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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/03/30

カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築

論文タイトル
Establishment of an in vivo-based assay using a silkworm infection model for phenotypic evaluation of antimicrobial drug combinations against Mycobacterium abscessus
論文タイトル(訳)
カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築
DOI
10.1128/aac.01665-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
八木 瑛穂 内田 龍児 他
所属
東北医科薬科大学 薬学部天然物化学教室
著者からのひと言
本研究では、カイコM. abscessus感染モデルを用いて、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的かつ網羅的に評価可能なin vivo評価系を確立しました。従来のin vitro評価では捉えきれなかった薬剤間相互作用を、用量依存的に可視化できる点が特徴です。さらに、in vivo評価指標であるFEDIを導入し、相乗・拮抗作用を定量的に判定可能としました。本手法は、抗菌薬併用療法の合理的設計に資する新たな評価基盤となることが期待されます。

抄訳

非結核性抗酸菌Mycobacterium abscessusは高度な薬剤耐性を示し、治療には多剤併用療法が不可欠であるが、併用効果の評価は主にin vitro系に依存している。本研究では、カイコ(Bombyx mori)感染モデルを用い、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的に評価可能なin vivo表現型評価系を構築した。本評価系では、複数用量の組み合わせを網羅的に検討することで、用量依存的な薬剤間相互作用を生存率に基づいて評価できる。さらに、in vivoにおける併用効果を定量化する指標としてfractional effective dose index(FEDI)を導入し、相乗・拮抗作用の判定を可能とした。クラリスロマイシン+アミカシンにおける拮抗作用およびイミペネム+セフォキシチンにおける相乗効果は、既報のin vitro結果と同様の傾向を示し、本評価系の有用性が示された。本手法は倫理的負担が少なく、哺乳類モデルでは困難な多数条件の系統的評価を可能とすることから、抗菌薬併用療法の最適化および前臨床段階における有用な評価基盤となることが期待される。

 

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2026/03/30

日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見

論文タイトル
Thirteen-Year Trends and Advancements of Endovascular Therapy for Dural Arteriovenous Fistulas in Japan: Insights from a Nationwide Study of 6470 Procedures
論文タイトル(訳)
日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見
DOI
10.3174/ajnr.A8840
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
November 2025, 46 (11) 2273-2278
著者名(敬称略)
村井 智 他
所属
川崎医科大学 脳神経外科
著者からのひと言
本論文は、全国6470件という大規模データを用いて、日本の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の進歩を明らかにした点が大きな特徴です。Onyx®などの導入により治療成績が向上した一方で、安全な普及には指導医の関与が重要であることも示しました。新しい技術の恩恵を最大限に活かすには、教育体制の充実も不可欠である伝える意義深い報告です。

抄訳

頭蓋内硬膜動静脈瘻は比較的まれな疾患であるが、静脈梗塞やくも膜下出血を引き起こすことがある。本研究では日本脳神経血管内治療学会の全国レジストリー (JR-NET)に登録された2007年から2019年の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療6470例を解析し、治療方法や治療成績の変化を検証した。その結果、Onyx®などの析出型液体塞栓物質が導入されたことで、従来は直達手術が行われることの多かったテント部や前頭蓋窩の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の件数が約5倍に増加し、経動脈的塞栓術の完全閉塞率も有意に向上した。一方で、これらの新しい塞栓物質の使用は合併症リスクとも関連していたが、学会認定指導医による監督下で治療を行うことで、そのリスクが低減されることも示された。

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2026/03/30

シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
 

論文タイトル
Intrinsic period stability of the cyanobacterial circadian oscillator across in vitro and in vivo conditions
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
DOI
10.1073/pnas.2526714123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2526714123
著者名(敬称略)
三輪 久美子 他
所属
大阪大学 生命惑星進化学グループ
著者からのひと言
本研究は、約25年にわたり、故近藤特別教授の研究室でこつこつと積み重ねてきた成果です。実験で、シアノバクテリアの細胞内や試験管内のとてもきれいなリズムを見るたびに、1ミリメートルの500分の1程度しかない小さな微生物の中に、これほど正確な時計を生み出す仕組みがあるという事実に、いつも驚かされます。

抄訳

多くの生物は昼夜の環境変化に適応するため、約24時間周期の体内時計を備えています。体内時計は気温や光が変わっても周期がほとんど変わらず、高い精度で保たれることが知られています。シアノバクテリアの体内時計は試験管内で再現することができ、3つの時計タンパク質(KaiC、KaiA、KaiB)を試験管の中で混合すると、KaiCの活性が約24時間周期のリズムを示します。しかし、細胞内では遺伝子の働きも関わるため、時計の正確さを決めているのがタンパク質か細胞全体かは長年の課題でした。本研究では、細胞内と試験管内のリズムを比較し、時計の精度がKaiCという単一タンパク質の性質に備わっていることを明らかにしました。さらに、細胞内では周期がわずかに調整され、地球の昼夜のリズムに近づく可能性も示されました。これらの結果は、生物が正確に時間を刻む仕組みの理解を大きく前進させるものです。

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2026/03/25

インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する

論文タイトル
N-glucosylation of indole-3-acetyl amino acids modulates auxin metabolism and growth traits in Oryza sativa
論文タイトル(訳)
インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する
DOI
10.1073/pnas.2527570123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2527570123
著者名(敬称略)
善治 杏菜, 秦 毅実彦, 瀬上 紹嗣, 榊原 均 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 植物情報分子研究室
著者からのひと言
本研究では、オーキシン代謝にこれまで見落とされていた「分岐経路」を見出し、成長ホルモンの働きを支える新しい調節概念を提示しました。代謝中間体の行き先が環境応答や形質に影響することを示した点は、基礎科学として重要であると同時に、作物の適応性や肥料利用効率の改良にもつながる知見です。ホルモン代謝の再解釈を通じて、植物の成長制御の理解を一歩進めた成果と考えています。

抄訳

植物ホルモンであるオーキシン(インドール酢酸、IAA)は、根や穂の形成など作物の成長と収量を左右する重要な因子である。本研究では、イネにおいてIAAのアミノ酸結合体に糖を付加する酵素IAAspGTを同定し、オーキシン代謝に新たな分岐経路が存在することを明らかにした。IAAはアミノ酸結合後に酸化反応により不可逆的に不活性化されるが、本酵素はアミノ酸結合体を酸化される前にN-グルコシル化することで、再利用可能な安定な代謝プールへと変換する機能を持つ。さらに、この酵素活性には品種間差が存在し、高活性型対立遺伝子は低栄養条件下での根系発達や穂への同化産物配分に影響を与えることが示された。本成果は、オーキシン代謝の新たな制御機構を提示するとともに、環境適応性や肥料利用効率に優れた作物育種への応用可能性を示すものである。

 

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2026/03/24

未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較

論文タイトル
Feasibility and Safety of 8F Guiding Catheter Navigation in Transradial Neurointervention for Unruptured Intracranial Aneurysms: A Propensity Score–Matched Comparison of Sheath-Based versus Sheathless Approaches
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較
DOI
10.3174/ajnr.A8987
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
February 2026, 47 (2) 363-370
著者名(敬称略)
府賀 道康 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科
著者からのひと言
経橈骨動脈アプローチでは、大口径デバイス使用時の安全性が常に課題となります。本研究は、未破裂脳動脈瘤治療における8Frガイディングカテーテル使用時に、8Frシース併用がシースレス法と比べて橈骨動脈閉塞や攣縮を抑えつつ、成功率や他の合併症を損なわない可能性を示しました。TRAの実践を一歩前進させる知見です。

抄訳

近年、脳血管内治療では、穿刺部合併症の少なさや患者負担の軽減から、経橈骨動脈アプローチ(TRA)が広く用いられている。一方、8Frのような大口径デバイス使用時には、橈骨動脈閉塞や攣縮などのアクセス部合併症が懸念されるため、挿入システム全体の外径を抑える目的でシースレス法が選択されることも多い。しかし、8Frシース併用法とシースレス法を直接比較した検討はこれまで限られていた。本研究では、未破裂脳動脈瘤に対して8Frガイディングカテーテルを用いてTRAで治療した症例を後方視的に解析し、8Frシース併用群とシースレス群を比較した。傾向スコアマッチ後の解析では、手技成功率に有意差を認めなかった一方、シース併用群では橈骨動脈閉塞および橈骨動脈攣縮の発生率が有意に低かった。アクセス部・非アクセス部合併症の増加も認めず、未破裂脳動脈瘤に対するTRAにおいて、8Frシース併用は実行可能かつ安全であり、適切な症例では有用な選択肢となる可能性が示された。

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2026/03/18

脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化

論文タイトル
Digital FDG-PET Detects MYD88 Mutation-Driven Glycolysis in Primary CNS Lymphoma
論文タイトル(訳)
脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化
DOI
10.3174/ajnr.A8935
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
January 2026, 47 (1) 117-125
著者名(敬称略)
佐々木麻結 立石 健祐 他
所属
横浜市立大学脳神経外科
著者からのひと言
本研究では、dFDG-PETにおけるFDG集積の亢進が、MYD88遺伝子変異に関連する明確な神経画像学的特徴として同定されました。この知見は、PCNSLにおける画像検査を用いた遺伝学的分類を支援するツールとして、dFDG-PETが有する潜在的な有用性を示唆するものであり、また今後の個別化治療戦略への応用が期待されるところです。

抄訳

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)におけるFDG-PET所見と糖代謝関連遺伝子異常との関連は十分に解明されていない。本研究では、解糖系活性を促進する主要な遺伝子異常であるMYD88変異を、半導体PETにより非侵襲的に検出可能か検討した。PCNSL 54例(55病変)を対象に、SUVmaxおよび腫瘍対背景比(TBR)とMYD88変異との関連を解析した。その結果、半導体FDG-PETではMYD88変異例でSUVmaxおよびTBRが有意に高値を示し、TBRは高い診断能(AUC=0.913)を示した。多変量解析でも両指標は独立した予測因子であった。さらにトランスクリプトーム解析により、MYD88変異例で解糖系関連遺伝子の発現亢進が確認された。以上より、半導体FDG-PETはMYD88変異に伴う代謝亢進を反映する有用な非侵襲的診断法となり得る。

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2026/03/17

単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性

論文タイトル
Geometrical preference of anchoring sites in the unicellular organism Stentor coeruleus
論文タイトル(訳)
単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性
DOI
10.1073/pnas.2518816123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.9 e2518816123
著者名(敬称略)
越後谷駿 西上幸範 他
所属
北海道大学電子科学研究所知能数理研究分野
著者からのひと言
ラッパムシを含む単細胞性の真核生物「原生生物」は、下水浄化を行ったり赤潮や、マラリアなどの感染症を引き起こしたりと、様々なところで活躍しています。これらのマクロな現象は、どれも個々の原生生物の行動が組み合わさり現れています。原生生物の行動はまだまだ謎に満ちており、オモシロ行動がたくさん観察されます。それらの行動が生物や環境に与える役割を解き明かしていきたいと思います。

抄訳

我々のような「目」を持っていない単細胞生物でも実は周りの形の違いに応じて棲家を選んでいることが分かりました。そんな能力を持った単細胞生物の名は「ソライロラッパムシ」。体の大きさは1 mm程、肉眼では点にしか見えない生き物ですが、普段はラッパのような形で水の中を泳ぎ、自身の棲家を探しまわっています。どのような場所を棲家として好み、どうやって選んでいるのでしょうか。
ラッパムシが生きるミクロな水環境中にはたくさんの構造物がありふれています。そこで自然界のミクロな形の複雑さ模した観察容器を使ってソライロラッパムシの行動を観察しました。その結果、すみっこを棲家として好むことが分かりました。もちろん神経系や視覚情報は持っていませんが、体の形を変化させるシンプルな機構によって探索の空間解像度を切り替え、空間中のすみっこを見つけやすくする戦略をとっていることも行動観察と行動シミュレーションから明らかになりました。

 

 

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2026/03/16

卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例

論文タイトル
Dysgerminoma of the ovary presenting as acute abdomen with intratumoural gas image: a diagnostic challenge suspected as a gastrointestinal stromal tumour
論文タイトル(訳)
卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-270400
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 3
著者名(敬称略)
吉田 志歩、 豊島 将文 他
所属
日本医科大学付属病院 女性診療科・産科
著者からのひと言
「腫瘍内のガス像」という、通常は消化管穿孔や感染を疑う極めて稀な所見を示した卵巣未分化胚細胞腫の症例報告である。一見、消化管疾患(GIST)と誤認しそうな画像所見が、実は茎捻転による血管内ガスの捕捉であったというメカニズムの考察は極めて示唆に富む。画像診断の落とし穴と、若年女性の急性腹症における迅速な外科的介入の重要性を再認識させる、教訓的な一報と言える。

抄訳

20代女性が急激な左下腹部痛と嘔吐で救急搬送された。身体所見で臍レベルまで達する硬い腫瘤を認め、血液検査ではLDHやALPの上昇、腫瘍マーカーであるCA125およびCA19-9の高値が確認された。AFPやhCGは正常範囲であった。造影CTでは腫瘍内に複数の線状ガス像が認められ、消化管間質腫瘍や膿瘍との鑑別が困難であったが、造影効果の欠如から卵巣茎捻転も疑われた。緊急手術の結果、360度捻転しうっ血した左卵巣腫瘍を確認し、病理検査にて卵巣未分化胚細胞腫と確定診断された。本例のガス像は、茎捻転による血管内ガスが、本腫瘍特有の構造である線維血管性隔壁に捕捉された結果であると考えられた。CTから約13時間後のMRIではガス像が消失していたことから、この現象が虚血に関連した一過性の現象と推測された。画像上、消化管疾患を疑う所見があっても、若年女性の急性腹症では卵巣腫瘍の茎捻転を念頭に置くべきである。

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2026/03/16

カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する

論文タイトル
Coupling of functionality to trafficking of KCNQ2/3 potassium channels at the axon initial segment
論文タイトル(訳)
カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する
DOI
10.1073/pnas.2527749123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.10 e2527749123
著者名(敬称略)
好岡 大輔 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 統合生理学教室
著者からのひと言
本研究の最も重要な点の1つは、これまで独立した別物だと考えられてきた2つの主要なチャネル制御機構—機能と局在の制御機構—を結びつける統一的な原理を明らかにしたことです。この原理は、正常な分子だけを選んで“適材適所”に配置するという「品質管理機構」がKCNQ2/3自身に備わっていることを示しています。またKCNQ2/3の異常は、てんかんをはじめとする多くの神経・精神疾患の原因となることが知られています。本研究の成果は、これら疾患の病態理解を深めるとともに、新規治療戦略の開発に有益な洞察をもたらすと期待されます。

抄訳

KCNQ2/3は神経の興奮性を決める主要な電位依存性カリウムチャネルです。ニューロンは高度に極性化した細胞のため、KCNQ2/3が神経活動に及ぼす影響はチャネル自体の機能性だけでなく、活動電位の発生部位である軸索起始部(AIS)への局在性にも左右されます。KCNQ2/3の機能性は電位感受による構造変化によって制御される一方、AIS局在はアンキリンG(ankG)という主要な足場タンパク質によって制御されています。しかし、チャネルの機能性と局在性を規定する機構の間にどのような連関が存在するのかはこれまで未解明でした。本研究では、チャネル機能の遺伝子工学的操作と、チャネルトラフィッキングの先端イメージングを組み合わせることで、KCNQ2/3の機能・局在連関を検証しました。その結果、KCNQ3の機能低下がエキソ/エンドサイトーシスや側方拡散を含むトラフィッキング経路全体に影響し、KCNQ2/3複合体のAIS局在効率を顕著に低下させることが明らかになりました。さらに、KCNQ3とankGの全長タンパク質間の相互作用を定量できる生細胞アッセイを開発し、KCNQ3の活性化コンフォメーションがankGへの安定した結合のために必須であることを解明しました。これらの結果は、神経興奮性の制御においてKCNQ2/3の機能性と局在性を統合する機構的基盤を確立します。

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2026/03/13

豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響

論文タイトル
Impact of an amino acid deletion detected in the hemagglutinin (HA) antigenic site of swine influenza A virus field strains on HA antigenicity
論文タイトル(訳)
豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響
DOI
10.1128/jvi.01820-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
中野 大知 小澤 真 他
所属
鹿児島大学 共同獣医学部 病態予防獣医学講座

抄訳

本研究では、日本の7農場から分離した豚インフルエンザAウイルス11株を遺伝学的に解析し、そのうち1株のH1N2ウイルスで、ヘマグルチニン(HA)の主要な抗原部位に位置する155番アミノ酸の欠失を確認した。そこで、155位に人工的な挿入または欠失を導入した組換えウイルスを作出し、培養細胞での増殖性と抗原性への影響を比較した。その結果、この欠失はイヌ腎臓上皮由来AX4細胞およびヒト肺胞上皮由来A549細胞における増殖性には大きな影響を与えなかった一方、モノクローナル抗体およびフェレット抗血清を用いた中和試験では、HA抗原性を顕著に変化させた。さらに、立体構造予測ではHA全体の大きな構造変化は示されず、局所的な抗体認識の変化が主因である可能性が示唆された。以上より、豚インフルエンザAウイルスは、1アミノ酸の欠失でも免疫逃避に関わる可能性があり、ブタ集団における流行株の継続的監視が重要であることが示された。

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2026/03/13

表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 

論文タイトル
Pleiotropic roles of elongation factor P in Bacillus subtilis physiology revealed by phenotypic and multi-omics analyses
論文タイトル(訳)
表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 
DOI
10.1128/spectrum.03142-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
小倉 光雄 他
所属
東海大学 海洋研究所
著者からのひと言
TranscriptomeとProteomeは、直感的には大体一致するものと思われてきたが、本研究では、検出された遺伝子とタンパク質の量的変化はかなり異なっていた。つまり、転写制御はもちろん第一義的に重要だが翻訳水準でもかなりの制御が行われていることがわかる。もちろんその解析はこれからの点が多いのだろうが、本研究のような網羅的、枚挙的な研究がその一助になれば良いと思う。

抄訳

枯草菌ECFシグマ因子sigXのグルコースによる発現誘導(GI)の阻害因子としてefp変異を同定した。伸長因子P (EF-P)は全生物に保存されており、タンパク質のXPPX配列におけるリボソーム停止を緩和する。efp変異体でのproteome変化を明らかにするため、iTRAQ解析を実施した。翻訳への影響を評価するには、mRNAあたりのタンパク質量を決定する必要があるから、RNA-seq実験も行った。iTRAQでは2187タンパク質を検出し、XPPXモチーフを含む84タンパク質の翻訳量減少を観察した。その結果efp変異による主要シグマ因子SigA とRNAPサブユニットRpoBとRpoCの減少をWestern解析やiTRAQで観察した。すなわち、RNAPコアをめぐる各シグマ因子の競争に変化が起こり、sigXのGIも影響されたと考えられる。さらに、鞭毛構成成分FliYとMotBの減少は運動性を欠損させ、チオレドキシンTrxAの減少は耐熱性を喪失させた。また、マンガン輸送体MntGの減少は低温下での成長に必要なマンガンの要求量を変化させた。この論文でefp変異によるトランスクリプトームとプロテオーム間の複雑な相互作用に光を当てた。

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2026/03/10

四次元以上の空間で何が見えてくるのか
― 高次元解析が明らかにした根粒菌接種による土壌微生物群集への影響 ―
 

論文タイトル
Higher-dimensional ordination analysis teases out impacts of Bradyrhizobium bioaugmentation on native soil microbial communities
論文タイトル(訳)
四次元以上の空間で何が見えてくるのか
― 高次元解析が明らかにした根粒菌接種による土壌微生物群集への影響 ―
DOI
10.1128/spectrum.02880-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 広海 他
所属
東北大学 大学院 生命科学研究科 土壌微生物分野
著者からのひと言
微生物群集解析では、次元圧縮法によってデータを2~3次元に可視化して解釈することが一般的です。しかし本来、次元圧縮法は単なる可視化のための手法ではなく、群集間の関係を幾何学空間として表現する方法です。幾何学的な解析は、人間が可視化できる2~3次元に限られません。本研究ではこの視点から高次元空間での群集構造を解析し、根粒菌接種による影響を新しい角度から評価しました。

抄訳

土壌に有用微生物を導入するバイオオーグメンテーションは農業分野で広く利用されているが、その影響を土壌微生物群集全体のレベルで評価することは容易ではない。本研究では、ダイズ根粒菌 Bradyrhizobium の接種が土壌微生物群集に及ぼす影響を、高次元オーディネーション解析を用いて評価した。微生物群集データを高次元空間に埋め込み、群集遷移の方向性や群集間の距離などの空間的特徴を解析することで、接種による群集構造の変化を検討した。その結果、接種菌の影響は土壌条件や時間経過によって異なる形で現れることが示され、従来の低次元解析(2〜3次元への可視化)では捉えにくい群集構造の変化が明らかとなった。これらの結果は、高次元空間を用いた解析が微生物群集の変化を理解するうえで有効な手法となる可能性を示している。

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2026/03/06

アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成

論文タイトル
Rapid pronucleus assembly using cytoplasmic RNAs in fertilized eggs of Xenopus laevis
論文タイトル(訳)
アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成
DOI
10.1091/mbc.E25-09-0440
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 3
著者名(敬称略)
池田 瑞紀 原 裕貴 他
所属
山口大学大学院創成科学研究科 進化細胞生物学研究室
著者からのひと言
本論文では、卵細胞中に豊富に存在するRNAがもつ「負の電荷」という物理化学的性質そのものが、クロマチン構造の脱凝縮を促し、受精後に精子核から前核が形成される過程を促進することを明らかにしました。卵細胞の細胞質には非常に多量のRNAが含まれていますが、本研究は、これらのRNAが既知のタンパク質合成の役割に加えて、細胞内の電荷バランスを調整することで、受精直後の胚で見られる極めて速い細胞周期の進行を支える「物理化学的環境」の形成にも関与する可能性を示唆しています。

抄訳

多細胞生物の卵細胞では、受精直後に精子由来の強く凝縮した核が、体細胞型の大きな前核へと急速に変化する。本研究は、この前核形成過程において卵細胞質に豊富に存在するRNAが果たす役割を検証した。アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞再構成系を用いて、細胞質内RNAの濃度や長さを実験的に操作したところ、適切な濃度と長さのRNAが前核形成を促進し、核内クロマチン構造の再編成を加速させることを見出した。また、RNAは精子由来の正に帯電した核タンパク質の解離を促進し、体細胞型ヒストンの取り込みを助けることも示された。これらの核形成やクロマチン構造への効果は、RNA以外の負に帯電した化合物でも再現され、RNAの塩基配列そのものではなく、負電荷という物理化学的性質が重要であることが示唆された。以上の結果から、卵細胞質中の負電荷をもつRNAがクロマチン構造の変換を促進し、受精後の短時間で進行する前核形成を加速する基本原理として機能する可能性が示された。

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2026/03/02

高速原子間力顕微鏡による真菌由来機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAの表面触媒型線維伸長機構の解明

論文タイトル
High-speed atomic force microscopy reveals a surface-catalyzed elongation mechanism of the fungal functional amyloid hydrophobin RolA
論文タイトル(訳)
高速原子間力顕微鏡による真菌由来機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAの表面触媒型線維伸長機構の解明
DOI
10.1073/pnas.2523502123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.7 e2523502123
著者名(敬称略)
高橋尚央 (筆頭著者) 阿部敬悦 (連絡著者) 他
所属
東北大学大学院農学研究科 発酵微生物学寄附講座
著者からのひと言
日本の伝統的な発酵産業で活躍する麹菌には、ハイドロフォビンRolAと呼ばれるタンパク質が集まってできた丈夫な“線維の被膜”が備わっています。本研究では高速原子間力顕微鏡により、幅数nmの線維が伸長する様子をリアルタイムで観察し、線維被膜ができる仕組みを明らかにしました。麹菌研究としてだけでなく、タンパク質線維の形成機構を幅広く理解するための新しい視点を与えると期待されます。

抄訳

麹菌が分泌する機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAは、自己組織化してrodletと呼ばれる線維状構造を形成し、細胞表層を密に覆うことで防御被膜として機能する。しかし、rodlet被膜が形成される機構は未だ不明である。
本研究では、高速原子間力顕微鏡を用い、線維の一本の伸長過程をリアルタイムに観察した。解析の結果、既存rodlet表面が触媒的に働き、それに沿ったrodletの伸長を加速させる現象(表面触媒型線維伸長)を見出した。この効果によりrodletの束化・整列が促され、実際の麹菌分生子表面で観察されるような緻密なrodlet被膜が形成されている可能性がある。本研究の成果は、麹菌細胞表層構造の発達過程の一端を明らかにするだけでなく、アミロイド線維伸長機構の理解をさらに深化させるものである。

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2026/02/26

日本の市中における薬剤耐性および高病原性肺炎桿菌の保有状況調査

論文タイトル
Carriage of hypervirulent and ESBL-producing Klebsiella pneumoniae complex among community-dwelling individuals in Japan
論文タイトル(訳)
日本の市中における薬剤耐性および高病原性肺炎桿菌の保有状況調査
DOI
10.1128/aem.01687-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Vol. 92, No. 2
著者名(敬称略)
渡邉 章子 鈴木 匡弘 他
所属
藤田医科大学 医学部 微生物学講座
著者からのひと言
日和見病原体の疫学調査では、臨床分離株の情報は多く収集される一方、バックグラウンドとなる健常者におけるこれら病原体の分布に関するデータは限られている。本研究はこの知識のギャップを解消し、感染症の原因となる株の特徴を理解することに貢献する。

抄訳

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae complex)は、尿路感染症や血流感染症などの原因となる日和見病原体である。肝膿瘍や眼内炎など重篤な感染症を引き起こす高病原性株や抗菌薬耐性を示す株も存在し、注意が必要とされる。本研究ではこれらの臨床的重要性の高い株の感染源に関する情報を蓄積するため、日本の市中における 肺炎桿菌の保有状況を調査した。その結果、これらの細菌の保菌率は58.7%と腸内に一般的に存在しており、その全体的な遺伝子型分布は、これまでの臨床分離株の研究で報告されたものとおおむね類似していた。一方、薬耐性株や高病原性株も確認されたが、それぞれ全体の1%未満とその頻度は低かった。これらの知見は、多くの人が肺炎桿菌を常在菌として保菌する一方で、より臨床的重要性の高い型の肺炎桿菌は主に医療環境で拡散している可能性が高いことを示唆している。

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2026/02/24

DYRK阻害によるインクレチン産生細胞新生と糖尿病新規治療戦略

論文タイトル
A DYRK inhibitor ameliorates glucose homeostasis and increases incretin-producing cells in diabetic mice
論文タイトル(訳)
DYRK阻害によるインクレチン産生細胞新生と糖尿病新規治療戦略
DOI
10.1530/JME-25-0214
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Journal of Molecular Endocrinology JME-25-0214
著者名(敬称略)
寺崎 道重 他
所属
昭和医科大学医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門
著者からのひと言
本研究は、カロリンスカ研究所やハーバード大学等との国際共同研究により、インクレチン産生細胞を「新生」させるという新たな糖尿病治療概念を立証したものです。分子メカニズムの解明からヒト小腸幹細胞由来オルガノイドを用いた実証まで、多角的な検証を重ねてまいりました。基礎から臨床へのトランスレーショナルリサーチとなる本知見が、細胞再生を基盤とする糖尿病治療のパラダイムシフトを担うことを願っております。

抄訳

現在の糖尿病治療は、血中インクレチン濃度の維持や受容体刺激による作用増強が主流であるが、本研究では、インクレチン産生細胞そのものを新生させる新規糖尿病治療戦略を提唱する。我々は、DYRK阻害が糖尿病マウスの糖代謝を改善させることを報告した。OGTTおよびipGTTの比較、ならびに血清Total-GIP/Total-GLP-1、インスリン濃度の上昇により、その代謝改善効果を重層的に実証した。メカニズム解析では、DYRK阻害がNFATc4とGIP/GLP-1の共発現細胞数を有意に増加させることを見出した。これらの細胞はEdU陰性であり、既存細胞の増殖ではなく、NFATc4の核内移行を介した分化誘導による「新生」であることを解明した。さらにヒト小腸幹細胞由来オルガノイドを用いた検証においてもインクレチン遺伝子の発現増強を確認し、本効果は種を超えて保存されていることを示した。本研究の成果は、内因性インクレチンの産生源を直接的に増強する次世代の糖尿病治療法開発に繋がる可能性を示唆するものである。

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2026/02/18

デュアルレセプター型Phikzvirusを基軸としたファージカクテルによる緑膿菌耐性進化の抑制

論文タイトル
Phage cocktails containing a dual-receptor Phikzvirus suppress resistance evolution in Pseudomonas aeruginosa
論文タイトル(訳)
デュアルレセプター型Phikzvirusを基軸としたファージカクテルによる緑膿菌耐性進化の抑制
DOI
10.1128/aem.02095-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
藤木 純平 岩野 英知 他
所属
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医生化学ユニット
著者からのひと言
薬剤耐性感染症への切り札“ファージ療法”の奏功性を高めるためにはファージ耐性の克服が課題です。本研究では、異なる受容体を認識するファージカクテルで細菌の逃げ道を先回りし、緑膿菌のファージ耐性進化を防ぐ戦略を具現化しました。また、単なる耐性抑止に留まらず、進化的トレードオフにより高いコストを強制することで、軍拡競争(arms race)から進化的罠(evolutionary trap)の袋小路へと追い込み、ファージ耐性を治療有益性へ逆転させる端緒を見出しました。今後は本学附属動物病院での臨床試験を通じ、ファージ療法の新たなパラダイムを実証したいと考えています。

抄訳

多剤耐性緑膿菌感染症に対するファージ療法において、細菌の急速なファージ耐性獲得は臨床上の大きな障壁です。本研究では、独自に単離したPhikzvirus属ファージ“ΦBrmt”が、IV型線毛と鞭毛の両方を感染受容体として利用する「デュアルレセプター(二重受容体)」機構を持つことを解明しました。このΦBrmtとLPS(リポ多糖)標的ファージを組み合わせ、異なる3種の受容体を狙う合理的カクテルを構築、臨床分離株を用いて検討した結果、各ファージの単独接種と比較して、カクテルは耐性菌の出現を劇的に抑制することに成功しました。また、実験室内進化でΦBrmt耐性獲得に伴い線毛や鞭毛を喪失した変異株は、運動性や病原性が顕著に低下する「進化的トレードオフ」を示しました。これは、耐性化そのものを抑えるだけでなく、仮に耐性化が起こっても細菌に高いフィットネスコストを強制し、治療有益性を維持できることを意味します。本成果は、受容体同定に基づく合理的カクテル設計が、耐性進化の回避・制御に極めて有効であることを提示しています。

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2026/02/16

肺結核に対する連続喀痰核酸増幅検査の追加診断収率

論文タイトル
Incremental diagnostic yield of consecutive sputum nucleic acid amplification tests for pulmonary tuberculosis
論文タイトル(訳)
肺結核に対する連続喀痰核酸増幅検査の追加診断収率
DOI
10.1128/spectrum.02442-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
鹿子木 拓海 卜部 尚久 他
所属
東邦大学医療センター 大森病院 呼吸器内科
著者からのひと言
喀痰結核菌核酸増幅検査(NAAT)は、臨床現場では通常1回のみ提出されますが、喀痰塗抹検査や喀痰培養検査のように複数回提出した場合の診断性能は十分に確立されていません。本研究の結果、NAATを2回実施することで感度が向上し、診断までの時間も短縮されることが示されました。一方、3回目による追加効果は限定的でした。培養の重要性は不変であるものの、侵襲的検査が困難な場合などにNAATを追加で実施することで、診断に寄与する可能性が示唆されます。

抄訳

背景: 肺結核に対して、喀痰核酸増幅検査(NAAT)を連続して実施した場合の追加診断性能は十分に確立されていない。本研究では、結核非高蔓延地域において、喀痰NAATを最大3回連続で行った際の診断性能を評価することを目的とした。
方法: 2010年から2023年に日本で肺結核が疑われた4,051例を後方視的に解析した。喀痰培養陽性、または喀痰NAAT陽性で臨床所見と整合し肺結核と判断された症例を肺結核群(n=290)とし、それ以外を非肺結核群(n=3,761)とした。塗抹検査、NAAT、培養検査について、3回までの喀痰検体での累積感度及び累積特異度を算出した。培養検査単独の場合と喀痰NAATを 3回まで併用した場合の診断確定までの時間を比較した。
結果: 肺結核群で2回目のNAATにより累積感度が53.1%から63.1%へ上昇し、平均診断時間は10.9日から8.3日へ短縮した。3回目のNAATによる追加効果は限定的で、感度は67.2%までの上昇にとどまり、診断時間も8.1日であった。喀痰塗抹陽性PTBでは、NAAT感度は1回目の84.9%から2回目で97.8%まで上昇した。喀痰塗抹陰性例でも感度は23.8%から31.1%へ上昇した。
結論: 結核非高蔓延地域において、喀痰NAATを2回実施することで診断感度が有意に改善し、診断までの時間も短縮された。

 

 

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2026/02/13

緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定

論文タイトル
A nuclear CobW/WW-domain factor represses the CO2-concentrating mechanism in the green alga Chlamydomonas reinhardtii
論文タイトル(訳)
緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定
DOI
10.1073/pnas.2518136123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.6 e2518136123
著者名(敬称略)
嶋村 大亮 山野 隆志 他
所属
京都大学 大学院生命科学研究科
京都大学 大学院生命科学研究科附属生命情報解析教育センター(CeLiSIS)
著者からのひと言
「光合成をいかに効率化するか」は、食料や環境問題の解決に向けた重要課題です。今回私たちは、微細藻類がCO2濃度に応じて光合成を最適化する際の「抑制の鍵」となるタンパク質CBP1を突き止めました。長年謎だった、不要なエネルギー消費を抑える制御機構の一端を解明できたことは大きな喜びです。このスイッチの理解が、将来的な藻類のバイオ生産性向上や、植物の光合成能強化に繋がることを期待しています。

抄訳

微細藻類は、周囲の二酸化炭素(CO2)濃度が低下した際に、光合成を維持するための「CO2濃縮機構(CCM)」を駆動させます。しかし、CCMは多大なエネルギーを消費するため、CO2が十分な環境下では適切に抑制される必要があります。本研究では、モデル緑藻クラミドモナスを用いて、CCMのマスター活性化因子であるCCM1/CIA5と結合する新規タンパク質「CBP1」を同定しました。 解析の結果、CBP1は核内に局座するCobW/WWドメインを持つ因子であり、高CO2条件下においてCCM関連遺伝子の発現を抑制する「オフスイッチ」として機能していることが明らかになりました。CBP1を欠損した変異体では、高CO2下でも不必要にCCMが作動し、細胞の増殖が抑制されました。本成果は、水圏の光合成生物が変動する環境下でいかにエネルギー効率を最適化しているかという基礎理解を深めるだけでなく、微細藻類を用いたバイオ燃料生産等の効率化への応用も期待されます。

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2026/02/10

Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く

論文タイトル
Nutrient acquisition drives Edwardsiella tarda pathogenesis in necrotizing soft tissue infection
論文タイトル(訳)
Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く
DOI
10.1128/msystems.01657-25
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学獣医学部獣医学科獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
本研究では、壊死性軟部組織感染症という極めて重篤な病態において、起因菌 Edwardsiella tarda の病原性に寄与する因子を網羅的に探索しました。その結果、毒素などの直接的な病原因子はほとんど検出されず、栄養素の代謝や輸送に関与する遺伝子が多く選抜されました。これは、見過ごされがちであった病原細菌の栄養獲得機構の重要性を明確に示したものです。本成果が、侵襲性感染症の病態理解や新たな制御戦略を考える一助となれば幸いです。

抄訳

壊死性軟部組織感染症(NSTI)は急速に進行し、高い致死率を示す重篤な感染症である。原因菌は多岐に渡るが、それらが宿主体内でどのように増殖・定着するかについては不明な点が多い。本研究では、NSTI原因菌のひとつである Edwardsiella tarda に、TraDIS (Transposon-directed insertion-site sequencing) 解析を適用し、感染局所での生存・増殖に必須の遺伝子を網羅的に同定した。その結果、感染局所の軟部組織内での増殖に、鉄やアミノ酸などの栄養獲得に関与する遺伝子群が強く寄与していた。さらに、これら遺伝子の変異株はマウス感染モデルにおいて有意に病原性が低下していた。以上のことから、NSTIにおいては環境適応としての栄養獲得が病態進展の鍵であることが示された。本研究は、侵襲性感染症における病態発現の基礎として、宿主から巧みに栄養源を奪う、統制された制御システムの連動が重要であることを示している。

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