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日本人論文紹介:詳細

2026/05/20

膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している

論文タイトル
Transmembrane ROOM proteins ensure rooms for germ cells by maintaining intercellular bridges
論文タイトル(訳)
膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している
DOI
10.1073/pnas.2522264123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.19 e2522264123
著者名(敬称略)
杉浦健太 佐藤健 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
著者からのひと言
卵母細胞が正常に形成されるためには各生殖細胞に雌性核が1つずつ含まれた”個室“となる必要がありますが、この仕組みはあまりわかっていません。細胞間橋や細胞分裂溝に局在してアクトミオシン系と協調して働く因子のなかでも膜貫通タンパク質はあまり知られておらず、ROOMタンパク質の解析により得られる知見は生殖細胞、卵母細胞の形成だけではなく、その他の細胞の分裂や細胞間橋形成等の理解にも役立つ可能性があります。

抄訳

多くの有性生殖を行う動物において、生殖細胞は不完全な細胞分裂の結果として合胞体を形成し、くびれた細胞間橋を介して細胞質成分を共有しています。この合胞体の状態が維持できないと、将来の卵母細胞の形成に異常が生じ、不妊となることが知られています。しかしながら、これらの過程を制御する分子メカニズムはいまだ不明な点が多く残されています。本研究では、線虫(Caenorhabditis elegans)の成体生殖腺の合胞体において、生殖細胞の細胞区画維持に不可欠な構成要素として、パラログである膜貫通タンパク質ROOM-1およびROOM-2を同定しました。これらのタンパク質は生殖細胞と細胞質コアを繋ぐ細胞間橋においてF-アクチンと共に特異的に局在しており、両者を欠損すると生殖腺内における個々の生殖細胞の区画化が不全となり、卵母細胞が形成されず子孫を残せないことが判明しました。また、ROOMタンパク質は細胞間橋を構成するアクトミオシン制御因子と共局在し、これらの局在は相互依存していることが明らかとなりました。以上のことから、ROOMタンパク質は、アクトミオシン複合体と協調して生殖細胞-細胞質コア間の細胞間橋を安定化し不完全な細胞分裂を維持することで、生殖細胞のための「Room」を確保していることが明らかとなりました。

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2026/05/18

潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序

論文タイトル
Immunological mechanism behind reactivated cryptococcosis in persistently infected mice following FTY720 treatment
論文タイトル(訳)
潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序
DOI
10.1128/iai.00612-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
𠮷田  美智子 他
所属
東北大学病院 総合感染症科
著者からのひと言
既存モデルでは困難であった,有莢膜株を用いた臨床に即した新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した点が本研究の強みである.本モデルは再活性化解析にも応用可能であり,本研究で構築した新規マウスモデルを用いたさらなる研究により,潜在性クリプトコックス感染の新規診断法,予防戦略,さらには免疫応答を標的とした補助治療の開発につながる可能性がある.

抄訳

クリプトコックス症は,Cryptococcus neoformans species complex(CNSC)による侵襲性真菌感染症であり,Th1免疫応答による肉芽腫形成が感染制御に重要である.CNSCは初感染後に潜在性感染状態へ移行し,免疫制御が破綻すると再活性化すると考えられるが,その機序は十分解明されていない.本研究では,CNSCの主要T細胞抗原であるChitin deacetylase 2(Cda2)特異的CD4陽性T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(CnT-Ⅱマウス)を用いて,肺肉芽腫形成を伴う新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した.本モデルに多発性硬化症治療薬であるFingolimod(FTY720)を投与したところ,肺内IFN-γおよびIL-12レベルの低下に伴い肉芽腫構造の破綻を認め,その後,肺内生真菌数が増加し,内因性再燃を示唆する変化を認めた.また,IFN-γ産生CD4陽性エフェクターメモリーT細胞(Tem)が著減していた.以上より,潜在性感染状態の維持にはCD4陽性Tem細胞が重要である可能性が示され,FTY720はCD4陽性Tem細胞の減少を介してTh1免疫応答を障害し,内因性再燃を促進すると考えられた.

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2026/05/18

チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる

論文タイトル
Tubulin acetylation deficiency promotes axonemal turnover and increases cytoplasmic microtubules
論文タイトル(訳)
チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる
DOI
10.1091/mbc.E26-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 6
著者名(敬称略)
久保 智広 他
所属
山梨大学大学院 総合研究部 医学域 解剖学講座構造生物学教室
著者からのひと言
チューブリン翻訳後修飾の中でも、アセチル化は古くから最も研究が進められてきた修飾の一つです。私たちは、微小管研究に適した単細胞緑藻類クラミドモナスを用いて、チューブリンアセチル化が完全に欠損した株を作製しました。その結果、鞭毛および細胞質性微小管の動態に大きな異常が生じることを見出しました。このような現象はこれまで報告されておらず、単細胞モデルを用いた研究の有用性を示す結果であると考えています。

抄訳

微小管を構成するチューブリンは、多様な翻訳後修飾を受ける。本研究では、鞭毛・繊毛研究のモデル生物である単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、チューブリンアセチル化が細胞全体の微小管動態に果たす役割を追究した。クラミドモナスでは、チューブリンアセチル化は鞭毛軸糸およびルートレット微小管と呼ばれる一部の細胞質性微小管に観察される。αチューブリンアセチル基転移酵素1 (αTAT1)をゲノム編集によりノックアウトした変異株atat1-1を樹立したところ、atat1-1ではチューブリンアセチル化が完全に消失していた。ダイオアリオンアッセイによる解析から、atat1-1では軸糸のターンオーバー頻度が著しく増加することが明らかになった。加えて、興味深いことに、atat1-1ではルートレット微小管だけでなく全ての細胞質性微小管の量が有意に増加していた。これらの結果は、チューブリンアセチル化が軸糸微小管の安定性維持に関与するとともに、細胞全体の微小管の動態制御を担っていることを示唆するものである。

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2026/05/15

植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される

論文タイトル
Two-step, long-distance nuclear migration guided by distinct actin networks prior to plant root hair formation
論文タイトル(訳)
植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag141
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 5, May 2026, pgag141,
著者名(敬称略)
高塚 大知 他
所属
国立大学法人奈良国立大学機構・奈良女子大学・研究院自然科学系
著者からのひと言
植物細胞は一般に動物細胞よりも巨大化する能力が高いことが広く知られている。しかし、そのように巨大化した植物細胞内で、空間的な位置情報を精確に統御し、適切な細胞内構造を形成する仕組みについては、殆ど理解が進んでいない。本研究は、植物細胞内において、核が多段階の過程を経て長距離移動することを示した初めての例であり、植物細胞における細胞内構造制御の新たな原理を明らかにした独自性の高い研究である。

抄訳

植物細胞の特徴の一つは、細胞体積を劇的に増大させる能力である。そのような巨大化した細胞内で、必要に応じて核が最適な位置へ移動することは細胞が機能を果たすのに不可欠である。しかし、核が巨大な植物細胞内を精確に、長距離移動する仕組みは未解明であった。本研究では、根の表皮細胞から伸びる管状構造である根毛が形成される前に、核が空間的に厳密に規定された目的地まで、約50 µmの長距離を精確に移動すること、そしてその移動が二段階で進行し、それぞれが異なるアクチンアイソフォームから構成される別々のF-actinネットワークによって誘導されることを示した。さらに、目的地で活性化される低分子量GTPaseシグナルがF-actin形成を促進することを発見した。低分子量GTPaseシグナル依存的なF-actin形成は、第二段階の核移動には必須である一方、第一段階には必要ないことも見出した。これらの結果は、巨大な植物細胞内で核の精確な移動を保証する、複雑で段階的な仕組みの存在を示すものである。

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2026/05/14

一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布

論文タイトル
Diversity and geographical distribution of potential carbon monoxide oxidizers using molybdenum-containing enzymes in the ocean
論文タイトル(訳)
一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布
DOI
10.1128/msphere.00062-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
今浦 由就 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

海洋では化学反応により一酸化炭素(CO)が生じ、その90%は原核生物(CO酸化菌)に消費されると推定されている。CO酸化菌は、鍵酵素のCOデヒドロゲナーゼ(CODH)を用い、COをエネルギー源として利用する。CODH遺伝子を持つ原核生物(潜在的CO酸化菌)は海洋において少なくとも8つの原核生物門に属し、群集の10–20%を占めると考えられてきたが、その多様性は過大評価されていた。本研究では過大評価を除いた方法で潜在的CO酸化菌を探索した。その結果、9門233種(うち207種は新たに潜在的CO酸化菌と同定)が検出され、原核生物の0.1–6.7%が潜在的CO酸化菌であると推定された。233種のうち優占11種は20種の原核生物と共起し、共起の相手は種ごとに異なった。11種はCODH以外に共通の遺伝子を持たず、潜在的CO酸化菌-原核生物の相互作用には共通の分子的基盤が存在しないと示唆された。

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2026/05/13

進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ

論文タイトル
Evolution-guided prioritization identifies a tissue-specific phosphorylation switch on herpes simplex virus 1 UL7 regulating viral replication and pathogenicity
論文タイトル(訳)
進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ
DOI
10.1128/jvi.00200-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
オミクス解析の進展により、生物学は“データ不足”から“候補過剰”の時代へ移行しつつある。本研究は、Simplexvirus属における進化的保存性を利用することで、膨大なHSV-1リン酸化情報から機能的重要性の高い修飾部位を効率的に抽出できる可能性を示した。進化情報とリン酸化プロテオーム情報を統合する本アプローチは、ビッグデータ時代における効率的な生命機能探索戦略として発展することが期待される。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)タンパク質には多数のリン酸化部位が同定されているが、その大部分の機能的意義は不明なままである。本研究では、リン酸化プロテオーム情報とSimplexvirus属におけるアミノ酸保存性を統合した抽出戦略を構築し、機能的重要性が高いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、UL7 Tyr-89に着目し解析を行ったところ、リン酸化模倣変異はUL7欠損変異と類似して、ウイルス粒子形成、培養細胞での増殖、さらにマウス中枢神経系および眼における病原性を低下させた。一方、非リン酸化変異は培養細胞や眼では大きな影響を示さず、中枢神経系でのみHSV-1増殖と病原性を低下させた。これらの知見より、UL7 Tyr-89リン酸化は組織特異的にUL7機能を微調整する抑制性スイッチとして働くことが示唆された。本研究で採用した進化情報に基づく抽出戦略は、HSV-1タンパク質における機能的リン酸化部位の効率的な同定に寄与することが期待される。

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2026/05/12

ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する

論文タイトル
A phage-derived reconfigurable effector associated with an actinobacterial contractile nanomachine tailors bacterial responses to competition
論文タイトル(訳)
ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する
DOI
10.1128/jb.00532-25
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Ahead of Print
著者名(敬称略)
永久保 利紀 他
所属
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系/高等研究院/MiCS
ライデン大学 客員研究員
著者からのひと言
この論文では、何らかのきっかけで細菌のゲノムに残された「ウイルスの残骸」がその細菌の役に立っていることを示しています。「ウイルスの残骸」はその機能を容易に改変可能なタンパク質のモジュール構造に落とし込み、細菌が外部から受ける選択圧への柔軟な対応を可能にすることで、自らを保持する細菌の繁栄に貢献しその存在を維持している可能性があります。その機能中枢が、ウイルスの感染機構に由来していると思われる点も注目されます。

抄訳

収縮性注入機構(CISs)は、ファージ尾部から派生したナノマシンであり、細菌を中心とした原核生物に広く分布している。CISsはエフェクターと呼ばれる特定のタンパク質を格納し、様々な生物学的プロセスを仲介するエフェクターを射出する。本研究では、ファージの感染機構の一部から派生した新規エフェクター群の発見について報告する。CISsが最も高度に保存されている細菌群である放線菌のモデル種Streptomyces lividansにおいて、細胞内CISの一種であるSLPのエフェクターSle1が同定された。Sle1はSLPに格納され、S. lividansの細胞膜関連プロテオーム画分の割合を増加させ、最終的に細菌間競争に対する本菌の適応を促す。Sle1ホモログは放線菌において広く分布している。以上の結果は、ファージの感染機構が細菌によって環境適応を補助する因子として取り込まれてきたことを示唆している。

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2026/05/12

LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する

論文タイトル
LRBA organizes distinct vesicular trafficking systems in distal nephron segments for water and sodium conservation
論文タイトル(訳)
LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する
DOI
10.1073/pnas.2525505123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2525505123
著者名(敬称略)
長岡 可楠子 安藤 史顕 他
所属
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野
著者からのひと言
LRBA欠損症は、これまで主に「免疫の病気」と考えられてきましたが、本研究により、LRBAが腎臓にも発現し、水と塩の保持を担うことが明らかになりました。患者レジストリ解析とモデルマウスの解析を統合することで、腎臓の体液恒常性維持機構を新たに解明した点が本研究の特徴です。本成果は、LRBA欠損症に「尿濃縮障害」という新たな病態概念を加えるものであり、脱水症や電解質異常への早期治療介入の必要性を示しています。

抄訳

LRBA欠損症は、慢性的な下痢や繰り返す感染症を特徴とする先天性免疫異常症に分類される疾患として知られていますが、免疫系以外の表現型については十分に解明されていませんでした。本研究では、LRBA欠損症患者の国際共同レジストリ解析、LRBA欠損症モデルマウスの病態解析、腎臓膜タンパクの網羅的解析を組み合わせることで、LRBA欠損症において尿濃縮力障害、多尿、電解質異常が生じることを明らかにしました。その機序として、LRBAが腎臓集合管ではAQP2・AQP4水チャネルの小胞輸送を担い、さらに遠位尿細管ではSPAKキナーゼの小胞輸送を介して塩輸送体の活性制御を担うことを解明しました。LRBAは腎臓において水と塩を協調的に保持する役割を有し、尿中への喪失を防いでいました。LRBA欠損症患者の診療では、脱水症への注意が必要となる一方で、一部の変異では抗利尿薬デスモプレシンが多尿の治療へ有効となる可能性を示せており、遺伝子変異に応じた個別化医療への発展が期待されます。

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2026/05/11

スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定

論文タイトル
Molecular epidemiology of rodent-borne Leptospira spp. in Sri Lanka: identification of novel sequence types
and previously unrecognized reservoir animals
論文タイトル(訳)
スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定
DOI
10.1099/jmm.0.002133
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 3
著者名(敬称略)
Nipun Rathnayake 小泉 信夫 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部-第四室
著者からのひと言
本研究では、スリランカのネズミ類における病原性レプトスピラの遺伝的多様性を明らかにし、ヒト感染に関与する新たな保菌動物を同定した。さらに、これまで未報告であった新規シーケンスタイプも検出され、スリランカにおける多様なレプトスピラ感染環の存在が示された。本研究成果は、レプトスピラ症の感染源解明と制御対策の構築に貢献すると期待される。

抄訳

レプトスピラ症は,全世界で発生する人獣共通感染症であり、特に熱帯地域で流行がみられる。スリランカは本症の流行地域の一つであり、病原体(レプトスピラ属菌)、保菌動物、ならびに環境・職業要因が複雑に関与することで、公衆衛生上の問題となっている。
本研究では、ヒト患者由来レプトスピラとネズミ類が保有するレプトスピラとの遺伝学的関連性を明らかにするため、スリランカのKurunegala、Anuradhapura、Badullaの3地区に生息するネズミ類におけるレプトスピラの遺伝的多様性を調査した。
その結果、257検体中33検体(12.8%)から病原性レプトスピラDNAが検出され、陽性個体はBandicota bengalensisMus boodugaRattus rattus、およびVandeleuria sp.の4種であった。flaB遺伝子配列解析および多遺伝子座配列タイピング(MLST)により、検出されたレプトスピラ種はLeptospira borgpeterseniiL. interrogansL. kirschneri、およびL. licerasiaeであり、2つの新規シーケンスタイプ(ST389およびST392)を含む計5種類のシーケンスタイプが同定された。また、R. rattusがヒト感染に関与するL. interrogans ST49の、M. boodugaL. borgpetersenii ST144およびL. licerasiaeの保菌動物であることが示された。

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2026/05/11

原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例

論文タイトル
Dendriform pulmonary ossification in fibrosing interstitial lung disease with primary biliary cholangitis
論文タイトル(訳)
原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-271743
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 4
著者名(敬称略)
尾形 朋之 他
所属
茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター 呼吸器内科
著者からのひと言
間質性肺疾患に伴う微細結節影では、肉芽腫性疾患のみならず樹枝状肺骨化症(DPO)も重要な鑑別となります。本症例は、骨条件CTでの再評価と経気管支鏡下クライオバイオプシーにより診断に至りました。背景因子として慢性微小誤嚥の関与も示唆され、DPOの病態理解にも示唆を与える症例です。

抄訳

Dendriform pulmonary ossification(DPO)は、肺内に樹枝状の骨形成を認める稀な病態であり、UIPパターンを呈する肺線維症との関連が知られている。今回、無症候性の原発性胆汁性胆管炎(PBC)を有する80歳代男性において、胸部CTで両側下葉の非特異的なすりガラス影と線維化に加え、胸膜下に微小結節の出現を認めたため、PBCに関連した肉芽腫性の間質性肺炎が疑われた。しかし、経気管支鏡下クライオバイオプシー(TBLC)では肉芽腫は認められず、UIPパターンの線維化とともに肺胞内の骨化が確認された。これを受けてCTを骨条件で再評価したところ、微小結節は高吸収の樹枝状構造として描出され、DPOに合致する所見であることが確認された。本報告は、間質性肺炎に付随するDPOの臨床的意義と、TBLCの有用性を示すものである。

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2026/05/07

ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見

論文タイトル
Structural insights into biased signaling at chemokine receptor CCR7
論文タイトル(訳)
ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見
DOI
10.1073/pnas.2533975123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2533975123
著者名(敬称略)
田中 康太郎 堤 尚孝 他
所属
東京科学大学 総合研究院 細胞構造生理学研究室(CeSPL)
著者からのひと言
同一の受容体に結合するリガンドが、いかにして異なる細胞内反応を引き起こすのか。本研究は、この謎に対し、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析、計算機シミュレーション、薬理解析を組み合わせて迫ったものである。静的な構造だけでなく、受容体の動的な振る舞いまで捉えた本成果が、副作用を抑え必要な薬効だけを引き出す画期的な創薬へと繋がることを期待している。

抄訳

GPCRの一種であるケモカイン受容体CCR7は、免疫細胞の遊走を制御し、適応免疫応答やがんのリンパ節転移において重要な役割を担う。CCR7の内因性リガンドである2種類のケモカイン(CCL19およびCCL21)は、同一受容体に結合するにもかかわらず、細胞内のシグナル経路を異なるバランスで活性化する「バイアスシグナル伝達」を引き起こすが、その構造的メカニズムは未解明であった。
本研究では、各リガンドが結合したCCR7がGタンパク質を活性化する様子をクライオ電子顕微鏡により高分解能で可視化した。この構造を基に、計算機シミュレーションで受容体の動的な構造変化を解析し、薬理解析と組み合わせることで、リガンドの結合様式の差異が受容体に異なる構造変化を誘起し、シグナル分子を選択的に活性化する精緻な仕組みを解明した。本成果は、副作用を低減し目的の薬効のみを誘導する、次世代の免疫疾患治療薬や抗がん剤の開発基盤となることが期待される。

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2026/05/01

ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見

論文タイトル
Factors contributing to the frequent interspecies transmission of G4P[6] Rotavirus alphagastroenteritidis
strains from pigs to humans in Vietnam: molecular epidemiological insights
論文タイトル(訳)
ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間 伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見
DOI
10.1099/mgen.0.001685
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 4
著者名(敬称略)
金子 美穂 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染分子解析学分野
著者からのひと言
ロタウイルスA(RVA)は、小児における重症胃腸炎の主要な原因の一つであり、動物由来株のヒトへの種間伝播が報告されている。本研究では、ヒトとブタの双方で検出されるP[6]遺伝子型VP4に着目した。P[6]のアミノ酸特性と宿主糖鎖との相互作用との関連を示した点は、ウイルスの宿主適応機構の理解に重要な示唆を与える。また、動物由来株が比較的高頻度でヒトへ種間伝播しているにもかかわらず、持続的なヒト-ヒト間伝播には至っていないことから、ヒト宿主への適応には追加的な遺伝的要因が必要である可能性が示された。本研究の成果は、動物由来ロタウイルスの進化およびヒト適応機構の理解を深めるとともに、感染対策やワクチン開発に向けた基盤的知見を提供する。

抄訳

アジアの一部地域では、ブタ由来ロタウイルス(RVA)、特にG4P[6]株がヒトから比較的高頻度で検出されている。本研究では、ベトナム小児から検出されたG4P[6]株の起源と高頻度検出の要因を分子疫学的に解析した。2年間に収集したRVA陽性糞便1,252検体中28検体(2.2%)がG4P[6]株単独感染に起因し、23株の全ゲノム解析により、いずれもヒトRVAとのリアソートメントを伴わないブタ由来株と確認された。一部のG4P[6]株に全ゲノムが一致するクラスターが認められ、限定的なヒト-ヒト間伝播の可能性が示唆された一方、多くの株は遺伝的に異なっており、ブタからヒトへの複数回の独立した種間伝播が推測された。さらに系統解析から、本研究株を含むブタ様RVAのP[6]は典型的ヒトRVAのP[6]とは遺伝的に異なり、それぞれのP[6]株の検出頻度には地理的差異が認められた。加えて、アミノ酸配列解析によりブタ様P[6]に特徴的な残基が同定され、一部は既知のヒト細胞表面糖鎖への結合部位に対応していた。以上より、本事例は持続的なヒト-ヒト間伝播株の出現ではなく、頻回な種間伝播に起因すると考えられ、ブタ様P[6]のアミノ酸特性が種間伝播を促進し得る可能性が示された。

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2026/04/30

quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ

論文タイトル
quickARSC: standalone package and web interface for profiling elemental stoichiometry of proteomes
論文タイトル(訳)
quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ
DOI
10.1128/mra.00031-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
西野 聡 吉澤 晋 他
所属
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門(微生物)
著者からのひと言
詳細はGitHub Wikiをご確認ください。
https://github.com/stsnsn/quickARSC/wiki 

抄訳

本稿では、原核生物の塩基配列またはアミノ酸配列のFASTAファイルから元素組成指標(ARSC)を計算するコマンドラインツール quickARSC を紹介する。quickARSCでは、タンパク質またはプロテオームの窒素、炭素、硫黄組成指標を算出可能である。本ツールはgz圧縮済みファイルや並列計算に対応しており、パイプなどを用いてシームレスにUNIXコマンドと接続できる。
併せて、FASTAファイルをアップロードすることでこれらの指標を計算可能なWebページを公開した。このページではGenome Taxonomy Database r226.0に登録されている143,614種の代表原核生物プロテオームにおける事前計算済みデータも提供している。ユーザーはGUI操作のみでこれらの情報を検索・取得可能である。

 

 

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2026/04/21

Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる

論文タイトル
Alternative microexon splicing code for a four-amino acid peptide of PTPRD governs behavioral development
論文タイトル(訳)
Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる
DOI
10.1073/pnas.2515310123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.15 e2515310123
著者名(敬称略)
今井彩子 吉田知之 他
所属
富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座

抄訳

マイクロエクソンは3~27ヌクレオチドから構成され、神経細胞で選択的に利用されることから神経系のタンパク質の機能を修飾する微小ゲノム素子として近年、注目されている。本研究ではシナプスの形成と再編を担う細胞接着タンパク質(シナプスオーガナイザー)をコードするPtprd遺伝子のもつ3つのマイクロエクソンの調節機構とその生理的な意義に注目した。これらのマイクロエクソンの選択的スプライシングは遺伝的なプログラムと環境依存的なプログラムに従って脳内で時空間的に調節されることがわかった。3つのマイクロエクソンのうちの1つは僅か4アミノ酸のペプチドをコードし、この遺伝的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスでは感覚、運動、情動、社会性など広範な行動に大きな異常が観察された。一方、環境依存的な選択的スプライシングプログラムを欠失したマウスはある種の学習と記憶ができなくなった。本研究からシナプスオーガナイザータンパク質内の僅か4アミノ酸のペプチドの使い方が行動の発達を大きく左右することが示された。今回の知見は、精神疾患や神経発達障害の発病機構の解明、さらには高度で複雑なヒトの脳機能や個性を作り出す仕組みの解明に繋がるものとして期待される。

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2026/04/15

メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する

論文タイトル
Three cholecystokinin receptors differentially regulate reproduction, digestion, lipid metabolism, and growth in medaka
論文タイトル(訳)
メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する
DOI
10.1530/JOE-25-0353
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JOE-25-0353
著者名(敬称略)
村下 幸司 他
所属
福井県立大学 海洋生物資源学部 先端増養殖科学科
著者からのひと言
本研究は、メダカをモデルとして3種のコレシストキニン(Cck)受容体が、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ異なって制御することを明らかにした。特に、Cck受容体が脂質代謝や体成長の調節に関与することを示した初めての報告であり、Cckの生理機能を従来の枠組みから拡張するものとなる。

抄訳

コレシストキニン(Cck)は、消化、摂食および生殖の制御に関与する多機能ペプチドホルモンである。本研究では、メダカ(Oryzias latipes)において3種のCck受容体遺伝子(cck1r、cck2ra、cck2rb)が欠損したノックアウト系統を作製し、それぞれの生理機能を解析した。cck1r欠損魚では消化酵素分泌の低下と成長遅延が認められ、消化制御および初期成長における重要性が示された。cck2ra欠損魚では軽微な生殖能の低下と脂質蓄積の増加が観察された。一方、cck2rb欠損魚では雌の不稔、顕著な脂質蓄積および成熟期以降の成長促進が認められた。さらに網羅的遺伝子発現解析により、脂質代謝および成長制御における各受容体の機能特異性が支持された。

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2026/04/14

Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定

論文タイトル
Identification of the C9-hydrogenase for 9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) and the 7α-dehydratase essential for initiating β-oxidation of the B-, C-, and D-rings in steroid degradation by Comamonas testosteroni TA441
論文タイトル(訳)
Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定
DOI
10.1128/aem.02331-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
堀之内 正枝
所属
理化学研究所Kim表面界面科学研究室
著者からのひと言
細菌による好気的ステロイド分解の分解経路および関連遺伝子の大半は長らく不明であり、TA441株を用いた一連の研究で初めてステロイド骨格の分解がほぼ明らかになったものの、細菌がこの分解系を持つメリット、この分解系の環境中での役割についてはまだ不明である。その解明にはより広範囲の分解細菌の解析が必要だが、遺伝的に遠い細菌では酵素のアミノ酸配列の相同性も低くなる。立体構造での検索が可能になれば、新たな一面が見えてくるかもしれない。

抄訳

Comamonas testosteroni TA441株は、ステロイド骨格の分解経路が最も詳細に解明されている、好気的ステロイド分解細菌のモデル株である。TA441株と同様の分解経路は、他のプロテオバクテリアや結核菌などの放線菌を含む幅広い属の細菌に存在する。本研究では新たにCD環開裂に必須なhydrogenase(ScdB)およびdehydratase(ScdH)を同定した。AlphaFoldによるモデリングでは、TA441株のステロイド分解に関わるhydrogenaseのうち5種がScdBと類似構造をとる事が示され、ScdHは、BCD環の分解に関与するScdYおよびScdNと同様のホモヘキサマー構造を形成すると予測された。同様に他の酵素も解析した結果、TA441のC12βdehydrataseが、アミノ酸配列のidentityが約28%しかないClostridium scindensの胆汁酸7α dehydratase BaiEと強い構造的類似性を示すことが明らかになった。

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2026/04/09

変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子

論文タイトル
Phenotypic characterization of signature-tagged mutants identifies physiological determinants of Vibrio vulnificus fitness
論文タイトル(訳)
変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子
DOI
10.1128/aem.02505-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学 獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
短時間内に宿主体内で増殖し、重篤な病態へと陥れるNSTI起因菌の病原性の基礎には、宿主環境への適応とそれを制御する遺伝子群が有機的繋がりを持って機能しており、毒素等の古典的因子による病原性の発揮を支えていることが明らかとなった。この発見は、NSTI起因菌による、迅速な組織侵襲機構を説明し得るものであると共に、細菌の病原性研究に、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

抄訳

Vibrio vulnificusは、ヒトへの感染後、極めて短期間のうちに壊死性軟部組織感染症(NSTI)や敗血症を引き起こす。本研究では、本菌が宿主体内での増殖に必要とする遺伝子群を網羅的に同定した。同定した37遺伝子の変異株について、マウスNSTIモデルにおける増殖能、運動性、莢膜形成、および好中球抵抗性などの表現型を解析した。 その結果、本菌の生体内増殖は、運動性、細胞内シグナル制御、代謝、およびストレス耐性等の生理機能に強く依存していることが明らかとなった。特に、莢膜や細胞傷害性といった従来の「病原因子」とは独立して、宿主環境への適応に直接寄与する制御・代謝関連因子が多数見出された。 
本研究の結果は、V. vulnificusが代謝を含む生理機能をダイナミックに変化させて宿主環境に適応し、病原因子の時空間制御に繋げることで、迅速な組織侵襲を可能にしていることを示している。これは、細菌の病原性を「毒素の有無」という従来の枠組みから解き放ち、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

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2026/04/08

アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定

論文タイトル
Identification of two Wolbachia genes with cell proliferation-inhibitory activity in Ostrinia cultured cells
論文タイトル(訳)
アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定
DOI
10.1128/mbio.00074-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
勝間 進 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 昆虫遺伝研究室
著者からのひと言
ボルバキアは蚊を介したウイルス等の媒介抑制などにおいて、応用上重要な細胞内共生細菌です。さらには、宿主の性や生殖を操作するという点で、基礎生物学的にも注目されています。一方、感染・移植技術や遺伝子操作法が確立していないことから、その遺伝子機能の解析はあまり進んでいません。本研究はアワノメイガとそれに感染するオス殺しボルバキアを対象に、培養細胞を利用した機能解析例を報告したものになります。ボルバキア研究の発展に貢献できれば幸いです。

抄訳

細胞内共生細菌であるボルバキアは、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っています。基礎生物学的にも応用上も重要な共生細菌ですが、ボルバキア遺伝子の機能解析については非常に遅れています。その理由としては、確立した移植方法がないこと、そして遺伝子操作法が存在しないことが挙げられます。本研究では、アワノメイガにおいてオス殺しを引き起こすボルバキア(wFur)とアワノメイガ由来の培養細胞を用いて、ボルバキア移植方法を構築しました。その結果、非感染細胞へのwFur移植が細胞毒性を伴う細胞増殖抑制を引き起こすことがわかりました。さらに、wFur遺伝子を非感染アワノメイガ培養細胞で発現させる発現スクリーニングによって、w52w75と名付けた細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子を発見しました。これら2つの遺伝子はwFur感染におけるアワノメイガの細胞増殖抑制に関与している可能性が考えられます。

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2026/04/02

Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda

論文タイトル
Reclassification of the genus Dysgonomonas and description of Dysgonomonas reticulitermitis sp. nov. and Viscerimonas tarda gen. nov., sp. nov. from the gut of the subterranean termite Reticulitermes speratus
論文タイトル(訳)
Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda
DOI
10.1099/ijsem.0.007031
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 1
著者名(敬称略)
高橋 一樹 坂本 光央 他
所属
理化学研究所 バイオリソース研究センター(BRC)微生物材料開発室 (JCM)
著者からのひと言
腸内や環境中で注目されるDysgonomonas属の分類学的曖昧さに真正面から取り組み、ゲノム指標と生理学的特性を統合して再定義した点が本研究の大きな魅力である。属レベルの再編成に加え、新属・新種の提案により、本群の多様性と進化的関係に新たな視点を提供し、今後の機能解析や生態学研究の基盤を大きく前進させる重要な成果といえる。

抄訳

2000年に設立されたDysgonomonas属はBacteroidales目に属し、現在9種が知られるが、その分類基準は十分に整理されていない。本研究ではコアゲノム系統解析、平均アミノ酸同一性、保存タンパク質割合などのゲノム指標と生理学的特性に基づき再評価を行った。その結果、本属は少なくとも3つの属レベル系統群に分かれることが示され、Dysgonomonas(狭義)、新属Indolivaga、新属Pseudodysgonomonasを提案した。さらにシロアリ腸内から分離した2株について、1株はDysgonomonas属の新種、もう1株は新属・新種Viscerimonas tardaとして提案した。

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2026/03/31

ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析

論文タイトル
Efficacy and Safety of Stent-Assisted Coiling with Low-Profile Visualized Intraluminal Support versus Neuroform Atlas for Unruptured Internal Carotid Aneurysms: A Propensity Score–Matched Analysis
論文タイトル(訳)
ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析
DOI
10.3174/ajnr.A9034
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
March 2026, 47 (3) 671-677
著者名(敬称略)
長山 剛太 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科

抄訳

ステント併用コイル塞栓術(SAC)は広頸の未破裂脳動脈瘤に広く用いられているが、異なるステント間の直接比較データは乏しい。本研究は、直径10mm未満の未破裂内頸動脈(ICA)動脈瘤を対象に、編み込み型のLVISステントとオープンセル型のNeuroform Atlasステントの安全性・有効性を比較検討した。 3施設において2017年から2023年の間にSACを施行した247名・287病変を対象に後方視的解析を行い、傾向スコアマッチングにより各群46例ずつを抽出した。術後1年時点での完全閉塞率(Raymond class I)は、**LVIS群52%に対してAtlas群24%**と、LVIS群が有意に高率であった(P=.007)。術直後の完全閉塞率および体積塞栓率(VER)もLVIS群で有意に優れていた。一方、虚血・出血性合併症、再開通率、再治療率は両群間で差を認めなかった。 以上より、10mm未満の未破裂ICA動脈瘤においてLVISステントは、周術期合併症を増加させることなく、Neuroform Atlasと比較して有意に高い完全閉塞率を達成することが示された。

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