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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2026/03/25

インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する New

論文タイトル
N-glucosylation of indole-3-acetyl amino acids modulates auxin metabolism and growth traits in Oryza sativa
論文タイトル(訳)
インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する
DOI
10.1073/pnas.2527570123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2527570123
著者名(敬称略)
善治 杏菜, 秦 毅実彦, 瀬上 紹嗣, 榊原 均 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 植物情報分子研究室
著者からのひと言
本研究では、オーキシン代謝にこれまで見落とされていた「分岐経路」を見出し、成長ホルモンの働きを支える新しい調節概念を提示しました。代謝中間体の行き先が環境応答や形質に影響することを示した点は、基礎科学として重要であると同時に、作物の適応性や肥料利用効率の改良にもつながる知見です。ホルモン代謝の再解釈を通じて、植物の成長制御の理解を一歩進めた成果と考えています。

抄訳

植物ホルモンであるオーキシン(インドール酢酸、IAA)は、根や穂の形成など作物の成長と収量を左右する重要な因子である。本研究では、イネにおいてIAAのアミノ酸結合体に糖を付加する酵素IAAspGTを同定し、オーキシン代謝に新たな分岐経路が存在することを明らかにした。IAAはアミノ酸結合後に酸化反応により不可逆的に不活性化されるが、本酵素はアミノ酸結合体を酸化される前にN-グルコシル化することで、再利用可能な安定な代謝プールへと変換する機能を持つ。さらに、この酵素活性には品種間差が存在し、高活性型対立遺伝子は低栄養条件下での根系発達や穂への同化産物配分に影響を与えることが示された。本成果は、オーキシン代謝の新たな制御機構を提示するとともに、環境適応性や肥料利用効率に優れた作物育種への応用可能性を示すものである。

 

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2026/03/24

未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較 New

論文タイトル
Feasibility and Safety of 8F Guiding Catheter Navigation in Transradial Neurointervention for Unruptured Intracranial Aneurysms: A Propensity Score–Matched Comparison of Sheath-Based versus Sheathless Approaches
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較
DOI
10.3174/ajnr.A8987
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
February 2026, 47 (2) 363-370
著者名(敬称略)
府賀 道康 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科
著者からのひと言
経橈骨動脈アプローチでは、大口径デバイス使用時の安全性が常に課題となります。本研究は、未破裂脳動脈瘤治療における8Frガイディングカテーテル使用時に、8Frシース併用がシースレス法と比べて橈骨動脈閉塞や攣縮を抑えつつ、成功率や他の合併症を損なわない可能性を示しました。TRAの実践を一歩前進させる知見です。

抄訳

近年、脳血管内治療では、穿刺部合併症の少なさや患者負担の軽減から、経橈骨動脈アプローチ(TRA)が広く用いられている。一方、8Frのような大口径デバイス使用時には、橈骨動脈閉塞や攣縮などのアクセス部合併症が懸念されるため、挿入システム全体の外径を抑える目的でシースレス法が選択されることも多い。しかし、8Frシース併用法とシースレス法を直接比較した検討はこれまで限られていた。本研究では、未破裂脳動脈瘤に対して8Frガイディングカテーテルを用いてTRAで治療した症例を後方視的に解析し、8Frシース併用群とシースレス群を比較した。傾向スコアマッチ後の解析では、手技成功率に有意差を認めなかった一方、シース併用群では橈骨動脈閉塞および橈骨動脈攣縮の発生率が有意に低かった。アクセス部・非アクセス部合併症の増加も認めず、未破裂脳動脈瘤に対するTRAにおいて、8Frシース併用は実行可能かつ安全であり、適切な症例では有用な選択肢となる可能性が示された。

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2026/03/18

脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化

論文タイトル
Digital FDG-PET Detects MYD88 Mutation-Driven Glycolysis in Primary CNS Lymphoma
論文タイトル(訳)
脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化
DOI
10.3174/ajnr.A8935
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
January 2026, 47 (1) 117-125
著者名(敬称略)
佐々木麻結 立石 健祐 他
所属
横浜市立大学脳神経外科
著者からのひと言
本研究では、dFDG-PETにおけるFDG集積の亢進が、MYD88遺伝子変異に関連する明確な神経画像学的特徴として同定されました。この知見は、PCNSLにおける画像検査を用いた遺伝学的分類を支援するツールとして、dFDG-PETが有する潜在的な有用性を示唆するものであり、また今後の個別化治療戦略への応用が期待されるところです。

抄訳

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)におけるFDG-PET所見と糖代謝関連遺伝子異常との関連は十分に解明されていない。本研究では、解糖系活性を促進する主要な遺伝子異常であるMYD88変異を、半導体PETにより非侵襲的に検出可能か検討した。PCNSL 54例(55病変)を対象に、SUVmaxおよび腫瘍対背景比(TBR)とMYD88変異との関連を解析した。その結果、半導体FDG-PETではMYD88変異例でSUVmaxおよびTBRが有意に高値を示し、TBRは高い診断能(AUC=0.913)を示した。多変量解析でも両指標は独立した予測因子であった。さらにトランスクリプトーム解析により、MYD88変異例で解糖系関連遺伝子の発現亢進が確認された。以上より、半導体FDG-PETはMYD88変異に伴う代謝亢進を反映する有用な非侵襲的診断法となり得る。

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2026/03/17

単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性

論文タイトル
Geometrical preference of anchoring sites in the unicellular organism Stentor coeruleus
論文タイトル(訳)
単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性
DOI
10.1073/pnas.2518816123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.9 e2518816123
著者名(敬称略)
越後谷駿 西上幸範 他
所属
北海道大学電子科学研究所知能数理研究分野
著者からのひと言
ラッパムシを含む単細胞性の真核生物「原生生物」は、下水浄化を行ったり赤潮や、マラリアなどの感染症を引き起こしたりと、様々なところで活躍しています。これらのマクロな現象は、どれも個々の原生生物の行動が組み合わさり現れています。原生生物の行動はまだまだ謎に満ちており、オモシロ行動がたくさん観察されます。それらの行動が生物や環境に与える役割を解き明かしていきたいと思います。

抄訳

我々のような「目」を持っていない単細胞生物でも実は周りの形の違いに応じて棲家を選んでいることが分かりました。そんな能力を持った単細胞生物の名は「ソライロラッパムシ」。体の大きさは1 mm程、肉眼では点にしか見えない生き物ですが、普段はラッパのような形で水の中を泳ぎ、自身の棲家を探しまわっています。どのような場所を棲家として好み、どうやって選んでいるのでしょうか。
ラッパムシが生きるミクロな水環境中にはたくさんの構造物がありふれています。そこで自然界のミクロな形の複雑さ模した観察容器を使ってソライロラッパムシの行動を観察しました。その結果、すみっこを棲家として好むことが分かりました。もちろん神経系や視覚情報は持っていませんが、体の形を変化させるシンプルな機構によって探索の空間解像度を切り替え、空間中のすみっこを見つけやすくする戦略をとっていることも行動観察と行動シミュレーションから明らかになりました。

 

 

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2026/03/16

卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例

論文タイトル
Dysgerminoma of the ovary presenting as acute abdomen with intratumoural gas image: a diagnostic challenge suspected as a gastrointestinal stromal tumour
論文タイトル(訳)
卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-270400
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 3
著者名(敬称略)
吉田 志歩、 豊島 将文 他
所属
日本医科大学付属病院 女性診療科・産科
著者からのひと言
「腫瘍内のガス像」という、通常は消化管穿孔や感染を疑う極めて稀な所見を示した卵巣未分化胚細胞腫の症例報告である。一見、消化管疾患(GIST)と誤認しそうな画像所見が、実は茎捻転による血管内ガスの捕捉であったというメカニズムの考察は極めて示唆に富む。画像診断の落とし穴と、若年女性の急性腹症における迅速な外科的介入の重要性を再認識させる、教訓的な一報と言える。

抄訳

20代女性が急激な左下腹部痛と嘔吐で救急搬送された。身体所見で臍レベルまで達する硬い腫瘤を認め、血液検査ではLDHやALPの上昇、腫瘍マーカーであるCA125およびCA19-9の高値が確認された。AFPやhCGは正常範囲であった。造影CTでは腫瘍内に複数の線状ガス像が認められ、消化管間質腫瘍や膿瘍との鑑別が困難であったが、造影効果の欠如から卵巣茎捻転も疑われた。緊急手術の結果、360度捻転しうっ血した左卵巣腫瘍を確認し、病理検査にて卵巣未分化胚細胞腫と確定診断された。本例のガス像は、茎捻転による血管内ガスが、本腫瘍特有の構造である線維血管性隔壁に捕捉された結果であると考えられた。CTから約13時間後のMRIではガス像が消失していたことから、この現象が虚血に関連した一過性の現象と推測された。画像上、消化管疾患を疑う所見があっても、若年女性の急性腹症では卵巣腫瘍の茎捻転を念頭に置くべきである。

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2026/03/16

カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する

論文タイトル
Coupling of functionality to trafficking of KCNQ2/3 potassium channels at the axon initial segment
論文タイトル(訳)
カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する
DOI
10.1073/pnas.2527749123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.10 e2527749123
著者名(敬称略)
好岡 大輔 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 統合生理学教室
著者からのひと言
本研究の最も重要な点の1つは、これまで独立した別物だと考えられてきた2つの主要なチャネル制御機構—機能と局在の制御機構—を結びつける統一的な原理を明らかにしたことです。この原理は、正常な分子だけを選んで“適材適所”に配置するという「品質管理機構」がKCNQ2/3自身に備わっていることを示しています。またKCNQ2/3の異常は、てんかんをはじめとする多くの神経・精神疾患の原因となることが知られています。本研究の成果は、これら疾患の病態理解を深めるとともに、新規治療戦略の開発に有益な洞察をもたらすと期待されます。

抄訳

KCNQ2/3は神経の興奮性を決める主要な電位依存性カリウムチャネルです。ニューロンは高度に極性化した細胞のため、KCNQ2/3が神経活動に及ぼす影響はチャネル自体の機能性だけでなく、活動電位の発生部位である軸索起始部(AIS)への局在性にも左右されます。KCNQ2/3の機能性は電位感受による構造変化によって制御される一方、AIS局在はアンキリンG(ankG)という主要な足場タンパク質によって制御されています。しかし、チャネルの機能性と局在性を規定する機構の間にどのような連関が存在するのかはこれまで未解明でした。本研究では、チャネル機能の遺伝子工学的操作と、チャネルトラフィッキングの先端イメージングを組み合わせることで、KCNQ2/3の機能・局在連関を検証しました。その結果、KCNQ3の機能低下がエキソ/エンドサイトーシスや側方拡散を含むトラフィッキング経路全体に影響し、KCNQ2/3複合体のAIS局在効率を顕著に低下させることが明らかになりました。さらに、KCNQ3とankGの全長タンパク質間の相互作用を定量できる生細胞アッセイを開発し、KCNQ3の活性化コンフォメーションがankGへの安定した結合のために必須であることを解明しました。これらの結果は、神経興奮性の制御においてKCNQ2/3の機能性と局在性を統合する機構的基盤を確立します。

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2026/03/13

豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響

論文タイトル
Impact of an amino acid deletion detected in the hemagglutinin (HA) antigenic site of swine influenza A virus field strains on HA antigenicity
論文タイトル(訳)
豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響
DOI
10.1128/jvi.01820-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
中野 大知 小澤 真 他
所属
鹿児島大学 共同獣医学部 病態予防獣医学講座

抄訳

本研究では、日本の7農場から分離した豚インフルエンザAウイルス11株を遺伝学的に解析し、そのうち1株のH1N2ウイルスで、ヘマグルチニン(HA)の主要な抗原部位に位置する155番アミノ酸の欠失を確認した。そこで、155位に人工的な挿入または欠失を導入した組換えウイルスを作出し、培養細胞での増殖性と抗原性への影響を比較した。その結果、この欠失はイヌ腎臓上皮由来AX4細胞およびヒト肺胞上皮由来A549細胞における増殖性には大きな影響を与えなかった一方、モノクローナル抗体およびフェレット抗血清を用いた中和試験では、HA抗原性を顕著に変化させた。さらに、立体構造予測ではHA全体の大きな構造変化は示されず、局所的な抗体認識の変化が主因である可能性が示唆された。以上より、豚インフルエンザAウイルスは、1アミノ酸の欠失でも免疫逃避に関わる可能性があり、ブタ集団における流行株の継続的監視が重要であることが示された。

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2026/03/13

表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 

論文タイトル
Pleiotropic roles of elongation factor P in Bacillus subtilis physiology revealed by phenotypic and multi-omics analyses
論文タイトル(訳)
表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 
DOI
10.1128/spectrum.03142-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
小倉 光雄 他
所属
東海大学 海洋研究所
著者からのひと言
TranscriptomeとProteomeは、直感的には大体一致するものと思われてきたが、本研究では、検出された遺伝子とタンパク質の量的変化はかなり異なっていた。つまり、転写制御はもちろん第一義的に重要だが翻訳水準でもかなりの制御が行われていることがわかる。もちろんその解析はこれからの点が多いのだろうが、本研究のような網羅的、枚挙的な研究がその一助になれば良いと思う。

抄訳

枯草菌ECFシグマ因子sigXのグルコースによる発現誘導(GI)の阻害因子としてefp変異を同定した。伸長因子P (EF-P)は全生物に保存されており、タンパク質のXPPX配列におけるリボソーム停止を緩和する。efp変異体でのproteome変化を明らかにするため、iTRAQ解析を実施した。翻訳への影響を評価するには、mRNAあたりのタンパク質量を決定する必要があるから、RNA-seq実験も行った。iTRAQでは2187タンパク質を検出し、XPPXモチーフを含む84タンパク質の翻訳量減少を観察した。その結果efp変異による主要シグマ因子SigA とRNAPサブユニットRpoBとRpoCの減少をWestern解析やiTRAQで観察した。すなわち、RNAPコアをめぐる各シグマ因子の競争に変化が起こり、sigXのGIも影響されたと考えられる。さらに、鞭毛構成成分FliYとMotBの減少は運動性を欠損させ、チオレドキシンTrxAの減少は耐熱性を喪失させた。また、マンガン輸送体MntGの減少は低温下での成長に必要なマンガンの要求量を変化させた。この論文でefp変異によるトランスクリプトームとプロテオーム間の複雑な相互作用に光を当てた。

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2026/03/10

四次元以上の空間で何が見えてくるのか
― 高次元解析が明らかにした根粒菌接種による土壌微生物群集への影響 ―
 

論文タイトル
Higher-dimensional ordination analysis teases out impacts of Bradyrhizobium bioaugmentation on native soil microbial communities
論文タイトル(訳)
四次元以上の空間で何が見えてくるのか
― 高次元解析が明らかにした根粒菌接種による土壌微生物群集への影響 ―
DOI
10.1128/spectrum.02880-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 広海 他
所属
東北大学 大学院 生命科学研究科 土壌微生物分野
著者からのひと言
微生物群集解析では、次元圧縮法によってデータを2~3次元に可視化して解釈することが一般的です。しかし本来、次元圧縮法は単なる可視化のための手法ではなく、群集間の関係を幾何学空間として表現する方法です。幾何学的な解析は、人間が可視化できる2~3次元に限られません。本研究ではこの視点から高次元空間での群集構造を解析し、根粒菌接種による影響を新しい角度から評価しました。

抄訳

土壌に有用微生物を導入するバイオオーグメンテーションは農業分野で広く利用されているが、その影響を土壌微生物群集全体のレベルで評価することは容易ではない。本研究では、ダイズ根粒菌 Bradyrhizobium の接種が土壌微生物群集に及ぼす影響を、高次元オーディネーション解析を用いて評価した。微生物群集データを高次元空間に埋め込み、群集遷移の方向性や群集間の距離などの空間的特徴を解析することで、接種による群集構造の変化を検討した。その結果、接種菌の影響は土壌条件や時間経過によって異なる形で現れることが示され、従来の低次元解析(2〜3次元への可視化)では捉えにくい群集構造の変化が明らかとなった。これらの結果は、高次元空間を用いた解析が微生物群集の変化を理解するうえで有効な手法となる可能性を示している。

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2026/03/06

アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成

論文タイトル
Rapid pronucleus assembly using cytoplasmic RNAs in fertilized eggs of Xenopus laevis
論文タイトル(訳)
アフリカツメガエル受精卵における細胞質RNAを用いた迅速な前核形成
DOI
10.1091/mbc.E25-09-0440
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 3
著者名(敬称略)
池田 瑞紀 原 裕貴 他
所属
山口大学大学院創成科学研究科 進化細胞生物学研究室
著者からのひと言
本論文では、卵細胞中に豊富に存在するRNAがもつ「負の電荷」という物理化学的性質そのものが、クロマチン構造の脱凝縮を促し、受精後に精子核から前核が形成される過程を促進することを明らかにしました。卵細胞の細胞質には非常に多量のRNAが含まれていますが、本研究は、これらのRNAが既知のタンパク質合成の役割に加えて、細胞内の電荷バランスを調整することで、受精直後の胚で見られる極めて速い細胞周期の進行を支える「物理化学的環境」の形成にも関与する可能性を示唆しています。

抄訳

多細胞生物の卵細胞では、受精直後に精子由来の強く凝縮した核が、体細胞型の大きな前核へと急速に変化する。本研究は、この前核形成過程において卵細胞質に豊富に存在するRNAが果たす役割を検証した。アフリカツメガエル卵抽出液を用いた無細胞再構成系を用いて、細胞質内RNAの濃度や長さを実験的に操作したところ、適切な濃度と長さのRNAが前核形成を促進し、核内クロマチン構造の再編成を加速させることを見出した。また、RNAは精子由来の正に帯電した核タンパク質の解離を促進し、体細胞型ヒストンの取り込みを助けることも示された。これらの核形成やクロマチン構造への効果は、RNA以外の負に帯電した化合物でも再現され、RNAの塩基配列そのものではなく、負電荷という物理化学的性質が重要であることが示唆された。以上の結果から、卵細胞質中の負電荷をもつRNAがクロマチン構造の変換を促進し、受精後の短時間で進行する前核形成を加速する基本原理として機能する可能性が示された。

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