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国内研究者論文紹介

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2026/03/06

アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成 New

論文タイトル
Rapid pronucleus assembly using cytoplasmic RNAs in fertilized eggs of Xenopus laevis
論文タイトル(訳)
アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成
DOI
10.1091/mbc.E25-09-0440
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 3
著者名(敬称略)
池田 瑞紀 原 裕貴 他
所属
山口大学大学院創成科学研究科 進化細胞生物学研究室
著者からのひと言
本論文では、卵細胞中に豊富に存在するRNAがもつ「負の電荷」という物理化学的性質そのものが、クロマチン構造の脱凝縮を促し、受精後に精子核から前核が形成される過程を促進することを明らかにしました。卵細胞の細胞質には非常に多量のRNAが含まれていますが、本研究は、これらのRNAが既知のタンパク質合成の役割に加えて、細胞内の電荷バランスを調整することで、受精直後の胚で見られる極めて速い細胞周期の進行を支える「物理化学的環境」の形成にも関与する可能性を示唆しています。

抄訳

多細胞生物の卵細胞では、受精直後に精子由来の強く凝縮した核が、体細胞型の大きな前核へと急速に変化する。本研究は、この前核形成過程において卵細胞質に豊富に存在するRNAが果たす役割を検証した。アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞再構成系を用いて、細胞質内RNAの濃度や長さを実験的に操作したところ、適切な濃度と長さのRNAが前核形成を促進し、核内クロマチン構造の再編成を加速させることを見出した。また、RNAは精子由来の正に帯電した核タンパク質の解離を促進し、体細胞型ヒストンの取り込みを助けることも示された。これらの核形成やクロマチン構造への効果は、RNA以外の負に帯電した化合物でも再現され、RNAの塩基配列そのものではなく、負電荷という物理化学的性質が重要であることが示唆された。以上の結果から、卵細胞質中の負電荷をもつRNAがクロマチン構造の変換を促進し、受精後の短時間で進行する前核形成を加速する基本原理として機能する可能性が示された。

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2026/03/02

高速原子間力顕微鏡による真菌由来機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAの表面触媒型線維伸長機構の解明 New

論文タイトル
High-speed atomic force microscopy reveals a surface-catalyzed elongation mechanism of the fungal functional amyloid hydrophobin RolA
論文タイトル(訳)
高速原子間力顕微鏡による真菌由来機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAの表面触媒型線維伸長機構の解明
DOI
10.1073/pnas.2523502123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.7 e2523502123
著者名(敬称略)
高橋尚央 (筆頭著者) 阿部敬悦 (連絡著者) 他
所属
東北大学大学院農学研究科 発酵微生物学寄附講座
著者からのひと言
日本の伝統的な発酵産業で活躍する麹菌には、ハイドロフォビンRolAと呼ばれるタンパク質が集まってできた丈夫な“線維の被膜”が備わっています。本研究では高速原子間力顕微鏡により、幅数nmの線維が伸長する様子をリアルタイムで観察し、線維被膜ができる仕組みを明らかにしました。麹菌研究としてだけでなく、タンパク質線維の形成機構を幅広く理解するための新しい視点を与えると期待されます。

抄訳

麹菌が分泌する機能性アミロイド・ハイドロフォビンRolAは、自己組織化してrodletと呼ばれる線維状構造を形成し、細胞表層を密に覆うことで防御被膜として機能する。しかし、rodlet被膜が形成される機構は未だ不明である。
本研究では、高速原子間力顕微鏡を用い、線維の一本の伸長過程をリアルタイムに観察した。解析の結果、既存rodlet表面が触媒的に働き、それに沿ったrodletの伸長を加速させる現象(表面触媒型線維伸長)を見出した。この効果によりrodletの束化・整列が促され、実際の麹菌分生子表面で観察されるような緻密なrodlet被膜が形成されている可能性がある。本研究の成果は、麹菌細胞表層構造の発達過程の一端を明らかにするだけでなく、アミロイド線維伸長機構の理解をさらに深化させるものである。

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2026/02/26

日本の市中における薬剤耐性および高病原性肺炎桿菌の保有状況調査

論文タイトル
Carriage of hypervirulent and ESBL-producing Klebsiella pneumoniae complex among community-dwelling individuals in Japan
論文タイトル(訳)
日本の市中における薬剤耐性および高病原性肺炎桿菌の保有状況調査
DOI
10.1128/aem.01687-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Vol. 92, No. 2
著者名(敬称略)
渡邉 章子 鈴木 匡弘 他
所属
藤田医科大学 医学部 微生物学講座
著者からのひと言
日和見病原体の疫学調査では、臨床分離株の情報は多く収集される一方、バックグラウンドとなる健常者におけるこれら病原体の分布に関するデータは限られている。本研究はこの知識のギャップを解消し、感染症の原因となる株の特徴を理解することに貢献する。

抄訳

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae complex)は、尿路感染症や血流感染症などの原因となる日和見病原体である。肝膿瘍や眼内炎など重篤な感染症を引き起こす高病原性株や抗菌薬耐性を示す株も存在し、注意が必要とされる。本研究ではこれらの臨床的重要性の高い株の感染源に関する情報を蓄積するため、日本の市中における 肺炎桿菌の保有状況を調査した。その結果、これらの細菌の保菌率は58.7%と腸内に一般的に存在しており、その全体的な遺伝子型分布は、これまでの臨床分離株の研究で報告されたものとおおむね類似していた。一方、薬耐性株や高病原性株も確認されたが、それぞれ全体の1%未満とその頻度は低かった。これらの知見は、多くの人が肺炎桿菌を常在菌として保菌する一方で、より臨床的重要性の高い型の肺炎桿菌は主に医療環境で拡散している可能性が高いことを示唆している。

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2026/02/24

DYRK阻害によるインクレチン産生細胞新生と糖尿病新規治療戦略

論文タイトル
A DYRK inhibitor ameliorates glucose homeostasis and increases incretin-producing cells in diabetic mice
論文タイトル(訳)
DYRK阻害によるインクレチン産生細胞新生と糖尿病新規治療戦略
DOI
10.1530/JME-25-0214
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Journal of Molecular Endocrinology JME-25-0214
著者名(敬称略)
寺崎 道重 他
所属
昭和医科大学医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門
著者からのひと言
本研究は、カロリンスカ研究所やハーバード大学等との国際共同研究により、インクレチン産生細胞を「新生」させるという新たな糖尿病治療概念を立証したものです。分子メカニズムの解明からヒト小腸幹細胞由来オルガノイドを用いた実証まで、多角的な検証を重ねてまいりました。基礎から臨床へのトランスレーショナルリサーチとなる本知見が、細胞再生を基盤とする糖尿病治療のパラダイムシフトを担うことを願っております。

抄訳

現在の糖尿病治療は、血中インクレチン濃度の維持や受容体刺激による作用増強が主流であるが、本研究では、インクレチン産生細胞そのものを新生させる新規糖尿病治療戦略を提唱する。我々は、DYRK阻害が糖尿病マウスの糖代謝を改善させることを報告した。OGTTおよびipGTTの比較、ならびに血清Total-GIP/Total-GLP-1、インスリン濃度の上昇により、その代謝改善効果を重層的に実証した。メカニズム解析では、DYRK阻害がNFATc4とGIP/GLP-1の共発現細胞数を有意に増加させることを見出した。これらの細胞はEdU陰性であり、既存細胞の増殖ではなく、NFATc4の核内移行を介した分化誘導による「新生」であることを解明した。さらにヒト小腸幹細胞由来オルガノイドを用いた検証においてもインクレチン遺伝子の発現増強を確認し、本効果は種を超えて保存されていることを示した。本研究の成果は、内因性インクレチンの産生源を直接的に増強する次世代の糖尿病治療法開発に繋がる可能性を示唆するものである。

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2026/02/18

デュアルレセプター型Phikzvirusを基軸としたファージカクテルによる緑膿菌耐性進化の抑制

論文タイトル
Phage cocktails containing a dual-receptor Phikzvirus suppress resistance evolution in Pseudomonas aeruginosa
論文タイトル(訳)
デュアルレセプター型Phikzvirusを基軸としたファージカクテルによる緑膿菌耐性進化の抑制
DOI
10.1128/aem.02095-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
藤木 純平 岩野 英知 他
所属
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医生化学ユニット
著者からのひと言
薬剤耐性感染症への切り札“ファージ療法”の奏功性を高めるためにはファージ耐性の克服が課題です。本研究では、異なる受容体を認識するファージカクテルで細菌の逃げ道を先回りし、緑膿菌のファージ耐性進化を防ぐ戦略を具現化しました。また、単なる耐性抑止に留まらず、進化的トレードオフにより高いコストを強制することで、軍拡競争(arms race)から進化的罠(evolutionary trap)の袋小路へと追い込み、ファージ耐性を治療有益性へ逆転させる端緒を見出しました。今後は本学附属動物病院での臨床試験を通じ、ファージ療法の新たなパラダイムを実証したいと考えています。

抄訳

多剤耐性緑膿菌感染症に対するファージ療法において、細菌の急速なファージ耐性獲得は臨床上の大きな障壁です。本研究では、独自に単離したPhikzvirus属ファージ“ΦBrmt”が、IV型線毛と鞭毛の両方を感染受容体として利用する「デュアルレセプター(二重受容体)」機構を持つことを解明しました。このΦBrmtとLPS(リポ多糖)標的ファージを組み合わせ、異なる3種の受容体を狙う合理的カクテルを構築、臨床分離株を用いて検討した結果、各ファージの単独接種と比較して、カクテルは耐性菌の出現を劇的に抑制することに成功しました。また、実験室内進化でΦBrmt耐性獲得に伴い線毛や鞭毛を喪失した変異株は、運動性や病原性が顕著に低下する「進化的トレードオフ」を示しました。これは、耐性化そのものを抑えるだけでなく、仮に耐性化が起こっても細菌に高いフィットネスコストを強制し、治療有益性を維持できることを意味します。本成果は、受容体同定に基づく合理的カクテル設計が、耐性進化の回避・制御に極めて有効であることを提示しています。

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2026/02/16

肺結核に対する連続喀痰核酸増幅検査の追加診断収率

論文タイトル
Incremental diagnostic yield of consecutive sputum nucleic acid amplification tests for pulmonary tuberculosis
論文タイトル(訳)
肺結核に対する連続喀痰核酸増幅検査の追加診断収率
DOI
10.1128/spectrum.02442-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
鹿子木 拓海 卜部 尚久 他
所属
東邦大学医療センター 大森病院 呼吸器内科
著者からのひと言
喀痰結核菌核酸増幅検査(NAAT)は、臨床現場では通常1回のみ提出されますが、喀痰塗抹検査や喀痰培養検査のように複数回提出した場合の診断性能は十分に確立されていません。本研究の結果、NAATを2回実施することで感度が向上し、診断までの時間も短縮されることが示されました。一方、3回目による追加効果は限定的でした。培養の重要性は不変であるものの、侵襲的検査が困難な場合などにNAATを追加で実施することで、診断に寄与する可能性が示唆されます。

抄訳

背景: 肺結核に対して、喀痰核酸増幅検査(NAAT)を連続して実施した場合の追加診断性能は十分に確立されていない。本研究では、結核非高蔓延地域において、喀痰NAATを最大3回連続で行った際の診断性能を評価することを目的とした。
方法: 2010年から2023年に日本で肺結核が疑われた4,051例を後方視的に解析した。喀痰培養陽性、または喀痰NAAT陽性で臨床所見と整合し肺結核と判断された症例を肺結核群(n=290)とし、それ以外を非肺結核群(n=3,761)とした。塗抹検査、NAAT、培養検査について、3回までの喀痰検体での累積感度及び累積特異度を算出した。培養検査単独の場合と喀痰NAATを 3回まで併用した場合の診断確定までの時間を比較した。
結果: 肺結核群で2回目のNAATにより累積感度が53.1%から63.1%へ上昇し、平均診断時間は10.9日から8.3日へ短縮した。3回目のNAATによる追加効果は限定的で、感度は67.2%までの上昇にとどまり、診断時間も8.1日であった。喀痰塗抹陽性PTBでは、NAAT感度は1回目の84.9%から2回目で97.8%まで上昇した。喀痰塗抹陰性例でも感度は23.8%から31.1%へ上昇した。
結論: 結核非高蔓延地域において、喀痰NAATを2回実施することで診断感度が有意に改善し、診断までの時間も短縮された。

 

 

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2026/02/13

緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定

論文タイトル
A nuclear CobW/WW-domain factor represses the CO2-concentrating mechanism in the green alga Chlamydomonas reinhardtii
論文タイトル(訳)
緑藻クラミドモナスにおいてCO2濃縮機構を抑制する核内CobW/WWドメイン因子の同定
DOI
10.1073/pnas.2518136123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.6 e2518136123
著者名(敬称略)
嶋村 大亮 山野 隆志 他
所属
京都大学 大学院生命科学研究科
京都大学 大学院生命科学研究科附属生命情報解析教育センター(CeLiSIS)
著者からのひと言
「光合成をいかに効率化するか」は、食料や環境問題の解決に向けた重要課題です。今回私たちは、微細藻類がCO2濃度に応じて光合成を最適化する際の「抑制の鍵」となるタンパク質CBP1を突き止めました。長年謎だった、不要なエネルギー消費を抑える制御機構の一端を解明できたことは大きな喜びです。このスイッチの理解が、将来的な藻類のバイオ生産性向上や、植物の光合成能強化に繋がることを期待しています。

抄訳

微細藻類は、周囲の二酸化炭素(CO2)濃度が低下した際に、光合成を維持するための「CO2濃縮機構(CCM)」を駆動させます。しかし、CCMは多大なエネルギーを消費するため、CO2が十分な環境下では適切に抑制される必要があります。本研究では、モデル緑藻クラミドモナスを用いて、CCMのマスター活性化因子であるCCM1/CIA5と結合する新規タンパク質「CBP1」を同定しました。 解析の結果、CBP1は核内に局座するCobW/WWドメインを持つ因子であり、高CO2条件下においてCCM関連遺伝子の発現を抑制する「オフスイッチ」として機能していることが明らかになりました。CBP1を欠損した変異体では、高CO2下でも不必要にCCMが作動し、細胞の増殖が抑制されました。本成果は、水圏の光合成生物が変動する環境下でいかにエネルギー効率を最適化しているかという基礎理解を深めるだけでなく、微細藻類を用いたバイオ燃料生産等の効率化への応用も期待されます。

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2026/02/10

Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く

論文タイトル
Nutrient acquisition drives Edwardsiella tarda pathogenesis in necrotizing soft tissue infection
論文タイトル(訳)
Edwardsiella tarda の栄養獲得機構が壊死性軟部組織感染症の病態進展を導く
DOI
10.1128/msystems.01657-25
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学獣医学部獣医学科獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
本研究では、壊死性軟部組織感染症という極めて重篤な病態において、起因菌 Edwardsiella tarda の病原性に寄与する因子を網羅的に探索しました。その結果、毒素などの直接的な病原因子はほとんど検出されず、栄養素の代謝や輸送に関与する遺伝子が多く選抜されました。これは、見過ごされがちであった病原細菌の栄養獲得機構の重要性を明確に示したものです。本成果が、侵襲性感染症の病態理解や新たな制御戦略を考える一助となれば幸いです。

抄訳

壊死性軟部組織感染症(NSTI)は急速に進行し、高い致死率を示す重篤な感染症である。原因菌は多岐に渡るが、それらが宿主体内でどのように増殖・定着するかについては不明な点が多い。本研究では、NSTI原因菌のひとつである Edwardsiella tarda に、TraDIS (Transposon-directed insertion-site sequencing) 解析を適用し、感染局所での生存・増殖に必須の遺伝子を網羅的に同定した。その結果、感染局所の軟部組織内での増殖に、鉄やアミノ酸などの栄養獲得に関与する遺伝子群が強く寄与していた。さらに、これら遺伝子の変異株はマウス感染モデルにおいて有意に病原性が低下していた。以上のことから、NSTIにおいては環境適応としての栄養獲得が病態進展の鍵であることが示された。本研究は、侵襲性感染症における病態発現の基礎として、宿主から巧みに栄養源を奪う、統制された制御システムの連動が重要であることを示している。

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2026/02/10

日本の腐朽材および土壌から分離した新種子嚢菌酵母Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov.

論文タイトル
Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov., a novel ascomycetous yeast species isolated from rotting wood and soil in Japan
論文タイトル(訳)
日本の腐朽材および土壌から分離した新種子嚢菌酵母Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.006965
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 11
著者名(敬称略)
浜口 愛勇生 笹野 佑 他
所属
崇城大学 生物生命学部 生物生命学科 微生物ゲノミクス研究室
著者からのひと言
Vanderwaltozyma属酵母は2003年にCletus P. Kurtzmanによって提唱された比較的新しい属である。有名な出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeと同じ科(family)に属する。本論文は、熊本県および香川県の環境サンプルから分離したVanderwaltozyma属新種酵母についての記載論文である。本酵母は非常に強い発酵性および高い浸透圧耐性を示す興味深い性質があり、今後は詳細なゲノム解析と産業応用を見据えた研究を進めていきたい。

抄訳

日本の腐朽材および土壌から、酵母属 Vanderwaltozyma に近縁な3菌株が分離された。ITS1-5.8S-ITS2、LSU rRNA D1/D2 領域、およびミトコンドリア COX II 遺伝子の配列解析に、生理学的性状の解析を組み合わせた結果、これらの分離株は新種を構成するものと判断された。3菌株の ITS 配列および D1/D2 配列は、1塩基の違いを除いてほぼ完全に一致しており、生理学的プロファイルにも差異が認められなかったことから、同一種であることが支持された。これらの菌株は d-グルコースおよび d-フルクトースを活発に発酵した。また、高い浸透圧ストレス耐性を示し、5%グルコースを含む 10%塩化ナトリウム添加培地、あるいは最大 50%(w/v)グルコースを含む培地においても生育可能であった。さらに、V8寒天培地条件下では、1子嚢あたり4個の子嚢胞子を形成した。ITS 配列および LSU D1/D2 配列に基づく系統解析により、これらの菌株は Vanderwaltozyma 属に明確に位置づけられる一方で、既知種とは区別されることが示された。以上の系統学的および表現型的特徴に基づき、これらの分離株を収容する新種として Vanderwaltozyma osmotolerans sp. nov. を提唱する。本種のホロタイプは NBRC 117259T と指定する。

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2026/02/02

mGluR1シグナル伝達経路は「勝者」登上線維シナプスの強化に必須である

論文タイトル
mGluR1 signaling is necessary for strengthening winner climbing fiber inputs in the developing mouse cerebellum
論文タイトル(訳)
mGluR1シグナル伝達経路は「勝者」登上線維シナプスの強化に必須である
DOI
10.1073/pnas.2425460123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.4 e2425460123
著者名(敬称略)
山崎 美和子 他
所属
北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室
著者からのひと言
mGluR1シグナル伝達経路はこれまで「敗者」の除去に必須とされてきましたが、実は「勝者」を強く育て上げる役割も併せ持つことがわかりました。つまり、脳は同一の分子シグナルを「ハサミ(除去)」と「肥料(育成)」として使い分け、「勝者」と「敗者」の格差を拡大させていたのです。本成果は、必要なシナプスの強化不全という、小脳失調症や発達障害の新たな病態メカニズムの理解につながると期待されます。

抄訳

運動の制御や学習に重要な小脳プルキンエ細胞の発達過程では、初期に接続していた多数の登上線維から一本の「勝者」が選ばれ、残りは「敗者」として除去されます。これまで「敗者」の除去については研究が進んでいましたが、「勝者」がどのように強化され、支配領域を広げるのかは未解明でした。本研究では、mGluR1シグナル伝達経路に着目し、遺伝子改変マウスを用いて多角的な解析を行いました。電気生理学解析では、本経路の欠損により、勝者シナプスの機能が弱く、長期増強(LTP)も生じないことが判明しました。さらに、連続電子顕微鏡法による立体再構築や、免疫組織化学法による発現解析から、未発達なシナプス構造や受容体の発現低下、樹状突起への配線拡大の失敗が明らかになりました。以上の結果は、mGluR1シグナル伝達経路が、「勝者」のシナプス構造と機能を強化し、樹状突起への配線拡大に必須であることを示すものです。

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