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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/09/15

Sclerotinia sclerotiorumの菌核から分離されたSphingobacterium kitahiroshimenseの全ゲノム解析

論文タイトル
Complete genome sequence of Sphingobacterium kitahiroshimense strain Ss8-5,isolated from a sclerotium of Sclerotinia sclerotiorum
論文タイトル(訳)
Sclerotinia sclerotiorumの菌核から分離されたSphingobacterium kitahiroshimenseの全ゲノム解析
DOI
10.1128/mra.00846-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiol Resour Announc 15:e00846-26
著者名(敬称略)
岩渕 望
所属
横浜国立大学 大学院環境情報研究院
著者からのひと言
「菌核」は、メラニンを含む黒く厚い外壁を持つ、カビの頑丈な休眠カプセルです。今回報告したのは、その中から分離した細菌1株の全ゲノムという、一見地味な成果です。しかし解析を進めるうちに、Sphingobacterium属が菌核という特殊な環境に広く定着し、菌核を構成する多糖まで利用している可能性が見えてきました。たった一つのゲノム情報から、菌核における細菌の知られざる生存戦略が垣間見えてきています。

抄訳

植物病原糸状菌の中には「菌核」と呼ばれる休眠構造を形成し、土壌中で長期間生存するものがいます。しかし、この菌核内部に生息する細菌については、これまでほとんど注目されてきませんでした。本研究では、400種以上の植物に感染し、菌核病による深刻な農業被害をもたらすSclerotinia sclerotiorumの菌核から細菌の分離を試み、Ss8-5株を単離しました。さらに、全ゲノム解析の結果、1つの環状ゲノムが得られ、Ss8-5株はSphingobacterium kitahiroshimenseであると推定されました。この結果は、植物病原菌の休眠構造の中に、これまで知られていなかった細菌が共存している可能性を示すものです。今後は、得られたゲノム情報をもとに代謝機能や糸状菌との相互作用メカニズムを解析し、菌核内における生態的役割の解明を目指します。

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2026/09/14

日本で分離されたメトロニダゾール低感受性 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列解析

論文タイトル
Complete genome sequence of Prevotella bivia GTC18476: a clinical isolate with reduced susceptibility to metronidazole in Japan
論文タイトル(訳)
日本で分離されたメトロニダゾール低感受性 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列解析
DOI
10.1128/mra.00688-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiol Resour Announc 15:e00688-26
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
著者からのひと言
当研究グループは、長野県で患者由来検体から分離された偏性嫌気性細菌 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列を解読しました。解析の結果、本株が2本の環状染色体と1本のプラスミドを有することを明らかにしました。また、メトロニダゾールに対する低感受性に関連する可能性のある薬剤耐性関連遺伝子 nimK を同定しました。本株のようなメトロニダゾール低感受性を示す P. bivia の分離報告は日本では限られており、本成果は、P. bivia のゲノム構造や薬剤耐性に関する理解を深め、嫌気性菌感染症の診断・治療および薬剤耐性監視に資する基盤情報となります。

抄訳

本研究では、長野県で患者検体から分離された偏性嫌気性菌 Prevotella bivia GTC18476 の完全ゲノム配列を決定した。Oxford Nanopore TechnologiesによるロングリードシーケンスとDNBSEQによるショートリードシーケンスを組み合わせたハイブリッドアセンブリにより、本株が2本の環状染色体(1.30 Mb、1.21 Mb)および1本のプラスミド(19 kb)から構成されることを明らかにした。ゲノム解析の結果、2,088個のコード配列、12個のrRNA遺伝子、50個のtRNA遺伝子を同定するとともに、メトロニダゾール低感受性に関連する可能性のある薬剤耐性遺伝子 nimK を検出した。本研究で得られた完全ゲノム情報は、P. bivia のゲノム構造および薬剤耐性機構の理解を深めるとともに、比較ゲノム解析や嫌気性菌の薬剤耐性監視に資する基盤データとなる。

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2026/09/11

付着・侵入性大腸菌におけるrfaG依存的な細胞表層生合成は1型線毛の発現と腸管内定着を支える

論文タイトル
rfaG-dependent cell envelope biogenesis supports type 1 fimbrial expression and intestinal colonization in adherent-invasive Escherichia coli
論文タイトル(訳)
付着・侵入性大腸菌におけるrfaG依存的な細胞表層生合成は1型線毛の発現と腸管内定着を支える
DOI
10.1099/mic.0.001766
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology 2026;172:001766
著者名(敬称略)
三木 剛志 他
所属
東北医科薬科大学 薬学部 微生物学教室
著者からのひと言
付着・侵入性大腸菌(AIEC)はクローン病との関連が注目されている腸内細菌です。本研究では、rfaGに依存した細胞表層生合成が1型線毛の発現を支え、AIECの腸管内定着に重要な役割を果たすことを明らかにしました。病原細菌が腸管環境に適応し、定着するための新たな分子基盤の理解につながる成果と考えています。

抄訳

付着・侵入性大腸菌(AIEC)は病原性共生菌であり、1型線毛を介した腸管上皮への付着・侵入は、その病原性発現に重要な役割を果たす。本研究では、LPS生合成に関わるRfaGをコードするrfaG遺伝子の欠失により、1型線毛の発現が著しく低下することを見いだした。この変化には、1型線毛発現のON/OFFを決定するfimSの相変異が関与していた。さらに、rfaG欠失株ではマウス腸管内への定着能も低下した。以上の結果から、rfaG依存的な細胞表層生合成が1型線毛の発現を制御し、AIECの腸管内定着を支えることが明らかになった。本研究は、細胞表層構造の形成と病原因子発現を結びつける新たな機構を示すものである。

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2026/09/11

核内ストレス体によるスプライシング制御を支える温度感知機構

論文タイトル
Thermo-sensing mechanisms of splicing control by nuclear stress bodies
論文タイトル(訳)
核内ストレス体によるスプライシング制御を支える温度感知機構
DOI
10.1016/j.molcel.2026.06.034
ジャーナル名
Molecular Cell
巻号
Molecular Cell, 2026; 86, 3449-3465.e8
著者名(敬称略)
上野剛志 廣瀬哲郎 他
所属
大阪大学大学院 生命機能研究科 RNA生体機能研究室
著者からのひと言
 「るつぼ機構」は数ある非膜オルガネラの作動機構の一つですが、その実体解明はほとんど進んでいません。本研究で明らかになったリン酸化による酵素の局在制御は、「るつぼ機構」の要となる機構で、さらにそれを制御する温度センサーの同定は、「るつぼ機構」の全貌理解に向けた大きな一歩です。

抄訳

核内ストレス体(nSB)は、熱ストレス時にHSATIII lncRNA上に形成される非膜オルガネラで、ストレスからの回復期にpre-mRNAスプライシングを制御している。この機構では、nSBがストレス時にスプライシング因子SRSFを集積し、回復期にSRSFキナーゼCLK1を局在させることで、基質と酵素が濃縮された「るつぼ」を形成し、SRSFのリン酸化反応を効率化している。本研究では、CLK1の温度依存的なnSB局在にSer341リン酸化が必要であり、PP1がストレス時にSer341を脱リン酸化し、回復期にRIOK2が再リン酸化することで、CLK1が回復期特異的にnSBへ局在できることを見出した。さらに、PP1阻害因子PPP1R2が温度センサーとして機能し、ストレス時にPP1から解離してPP1を活性化することを発見した。以上から、多層的な温度感知機構が回復期特異的な「るつぼ形成」を可能にし、温度依存的なスプライシング制御を実現することが示された。

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2026/09/11

小型GAD67プロモーターを用いた抑制性ニューロン標的AAV遺伝子治療によるてんかん発作抑制

論文タイトル
A compact GAD67 promoter enables inhibitory neuron-targeted AAV gene therapy for seizure suppression
論文タイトル(訳)
小型GAD67プロモーターを用いた抑制性ニューロン標的AAV遺伝子治療によるてんかん発作抑制
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.06.007
ジャーナル名
Molecular Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 5510-5526
著者名(敬称略)
深井悠貴 平井宏和 他
所属
群馬大学未来先端研究機構 ウイルスベクター開発研究センター
著者からのひと言
薬剤抵抗性てんかんでは、新たな作用機序に基づく治療法の開発が求められています。本研究では、抑制性ニューロンで特異的に働く超小型プロモーターcmGAD67とGABA合成酵素であるGAD65を組み合わせ、神経回路の興奮・抑制バランスを遺伝子治療によって是正する新たなアプローチです。cmGAD67搭載AAVは、てんかんのみならず、興奮・抑制バランスの異常を伴うさまざまな神経疾患への応用も期待されます。

抄訳

てんかんでは、神経回路における興奮と抑制のバランスが崩れ、過剰な神経活動が生じる。本研究では、抑制性ニューロンに選択的に遺伝子を発現させる410塩基対の小型GAD67プロモーター「cmGAD67」を開発した。cmGAD67は、AAVベクターへの搭載に適した小ささでありながら、強い転写活性と高い抑制性ニューロン特異性を示し、特にパルブアルブミン陽性介在ニューロンに効率よく遺伝子を発現させた。さらに、cmGAD67を用いてGABA合成酵素GAD65を発現するAAVベクターをマウスに投与したところ、脳内GABA量が増加し、複数のてんかんモデルマウスにおいて異常脳活動やてんかん発作が抑制され、不安様行動や生存率も改善した。本成果は、薬剤抵抗性てんかんに対する新たな遺伝子治療法の開発につながることが期待される。

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2026/09/10

 N型糖鎖のBisecting GlcNAcはシナプス成熟を制御する

論文タイトル
Bisecting GlcNAc in N-glycan regulates synaptic maturation
論文タイトル(訳)
 N型糖鎖のBisecting GlcNAcはシナプス成熟を制御する
DOI
10.1042/BCJ20260379
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Biochem J 7 October 2026; 483 (10): 1877–1890
著者名(敬称略)
橋本 雄太 木塚 康彦 他
所属
東海国立大学機構 岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 (iGCORE) 糖鎖分子科学研究センター
著者からのひと言
 脳における糖鎖の機能はまだまだわかっていないことが多いです。本論文で、糖鎖の脳における機能が一つ明らかにできました。次の課題は、Bisecting GlcNAcという糖鎖の部分構造が、どうやってタンパク質の相互作用や局在を制御するのか、その詳細なメカニズムを明らかにすることです。それによって、糖鎖の本質的な機能の解明に貢献したいです。

抄訳

 タンパク質の最も豊富な翻訳後修飾の一つであるN型糖鎖は多様な構造を持つ。N型糖鎖の部分構造であるBisecting GlcNAcは、脳、特にニューロンに豊富に存在する。これまで、Bisecting GlcNAcの増加とアルツハイマー病態との関連は明らかにされてきたが、生理的条件の脳での本糖鎖の機能は不明であった。これを明らかにするため、本論文ではBisecting GlcNAc合成酵素MGAT3の欠損マウスを用い、ニューロンの形態や活動を評価した。その結果、MGAT3欠損ニューロンは野生型マウスのニューロンより突起が短く、さらにシナプス後部を形成するスパインが未成熟な形態をしていた。また、MGAT3欠損マウス脳では、痛み刺激後の神経活動の低下も認められた。さらに本マウスでは、興奮性シナプスの形成や活動に不可欠なグルタミン酸受容体の細胞内分布およびその調節に関わるTARP分子との相互作用の異常が認められた。これらのことから、Bisecting GlcNAcは生理的な脳におけるシナプスの成熟に関わることが明らかになった。

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2026/09/09

ファビピラビル注射製剤の薬物動態:健康な東アジア人を対象とした第Ⅰ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験

論文タイトル
Pharmacokinetics of injectable favipiravir: phase I, randomized, double-blind, placebo-controlled study in healthy East Asian subjects.
論文タイトル(訳)
ファビピラビル注射製剤の薬物動態:健康な東アジア人を対象とした第Ⅰ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
DOI
10.1128/aac.00463-26
ジャーナル名
Antimicrobial agents and chemotherapy
巻号
Antimicrob Agents Chemother 70:e00463-26
著者名(敬称略)
三鴨 廣繁, 桜井 努 他
所属
富士フイルム富山化学株式会社 開発本部
著者からのひと言
ファビピラビルは、錠剤として新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症及び重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染症に適応を有しています。しかし、SFTSウイルス感染症の重症例などでは、錠剤の投与が困難な場合があります。そこで、そのような患者への投与を目的とした静注用製剤を開発しました。本論文は、本製剤投与時の薬物動態を詳細に検討し、錠剤投与時と比較考察した初めての報告です。

抄訳

ファビピラビル注射製剤の薬物動態と安全性・忍容性を評価するため、健康な東アジアの男性を対象に第Ⅰ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。単回投与試験(50例)では300~2,400 mgを60分間で点滴静注し、反復投与試験(24例)では初日1,800 mg、以後10日間800 mgを各1日2回投与した。単回投与では用量依存的な血漿中濃度の上昇と非線形性を認め、反復静注では2日目以降のトラフ濃度が約85 μg/mLに維持された。体重補正後の推定血漿中濃度は同用量の経口投与より約20%高く、6日目から経口投与へ切り替えても濃度は維持された。血中尿酸値上昇、爪の変色、一過性の視覚障害を認めたが、重篤な有害事象はなかった。本研究は経口投与が困難な患者に対する注射製剤の臨床開発を支持する。ただし、対象は少数の健康成人男性に限られ、患者での有効性・安全性は今後の検証を要する。

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2026/09/09

代謝系から読み解く古代酵素の進化史

論文タイトル
The history of enzyme evolution embedded in metabolism.
論文タイトル(訳)
代謝系から読み解く古代酵素の進化史
DOI
10.1073/pnas.2609531123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
PNAS 2026 Vol. 123 No. 33 e2609531123
著者名(敬称略)
Tatsuya Corlett, Harrison B. Smith, Liam Longo 他
所属
東京科学大学 地球生命研究所
著者からのひと言

抄訳

古代タンパク質の進化史を紐解く上で、系統解析は主要な手法の一つである。しかし、LUCA(最終共通祖先)は、すでに複雑なタンパク質や代謝系を備えていたと考えられており、系統解析によって到達可能な推論の地平に位置するため、LUCA以前の酵素がどのように進化したのかは明らかではない。本研究では、相互依存する代謝物、補因子、酵素から構成される代謝ネットワークを用いて、酵素と代謝の共進化が取り得た経路をモデル化した。ネットワーク拡張法に「酵素フォールドの有無」を新たな制約として導入することで、酵素フォールドが出現した相対的な順序と、それによって新たに可能となった代謝反応を段階的に再構築した。これにより、現生生物に保存されている代謝ネットワークの構造から酵素フォールドの進化史を読み解く新たな枠組みを提示する。これは、多様な知見を統合し、タンパク質進化の統一的かつ自己整合的な歴史を構築するための重要な一歩となる。

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2026/09/08

雄マウスにおけるスリーブ状胃切除術後の腸管形態とインクレチン産生細胞の解析

論文タイトル
An analysis of intestinal morphology and incretin-producing cells after sleeve gastrectomy in male mice.
論文タイトル(訳)
雄マウスにおけるスリーブ状胃切除術後の腸管形態とインクレチン産生細胞の解析
DOI
10.1530/JME-26-0016
ジャーナル名
Journal of molecular endocrinology
巻号
J Mol Endocrinol (2026) 77 (2): e260016
著者名(敬称略)
和田 直樹, 原田 範雄 他
所属
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学
福井大学 学術研究院 医学系部門 内分泌・代謝内科
著者からのひと言
肥満症の外科治療として行われているスリーブ状胃切除術は、高い減量効果と血糖改善効果を示すことが知られています。しかし、胃を小さくすることだけでは説明できない代謝改善機序については、十分に解明されていません。本研究成果は、スリーブ状胃切除術が消化管の形態と内分泌機能をどのように変化させるかを明らかにしたものであり、肥満症や2型糖尿病に対する減量・代謝改善手術のさらなる発展につながることが期待されます。

抄訳

スリーブ状胃切除術 (SG)は肥満に対する有効な治療法である。SGはインクレチンであるグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1)分泌を増加させるが、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (GIP)分泌への影響は依然として不明である。SG後の腸管形態、GLP-1を産生する腸管内分泌L細胞数およびGIPを産生する腸管内分泌K細胞の数の変化を調査したこれまでの研究は、組織切片を用いた二次元的評価に基づいていた。本研究では、各細胞の特異的レポーターマウス系統を用いて、組織透明化法を用いた三次元 (3D)評価を行い、SG後の腸管形態およびインクレチン産生細胞数を詳細に評価した。糖摂取後のインスリン値とGLP-1分泌はSGマウスで偽手術マウスに比べ有意に高かったのに対し、GIP分泌には2群間で差が認められなかった。十二指腸の絨毛長および絨毛長軸幅はSGマウスで有意に短縮していた。SG後、回腸の絨毛L細胞数は有意に増加したが、大腸では変化しなかった。SG後、十二指腸の絨毛K細胞数は有意に減少した。本研究はSG後の腸全体の3D形態評価を初めて提供したものである。レポーターマウスと腸管の3D腸管を用いることで、腸管形態および絨毛・陰窩内のインクレチン産生細胞の数と局在が包括的に定量可能になった。

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2026/09/08

未成熟Gagへのレナカパビルの結合は巨大ウイルス粒子を誘導し、プロテアーゼ依存的なウイルス放出阻害を引き起こす

論文タイトル
Lenacapavir binding to immature Gag induces giant virions and causes protease-dependent inhibition of viral release.
論文タイトル(訳)
未成熟Gagへのレナカパビルの結合は巨大ウイルス粒子を誘導し、プロテアーゼ依存的なウイルス放出阻害を引き起こす
DOI
10.1073/pnas.2609634123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (36) e2609634123
著者名(敬称略)
Wright Andrews Ofotsu Amesimeku 門出 和精
所属
熊本大学大学院 生命科学研究部 微生物学講座
著者からのひと言
レナカパビルは年2回の投与でHIVを抑制できる画期的な薬剤ですが、その作用にはまだ多くの謎が残されています。 今回、レナカパビルによってHIVが通常とは異なる巨大な粒子を形成し、感染性を失うという新しい現象を発見しました。 この発見が、レナカパビルの作用をより深く理解し、次世代のHIV治療・予防薬の開発につながることを期待しています。

抄訳

レナカパビル(LEN)は、年2回の投与で効果が持続する長時間作用型のHIV-1治療薬であり、治療のみならず曝露前予防(PrEP)への応用も期待される重要な抗ウイルス薬です。一方、HIV-1のウイルス産生後期におけるLENの作用機序には不明な点が残されています。本研究では、LENがウイルス粒子形成過程の前駆体Gagに作用し、細胞内でのGagの異常なプロテアーゼ依存的切断を促進することで、正常な粒子形成と放出を阻害することを明らかにしました。また、LENは細胞膜上に異常なGag集積を誘導し、GagとEnvを含む直径200 nmを超える巨大なLEN誘導ウイルス様粒子(LENiVLPs)を形成させました。これらの粒子は膜融合能を保持する一方、感染後のウイルス複製に障害を示し、非感染性でした。さらに、LENはp24の抗体認識にも影響し、p24 ELISAではウイルス放出阻害が過大評価される可能性を示しました。本研究は、LENの新たな作用機序を明らかにし、次世代カプシド阻害薬の開発に重要な手掛かりを提供します。

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2026/09/07

単一の細胞外糖鎖がAMPA受容体のゲーティングとシナプス可塑性・記憶の持続をつなぐ

論文タイトル
A single extracellular glycan links AMPA receptor gating to synaptic plasticity and memory persistence.
論文タイトル(訳)
単一の細胞外糖鎖がAMPA受容体のゲーティングとシナプス可塑性・記憶の持続をつなぐ
DOI
10.1073/pnas.2607934123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (36) e2607934123
著者名(敬称略)
緑川 良介, 若園 佳彦, 髙宮 考悟 他
所属
宮崎大学 医学部 機能制御学講座 統合生理学分野
著者からのひと言
これまでの糖鎖研究が、糖鎖そのものの構造と機能に集中していたのに比し、本論文ではある部位特異的な糖鎖修飾の有無が神経機能のスイッチとして働き、かつこの糖鎖修飾率が変移して調節機能として働くところが、非常に興味深いところと思われます。

抄訳

脳では、神経細胞どうしがシナプスを介して情報を伝えています。AMPA受容体は、脳内の速い情報伝達を担うとともに、学習や記憶に重要な役割を果たすタンパク質です。本研究では、AMPA受容体を構成するGluA1のN401という部位に付加された糖鎖に着目しました。その結果、この一か所の糖鎖修飾が、AMPA受容体のチャネル機能や脂質ラフトへの局在、神経活動に伴う受容体の内在化を調節していることが分かりました。さらに、N401糖鎖を欠くGluA1を持つマウスでは、海馬における長期増強(LTP)の維持が障害され、記憶の保持にも異常が認められました。これらの結果から、AMPA受容体の単一の糖鎖修飾が、シナプス可塑性と記憶の持続を支える重要な分子機構であることが示されました。

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2026/09/03

 間接互恵性における二重評価更新の役割

論文タイトル
Indirect reciprocity with dual private assessment
論文タイトル(訳)
 間接互恵性における二重評価更新の役割
DOI
10.1073/pnas.2624656123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2624656123
著者名(敬称略)
ターン 有加里ジェシカ 他
所属
神戸大学大学院人文学研究科

抄訳

私たちは日常生活で「評判」をもとに誰を助けるか判断することがよくあります。この仕組みは「間接互恵性」とよばれ、人間社会で協力が維持される重要な要因の一つと考えられています。しかし、同じ人に対する評価が人によって異なると、たまたま生じたわずかな食い違いが次の食い違いを生み、協力が成り立ちにくくなります。そのため先行研究では、評価の食い違いを抑えて協力を維持する仕組みが様々提案されてきました(例えば、ゴシップを通じた意見交換など)。本研究では、より単純な仕組みで評価の食い違いを抑えられることを、理論解析とスーパーコンピューター「富岳」を用いたシミュレーションで示しました。従来の研究では、人々がある対象者を評価するとき、その対象者が他者に協力したかどうかが着目されるという前提を置いていました。本研究ではこれに加え、その対象者が他者から協力されたかどうかも着目されるという前提を導入しました。この二つを組み合わせた「二重評判更新」によって、他者との意見交換といった複雑な過程がなくても、人々の評価が揃いやすくなり、協力も維持されやすくなることが分かりました。

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2026/09/03

滑膜炎・ざ瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎(SAPHO)症候群の早期骨関節病期における純粋な溶骨性骨病変

論文タイトル
Purely osteolytic bone lesions in the early osteoarticular phase of synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis and osteitis syndrome
論文タイトル(訳)
滑膜炎・ざ瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎(SAPHO)症候群の早期骨関節病期における純粋な溶骨性骨病変
DOI
10.1136/bcr-2026-273281
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e273281
著者名(敬称略)
懸樋 英一,他
所属
鳥取市立病院 総合診療科
著者からのひと言
本症例では、骨病変だけでなく、先行していた皮膚所見を含めて臓器横断的に情報を統合することで、早期のSAPHO症候群を診断しました。診断の不確実性や患者の意向を踏まえて骨生検を見送り、その後も継続的に再評価した診療過程が、同様の症例における意思決定の一助となれば幸いです。

抄訳

 SAPHO症候群は、滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症、骨炎を特徴とするまれな炎症性疾患である。一般に骨硬化や骨増殖性変化を呈するが、早期には溶骨性病変のみを示すことがあり、悪性腫瘍や感染症との鑑別が問題となる。症例は10歳代後半の女性で、前胸部痛と腰痛を主訴に受診した。CTで胸骨、胸椎および腰椎に多発する純粋な溶骨性病変を認めた。一方、手掌と足底には角化や落屑を伴う皮疹があり、画像上、椎間板は保たれ、悪性腫瘍や化膿性脊椎炎を積極的に示唆する所見に乏しかった。臨床所見を統合してSAPHO症候群と診断し、患者との相談のうえ骨生検は行わず、慎重に経過を観察した。治療後、症状と皮疹は改善し、4か月後のCTでは溶骨性病変に硬化性変化が出現した。典型的な部位の溶骨性病変では、皮膚所見を含む臓器横断的な評価と継続的な画像再評価が、早期SAPHO症候群の診断に重要である。

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2026/09/03

レンサ球菌ABCトランスポーターによるホスホマイシン排出の構造基盤

論文タイトル
Structural insights into fosfomycin efflux by a streptococcal ABC transporter
論文タイトル(訳)
レンサ球菌ABCトランスポーターによるホスホマイシン排出の構造基盤
DOI
10.1073/pnas.2535933123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2535933123
著者名(敬称略)
田口 厚志 他
所属
大阪大学感染症総合教育研究拠点 病原体認識研究チーム 細菌生理学研究ユニット
著者からのひと言
薬剤排出ポンプはその重要性から長年研究が進められてきましたが、その中で抗菌薬の排出に直接関わる新たな薬剤排出ポンプを見つけ、その機能や仕組みを明らかにできたことに大きな意義を感じています。今後も、細菌感染症の新たな治療法の開発を見据え、薬剤耐性菌への対策につながる研究を進めていきます。

抄訳

 病原細菌が薬剤耐性を獲得する手段の一つとして、細胞内に入った抗菌薬を細胞外に排出する薬剤排出ポンプが存在します。薬剤排出ポンプは大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性病原細菌で研究が進められてきた一方、肺炎球菌に代表されるグラム陽性病原細菌における役割や仕組みについては未解明な点が多く残されていました。本研究では、肺炎球菌の薬剤排出ポンプを網羅的に解析することで、機能未知のABCトランスポーターが細胞壁合成を阻害する抗菌薬ホスホマイシンの排出を担うことを突き止め、FoeABと命名しました。さらに、クライオ電子顕微鏡による構造解析とリポソーム再構成系を用いた生化学的解析を組み合わせることで、FoeABによる抗菌薬輸送の分子機構を明らかにしました。これまでホスホマイシンを排出する薬剤排出ポンプは報告されておらず、本研究はグラム陽性細菌における薬剤排出ポンプの基質認識特性がこれまで想定されていた以上に多様であることを示唆しています。

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2026/09/02

SFPQ がRNA依存性に形成するコンデンセートが、神経超長鎖遺伝子の多次元的発現制御を統合する

論文タイトル
RNA-dependent SFPQ condensates coordinate multidimensional regulation of extra-long neuronal genes.
論文タイトル(訳)
SFPQ がRNA依存性に形成するコンデンセートが、神経超長鎖遺伝子の多次元的発現制御を統合する
DOI
10.1016/j.chembiol.2026.06.004
ジャーナル名
Cell chemical biology
巻号
Cell Chemical Biology, 2026; 33, 1146-1164.e9
著者名(敬称略)
細川 元靖 武内 章英 他
所属
愛媛大学大学院医学系研究科 生体構造医学講座
著者からのひと言
ヒトの遺伝子を1塩基=1 mの距離に見立てると、平均的な遺伝子でもおおよそフルマラソンほどですが、神経細胞では100 kmを超え、中には1,000 kmを超える長大な遺伝子が数多く働いています。ポリメラーゼがこれほど長い距離を安定して転写するために、多様な制御機構がどのように連携しているのか? 本研究でその謎の一端を明らかにしました。今後は、核内構造やコンデンセートという視点を含め遺伝子発現制御を理解していきたいと考えています。

抄訳

哺乳類の脳では、神経機能を支える100 kbを超える「超長鎖遺伝子」が数多く発現していますが、これら長大な遺伝子の転写伸長を担う分子複合体の実体は長らく謎のままでした。本研究では、RNA結合タンパク質SFPQが長鎖RNAを足場として、液-液相分離(LLPS)により核内にメッシュ状のコンデンセートを形成することを発見しました。この構造には、転写伸長、RNAプロセシング、クロマチン制御に関わる多様な因子が集積し、超長鎖遺伝子の発現を統合的に制御していました。さらに、この「転写伸長コンデンセート」が形成できなくなると、超長鎖遺伝子の転写やスプライシングが障害されることを明らかにしました。SFPQやその関連分子は自閉スペクトラム症(ASD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)とも関連しており、超長鎖遺伝子発現異常(long gene transcriptopathy)が神経疾患の発症に関与する可能性が示唆されました。

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2026/09/01

血液培養検体におけるグラム染色判定精度の比較 ― コンピュータ支援診断アプリと微生物検査専門家 ―

論文タイトル
Comparison of Gram stain interpretation accuracy between a computer-aided diagnosis app and microbiology specialists in blood culture samples.
論文タイトル(訳)
血液培養検体におけるグラム染色判定精度の比較 ― コンピュータ支援診断アプリと微生物検査専門家 ―
DOI
10.1128/spectrum.00081-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00081-26
著者名(敬称略)
海老澤 馨 大路 剛 他
所属
神戸大学医学部附属病院感染症内科・神戸大学都市安全研究センター
著者からのひと言
AIのClass 1 accuracyは約75%で、専門家の約90%にはまだ届きませんでした。 ただしAIの弱点は血液培養から検出頻度の非常に低い、GNC、H. influenzae、Campylobacterなど特定カテゴリーに集中しています。現状でも臨床現場の診断補助に使用できると考えられます。

抄訳

血液培養陽性時のグラム染色画像をスマートフォンで撮影し、AIで判定するシステムを専門家と比較した研究である。AIの形態判定精度は約75%で、専門家の約90%には及ばず非劣性は証明できなかった。一方、臨床現場で血液培養から検出される頻度が高いGPCやGPRでは比較的高い性能を示し、AIが苦手な菌はGNC、H. influenzae、Campylobacterなどに集中していた。現時点では本AIは専門家を代替しきれないかもしれないが、夜間・休日や微生物専門家がいない施設でグラム染色判読を支援する技術として期待される。

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2026/08/31

ネック領域と微小管の相互作用がキネシン-1の反時計回りの歩行を導く

論文タイトル
Neck region-microtubule interactions direct counterclockwise stepping of kinesin-1
論文タイトル(訳)
ネック領域と微小管の相互作用がキネシン-1の反時計回りの歩行を導く
DOI
10.1016/j.bpj.2026.03.043
ジャーナル名
Biophysical Journal
巻号
Biophysical Journal, 2026; 125, 4357-4368
著者名(敬称略)
鄭 誠虎 飯野 亮太
所属
熊本大学大学院生命科学研究部創薬データサイエンス講座
著者からのひと言
キネシン-1が二つの頭部を交互に動かして歩く様子はよく知られていますが、その歩行を原子レベルで再現することは容易ではありません。本研究では、大規模な分子シミュレーションによって、これまで構造が十分に分かっていなかったネック領域の役割に迫りました。実験で観測されてきた特徴的な歩行方向を、分子間相互作用から説明できたことが本研究の大きなポイントです。

抄訳

細胞内では、キネシン-1と呼ばれる分子モーターが、微小管という「レール」の上を二つの頭部を交互に動かしながら進み、さまざまな物質を運んでいます。しかし、二つの頭部をつなぐ「ネック領域」が微小管上でどのような構造をとり、歩行にどのような役割を果たすのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた全原子分子動力学シミュレーションにより、ネック領域が微小管の長軸に対してほぼ垂直に配置され、微小管表面の近くで弱く相互作用する構造を見いだしました。さらに歩行の初期過程をシミュレーションしたところ、後方の頭部が前方の頭部の右側を回り込む、反時計回りの運動が優先的に現れました。この運動はこれまでの実験結果とも一致しており、ネック領域と微小管表面との相互作用が、キネシン-1の歩行方向を制御する重要な要因であることが示されました。 

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2026/08/31

UFSP2–ODR4複合体による脱UFM1化修飾の空間的・動的制御が神経細胞のプロテオスタシスを維持する

論文タイトル
The UFSP2-ODR4 complex spatially confines and dynamically controls UFM1 deconjugation to safeguard neuronal proteostasis.
論文タイトル(訳)
UFSP2–ODR4複合体による脱UFM1化修飾の空間的・動的制御が神経細胞のプロテオスタシスを維持する
DOI
10.1016/j.molcel.2026.06.026
ジャーナル名
Molecular cell
巻号
Molecular Cell, 2026; 86, 3035-3049.e8
著者名(敬称略)
毛 高鑫 小松 雅明 他
所属
順天堂大学医学部生理学第二講座
著者からのひと言
本研究の重要な点は、UFM1化の「付加」だけでなく「除去」もER上で空間的に制御され、それがER-RQCの終結に必要であることを明らかにした点です。UFM1化酵素と脱UFM1化酵素のいずれが欠損しても神経発生異常を引き起こすことから、神経細胞の恒常性維持には、UFM1修飾の適切なバランスが重要であることが示されました。

抄訳

UFM1システムはユビキチン様タンパク質修飾系の一つであり、小胞体(ER)上で翻訳の品質を監視する小胞体関連リボソーム品質管理機構(ER-RQC)において重要な役割を担っている。これまでに、当研究室らは、UFM1 E3リガーゼ複合体による60Sリボソームタンパク質RPL26のUFM1化と、 UFM1化RPL26の認識がER-RQCの進行に重要であることを明らかにしてきた。本研究では、脱UFM1化酵素UFSP2がER膜タンパク質ODR4と安定な複合体を形成し、RPL26を脱UFM1化することでER-RQCの終結に機能することを明らかにした。また、ODR4はUFM1 E3リガーゼ複合体の構成因子であるUFBP1とも結合し、この結合がER-RQCの進行に必要であった。これらの結果から、UFM1化および脱UFM1化に関与する超複合体が、UFM1の付加、認識、除去という一連の過程をER膜上で協調的に制御することが示唆された。神経前駆細胞特異的に触媒活性欠損型UFSP2を発現するノックインマウスでは、UFM1化RPL26の蓄積、神経細胞死、小頭症および周産期致死が認められ、適切な脱UFM1化が神経発生に必須であることが示された。さらに、重篤な神経発達障害患者で同定された両アレル性UFC1変異はUFM1 E3リガーゼ複合体の中核因子UFL1との結合を増強し、患者由来神経細胞においてRPL26の過剰UFM1化を引き起こした。以上の結果から、RPL26の過剰なUFM1化が神経発生異常につながることが示唆され、ER膜上に局在する脱UFM1化機構が、ER-RQCの適切な終結と神経細胞のプロテオスタシス維持に必須であることが明らかになった。

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2026/08/28

肺上皮被覆液への移行性が異なる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬:マウス肺感染モデルにおける感染部位特異的PK/PD解析

論文タイトル
Three fluoroquinolones with different epithelial lining fluid penetration in a murine lung infection model: an experimental site-specific PK/PD study.
論文タイトル(訳)
肺上皮被覆液への移行性が異なる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬:マウス肺感染モデルにおける感染部位特異的PK/PD解析
DOI
10.1128/aac.00375-26
ジャーナル名
Antimicrobial agents and chemotherapy
巻号
Antimicrob Agents Chemother 70:e00375-26
著者名(敬称略)
細井 彩夏、五十嵐 裕貴 他
所属
慶応義塾大学 薬学部 薬効解析学講座
著者からのひと言
抗菌薬のPK/PD目標値は血漿中濃度をもとに設定されることが多いが、肺炎での作用部位は主にELFである。本研究は、ELF移行性の異なる3剤の比較により、血漿基準とELF基準の目標値の乖離がELF移行性に依存することを示した。ELF移行性の高い薬物では、血漿中濃度のみを指標とすると感染部位での曝露を過小評価しうる。抗菌薬の選択や投与設計に、感染部位の薬物曝露という視点を加える意義を示した研究である。

抄訳

本研究では、肺炎治療に用いられる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、ガレノキサシン、ラスクフロキサシン)について、肺上皮被覆液(ELF)への移行性の違いがPK/PD解析に及ぼす影響を検討した。マウス肺炎球菌性肺炎モデルを用いて血漿およびELF中の薬物濃度を測定し、肺内の菌量変化との関係からPK/PD指標を評価した。その結果、すべての薬剤でAUC/MICが抗菌効果を最もよく反映したが、ELF移行性の違いにより、血漿基準とELF基準のPK/PD目標値には乖離が認められた。特にELF移行性が高いラスクフロキサシンではその乖離が顕著であった。さらに、ELF基準の目標値をヒトのELF/血漿曝露比を用いて換算すると、いずれの薬物も臨床で報告された目標値と概ね一致した。以上より、肺炎における抗菌薬の薬効評価には、ELFに基づくPK/PD目標値を考慮することが、抗菌効果の理解や投与設計の最適化に有用である可能性が示された。

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2026/08/26

フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴

論文タイトル
Genomic signatures of native (Japanese) and introduced (Oceanian) populations of the Asian longhorned tick Haemaphysalis longicornis
論文タイトル(訳)
フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag232
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 8, August 2026, pgag232
著者名(敬称略)
尾針 由真, 中尾 亮 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院
北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所
著者からのひと言
当研究では、フタトゲチマダニにおける「単為生殖」という極めてユニークな生殖形態について、その発生メカニズムに関する仮説を導き出しました。現在は、この仮説の検証に向けて解析対象(採集地点・個体数)を拡大しており、世界中からのマダニ収集を進めております。

抄訳

フタトゲチマダニは人や動物に寄生して病原体を媒介します。原産地である東アジアからオセアニアや北米にも侵入・定着しており、その分布拡大には雌のみで繁殖可能な単為生殖が関与すると考えられていますが、その発生機序は明らかになっていません。本研究では、日本とオセアニアで野外採集した個体と繁殖様式が確定されている実験室維持株から、ミトコンドリア全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型を取得し、分子系統解析や集団遺伝学的解析を実施しました。その結果、ミトコンドリア系統樹では二つの系統群が認められましたが、雄は両群に含まれ、系統群と繁殖様式の関係はありませんでした。また、日本集団では明瞭な地域的遺伝構造がみられませんでしたが、オセアニア集団は日本集団とは異なる遺伝的特徴を示しました。さらに、二系統群間で遺伝子流動が検出されました。以上の結果は、単為生殖が単一起源ではなく、複数回独立に成立した可能性を示唆しています。

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