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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2022/09/06

III型プロコラーゲンは、通常の小胞状および管状のキャリアーによって、小胞体からゴルジ装置へと輸送される

論文タイトル
Endoplasmic reticulum–to–Golgi trafficking of procollagen III via conventional vesicular and tubular carriers
論文タイトル(訳)
III型プロコラーゲンは、通常の小胞状および管状のキャリアーによって、小胞体からゴルジ装置へと輸送される
DOI
10.1091/mbc.E21-07-0372
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 33, Issue 3
著者名(敬称略)
平田 幸大, 細川 暢子 他
所属
京都大学 医生物学研究所 再生組織構築研究部門

抄訳

コラーゲンは細胞外マトリックスを構成する主要なタンパク質で、小胞体で生合成された後にゴルジ装置を通って細胞外に分泌される。コラーゲンは3本のα鎖が集まって固いトリプルヘリクスを形成し、その長さは300-400 nmもある。このように大きなタンパク質が、どのようにして小胞体からゴルジ装置へと輸送されるかについては十分理解されていない。そこで本研究では線維形成性コラーゲンの細胞内輸送機構を解明するため、GFP融合タンパク質を作製し、ライブセルイメージング法を用いて解析した。プロコラーゲン分子は小胞体内でプロリン水酸化を受けて成熟するが、III型プロコラーゲンはこの過程で、液-液相分離様の液滴を形成した。この大きな液滴には小胞体シャペロンタンパク質が含まれており、ER exit siteがその周囲を取り囲んでいた。その後、III型プロコラーゲンは、小胞状および管状のキャリアーによって、小胞体からゴルジ装置へと輸送される事が明らかとなった。このキャリアーは、ERGIC53やRAB1Bといったマーカータンパク質を含んでおり、またこの輸送にはTANGO1とCUL3という分子が必要であった。さらにIII型プロコラーゲンは通常の積み荷タンパク質と同じ小胞に乗って輸送されることが明らかになった。以上の結果から、III型プロコラーゲンは通常より大きな小胞によってER exit siteから出芽し、すぐにERGIC(小胞体-ゴルジ中間区画)と融合した後、通常の積み荷タンパク質と同様の経路でゴルジ装置へ運ばれると考えられる。

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2022/09/05

遺伝子改変マウス作製を高度化するための、胚性幹細胞を用いたCRISPR/Cas9による高効率遺伝子ターゲティング法

論文タイトル
CRISPR/Cas9-Mediated Highly Efficient Gene Targeting in Embryonic Stem Cells for Developing Gene-Manipulated Mouse Models
論文タイトル(訳)
遺伝子改変マウス作製を高度化するための、胚性幹細胞を用いたCRISPR/Cas9による高効率遺伝子ターゲティング法
DOI
10.3791/64385
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64385
著者名(敬称略)
小沢 学 他
所属
東京大学医科学研究所 システム疾患モデル研究センター 生殖システム研究分野

抄訳

CRISPR/Cas9システムの登場により、受精卵を用いたゲノム編集による遺伝子改変マウスの開発が可能になった。しかしながら、受精卵ゲノム編集では、小さなインデル変異の導入によるフレームシフト型遺伝子ノックアウトマウスの作製効率は高いものの、長鎖DNAノックイン(KI)の作製効率は依然として十分であるとは言えない。これに対し、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた遺伝子ターゲティングとキメラマウス樹立による遺伝子改変マウス作製法は、in vitroでハイスループットのターゲティングが行えること、また複数遺伝子座の同時改変がきるなど数多くのメリットが存在する。加えて、BALB/c系統といったin vitroでの受精卵の取り扱いが困難なマウスも、ES細胞を用いたターゲティングには利用可能である。本プロトコルでは、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を応用した、ES細胞の長鎖DNA KIの最適化方法と、その後のキメラマウス作製による遺伝子操作モデルマウスの作製法について詳細に説明する。

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2022/09/05

覚醒マウスにおけるミクログリア動態と神経活動の生体内同時イメージング

論文タイトル
Simultaneous Imaging of Microglial Dynamics and Neuronal Activity in Awake Mice
論文タイトル(訳)
覚醒マウスにおけるミクログリア動態と神経活動の生体内同時イメージング
DOI
10.3791/64111
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64111
著者名(敬称略)
丸岡 久人、岡部 繁男 他
所属
東京大学大学院医学系研究科・医学部 神経細胞生物学

抄訳

脳機能は末梢組織由来の信号の影響を絶えず受けるため、脳のグリア細胞がそのような信号を神経細胞に伝える仕組みを解明することは、近年重要性が増している臓器間ネットワークの全容を解明する上で極めて重要である。脳の免疫細胞であるミクログリアは神経回路形成と維持に深く関与していることから、ミクログリアと神経回路との相互作用の検証に資する生体内イメージング技術の確立が求められている。そこで本論文では、覚醒マウスのミクログリア動態と神経活動を同時にイメージングする技術について解説する。ミクログリアがEGFPで標識されるCX3CR1-EGFPトランスジェニックマウスの第一次視覚野第2/3層に、アデノ随伴ウイルスを用いて赤色蛍光カルシウムインディケータータンパク質であるR-CaMPを発現させた。また同時に注入部位の直上に観察窓を設置した。術後4週間後、生体内2光子イメージングにより覚醒マウスからミクログリア動態と神経活動をサブ秒の時間分解能で同時に記録することができた。本技術により、末梢の免疫状態に反応するミクログリア動態と脳の内部状態を符号化している神経活動との相互作用を明らかにすることが期待できる。

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2022/08/31

BROMI/TBC1D32は、CCRK/CDK20およびFAM149B1/JBTS36とともに、ICK/CILK1が関与する繊毛内タンパク質輸送装置の方向転換に寄与する

論文タイトル
BROMI/TBC1D32 together with CCRK/CDK20 and FAM149B1/JBTS36 contributes to intraflagellar transport turnaround involving ICK/CILK1
論文タイトル(訳)
BROMI/TBC1D32は、CCRK/CDK20およびFAM149B1/JBTS36とともに、ICK/CILK1が関与する繊毛内タンパク質輸送装置の方向転換に寄与する
DOI
10.1091/mbc.E22-03-0089
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 33, Issue 9
著者名(敬称略)
里田 裕紀, 加藤 洋平, 中山 和久 他
所属
京都大学大学院 薬学研究科 生体情報制御学分野

抄訳

一次繊毛はさまざまな受容体などを含むアンテナ様のオルガネラである。繊毛内の順行性および逆行性のタンパク質輸送は、繊毛内タンパク質輸送(IFT)装置により行われている。BROMI/TBC1D32はCCRK/CDK20と相互作用し、ICK/CILK1キナーゼをリン酸化することで活性化させ、繊毛の先端におけるIFT装置の方向転換を制御することが知られている。ヒトのBROMI、CCRK、ICKの変異は繊毛病を引き起こし、これらの遺伝子を欠損したマウスも繊毛病の表現型を示すことが知られている。我々は、BROMIがCCRKだけでなく、進化的に保存された繊毛タンパク質であるCFAP20や、変異により繊毛病のジュベール症候群(Joubert syndrome: JBTS)を引き起こすFAM149B1/JBTS36と相互作用することを示した。さらに、FAM149B1がBROMIと同様にCCRKと直接相互作用していることも明らかにした。CCRKノックアウト(KO)、BROMI-KO、FAM149B1-KO細胞で観察された繊毛の異常(異常に長い繊毛、IFT装置とICKの繊毛先端への異常な蓄積)は互いに似ており、CCRKとCFAP20との結合に欠陥のあるBROMI変異体はBROMI-KO細胞における繊毛異常をレスキューすることができなかった。これらの結果から、CCRK、BROMI、FAM149B1、そしておそらくCFAP20が、ICKの制御下でのIFT装置の方向転換を制御していることが示唆された。

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2022/08/31

骨格繊毛病の原因となるIFT52の変異が繊毛機能障害を引き起こす分子基盤

論文タイトル
Molecular basis underlying the ciliary defects caused by IFT52 variations found in skeletal ciliopathies
論文タイトル(訳)
骨格繊毛病の原因となるIFT52の変異が繊毛機能障害を引き起こす分子基盤
DOI
10.1091/mbc.E22-05-0188
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 33, Issue 9
著者名(敬称略)
石田 大和, 加藤 洋平, 中山 和久 他
所属
京都大学大学院 薬学研究科 生体情報制御学分野

抄訳

繊毛内タンパク質輸送(IFT)を媒介するIFT装置は、IFT-A複合体とIFT-B複合体から構成される。IFT52は繊毛内順行輸送を媒介するIFT-B複合体のサブユニットをコードしており、その変異は繊毛病の短肋骨多指症候群(SRPS)を引き起こす。本研究では、SRPSの原因となるIFT52の変異が繊毛機能不全を引き起こす分子基盤を解明した。まず、タンパク質間相互作用解析の結果、SRPSの原因となる変異はIFT-B複合体の構築およびIFT-B複合体とヘテロ三量体キネシン2の相互作用を阻害することが明らかになった。また、IFT52ノックアウト細胞にSRPSの原因変異体を発現させてSRPS患者の遺伝子型を模倣した細胞では、繊毛形成が若干阻害され、繊毛に局在するIFT-B複合体が減少していた。さらに、SRPS患者の遺伝子型を模倣した細胞では、IFT-B複合体によって繊毛先端に輸送されるICKやKIF17が繊毛先端に局在しにくくなった。以上の結果から、IFT52の変異を持つSRPS患者に見られる繊毛機能不全は、繊毛に局在するIFT-B複合体が減少し、繊毛内順行輸送が阻害されることに起因すると考えられる。

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2022/08/30

マウス脳の広範囲にわたってカルシウムイメージングが可能な頭蓋窓の簡便な作製法

論文タイトル
In Vivo Wide-Field and Two-Photon Calcium Imaging from a Mouse using a Large Cranial Window
論文タイトル(訳)
マウス脳の広範囲にわたってカルシウムイメージングが可能な頭蓋窓の簡便な作製法
DOI
10.3791/64224
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64224
著者名(敬称略)
真仁田 聡、喜多村 和郎 他
所属
山梨大学医学部・大学院総合研究部 生理学講座神経生理学教室

抄訳

本研究では、市販されている食品用ラップ、透明シリコーンプラグ、およびカバーガラスを用いて大型(6x3mm)の頭蓋窓の作製方法を開発しました。この窓を用いて広視野および2光子カルシウムイメージングが同一マウスより実施でき、神経細胞やグリア細胞の単一細胞レベルの活動や細胞集団の活動を観察できます。この大きな窓にもかかわらず、激しい脳振動は観察されず、また1ヶ月以上、脳表面の状態は良好に保たれ高品質イメージングが可能でした。さらに、カルシウムセンサーを発現するアデノ随伴ウイルスの薄膜を表面に形成したラップで大型頭蓋窓を作製すると広範囲の大脳皮質の細胞にカルシウムセンサーを発現させることができ、広視野および2光子カルシウムイメージングが実施できました。この技術によって、大きな頭蓋窓を既存のものより簡易かつ安価に作ることができ、行動中のマウスにおける神経やグリア細胞の活動の詳細が観察できます。

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2022/08/26

深海性二枚貝シマイシロウリガイの共生細菌は一次卵母細胞外表面に伝播される

論文タイトル
Symbiont Transmission onto the Cell Surface of Early Oocytes in the Deep-Sea Clam Phreagena okutanii
論文タイトル(訳)
深海性二枚貝シマイシロウリガイの共生細菌は一次卵母細胞外表面に伝播される
DOI
10.2108/zs200129
ジャーナル名
Zoological Science
巻号
Zoological Science, Volume 38, Issue 2
著者名(敬称略)
井川-上田 かなえ、生田 哲朗 他
所属
海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター

抄訳

動物は微生物との共生関係を結ぶことによって、様々な環境適応能力を得ている。宿主の世代を越えて共生微生物を安定的に伝達することは、進化的な時間を通じて共生関係を維持する上で重要なイベントである。しかし、共生微生物の宿主世代を越えた伝播機構については断片的な理解しか進んでいない。深海性二枚貝類のシマイシロウリガイ(Phreagena okutanii)は、鰓上皮細胞内に化学合成独立栄養細菌を共生させ、生存に必要な全ての栄養源を共生細菌に依存している。本研究では、この共生細菌と宿主雌性生殖細胞との、生殖細胞の発達段階を通じた空間的な関連性の変化に注目した。まず、シマイシロウリガイの幼若個体の性判別法を確立し、雌の卵巣で観察される生殖細胞の発達段階を形態学的に分類した。次に、3次元蛍光観察および光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いて共生細菌と生殖細胞の卵巣内での局在性を調べた。その結果、共生細菌は幼若個体卵巣内の卵原細胞のクラスターにはなく、一次卵母細胞の細胞膜外表面に局在していることが分かった。これらの結果に基づいて、シマイシロウリガイにおける共生細菌の垂直伝播の過程とそのメカニズムについて考察した。

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2022/08/24

チアノーゼ性先天性心疾患に伴う褐色細胞腫及びパラガングリオーマの遺伝学的解析

論文タイトル
Genetic Analysis of Pheochromocytoma and Paraganglioma Complicating Cyanotic Congenital Heart Disease
論文タイトル(訳)
チアノーゼ性先天性心疾患に伴う褐色細胞腫及びパラガングリオーマの遺伝学的解析
DOI
10.1210/clinem/dgac362
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 107, Issue 9, September 2022, Pages 2545–2555
著者名(敬称略)
小笠原 辰樹, 小川 誠司 他
所属
京都大学 医学研究科 腫瘍生物学講座

抄訳

慢性的な低酸素環境は褐色細胞腫・パラガングリオーマ (PPGL) のリスク要因であり、例えばチアノーゼ性先天性心疾患患者では比較的高頻度にPPGLを併発する (CCHD-PPGL)。今回我々はCCHD-PPGLの腫瘍化メカニズムの解明を目的として、多発腫瘍を有する3人を含むCCHD-PPGL患者7人から腫瘍組織 (15個) 及び正常組織 (7個) を収集し、全エクソン解析を行った。変異解析ではPPGL 15検体中14検体で機能獲得型のEPAS1体細胞変異を認めた。多発腫瘍を有する3例の検討では、EPAS1変異を認めなかった1個の腫瘍を除き、全腫瘍において異なるEPAS1変異が観察されたことから、低酸素環境下ではEPAS1変異を有する腫瘍の発症が著しく促進されることが示唆された。興味深いことに、それら3例のうち1例は12歳時に低酸素血症は改善していたにもかかわらず、30歳及び35歳時にEPAS1変異を有する多数のPPGLの発症を認めた。このことから、CCHDによる低酸素環境は幼少期におけるEPAS1変異を有するクローンの陽性選択には重要であるが、その後のPPGL発生の過程において低酸素環境そのものは必要ではない可能性が示唆された。

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2022/08/24

主要な時計遺伝子Bmal1を腸管特異的に欠損するマウスでは、グルコース吸収が低下する

論文タイトル
The Lack of Bmal1, a Core Clock Gene, in the Intestine Decreases Glucose Absorption in Mice
論文タイトル(訳)
主要な時計遺伝子Bmal1を腸管特異的に欠損するマウスでは、グルコース吸収が低下する
DOI
10.1210/endocr/bqac119
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 163, Issue 9, September 2022, bqac119
著者名(敬称略)
大沼 真輔, 川井 正信 他
所属
大阪母子医療センター研究所 骨発育疾患研究部門

抄訳

腸管生物時計の破綻は、栄養素の吸収効率を低下させ、代謝恒常性に悪影響を及ぼしうる。グルコースは腸管から吸収される重要な栄養素であるが、腸管生物時計とグルコース吸収との関連は不明な点が多い。本研究では、主要な時計遺伝子Bmal1を腸管特異的に欠損するマウス(Bmal1 int-/- マウス)を用い、糖代謝表現型の解析を行った。Bmal1 int-/- マウスでは、小腸におけるグルコーストランスポーター遺伝子Sglt1の発現リズムが消失し、活動期のグルコース吸収が低下していた。BMAL1と二量体を形成するCLOCKが、Sglt1のエンハンサー領域に時間依存性に結合しSglt1のリズム性発現を誘導したが、Bmal1 int-/- マウスでは時間依存性の結合が消失していた。また、Bmal1 int-/- マウスでは肝グリコーゲン量が時間依存性に減少し、その結果、絶食時において脂肪分解関連遺伝子Pnpla2の発現が亢進していた。以上より、腸管生物時計の破綻はグルコース吸収を低下させ、全身のエネルギー代謝に影響を及ぼすことが示唆された。

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2022/08/23

フィブロネクチン及びインテグリンα5によるアクチン細胞骨格の再構築ならびに脂肪分化制御機構の解明

論文タイトル
Regulatory roles of fibronectin and integrin α5 in reorganization of the actin cytoskeleton and completion of adipogenesis
論文タイトル(訳)
フィブロネクチン及びインテグリンα5によるアクチン細胞骨格の再構築ならびに脂肪分化制御機構の解明
DOI
10.1091/mbc.E21-12-0609
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 33, Issue 9
著者名(敬称略)
上瀧 萌、信末 博行 他
所属
藤田医科大学 がん医療研究センター 遺伝子制御研究部門

抄訳

我々はこれまでに、細胞の形を決定するアクチン細胞骨格の動態変化が、転写調節因子MKL1を直接制御することで、脂肪分化を誘導することを明らかにしてきた。一方で、脂肪前駆細胞は分化に伴って、細胞外マトリックス(ECM)とその受容体であるインテグリンの発現を変化させ、自らの分化に至適な微小環境を再構築することが知られている。しかし、脂肪分化プロセスにおいてアクチン細胞骨格とECMの再構築がお互いにどのように制御し合うかについては未解明のままであった。本論文では、アクチンの脱重合を開始として、MKL1が阻害されると、細胞が自律的にフィブロネクチン-インテグリンα5の経路を抑制することで、脂肪細胞特有のアクチン細胞骨格への再構築が誘導され、成熟脂肪細胞へと終末分化することを明らかにした。

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2022/08/16

ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出

論文タイトル
Fluorescent In Situ Hybridization and 5-Ethynyl-2'-Deoxyuridine Labeling for Stem-like Cells in the Hydrozoan Jellyfish Cladonema pacificum
論文タイトル(訳)
ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出
DOI
10.3791/64285
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64285
著者名(敬称略)
冨士田壮佑(筆頭)、倉永英里奈、三浦正幸、中嶋悠一朗(責任・連絡) 
所属
東北大学大学院生命科学研究科(冨士田, 倉永)
東京大学大学院薬学系研究科(三浦、中嶋)

抄訳

イソギンチャク、サンゴ、クラゲなどの刺胞動物は、固着性のポリプや遊泳性のメデューサなど多様な形態と生活様式を示す。ヒドラやネマトステラといった刺胞動物のポリプの発生・再生には幹細胞や増殖細胞が寄与する。しかしながら、ほとんどのクラゲ、特にメデューサの段階での基礎的な細胞メカニズムはほとんど不明であることから、特定の細胞タイプを識別するための方法を開発することが重要である。本論文では、ヒドロ虫綱クラゲ Cladonema pacificum(和名:エダアシクラゲ)の幹細胞様の増殖細胞を可視化するプロトコルを報告する。Cladonemaに特徴的な分岐した触手は成体まで継続的に成長し、再生能力を維持するため、増殖細胞や幹細胞によって組織化される細胞メカニズムを研究するための研究モデルとなる。幹細胞マーカーを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により幹細胞様細胞を検出し、S期マーカーである5-ethynyl-2'-deoxyuridine(EdU)のパルス標識により増殖細胞を同定することが可能である。FISHとEdU標識の両方を組み合わせることで、活発に増殖している幹細胞を検出することができ、この技術は非モデル生物である他のクラゲや動物種にも広く応用することが可能である。

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2022/08/12

げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用

論文タイトル
Application of Passive Head Motion to Generate Defined Accelerations at the Heads of Rodents
論文タイトル(訳)
げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用
DOI
10.3791/63100
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63100
著者名(敬称略)
筆頭著者:前川 貴郊、 連絡著者:澤田 泰宏
所属
国立障害者リハビリテーションセンター研究所運動機能系障害研究部

抄訳

運動は様々な病気や運動器機能障害に効果を持つことが広く認められており、脳の疾患に対しても効果的であることが分かっている。しかしながら、運動効果の分子メカニズムの詳細は分かっていない。多くの身体運動、特にジョギングやウォーキングなどの有酸素運動では、足の着地時に頭部を含めた全身に衝撃が加わる。このことから、運動が持つ全身の恒常性維持の効果に物理的刺激を介した調節機構が関与している可能性が考えられる。この仮説を検証するために、適度な速度で運動させた時にげっ歯類の頭部に加わる加速度と同程度の上下方向の加速度を、受動的上下動によって、マウスの頭部に加えた。受動的頭部上下動は、脳内組織液を流動させ、前頭前皮質の神経細胞に物理的刺激を与え、セロトニン2A受容体の分布を細胞の表面から内部へと変化させ、セロトニンに対する応答性を低下させた。以上より、受動的頭部上下動が脳機能を調節し得ることが明らかとなった。本論文では受動的頭部振動を与える方法を記載している。

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2022/08/08

CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法

論文タイトル
Whole-Kidney Three-Dimensional Staining with CUBIC
論文タイトル(訳)
CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法
DOI
10.3791/63986
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63986
著者名(敬称略)
長谷川 頌、南學 正臣
所属
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

抄訳

腎臓病が進行するメカニズムには未解明の点が多く、その原因の一つとして腎臓の構造や機能を立体的・包括的に把握する手段がないことが挙げられる。腎臓には様々な構造が存在するが、既存の病理学的手法は組織の断面の観察にとどまっており、障害による腎臓の構造や機能の変化を3次元で捉えることができなかった。
組織透明化は3次元構造を保ったまま組織の内部構造を観察するために発展してきた手法である。著者たちは東京大学システムズ薬理学教室との共同研究で、組織透明化手法CUBICと3次元免疫染色を組み合わせてマウス腎臓の様々な構造(交感神経、動脈、糸球体、近位尿細管、集合管)を可視化する手法を確立し、それを応用することで「急性腎障害後の腎交感神経障害 (Kidney Int. 2019;96:129-138.)」および「糖尿病腎症における腎エネルギー代謝変化 (Kidney Int. 2020;97:934-950.)」など様々な腎臓病の病態を明らかにしてきた。
本論文は、上記の研究で用いた腎臓の3次元病態解析の詳細な手順をビデオプロトコルの形で解説したものである。

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2022/08/03

後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する

論文タイトル
Comprehensive Understanding of Inactivity-induced Gait Alteration in Rodents
論文タイトル(訳)
後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する
DOI
10.3791/63865
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63865
著者名(敬称略)
太治野  純一(筆頭)、伊藤 明良(連絡) 他
所属
オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンター
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻

抄訳

生体における廃用性変化は筋や骨の萎縮にとどまらず、動作の質的変化にも及ぶことが知られている。これらの動作変化を包括的に評価するため、ビデオ画像の3次元動作解析が近年用いられるようになった。しかし、統一された指標や評価基準は確立されておらず、同手法の普及を妨げる一因となっている。
そこで本論文では、3次元動作解析の手順を普遍的な形で示すことを目的に、後肢懸垂モデルラットの歩行動作解析を実施した。
Wistarラットを尾部懸垂によって後肢を免荷する懸垂群と通常飼育の対象群に分け、介入2週間後のトレッドミル上の歩行を3次元動作解析装置を用いて評価した。対象群と較べ、懸垂群では立脚相における膝・足関節の過伸展および股関節高位を示した。
3次元動作解析は客観性など利点が多い反面、検者によって実験手順が異なるなど普遍的な用法の周知は不足している。同手法の普及のためには、個別応用の元となる汎用性の高い基礎的知見が多く共有されることが望まれる。

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2022/08/01

アディポネクチンは、糖ならびに脂質代謝の概日リズムを制御する

論文タイトル
Adiponectin regulates the circadian rhythm of glucose and lipid metabolism
論文タイトル(訳)
アディポネクチンは、糖ならびに脂質代謝の概日リズムを制御する
DOI
10.1530/JOE-22-0006
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Journal of Endocrinology Volume 254: Issue 2 Pages: 121–133
著者名(敬称略)
和田 平、榛葉 繁紀 他
所属
日本大学 薬学部 薬学科 健康衛生学研究室

抄訳

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され、糖・脂質代謝を調節するサイトカインである。血清アディポネクチン濃度は日内変動を示すが、アディポネクチンの効果が時間依存的であるかどうかは不明である。そこで本研究では、糖・脂質代謝の概日リズム形成におけるアディポネクチンの役割を解析した。アディポネクチン欠損により、マウスの活動量ならびに摂食量が増加した。またアディポネクチン欠損は、マウス肝臓および血清脂質レベルの概日リズムに変化を与えた。肝臓からの超低密度リポタンパク質-トリグリセリド分泌において時間依存性が認められたが、これはアディポネクチン欠損により失われた。また、アディポネクチン欠損マウスの耐糖能は、休息期では正常であったが活動期では低下していた。この活動期における耐糖能の低下は、インスリン分泌能の低下と関連していた。これらの結果は、アディポネクチンが肝臓の代謝の概日リズムの一部を制御していることを示唆している。

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2022/07/28

ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別

論文タイトル
Normalized Parameters of Dynamic Contrast-Enhanced Perfusion MRI and DWI-ADC for
Differentiation between Posttreatment Changes and Recurrence in Head and Neck Cancer
論文タイトル(訳)
ダイナミック造影MRIとDWI-ADCの正規化パラメータによる頭頸部癌治療後の変化と再発の鑑別
DOI
10.3174/ajnr.A7567
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
Volume 43, Issue.7 (July 2022)
著者名(敬称略)
馬場 亮 他
所属
ミシガン大学放射線科神経放射線部門/東京慈恵会医科大学放射線医学講座

抄訳

【背景と目的】
頭頸部癌の画像検査による経過観察において、良性の治療後変化と再発の鑑別は臨床的に重要である。本研究の目的は正規化したdynamic contrast-enhanced MRI(DCE-MRI)とADCによる両者の鑑別の有用性を検討することである。
【患者と方法】
本研究ではDWI-ADCによる経過観察目的のDCE-MRIを受けた頭頸部癌の既往がある患者51名(25名が再発、26名が良性の治療後変化)を対象とした。 関心領域と参照領域の定量的、半定量的DCE-MRIパラメータとADCを解析した。正規化DCE-MRIパラメータと正規化DWI-ADCパラメータは関心領域を参照領域で割ることにより算出した。
【結果】
正規化した血漿の占める容積の割合(Vp)、細胞外血管外腔と血漿との間の体積移動定数(Ktrans)、曲線下面積(AUC)、wash in (WI)(nVp、nKtrans、nAUC、nWI)は再発が良性治療後変化より有意に高値であった(p = 0.003 - <0.001)。 正規化平均ADCは再発が良性治療後変化より有意に低値であった(p<0.001)。有意差のある正規化DCE-MRIパラメータ(nVp、nVe、nKtrans、nAUC、nWI)とnADCmeanの組み合わせの受信者動作特性曲線下面積は、0.97(95%信頼区間、0.93-1)であった。
【結論】
正規化DCE-MRIパラメータ、nADCmeanおよびそれらの組み合わせは頭頸部癌の再発と良性治療後変化を鑑別するのに有用であった。

 

 

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2022/07/26

クッシング症候群副腎腺腫におけるステロイド合成酵素DNAメチル化の解析

論文タイトル
Association of DNA methylation with steroidogenic enzymes in Cushing’s adenoma
論文タイトル(訳)
クッシング症候群副腎腺腫におけるステロイド合成酵素DNAメチル化の解析
DOI
10.1530/ERC-22-0115
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Volume 29: Issue 8 Pages: 495–502
著者名(敬称略)
児玉尭也、沖 健司 他
所属
広島大学大学院 分子内科学(内科学第二)

抄訳

【背景】コルチゾール産生腺腫(CPA)における副腎ステロイド合成酵素のDNAメチル化によるコルチゾール合成機構はわかっていない.CPAにおけるステロイド合成酵素のDNAメチル化レベルを同定し,遺伝子発現との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】CPA25例と非機能性副腎皮質腺腫(NFA)6例を対象に,DNAメチル化ビーズアレイ解析とRNAシークエンス解析を行った.
【結果】CYP17A1遺伝子は,NFAに比べCPAで低メチル化を示し,転写領域2箇所のメチル化レベルが有意に低かった.また,CYP17A1遺伝子の3 領域でメチル化レベルとmRNA発現量が逆相関した.PRKACA変異CPAでは,GNAS変異CPAと比較し,CYP17A1遺伝子の低メチル化傾向を認めた.CYP17A1遺伝子のメチル化レベルとmRNA発現量を用いたクラスタリング解析で,PRKACA変異CPAはNFAおよびGNAS変異CPAと明確に区別された.
【考察】CPAでは,CYP17A1遺伝子の低メチル化がCYP17A1転写を制御し,特に,PRKACA変異CPAで,その関連が強かった.

 

 

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2022/07/25

グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明

論文タイトル
Structural basis for heme detoxification by an ATP-binding cassette–type efflux pump in gram-positive pathogenic bacteria
論文タイトル(訳)
グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明
DOI
10.1073/pnas.2123385119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS2022  Vol. 119  No. 27  e2123385119
著者名(敬称略)
中村寛夫、久野玉雄、白水美香子他
所属
理化学研究所生命機能科学研究センタータンパク質機能・構造研究チーム

抄訳

ヘムは生物にとって重要なタンパク質コファクターであるが遊離状態では毒にもなる。病原菌は主に宿主のヘモグロビンのヘムを鉄源として奪い増殖するが、このとき生ずる遊離ヘムの毒性を回避するためにグラム陽性細菌ではヘムに特異的なATP-binding cassette (ABC)排出ポンプ(HrtBA)が働いていると考えられている。本研究では組換え大腸菌を用いたHrtBAタンパク質によるヘム解毒、生化学的機能解析、エックス線結晶構造解析を行った。その結果、ヘムは難溶性であることから細胞膜にインターカレートして毒性を発揮するが、HrtBAの膜貫通ドメインの細胞膜外葉付近に結合すること、ATPがHrtBAの細胞質側にあるヌクレオチド結合ドメインに結合すると膜貫通ドメインのヘム結合部位が収縮してヘムが解離すること、ATP加水分解でこれらのステップがターンオーバーすることで細胞膜からヘムが汲み出されることがわかった。HrtBAを欠損したグラム陽性細菌は血液中では増殖が抑制されることから本研究による生化学アッセイや立体構造に基づく阻害剤スクリーニングはグラム陽性細菌によって引き起こされる敗血症や髄膜炎の予防、治療に貢献できると思われる。



図。ヘム排出ポンプHrtBAが細胞膜からヘムを汲みだす出すモデル
ATPが結合していない時(フリー型)ではHrtB膜貫通ヘリクスが横にずれていて、細胞膜にあるヘムが膜貫通ヘリクスに結合する(ヘム型)。ヘムが細胞膜外葉付近に結合していることがわかる。このあと、ATPがHrtAサブユニットに結合すると、膜貫通ヘリクスが縮小してヘムが追い出される。ボールモデルはヘムを認識するアスパラギン酸で、ヘムが配位するとATP加水分解活性が上昇する働きに必要なアミノ酸である。

 

 

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2022/07/20

インプリンティング疾患を除いたSGA性低身長における病的コピー数異常および病的遺伝子バリアントの関与

論文タイトル
Pathogenic Copy Number and Sequence Variants in Children Born SGA With Short Stature Without Imprinting Disorders
論文タイトル(訳)
インプリンティング疾患を除いたSGA性低身長における病的コピー数異常および病的遺伝子バリアントの関与
DOI
10.1210/clinem/dgac319
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Volume 107, Issue 8, August 2022, Pages e3121–e3133
著者名(敬称略)
原 香織 (筆頭著者), 鏡 雅代 (連絡著者) 他
所属
国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部

抄訳

SGA性低身長症 (SGA-SS) の原因は、インプリンティング疾患 (IDs)、病的コピー数異常 (PCNVs)、成長に関連する遺伝子の病的遺伝子バリアントなど、多岐に渡るが、これらを包括的に検討した報告は非常に少ない。
本研究では、原因不明SGA-SS 140例に対し、はじめに臨床像評価とメチル化解析を実施し、IDs 46例 (Silver-Russell症候群 42例、その他のIDs 4例) を除外した。次に、十分な検体量を有する86例に対してarray Comparative Genomic Hybridization解析、次世代シーケンシングを実施し、PCNVs 8例、候補遺伝子バリアント 11例 (pathogenic 5例、Variants of unknown significance 6例) を同定した。
本研究は、IDsを除いたSGA-SSにおけるPCNVsおよび病的遺伝子バリアントの正確な寄与を明確にした。

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2022/07/19

生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察

論文タイトル
In vivo Chronic Two-Photon Imaging of Microglia in the Mouse Hippocampus
論文タイトル(訳)
生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察
DOI
10.3791/64104
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e64104
著者名(敬称略)
亀井 亮佑、岡部 繁男 他
所属
東京大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学

抄訳

脳の免疫細胞であるミクログリアは、シナプス可塑性や神経活動を調節し、神経回路の維持に寄与している。近年、ミクログリアの脳領域ごとの不均一性が注目され、特に海馬では、神経回路の発達やその記憶に関連した機能に、ミクログリアによるシナプスリモデリングが関与しているようだ。海馬ミクログリアの挙動を生体内で観察する意義は大きいが、手術により生じる炎症が問題となる。
本論文では、マウス海馬CA1全層のミクログリアを、生体内で慢性的に二光子観察する方法を解説する。この方法では、術直後の炎症は数週以内に鎮静化し、以降1か月以上にわたって、静止型ミクログリアの突起の形態変化を解析することができる。ラミファイド型ミクログリアの長期かつ高分解能なイメージングには、手術侵襲の最小化とイメージング手法の最適化が肝要である。神経細胞とミクログリアとの二色イメージング法も提示し、海馬の複数細胞種の相互作用の観察基盤を提供する。本手法により、海馬におけるミクログリア機能の解明が進展することが期待される。

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