抄訳
tRNAには多様な転写後修飾を持ち、タンパク質合成において重要な役割を果たしています。キューオシン(Queuosine,
Q)は、7-デアザグアノシン(7-deazaguanosine)をコア構造とし、シクロペンテン基を含むかさ高い側鎖を持つ特徴的なtRNA修飾です。Qおよびその誘導体は、細菌と真核生物の特定のtRNAのアンチコドンに存在します。また、後生動物のtRNAにおいては、Qはさらにガラクトースまたはマンノースによって糖付加されます。これらの糖付加Qの機能は、その発見以来約半世紀にわたり不明のままでした。しかし最近、私たちの研究グループは、これらの糖付加Q修飾を担う2種類の糖転移酵素を同定し、その生物学的役割を解明しました。本総説では、Qおよびその糖付加Qの生化学的・生理学的機能について概説し、さらにがん、炎症性疾患、神経疾患などのヒト疾患との関連についても考察します。