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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2026/01/22

FGF21–視床下部室傍核オキシトシン–腹側被蓋野ドーパミン系によるアルコール摂取の負のフィードバック制御

論文タイトル
Negative feedback regulation of alcohol ingestion through the FGF21-PVH oxytocin-VTA dopamine system
論文タイトル(訳)
FGF21–視床下部室傍核オキシトシン–腹側被蓋野ドーパミン系によるアルコール摂取の負のフィードバック制御
DOI
10.1073/pnas.2525172122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.3 e2525172122
著者名(敬称略)
松居 翔 他
所属
京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 栄養化学分野
著者からのひと言
「ドーパミン=快楽物質」という定説を覆し、飲酒後に生じるドーパミン活性化が、過剰な飲酒を抑制する「充足」のブレーキとして機能することを世界で初めて解明しました。さらに、食品である希少糖D-alluloseがこの脳内回路を強力に活性化し、依存症行動を改善することを実証しました。本研究は、脳科学の常識を塗り替えるとともに、副作用のない「食による治療」への道を拓く画期的な成果です。

抄訳

アルコール摂取により肝臓から分泌されるホルモン「FGF21」は、脳内の視床下部室傍核(PVH)のオキシトシン(OXT)神経に作用し、腹側被蓋野(VTA)へのOXT放出を促す。このOXTがVTAのドーパミン(DA)神経を持続的に活性化し、飲酒直後の快楽ではなく数時間後の「満たされた」という充足シグナルを生み、次の飲酒までの間隔を延ばすことで過剰摂取を防ぐ負のフィードバック機構として働く。アルコール依存症モデルマウスでは、このFGF21-PVHOXT-VTADA軸の反応性が低下し、飲酒抑制が十分に機能しないことが示された。一方、FGF21分泌を強力に誘導する希少糖D-alluloseを摂取させると、低下した回路が再活性化され、飲酒欲求や依存行動が顕著に抑制された。この効果は投与終了後も持続することから、D-alluloseがアルコール依存症の新たな予防・治療の選択肢となることが期待される。

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2026/01/21

細菌によるグリコサミノグリカンの代謝に関わる異性化酵素/還元酵素の遺伝子クラスターの分子進化と多様性

論文タイトル
Molecular evolution and diversity of isomerase–reductase clusters involved in the bacterial metabolism of glycosaminoglycans
論文タイトル(訳)
細菌によるグリコサミノグリカンの代謝に関わる異性化酵素/還元酵素の遺伝子クラスターの分子進化と多様性
DOI
10.1128/msphere.00817-25
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
西村 優 橋本 渉 他
所属
京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻生物機能変換学分野
著者からのひと言
同一の活性を示すが配列同一性の低い二種類の酵素(KduI・DhuIとKduD・DhuD)の各アイソザイム遺伝子が細菌ゲノム上に並んで存在する遺伝子クラスターについて、配列同一性が低いにもかかわらず、なぜゲノム上にそれぞれ並ぶことができたのかに興味をもちました。さらに、kdudhuが混在したハイブリッド型の遺伝子クラスターの発見を契機に、網羅的な細菌ゲノムを解析し、これらのアイソザイム遺伝子クラスターの細菌における分布を調べることにより、その分子進化と多様性に関する新たな知見を得ることができました。

抄訳

グリコサミノグリカン(GAG)はウロン酸とアミノ糖からなる多糖であり、腸管などヒトの各組織に分布する。GAGを資化することにより定着・常在する細菌がいる。GAGの分解により生じる不飽和ウロン酸は遺伝子クラスターを構成する異性化酵素(KduIまたはDhuI)と還元酵素(KduDまたはDhuD)の逐次反応により代謝されるが、Kdu・Dhuの配列同一性はいずれの酵素間でも低い。本研究では、3,000種以上の細菌ゲノムを対象として、それらの分子系統を解析し、クラスターの多様性に関する以下の知見を得た。クラスター保有種の系統樹上での分布に大きな偏りは見られず、特にkduI-kduDクラスター保有種は広く分布する。一方、Bacteroidota門はkdudhuが混在したkduI-dhuDクラスターを有し、Bacillota門はdhuD-dhuIクラスターをもつ。ヒト腸内細菌叢ではkduI-dhuDおよびdhuD-dhuIクラスターの出現頻度が高いことから、これらのクラスターが腸内での生存に有利に働き、進化的に保存されていることが示唆される。

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2026/01/21

脳オルガノイドを用いたミトコンドリア病MELAS病態モデルの構築

論文タイトル
Modeling Mitochondrial Disease Using Brain Organoids: A Focus on Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Stroke-like Episodes
論文タイトル(訳)
脳オルガノイドを用いたミトコンドリア病MELAS病態モデルの構築
DOI
10.3791/69303-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (224), e69303
著者名(敬称略)
川野 史帆里 藤岡 正人 他
所属
北里大学医学部 分子遺伝学
著者からのひと言
本研究では、患者由来iPS細胞から作製した脳オルガノイドを用い、ミトコンドリア病MELASの病態を再現・解析する手法を確立しました。脳内で進行する神経機能障害を三次元的、二次元的に捉えることで、従来モデルでは困難であった病態理解を可能にしています。本成果は、MELASの病態解明を加速させ、次世代の創薬プラットフォームとして大きく貢献することが期待されます。

抄訳

MELASは、ミトコンドリアDNA変異(特にm.3243A>G)によって引き起こされる代表的なミトコンドリア病である。本研究ではMELASの病態生理を解明するため、患者由来iPS細胞から脳オルガノイドを作製した。患者脳オルガノイドは、m.3243A>G変異のヘテロプラスミー率に依存して、大きさや形態、神経誘導効率に明確な差異を示した。さらに、オルガノイドから解離したニューロンをハイスループットな薬剤スクリーニングに適した二次元培養系へと展開したところ、神経ネットワーク形成においてもヘテロプラスミー依存的な顕著な違いが認められた。 これらの結果は、患者由来iPS細胞を用いたオルガノイドモデルが、MELASの発症機構の解明および創薬研究に有用なプラットフォームであることを示している。

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2026/01/19

ドロップレット培養法により水生植物ヨシの根圏から分離されたDongia属細菌のドラフトゲノム配列

論文タイトル
Draft genome sequence of Dongia sp. strain agr-C8, isolated from the rhizosphere of Phragmites australis using a droplet-based cultivation method
論文タイトル(訳)
ドロップレット培養法により水生植物ヨシの根圏から分離されたDongia属細菌のドラフトゲノム配列
DOI
10.1128/mra.01011-25
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
岩下 智貴 玉木 秀幸 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオものづくり研究センター 生物資源情報基盤研究チーム

抄訳

本報告は、水生植物ヨシ(Phragmites australis)の根圏から、微小液滴であるwater-in-oil dropletを用いたドロップレット培養法により分離された Dongia 属細菌 agr-C8 株のドラフトゲノム配列を提示する。霞ヶ浦に生息するヨシの根圏試料からドロップレット培養法により単離された菌株について、DNBSEQ-T7 (MGI Tech)を用いて全ゲノムシーケンスを行い、SPAdesによりアセンブルを実施した。その結果、ゲノムサイズは約559万bp、G+C含量は66.0%と同定され、3個のrRNA遺伝子と53個のtRNA遺伝子を保有することが予測された。また、本菌株の16S rRNA遺伝子配列は、最近縁種である Dongia mobilis との相同性が95.63%と低いことから、新規系統である可能性が示唆された。さらに、本菌株は硫黄代謝に関連する複数の遺伝子を保有しており、硫黄含有汚染物質等の分解への関与が期待される。

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2026/01/15

Atrial cardiomyopathyの関与が考えられた脳主観動脈閉塞の症例報告

論文タイトル
Atrial cardiomyopathy as a potential embolic source in large vessel occlusion
論文タイトル(訳)
Atrial cardiomyopathyの関与が考えられた脳主観動脈閉塞の症例報告
DOI
10.1136/bcr-2025-269207
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 1
著者名(敬称略)
森山 拓也 岡﨑 周平 他
所属
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 脳神経内科
著者からのひと言
心房心筋症は概念として注目される一方で、診断基準や定義はまだ発展途上です。心房細動が確認できなくても、背景に“隠れた心房心筋症”が潜んでおり、脳塞栓症の原因となることがあります。脳梗塞における塞栓源検索では、心房細動の有無のみにこだわらず、心房心筋症の存在も念頭に置いて評価することが重要だと思います。ただし、心房心筋症に対する適切な抗血栓療法はまだ確立しておらず、今後の臨床研究の進展が待たれます。

抄訳

原因不明の塞栓性脳梗塞では、心房細動(AF)が確認できなくても、心房の線維化や機能障害を背景とする心房心筋症(atrial cardiomyopathy)が血栓形成・塞栓の原因となることがある。本症例は高齢男性の主幹動脈閉塞で、機械的血栓回収療法により再開通を得たが、植込み型心電図計では発症前の3年間にAFを認めず、脳梗塞後の入院中に一度だけ発作性AFを記録したのみであった。生前検査では明確な塞栓源を同定できなかったが、頻回な上室性期外収縮、PTFV1高値、BNPの軽度上昇など心房負荷を示す所見がみられ、さらに回収血栓で得られた血栓病理所見も心原性を示唆していた。剖検では左房の広範な線維化と軽微なアミロイド沈着を認め、心房心筋症の存在が病理学的に裏付けられた。AFが明確でない症例でも心房心筋症によって塞栓症を生じることを、臨床経過と病理所見の両面から支持する症例であった。

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2026/01/14

乳癌治療後の難治性心室頻拍に対するICD適応判断:未診断の髄膜癌腫症が示した課題

論文タイトル
Decision-making challenges for implantable cardioverter-defibrillator therapy in breast cancer with ventricular tachycardia and undiagnosed leptomeningeal carcinomatosis
論文タイトル(訳)
乳癌治療後の難治性心室頻拍に対するICD適応判断:未診断の髄膜癌腫症が示した課題
DOI
10.1136/bcr-2025-269679
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 1
著者名(敬称略)
渡邉悠斗 青山里恵
所属
船橋市立医療センター心臓血管センター循環器内科
著者からのひと言
がん患者における致死性不整脈へのICD適応は、腫瘍学的予後評価と密接に関連します。本症例は、化学療法後に反復する心室頻拍に対して治療選択を迫られる一方、画像所見に乏しい髄膜癌腫症が急速に顕在化し、方針決定が短期間で変容した経過を提示します。多職種連携と予後推定の重要性を再考する契機となる報告です。

抄訳

アントラサイクリン(エピルビシン+シクロホスファミド、累積600 mg/m²)による術前化学療法後、難治性心室頻拍(VT)を発症した50歳代前半のHER2陽性乳癌患者を報告した。失神発作で交通事故・外傷性くも膜下出血を契機にVTが判明し、アミオダロン等でも右室流出路起源VTを反復した。心エコーでは当初LVEF 55%と保たれていたため、原病は制御され予後1年以上と判断し多職種で協議の上ICD植込みを実施したが、直後から持続性洞性頻脈とLVEF 30%への低下を認めた。さらに神経症状が急速に進行し、画像所見に乏しいまま髄液細胞診で髄膜癌腫症と診断、数日で死亡した。剖検では原発巣は治療反応を示す一方、髄膜へのびまん浸潤を認め、心筋は肥大のみで明らかな壊死・線維化を欠いた。本症例は、アントラサイクリン投与中・後の継続的心臓モニタリング、進行癌におけるICD適応判断、神経・自律神経症状出現時の髄膜癌腫症の早期評価の重要性を示す。

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2026/01/14

γセクレターゼによるアミロイドβ産生に影響を与える遺伝子・変異・化合物を探索するための出芽酵母アルツハイマー病モデル

論文タイトル
Saccharomyces cerevisiae Models of Alzheimer’s Disease to Screen Genes, Mutations, and Chemicals Affecting Amyloid Beta Production by γ-Secretase
論文タイトル(訳)
γセクレターゼによるアミロイドβ産生に影響を与える遺伝子・変異・化合物を探索するための出芽酵母アルツハイマー病モデル
DOI
10.3791/67733-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (220), e67733
著者名(敬称略)
二井 勇人 小川 智久 他
所属
東北大学大学院農学研究科・農学部 酵素化学分野
著者からのひと言
アルツハイマー病研究において中心的な役割を担うγセクレターゼは、その反応が膜内で起こるため、解析が極めて困難な酵素です。本論文では、出芽酵母という単純かつ再現性の高いモデル系を用いて、γセクレターゼ活性とAβ産生を多角的に評価する手法を紹介しています。遺伝子変異解析から創薬スクリーニングまで応用可能な本手法が、基礎研究と治療法開発の架け橋となることを期待しています。

抄訳

γセクレターゼは、触媒サブユニットであるプレセニリンと、ニカストリン、Aph-1、Pen2からなる膜内切断プロテアーゼ複合体であり、アミロイド前駆体タンパク質(APP)やNotchなどのⅠ型膜貫通タンパク質を切断する。APPの切断によって生じるアミロイドβ(Aβ)は、アルツハイマー病患者で蓄積することが知られているが、脂質二重膜内で起こる特異なプロテオリシスの反応機構には未解明な点が多い。本研究では、APPまたはNotch断片をGal4と融合させた人工基質を用いる出芽酵母レポーター系を構築し、γセクレターゼ活性を酵母生育やβ-ガラクトシダーゼ活性で評価した。さらに、酵母ミクロソームを用いたin vitro系により、産生されるAβ分子種の解析を可能にした。本手法は、γセクレターゼ阻害剤(GSI)やモジュレーター(GSM)をはじめとした化合物、ならびに家族性アルツハイマー病関連変異の解析に有用なプラットフォームを提供する。本論文では、動画とともに、これらの遺伝学的・生化学的手法と重要なプロトコルを、詳述する。

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2026/01/13

周波数領域サーモリフレクタンス法による熱物性測定

論文タイトル
The Frequency Domain Thermoreflectance Technique for Thermal Property Measurements
論文タイトル(訳)
周波数領域サーモリフレクタンス法による熱物性測定
DOI
10.3791/68908-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (226), e68908
著者名(敬称略)
Alesanmi R. Odufisan(Northwestern University)、 塩見 淳一郎(東京大学) 他
所属
東京大学 工学系研究科 総合研究機構/機械工学専攻 熱エネルギー工学研究室/塩見・李・浅野研究室
著者からのひと言
FDTR法は,レーザー光を用いて材料に触れることなく,非常に小さな領域で熱の伝わり方を調べることができる計測手法です.サーモリフレクタンス法は近年,広く用いられるようになっていますが,本論文ではFDTR法を実際に運用するための基本的な測定手順や注意点を整理し,材料の境界部分において熱の流れがどのように変化するかを具体例とともに紹介しています.FDTR装置の新規導入や測定条件の検討を行う際の参考資料としてご活用いただければ幸いです.

抄訳

周波数領域サーモリフレクタンス(FDTR)法は,材料の熱物性を非破壊かつマイクロスケールの空間分解能で評価できる光学的計測手法である.本手法では,周波数変調したポンプレーザーによって試料表面に周期的な温度変化を与え,プローブレーザーを用いてその局所的な熱応答を検出する.得られた信号を熱輸送モデルに基づいて解析することで,試料の熱伝導率などの熱物性を評価できる.本論文では,FDTR法の実装方法や局所熱伝導率測定の具体的な手順を体系的に解説するとともに,レーザー条件が測定結果に与える影響や誤差要因,不確かさの評価について詳述する.さらに,具体例として単結晶シリコン基板間の界面近傍を対象とした熱伝導率イメージングを行い,界面が局所的な熱輸送特性に影響を与える様子を可視化する.FDTR法は,熱電材料などにおける界面熱抵抗の理解や,材料・デバイス設計の高度化に貢献するものである.

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2026/01/07

カルバペネム耐性非発酵グラム陰性桿菌による人工呼吸器関連肺炎マウスモデルにおけるセフィデロコルの有効性と薬物動態学的評価

論文タイトル
Efficacy of cefiderocol in murine models of ventilator-associated pneumonia caused by carbapenem-resistant non-fermenting Gram-negative bacilli, with pharmacokinetic evaluation
論文タイトル(訳)
カルバペネム耐性非発酵グラム陰性桿菌による人工呼吸器関連肺炎マウスモデルにおけるセフィデロコルの有効性と薬物動態学的評価
DOI
10.1128/spectrum.02568-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
太田 賢治 賀来 敬仁 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学
著者からのひと言
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は重症度および死亡率が高く、迅速かつ適切な抗菌薬治療が重要な病態です。しかし、カルバペネム耐性緑膿菌やアシネトバクター属菌が原因菌となる場合、有効な治療選択肢は極めて限られます。本研究では、カルバペネム耐性菌にも有効なセフィデロコルの有効性を薬物動態の観点を含めて検証し、原因菌により必要な投与量が異なる可能性を示しました。動物実験ではありますが、本研究成果が治療困難な薬剤耐性菌感染症に対する治療戦略構築において活用されることを期待しています。

抄訳

本研究では、カルバペネム耐性Pseudomonas aeruginosa(CR-Pa)および Acinetobacter baumannii(CR-Ab)を用いて人工呼吸器関連肺炎(VAP)マウスモデルを構築し、新規抗菌薬であるセフィデロコルの有効性を評価した。セフィデロコルの投与設計は薬物動態解析に基づき、血中遊離薬物濃度が各菌の最小発育阻止濃度(MIC)を上回る時間(fT>MIC)を指標とした。fT>MIC 70%で投与量を設定した場合、CR-Ab感染VAPモデルでは生存率の改善および肺内菌量の有意な減少が認められた。一方、CR-Pa感染VAPモデルでは同条件で十分な殺菌効果は得られず、fT>MIC 90%以上で明確な菌量減少が確認された。本研究は、原因菌によって必要なセフィデロコル投与量が異なる可能性を示し、PK/PDに基づく合理的な治療戦略構築に重要な知見を提供する。

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2026/01/06

2023~2025年における日本・東京での二系統薬剤耐性Mycoplasma genitaliumの拡大

論文タイトル
Spread of dual-class drug-resistant Mycoplasma genitalium in Tokyo, Japan, 2023–2025
論文タイトル(訳)
2023~2025年における日本・東京での二系統薬剤耐性Mycoplasma genitaliumの拡大
DOI
10.1128/aac.01367-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
大町竜羽 今井一男 他
所属
埼玉医科大学病院 臨床検査医学 (中央検査部)
著者からのひと言
Mycoplasma genitaliumは性感染症の1種で、近年は不妊や早産との関連が報告されており、公衆衛生上の重要性が高まっています。薬剤耐性、とりわけキノロン系薬剤に対する高度耐性を有するクローンが拡大した場合、治療は極めて困難となります。本研究の結果は、薬剤耐性率の動向把握に加え、遺伝子型解析を含めた継続的な監視体制の構築の必要性、ならびに性感染症領域におけるさらなる抗菌薬適正使用推進が早急に求められていることを示しました。

抄訳

マクロライド耐性関連変異(MRMs)およびフルオロキノロン耐性関連変異(QRMs)を有する Mycoplasma genitalium(MG)の増加は世界的な問題であるが、日本における耐性状況や遺伝的多様性に関する情報は限られている。本研究では、2023~2025年に東京で採取されたMG陽性患者162例188検体を対象に、耐性変異解析、mgpBおよびMG309による分子疫学解析、ならびに治療成績との関連を検討した。その結果、MRMsは94.4%、QRMsであるparC変異は93.7%、gyrA変異は22.5%に認められ、MRMsとQRMsを併せ持つ二系統薬剤耐性株は89.4%を占めた。parCおよびgyrA変異を有する高度キノロン耐性株に対するキノロン治療失敗率は52.4%と高率であった。さらに、mgpBアリル79、140、161、184を有する耐性クローンの出現が確認された。以上より、東京における二系統薬剤耐性株の拡大が示され、継続的な分子監視と抗菌薬適正使用の重要性が示唆された。

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