抄訳
寄生虫の一種であるトキソプラズマ原虫は免疫不全患者や新生児に重篤な感染症を引き起こす。トキソプラズマ原虫がコードする8000個以上のタンパク質の多くは細胞内の局在および機能が不明であり、病原性への関与も未知数な状態であった。我々が樹立した生体内CRISPRスクリーニング技術を駆使することで、約600個のトキソプラズマ遺伝子の必須性をマウスの生体内で網羅的にスクリーニングした。その結果、トキソプラズマ原虫の病原性に必須の因子を多数同定することに成功した。その中でも医学的に最も重要な寄生虫の集団である『アピコンプレクサ』に保存されているRimM遺伝子に着目した。RimMは寄生虫の葉緑体類似器官であるアピコプラストに局在し、寄生虫の生存に必須であることを証明した。本研究成果によりアピコンプレクサが引き起こすトキソプラズマ症やマラリアの病態解明、ひいては新規治療薬やワクチン開発につながることが期待される。