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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2025/12/09

低温増殖性および遺伝的安定性に優れたウイルスポリメラーゼ変異株を応用した弱毒生インフルエンザワクチンの開発

論文タイトル
Live-attenuated influenza virus vaccine strain with an engineered temperature-sensitive and genetically stable viral polymerase variant
論文タイトル(訳)
低温増殖性および遺伝的安定性に優れたウイルスポリメラーゼ変異株を応用した弱毒生インフルエンザワクチンの開発
DOI
10.1128/jvi.01390-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
内藤 忠相 他
所属
川崎医科大学微生物学教室
著者からのひと言
ワクチン接種は感染症の発症や重症化を予防するために行うものであり、ワクチンにより健康を害しては元も子もありません。弱毒生インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンと比較をしてより優れた感染予防効果が期待できる一方で、副反応の出現頻度が高い傾向があります。本論文では、従来型の生ワクチンより副反応の出現頻度の低減が期待できる新規弱毒生ワクチンの開発について報告しています。

抄訳

インフルエンザワクチンの一種である弱毒生ワクチンは、生きたインフルエンザウイルス自体を鼻に噴霧接種するタイプであり、2024 年から本邦での使用が承認された。弱毒生ワクチンは生きたウイルスを使用しており、不活化ワクチン(インフルエンザHA ワクチン)よりも発症予防効果に優れている。しかし、弱毒化されているとはいえ生ワクチン接種後にインフルエンザ症状を発症する場合があるため、副反応が少ないワクチンの開発が求められていた。
著者らは、実験用マウスを用いたウイルス感染実験などにおいて、既存の生ワクチンと同等の感染予防効果を持つ新規の弱毒生インフルエンザワクチンの開発に成功した。具体的には、ウイルスポリメラーゼであるPB1蛋白質の471番目のLys残基をPro残基に置換した組換えウイルスが、生ワクチン母体株に応用できる弱毒性を獲得した。今回作出した組換え弱毒生ワクチン株は、接種後の副反応に関わる病原性復帰変異株が出現しづらいウイルス性状を備えていた。本研究成果は、安全性が高い弱毒生インフルエンザワクチンの製造に資する技術的基盤となる。

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2025/12/04

傍神経節腫マネジメントの再考:頭頸部とその他の部位で異なる診療戦略

論文タイトル
Rethinking Paraganglioma Management: Distinct Clinical Pathways for Head and Neck versus Other Sites
論文タイトル(訳)
傍神経節腫マネジメントの再考:頭頸部とその他の部位で異なる診療戦略
DOI
10.1530/ERC-25-0231
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Volume 32: Issue 12
著者名(敬称略)
小澤 宏之 他
所属
慶応義塾大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室
著者からのひと言
傍神経節腫はこれまで「ひとまとめ」に語られてきましたが、頭頸部傍神経節腫とその他の部位の傍神経節腫は、病態も治療戦略も大きく異なります。本論文ではその差異を最新のエビデンスに基づいて整理し、部位別のマネジメントアルゴリズムを提示しました。耳鼻咽喉科医、内分泌外科医、放射線科医など多職種の臨床医にとって、今後の診療・研究を考える有用な手がかりになることを期待しています。

抄訳

傍神経節腫(PGL)は全身に発生し、どの部位に発生しても同一の疾患として扱われているが、頭頸部傍神経節腫(HNPGL)とその他の部位のPGL(PGLO)では、自律神経系との関連、機能性、遺伝学的背景、解剖学的発生位置、転移リスクが異なるため、治療戦略に大きな違いがある。本総説では近年の大規模コホートや遺伝学的研究を整理し、HNPGLでは手術切除が基本となるものの、局所制御と神経機能温存を重視し、症例ごとに経過観察や放射線治療を選択し得る一方、PGLOは機能性腫瘍・転移リスクを踏まえた外科切除と全身治療が中心となることを示した。PGLを単一疾患として扱うのではなく、発生部位や病勢進行リスクに応じた診断・治療アルゴリズムを提案し、PGLに対する治療の最適化を通じて長期予後の改善およびサーベイランスの適正化に資する視点を提示している。

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2025/12/02

好中球細胞外トラップとヒトLDLを用いた血管内皮細胞の刺激

論文タイトル
Stimulation of Vascular Endothelial Cells Using Neutrophil Extracellular Traps in the Presence of Low-Density Lipoprotein
論文タイトル(訳)
好中球細胞外トラップとヒトLDLを用いた血管内皮細胞の刺激
DOI
10.3791/68830
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (222), e68830
著者名(敬称略)
小濵 孝士 板部 洋之 他
所属
昭和医科大学大学院薬学研究科生物化学分野

抄訳

好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)は、活性化した好中球が自身のDNAとタンパク質を細胞外へ放出する反応で、貪食とは真逆ともいえる細胞応答である。NETsの発見当初は病原細菌を絡めとる生体防御機構の一つとして認識されたものの、非感染性の疾患でも見出されるようになり、炎症の持続や組織傷害を誘発することで各種疾患の形成に関わる要因の一つとして捉えられている。NETsは血栓や動脈硬化といった血管病変でも形成されるが、リポタンパク質の影響を含めて解析された報告は少ないことから、リポタンパク質と好中球NETsの相互作用の寄与については未解明の点が多く残されている。本論文では、超遠心法によるヒト末梢血からのLDL分画方法、HL-60細胞の分化誘導による好中球様細胞の調製、そしてLDL共存下で作成したNETsを回収してヒト大動脈血管内皮細胞に作用させる一連の方法を紹介する。本手法がリポタンパク質や好中球NETsの内皮細胞への効果の探索に利用され、新たな循環器系疾患の機序の解明に繋がることが期待される。

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2025/11/25

高齢期に不正確さが増すことも、バイアスが強まることもない:顔に基づく信頼性判断の正確性とバイアスの年齢関連差

論文タイトル
Neither inaccurate nor biased in later life: Age-related differences in the accuracy and bias of facial trustworthiness judgment
論文タイトル(訳)
高齢期に不正確さが増すことも、バイアスが強まることもない:顔に基づく信頼性判断の正確性とバイアスの年齢関連差
DOI
10.1073/pnas.2512093122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.46 e2512093122
著者名(敬称略)
鈴木 敦命 他
所属
東京大学 大学院人文社会系研究科 心理学研究室
著者からのひと言
本研究では、「高齢者は第一印象で人を信頼しすぎる」という通説とは異なる結果が得られました。私たちは、顔を見た時の第一印象で「この人は信頼できる(できない)」とつい判断してしまいます。こうした判断の正確さは概して低いものの、相対的には、高齢者の正確さは若年者よりも高いか、少なくとも同程度でした。また、高齢者が「信頼しやすい」というよりも、若年者が「信頼しにくい」バイアスをもつ傾向が一貫して見られました。こうした結果は、高齢者に関するステレオタイプを見直すきっかけになると考えられます。

抄訳

人は、他者がどの程度信頼できるかを顔から判断する傾向をもつ。この「顔信頼性判断」については、高齢期に他者を信頼しすぎるポジティビティ・バイアスが強まり、詐欺被害のリスクを高める可能性が指摘されてきた。しかし、この主張を直接裏付ける実証的根拠は乏しい。そこで我々は、信頼ゲームで相手に協力した頻度や、汚職による有罪歴の有無が明らかな男性の顔画像を用い、顔信頼性判断の正確性とバイアスの年齢関連差を検討する3つの研究を行った。参加者レベルの分析では、高齢者の判断の正確性は若年者より高いか(研究1・3)、同程度であった(研究2)。また、「信頼できない」という判断が優勢なネガティビティ・バイアスが全般的に認められ、この傾向は若年者でより強かった。ポジティビティ・バイアスは研究3の高齢者で弱く見られたのみであった。顔画像間の分散を考慮すると年齢関連差の統計的有意性は弱まったが、総じて、本研究の結果は高齢者が若年者と同等かそれ以上に正確かつバイアスの少ない判断を行っていたことを示していた。このことは、高齢者の顔による信頼性判断の楽観的歪みが詐欺への脆弱性を高めているという通説に疑問を投げかける。

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2025/11/18

反復した菊池藤本病後に急性心筋梗塞を発症した思春期男児例

論文タイトル
Acute myocardial infarction in an adolescent following recurrent Kikuchi–Fujimoto disease
論文タイトル(訳)
反復した菊池藤本病後に急性心筋梗塞を発症した思春期男児例
DOI
10.1136/bcr-2025-267938
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 18, Issue 11
著者名(敬称略)
横山能文 他
所属
岐阜市民病院小児科
著者からのひと言
菊池藤本病は一般に自然軽快する疾患ですが、本症例のように再発を繰り返す場合には慢性的な炎症が生じ、まれに心血管系へ影響を与える可能性があります。本論文では、思春期に急性心筋梗塞を発症した極めて稀な症例を通じて、菊池藤本病と動脈硬化の関連性について考察しました。臨床現場での注意喚起となれば幸いです。

抄訳

菊池藤本病(Kikuchi–Fujimoto disease:KFD)は若年女性に多い壊死性リンパ節炎で、通常は自然軽快する良性疾患である。本症例は、3回のKFDエピソードを経験した思春期男児が、15か月後に急性心筋梗塞(AMI)を発症した極めて稀な例である。3回目のKFDではPET-CTで頸部から縦隔、腹部に至る広範なリンパ節に集積を認めたが自然軽快した。その後、胸痛で受診した際に、冠動脈造影で左前下行枝・回旋枝・右冠動脈に高度狭窄を確認し、経皮的冠動脈インターベンションを施行した。脂質異常や血管炎などの既知の危険因子は認めず、KFDによる炎症が早期動脈硬化に関与した可能性が示唆された。KFDは一般に予後良好だが、再発例や広範リンパ節病変を伴う例では長期的な心血管リスクに注意が必要である。

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2025/11/12

担子菌菌糸が媒介する細菌の移動と生存が木質リグニンの分解を促進する

論文タイトル
Fungus-mediated bacterial survival and migration enhance wood lignin degradation
論文タイトル(訳)
担子菌菌糸が媒介する細菌の移動と生存が木質リグニンの分解を促進する
DOI
10.1128/aem.01347-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
亀井 一郎 他
所属
宮崎大学農学部
著者からのひと言
リグニンは木材の主要構成成分の一つで、その生分解は主に白色腐朽菌と呼ばれるきのこの仲間が担っています。一方で、きのこによって分解されている木材(腐朽材)の内部には多くの細菌類も共存していることが分かっていますが、その役割は不明で、本研究ではその一端を明らかにできました。白色腐朽菌と細菌との物理的・代謝的な相互作用を明らかにし、人為的に再構築できれば、木質バイオマスの有価物への変換(バイオリファイナリー)に応用できると考えています。

抄訳

木材腐朽菌と共存細菌との相互作用は、木材分解の重要な因子の一つとして認識されつつあるが、その具体的なメカニズムは未解明である。本研究では、白色腐朽菌であるカワラタケ(Trametes versicolor)が優占する腐朽材から、リグニン生分解生成物の一つであるバニリン酸を資化できる細菌を分離し、木材環境における白色腐朽菌と細菌との共存関係と機能的相互作用を調べた。その結果、バニリン酸資化性細菌は白色腐朽菌の菌糸伸長に伴い木粉培地上で分散し、白色腐朽菌菌糸の存在下でのみ長期的に生存でき、木粉の分解とリグニン分解の両方を促進することが明らかとなった。また、共培養系では白色腐朽菌単独培養系と比較して、木材の分解により生成・蓄積するグルコースおよびバニリン酸の濃度が低く保たれていた。これらの結果は、白色腐朽菌により生成するグルコースとバニリン酸を細菌が消費することで、Carbon catabolite repressionを抑制し、リグニン分解酵素の生産を促している可能性を示唆している。

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2025/11/12

甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察

論文タイトル
Active surveillance for small papillary thyroid carcinoma
論文タイトル(訳)
甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察
DOI
10.1530/ERC-25-0287
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer ERC-25-0287
著者名(敬称略)
筆頭執筆者:伊藤 康弘、連絡著者:宮内 昭
所属
医療法人 神甲会 隈病院 外科
著者からのひと言
種々の画像検査の進歩と普及によって小さい甲状腺癌の発見が急増した。エコーガイド下細胞診にて3mmの乳頭癌でも診断できる。一方、剖検にて甲状腺には小さい癌が高頻度で報告されている。著者らは微小乳頭癌を診断手術することに疑問を抱き、1993年に積極的経過観察臨床研究を世界で始めて開始し、2年後に癌研病院でも開始した。32年を経て、2025年アメリカ甲状腺学会甲状腺癌取扱規約に積極的経過観察が採用された。日本発の患者さんの為になる情報である。

抄訳

多くの国で最近数十年間に小さい甲状腺癌が急速に増え大きい臨床課題となっている。世界に先立ち、1993年に隈病院で、1995年に癌研病院で甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察臨床研究が開始され、良好な結果が報告された。積極的経過観察群において甲状腺癌関連死亡例はなく、腫瘍進行因子は若年齢と血清TSH高値であった。甲状腺微小癌の手術は容易ではあるが、経験豊富な外科医が行っても、永久的な反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症などのリスクを伴った。積極的経過観察群と即時手術群に予後に有意差はなく、前者より後者の方が有害事象の発生率が高かった。種々の理由で経過観察から手術に転換した群の予後および有害事象の発生率は、直ちに手術群と差がなかった。積極的経過観察群は、即時手術群より身体的QOLが良好であった。現在、積極的経過観察は甲状腺微小乳頭癌に対する優れた初期治療戦略と考えられている。

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2025/11/11

セフィデロコルおよびアズトレオナムとセフタジジム・アビバクタムの併用に耐性を示すStenotrophomonas maltophilia TUM26315血流感染症株のドラフトゲノム塩基配列

論文タイトル
Draft genome sequence of Stenotrophomonas maltophilia strain TUM26315, a bloodstream isolate resistant to cefiderocol and to aztreonam combined with ceftazidime-avibactam
論文タイトル(訳)
セフィデロコルおよびアズトレオナムとセフタジジム・アビバクタムの併用に耐性を示すStenotrophomonas maltophilia TUM26315血流感染症株のドラフトゲノム塩基配列
DOI
10.1128/mra.00949-25
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
酒匂 崇史, 原田 壮平 他
所属
虎の門病院 臨床感染症科, 東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座
著者からのひと言
TUM26315株はセフィデロコルの承認前に検出された菌株であるにもかかわらず、鉄トランスポーター遺伝子の変異を伴い、セフィデロコルに耐性となっていた。さらに、耐性機序は明確ではないもののアズトレオナムとセフタジジム・アビバクタムの併用にも耐性を示していたことは、治療薬の選択肢が乏しいという点で注目される。このような高度耐性を有する菌株の今後の疫学動向を注視する必要がある。

抄訳

以前の研究でセフィデロコル承認前に国内単施設で収集されたStenotrophomonas maltophilia血流感染症株146株のうち1株(TUM26315)がセフィデロコルに高度耐性を示したため、ドラフトゲノム解析を行った。TUM26315株はgenomic group 6に属し、鉄トランスポーター遺伝子であるcirAの未成熟終止コドン生成を伴うフレームシフト変異が認められた。また、追加で実施したアズトレオナム+セフタジジム・アビバクタムの薬剤感受性試験で耐性を示したが、染色体性のβ-ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列は一般的なものであった(blaL1B, blaL2B)。

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2025/11/10

Fusobacterium nucleatum の外膜オートトランスポータータンパク質 Fap2 および CmpA はそれぞれ Aggregatibacter actinomycetemcomitans 血清型 b 型株および d 型株との共凝集を特異的に媒介する.

論文タイトル
The outer membrane autotransporters Fap2 and CmpA facilitate specific coaggregation between Fusobacterium nucleatum and Aggregatibacter actinomycetemcomitans serotypes b and d.
論文タイトル(訳)
Fusobacterium nucleatum の外膜オートトランスポータータンパク質 Fap2 および CmpA はそれぞれ Aggregatibacter actinomycetemcomitans 血清型 b 型株および d 型株との共凝集を特異的に媒介する.
DOI
10.1128/aem.01132-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
田中友三佳 大貝悠一 中田匡宣 他
所属
鹿児島大学医歯学総合研究科 口腔微生物学分野
著者からのひと言
Fusobacterium nucleatum(Fn)は多様な表層タンパク質を有し,広範な細菌種と共凝集するユニークな細菌です.これまで,Fn と様々な口腔細菌の共凝集に関与する Fn の表層タンパク質が同定されてきましたが,それらが結合する相手側細菌の因子については多くが未同定のままです.本研究の結果は,Fn の表層タンパク質 Fap2 と CmpA が Aggregatibacter actinomycetemcomitans のLPS O-多糖領域を認識し結合することを示唆しています.口腔細菌同士がどのように相互作用し,デンタルバイオフィルムを形成していくのか——その仕組みに少し迫ることができたのではないかと考えています.

抄訳

口腔細菌である Fusobacterium nucleatum (Fn) とAggregatibacter actinomycetemcomitans (Aa) は歯周病の進行に関与する.また,Fn は数多の口腔細菌と共凝集するため,デンタルプラークの成熟に重要な菌種であると考えられている.本研究では,Fn が血清型 b 型および d 型の Aa 菌株と特異的に共凝集することを見出し,共凝集を担う分子機構を解析した.共凝集はリポ多糖 (LPS) もしくはLPS O-多糖を構成する特定の糖の添加により抑制された.また,Fn の外膜オートトランスポータータンパク質 Fap2 と CmpA はそれぞれ血清型 b 型と d  型の Aa 菌株との共凝集に必須であった.さらに,両菌種の共凝集により,共培養時のバイオフィルム形成が促進された.したがって,Fn と Aa の共凝集はタンパク質-糖鎖間の特異的相互作用により媒介され,デンタルプラーク形成に寄与することが示唆された.

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2025/11/07

GAPPSにおける胃癌発生に関わる遺伝子変異の解明

論文タイトル
Genomic and transcriptomic landscape of carcinogenesis in patients with gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach (GAPPS)
論文タイトル(訳)
GAPPSにおける胃癌発生に関わる遺伝子変異の解明
DOI
10.1073/pnas.2427133122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.44 e2427133122
著者名(敬称略)
松本千尋 岩槻政晃 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学
著者からのひと言
GAPPSは、胃体部から穹窿部にかけて多数のポリープを形成し、胃腺癌を高率に発症する極めてまれな遺伝性疾患です。疾患概念の普及に伴い報告例は増加していますが、フォローアップや治療法の確立には今なお多くの課題が残されています。本研究では、ポリープから癌へ至る分子進展過程を包括的に解析し、新たな知見を得ることができました。本研究が、この疾患の啓蒙および治療法の発展の一助となれば幸いです。

抄訳

Gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)は、胃体部から穹窿部に限局して多発性ポリープを形成し、胃癌を高率に発症する常染色体顕性遺伝性疾患である。これまでGAPPSにおいて、正常粘膜からポリープ、さらに癌へと進展する過程で蓄積する遺伝子変異については明らかにされていなかった。本研究では、GAPPSにおける正常粘膜、ポリープ、癌への進化的過程を明らかにすることを目的とした。7人のGAPPS患者(計54検体)から採取した癌、ポリープ、正常粘膜のサンプルに対して全エクソームシーケンスおよびRNAシーケンスを行い、ゲノム変化(コピー数異常および体細胞変異)、トランスクリプトーム動態を包括的に解析した。その結果、GAPPSではAPC遺伝子の体細胞変異がポリープおよび癌に認められ、さらに癌ではKRAS変異が追加的に出現することが明らかになった。また、APCおよびKRAS変異の共存が症例間および同一症例内のサブクローン間で反復して認められ、これらの共変異がGAPPSの発がんに寄与する可能性が示唆された。本研究は、GAPPS発がん過程におけるゲノムおよびトランスクリプトームのランドスケープを明らかにし、その分子機構の理解に貴重な知見を提供するものである。

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2025/11/06

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスの胞子嚢開裂において2つの多糖加水分解酵素が胞子嚢マトリクスを分解することで胞子を放出させる

論文タイトル
Two glycoside hydrolases decompose the sporangium matrix to release spores during sporangium dehiscence in Actinoplanes missouriensis
論文タイトル(訳)
放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスの胞子嚢開裂において2つの多糖加水分解酵素が胞子嚢マトリクスを分解することで胞子を放出させる
DOI
10.1128/mbio.02682-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
光山 京太 手塚 武揚 大西 康夫 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻 醗酵学研究室
著者からのひと言
一部の放線菌は、バクテリアでは極めて珍しい多細胞の構造体である胞子嚢を形成します。我々が研究対象としている放線菌は、数百の胞子を内包する胞子嚢を形成し、胞子嚢開裂によって胞子を水中に放出します。胞子はべん毛を持ち、遊走子となって水中を高速で運動します。我々は、このような複雑な形態分化の分子機構に興味をもち、長年研究しています。本論文は一連の研究の1つであり、胞子嚢の構成成分と胞子嚢開裂の分子機構について新たな知見を与えるものです。

抄訳

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスは、休眠胞子が詰まった胞子嚢を形成します。胞子嚢の表層は多層の胞子嚢膜で構成され、内部は胞子に加えて胞子嚢マトリクスで満たされています。胞子嚢は水がかかると胞子嚢膜が破れ、胞子を放出します(胞子嚢開裂)。今回、以前の解析で胞子嚢開裂時に転写が増大することが判明していた2つの遺伝子gimAgimBの機能解析を行いました。gimAgimBはいずれも多糖加水分解酵素をコードしています。gimAgimBの二重破壊株は形態的に正常な胞子嚢を形成しましたが、この胞子嚢は開裂条件において胞子嚢膜が破れるものの、胞子嚢マトリクスが分解されず胞子が放出されませんでした。胞子嚢膜が破れた状態の胞子嚢に、大腸菌で生産させ、精製したGimAまたはGimBタンパク質を添加すると、胞子嚢マトリクスが分解され、胞子が放出されました。また、別の遺伝子破壊実験により、gimBに隣接する7遺伝子で構成される遺伝子クラスターが胞子嚢マトリクスの合成に必要であることが判明しました。これまで胞子嚢マトリクスの成分はわかっていませんでしたが、今回、その主要成分がオリゴ糖を繰り返し単位とする多糖であること、胞子嚢開裂時にこの多糖が分解されることで胞子が水中に放出されることが示されました。

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2025/10/29

Homerがカルシウムイオンによって調節されるアクチン骨格を安定的に保ち、上皮細胞が力を感じ取る仕組みを制御する

論文タイトル
A steady-state pool of calcium-dependent actin is maintained by Homer and controls epithelial mechanosensation
論文タイトル(訳)
Homerがカルシウムイオンによって調節されるアクチン骨格を安定的に保ち、上皮細胞が力を感じ取る仕組みを制御する
DOI
10.1073/pnas.2509784122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.43 e2509784122
著者名(敬称略)
松沢 健司 池ノ内 順一 他
所属
九州大学 大学院医学研究院 生化学分野

抄訳

私たちの体を構成する上皮細胞は、互いに引っ張り合う力のバランスをとることで、組織の形や安定性を保っています。本研究では、神経細胞のシナプス構成要素として知られるタンパク質 Homer が、上皮細胞にも発現しており、力の感知に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。Homerは、細胞同士の接着部でカルシウムイオン(Ca²⁺)シグナルを介してアクチン骨格を安定的に保つことで、細胞が受ける力を感じ取り、その応答を調節していました。Homerを欠損させると、細胞間の張力が弱まり、上皮細胞シートの形態形成や協調的な動きが乱れました。さらに、カエル胚でHomerの機能を阻害すると神経管が正常に閉じなくなり、発生過程にも障害が生じました。これらの結果は、Homerが上皮細胞において、カルシウム依存的な力覚制御を担い、神経管閉鎖などの上皮細胞シートの形態形成に不可欠な分子であることを示しています。

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2025/10/27

シロイヌナズナにおいてNAD(P)(H)バランスを制御する葉緑体局在型NADP(H)ホスファターゼCCR4Cの同定

論文タイトル
Identification of CCR4C as a chloroplast-localized NADP(H) phosphatase regulating NAD(P)(H) balance in Arabidopsis
論文タイトル(訳)
シロイヌナズナにおいてNAD(P)(H)バランスを制御する葉緑体局在型NADP(H)ホスファターゼCCR4Cの同定
DOI
10.1073/pnas.2504605122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.42 e2504605122
著者名(敬称略)
明石一樹 川合真紀 他
所属
埼玉大学・大学院理工学研究科
著者からのひと言
葉緑体補酵素のホスファターゼの正体を突き止めることは、長年の念願でした。本研究により、その実体がCCR4Cという新たな酵素であることを明らかにし、葉緑体の代謝バランス制御の理解が一歩進みました。今後、この知見が植物の環境応答や生産性向上の基盤研究へ発展し、持続的な農業や資源利用の一助となることを期待しています。

抄訳

NAD(P)(H)は生物のエネルギー代謝やストレス応答に関わる重要な補酵素である。植物の葉緑体局在型NADキナーゼ(NADK2)は、光合成に必要なNADP⁺を供給する酵素であり、NADK2欠損変異体(nadk2)は成長不良や葉の黄化を示す。本研究ではnadk2の表現型を回復する復帰変異体nkr1の原因遺伝子としてAt3g18500 (CCR4C)を同定した。CCR4Cは葉緑体に局在し、NADP(H)をNAD(H)に変換するホスファターゼ活性を持つことが組換えタンパク質を用いた実験より示された。さらに、ccr4c変異体はNAD(P)(H)バランスの変化と活性酸素ストレスへの耐性を示した。これらの結果から、CCR4C は葉緑体内のNAD(P)(H)バランスを制御する新たな因子であり、植物が光合成やストレス応答をどのように調節しているのかを理解するうえで、重要な知見を与える。

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2025/10/21

HCV NS3/4Aプロテアーゼは脂肪滴調節因子SPG20を切断し脂肪滴形成を促進する

論文タイトル
Hepatitis C virus NS3/4A protease cleaves SPG20, a key regulator of lipid droplet turnover, to promote lipid droplet formation
論文タイトル(訳)
HCV NS3/4Aプロテアーゼは脂肪滴調節因子SPG20を切断し脂肪滴形成を促進する
DOI
10.1128/jvi.00890-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology 2025 Sep23: e0089025
著者名(敬称略)
松井千絵子 勝二郁夫 
所属
神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター感染制御学分野
著者からのひと言
HCV は肝細胞内に脂肪滴を貯留させ、HCV複製の場を効率よく形成する。このことから、HCV は感染早期に脂肪滴を積極的に肥大化させて、ウイルス増殖に有利な環境を構築していると推察された。今回我々が、HCV 感染による脂肪滴肥大化機構の一端を解明したことにより、HCV増殖阻害、病態改善へとつながることが期待される。また、HCV感染による脂肪滴肥大化、肝脂肪化や肝発癌の分子機序の解明と制御法開発への発展が期待できる。

抄訳

C型肝炎ウイルス(HCV)は感染すると肝細胞内に脂肪滴の蓄積と肥大化を引き起こし、肝脂肪化の原因となる。また、HCVは脂肪滴近傍の膜で複製することから、HCV増殖および病原性に肝細胞の脂肪滴形成が重要である。しかしながら、HCVによる脂肪滴形成および肥大化の分子機構の詳細は不明な点が多い。本研究では、HCV感染が誘導する脂肪滴肥大化の分子機序を解明するため、脂肪滴調節因子SPG20に着目した。HCV NS3/4AプロテアーゼはSPG20を特異的に切断し、E3リガーゼItchが脂肪滴結合蛋白質アディポフィリン(ADRP)へリクルートされるのを阻害することを見出した。ADRPはItchによるユビキチン依存性蛋白分解を回避し、脂肪滴周囲にとどまることで、細胞内のリパーゼによる脂肪滴分解が回避され、脂肪滴の肥大化が維持されることが示唆された。本研究により、これまで未解明であったHCV 感染による肝細胞の脂肪滴肥大化の分子機構が解明され、HCV増殖抑制、治療薬開発への端緒となることが期待された。

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2025/10/20

Ehg1/May24は高水圧環境下でアミノ酸輸送体の脂質ラフト局在を促進し、その安定化を担う

論文タイトル
Ehg1/May24 stabilizes yeast amino acid permease by facilitating its localization to lipid rafts under high hydrostatic pressure
論文タイトル(訳)
Ehg1/May24は高水圧環境下でアミノ酸輸送体の脂質ラフト局在を促進し、その安定化を担う
DOI
10.1091/mbc.E25-02-0067
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the CellVol. 36, No. 8
著者名(敬称略)
加藤 祐介 阿部 文快 他
所属
青山学院大学理工学部 化学・生命科学科
著者からのひと言
高圧は深海に普遍的に存在する熱力学的な要因ですが、実はヒトの運動時にも、膝や股関節には数百気圧(数十MPa)に達する圧力がかかっています。このような大きな外圧に対して、細胞が分子レベルでどのように応答しているのかについては、いまだ十分に解明されていません。本研究では出芽酵母をモデルとして、小胞体膜タンパク質Ehg1が高圧下でアミノ酸輸送体の機能を維持し、栄養の取り込みと生育を可能にする仕組みを明らかにしました。Ehg1のホモログはヒトにも存在していることから、本研究は細胞が力学的負荷に適応する分子メカニズムの理解を深めるうえで、医学的にも重要な手がかりとなることが期待されます。

抄訳

圧力は化学平衡や反応速度に影響を与える重要な熱力学的パラメータであるが、複雑な細胞内メカニズムへの影響については未だ十分に解明されていない。本研究では、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae の新規小胞体(ER)膜タンパク質Ehg1(別名May24)が、高水圧(約25 MPa)下でトリプトファン輸送体Tat2を安定化させ、細胞増殖を維持する役割を果たすことを明らかにした。Ehg1は表層ER(cER)に局在し、細胞膜上のTat2とin transで物理的に相互作用していた。さらに、Ehg1はTat2を細胞膜のマイクロドメインである脂質ラフトへ効率的に分配させることで、その膜局在を維持する中心的な役割を担っていた。この安定化は、cERと細胞膜の接触に依存しており、高水圧下での栄養源輸送の効率化に不可欠である。実際、こうした接触を欠くΔtether株およびΔ-super-tether株では、Tat2の顕著な不安定化が認められた。これらの知見は、高圧環境下における微生物の栄養輸送体の維持機構を新たに示すものであり、極限環境への微生物適応の理解を深める手がかりとなる。

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2025/10/20

マウス体細胞核移植胚におけるmTORC1によるオートファジーの抑制

論文タイトル
mTORC1-dependent suppression of autophagic activity in somatic cell nuclear transfer mouse embryos
論文タイトル(訳)
マウス体細胞核移植胚におけるmTORC1によるオートファジーの抑制
DOI
10.1530/REP-25-0338
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction REP-25-0338
著者名(敬称略)
建部 貴輝、井上 貴美子 他
所属
理化学研究所 バイオリソース研究センター(BRC)統合発生工学研究開発室
著者からのひと言
SCNT胚の研究は主に移植核のリプログラミング異常に着目したものが多く、細胞内タンパク質や細胞小器官などの細胞質因子が低発生率に関与しているのかは不明でした。本研究は、SCNT胚のオートファジー活性動態が受精胚を模倣できているのか、発生異常と関連性があるのか明らかにすることを目的としました。この研究では、4細胞期のオートファジー活性がSCNT胚の胚盤胞発生と関連していることが示されました。胚移植の前に良質な胚を選別することで、クローン作出効率の向上が期待されます。

抄訳

体細胞核移植 (SCNT) 技術は移植核と同一のゲノム情報を持つ個体を作出する手法だが、SCNT胚の出生率は5 %未満と非常に低い。本研究ではSCNT胚の低発生効率の原因を明らかにするために、着床前胚発生期に重要な細胞質因子の1つであるオートファジーに着目して研究を行った。蛍光ライブイメージングによるオートファジー活性測定によって、SCNT胚は受精胚と比べ後期2細胞期以降のオートファジー活性が低いことが明らかとなった。さらに、RNA-seq解析によってSCNT胚ではオートファジーを抑制的に制御するmTORC1の異常な活性化が起こっていることが示唆され、mTORC1を阻害することによってSCNT胚のオートファジーを活性化させることに成功した。本研究によって、SCNT胚はエピゲノムだけでなく細胞質因子についても受精胚とは異なる状態にあることが明らかとなり、非ゲノム経路の調節がSCNT研究の新たなアプローチになり得ることが示された。

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2025/10/20

シュードモナス属菌におけるプラスミド分類の現状と課題

論文タイトル
Enhancing plasmid typing with MOB-typer: resolving IncP and other incompatibility group misclassifications in Pseudomonas
論文タイトル(訳)
シュードモナス属菌におけるプラスミド分類の現状と課題
DOI
10.1099/mgen.0.001491
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Microbial Genomics Volume 11 Issue 9
著者名(敬称略)
鈴木 仁人、鈴木 治夫、西村 陽介、野尻 秀昭、新谷 政己
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター

抄訳

MOB-typerは、プラスミドの複製遺伝子(rep遺伝子)、接合関連遺伝子(mob遺伝子)、および接合形成装置(mpf遺伝子)に基づいて型別を行うツールであり、細菌のゲノム解析で広く利用されている。本論文は、プラスミドの分類手法の歴史的経緯を整理した上で、MOB-typerによるシュードモナス属菌プラスミドのrep分類に誤りがあり、系統的に異なるグループ(IncP-1、IncP-2、IncP-6、IncP-7、IncP-9など)が全て「IncP」と分類され、その誤情報が各種データベースなどを介して拡散している懸念を指摘した。

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2025/10/16

麹菌において Arg/N-degron 経路に必須なユビキチンリガーゼ UbrA はペプチダーゼ遺伝子発現に寄与する

論文タイトル
Contribution of UbrA, a ubiquitin ligase essential for Arg/N-degron pathway, to peptidase gene expression in Aspergillus oryzae
論文タイトル(訳)
麹菌において Arg/N-degron 経路に必須なユビキチンリガーゼ UbrA はペプチダーゼ遺伝子発現に寄与する
DOI
10.1128/aem.00813-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
室町 和花 田中 瑞己 他
所属
東京農工大学大学院 農学研究院 応用生命化学部門
著者からのひと言
麹菌は120個以上のペプチダーゼ遺伝子を有しており、多くのペプチダーゼが発酵産業や食品産業をはじめとする様々な産業分野で利用されています。しかし、その遺伝子発現制御機構は非常に複雑であり、ほとんど解明されていません。本研究では、糸状菌において初めて Arg/N-degron 経路を詳細に解析し、Arg/N-degron 経路に必須なユビキチンリガーゼがペプチダーゼ遺伝子の発現制御に関与していることを明らかにしました。本研究をきっかけに、糸状菌ではこれまで注目されてこなかった Arg/N-degron 経路の代謝や細胞機能の制御における重要性が明らかになると期待されます。

抄訳

細胞内のタンパク質は N 末端アミノ酸に依存して N-degron(N-end rule)経路によって分解される。出芽酵母では、 N-degron 経路の一つである Arg/N-degron 経路が転写抑制因子の分解を介してジ・トリペプチドトランスポーター遺伝子の発現を制御している。しかし、糸状菌における N-degron 経路についての情報はほとんどなく、真菌の窒素代謝における N-degron 経路の役割は明らかになっていない。本論文では、Arg/N-degron 経路に必須な E3 ユビキチンリガーゼ(UbrA)が麹菌のペプチダーゼ遺伝子発現を制御していることを示した。まず、ユビキチン融合 GFP をレポーターとして用いて、Arg/N-degron 経路が麹菌と出芽酵母で類似していることを明らかにした。麹菌の ubrA を破壊するとジ・トリペプチドトランスポーター遺伝子だけでなく、主要なペプチダーゼ遺伝子やジペプチドおよびトリペプチドを切り出すペプチダーゼ遺伝子の発現量も減少した。このことから、UbrA がジ・トリペプチドトランスポーター遺伝子だけでなく、その取り込み基質の生成に関与するペプチダーゼ遺伝子の発現も同時に制御していることが示された。

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2025/10/16

エボラウイルスとマールブルクウイルスのヌクレオカプシド形成に共通するターゲットを発見—新たな抗ウイルス薬開発の可能性

論文タイトル
Molecular insights into nucleocapsid assembly and transport in Marburg and Ebola viruses
論文タイトル(訳)
エボラウイルスとマールブルクウイルスのヌクレオカプシド形成に共通するターゲットを発見—新たな抗ウイルス薬開発の可能性
DOI
10.1128/mbio.01557-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
高松 由基 他
所属
長崎大学 熱帯医学研究所 ウイルス学分野
著者からのひと言
先進のライブセルイメージング顕微鏡解析により、エボラウイルスとマールブルクウイルスの共通するヌクレオカプシド形成メカニズムの一端を解明しました。特に、両ウイルスのヌクレオカプシドに会合するウイルスタンパク質VP30の共通モチーフを明らかにしたことで、このモチーフを標的とした新たな治療薬の開発が期待されます。

抄訳

エボラウイルス(EBOV)およびマールブルクウイルス(MARV)はフィロウイルス科に属し、ヒトを含む霊長類に致死的な出血熱を引き起こします。近年も中央アフリカや西アフリカでアウトブレイクを起こしていますが、これらウイルスに対する治療法は十分に整備されていません。
フィロウイルスのヌクレオカプシドは螺旋状のゲノムRNA-ウイルスタンパク質複合体で、ゲノムRNAの転写・複製を担います。本研究では、先進のライブセルイメージング技術を用いて、EBOVとMARVのヌクレオカプシド形成に関わる分子機構を解明しました。転写制御因子として知られるウイルスタンパク質VP30は、両ウイルス間で入れ替えてもヌクレオカプシドとともに機能し、転写・複製活性を発揮することがわかりました。
また、両ウイルスのNPタンパク質のC末端に存在するPPxPxYモチーフが、NP-VP30間の相互作用に不可欠であること、さらにVP30のヌクレオカプシドへの会合にも重要であることを明らかにしました。このモチーフはフィロウイルスで保存されているため、新たな抗ウイルス薬開発の標的となることが示唆されます。
本研究成果は、フィロウイルスのヌクレオカプシド形成機構の理解を深める重要な知見となるとともに、フィロウイルス感染症の新たな治療戦略の開発に寄与するものとなります。

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2025/10/16

日本産イチゴから単離された真のPseudomonas fluorescensPseudomonas fluorescens sensu stricto)のドラフトゲノム解析

論文タイトル
Draft genome sequences of two strains of Pseudomonas fluorescens sensu stricto isolated from strawberry in Japan
論文タイトル(訳)
日本産イチゴから単離された真のPseudomonas fluorescensPseudomonas fluorescens sensu stricto)のドラフトゲノム解析
DOI
10.1128/mra.00620-25
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Vol. 14, No. 10
著者名(敬称略)
諸星 知広 他
所属
宇都宮大学工学部基盤工学科生物工学研究室
著者からのひと言
Pseudomonas fluorescensは非常に有名な細菌ですが、これまでに報告されたP. fluorescens菌株をゲノムレベルで解析すると、真のP. fluorescensに分類される菌株は1割にも満たないという事実が明らかになりました。P. fluorescensは、環境中ではありふれた細菌と考えられてきましたが、実はかなりマイナーな存在であるということがこの研究から明らかになりました。

抄訳

Pseudomonas fluorescensは、世界中で様々な研究に利用されている細菌である。2025年6月現在、約200株のP. fluorescensのゲノム配列がRefSeqデータベースに登録されているが、平均ヌクレオチド同一性(ANI)で真のP. fluorescensP. fluorescens sensu stricto)と同定された株はわずか9株であり、世界中で利用されてきたP. fluorescensの大部分がP. fluorescens sensu strictoではないことを意味している。本研究では、日本産イチゴから単離されたP. fluorescens sensu stricto の候補であるMAFF 301597株及びMAFF 301598株のドラフトゲノム配列を取得し、P. fluorescens ATCC 13525基準株とのANIを計算したところ、同種と判断できる閾値(95%)を大幅に上回ったため、P. fluorescens sensu strictoに分類できることが実証された。

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