本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2026/05/11

スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定

論文タイトル
Molecular epidemiology of rodent-borne Leptospira spp. in Sri Lanka: identification of novel sequence types
and previously unrecognized reservoir animals
論文タイトル(訳)
スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定
DOI
10.1099/jmm.0.002133
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 3
著者名(敬称略)
Nipun Rathnayake 小泉 信夫 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部-第四室
著者からのひと言
本研究では、スリランカのネズミ類における病原性レプトスピラの遺伝的多様性を明らかにし、ヒト感染に関与する新たな保菌動物を同定した。さらに、これまで未報告であった新規シーケンスタイプも検出され、スリランカにおける多様なレプトスピラ感染環の存在が示された。本研究成果は、レプトスピラ症の感染源解明と制御対策の構築に貢献すると期待される。

抄訳

レプトスピラ症は,全世界で発生する人獣共通感染症であり、特に熱帯地域で流行がみられる。スリランカは本症の流行地域の一つであり、病原体(レプトスピラ属菌)、保菌動物、ならびに環境・職業要因が複雑に関与することで、公衆衛生上の問題となっている。
本研究では、ヒト患者由来レプトスピラとネズミ類が保有するレプトスピラとの遺伝学的関連性を明らかにするため、スリランカのKurunegala、Anuradhapura、Badullaの3地区に生息するネズミ類におけるレプトスピラの遺伝的多様性を調査した。
その結果、257検体中33検体(12.8%)から病原性レプトスピラDNAが検出され、陽性個体はBandicota bengalensisMus boodugaRattus rattus、およびVandeleuria sp.の4種であった。flaB遺伝子配列解析および多遺伝子座配列タイピング(MLST)により、検出されたレプトスピラ種はLeptospira borgpeterseniiL. interrogansL. kirschneri、およびL. licerasiaeであり、2つの新規シーケンスタイプ(ST389およびST392)を含む計5種類のシーケンスタイプが同定された。また、R. rattusがヒト感染に関与するL. interrogans ST49の、M. boodugaL. borgpetersenii ST144およびL. licerasiaeの保菌動物であることが示された。

論文掲載ページへ

2026/05/11

原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例

論文タイトル
Dendriform pulmonary ossification in fibrosing interstitial lung disease with primary biliary cholangitis
論文タイトル(訳)
原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-271743
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 4
著者名(敬称略)
尾形 朋之 他
所属
茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター 呼吸器内科
著者からのひと言
間質性肺疾患に伴う微細結節影では、肉芽腫性疾患のみならず樹枝状肺骨化症(DPO)も重要な鑑別となります。本症例は、骨条件CTでの再評価と経気管支鏡下クライオバイオプシーにより診断に至りました。背景因子として慢性微小誤嚥の関与も示唆され、DPOの病態理解にも示唆を与える症例です。

抄訳

Dendriform pulmonary ossification(DPO)は、肺内に樹枝状の骨形成を認める稀な病態であり、UIPパターンを呈する肺線維症との関連が知られている。今回、無症候性の原発性胆汁性胆管炎(PBC)を有する80歳代男性において、胸部CTで両側下葉の非特異的なすりガラス影と線維化に加え、胸膜下に微小結節の出現を認めたため、PBCに関連した肉芽腫性の間質性肺炎が疑われた。しかし、経気管支鏡下クライオバイオプシー(TBLC)では肉芽腫は認められず、UIPパターンの線維化とともに肺胞内の骨化が確認された。これを受けてCTを骨条件で再評価したところ、微小結節は高吸収の樹枝状構造として描出され、DPOに合致する所見であることが確認された。本報告は、間質性肺炎に付随するDPOの臨床的意義と、TBLCの有用性を示すものである。

論文掲載ページへ

2026/05/07

ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見

論文タイトル
Structural insights into biased signaling at chemokine receptor CCR7
論文タイトル(訳)
ケモカイン受容体CCR7におけるバイアスシグナル伝達の構造的知見
DOI
10.1073/pnas.2533975123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2533975123
著者名(敬称略)
田中 康太郎 堤 尚孝 他
所属
東京科学大学 総合研究院 細胞構造生理学研究室(CeSPL)
著者からのひと言
同一の受容体に結合するリガンドが、いかにして異なる細胞内反応を引き起こすのか。本研究は、この謎に対し、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析、計算機シミュレーション、薬理解析を組み合わせて迫ったものである。静的な構造だけでなく、受容体の動的な振る舞いまで捉えた本成果が、副作用を抑え必要な薬効だけを引き出す画期的な創薬へと繋がることを期待している。

抄訳

GPCRの一種であるケモカイン受容体CCR7は、免疫細胞の遊走を制御し、適応免疫応答やがんのリンパ節転移において重要な役割を担う。CCR7の内因性リガンドである2種類のケモカイン(CCL19およびCCL21)は、同一受容体に結合するにもかかわらず、細胞内のシグナル経路を異なるバランスで活性化する「バイアスシグナル伝達」を引き起こすが、その構造的メカニズムは未解明であった。
本研究では、各リガンドが結合したCCR7がGタンパク質を活性化する様子をクライオ電子顕微鏡により高分解能で可視化した。この構造を基に、計算機シミュレーションで受容体の動的な構造変化を解析し、薬理解析と組み合わせることで、リガンドの結合様式の差異が受容体に異なる構造変化を誘起し、シグナル分子を選択的に活性化する精緻な仕組みを解明した。本成果は、副作用を低減し目的の薬効のみを誘導する、次世代の免疫疾患治療薬や抗がん剤の開発基盤となることが期待される。

論文掲載ページへ

2026/05/01

ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見

論文タイトル
Factors contributing to the frequent interspecies transmission of G4P[6] Rotavirus alphagastroenteritidis
strains from pigs to humans in Vietnam: molecular epidemiological insights
論文タイトル(訳)
ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間 伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見
DOI
10.1099/mgen.0.001685
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 4
著者名(敬称略)
金子 美穂 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染分子解析学分野
著者からのひと言
ロタウイルスA(RVA)は、小児における重症胃腸炎の主要な原因の一つであり、動物由来株のヒトへの種間伝播が報告されている。本研究では、ヒトとブタの双方で検出されるP[6]遺伝子型VP4に着目した。P[6]のアミノ酸特性と宿主糖鎖との相互作用との関連を示した点は、ウイルスの宿主適応機構の理解に重要な示唆を与える。また、動物由来株が比較的高頻度でヒトへ種間伝播しているにもかかわらず、持続的なヒト-ヒト間伝播には至っていないことから、ヒト宿主への適応には追加的な遺伝的要因が必要である可能性が示された。本研究の成果は、動物由来ロタウイルスの進化およびヒト適応機構の理解を深めるとともに、感染対策やワクチン開発に向けた基盤的知見を提供する。

抄訳

アジアの一部地域では、ブタ由来ロタウイルス(RVA)、特にG4P[6]株がヒトから比較的高頻度で検出されている。本研究では、ベトナム小児から検出されたG4P[6]株の起源と高頻度検出の要因を分子疫学的に解析した。2年間に収集したRVA陽性糞便1,252検体中28検体(2.2%)がG4P[6]株単独感染に起因し、23株の全ゲノム解析により、いずれもヒトRVAとのリアソートメントを伴わないブタ由来株と確認された。一部のG4P[6]株に全ゲノムが一致するクラスターが認められ、限定的なヒト-ヒト間伝播の可能性が示唆された一方、多くの株は遺伝的に異なっており、ブタからヒトへの複数回の独立した種間伝播が推測された。さらに系統解析から、本研究株を含むブタ様RVAのP[6]は典型的ヒトRVAのP[6]とは遺伝的に異なり、それぞれのP[6]株の検出頻度には地理的差異が認められた。加えて、アミノ酸配列解析によりブタ様P[6]に特徴的な残基が同定され、一部は既知のヒト細胞表面糖鎖への結合部位に対応していた。以上より、本事例は持続的なヒト-ヒト間伝播株の出現ではなく、頻回な種間伝播に起因すると考えられ、ブタ様P[6]のアミノ酸特性が種間伝播を促進し得る可能性が示された。

論文掲載ページへ

2026/04/30

quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ

論文タイトル
quickARSC: standalone package and web interface for profiling elemental stoichiometry of proteomes
論文タイトル(訳)
quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ
DOI
10.1128/mra.00031-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
西野 聡 吉澤 晋 他
所属
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門(微生物)
著者からのひと言
詳細はGitHub Wikiをご確認ください。
https://github.com/stsnsn/quickARSC/wiki 

抄訳

本稿では、原核生物の塩基配列またはアミノ酸配列のFASTAファイルから元素組成指標(ARSC)を計算するコマンドラインツール quickARSC を紹介する。quickARSCでは、タンパク質またはプロテオームの窒素、炭素、硫黄組成指標を算出可能である。本ツールはgz圧縮済みファイルや並列計算に対応しており、パイプなどを用いてシームレスにUNIXコマンドと接続できる。
併せて、FASTAファイルをアップロードすることでこれらの指標を計算可能なWebページを公開した。このページではGenome Taxonomy Database r226.0に登録されている143,614種の代表原核生物プロテオームにおける事前計算済みデータも提供している。ユーザーはGUI操作のみでこれらの情報を検索・取得可能である。

 

 

論文掲載ページへ

2026/04/21

Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる

論文タイトル
Alternative microexon splicing code for a four-amino acid peptide of PTPRD governs behavioral development
論文タイトル(訳)
Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる
DOI
10.1073/pnas.2515310123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.15 e2515310123
著者名(敬称略)
今井彩子 吉田知之 他
所属
富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座

抄訳

マイクロエクソンは3~27ヌクレオチドから構成され、神経細胞で選択的に利用されることから神経系のタンパク質の機能を修飾する微小ゲノム素子として近年、注目されている。本研究ではシナプスの形成と再編を担う細胞接着タンパク質(シナプスオーガナイザー)をコードするPtprd遺伝子のもつ3つのマイクロエクソンの調節機構とその生理的な意義に注目した。これらのマイクロエクソンの選択的スプライシングは遺伝的なプログラムと環境依存的なプログラムに従って脳内で時空間的に調節されることがわかった。3つのマイクロエクソンのうちの1つは僅か4アミノ酸のペプチドをコードし、この遺伝的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスでは感覚、運動、情動、社会性など広範な行動に大きな異常が観察された。一方、環境依存的な選択的スプライシングプログラムを欠失したマウスはある種の学習と記憶ができなくなった。本研究からシナプスオーガナイザータンパク質内の僅か4アミノ酸のペプチドの使い方が行動の発達を大きく左右することが示された。今回の知見は、精神疾患や神経発達障害の発病機構の解明、さらには高度で複雑なヒトの脳機能や個性を作り出す仕組みの解明に繋がるものとして期待される。

論文掲載ページへ

2026/04/15

メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する

論文タイトル
Three cholecystokinin receptors differentially regulate reproduction, digestion, lipid metabolism, and growth in medaka
論文タイトル(訳)
メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する
DOI
10.1530/JOE-25-0353
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JOE-25-0353
著者名(敬称略)
村下 幸司 他
所属
福井県立大学 海洋生物資源学部 先端増養殖科学科
著者からのひと言
本研究は、メダカをモデルとして3種のコレシストキニン(Cck)受容体が、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ異なって制御することを明らかにした。特に、Cck受容体が脂質代謝や体成長の調節に関与することを示した初めての報告であり、Cckの生理機能を従来の枠組みから拡張するものとなる。

抄訳

コレシストキニン(Cck)は、消化、摂食および生殖の制御に関与する多機能ペプチドホルモンである。本研究では、メダカ(Oryzias latipes)において3種のCck受容体遺伝子(cck1r、cck2ra、cck2rb)が欠損したノックアウト系統を作製し、それぞれの生理機能を解析した。cck1r欠損魚では消化酵素分泌の低下と成長遅延が認められ、消化制御および初期成長における重要性が示された。cck2ra欠損魚では軽微な生殖能の低下と脂質蓄積の増加が観察された。一方、cck2rb欠損魚では雌の不稔、顕著な脂質蓄積および成熟期以降の成長促進が認められた。さらに網羅的遺伝子発現解析により、脂質代謝および成長制御における各受容体の機能特異性が支持された。

論文掲載ページへ

2026/04/14

Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定

論文タイトル
Identification of the C9-hydrogenase for 9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) and the 7α-dehydratase essential for initiating β-oxidation of the B-, C-, and D-rings in steroid degradation by Comamonas testosteroni TA441
論文タイトル(訳)
Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定
DOI
10.1128/aem.02331-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
堀之内 正枝
所属
理化学研究所Kim表面界面科学研究室
著者からのひと言
細菌による好気的ステロイド分解の分解経路および関連遺伝子の大半は長らく不明であり、TA441株を用いた一連の研究で初めてステロイド骨格の分解がほぼ明らかになったものの、細菌がこの分解系を持つメリット、この分解系の環境中での役割についてはまだ不明である。その解明にはより広範囲の分解細菌の解析が必要だが、遺伝的に遠い細菌では酵素のアミノ酸配列の相同性も低くなる。立体構造での検索が可能になれば、新たな一面が見えてくるかもしれない。

抄訳

Comamonas testosteroni TA441株は、ステロイド骨格の分解経路が最も詳細に解明されている、好気的ステロイド分解細菌のモデル株である。TA441株と同様の分解経路は、他のプロテオバクテリアや結核菌などの放線菌を含む幅広い属の細菌に存在する。本研究では新たにCD環開裂に必須なhydrogenase(ScdB)およびdehydratase(ScdH)を同定した。AlphaFoldによるモデリングでは、TA441株のステロイド分解に関わるhydrogenaseのうち5種がScdBと類似構造をとる事が示され、ScdHは、BCD環の分解に関与するScdYおよびScdNと同様のホモヘキサマー構造を形成すると予測された。同様に他の酵素も解析した結果、TA441のC12βdehydrataseが、アミノ酸配列のidentityが約28%しかないClostridium scindensの胆汁酸7α dehydratase BaiEと強い構造的類似性を示すことが明らかになった。

論文掲載ページへ

2026/04/09

変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子

論文タイトル
Phenotypic characterization of signature-tagged mutants identifies physiological determinants of Vibrio vulnificus fitness
論文タイトル(訳)
変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子
DOI
10.1128/aem.02505-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学 獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
短時間内に宿主体内で増殖し、重篤な病態へと陥れるNSTI起因菌の病原性の基礎には、宿主環境への適応とそれを制御する遺伝子群が有機的繋がりを持って機能しており、毒素等の古典的因子による病原性の発揮を支えていることが明らかとなった。この発見は、NSTI起因菌による、迅速な組織侵襲機構を説明し得るものであると共に、細菌の病原性研究に、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

抄訳

Vibrio vulnificusは、ヒトへの感染後、極めて短期間のうちに壊死性軟部組織感染症(NSTI)や敗血症を引き起こす。本研究では、本菌が宿主体内での増殖に必要とする遺伝子群を網羅的に同定した。同定した37遺伝子の変異株について、マウスNSTIモデルにおける増殖能、運動性、莢膜形成、および好中球抵抗性などの表現型を解析した。 その結果、本菌の生体内増殖は、運動性、細胞内シグナル制御、代謝、およびストレス耐性等の生理機能に強く依存していることが明らかとなった。特に、莢膜や細胞傷害性といった従来の「病原因子」とは独立して、宿主環境への適応に直接寄与する制御・代謝関連因子が多数見出された。 
本研究の結果は、V. vulnificusが代謝を含む生理機能をダイナミックに変化させて宿主環境に適応し、病原因子の時空間制御に繋げることで、迅速な組織侵襲を可能にしていることを示している。これは、細菌の病原性を「毒素の有無」という従来の枠組みから解き放ち、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

論文掲載ページへ

2026/04/08

アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定

論文タイトル
Identification of two Wolbachia genes with cell proliferation-inhibitory activity in Ostrinia cultured cells
論文タイトル(訳)
アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定
DOI
10.1128/mbio.00074-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
勝間 進 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 昆虫遺伝研究室
著者からのひと言
ボルバキアは蚊を介したウイルス等の媒介抑制などにおいて、応用上重要な細胞内共生細菌です。さらには、宿主の性や生殖を操作するという点で、基礎生物学的にも注目されています。一方、感染・移植技術や遺伝子操作法が確立していないことから、その遺伝子機能の解析はあまり進んでいません。本研究はアワノメイガとそれに感染するオス殺しボルバキアを対象に、培養細胞を利用した機能解析例を報告したものになります。ボルバキア研究の発展に貢献できれば幸いです。

抄訳

細胞内共生細菌であるボルバキアは、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っています。基礎生物学的にも応用上も重要な共生細菌ですが、ボルバキア遺伝子の機能解析については非常に遅れています。その理由としては、確立した移植方法がないこと、そして遺伝子操作法が存在しないことが挙げられます。本研究では、アワノメイガにおいてオス殺しを引き起こすボルバキア(wFur)とアワノメイガ由来の培養細胞を用いて、ボルバキア移植方法を構築しました。その結果、非感染細胞へのwFur移植が細胞毒性を伴う細胞増殖抑制を引き起こすことがわかりました。さらに、wFur遺伝子を非感染アワノメイガ培養細胞で発現させる発現スクリーニングによって、w52w75と名付けた細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子を発見しました。これら2つの遺伝子はwFur感染におけるアワノメイガの細胞増殖抑制に関与している可能性が考えられます。

論文掲載ページへ