新しいドロップレット共培養手法を開発した。この培養手法により、環境微生物の培養効率は従来の寒天平板法から大幅に向上(約10倍)し、従来は培養が困難であった分類群の増殖も確認された。また、純菌株を用いて微生物群集内での増殖の様子を観察した結果、微生物間相互作用がいくつかの微生物の増殖にとって重要であることが明確に示された。本研究の知見は、微生物の培養における相互作用の重要性を強調するとともに、利用可能な微生物バイオマスの大幅な拡張、微生物群集の制御、そしてこれまで認識されていなかった微生物間相互作用の解明に向大きく貢献するものである。

論文掲載ページへ