本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2026/02/13

緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定 New

論文タイトル
A nuclear CobW/WW-domain factor represses the CO2-concentrating mechanism in the green alga Chlamydomonas reinhardtii
論文タイトル(訳)
緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定
DOI
10.1073/pnas.2518136123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.6 e2518136123
著者名(敬称略)
嶋村 大亮 山野 隆志 他
所属
京都大学 大学院生命科学研究科
京都大学 大学院生命科学研究科附属生命情報解析教育センター(CeLiSIS)
著者からのひと言
「光合成をいかに効率化するか」は、食料や環境問題の解決に向けた重要課題です。今回私たちは、微細藻類がCO2濃度に応じて光合成を最適化する際の「抑制の鍵」となるタンパク質CBP1を突き止めました。長年謎だった、不要なエネルギー消費を抑える制御機構の一端を解明できたことは大きな喜びです。このスイッチの理解が、将来的な藻類のバイオ生産性向上や、植物の光合成能強化に繋がることを期待しています。

抄訳

微細藻類は、周囲の二酸化炭素(CO2)濃度が低下した際に、光合成を維持するための「CO2濃縮機構(CCM)」を駆動させます。しかし、CCMは多大なエネルギーを消費するため、CO2が十分な環境下では適切に抑制される必要があります。本研究では、モデル緑藻クラミドモナスを用いて、CCMのマスター活性化因子であるCCM1/CIA5と結合する新規タンパク質「CBP1」を同定しました。 解析の結果、CBP1は核内に局座するCobW/WWドメインを持つ因子であり、高CO2条件下においてCCM関連遺伝子の発現を抑制する「オフスイッチ」として機能していることが明らかになりました。CBP1を欠損した変異体では、高CO2下でも不必要にCCMが作動し、細胞の増殖が抑制されました。本成果は、水圏の光合成生物が変動する環境下でいかにエネルギー効率を最適化しているかという基礎理解を深めるだけでなく、微細藻類を用いたバイオ燃料生産等の効率化への応用も期待されます。

論文掲載ページへ

2026/02/10

Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く New

論文タイトル
Nutrient acquisition drives Edwardsiella tarda pathogenesis in necrotizing soft tissue infection
論文タイトル(訳)
Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く
DOI
10.1128/msystems.01657-25
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学獣医学部獣医学科獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
本研究では、壊死性軟部組織感染症という極めて重篤な病態において、起因菌 Edwardsiella tarda の病原性に寄与する因子を網羅的に探索しました。その結果、毒素などの直接的な病原因子はほとんど検出されず、栄養素の代謝や輸送に関与する遺伝子が多く選抜されました。これは、見過ごされがちであった病原細菌の栄養獲得機構の重要性を明確に示したものです。本成果が、侵襲性感染症の病態理解や新たな制御戦略を考える一助となれば幸いです。

抄訳

壊死性軟部組織感染症(NSTI)は急速に進行し、高い致死率を示す重篤な感染症である。原因菌は多岐に渡るが、それらが宿主体内でどのように増殖・定着するかについては不明な点が多い。本研究では、NSTI原因菌のひとつである Edwardsiella tarda に、TraDIS (Transposon-directed insertion-site sequencing) 解析を適用し、感染局所での生存・増殖に必須の遺伝子を網羅的に同定した。その結果、感染局所の軟部組織内での増殖に、鉄やアミノ酸などの栄養獲得に関与する遺伝子群が強く寄与していた。さらに、これら遺伝子の変異株はマウス感染モデルにおいて有意に病原性が低下していた。以上のことから、NSTIにおいては環境適応としての栄養獲得が病態進展の鍵であることが示された。本研究は、侵襲性感染症における病態発現の基礎として、宿主から巧みに栄養源を奪う、統制された制御システムの連動が重要であることを示している。

論文掲載ページへ

2026/02/10

日本の腐朽材および土壌から分離した新種子嚢菌酵母Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov. New

論文タイトル
Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov., a novel ascomycetous yeast species isolated from rotting wood and soil in Japan
論文タイトル(訳)
日本の腐朽材および土壌から分離した新種子嚢菌酵母Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.006965
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 11
著者名(敬称略)
浜口 愛勇生 笹野 佑 他
所属
崇城大学 生物生命学部 生物生命学科 微生物ゲノミクス研究室
著者からのひと言
Vanderwaltozyma属酵母は2003年にCletus P. Kurtzmanによって提唱された比較的新しい属である。有名な出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeと同じ科(family)に属する。本論文は、熊本県および香川県の環境サンプルから分離したVanderwaltozyma属新種酵母についての記載論文である。本酵母は非常に強い発酵性および高い浸透圧耐性を示す興味深い性質があり、今後は詳細なゲノム解析と産業応用を見据えた研究を進めていきたい。

抄訳

日本の腐朽材および土壌から、酵母属 Vanderwaltozyma に近縁な3菌株が分離された。ITS1-5.8S-ITS2、LSU rRNA D1/D2 領域、およびミトコンドリア COX II 遺伝子の配列解析に、生理学的性状の解析を組み合わせた結果、これらの分離株は新種を構成するものと判断された。3菌株の ITS 配列および D1/D2 配列は、1塩基の違いを除いてほぼ完全に一致しており、生理学的プロファイルにも差異が認められなかったことから、同一種であることが支持された。これらの菌株は d-グルコースおよび d-フルクトースを活発に発酵した。また、高い浸透圧ストレス耐性を示し、5%グルコースを含む 10%塩化ナトリウム添加培地、あるいは最大 50%(w/v)グルコースを含む培地においても生育可能であった。さらに、V8寒天培地条件下では、1子嚢あたり4個の子嚢胞子を形成した。ITS 配列および LSU D1/D2 配列に基づく系統解析により、これらの菌株は Vanderwaltozyma 属に明確に位置づけられる一方で、既知種とは区別されることが示された。以上の系統学的および表現型的特徴に基づき、これらの分離株を収容する新種として Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov. を提唱する。本種のホロタイプは NBRC 117259T と指定する。

論文掲載ページへ

2026/02/02

mGluR1シグナル伝達経路は「勝者」登上線維シナプスの強化に必須である

論文タイトル
mGluR1 signaling is necessary for strengthening winner climbing fiber inputs in the developing mouse cerebellum
論文タイトル(訳)
mGluR1シグナル伝達経路は「勝者」登上線維シナプスの強化に必須である
DOI
10.1073/pnas.2425460123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.4 e2425460123
著者名(敬称略)
山崎 美和子 他
所属
北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室
著者からのひと言
mGluR1シグナル伝達経路はこれまで「敗者」の除去に必須とされてきましたが、実は「勝者」を強く育て上げる役割も併せ持つことがわかりました。つまり、脳は同一の分子シグナルを「ハサミ(除去)」と「肥料(育成)」として使い分け、「勝者」と「敗者」の格差を拡大させていたのです。本成果は、必要なシナプスの強化不全という、小脳失調症や発達障害の新たな病態メカニズムの理解につながると期待されます。

抄訳

運動の制御や学習に重要な小脳プルキンエ細胞の発達過程では、初期に接続していた多数の登上線維から一本の「勝者」が選ばれ、残りは「敗者」として除去されます。これまで「敗者」の除去については研究が進んでいましたが、「勝者」がどのように強化され、支配領域を広げるのかは未解明でした。本研究では、mGluR1シグナル伝達経路に着目し、遺伝子改変マウスを用いて多角的な解析を行いました。電気生理学解析では、本経路の欠損により、勝者シナプスの機能が弱く、長期増強(LTP)も生じないことが判明しました。さらに、連続電子顕微鏡法による立体再構築や、免疫組織化学法による発現解析から、未発達なシナプス構造や受容体の発現低下、樹状突起への配線拡大の失敗が明らかになりました。以上の結果は、mGluR1シグナル伝達経路が、「勝者」のシナプス構造と機能を強化し、樹状突起への配線拡大に必須であることを示すものです。

論文掲載ページへ

2026/01/30

基底側からの静水圧はがん細胞の増殖促進、運動亢進、細胞極性の変化を引き起こすー腫瘍微小環境の間質圧亢進モデルー

論文タイトル
Hydrostatic pressure from basal side promotes cancer proliferation, enhances migration, and alters cell polarity: A model of the effects of interstitial fluid pressure in tumor microenvironment
論文タイトル(訳)
基底側からの静水圧はがん細胞の増殖促進、運動亢進、細胞極性の変化を引き起こすー腫瘍微小環境の間質圧亢進モデルー
DOI
10.1091/mbc.E25-05-0261
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 1
著者名(敬称略)
尾ノ井 恵佑 徳田 深作 他
所属
京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学
著者からのひと言
本研究ではがん細胞に基底側から圧力を加えるために数mmの培地の水面の差による静水圧を利用しており、このわずかな圧力が細胞の様々な形質を劇的に変化させることが分かりました。特に細胞運動は圧力を加えた直後から変化が認められ、上皮シート内で細胞が活発に動き回る様子(Movie S10など)には著者らも驚かされました。今後メカニズムの解明が進めば将来的にがんの新しい治療につながる可能性もあると考えています。

抄訳

腫瘍微小環境は腫瘍の発生や進行を促進することが知られている。腫瘍微小環境内の間質の圧力はほとんどすべての固形腫瘍で上昇しており、物理的な圧力は細胞増殖など様々ながん細胞の機能に影響を及ぼすことが報告されている。しかし、これまでの研究では圧力の方向性は考慮されておらず、腫瘍微小環境における物理的な圧力が果たす役割は未だによく分かっていなかった。そこで我々はトランスウェル膜上に培養した肺癌細胞に基底側から静水圧を加える間質圧亢進モデルを考案し、圧力が及ぼす影響を検討した。その結果、基底側からの圧力は細胞運動、極性、増殖、細胞死など様々な形質を変化させ、上皮の重層化を引き起こすことが明らかになった。腫瘍微小環境内の物理的な圧力はがんの進行に有利となる様々な形質をがん細胞に与え、がん細胞生物学おいて重要な役割を果たしていると考えられた。

論文掲載ページへ

2026/01/29

Period1遺伝子の特異的誘導化合物はマウスの概日時計を前進させる

論文タイトル
A Period1 inducer specifically advances circadian clock in mice
論文タイトル(訳)
Period1遺伝子の特異的誘導化合物はマウスの概日時計を前進させる
DOI
10.1073/pnas.2509943123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.4 e2509943123
著者名(敬称略)
高畑 佳史 程  肇 他
所属
金沢大学 理工研究域 生命理工学系
著者からのひと言
「朝起きるのがつらい」「海外旅行の時差ぼけを早く治したい」―そんな課題を、体内時計の針を“前に進める”ことで解決する革新的な化合物がMic-628です。その精密な作用は、時計遺伝子Per1の特異な発現制御を巧みに利用する分子機構に基づいています。本研究は、概日時計の発振原理とその生理的意義の理解を大きく前進させるとともに、時差ぼけやシフトワーク障害など、現代社会におけるリズム破綻に挑む時間生物学の新たな地平を切り拓くものです。

抄訳

哺乳類の概日時計中枢である脳視交叉上核における時計遺伝子Period1 (Per1)の周期的発現と光誘導は、行動リズムの周期維持と光同調に必須である。本研究では、Per1の転写を選択的に誘導し、全身の体内時計を強力に前進させる新規化合物Mic-628を同定した。Mic-628をマウスに経口投与すると、視交叉上核および末梢組織の時計と行動リズムの位相が、投与時刻に依存せず約2時間前進した。Mic-628は転写抑制因子CRY1と結合し、転写因子CLOCK–BMAL1複合体の多量体化を促すことで、Per1プロモーター上のタンデムE-box配列依存的な転写誘導を引き起こした。翻訳により生成されたPER1タンパク質は、Mic-628依存的な転写活性を自律的に抑制した。数理モデル解析により、実験で得られたPER1による負のフィードバック抑制とCRY1依存的転写促進が、Mic-628に特有の安定した位相前進を生み出す分子基盤であることを示した。Mic-628の発見は、時差ぼけや交代制勤務に伴う概日リズム障害への薬理学的介入を可能にする新たな方向性を提示している。

論文掲載ページへ

2026/01/27

心筋細胞非神経性アセチルコリン産生能が障害を受けると、ミトコンドリア機能障害が起こり、その膜上に局在するニコチン受容体を介したカルシウムハンドリング能も低下し、最終的には心不全を引き起こす

論文タイトル
Impaired cardiac non-neuronal acetylcholine synthesis triggers mitochondrial dysfunction with the loss of nicotinic receptor-mediated calcium handling, causing the failing heart
論文タイトル(訳)
心筋細胞非神経性アセチルコリン産生能が障害を受けると、ミトコンドリア機能障害が起こり、その膜上に局在するニコチン受容体を介したカルシウムハンドリング能も低下し、最終的には心不全を引き起こす
DOI
10.1042/CS20257026
ジャーナル名
Clinical Science
巻号
Clin Sci (Lond) (2025) 139 (22): 1543–1570
著者名(敬称略)
曽野部 崇 柿沼 由彦 他
所属
学校法人日本医科大学 大学院医学研究科 生体統御科学分野
著者からのひと言
AChというと副交感神経系由来の神経伝達物質が想起されるが、実は心筋細胞自身ACh産生能を持つこと、そのAChは世界で初めて、Mit膜上にあるニコチン受容体を介してその情報を伝達し、Mitカルシウム取り込みを制御してMitそのものの機能保持をすること、そして最終的には心筋細胞質内カルシウムレベルの安定化に大きく寄与することが解明されたことは重要な発見である。

抄訳

我々を筆頭にこれまで、心筋細胞による非神経性アセチルコリン産生系(NNCCS)が心筋細胞の生理機能維持に必須であること、虚血耐性能・抗心肥大効果・抗交感神経亢進機能を有すること等が報告されてきた。しかしその機序、特にNNCCSの標的分子は不明であった。そこで心臓特異的ChATコンディショナルノックアウトマウスを解析し、不全心症状を伴う心機能低下、心臓ATP産生能低下、形態・膜電位異常を伴うミトコンドリア(Mit)異常が確認された。さらにその膜上に局在する7ニコチン受容体およびMItカルシウム輸送体両蛋白ともその発現レベルは低下し、心筋細胞でのMitカルシウムハンドリング機能は低下した。その結果全身性炎症応答の惹起や血液脳関門蛋白claudin-5発現低下によるうつ・ストレス応答亢進等中枢への影響も認められた。以上よりNNCCSの標的の一つはMitであり、そのカルシウムハンドリグを介した機能形態維持には、ニコチン受容体を介する心筋細胞内AChが不可欠であることが解明された。

論文掲載ページへ

2026/01/23

メトホルミンは MEN1 関連膵および下垂体神経内分泌腫瘍を抑制する― マウスモデルおよび臨床データの解析―

論文タイトル
Metformin Suppresses MEN1-Associated Pancreatic and Pituitary Neuroendocrine Tumors: Evidence from Mouse Models and Clinical Data
論文タイトル(訳)
メトホルミンは MEN1 関連膵および下垂体神経内分泌腫瘍を抑制する― マウスモデルおよび臨床データの解析―
DOI
10.1530/ERC-25-0518
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Accepted Manuscripts ERC-25-0518
著者名(敬称略)
中野 愛里 大木 理恵子 他
所属
国立がん研究センター研究所 基礎腫瘍学ユニット
著者からのひと言
私たちの研究グループは、ケトン食による食事介入(Cell Death & Disease, 2023)および本研究におけるメトホルミンを用いた薬理学的介入という二つの異なる手法を通じて、血糖およびインスリンシグナル制御が膵・下垂体神経内分泌腫瘍の発症・進展を規定する重要な因子であることを明らかにしました。これらの成果は、全身代謝制御を治療標的とする新たな神経内分泌腫瘍治療概念を提示するものです。

抄訳

膵神経内分泌腫瘍(PanNET)は膵がん全体の約1–2%を占める希少がんであり、その大半を占める非機能性PanNET(NF-PanNET)はホルモン症状を示さないため発見が遅れ、治療が困難である。多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)はMEN1遺伝子の生殖細胞系列変異により発症し、PanNETや下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)を高頻度に合併する。本研究では、NF-PanNETとPitNETの両方を発症するMen1f/f-RipCre+マウスを用い、糖尿病治療薬メトホルミンの長期投与効果を検討した。その結果、メトホルミンは血糖上昇を抑制し、インスリン分泌を正常化するとともに、PI3K/Akt/mTOR経路を抑制してPanNETおよびPitNETの発症を抑制した。さらに臨床解析において、メトホルミン使用歴のあるNF-PanNET患者は予後良好であった。以上より、メトホルミンによる血糖制御はNF-PanNETおよびMEN1関連神経内分泌腫瘍に対する有望な予防・治療戦略となり得る。

論文掲載ページへ

2026/01/23

変異の組み合わせを最適化した大腸菌を利用する、新手法に依るYarrowia lipolytica由来のシステインスルフィン酸脱炭酸酵素遺伝子の同定

論文タイトル
Identification of the Yarrowia lipolytica cysteine sulfinic acid decarboxylase gene using a newly developed method with optimized Escherichia coli combinations of mutant alleles
論文タイトル(訳)
変異の組み合わせを最適化した大腸菌を利用する、新手法に依るYarrowia lipolytica由来のシステインスルフィン酸脱炭酸酵素遺伝子の同定
DOI
10.1099/mic.0.001620
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology Volume 171, Issue 11
著者名(敬称略)
西川 正信
所属
岡山県農林水産総合センター 生物科学研究所
著者からのひと言
養殖向け代替飼料の開発は食糧問題の解決に有望です。必須ながらも、大豆粕等に含まれないタウリンをいかに補うかは重要な課題の一つです。化学合成品の添加ではなく、特定の微生物を大豆粕等に混ぜるだけで、発酵が進み、必要量のタウリンを賄う事が出来たら良いな、という発想です。タウリン合成が著しい微生物は、その存在を含め、十分に検討されていません。本目的に供する微生物を探索・創生する研究開発の端緒になればと思います。

抄訳

海水魚の持続可能な養殖に向けて、大豆粕などを使った代替飼料が開発中である。補充を要する栄養素の一つ、タウリンは、化学合成品と比べて低コストで環境に優しい発酵生産物が好適かもしれない。タウリン発酵に供する微生物について、生合成経路の鍵となるシステインスルフィン酸脱炭酸酵素(CSAD)の研究は不可欠であろう。今般、合成生物学的に、タウリンの前駆体であるL-システイン酸の脱炭酸後の硫黄を同化する大腸菌の増殖を指標に、CSAD遺伝子の探索法を考案した。使用する大腸菌には、cysA(硫酸/チオ硫酸ABCトランスポーター)とssuD(FMNH2依存性アルカンスルホン酸モノオキシゲナーゼ)の両遺伝子、その他の遺伝子に多重欠損変異を導入した。本手法をYarrowia lipolytica由来のグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子に適用し、コードされる酵素がL-システイン酸やL-システインスルフィン酸をも脱炭酸することを示した。

論文掲載ページへ

2026/01/23

ミジンコにおける幼若ホルモン誘導性遺伝子の流用による環境依存型性決定の進化

論文タイトル
Evolution of environmental sex determination via juvenile hormone–induced gene co-option in Daphnia
論文タイトル(訳)
ミジンコにおける幼若ホルモン誘導性遺伝子の流用による環境依存型性決定の進化
DOI
10.1073/pnas.2525480123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.3 e2525480123
著者名(敬称略)
高畑 佑伍 宮川 一志 他
所属
国立大学法人 宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター 環境生理学研究室

抄訳

昆虫において幼若ホルモン(JH)は、変態や生殖だけでなく、カースト分化、形態形成、休眠など多岐にわたる作用を示す。こうした多様な機能が、祖先的なJHの役割からどのように進化してきたかは十分に解明されていない。淡水性甲殻類ミジンコでは、JHがオス産生を誘導することで環境依存型性決定を制御するが、その分子経路は不明であった。本研究では、概日時計遺伝子vrilleDpvri)がJHシグナルの直接標的であることを明らかにした。レポーター解析により、Dpvriは新たに獲得された9塩基のJH応答配列を介して受容体複合体(Met/SRC)により転写活性化される一方、コクヌストモドキvriには同様の配列が存在せずJH応答性も示さないことが分かった。さらに、CRISPR/Cas9により単一のJH応答配列を欠損させると、JH依存的なDpvri発現が低下し、オス誘導の閾値が上昇した。比較解析から、この配列はミジンコ目で保存される一方、アルテミアには存在しないことが判明し、その出現が環境依存型性決定の起源と一致する可能性が示唆された。これらの結果は、vriが新規JH応答配列の獲得を通じてJH経路に取り込まれたことを示し、節足動物におけるJH機能多様化の仕組みを説明するものである。

論文掲載ページへ