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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/11/04

マルチAIエージェント・フレームワークによりアルミニウムナノ粒子酸化における酸化膜の「門番」機能を解明

論文タイトル
Multi-AI agent framework reveals the "oxide gatekeeper" in aluminum nanoparticle oxidation.
論文タイトル(訳)
マルチAIエージェント・フレームワークによりアルミニウムナノ粒子酸化における酸化膜の「門番」機能を解明
DOI
10.1073/pnas.2537780123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2537780123
著者名(敬称略)
盧 奕名 (Yiming Lu、筆頭著者), 陸 婷鈺 (Tingyu Lu), 張 頔 (Di Zhang), 葉 莉莉 (Lili Ye、責任著者), 李 昊 (Hao Li、責任著者)
所属
東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
AIMR: https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/
Hao Li Lab: https://www.li-lab-cat-design.com/
著者からのひと言
An oxide shell does more than protect a nanoparticle: it dynamically controls how the particle reacts. By combining AI agents with expert review, we connected reliable atomic modeling with a clearer picture of aluminum oxidation. We hope this work encourages reproducible, human-guided AI workflows that help researchers understand and design reactive materials.

抄訳

アルミニウムナノ粒子は高いエネルギー密度をもつ一方、表面の酸化膜が反応を制限します。本研究では、複数のAIエージェントが専門家の監督下で機械学習ポテンシャルの開発・検証を支援する「MLP Copilot」を構築しました。約80回の能動学習で88,833個の原子配置を収集し、第一原理計算に基づくモデルを用いて酸化過程を解析しました。その結果、酸化膜は単なる障壁ではなく、温度に応じて反応を調節する「門番」として働くことが分かりました。1,500 Kでは一時的なナノチャネルを通じて酸化が続く「呼吸モード」、2,000 Kでは膜の破裂により酸化が加速する「破裂モード」が現れました。また、調べた条件では、アルミニウムの外向き輸送が主要な物質輸送経路であることを示しました。本成果は、ナノ粒子の反応制御と、人とAIが協働する材料研究の発展につながると期待されます。

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2026/11/02

新種Streptomyces salinomycinicusの提案とS. rubiginosus, S. niveoruber, S. griseomycini, S. roseoviolaceus, S. violaceochromogenes及びS. virensの再分類

論文タイトル
Streptomyces salinomycinicus sp. nov. and reclassifications of Streptomyces rubiginosus, Streptomyces niveoruber, Streptomyces griseomycini, Streptomyces roseoviolaceus, Streptomyces violaceochromogenes and Streptomyces virens.
論文タイトル(訳)
新種Streptomyces salinomycinicusの提案とS. rubiginosus, S. niveoruber, S. griseomycini, S. roseoviolaceus, S. violaceochromogenes及びS. virensの再分類
DOI
10.1099/ijsem.0.007293
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
Int J Syst Evol Microbiol. 2026 Oct;76(10). doi: 10.1099/ijsem.0.007293
著者名(敬称略)
小牧 久幸
所属
独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター (NBRC)
著者からのひと言
近年のゲノム解析や系統分類学の進展により、従来の分類結果の見直しが進んでいます。本研究では、代表的な抗生物質サリノマイシンの生産菌がS. albusではなく、新種であることを明らかにしました。また、最新の分類基準でS. albusと同定される株のゲノムにはサリノマイシン生合成遺伝子クラスターが存在しないことも既に報告されています。本研究は、天然物研究において正確な菌種同定の重要性を示す一例になったと考えています。

抄訳

サリノマイシン生産菌80614株はこれまでStreptomyces albusとされていたが、その分類学的位置を再検討した。16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性は“Streptomyces physcomitrii”の基準株に対して99.8%であったが、S. albusの基準株に対しては96.1%であり、系統樹においてもS. albusとは離れ、“S. physcomitrii”と同一のクレードに含まれた。さらに、“S. physcomitrii”に対するデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーションの値は67.8%、平均塩基配列一致率(ANI)が96.5%であり、いずれも種の判別基準値(70%、96.7%)を下回った。また、胞子の形態、耐塩性、炭素源の利用能などの表現性状でも近縁種との違いが認められたので、新種に分類し、Streptomyces salinomycinicusと命名した。

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2026/11/02

受容体を脳内で直接亜鉛センサーに変換し、シナプス近傍の亜鉛イオン動態をイメージングによって記録する新戦略

論文タイトル
Imaging and recording of synaptic zinc in the brain by covalent chemistry-based semisynthetic biosensors.
論文タイトル(訳)
受容体を脳内で直接亜鉛センサーに変換し、シナプス近傍の亜鉛イオン動態をイメージングによって記録する新戦略
DOI
10.1073/pnas.2606947123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2606947123
著者名(敬称略)
Hao Zhu 濵地 格 他
所属
京都大学 エネルギー理工学研究所
著者からのひと言
リガンド指向性化学とクリック反応をタンデムに、脳内で行う方法は、我々独自の化学戦略でchemical KIと呼んでいます。この論文では神経伝達物質受容体を標的に脳内で実施し、その有用性を実証しましたが、他の受容体や脳以外の組織にも適用可能と思いますので、ご興味あればお声掛けください。

抄訳

マウス脳内でリガンド指向性化学とクリック反応をタンデムに行うことによって、グルタミン酸受容体およびGABA受容体を蛍光性の亜鉛センサーに変換することに成功した。これらを用いて、興奮性と抑制性シナプス近傍の亜鉛イオン変化を、高い空間分解能で記録することが可能となった。マウス脳内でのシナプス近傍のbasal亜鉛濃度の定量値が得られるだけでなく、カイニン酸刺激によって興奮性シナプス間隙に放出される亜鉛の海馬での領域ごとのマッピングや、抑制性シナプスに漏れ込む亜鉛イオン(興奮性シナプスの1/100程度)の定量化が実現した。

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2026/11/02

胸腺制御性T細胞の発生に影響を及ぼすエピゲノム異常に起因する自己免疫

論文タイトル
Autoimmunity induced by epigenome alteration affecting thymic Treg cell development.
論文タイトル(訳)
胸腺制御性T細胞の発生に影響を及ぼすエピゲノム異常に起因する自己免疫
DOI
10.1073/pnas.2626262123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2626262123
著者名(敬称略)
Jia Long、市山 健司 他
所属
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
著者からのひと言
2025年の坂口志文教授によるノーベル生理学・医学賞の受賞を契機に、制御性T細胞(Treg)への関心は世界的に一層高まっており、Tregの分化・機能を制御する分子機構の解明に加え、Tregを標的とした新たな治療法の開発も注目されています。本論文では、Tregの早期分化に関する新たな制御機構を明らかにしており、様々な免疫関連疾患に対する画期的な治療法開発につながることが期待されます。

抄訳

エピジェネティック制御因子MBD3は、クロマチン構造の制御に関与するNuRD複合体の必須構成因子であるが、制御性T細胞(Treg)の分化および恒常性維持における役割は明らかになっていなかった。本研究では、T細胞特異的MBD3欠損マウスが、Tregの減少に伴って重篤な多臓器自己免疫疾患を発症することを見出した。さらに、網羅的な遺伝子発現およびエピゲノム解析により、MBD3が胸腺Tregの分化過程において、Il2ra(CD25)遺伝子領域に存在するTreg特異的エンハンサーの活性化を介してCD25の発現を促進することで、胸腺細胞からTreg前駆細胞への分化を支持することを明らかにした。本研究は、胸腺T細胞発生におけるエピゲノム制御の破綻が、Treg分化の障害を介して自己免疫疾患の発症につながることを示しており、Treg分化を支えるエピジェネティック制御機構の重要性を改めて提示するものである。

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2026/10/26

 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連

論文タイトル
Classification of glucose profile in Japanese patients with type 1 diabetes and its association with complications
論文タイトル(訳)
 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連
DOI
10.1210/clinem/dgag224
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 11, November 2026, Pages 3085–3093
著者名(敬称略)
筆頭著者:益田 貴史、連絡著者:片上 直人
所属
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
著者からのひと言
近年、皮下連続グルコースモニタリング(CGM)は1型糖尿病患者の血糖管理において広く普及していますが、CGMから得られるデータだけで患者を分類したにも関わらず、各群で患者背景や合併症のリスクが異なっていたことが興味深いと考えております。各群の特徴を考慮した治療戦略を講じ、合併症を予防することが1型糖尿病患者の予後改善に重要であると考えます。

抄訳

20歳以上80歳以下の日本人1型糖尿病患者153名を対象に、皮下連続グルコースモニタリングから得られる各血糖変動指標を用いたクラスター分析を実施し、合併症のリスクを比較した。クラスター分析の結果、4つのClusterが同定された。Cluster 1 (n=53)は全ての血糖変動指標が良好であった。Cluster 2 (n=46)は高血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 3 (n=39)は低血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 4 (n=15)は高血糖・低血糖時間とも長く、血糖変動も大きかった。Cluster 1と比較して、Cluster 2は脈波伝播速度上昇のリスクが高く、Cluster 3は重症低血糖のリスクが高く、Cluster 4は多発神経障害、脈波伝播速度上昇、心血管疾患リスクスコア高値のリスクが高かった。

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2026/10/26

 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み

論文タイトル
A conserved Hox9–10 code underlies the early establishment of hind appendage progenitors in zebrafish and the Iberian ribbed newt
論文タイトル(訳)
 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み
DOI
10.1073/pnas.2621291123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2621291123
著者名(敬称略)
中澤 秀道 川村 哲規 他
所属
埼玉大学大学院理工学研究科生命科学部門・理学部生体制御学科
著者からのひと言
 2025年のeLife誌で発表した胸鰭の研究に続き、今回は腹鰭の形成に不可欠なHox遺伝子群を明らかにしました。特に、魚の腹鰭と両生類の後肢に共通する仕組みを発見したことは、胸鰭と腹鰭、さらには私たちの手足に、なぜ共通のHoxA/D9–13による形態形成の仕組みが備わっているのか、その進化的起源を考える重要な手がかりとなります。2021年のHoxクラスター欠失変異体の作製から研究を積み重ね、学生や共同研究者の皆さんと今回の成果にたどり着けたことを大変うれしく思います。

抄訳

 魚の胸鰭と腹鰭は、進化の過程で四肢動物の前肢と後肢へと変化し、私たちの手足につながりました。これらの器官は形が大きく異なりますが、その複雑な形をつくるために共通のHoxA/D9–13遺伝子システムを利用しています。しかし、この仕組みが進化の過程でどのように成立したのかは不明でした。
本研究では、ゼブラフィッシュの5つのHoxA/D9–10遺伝子を同時に欠失させると、腹鰭のもとになる細胞集団が検出されなくなり、腹鰭が完全に消失することを発見しました。さらに、両生類のイベリアトゲイモリでもHox9–10遺伝子群を破壊すると、後肢の形成が大きく損なわれました。
これらの結果は、魚の腹鰭と四肢動物の後肢の形成開始に共通するHox9–10の働きが、進化を通じて保存されていることを示しています。また、もともと体の後方を決めていたHox遺伝子の仕組みが、まず腹鰭の形成に利用され、やがて胸鰭にも共通するHoxA/D9–13システムへと発展したという進化モデルを支持する成果です。

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2026/10/23

雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割

論文タイトル
Role of nuclear receptor NR4A2 in prolactin secretion by female rat lactotrophs.
論文タイトル(訳)
雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割
DOI
10.1530/JOE-26-0188
ジャーナル名
The Journal of endocrinology
巻号
J Endocrinol (2026) 270 (3): e260188
著者名(敬称略)
寺島 涼太 他
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医生理学研究室
著者からのひと言
NR4A2は、神経伝達物質の合成や神経細胞の機能維持など、多様な機能に関わる転写因子です。これまで主に遺伝子発現の調節を通じた働きが注目されてきましたが、本研究では、ホルモンの放出過程にも関与する可能性を示しました。この新たな視点が、下垂体にとどまらず、神経伝達物質やさまざまなホルモンの分泌調節機構、さらには関連する病態の解明につながることを期待しています。

抄訳

プロラクチン (PRL) は、下垂体のラクトトロフから分泌され、乳汁産生を促すホルモンです。しかし、その働きは広く、雌では発情周期や妊娠、偽妊娠、授乳などの生殖状態に応じて、分泌量が大きく変わります。成熟ラクトトロフは高い分泌能を備えながら、ドパミンによる持続的な抑制を受けています。抑制を受けつつ、必要に応じて分泌を速やかに変える。本研究では、その特徴的な仕組みに着目し、分泌制御に関わる因子として、刺激応答性核内受容体NR4Aファミリーを見出しました。成熟雌ラットでは、妊娠や泌乳に伴うPRL分泌の亢進とともにNr4a遺伝子の発現が上昇し、分泌が低下する条件では発現も減少しました。さらに、下垂体初代培養細胞でNr4a2を抑制すると、Prl遺伝子の発現は変わらず、PRL分泌が選択的に低下しました。これらの結果は、NR4A2がPRLの放出過程に関わり、成熟ラクトトロフの高い分泌能を支える可能性を示しています。

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2026/10/23

胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する

論文タイトル
Constitutive sporulation in wild fission yeast enhances insect-mediated survival.
論文タイトル(訳)
胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する
DOI
10.1073/pnas.2607475123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2607475123
著者名(敬称略)
仁木 宏典 筆頭著者、連絡著者
清家 泰介 連絡著者
所属
国立遺伝学研究所 微生物機能研究室
九州工業大学 大学院情報工学研究院 生命情報工学研究系
著者からのひと言
ジャポニカス分裂酵母は全国各地に生息しており、道端の花や樹皮など、ごく身近な場所にいます。その酵母が昆虫との共生によって今も進化しています。生物の適応進化を身近に感じてもらえる研究です。(仁木)
なぜ、栄養が十分にあるのに胞子をつくる酵母がいるのか。今回の研究では、その不思議な性質が自然界での生存に有利に働くことがわかりました。実験室では見えてこない野生酵母の巧みな生存戦略と、微生物の進化の面白さを感じてもらえれば嬉しいです。(清家)

抄訳

酵母は、栄養条件に応じて栄養増殖と有性生殖を使い分ける。ところが、国内のショウジョウバエから分離されたジャポニカス分裂酵母は、栄養条件が良いにもかかわらず、恒常的に胞子を形成した。この形質は栄養条件が良い環境では増殖に不利であるにもかかわらず、国内各地から同じ形質を持つジャポニカス分裂酵母が見つかった。
そこで、昆虫による捕食がこの形質を維持する選択圧になっていると考え、ショウジョウバエとジャポニカス分裂酵母を用いた共生実験を行った。その結果、ハエによる捕食と消化が、恒常的に胞子を形成する形質に対する正の選択圧になり得ることが明らかになった。また、この形質は、有性生殖の開始を調節する複数の因子に生じた比較的軽微な変異が組み合わさることで獲得されたことが示唆された。
以上の結果から、国内の野生酵母集団では、昆虫との相互作用を介した自然選択により、恒常的な胞子形成という新たな形質を持つ遺伝集団が形成され、維持されていると考えられる。

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2026/10/22

ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる

論文タイトル
Network topology creates independent control of multiple checkpoints in the cell cycle system.
論文タイトル(訳)
ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる
DOI
10.1073/pnas.2537815123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (39) e2537815123
著者名(敬称略)
山内 悠平 望月 敦史 他
所属
京都大学医生物学研究所 生命システム研究部門・数理生物学分野 望月理論生物学研究室
著者からのひと言

抄訳

細胞が生きるためには、細胞内で様々な機能を持った反応が働き、それぞれが適切に制御される必要があります。ある反応の生成物が別の反応の材料になることで、細胞内の全ての反応が連結したひとつのネットワークとなることが知られています。では、ひとつにつながった動的システムで、異なる機能を担う異なる物質を、それぞれ個別に制御することは果たして可能でしょうか? 京都大学医生研のグループはこれまでに、反応ネットワークの一部がある数式を満たすと「緩衝構造」となり、他の部分から独立して制御される「モジュール性」を獲得することを、数学理論によって示してきました。今回、東京科学大学や京都大学生命科学研究科の研究グループとの共同研究により、細胞のライフステージを支配する「細胞周期システム」に、実際にこの緩衝構造が存在し、重要な役割を果たしていることを実証しました。本研究により、数学的な予測であった緩衝構造が実際に重要な生物機能を果たしていることが示され、細胞周期システムの理解が更新されました。さらには理論と実験から、未知の情報を得る、新しいシステム生物学の方法が提案されました。

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2026/10/21

 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov.

論文タイトル
Ureaplasma rhincodontis sp. nov. isolated from the faeces of whale shark (Rhincodon typus)
論文タイトル(訳)
 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007317
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology  Volume 76, Issue 10
著者名(敬称略)
瀬川 太雄 他
所属
日本大学生物資源科学部 獣医学科 獣医衛生学研究室
著者からのひと言
 本分離株の名称「TOSA-KAIYUᵀ」は,ジンベエザメが飼育されていた高知県土佐の地名と,共同研究先である海遊館にちなんでいます.
イルカ由来のUreaplasma cetiの培養で得た知見をもとに,ジンベエザメの糞便から新たなウレアプラズマ属細菌を分離できました.
株名には,採取地と研究をともに進めてくださった海遊館の皆様への感謝を込めています.

抄訳

 これまでに私たちは独自の培養法を確立し,イルカから新種細菌Ureaplasma cetiを分離することに成功しました(Segawa et al., Int J Syst Evol Microbiol. 2025).
一方、ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便には,U. ceti と近縁と考えられるウレアプラズマ属細菌が優占することが報告されていましたが,培養分離には至っていませんでした.
そこで本研究は,U. cetiの培養法を基盤に条件を応用することで,ジンベエザメの糞便からこの細菌の分離培養に成功しました.
そして分離株の全ゲノム解析および培養性状の解析を行った結果,本菌がウレアプラズマ属の新種であることを明らかにし,ジンベエザメの学名に因んで「Ureaplasma rhincodontis」と命名しました.
これまで正式に命名されたウレアプラズマ属細菌はすべて恒温脊椎動物から分離されており,本菌は変温脊椎動物から初めて分離・培養されたウレアプラズマ属細菌に位置付けられます.

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2026/10/21

シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計

論文タイトル
Quantum Fisher information and photon statistics from shift current shot noise.
論文タイトル(訳)
シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計
DOI
10.1073/pnas.2611254123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2611254123,
著者名(敬称略)
Evgenii Barts 永長 直人 他
所属
理化学研究所 基礎量子科学研究プログラムおよび創発物性科学研究センター
著者からのひと言
光検出器、特にテラヘルツ領域におけるそれは、自動運転を含む多くの応用が期待されていますが、将来は量子情報操作への展開が考えられます。本研究は量子としての光の性質が光検出器の電気信号としてどのように現れるかを理論的に明らかした仕事であり、その基礎学理を与える一歩であると考えています。

抄訳

光は一見なめらかに見えますが、微視的には「光子」と呼ばれる粒として振る舞い、その数にはゆらぎがあります。このゆらぎには、光の平均的な明るさだけではわからない、量子としての性質が隠れています。本研究では、その情報を電気信号として読み出す新しい方法を提案しました。利用するのは、反転中心を持たない結晶に光を当てると、電子の位置がわずかにずれることで生じる「シフト電流」です。この仕組みにより、光子数のゆらぎを、流れる電気量のゆらぎへと変換できます。つまり、電気信号の細かな変動を調べることで、光の隠れた性質を知ることができます。さらに、一定の条件のもとでは、この変動から、光を使ってどれほど精密な測定ができるかを示す量子フィッシャー情報量と呼ばれる量も得られます。電子を次々に増やして信号を強める仕組みなどを必要とせず、光と結晶の性質を直接利用する点が特徴です。光の量子的な性質を電気で読み取る新たな技術として、高感度な光検出や精密測定への応用が期待されます。

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2026/10/21

 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす

論文タイトル
Skin-resident CXCR6+ memory CD4+ T cells and dendritic cells form dermal perivascular hubs that drive relapse in allergic dermatitis
論文タイトル(訳)
 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす
DOI
10.1016/j.immuni.2026.09.010
ジャーナル名
Immunity
巻号
Immunity, October 12, 2026
著者名(敬称略)
椛島 健治 他
所属
京都大学大学院医学研究科 皮膚科学
著者からのひと言
 本研究は、途中で何度も挫折しそうになる困難に直面しましたが、そのたびに筆頭著者の朝比奈良太君が粘り強く乗り越え、ようやく実を結んだものです。今回同定した分子機構は、アトピー性皮膚炎の再燃を防ぐ、すなわち対症療法にとどまらない、より根本的な治療法の開発につながる可能性を秘めています。さらに、この仕組みはアトピー性皮膚炎に限らず、他の慢性炎症性疾患にも共通する可能性があり、今後の幅広い疾患への応用を期待しています。

抄訳

 アトピー性皮膚炎は、治療によって症状が改善しても再発を繰り返すことが多い。その背景には、皮膚に長期間残存する組織常在性メモリーT細胞(TRM細胞)の関与が示唆されているが、その維持機構は十分に解明されていなかった。
本研究では、複数のアレルギー性皮膚炎モデルを用いて、CXCR6を発現するCD4陽性TRM細胞が、炎症の再発を迅速に誘導する病原性細胞集団であることを明らかにした。さらに、これらの細胞は皮膚の血管周囲でCD301b陽性樹状細胞(cDC2)と集積し、CXCL16–CXCR6を介した相互作用によって局所で維持されることを見いだした。このシグナルを阻害すると、病原性TRM細胞の増殖と維持が抑制された。
興味深いことに、ヒトのアトピー性皮膚炎においても、IL-13阻害薬による治療で症状が改善した後の皮膚に、同様の細胞集積が残存していた。
本研究は、アトピー性皮膚炎が再発する仕組みの一端を解明するとともに、CXCL16–CXCR6経路を標的とした再発予防につながる新たな治療戦略の可能性を示した。

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2026/10/20

細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する

論文タイトル
Quiescence to proliferation transition regulates asynchronous mitochondrial DNA replication dynamics
論文タイトル(訳)
細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する
DOI
10.1073/pnas.2602028123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2602028123
著者名(敬称略)
宮川 清、細谷 紀子
所属
東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 放射線分子医学部門
著者からのひと言
 ミトコンドリアDNAでは、細胞核DNAとは異なり、リーディング鎖とラギング鎖の複製が同期しないことが知られていましたが、なぜ極めて単純な環状構造DNAにこの非同期複製が必要とされるかは長年不明でした。今回その1分子解析によって生物学的意義の一つが解明されたことによって、エネルギー代謝と細胞機能の関係について今後新しい展開が期待されます。

抄訳

一つのヒト細胞は数百から数千コピーのミトコンドリアDNAを有しますが、その一部のみが細胞周期に関係なく複製します。リーディング鎖とラギング鎖の非同期複製がミトコンドリアDNAの主な複製機構とされていますが、これまでは、細胞内で刻々と変化するDNA複製動態を観察することが難しかったために、その制御機構の解明は困難でした。本論文は、各鎖の複製開始部位と時間を鑑別するミトコンドリアDNA1分子解析法を用いることにより、細胞の休止期から増殖期への移行過程では、ミトコンドリアDNAの鎖特異的な複製頻度が動的に解離し、複製・転写に必要な分子の要求度が変化することを示しました。すなわち、この過程では、ミトコンドリアRNAポリメラーゼの複製開始における要求度が高まるとともに、DNA障害部位でDNA再プライミングを行うプライマーゼ-ポリメラーゼの要求度が低下します。このように、単鎖レベルで正確にミトコンドリアDNA複製頻度を定量化することで、休止期から増殖期への移行過程におけるミトコンドリアDNA複製機構の動的な性状が明らかになりました。

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2026/10/19

 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス

論文タイトル
Trans- and cis-interaction dynamics of cadherin complexes on membranes visualized by high-speed atomic force microscopy
論文タイトル(訳)
 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス
DOI
10.1073/pnas.2620441123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2620441123
著者名(敬称略)
西口 茂孝 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
モレキュラーバイオシステム研究部門
著者からのひと言
 細胞間接着タンパク質の機能は、隣り合う膜間の結合 (トランス結合) と同一膜上の結合 (シス結合) によって異なることが推察されていますが、これらの相互作用を識別して解析することは実現されていませんでした。本研究では、高速原子間力顕微鏡と人工膜システムを組み合わせることによって、膜タンパク質のトランス、シス結合を識別しながらリアルタイムで解析することを可能にしました。様々な膜タンパク質の相互作用解析に応用可能な成果です。

抄訳

 カドヘリンは、細胞同士を接着させ、動物のからだを形成・維持するために重要な細胞間接着タンパク質です。カドヘリンによる細胞間接着には、向かい合う細胞間のトランス相互作用と、同じ細胞膜上のシス相互作用による分子の集合が重要と考えられています。しかし、膜上でこれらの相互作用がどのように形成され、カドヘリンがどのように集合するのか、その動的な過程は十分にわかっていませんでした。本研究では、カドヘリンのトランス・シス相互作用を人工膜上に再構成し、高速原子間力顕微鏡を用いて直接観察しました。その結果、トランス結合したカドヘリンが向きや位置を変えながら動的に相互作用する様子や、シス相互作用を介した多様な相互作用パターンを捉えました。さらに、過去に報告された結晶構造とは異なる複合体構造も観察され、カドヘリンが膜上で複数の会合経路を介して動的かつ多様な構造を形成することが示唆されました。

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2026/10/19

 S-アデノシル-L-ホモシステインはYBT1 ABCトランスポーターを介して寿命を延長する適応応答(ホルミシス)を誘導する

論文タイトル
S-adenosyl-L-homocysteine triggers an adaptive response that extends lifespan through the YBT1 ABC transporter
論文タイトル(訳)
 S-アデノシル-L-ホモシステインはYBT1 ABCトランスポーターを介して寿命を延長する適応応答(ホルミシス)を誘導する
DOI
10.1073/pnas.2621286123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2621286123
著者名(敬称略)
益村晃司 川嵜紗矢佳 水沼正樹 他
所属
広島大学大学院統合生命科学研究科 生物工学プログラム 健康長寿学研究室
著者からのひと言
「適度なストレスは体に良い」とされる仕組みが、世界で初めて解明されました。これまで、軽微なストレスが寿命を延ばす現象は知られていましたが、「どの程度なら健康に良く、どこからが悪影響か」という境界線は長年の謎でした。今回、細胞内の特定の酵素がその運命を握るスイッチであることや、ストレスが若返りシグナルを起動する仕組みを特定しました。

抄訳

 細胞やDNAに傷をつける「悪玉」とされてきた活性酸素(ROS)ですが、軽微なストレスはむしろ細胞の防御力を高めて寿命を延ばす「善玉(ホルミシス効果)」として機能します。しかし、「どの程度のストレスなら善玉になり、どこを超えると悪玉になるのか」という運命の境界線(閾値)は、世界の老化研究において長年の大きな謎でした。
本研究では、メチオニン代謝物であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の量を調節する「SAH加水分解酵素」の活性を適度に(部分的に)抑えることで、細胞内で一過性のマイルドなROS(善玉)が発生し、これが引き金となって寿命が延長することを世界で初めて定量的に明らかにしました。逆に、阻害が強すぎると悪玉ROSが溜まり短命になるという「二面性」の境界線を握るスイッチが、まさにこの酵素であることを突き止めました。
さらに、この長寿効果の下流で働く鍵因子として、液胞膜(リソソーム)に存在するABCトランスポーター「Ybt1」を特定しました。通常は排出ポンプと考えられているYbt1が、老化を促進する代謝物質・S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)を液胞内へ空間的に「隔離」するという、これまで知られていなかった役割を担っていることを立証しました。これにより細胞内が疑似的な「メチオニン制限状態」となり、若返りシグナルであるAMPKの活性化やTORC1の抑制、オートファジーが引き起こされて寿命が延長します。
本研究の成果は、食事制限を伴わない健康寿命の延伸や、メチオニンに依存して増殖するがん細胞を標的とした新たな治療戦略の確立に大きく貢献するものと期待しています。

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2026/10/19

TCR–mTORC1シグナルはTETタンパク質の翻訳促進を介して制御性T細胞におけるFoxp3発現のエピジェネティックな安定化を促す

論文タイトル
TCR–mTORC1 signaling promotes epigenetic stabilization of Foxp3 expression in regulatory T cells via TET protein translation
論文タイトル(訳)
TCR–mTORC1シグナルはTETタンパク質の翻訳促進を介して制御性T細胞におけるFoxp3発現のエピジェネティックな安定化を促す
DOI
10.1073/pnas.2612904123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2612904123
著者名(敬称略)
筆頭著者:木下 誠秀.連絡著者:中島 啓、堀 昌平
所属
東京大学大学院薬学系研究科 免疫・微生物学教室
著者からのひと言
私たちの体の細胞は、周囲からさまざまな刺激を受け、異なる性質や機能を獲得します。しかし、こうした一過性の刺激が、どのように遺伝子の働きを長期にわたって変化させ、細胞の性質を安定的に維持するのか、その仕組みは十分に分かっていません。本研究では、制御性T細胞をモデルとして、細胞外からの刺激がDNA脱メチル化を促し、細胞の性質を安定化させる分子機構の一端を明らかにしました。この発見が、細胞分化と細胞記憶の仕組みの解明に貢献するとともに、免疫寛容の成立と維持の理解を深め、将来的には制御性T細胞を用いた細胞療法の開発にもつながることを期待しています。

抄訳

制御性T細胞(Treg)は、病的な免疫応答を抑え、免疫寛容の維持に重要な役割を果たしています。その機能を安定して維持するには、マスター転写因子Foxp3の持続的な発現が不可欠であり、これにはFoxp3遺伝子の発現を制御するエンハンサー領域(TSDR)がT細胞受容体(TCR)刺激依存的にDNA脱メチル化を受けることが重要です。しかし、TCR刺激がどのような仕組みでDNA脱メチル化を誘導するのかは不明でした。本研究では、培養系で誘導したTregを用い、強く持続するTCRシグナルがmTORC1を活性化し、DNA脱メチル化を担うTET2とTET3の翻訳を促進することで、TSDRのDNA脱メチル化を促進し、Foxp3発現の安定化と免疫抑制機能の獲得につながることを明らかにしました。さらに、マウス生体内でもmTORC1がFoxp3のエピジェネティックな制御に関与することを示しました。本成果は、抗原受容体シグナルとエピジェネティックな遺伝子発現制御を結びつける新たな分子機構を明らかにし、安定したTregを用いた細胞療法の開発にもつながると期待されます。

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2026/10/19

ランダムPCR法とナノポア全ゲノムシーケンシングによる血液培養陽性化前の真菌血流感染症の検出

論文タイトル
Random PCR-based nanopore whole-genome sequencing enables pre-positivity detection of fungal bloodstream infections
論文タイトル(訳)
ランダムPCR法とナノポア全ゲノムシーケンシングによる血液培養陽性化前の真菌血流感染症の検出
DOI
10.1128/spectrum.00478-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00478-26
著者名(敬称略)
吉岡 育哲、内田 百岳、 高橋 弘喜 他
所属
千葉大学真菌医学研究センター 微生物資源分野 微生物創生プロジェクト
著者からのひと言
本研究で強調したい点は、従来の血液培養システムで陽性と判定される前の段階で、血液培養検体から原因真菌を直接同定できることである。宿主由来DNAの選択的除去とリアルタイムナノポアシーケンシング技術を組み合わせることで、約7時間で菌種レベルの同定が可能となった。本技術により、臨床現場で適切な抗真菌薬治療をより早期に開始できるようになり、生命を脅かす重篤な真菌血流感染症患者の予後改善に貢献することが期待される。

抄訳

真菌による血流感染症は致死率の高い重篤な感染症であり、患者の予後改善には原因真菌の迅速かつ正確な同定が重要である。しかし、従来の血液培養法では、原因真菌の検出・同定までに数日を要することが課題となっている。本研究では、ランダムPCR法とナノポアシーケンシング技術を組み合わせ、血液培養が陽性となる前の段階で原因真菌を検出・同定する新たな解析手法を開発した。本手法では、血液培養検体から宿主由来DNAを選択的に除去した後、真菌DNAを増幅し、リアルタイムで全ゲノムシーケンシング解析を行う。これにより、検体処理から約7時間で原因真菌を菌種レベルで同定することが可能となった。さらに、得られたゲノム情報は薬剤耐性関連変異の検出や菌株間の遺伝的関連性の解析にも活用できる。本技術は、真菌血流感染症の早期診断と適切な抗真菌薬治療の迅速な開始を可能にし、患者の予後改善に貢献することが期待される。

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2026/10/15

シロアリ腸内菌によるセルロース分解と共役した細胞外電子移動

論文タイトル
Cellulose-fueled extracellular electron transfer in termite gut microbes.
論文タイトル(訳)
シロアリ腸内菌によるセルロース分解と共役した細胞外電子移動
DOI
10.1128/aem.01272-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e01272-26
著者名(敬称略)
Xiao Deng 他
所属
国立研究開発法人物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター バイオ材料分野 電気化学ナノバイオグループ
著者からのひと言

抄訳

シロアリは、木材の主成分であるセルロースを効率よく分解できる生き物です。その秘密を支えているのが、腸内にすむセルロース分解微生物です。本研究では、シロアリ腸内細菌がセルロースを分解しながら、細胞の外へ電子を放出して「電流」を生み出すという「細胞外電子移動」を行うことを発見しました。さらに、細菌自身が「電子メディエーター」を分泌し、それが細胞内で生じた電子を細胞の外へ運ぶ過程で重要な役割を果たすことを発見しました。また、生きたシロアリからそのまま取り出した腸内微生物群そのものでも、セルロース代謝と共役した電流生成が確認されました。これは、シロアリ腸内菌が木質バイオマスに蓄えられたエネルギーを電気として取り出す仕組みの一端を示すものです。将来的には、廃木材などの未利用バイオマスから電気や有用物質を生み出す、環境調和型バイオ技術への応用が期待されます。

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2026/10/15

亜テルル酸耐性と糖発酵試験を用いた高病原性Klebsiella pneumoniaeの表現型スクリーニング

論文タイトル
Phenotypic screening of hypervirulent Klebsiella pneumoniae using tellurite resistance and carbohydrate fermentation testing
論文タイトル(訳)
亜テルル酸耐性と糖発酵試験を用いた高病原性Klebsiella pneumoniaeの表現型スクリーニング
DOI
10.1128/spectrum.01838-26
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e01838-26
著者名(敬称略)
大山 晃司 鈴木 匡弘 他
所属
藤田医科大学 医学部 微生物学講座
著者からのひと言
高病原性Klebsiella pneumoniaeを一般の臨床検査室で簡便に識別することは容易ではありません。従来、string testが簡便なスクリーニング法として用いられてきましたが、その判別性能には限界があります。本研究では、亜テルル酸耐性と糖発酵試験を組み合わせることで、高病原性K. pneumoniaeを簡便にスクリーニングできる可能性を示しました。

抄訳

高病原性Klebsiella pneumoniae(hvKp)は重篤な侵襲性感染症を引き起こすが、一般の臨床検査室で簡便にスクリーニングすることは難しい。本研究では、K. pneumoniae species complex 193株を対象に、亜テルル酸耐性と糖発酵試験を評価した。全ゲノム解析により、5つの病原性関連遺伝子のうち4つ以上を保有する株を高病原性株と定義した。高病原性株とter遺伝子の保有には強い関連があり、亜テルル酸添加培地での発育はter遺伝子の保有状況とよく一致した。亜テルル酸カリウムとアドニトールを添加したマッコンキー寒天培地を用いた高病原性株のスクリーニング法は、感度86.8%、特異度89.6%で、従来のstring test(感度73.5%、特異度72.0%)と比較して高い判別性能を示した。また、ST23の全株がズルシトール発酵陽性、L-ソルボース発酵陰性を示した。本法は、hvKpの簡便なスクリーニングに有用である可能性があり、糖発酵パターンは特定の高病原性関連系統の推定同定にも役立つと考えられた。

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2026/10/15

浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性

論文タイトル
Fine-scale structural diversification among closely related Legionella pneumophila isolates from a bath-associated environmental reservoir.
論文タイトル(訳)
浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性
DOI
10.1128/aem.01127-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e01127-26
著者名(敬称略)
中嶋 直樹 他
所属
神奈川県衛生研究所 微生物部
著者からのひと言
本研究では、個々の検体から多数のコロニーを分離して解析することで、同一浴場環境中に存在するレジオネラ属菌のゲノム構造の多様性を明らかにしました。本研究が、レジオネラ属菌の環境中での多様化の理解や、感染源調査におけるゲノム解析手法の検討に役立てば幸いです。

抄訳

レジオネラ症の感染源調査では、コアゲノム一塩基変異(cgSNV)解析が分離株間の遺伝的近縁性の評価に用いられるが、近縁株間に存在するゲノム構造の違いを十分に捉えられない可能性がある。本研究では、レジオネラ症患者および関連する浴場施設の環境試料から分離されたLegionella pneumophila 138株を対象に、cgSNV解析と比較ゲノム構造解析を組み合わせ、近縁株間のゲノム多様性を調査した。cgSNV解析では全株間のSNV差が最大20であり、臨床由来株が遺伝的に均一な系統を形成する一方、環境由来株には多様な遺伝子型が認められた。さらに、代表48株のコンプリートゲノム配列を比較した結果、ゲノムシンテニーはほぼ保存されていたものの、挿入配列(IS)、特にIS256の挿入位置に顕著な多様性が認められた。同一のcgSNV遺伝子型を共有する株間でもIS挿入パターンが異なっており、ISに関連した構造的変異がコアゲノムSNVの蓄積とは独立して生じ得ることが示唆された。

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