抄訳
本研究では、ヒト多能性幹細胞由来の大脳皮質オルガノイドと視床オルガノイドを融合した視床皮質アセンブロイド(hThCA)を用い、視床–皮質相互作用がヒト大脳皮質の発達をどのように制御するかを明らかにした。hThCAでは双方向の軸索投射とシナプスが再構成され、視床入力により軸索形成・皮質板関連・活動依存的遺伝子の発現上昇を伴う大脳皮質の成熟が加速した。組織解析では、神経前駆細胞プールの拡大と深層ニューロンの増加が認められた。さらに、hThCAにおいて、神経活動が視床から大脳皮質へ波状に伝播し、大脳皮質側では錐体路(PT)ニューロンと皮質視床(CT)ニューロンにのみ同期活動が出現し、大脳内(IT)ニューロンは非同期のままであった。以上より、視床由来の拡散性因子が前駆細胞の増殖を、長距離シナプス入力が細胞種特異的な同期ネットワークの形成を担うことが示唆される。hThCAは視床皮質連関の破綻が関与する神経発達症の分子・細胞・回路レベルでの解析を可能にする有効なヒト脳モデルとなる。