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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2025/10/14

肺非結核性抗酸菌症に対する分子疫学的動態解析:単施設前向きコホート研究 New

論文タイトル
Molecular epidemiological surveillance for non-tuberculous mycobacterial pulmonary disease: a single-center prospective cohort study
論文タイトル(訳)
肺非結核性抗酸菌症に対する分子疫学的動態解析:単施設前向きコホート研究
DOI
10.1128/spectrum.00436-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Vol. 13, No. 10
著者名(敬称略)
橋本 和樹 福島 清春 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫内科学
著者からのひと言
本研究では、肺非結核性抗酸菌症の菌株動態を迅速・簡便に解析するデジタルVNTR法を開発した。本手法は携帯型次世代シーケンサーMinIONに適用可能であり、従来は研究施設でしか行えなかった再感染と再燃の鑑別が、各病院の細菌検査室レベルで可能となる。臨床現場でも高精度かつ即時的な菌種・菌株同定が可能となり、個別化治療の発展につながることが期待される。

抄訳

肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)では、治療や経過観察中に喀痰から検出される菌種が変化することが知られるが、菌株レベルでの変化は十分に解明されていない。可変数タンデムリピート(VNTR)解析は菌株同定の標準手法であるものの、手作業が多く時間を要するため、日常診療への応用は限られている。本研究では、全ゲノムシーケンスを基盤とした簡便かつ迅速なデジタルVNTR法を開発し、菌種・菌株動態および薬剤感受性の変化を検討した。肺NTM症112例を前向きに解析した結果、1.5年間で13例(11.6%)で菌種・亜種、16例(14.3%)で菌株の変化を認めた。マクロライドおよびアミカシン感受性の変化は両群で観察され、耐性は菌株変化のない群で高頻度であった。デジタルVNTRは従来法と一致し、各病院の細菌検査室で迅速に菌株同定が可能な新たな分子タイピング法として、臨床現場でのNTM管理に貢献しうる。

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2025/10/14

細胞増殖法則における大域的制約原理 New

論文タイトル
Global constraint principle for microbial growth laws
論文タイトル(訳)
細胞増殖法則における大域的制約原理
DOI
10.1073/pnas.2515031122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.40
著者名(敬称略)
山岸 純平 畠山 哲央
所属
東京科学大学 未来社会創成研究院 地球生命研究所
著者からのひと言
細胞の増殖速度がどのようにして決まるのかというのは、非常に古くからある問題です。この論文で議論しているMonod則とLiebigの最小律は、それぞれ約80年前と約180年前に提唱された経験則です。我々の論文では、これらの古くからの経験則を統一する新たな原理を理論的に発見しました。古くから知られ、当たり前のように思われている経験則の中にこそ、研究のフロンティアがあると、我々は考えています。

抄訳

生物の複雑な挙動を理解するには、種や分子の詳細に依存しない普遍的な法則を見出す必要がある。細胞増殖の古典的法則であるMonod則は、単一基質に対する飽和的成長を記述する経験則だが、実際の細胞成長は多数の代謝反応と資源制約の協調によって決まる。本研究では、細胞内資源配分の一般的理論に基づき、細胞成長を支配する普遍原理として「大域的制約原理」を提唱した。この原理は、ある栄養素を増やすと他の資源が成長を制約する要因となり、その制約の数が段階的に増えるため、栄養濃度に対する増殖曲線が単調増加かつ凹関数となることを示すものである。さらに、この枠組みは複数の栄養素に対する増殖依存性を統一的に扱い、Monod則とLiebig最小律という二つの古典的法則を統合する。加えて、その概念を視覚的に表すものとして、Terraced Liebig’s barrel(リービッヒの段々樽)という新たなモデルを提示した。

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2025/10/09

大腸菌ファージの生理学的特性あるいはゲノムに基づく分類と受容体特異性との相関性 New

論文タイトル
From phenotype to receptor: validating physiological clustering of Escherichia coli phages through comprehensive receptor analysis
論文タイトル(訳)
大腸菌ファージの生理学的特性あるいはゲノムに基づく分類と受容体特異性との相関性
DOI
10.1128/jvi.01061-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology, Ahead of Print
著者名(敬称略)
金子知義 常田聡 他
所属
早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科
早稲田大学 総合研究機構 ファージセラピー研究所
著者からのひと言
薬剤耐性菌に対する新たな治療法として注目されるファージ療法では、異なる受容体を標的とするファージを組み合わせたカクテルが投与されますが、受容体同定は労力を要します。本研究は、生理学的特性、ゲノム配列、尾部繊維系統という独立した分類法がいずれも受容体特異性と高度に相関することを実証しました。この基礎的知見は、ファージの理解を深めるとともに、ファージ療法において、異なる受容体を標的とする多様なファージカクテルを効率的に設計する実用的な指針を提供します。

抄訳

細菌に感染するウイルスであり次世代の抗菌薬として着目されるバクテリオファージ(ファージ)の分類と標的受容体との関係を理解することは、ファージ生態学および応用研究において重要である。本研究では、13種の大腸菌ファージを生理学的特性、全ゲノム配列、尾部繊維タンパク質系統に基づいて比較した。生理学的特性に基づく分類では、宿主域評価のための細菌パネルの最適化、および量質混合データ型に適した距離指標の実装によって既報の手法を改良し、各分類法にシルエット係数解析による最適分割数の客観的評価を採り入れた。ファージ耐性株のゲノム解析と相補実験、およびリポ多糖(LPS)構造解析などによるファージ標的受容体の同定の結果、本研究のファージはLPS R-coreの異なる部位、膜タンパク質、あるいは鞭毛を標的とすることが明らかとなった。特に、LPSのヘプトースリン酸化などの微細な化学修飾がファージ認識において重要であることが示された。さらに、これら分類法による結果は極めて類似しており、新たなファージを追加すると類似度が増加したことから、各手法に互換性と一般性があることが示された。

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2025/10/09

卵巣顆粒膜細胞の2型FGF受容体はメスマウスの正常な妊孕性に必要である New

論文タイトル
FGF receptor 2 signaling in granulosa cells is required for normal female fertility in mice
論文タイトル(訳)
卵巣顆粒膜細胞の2型FGF受容体はメスマウスの正常な妊孕性に必要である
DOI
10.1530/REP-25-0219
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction REP-25-0219
著者名(敬称略)
菅家 卓哉 杉浦 幸二 他
所属
東京大学大学院農学生命科学研究科・応用動物科学専攻 応用遺伝学研究室
著者からのひと言
本研究では、哺乳類の卵巣において、線維芽細胞増殖因子(FGF)が代謝的支援を介して卵母細胞の「質」を制御している可能性を示しました。これらの知見が、人や家畜における不妊の原因解明や治療法の開発に貢献することを期待しています。

抄訳

線維芽細胞増殖因子(FGF)は、哺乳類の卵巣機能制御に関与することが知られている。しかし、その欠損が雌の生殖能力に与える具体的な影響については明らかでない。本研究では、卵巣卵胞を構成する顆粒膜細胞において2型FGF受容体(FGFR2)を欠損させたマウスを作製し、その影響を解析した。その結果、これらのマウスは卵胞発育や排卵は正常であるにもかかわらず、著しく低い繁殖能力を示した。さらに、卵母細胞の代謝的支援に重要な役割を果たす卵母細胞周囲の顆粒膜細胞(卵丘細胞)において、解糖系酵素の発現が低下していた。その結果、卵母細胞は見かけ上正常に発育するものの、受精後に出生まで至る能力が低下していた。以上の結果から、FGFR2を介したFGFシグナルは卵丘細胞の代謝機能を制御し、卵母細胞の発達を促進することで、正常な雌の生殖能力を支える重要な役割を果たしていることが示唆された。

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2025/10/08

HSV-2 UL13プロテインキナーゼを活性化するウイルス因子の同定 New

論文タイトル
Identification of viral activators of the HSV-2 UL13 protein kinase
論文タイトル(訳)
HSV-2 UL13プロテインキナーゼを活性化するウイルス因子の同定
DOI
10.1128/jvi.01165-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology  (Online ahead of print.)
著者名(敬称略)
小栁 直人 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
本研究は、ウイルスプロテインキナーゼの活性化を介してウイルス増殖を制御する補因子を同定したものである。ウイルスキナーゼが宿主キナーゼと同様に、自身のウイルスタンパク質を補因子として利用し、その活性を制御する仕組みを獲得していることを明らかにした点で、学術的に高い意義を有する。本研究の成果は、今後のウイルスキナーゼ基質の同定やリン酸化の生物学的意義の解明につながることが期待される。

抄訳

これまでの研究で、HSV-2のUL13プロテインキナーゼがウイルス感染細胞内で宿主因子EF-1δをリン酸化することが報告されていたが、本研究において、UL13の単独発現では培養細胞中でEF-1δのリン酸化が誘導されないことを見出した。これにより、UL13キナーゼの活性化にはウイルス由来の補因子が必要であると仮定し、その同定を試みた。その結果、UL13とUL55またはUs10を共発現すると、UL13単独に比べてEF-1δリン酸化が著しく増強された。UL13はUL55またはUs10と相互作用し、in vitroキナーゼアッセイでも活性が上昇した。また、UL55欠損株ではEF-1δリン酸化が著しく減少し、Us10欠損株では影響が小さいが、UL55とUs10の二重欠損株ではUL55欠損株よりさらに減少した。さらに、UL55欠損株はUL13キナーゼ活性消失株と同程度にウイルス増殖性とプラーク形成能を低下させたが、Us10欠損株ではほとんど影響は認められなかった。これらの結果から、UL55は主要な活性化因子、Us10は補助的因子としてUL13キナーゼ活性を制御することが示唆された。

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2025/10/07

複数のCyp51アイソザイムを持つ真菌に対するアイソザイム特異的アゾール系抗真菌薬剤の相乗効果

論文タイトル
Synergistic effects of Cyp51 isozyme-specific azole antifungal agents on fungi with multiple cyp51 isozyme genes
論文タイトル(訳)
複数のCyp51アイソザイムを持つ真菌に対するアイソザイム特異的アゾール系抗真菌薬剤の相乗効果
DOI
10.1128/aac.00598-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
石井 雅樹(筆頭著者と連絡著者)、大畑 慎也(連絡著者)
所属
武蔵野大学 薬学部・薬学研究所
著者からのひと言
Aspergillus属菌などによる全身性真菌症は世界で年間375万人の死者を出します。また、白癬菌による水虫などの表在性真菌症は世界人口の10%以上が罹患しており、いずれも深刻な問題です。真菌は我々人間と同じ真核生物であり、選択的に作用する薬剤の開発は困難であるため、既存薬の有効活用が今後の治療における鍵となります。本研究は、アイソザイム選択性という視点から、難治性真菌症に対して同系統薬の併用療法という新たな扉を開き、薬剤耐性菌への新規対抗策を提供すると期待されます。

抄訳

本研究では、白癬菌Trichophyton rubrumにおいて、エルゴステロール生合成経路の律速酵素であり、アゾール系抗真菌薬の標的であるCyp51の2つのアイソザイム(Cyp51AとCyp51B)の機能を解析した。遺伝子欠損株の解析から、Cyp51Bは白癬菌の正常な成長に必須である一方で、Cyp51Aはアゾール系薬剤への自然抵抗性に関わる誘導型アイソザイムであることが判明した。28種類のアゾール系薬剤の感受性試験から、フルコナゾールやスルコナゾールがCyp51Bを、プロクロラズはCyp51Aを選択的に阻害することが明らかになった。さらに、これらのアイソザイム選択的薬剤を併用することで、白癬菌だけでなくAspergillus welwitschiaeの生育が相乗的に阻害された。本研究は、異なるCyp51アイソザイム選択性を持つアゾール系抗真菌薬の併用が、病原性真菌に対する新たな治療戦略となることを示唆している。

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2025/10/07

Stenotrophomonas maltophilia 臨床分離株に対するアズトレオナム–ナキュバクタムおよびセフェピム–ナキュバクタムのin vitro 効果の評価

論文タイトル
Evaluation of in vitro efficacy of aztreonam-nacubactam and cefepime-nacubactam against clinical isolates of Stenotrophomonas maltophilia
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia 臨床分離株に対するアズトレオナム–ナキュバクタムおよびセフェピム–ナキュバクタムのin vitro 効果の評価
DOI
10.1128/aac.00755-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
青木 渉 上蓑 義典 他
所属
慶應義塾大学医学部臨床検査医学教室
著者からのひと言
なかなか治療選択肢の少ないS. maltophiliaに対して、臨床分離株を使ってさまざまな新規抗菌薬の薬剤感受性を調べていくうちに、我が国発の新規βラクタマーゼ阻害剤であるナキュバクタムとセフェピムまたはアズトレオナムの組み合わせがある程度効果を示すことを発見しました。
病院検査室発の小さな研究ですが、臨床医を悩ませるS. maltophiliaに対する新しい治療選択肢が近い将来1つでも増えるような開発につながればと思っています。

抄訳

Stenotrophomonas maltophilia はL1βラクタマーゼ(メタロβラクタマーゼ)およびL2βラクタマーゼ(クラスA βラクタマーゼ)を産生するため、多くのβラクタム系抗菌薬に自然耐性を示し、治療選択肢が限られている。従来はST合剤やレボフロキサシンが主に用いられてきたが、近年はセフィデロコルやアズトレオナム–アビバクタムなど新規薬剤が注目されている。ナキュバクタム(NAC)はDBO系の新規βラクタマーゼ阻害剤でありβラクタマーゼ阻害作用に加え、PBP2への結合などによる抗菌活性増強効果(エンハンサー効果)を示すことが報告されている。本研究では、2012〜2024年に慶應義塾大学病院で血液培養から分離された53株を対象に、アズトレオナム(ATM)およびセフェピム(FEP)との併用効果を検討した。結果、ATM–NACおよびFEP–NACはいずれも単剤に比して有意にMICを低下させ(P<0.001)、MIC50/90はそれぞれ8/16 µg/mLおよび4/16 µg/mLであった。FEPはL1βラクタマーゼの基質であるが、FEP–NACでは活性が認められたことから、NACのエンハンサー効果が示唆される。これらの結果は、FEPやATMとNACの併用療法がS. maltophilia感染症に対する新たな治療選択肢と今後なりうる可能性を示し、さらなる研究が求められる。

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2025/10/03

パリトキシンはどのようにしてNa+,K+ポンプを陽イオンチャネルに変えるか

論文タイトル
How palytoxin transforms the Na+,K+ pump into a cation channel
論文タイトル(訳)
パリトキシンはどのようにしてNa+,K+ポンプを陽イオンチャネルに変えるか
DOI
10.1073/pnas.2506450122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.38
著者名(敬称略)
金井 隆太 豊島 近 他
所属
東京大学 定量生命科学研究所 膜蛋白質解析研究分野
著者からのひと言
パリトキシンが結合しただけではチャネル化は起こらない。反応サイクルをある程度回れる柔軟性があるから可能なのである。Na+,K+ポンプは本質的にNa+ポンプだが、それを反映してイオン通路の構成も細胞内側、外側で大きく異なっている。本論文は「チャネルとポンプの本質的違い」や「ポンプ蛋白質は何を見て次のステップに進む(構造変化を起こす)のか」にも答える深い論文になった。海産毒物や蛋白質はあまりにも良く出来ていることに圧倒されるのは著者だけではあるまい。

抄訳

パリトキシンは生物界で最も強力な非ペプチド性毒物の一つであり、非常に複雑な構造を持つ。その標的はNa+,K+ポンプ(Na+,K+-ATPase、Na+,K+依存性ATP水解酵素)である。Na+,K+ポンプは細胞内から細胞外へATP1分子当たり3個のNa+を厳密に選択して運搬し逆方向には2個のK+(Na+でも可)を濃度勾配に逆らって輸送する膜蛋白質である。パリトキシンはNa,K+ポンプを非選択的陽イオンチャネルに変えてしまう。このことは「ポンプはチャネルにゲートがもう一つ付加されたものである」ことを示唆するようにも見える。しかし、クライオ電子顕微鏡を駆使して得られた構造は、本来の役割の違い(ポンプは濃度勾配を確立する、チャネルは濃度勾配に従って物質を通す)を反映して、本質的に違うものであることを示していた。また、パリトキシンは役割を異にする3つの部分から成り、その柔軟性が膜貫通へリックス間の連携の破壊によるポンプのチャネル化に必須であることも判明した。

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2025/09/24

世界初:急性期脳梗塞に対するリアルタイムAI支援下機械的血栓回収術

論文タイトル
World’s First Real-Time Artificial Intelligence–Assisted Mechanical Thrombectomy for Acute Ischemic Stroke
論文タイトル(訳)
世界初:急性期脳梗塞に対するリアルタイムAI支援下機械的血栓回収術
DOI
10.3174/ajnr.A8704
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology August 2025, 46 (8) 1647-1651
著者名(敬称略)
廣瀬 瑛介 松田 芳和 他
所属
昭和医科大学病院脳神経外科
著者からのひと言
本研究は、急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収術において、世界で初めてリアルタイムAI支援を臨床応用した報告です。
時間との戦いである治療中に、術者の「目線の変わり」となるアシスト機能を提供し、安全性と治療効率の向上に寄与する可能性を示しました。

抄訳

急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収術(MT)において、リアルタイム人工知能(AI)支援を用いた初の臨床経験を報告した。局所麻酔下で16例連続にAIソフト(Neuro-Vascular Assist, iMed Technologies)を使用し、ガイディングカテーテルが透視画像から外れた際にリアルタイム通知を行った。通知は全例で正常に作動し、1例あたり平均8.1回の通知が発生。精度97%、再現率99%と高い正確性を示し、126件の真陽性通知のうち25件(20%)では術者が10秒以内に再位置調整を実施した。手技遅延や有害事象は認めず、安全性も確認された。本研究はMTにおけるAIリアルタイム支援の有用性を示す初報の一つであり、今後は大規模検証により臨床的意義が期待される。

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2025/09/24

Pseudomonas migulaeの低温ストレス条件下での芳香族化合物分解過程における遺伝子発現挙動のプロファイリング

論文タイトル
Transcriptomic profiling of Pseudomonas migulae revealed gene regulatory properties during biodegradation of aromatic hydrocarbons under cold stress
論文タイトル(訳)
Pseudomonas migulaeの低温ストレス条件下での芳香族化合物分解過程における遺伝子発現挙動のプロファイリング
DOI
10.1099/mgen.0.001470
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Microbial Genomics Vol. 11, Issue 9 (2025)
著者名(敬称略)
柳田 將貴 守 次朗 他
所属
横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 微生物生態学研究室
著者からのひと言
Pseudomonas属細菌は様々な環境から見つかり、その優れた低温ストレス適応能力についても頻繁に報告されていますが、意外にも、低温に適応する詳細な機構については過去に報告がありませんでした。本学修士課程の学生が奮闘し、その一端を解き明かしました。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。

抄訳

Pseudomonas属細菌においては、芳香族の環境汚染物質の分解能力や、低温を含む多様な環境ストレスへの優れた適応能力を有するものがしばしば報告されている。本研究では、環境汚染物質のp-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)を増殖の栄養源として利用でき、なおかつ低温条件下(10˚C)で活発に生育可能な新規の細菌株P. migulae HY-2株をモデルとして用いて、低温ストレス条件下での芳香族炭化水素の分解過程における遺伝子調節機構について調査を行った。HY-2株のトランスクリプトーム解析の結果、低温条件下では複数種のシャペロンの発現上昇によりタンパク質の恒常性が維持され、さらに外来ポリアミンの蓄積に伴うバイオフィルム形成が誘導される一方、PHBAの分解に関わる遺伝子群の発現はほとんど影響を受けないことがわかった。本成果は、細菌を用いた汚染環境の修復技術におけるPseudomonas属細菌の有用性について、新たな知見を与えるものである。

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