抄訳
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism; PA)の外科的治療適応を判断する際には、副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling; AVS)によるアルドステロンの左右比(lateralization index; LI)が指標として推奨されている。しかし、どの程度のLIで手術による治癒が期待できるか、明確なカットオフ値はこれまで確立されていなかった。本国際多施設共同研究では、PA患者1,550例(11カ国・16施設)の後ろ向きコホートを対象に、AVS所見から手術で治癒しうるPA(片側性PA)を識別するための最適LIカットオフ値を検討した。
まず、外科手術に対する治癒期待に関する患者側の意向も考慮したカットオフ設定を行うため、日本人PA患者82名に対してアンケート調査を実施し、手術を決断するために必要と考える治癒率の中央値が80%であることを確認した。これを踏まえ、LIのカットオフ値は「治癒率80%の陽性的中率」を達成する水準として設定された。その結果、最適LIカットオフ値はACTH非刺激時で3.8、ACTH刺激時で3.4と算出された。さらに、CTでの副腎結節の存在、ならびに対側抑制(contralateral suppression: CR<0.4)が、外科的治療により治癒し得るPAの独立した予測因子であることが示され、これらの指標をLIと組み合わせることで予測精度は大幅に向上した。本研究により、AVSにおけるLIの最適カットオフ値が初めて明確化された。加えて、CT所見や対側抑制を併用することで、PAに対する外科的治療の適応をより精密に判断できる可能性が示唆された。