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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2025/03/25

沖縄のショウジョウバエから単離された新種酵母、Hanseniaspora drosophilae sp. nov.の発見と同定

論文タイトル
Discovery and identification of a novel yeast species, Hanseniaspora drosophilae sp. nov., from Drosophila in Okinawa, Japan
論文タイトル(訳)
沖縄のショウジョウバエから単離された新種酵母、Hanseniaspora drosophilae sp. nov.の発見と同定
DOI
10.1099/ijsem.0.006661
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Vol. 75, No. 2 (February 2025)
著者名(敬称略)
清家 泰介 他
所属
大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報計測学講座
著者からのひと言
本研究では、沖縄特有の環境に生息するショウジョウバエから、Hanseniaspora属の新種酵母を発見しました。ゲノム解析や生理学的試験により、この新種は高温耐性や多様な炭素源の資化能、抗菌剤への顕著な耐性を示すことが明らかとなり、進化的・生態学的に極めてユニークな特徴を持ちます。微生物進化の道筋を解明する重要な手掛かりとなるだけでなく、発酵産業や抗菌剤開発などへの応用にも大きな可能性を秘めています。

抄訳

Hanseniaspora(ハンセニアスポラ)属は、多くの種が有性生殖を行うことで知られる酵母の属であり、多様な生態的ニッチに広く分布することから研究者の注目を集めている。我々は2020年以降、沖縄県で発酵したバナナを用いて野生のショウジョウバエを捕獲し、そこから3種の酵母株を単離した。生理学的評価や26S LSU rRNA遺伝子のD1/D2ドメインおよびITS領域の配列解析の結果、これらの株はHanseniaspora属における同一の新種であることが判明した。近縁な種と比較して、D1/D2ドメインで1.28%、ITS領域で4.08%の配列差異を示した。また生理学的解析においても、本種は最も近縁なHanseniaspora hatyaiensisとは明らかに異なる特徴を示した。以上の結果を踏まえ、本研究では、この新規種をショウジョウバエの微生物叢という独特の生態的ニッチにちなんで、Hanseniaspora drosophilae sp. nov.と命名した。本研究により、酵母の多様性に関する知見が深まるのみならず、微生物群集を形成する生態的相互作用の複雑さが浮き彫りになった。この発見は酵母とショウジョウバエ間における生態的関係の進化動態やその生態学的意義について、さらなる探究を促すものである。

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2025/03/25

脊髄TRPC3チャネルは神経障害性疼痛を促進し、ホスホリパーゼC誘発機械痛覚過敏を媒介する

論文タイトル
Spinal TRPC3 promotes neuropathic pain and coordinates phospholipase C–induced mechanical hypersensitivity
論文タイトル(訳)
脊髄TRPC3チャネルは神経障害性疼痛を促進し、ホスホリパーゼC誘発機械痛覚過敏を媒介する
DOI
10.1073/pnas.2416828122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.11
著者名(敬称略)
戸堀翔太 白川久志
所属
京都大学大学院薬学研究科生体機能解析学分野
著者からのひと言
「痛み」は生体の重要な警告システムですが、耐え難いほどの異常な疼痛が長期的に持続すると、生活の質が著しく損なわれます。本成果は末梢神経損傷後の神経障害性疼痛における脊髄TRPC3の病態生理学的重要性を初めて明らかにしたものです。今回の発見により、サブスタンスPやATPといった発痛物質の作用を個別に阻害するよりも、「痛みの伝導路である中枢のニューロンの活動を抑制する」という戦略の重要性が明らかとなりました。中枢神経系に到達するTRPC3阻害薬の開発が、未だに著効薬が乏しい神経障害性疼痛に対する有望な創薬戦略になると期待されます。

抄訳

神経障害性疼痛は主に末梢神経損傷により生じる慢性疼痛であり、その病態形成には末梢・中枢における体性感覚神経系の病変が深く関与するが、その創薬戦略は定まっていない。Transient receptor potential canonical 3 (TRPC3) はPLCと共役して細胞外からのCa2+流入を担う受容体活性化型チャネルである。中枢神経系や一次感覚神経、末梢免疫細胞等に広く発現することから、本研究では末梢神経損傷後の神経障害性疼痛に対するTRPC3の関与について検討した。その結果、pSNL処置による機械痛覚過敏の発症がTRPC3欠損により顕著に抑制されることが明らかとなった。さらに、脊髄後角神経細胞特異的にTRPC3をノックダウンするとpSNL処置後の機械痛覚過敏が抑制された。野生型マウスにTRPC3アゴニストGSK1702934Aを髄腔内投与すると急性の機械痛覚過敏が認められ、神経障害性疼痛の病態と関連する脊髄NK1RおよびPLC活性化により惹起される機械痛覚過敏はTRPC3欠損により抑制された。以上の結果より、末梢神経損傷後の神経障害性疼痛において、脊髄後角神経細胞TRPC3がGq-PLC経路を介して疼痛形成に重要な役割を果たすことが示された。

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2025/03/25

マイコプラズマの高効率な形質転換法の確立

論文タイトル
Robust and highly efficient transformation method for a minimal mycoplasma cell
論文タイトル(訳)
マイコプラズマの高効率な形質転換法の確立
DOI
10.1128/jb.00415-24
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Vol. 207, No. 3
著者名(敬称略)
水谷 雅希 柿澤 茂行 他
所属
国立研究開発法人産業技術総合研究所生物プロセス研究部門

抄訳

マイコプラズマのミニマルセル(最小のゲノムを持った増殖可能な細菌)について、高効率な形質転換法を開発しました。既存の方法に比べ、100-1000倍ほど高い効率でDNAを導入することができ、また大腸菌のように冷凍コンピテントセルを用いた手法も開発しました。形質転換効率は菌の培養状態に大きく左右されることがわかり、対数増殖期の初期において高い形質転換能を持つことが分かりました。今回開発した手法により、今後のミニマルセルの利活用の促進が期待されます。

 

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2025/03/24

抗凝固療法下のBlack hole sign: Warfarinとdirect oral anticoagulantの比較

論文タイトル
Black Hole Sign under Anticoagulant Therapy: A Retrospective Comparison of Warfarin and Direct Oral Anticoagulants
論文タイトル(訳)
抗凝固療法下のBlack hole sign: Warfarinとdirect oral anticoagulantの比較
DOI
10.3174/ajnr.A8528
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology March 2025, 46 (3) 489-494
著者名(敬称略)
佐藤 広崇 他
所属
旭川医科大学 脳神経外科学講座
著者からのひと言
本研究は日々の臨床から着想した研究です。現場で働く多くの医療者従事者の方に読んで頂ければ幸いです。

抄訳

背景と目的: 脳内出血 (ICH) は抗凝固薬の最も重篤な副作用です。本研究はICHの血腫拡大を予測するBlack hole sign (BH)の頻度がワルファリン(Wf)とdirect oral anticoagulant (DOAC)の間で異なるという仮説を立て、検証しました。
方法: 本研究は抗凝固療法中に脳出血を発症した患者を対象としました。血腫体積はABC/2法で測定し、BHの有無は内服情報を知らない放射線科医が判定しました。本研究は血腫体積が 12.5 ml 以上増加した場合を「血腫拡大」と定義しました。
結果:多変量ロジスティック回帰分析の結果、脳室穿孔の有無 (p=0.02、オッズ比 (OR): 3.51、95% 信頼区間 (CI): 1.32 – 10.2) および BH (p<0.01、オッズ比: 4.86、95% CI: 1.73 – 14.3) が血腫拡大症例と非血腫拡大症例の間で有意差を認めました。BHの頻度はWf症例とDOAC症例間で有意差を認めました(p<0.01)。また、BHの有無はWf症例で血腫量の増加と関連していましたが(p=0.05)、DOAC症例では血腫量の増加と関連していませんでした(p=0.14)。
結語: BHはWf症例で頻繁に認めた。また、DOAC内服中のICH症例よりもWf内服中のICH症例の方が BHの信頼性が高いことを示した。

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2025/03/24

チクングニアウイルスE2エンベロープタンパク質に対するRNAアプタマーの創製

論文タイトル
Generation of RNA aptamers against chikungunya virus E2 envelope protein
論文タイトル(訳)
チクングニアウイルスE2エンベロープタンパク質に対するRNAアプタマーの創製
DOI
10.1128/jvi.02095-24
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Vol. 99, No. 3
著者名(敬称略)
後藤 覚 高橋 理貴 他
所属
東京大学医科学研究所RNA医科学社会連携研究部門

抄訳

核酸アプタマーは有望な創薬モダリティですが、ウイルス中和アプタマーの創製は効率的な開発システムがないため困難でした。そこで本研究では再興ウイルスであるチクングニアウイルス (chikungunya virus: CHIKV) をモデルとして、新規樹立のウイルス様粒子 (virus-like particles: VLPs) 標的試験管内分子進化法を活用しました。CHIKV-VLPs結合RNAアプタマーとして単離されたApt#1は、CHIKVの擬似ウイルス粒子に対してnMレベルの中和活性を示しました。Apt#1は、抗ウイルス化合物を用いた化学遺伝学的アプローチによりE2エンベロープタンパク質のドメインAを標的とすることが示唆され、実際に疑似ウイルス粒子の細胞吸着を阻害しました。本システムはCHIKVをはじめ多様なウイルスの新規中和剤開発プラットフォームの基盤となります。

 

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2025/03/19

子どもと大人のクオリア構造を類似度課題で比較する

論文タイトル
Comparing color qualia structures through a similarity task in young children versus adults
論文タイトル(訳)
子どもと大人のクオリア構造を類似度課題で比較する
DOI
10.1073/pnas.2415346122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.11
著者名(敬称略)
森口 佑介 他
所属
京都大学大学院文学研究科

抄訳

経験の主観的・質的側面、つまり「クオリア」の検証は、意識研究の基本的かつ中核的な側面である。赤さの特定の質、つまり赤のクオリアをどのように特徴づけることができるであろうか。言語的記述に依存しないクオリアの構造的特徴づけに関する最近の提案に基づき、我々は新しい類似性判断課題を開発した。これは、幼い子どもたちが取り組みやすい、直感的な視覚インターフェースを使用している。我々は子ども(日本の3〜12歳および中国の6〜8歳)の色のクオリア構造を調査し、これらを日本の成人のものと比較した。3歳児の約半数がタッチパネルデバイス版の課題を完了し、信頼性のある回答を示した。色名使用に関する発達的・文化的影響が知られているにもかかわらず、色のクオリア構造は年齢層や文化全体で非常に類似していることがわかった。我々の発見は、色のクオリア構造が早期に現れるという見解を支持している。また、いくつかの色のペアの評価において年齢に関連した違いも観察された。これは色の経験の背後にある構造の微妙な変化を示唆するものである。

 

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2025/03/18

HIV-1 Vif 上のPPLP高度保存領域のユニークな構造はAPOBEC3認識領域の形成に不可欠である 

論文タイトル
The unique structure of the highly conserved PPLP region in HIV-1 Vif is critical for the formation of APOBEC3 recognition interfaces
論文タイトル(訳)
HIV-1 Vif 上のPPLP高度保存領域のユニークな構造はAPOBEC3認識領域の形成に不可欠である 
DOI
10.1128/mbio.03332-24
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Vol. 16 No. 3
著者名(敬称略)
岩谷靖雅、松岡和弘 他
所属
(独)国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部
著者からのひと言
リンパ球などには強力な抗ウイルス作用をもつ複数種のAPOBEC3酵素が存在する。HIV-1はウイルスがコードするVifによりこれらの酵素を分解し、APOBEC3による抗ウイルス作用から逃れ増殖することができる。本研究では、Vifのアロステリックな機能領域の同定とその機序を明らかにした。Vifの機能を阻害するための標的領域となりうるため、今後、新しい作用機序をもつ抗HIV-1治療薬の開発につなげていきたい。 

抄訳

シチジン脱アミノ化酵素APOBEC3 (A3)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)などのレトロウイルスの複製を強力に阻害します。しかし、HIV-1 は感染細胞内にてウイルスがコードする Vif タンパク質により、細胞内の A3 をユビキチン化–プロテアソーム分解系を介して特異的に分解除去します。そのため、A3-Vif 結合を阻害することは新規抗 HIV-1 薬開発の魅力的な標的です。これまで、Vif分子上にあるA3結合面(インターフェイス)から遠く位置する Vif PPLP モチーフは A3 の分解に必要ですが、PPLP が A3 分解に関与するメカニズムは不明でした。本研究では、生化学的および構造生物学的な分析により、PPLPの役割を解明しました。PPLP モチーフは、短い下流フラグメント α6 とともに、安定した L 字型構造を形成し、A3 認識インターフェイスの裏打ちとして機能することがわかりました。重要なことに、PPLPは複数の A3 ファミリー酵素を認識する Vif の機能に必須でした。これらの発見により、Vifの弱点となる標的部位を明らかにし、A3 を細胞防御酵素として利用する新しい HIV-1 Vif阻害剤の開発が期待されます。 

 

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2025/03/18

枯草菌のシャペロンDnaJKは、YlxR (RnpM)/RNase P複合体を通じて遺伝子発現の転写後制御を行う

論文タイトル
The DnaJK chaperone of Bacillus subtilis post-transcriptionally regulates gene expression through the YlxR(RnpM)/RNase P complex
論文タイトル(訳)
枯草菌のシャペロンDnaJKは、YlxR (RnpM)/RNase P複合体を通じて遺伝子発現の転写後制御を行う
DOI
10.1128/mbio.04053-24
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Vol. 16 No. 3
著者名(敬称略)
小倉 光雄 (筆頭で連絡著者を兼ねる)
所属
東海大学 海洋研究所
著者からのひと言
この論文の主要な発見は、1980年代に開発された手法であるlacZと標的遺伝子の翻訳fusionを使った遺伝学的解析で見出された。直接mRNAを測定するNorthernやtranscriptome解析では、このように複雑なタンパク質相互作用とmRNA代謝を含む制御系の解析はできなかった。もちろん、最初の発見をゲノムワイドに拡張して一般化する際には、RNA-seqのような次世代シーケンサを使った解析が力を発揮した。本研究は温故知新の典型である。

抄訳

小倉らは2018年にYlxRタンパク質がDNAに非特異的に結合し、かつ400程度の遺伝子の発現を制御している事を報告した(mSphere 3:10.1128)。つまりYlxRは塩基配列特異的なDNA結合性の転写制御因子ではなかった。2024年にゲッチンゲン大学のグループがYlxRはRNA分解酵素RNase P(タンパク質RnpAとRNA成分RnpBからなるリボザイム)に特異的に結合しその酵素活性を調節していると報告した(NAR 52:1404)。小倉らは種々の遺伝学的解析で、タンパク質の立体構造保持に働くシャペロンDnaJK複合体がYlxRを通じてRNase P複合体の酵素活性を調節している事を見出した。DnaJKが働き新生ペプチド鎖がうまく折りたたまれていると、RNase P活性を抑えるので翻訳進行中のmRNAは分解されない。しかし、何かの不具合でDnaJKが働かず不良タンパク質ができるとRNase Pは活性化されmRNAを分解し、細胞は無駄な仕事を行うエネルギーを節約できる。

 

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2025/03/17

日本で初めて臨床材料から分離されたParvimonas parvaの完全長ゲノム配列

論文タイトル
Complete genome sequence of Parvimonas parva: first isolate of a human clinical specimen from Japan
論文タイトル(訳)
日本で初めて臨床材料から分離されたParvimonas parvaの完全長ゲノム配列
DOI
10.1128/mra.01252-24
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Vol. 14 No. 3
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター 嫌気性菌研究分野
岐阜大学 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター(GCMR)

抄訳

Parvimonas parva は、2021年に新種登録されたPeptoniphilaceae 科に属する偏性嫌気性のグラム陽性球菌である。本菌は発見から日が浅いこともあり、臨床的意義や病原因子に関する知見は見当たらない。
本論文では、泌尿生殖器系に腫瘍を持つ高齢女性の尿サンプルから分離された後、種レベルでの同定不能株として2015年に保存されていたParvimonas sp. GAI15033についてP. parvaであることを確認し、その完全長ゲノムを決定し報告している。解析の結果、P. parva GAI15033のゲノムは1,447,534 bpの円形染色体で構成されていた。本菌は日本で初めて分離同定されたP parvaであり、本ゲノム解析が実施されたP. parvaとしては菌種提案論文に次いで2株目である。本菌における病原性の解明に資する一報と考える。

 

 

 

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2025/03/17

SLFN11はリボゾーム生合成障害を介してTP53非依存的なアポトーシスを起こす

論文タイトル
SLFN11-mediated ribosome biogenesis impairment induces TP53-independent apoptosis
論文タイトル(訳)
SLFN11はリボゾーム生合成障害を介してTP53非依存的なアポトーシスを起こす
DOI
10.1016/j.molcel.2025.01.008
ジャーナル名
Molecular Cell
巻号
Molecular Cell Volume 85, Issue 5
著者名(敬称略)
小川茜、泉川桂一、田手壮太、村井純子 他
所属
愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンター
著者からのひと言
がん化学療法は、半世紀以上にわたり多くの患者に用いられていますが、実臨床において効果を予測できるバイオマーカーがありません。SLFN11は、がんの種類によりますが、約半分のがんで発現し、一般病院で広く行われている病理検査を利用することで検出が可能です。私は「化学療法にも精密医療を!」をスローガンに、SLFN11研究の基礎研究と臨床応用に向けて邁進しています。SLFN11にご興味がある臨床の先生がおられましたら、気軽にご連絡ください。

抄訳

約半数のがん細胞で発現し、かつ化学療法剤の抗がん効果を高めるSLFN11遺伝子は、化学療法の効果予測バイオマーカーとして最近注目されているが、効果を高めるメカニズムについては不明な点が多かった。本論文では、化学療法剤であるトポイソメラーゼ1阻害剤投与下で、SLFN11がリボゾームの構成要素であるリボゾームRNAの合成を低下させることを発見した。リボゾームRNAの低下をトリガーに、リボゾームの機能が低下し、翻訳が著しく障害された。翻訳障害によって、半減期の短いタンパク質が優先的に減少したが、その中には抗アポトーシス作用を持つMCL1(半減期1時間)が含まれており、このMCL1の減少がSLFN11によって引き起こされるアポトーシスの原因の一つだった。本研究によって、化学療法剤の効果予測バイオマーカーとしてのSLFN11の機能が明らかとなった。

 

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