本文へスキップします。

【全】メガメニュー
H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/08/10

One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析

論文タイトル
One Health genomic insights into environmental and animal reservoirs of community-associated Clostridioides difficile in Japan.
論文タイトル(訳)
One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析
DOI
10.1128/aem.00397-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e00397-26
著者名(敬称略)
吉澤 定子 他
所属
東邦大学 医学部 医学科(大森病院)
著者からのひと言

抄訳

Clostridioides difficileC. difficile)は抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌であるが、近年では医療機関外で発症する市中関連感染(CA-CDI)の増加が世界的な課題となっている。本研究では、日本国内で採取した下痢外来患者、伴侶動物、家畜、野生動物および土壌由来検体を対象として、C. difficileの分離および全ゲノム解析を実施し、One Healthの観点から分子疫学的解析を行った。その結果、公園土壌および伴侶動物から高率に菌が検出され、コアゲノムSNP解析により、患者由来株と公園土壌由来株、ならびに犬由来株と公園土壌由来株の一部が近縁である可能性が明らかとなった。一方、これらの結果は感染伝播の方向性を示すものではなく、人・動物・環境の間で共通する環境リザーバーの存在を示唆する知見である。本研究は、日本におけるCA-CDIの疫学を理解する上でOne Healthの視点が重要であることを示すとともに、環境リザーバーの役割の解明や今後の公衆衛生対策の基盤となる知見を提供するものである。

論文掲載ページへ

2026/08/10

ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題

論文タイトル
Massive gas-forming iliopsoas abscess during bevacizumab-containing chemotherapy for recurrent sigmoid colon cancer: a diagnostic challenge
論文タイトル(訳)
ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題
DOI
10.1136/bcr-2026-275685
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e275685
著者名(敬称略)
中川 直貴、永坂 岳司 ほか
所属
川崎医科大学附属病院 臨床腫瘍科
著者からのひと言
がん薬物療法中の感染症では、薬剤性有害事象、腫瘍の進展、医療デバイス関連感染などが重なり、原因を一つに絞れないことがあります。本症例は、早期CTと救急・放射線科・臨床腫瘍科の連携が患者救命に直結した実例です。

抄訳

再発S状結腸癌に対してカペシタビン・オキサリプラチン・ベバシズマブによる治療中であった50歳代女性に、発熱、腹痛、下痢、意識障害を契機として巨大なガス産生性左腸腰筋膿瘍を発症した症例を報告しました。CTで後腹膜から腎周囲に及ぶ多房性膿瘍を確認し、緊急CTガイド下ドレナージと広域抗菌薬治療を行いました。膿瘍培養は腸管由来を示唆する多菌種性・嫌気性菌を含む所見で、尿培養とは一致しませんでした。腫瘍再発、過去の腸管由来菌血症、尿管ステント、ベバシズマブ投与など複数の要因が重なった可能性があり、がん治療中の腹痛・発熱では早期CT、多職種連携、原因を一つに決めつけない診断姿勢が重要であることを示しました。
 

論文掲載ページへ

2026/08/10

手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究

論文タイトル
Automatic acromegaly detection using deep learning on hand images: a multicenter observational study.
論文タイトル(訳)
手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究
DOI
10.1210/clinem/dgag027
ジャーナル名
The Journal of clinical endocrinology and metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 8, August 2026, Pages e1994–e2005
著者名(敬称略)
大町 侑香, 福岡 秀規
所属
神戸大学 医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
著者からのひと言
AIによる身体所見の評価は疾患の早期発見に大きな可能性を秘めていますが、社会実装にはプライバシーへの配慮が欠かせません。私たちはその課題に着目し、個人が特定されにくい「手」の画像を用いたAIモデルを開発しました。手に異常を呈する疾患は先端巨大症以外にも数多く存在します。本研究を第一歩として、さまざまな疾患の早期発見につながるAI技術の実用化を目指していきたいと考えています。

抄訳

先端巨大症は成長ホルモン過剰分泌により特徴的な顔貌や手足の肥大を呈するが、症状が緩徐に進行するため診断遅延が多く、早期診断法の開発が課題である。本研究では、プライバシー保護の観点から顔画像ではなく手背および握り拳画像を用いたAIスクリーニングモデルを開発した。全国15施設で716例(先端巨大症317例、対照399例)を登録し、ResNet-50を基盤とした深層学習モデルを構築・評価した。その結果、感度0.89、特異度0.91、ROC-AUC 0.96、PR-AUC 0.95と高い診断性能を示し、内分泌専門医10名を上回る精度を示した。本研究は、手背と握り拳画像を用いて高精度な先端巨大症検出を実現した初めての報告であり、健診やプライマリケア、遠隔医療におけるスクリーニングツールとしての実用化が期待される。希少疾患である先端巨大症のみならず、関節リウマチなどの他の疾患への応用を目指している。一方、本モデルは専門医の診断を代替するものではなく、臨床判断を補完する補助ツールとしての活用が望まれる。

論文掲載ページへ

2026/08/07

共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る

論文タイトル
Symbiotic Escherichia coli strains can better colonize host stinkbugs and outcompete natural symbiotic bacteria, but confer less fitness benefit.
論文タイトル(訳)
共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る
DOI
10.1128/mbio.00951-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio 17:e00951-26
著者名(敬称略)
Wenjin Cai 森山 実 深津 武馬 他
所属
産業総合技術研究所 モレキュラーバイオシステム研究部門 バイオシステム多様性研究グループ
著者からのひと言
長い共進化の過程を共にしてきた昆虫と共生微生物の相互依存関係は極めて安定なものと考えていましたが、実験室で人為的に作出した共生進化大腸菌が、本来の共生細菌を定着能力で上回り、駆逐してしまったことは、私たちにとっても驚きの発見でした。

抄訳

多くの昆虫は体内に共生微生物を保有し、世代を超えて受け継ぎながら、緊密な相利共生関係を築いてきた。長い共生進化の過程においては、こうした共生微生物の置換が幾度となく起こり、多様な共生系を生み出す要因となっている。しかし、微生物置換の具体的な進化プロセスには依然として不明な点が多い。最近私たちは、Pantoea属の相利共生細菌を中腸共生器官に保有するチャバネアオカメムシにおいて、共生器官に定着可能な人工共生進化大腸菌の作出に成功した。この共生進化大腸菌と本来の共生細菌を競合感染させたところ、共生進化大腸菌は本来の共生細菌を上回る定着能力を示す一方で、宿主昆虫の適応度への貢献は劣ることが判明した。自然界において長期にわたり共進化してきた本来の共生細菌を上回る共生能力が、非共生細菌である大腸菌で実験室において短期間に進化したという驚くべき知見である。本研究成果は、宿主にとって不利益であっても高い定着能力を備えた「裏切り者 cheater」的な感染戦略をもつ細菌が、共生進化にどのような影響を与えるかについて、実験的に検証可能なモデル系を提示するものである。

論文掲載ページへ

2026/08/07

高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連

論文タイトル
Loneliness and Resting-State Functional Brain Connectivity Among Older Adults: A Proportional Correlation
論文タイトル(訳)
高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連
DOI
10.1176/appi.neuropsych.20230167
ジャーナル名
The Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences
巻号
Volume 37, Number 1
著者名(敬称略)
今井 鮎  松岡 照之 他
所属
京都府立医科大学大学院 医学研究科 精神機能病態学
著者からのひと言
本研究は、孤独感は認知症のリスク因子であるだけでなく、認知症前駆期の神経変性に伴う早期徴候である可能性も示唆している。両者の因果関係を明らかにするためには今後の縦断研究が期待される。

抄訳

孤独感は認知症のリスクを高めると報告されているが、その機序は十分には解明されていない。そこで、43名の高齢者(健忘型軽度認知障害13名、正常認知機能30名)を対象に孤独感と安静時機能的MRIによる機能的脳結合との関連を調べた。孤独感は改訂版UCLA孤独感尺度を用いて評価した。先行研究で孤独感との関連が報告されている両側の海馬、視床、前部島皮質、扁桃体、外側前頭前野、内側前頭前野、後部帯状回、前部帯状回をシード領域とし、CONN toolboxを用いたROI-to-ROI解析により全脳の関心領域との機能的結合を解析した。その結果、孤独感が強いほど、右海馬と左外側頭頂葉との機能的結合は強く、左扁桃体と左前頭弁蓋、および左扁桃体と右縁上回との機能的結合は弱かった。これらの結果から、孤独感は海馬、頭頂葉、前頭葉、扁桃体の機能異常と関連し、これらの脳領域はアルツハイマー病や軽度認知障害で異常が認められることから、孤独感は認知症に関連した脳機能変化と関連する可能性が示唆された。

論文掲載ページへ

2026/08/07

血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺

論文タイトル
Hypoglossal nerve palsy secondary to cervical spondylosis mimicking angio-oedema
論文タイトル(訳)
 血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺
DOI
10.1136/bcr-2025-267982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e267982
著者名(敬称略)
福井遼太  上田 剛士 他
所属
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科
著者からのひと言
 片側性の舌腫脹では、舌癌などの腫瘍性病変をはじめとした局所病変が鑑別に挙がりますが、血管性浮腫や神経原性浮腫でも同様の所見を呈することがあります。本症例では、舌偏位やMRI所見に加え、環椎後頭関節周囲まで注意深く診察・画像評価することが診断につながりました。「舌の腫れ」という症候を局所病変だけでなく、神経学的・解剖学的な視点から捉えることの重要性を示す症例として、日常診療の一助となれば幸いです。

抄訳

 50歳代男性が、急性に発症した右側の舌腫脹、構音障害、嚥下障害を主訴に受診した。片側性の舌腫脹が目立ったことから当初は血管性浮腫が疑われたが、その後も右方への舌偏位が持続し、右舌下神経麻痺と診断した。画像を再検討すると、右舌下神経管出口部に骨棘を認め、環椎後頭関節の変形性変化、関節液貯留および周囲の骨髄浮腫を伴っており、頸椎症による舌下神経の圧迫が原因と考えられた。舌下神経麻痺では慢性期には舌萎縮を呈する一方、急性期には神経原性浮腫による舌腫脹が前景に立ち、舌偏位が目立たない場合がある。MRIで舌浮腫が正中を境に片側に限局する場合は、神経原性浮腫を示唆する手掛かりとなり得る。また、片側性舌腫脹では血管性浮腫のみならず舌下神経麻痺を鑑別に挙げ、その原因として腫瘍性病変や内頸動脈解離などを除外するとともに、頸椎症も考慮することが重要である。

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

 インフルエンザウイルス感染が引き起こす上気道常在細菌叢の病原性転化

論文タイトル
Influenza A virus infection induces initial proliferation of commensal Streptococcus pneumoniae in the larynx leading to dissemination into the lower respiratory tract
論文タイトル(訳)
インフルエンザウイルス感染が引き起こす上気道常在細菌叢の病原性転化
DOI
10.1128/jvi.00555-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Vol. 100, No. 7
著者名(敬称略)
加藤 広介 川口 敦史 他
所属
筑波大学医学医療系・分子ウイルス学研究室
著者からのひと言
 二次性細菌性肺炎はインフルエンザウイルス感染症による死亡例の多くを占める重要な合併症です。
その多くは、外環境からの病原性細菌による感染ではなく、体内常在菌の病原性転化(ディスバイオーシス)によるものです。
本研究で開発した動物モデルによって、詳細な分子機構を明らかにしていくことをめざしております。

抄訳

普段は病原性を示さず上気道に定着している常在菌が、インフルエンザウイルス感染をきっかけに病原性を発揮し、重篤な二次性細菌性肺炎を引き起こすことがあります。しかし、常在菌が上気道の「どこで」増殖を開始し、どのように下気道へ拡大するのかは明らかになっていませんでした。
本研究では、マウス上気道に定着できる肺炎球菌株を選定し、対数増殖期にのみ近赤外発光を示す組換え株を構築しました。これをマウスに定着させ、感染後の増殖動態をin vivoイメージングで解析しました。
その結果、菌増殖が顕著となる主要部位は鼻腔や肺ではなく、声帯周囲の喉頭であり、増殖能が活性して気管や肺へ拡大することが明らかになりました。
本研究は喉頭が常在菌の増殖が活性化する重要部位であることを示しています。今後、喉頭の微小環境変化を解明することで、二次性細菌性肺炎の早期予防や新たな局所介入法の開発につながると期待されます。

 

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

グアニル酸キナーゼ1は、イノシン三リン酸分解酵素が欠損した哺乳動物細胞のRNAにおいて、イノシンが蓄積する原因となる酵素である。

論文タイトル
Guanylate kinase 1 is an enzyme responsible for inosine accumulation in RNA of mammalian cells deficient in inosine triphosphatase
論文タイトル(訳)
グアニル酸キナーゼ1は、イノシン三リン酸分解酵素が欠損した哺乳動物細胞のRNAにおいて、イノシンが蓄積する原因となる酵素である。
DOI
10.1073/pnas.2606968123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (31) e2606968123
著者名(敬称略)
土本 大介 他
所属
九州大学 生体防御医学研究所 研究推進ユニット 先端研究開発室
著者からのひと言
 稀少な難病である発達性およびてんかん性脳症35の治療を目指して原因物質ITPの生体内生成経路の解明を試み、成功しました。治療標的となりそうなGUK1は、強く抑制されると別の疾患の原因となることが最近報告されたことからまだまだ治療法開発までは遠いようですが、今後も研究を続けて治療に結び付けたいと考えています。

抄訳

 イノシン三リン酸(ITP)分解酵素欠損は、発達性およびてんかん性脳症35 (DEE35)の原因となる。しかし原因物質ITPの生体内生成経路は不明であった。我々はITP分解酵素欠損培養細胞と組換えタンパク質を用いた研究により、グアニル酸キナーゼ1(GUK1)が細胞中に存在しているイノシン一リン酸を間違ってリン酸化し、生じたイノシン二リン酸が更にリン酸化されてITPが生成されることを明らかにした。続いてDEE35モデルマウスでGUK1を半分欠損させると寿命が延長し、大脳皮質におけるRNA中のイノシンが減少した。RNA中イノシンはRNA合成中にITPが取り込まれたと考えられる。本研究の結果は、ほ乳動物における主なITP生成経路がGUK1に依存したイノシン一リン酸からの二段階リン酸化であることを示している。

論文掲載ページへ

2026/08/07

液-液相分離(LLPS)依存性および非依存性機構によるC型肝炎ウイルス感染細胞における脂肪滴関連リング構造の形成

論文タイトル
Assembly of lipid droplet-associated ring structures in hepatitis C virus-infected cells via liquid–liquid phase separation (LLPS) and non-LLPS mechanisms
論文タイトル(訳)
液-液相分離(LLPS)依存性および非依存性機構によるC型肝炎ウイルス感染細胞における脂肪滴関連リング構造の形成
DOI
10.1128/jvi.00780-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
J Virol 100:e00780-26
著者名(敬称略)
Mengyu Jiao、紺野 在、鈴木 哲朗 他
所属
浜松医科大学医学部 微生物学・免疫学講座

抄訳

 C型肝炎ウイルス(HCV)は感染性粒子形成の場として脂肪滴(lipid droplet: LD)を利用することが知られているが、粒子形成に関与する因子がLDへ集積する分子機構は十分解明されていなかった。本研究では、HCV感染後にウイルスカプシド(Core)タンパク質がLDへ局在した後、ストレス顆粒(stress granule: SG)の中核的な分子スイッチとして働くRNA結合因子G3BP1が時間差をもってLD周囲へ集積することを見いだした。液-液相分離(liquid–liquid phase separation: LLPS)阻害剤処理により、G3BP1およびG3BP1とともにストレス顆粒形成を担うTIA-1のLD局在は消失した一方、HCVタンパク質CoreおよびNS5Aの局在には影響を認めなかった。また、Core単独ではG3BP1をLDへ誘導できないが、HCV RNAとの共発現によりG3BP1がLD周囲へ集積することを明らかにした。
以上より、HCV感染細胞ではLD上のCoreに新生ウイルスRNAが加わることでLLPS依存的な生体分子凝縮体が形成され、G3BP1をはじめとするSG関連因子がLDへ集積する新たな機構を提唱する。本研究はHCV粒子形成およびゲノムパッケージング機構の理解を深め、新たな抗ウイルス戦略の基盤となる知見を提供する。

 

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

高精度な古代人ゲノムが明らかにする日本列島の先史集団史とでんぷん食への適応進化

論文タイトル
High-coverage ancient genomes reveal divergent population histories and prehistoric starch-related genetic variation in Japan
論文タイトル(訳)
高精度な古代人ゲノムが明らかにする日本列島の先史集団史とでんぷん食への適応進化
DOI
10.1073/pnas.2606162123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2606162123
著者名(敬称略)
石谷 孔司 他
所属
金沢大学 サピエンス進化医学研究センター
著者からのひと言
本研究では、考古学・人類学・進化学の知見を高精度な古代人ゲノム解析によって結びつけ、日本列島における人々の移動、集団の変化、食への適応進化の可能性を総合的に議論しています。今回得られた縄文人と弥生人の高精度ゲノムは、祖先集団の起源や近隣集団との関係性、日本本土における先史時代の集団史にさまざまな知見をもたらしました。日本列島の古代人ゲノム研究における重要なマイルストーンになったと考えています。

抄訳

本研究では、群馬県・居家以岩陰遺跡から出土した縄文時代早期の人骨と、山口県・土井ヶ浜遺跡から出土した弥生時代中期の人骨から、従来の水準を大きく上回る高精度な全ゲノム配列が構築された。これにより、低被覆度データでは困難だった人口動態の推定や遺伝子コピー数の解析が可能となった。解析の結果、両者の祖先集団はいずれも最終氷期に集団サイズを減少させたが、その後、縄文人の祖先集団は比較的安定した規模を維持した一方、弥生人の祖先集団は大陸側で段階的に増加し、新石器時代以降の複数の大陸系集団との交流を経て形成された可能性が示された。また、両個体は唾液アミラーゼ遺伝子のコピー数が比較的高く、稲作が広く普及する以前の縄文時代にも、でんぷん質の植物資源利用と関連しうる遺伝的多様性が存在したことが示唆された。本研究によって先史時代の集団移動や生業の変化が日本列島の人々の遺伝的特徴をどのように形作ってきたのかが明らかになった。

論文掲載ページへ

2026/08/06

カンピロバクターの相変異型安定化ライブラリーを用いた相変異遺伝子機能の包括的解析

論文タイトル
Genome-scale dissection of phase-variable gene function in Campylobacter jejuni using a stabilized phasotype library.
論文タイトル(訳)
カンピロバクターの相変異型安定化ライブラリーを用いた相変異遺伝子機能の包括的解析
DOI
10.1128/msphere.00064-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere 11:e00064-26
著者名(敬称略)
山本 章治 他
所属
国立感染症研究所 細菌第一部
著者からのひと言
カンピロバクターが相変異を介して免疫や宿主環境に適応する仕組みを、再現性高く解析できる独自技術「PV-GenShift」を確立した。多様な相変異型を安定に維持し、宿主環境で選択される相変異型を捉えることで、これまで困難であった相変異と病原性・宿主適応の関係を体系的に解明できる。本技術は、病原性の理解を深めるとともに、感染予防・診断・治療につながる新たな標的探索を加速する。

抄訳

食中毒の主要起因菌であるカンピロバクターは、単純反復配列の伸縮によって表層構造関連遺伝子の発現をON/OFFに切り替える「相変異」を起こす。相変異は免疫回避や宿主環境への適応に関与すると考えられているが、多数の相変異遺伝子のON/OFF組合せ(相変異型)が病原性や宿主適応に及ぼす影響については解明されていない。本菌には18~36個の相変異遺伝子が存在し、その組合せは理論上218~236通りに及ぶ。そこで本研究では、相変異遺伝子の発現状態を固定した多様かつ安定な相変異型ライブラリーを構築し、その動態を網羅的に追跡できる独自技術「PV-GenShift」を確立した。本技術を用いた選択実験から、ヒト血清やマウス腸管では特定の相変異型が選択される一方、ニワトリでは個体ごとに異なる相変異型が優勢となることを明らかにした。これらの成果は、相変異が病原性や宿主適応に重要な役割を果たすことを示すとともに、ワクチンや診断・治療法の開発への貢献が期待される。

論文掲載ページへ

2026/08/06

Bacillus subtilis DB9011が産生するC17 Fengycin Bの腸管毒素原性大腸菌抑制における役割

論文タイトル
Role of C17 fengycin B from Bacillus subtilis DB9011 in enterotoxigenic Escherichia coli inhibition
論文タイトル(訳)
Bacillus subtilis DB9011が産生するC17 Fengycin Bの腸管毒素原性大腸菌抑制における役割
DOI
10.1128/aem.00276-26
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Vol. 92, No. 7
著者名(敬称略)
犬童 優樹、西山 啓太、北澤 春樹 他
所属
東北大学大学院農学研究科動物食品機能学分野
著者からのひと言
 薬剤耐性の拡大を背景に、養豚現場では抗菌薬に代わるETEC制御法の開発が求められています。本論文は、Bacillus subtilis DB9011の培養上清を、抗菌活性を指標として分画し、C17 Fengycin Bに富む画分がETECの増殖を濃度依存的に抑制すること、さらにコリスチンとの併用によりその抗菌効果が増強されることを示しました。プロバイオティクス候補株の抗菌機構を代謝産物レベルで明らかにし、子豚の離乳後下痢に対する新たな制御戦略の構築につながる知見を提供しました。

抄訳

 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は離乳後の子豚における下痢の主要な原因であり、薬剤耐性の拡大に伴い、抗菌薬に代わる防除法の開発が求められている。本研究では、Bacillus subtilis DB9011が産生する細胞外代謝産物のうち、抗ETEC活性に関与する物質を探索した。DB9011の培養上清は、ETECおよびSalmonella Typhimuriumなどの腸管病原細菌に対して強い増殖抑制作用を示した。培養上清を生物活性に基づいて分画し、液体クロマトグラフィー四重極飛行時間型質量分析に供した。その結果、増殖抑制画分に濃縮され、抑制活性を示さない基準株NBRC13719ᵀでは検出されない主要代謝産物として、C17 Fengycin Bが同定された。C17 Fengycin Bを含む画分はETECに対して濃度依存的な抗菌活性を示し、コリスチンとの併用で増殖抑制作用が増強された。一方、培養上清中の濃度に相当する条件では完全な増殖抑制には至らず、他の代謝産物の関与も示唆された。以上より、C17 Fengycin Bは、DB9011によるETECの増殖抑制に大きく寄与する主要な代謝産物であると考えられた。

論文掲載ページへ

2026/08/06

SGLT2阻害薬が人の老化に及ぼす“思わぬ力”

論文タイトル
Dissecting out the unexpected effects of SGLT2 inhibitors on human aging.
論文タイトル(訳)
SGLT2阻害薬が人の老化に及ぼす“思わぬ力”
DOI
10.1210/clinem/dgag207
ジャーナル名
The Journal of clinical endocrinology and metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 8, August 2026, Pages 2154–2165
著者名(敬称略)
勝海 悟郎 南野 徹
所属
順天堂大学医学部内科学教室 循環器内科学講座
著者からのひと言

抄訳

SGLT2阻害薬は腎近位尿細管でのグルコース再吸収を抑制し、尿中排泄を促進することで血糖を低下させる糖尿病治療薬として開発された。だが、大規模試験により心血管・腎イベントを減少させることが示され、心不全や慢性腎臓病に対しても心腎保護効果を示すことが確立された。近年、本剤が潜在的に老化抑制に寄与する可能性が注目されている。カロリー制限やケトジェニック状態に類似した代謝適応を誘導し、炎症抑制、ミトコンドリア機能改善、細胞老化への耐性向上をもたらす。さらには前臨床試験において老化細胞負荷の減少やSASP調節作用、そして寿命延長や加齢関連機能低下の改善が報告されており、本剤のセノセラピーあるいはセノリティックとしての潜在性が期待されている。本レビューは、SGLT2阻害薬が心腎代謝疾患のみならず老化に作用しうる分子機序と生理的効果を考察し、抗老化薬・健康寿命延伸薬としての新たな展望を論じる。

論文掲載ページへ

2026/08/05

プロヒビチンを標的とする宿主指向型抗ウイルス戦略:Mel56によるインフルエンザAウイルスおよびSARS-CoV-2感染抑制とその作用機序

論文タイトル
Host-directed antiviral strategy targeting prohibitins: Mel56 suppresses influenza A virus and severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 via modulation of antioxidant pathways and mitochondrial function.
論文タイトル(訳)
プロヒビチンを標的とする宿主指向型抗ウイルス戦略:Mel56によるインフルエンザAウイルスおよびSARS-CoV-2感染抑制とその作用機序
DOI
10.1128/spectrum.03093-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e03093-25
著者名(敬称略)
筆頭著者および連絡著者:庄司 正樹
連絡著者:葛原 隆
所属
徳島文理大学 薬学部 生化学講座
著者からのひと言

抄訳

インフルエンザAウイルス(IAV)およびSARS-CoV-2に対する新たな宿主標的型抗ウイルス戦略として、プロヒビチン(PHB)結合性化合物Mel56の抗ウイルス活性を評価した。Mel56はIAV感染MDCK細胞およびA549細胞において細胞生存率を改善し、ウイルスタンパク質およびウイルス遺伝子の発現を有意に抑制した。さらに、Mel56はミトコンドリアATP産生および電子伝達を阻害してミトコンドリア機能を制御するとともに、NRF2を活性化して抗酸化応答関連遺伝子の発現を誘導することが明らかとなった。一方、ヒトiPS細胞由来肺オルガノイドにおいても抗SARS-CoV-2活性が認められたが、NRF2標的遺伝子の誘導は観察されなかった。以上より、Mel56はPHBを標的とする広域抗ウイルス化合物であり、新たな宿主標的型抗ウイルス薬開発の有望なシード候補として考えられる。

論文掲載ページへ

2026/08/05

新規抗真菌化合物NPD2560はRho1を中心とするシグナルネットワークを攪乱し、細胞壁ストレス応答を誘導する

論文タイトル
The novel antifungal agent NPD2560 perturbs the Rho1-centered signaling network to induce a cell wall integrity response.
論文タイトル(訳)
新規抗真菌化合物NPD2560はRho1を中心とするシグナルネットワークを攪乱し、細胞壁ストレス応答を誘導する
DOI
10.1128/spectrum.03630-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e03630-25
著者名(敬称略)
劉 薇、大矢 禎一 他
所属
長岡技術科学大学 技術科学イノベーション系
著者からのひと言
抗真菌剤の作用機序を明らかにすることは、薬剤開発だけでなく、真菌細胞の仕組みを理解する上でも重要です。この研究では、出芽酵母の優れた遺伝学的解析系を活用し、新規化合物NPD2560がRho1を中心とする細胞壁制御ネットワークを攪乱することを明らかにしました。既存のグルカン合成阻害剤とは異なる作用を示す点にも注目していただければと思います。

抄訳

真菌感染症の増加や薬剤耐性の出現により、新しい作用機序をもつ抗真菌剤の開発が求められています。本研究では、クマリン誘導体NPD2560が、治療の難しい病原真菌Candida kruseiに対して殺菌作用を示すことを見いだしました。出芽酵母を用いた網羅的な化学遺伝学解析から、NPD2560の作用には、細胞壁形成を制御する低分子量GTPase Rho1を中心としたネットワークが重要であることが明らかになりました。NPD2560処理により細胞壁のβ-(1,6)-グルカンが減少し、細胞壁ストレス応答が活性化されるとともに、キチンの蓄積を含む代償的な細胞壁再構築が誘導されました。その作用は、β-(1,3)-グルカン合成を標的とする既存の抗真菌剤や、既知のβ-(1,6)-グルカン合成阻害剤とは異なっており、本化合物は真菌細胞壁の制御機構を解析する新たな化学プローブとして、また新規抗真菌剤開発の候補化合物として期待されます。

論文掲載ページへ

2026/08/04

腸炎ビブリオTsrAは核様体タンパク質H-NSの共調節因子としてⅢ型分泌装置2の発現を制御する

論文タイトル
TsrA modulates type III secretion system 2 expression as a co-regulator of H-NS in Vibrio parahaemolyticus.
論文タイトル(訳)
腸炎ビブリオTsrAは核様体タンパク質H-NSの共調節因子としてⅢ型分泌装置2の発現を制御する
DOI
10.1128/jb.00556-25
ジャーナル名
Journal of bacteriology
巻号
J Bacteriol 208:e00556-25
著者名(敬称略)
Tan Paramita Wibowo Sutanto, Andre Pratama, 松田 重輝 他
所属
大阪大学 微生物病研究所 細菌感染分野
著者からのひと言
本論文では、腸炎ビブリオの病原性遺伝子発現に関わる因子として、ビブリオ属細菌に保存されるTsrAというタンパク質に着目しました。TsrAが核様体タンパク質H-NSと相互作用することを初めて実験的に示し、ビブリオ属細菌ではこれまで知られていなかったH-NS共調節因子として機能することを明らかにしました。

抄訳

核様体タンパク質は細菌の病原性遺伝子発現制御に重要な役割を果たしている。代表的な核様体タンパク質であるH-NSは、しばしば共調節因子と協調して機能する。本研究では、ビブリオ属細菌に保存される小型タンパク質TsrAが、主要な食中毒原因細菌である腸炎ビブリオの病原因子であるⅢ型分泌装置2(T3SS2)の遺伝子発現を負に制御することを明らかにした。TsrAはC末端領域を介してH-NSと直接相互作用し、T3SS2遺伝子群のマスター転写因子であるVtrBの発現を転写レベルで抑制していた。さらに、TsrAのC末端領域の変異解析により、その調節活性に重要なアミノ酸残基を明らかにした。以上より、TsrAがH-NSの共調節因子として機能することを初めて明らかにするとともに、腸炎ビブリオにおける病原性遺伝子発現制御機構に関する新たな知見を提供した。

論文掲載ページへ

2026/08/04

原子間力顕微鏡と弾性シェル理論による接着動物細胞の硬さと内部圧力の同時評価

論文タイトル
Simultaneous quantification of cell elasticity and internal pressure in adherent animal cells
論文タイトル(訳)
原子間力顕微鏡と弾性シェル理論による接着動物細胞の硬さと内部圧力の同時評価
DOI
10.1016/j.bpj.2026.06.009
ジャーナル名
Biophysical Journal
巻号
Biophysical Journal Volume 125, Issue 14 p3653-3662
著者名(敬称略)
Emi Kurnia Sari、釣 優香、細川 陽一郎 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究領域生体プロセス工学研究室
著者からのひと言
動物細胞のミクロな構造に、建築学のマクロな理論を適用し、細胞の力学を明らかにする奇抜な発想の論文です。

抄訳

本研究では、複数の動物細胞について、細胞の形状と力学応答を詳細に解析しました。その結果、動物細胞では、細胞膜とその内側を支える細胞骨格が一体となり、薄い殻(シェル)のように細胞全体を支える構造を形成していることを明らかにしました。この構造に、建築学において薄い屋根やタンクの力学解析に用いられるシェル理論を適用することで、これまで区別して評価することが難しかった「細胞膜とその裏打ち構造を合わせた表層部分の硬さ」と「細胞内部から細胞を押し広げる力(内部圧力)」を同時に評価することに成功しました。これにより、細胞の力学特性を単なる硬さとして捉えるだけでなく、その背景にある力学状態を考えることが可能になりました。今後、より多様な細胞種に本手法を適用することで、細胞骨格構造と力学特性との関係の解明が進むことが期待されます。

論文掲載ページへ

2026/08/03

成人型びまん性神経膠腫の1H-MR spectroscopyによるシスタチオニンの定量的評価

論文タイトル
The Utility of Cystathionine Assessment Using Proton MRS for the Preoperative Differential Diagnosis of Adult-Type Diffuse Gliomas.
論文タイトル(訳)
成人型びまん性神経膠腫の1H-MR spectroscopyによるシスタチオニンの定量的評価
DOI
10.3174/ajnr.A9192
ジャーナル名
AJNR. American journal of neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology July 2026, 47 (7) 1869-1878
著者名(敬称略)
菊地 一史
所属
九州大学病院 放射線科
著者からのひと言

抄訳

【目的/背景】
本研究の目的は、シスタチオニンの定量的評価が成人型びまん性神経膠腫の術前鑑別に有用か検討することである。
【方法】
2019年から2025年に当院で手術前にMRIおよび1H-MRSを施行し、病理学的に成人型びまん性神経膠腫と診断された83例を後方視的に選択し、乏突起膠腫25例、星細胞腫28例、膠芽腫30例が対象となった。LCModelを用いてシスタチオニン濃度を定量し、群間比較にはボンフェロニ補正したunpaired t-test、3群全体の統計解析にKruskal–Wallis検定を用い、ROC解析により診断能を評価した。
【結果】
星細胞腫 (0.437±0.403 mM) と比較して、乏突起膠腫 (1.040±0.908 mM) ではシスタチオニン濃度が有意に高値 (P=0.0025) であった。膠芽腫 (0.538±0.796) も星細胞腫より高値を示したが、有意差はなかった。乏突起膠腫と膠芽腫の間にも有意差は認めなかった。ROC解析では、乏突起膠腫と星細胞腫の鑑別において中等度の診断能を示した (AUC 0.69、感度56%、特異度86%)。
【考察】
シスタチオニンは乏突起膠腫において、特異的に高値を示す代謝マーカーとして有用であるが、一部の膠芽腫においても増加とする報告がある。本研究でも同様の傾向が確認された。膠芽腫では壊死や微小出血によるコンタミネーションや代謝経路の変化が影響する可能性が考えられる。したがって、シスタチオニンは、成人びまん性神経膠腫において補助的な診断ツールと考えられた。
【結論】
1H-MRSによるシスタチオニン評価は、乏突起膠腫および膠芽腫と星細胞腫の鑑別に有用であり、術前診断の精度向上に寄与し得る。ただし乏突起膠腫と膠芽腫の区別には限界があり、臨床的特徴や他の画像所見と併用することが望ましい。

論文掲載ページへ

2026/08/03

日本人健康被験者におけるナキュバクタムとβ-ラクタム系抗菌薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、またはピペラシリン)との薬物相互作用の評価

論文タイトル
Evaluation of drug-drug interaction between nacubactam and β-lactam antibiotic (cefepime, aztreonam, meropenem, or piperacillin) in Japanese healthy participants.
論文タイトル(訳)
日本人健康被験者におけるナキュバクタムとβ-ラクタム系抗菌薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、またはピペラシリン)との薬物相互作用の評価
DOI
10.1128/aac.00282-26
ジャーナル名
Antimicrobial agents and chemotherapy
巻号
Antimicrob Agents Chemother 70:e00282-26
著者名(敬称略)
森田 順
所属
Meiji Seika ファルマ株式会社
著者からのひと言

抄訳

日本人健康成人を対象に、ナキュバクタムと各併用薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、ピペラシリン)の薬物相互作用を評価する単施設、非盲検、3期クロスオーバー単回投与試験を実施した。各期でナキュバクタムと各併用薬を60分静脈内注射し、Cmax、AUC0–t、AUC0–∞の幾何平均比と90%信頼区間で相互作用を評価した。セフェピム及びアズトレオナム併用時を含め、いずれの併用薬でもナキュバクタムおよび各併用薬の曝露は単独投与と同等で、幾何平均比の90%信頼区間はすべて0.80–1.25内で尿中排泄も同等であった。ナキュバクタム代謝物(M1/M2)はナキュバクタムに比べ低値で、併用による変動は小さかった。各β-ラクタム系抗菌薬との併用時においても安全性・忍容性は良好で、新たな安全性上の懸念は認められなかった。以上より、セフェピムおよびアズトレオナムを含めいずれのβ-ラクタム系抗菌薬との併用時に薬物相互作用は認められなかった。

論文掲載ページへ

2026/08/03

エゾヤチネズミを宿主とするオルソハンタウイルスであるHokkaidoウイルスの自然環境下における感染維持機構

論文タイトル
Maintenance of Hokkaido virus, a genotype of Orthohantavirus puumalaense, in the rodent host Myodes rufocanus bedfordiae under natural conditions
論文タイトル(訳)
エゾヤチネズミを宿主とするオルソハンタウイルスであるHokkaidoウイルスの自然環境下における感染維持機構
DOI
10.1128/jvi.00321-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Vol. 100, No. 7
著者名(敬称略)
Thi Ngoc Thuy Duong 苅和 宏明 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院衛生学分野 公衆衛生学教室
著者からのひと言
 オルソハンタウイルスは、宿主となるげっ歯類から人に感染してハンタウイルス感染症を引き起こす。オルソハンタウイルスに属するHokkaido virus(HOKV)は、宿主のエゾヤチネズミにおいて、急性感染期と持続感染期のいずれの時期にも重大な病理学的変化を引き起こすことなく、多臓器にウイルスが分布し、唾液、尿、および糞便から感染性ウイルスが排出されることが明らかになった。これらの知見は、宿主におけるオルソハンタウイルスの持続感染、および伝播機序に関する理解を深めるものとして重要である。

抄訳

自然条件下におけるオルソハンタウイルスの維持および伝播のメカニズムは依然として明らかになっていない。そこで本研究では、オルソハンタウイルスの一つであるHokkaido virus(HOKV)の自然宿主となっているエゾヤチネズミを2022年から2025年にかけて北海道当別町の森林において捕獲し、HOKVの宿主体内での分布と排出について調べた。捕獲された199匹のげっ歯類のうち、23匹がHOKVに感染していた。これらの個体についてウイルスRNAと抗体の保有状況を調べたところ、5個体は急性感染期であり、18個体は持続感染期あると考えられた。Realtime PCRおよび免疫組織化学染色により、HOKVは感染の急性感染期と持続感染期のいずれの個体においても、肺、腎臓、脾臓から高レベルのウイルスRNAおよび抗原が一貫して検出された。また、感染個体の口腔スワブ、尿、糞便からも感染性のあるHOKVが回収された。これらの知見は、オルソハンタウイルスが宿主の臓器内で高いウイルス量を維持して持続感染し、感染期間を通じて排出され得ることを示している。

論文掲載ページへ