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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae
members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania
triglochinis
」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

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2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania triglochinis」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

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2026/06/12

 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例

論文タイトル
T-cell large granular lymphocyte leukaemia with pure red cell aplasia harbouring a somatic STAT3 P715L mutation
論文タイトル(訳)
 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268958
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
岡本 裕介 石山 賢一 他
所属
京都大学大学院医学研究科 血液内科学
著者からのひと言
 T-LGLLではSTAT3変異の多くがSH2ドメインに集中することが知られているが、本症例は初めてSH2ドメイン外のSTAT3 P715L体細胞変異を同定した点で極めて興味深い。さらに、病理学的にSTAT3活性化を証明し、シクロスポリンに良好な治療反応を示したことから、希少変異であっても臨床的意義を有する可能性が示された。分子異常と自己免疫性血球減少症との関連を考える上で、診断・病態解明・治療戦略に新たな視点を提供する症例報告である。

抄訳

本症例は、進行性貧血を契機に診断された50歳代女性のT細胞性大顆粒リンパ球白血病(T-LGLL)に伴う赤芽球癆(PRCA)の報告である。骨髄検査では赤芽球系の著明な減少を認め、末梢血フローサイトメトリーおよびT細胞受容体遺伝子再構成解析により単クローン性CD8陽性細胞傷害性T細胞の増殖が確認された。さらにNGS解析によりSTAT3遺伝子のP715L体細胞変異を同定した。この変異はこれまでSTAT3 gain-of-function(GOF)症候群における生殖細胞系列変異として報告されていたが、T-LGLLにおける体細胞変異としての報告はなかった。骨髄生検ではCD8陽性T細胞におけるリン酸化STAT3の核内集積が確認され、P715L変異によるSTAT3シグナルの恒常的活性化が示唆された。患者はシクロスポリン治療により徐々に造血能が改善し、6か月以内に輸血依存から離脱した。本症例は、T-LGLLにおけるSTAT3変異スペクトラムを拡張するだけでなく、SH2ドメイン外のSTAT3変異が疾患発症や治療反応性に関与する可能性を示した重要な症例である。

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2026/06/11

 動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。

論文タイトル
Animals have expanded the evolutionary legacy of unicellular ancestors in blood cells
論文タイトル(訳)
動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。
DOI
10.1073/pnas.2528110123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.23 e2528110123
著者名(敬称略)
長畑 洋佑 河本 宏 他
所属
京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野
スペイン国バルセロナ 進化生物学研究所(筆頭著者現所属)
著者からのひと言
(河本)私達の研究室は、造血幹細胞が分化していく際に、マクロファージへ分化する能力が長く保持されているというミエロイド基本型モデルを、20年以上前に提唱しました。今回の成果は、ミエロイド基本型モデルが、7億年の血液細胞の進化過程を反映している事を示す集大成的な成果であり、とても感慨深く思います。
(長畑)T細胞、マスト細胞、赤血球、血小板が近縁であるということは、驚くべきことであり、重要な知見になると考えます。また、7億年前の先祖の遺産が、血液細胞として我々の体内を巡っていると思うと、遠い祖先も身近に感じることができます。

抄訳

本研究では、様々な動物と単細胞生物における、多種多様な細胞の遺伝子発現プロファイルを比較する手法を開発することで、血液細胞の起源と多様化の歴史を7億年前の単細胞生物時代の祖先にまで遡って明らかにしました。①まず、動物の祖先は、まだ単細胞生物であった頃の遺伝子プログラムを用いて、マクロファージ様の血液細胞として誕生させました。その後、動物進化の過程で、②寄生虫感染症に対抗してマクロファージからマスト細胞が分岐し、③そのマスト細胞から原始的なT細胞が、④マクロファージから原始的なB細胞が、⑤再びマスト細胞から赤血球が、それぞれ分岐していった事がわかりました。この7億年間の進化の記憶は、造血・分化過程として、現在生きる我々の体内にも刻まれていることもわかりました。私達の体内を巡る血液細胞は、単細胞生物時代の祖先が私達に遺したレガシーをうまく拡張・発展させたものと言えます。

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2026/06/11

 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上

論文タイトル
Utilizing vmTracking to Improve the Accuracy of Multi-Animal Pose Estimation in Rodent Social Behavior Studies
論文タイトル(訳)
 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上
DOI
10.3791/69506-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (225), e69506
著者名(敬称略)
筆頭著者:畦地 裕統 連絡著者:畦地 裕統
所属
同志社大学大学院脳科学研究科 システム神経科学分野 認知行動神経機構部門
著者からのひと言
動物の行動を定量的に解析するには、個体ごとの動きを正確に追跡したデータが必要です。しかし、複数個体が自由に行動する場面では、接触や遮蔽により個体識別が不安定になるため、データの精度が低下し、社会行動の定量評価にも影響します。本論文では、仮想マーカーを用いて既存のマーカーレス姿勢推定を補強するvmTrackingの手順を紹介しています。多個体行動解析の信頼性を高めるために有用な内容です。

抄訳

げっ歯類の社会行動研究では、動物が自由に動き回る環境下で、より自然な相互作用を評価する必要性が高まっている。そのためには、複数個体の姿勢を正確に追跡することが重要であるが、現在のマーカーレス多個体姿勢追跡ツールでは、遮蔽や密集場面、特に個体同士を視覚的に区別しにくい条件で精度が低下しやすい。本研究で提示する仮想マーカー追跡(vmTracking)は、仮想マーカーを用いてフレーム間の個体識別を維持し、困難な条件下での多個体姿勢追跡精度を向上させる手法である。本手法は標準的な追跡ワークフローに組み込むことができ、既存のマーカーレス多個体動画データにも適用可能である。本稿では仮想マーカーの割り当て方法と、ラベル付けされた動画における動物追跡の手順を示す。vmTrackingにより得られる高精度な多個体追跡データは、自由行動下で生じる社会的相互作用行動を、より信頼性高く定量解析することを可能にする。

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2026/06/10

SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析

論文タイトル
Combinatorial analysis of clinical and genomic data used to assess the association between SARS-CoV-2 mutations and disease severity
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag191
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 6, June 2026, pgag191,
著者名(敬称略)
石渡 早織、谷本 幸介、 武内 寛明  他
所属
東京科学大学 医歯学総合研究科 ハイリスク感染症研究マネジメント学分野

抄訳

2019年末に出現し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを引き起こしたsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)は、ゲノム進化を経て、アルファ、デルタ、オミクロン株などの懸念される変異株を生み出した。本研究ではSARS-CoV-2変異が感染者の重症度に及ぼす影響を評価することを目的とし、東京科学大学病院に入院した310名の患者由来のウイルスゲノムデータと臨床データの統合解析を行なった。解析の結果、統計的有意に重症度と関連する変異が64個同定された。オミクロン株は一般的にデルタ株よりも症状が軽いとされているが、本研究ではオミクロン株の中にも重症化と統計的有意に関連する変異が同定された。SARS-CoV-2のゲノム情報と臨床情報のレトロスペクティブ解析は、ウイルス変異の生物学的意義の解明に有用であると考えられる。

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2026/06/10

 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン

論文タイトル
Chromid-like secondary replicons as predicted key sites of biosynthetic gene clusters in Ktedonobacteria
論文タイトル(訳)
 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン
DOI
10.1128/msystems.00197-26
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
矢部 修平他
所属
理化学研究所 環境資源科学研究センター ホロビオント・レジリエンス研究チーム
著者からのひと言
 クテドノバクテリアは培養例が限られ、これまで十分に研究されてこなかった細菌群です。本研究では、この細菌群が多様な生合成遺伝子クラスターをもち、それらがクロミド様の大型二次レプリコンに集積している可能性を示しました。創薬微生物の代表格である放線菌に続く、新たな微生物資源としての展開が期待されます。

抄訳

 土壌微生物は、医薬品や農薬などの候補となる多様な二次代謝産物を生み出す重要な生物資源である。しかし、多くの土壌細菌系統では、その生合成能や、それを支えるゲノム構造が十分に理解されていない。本研究では、火山土壌から新たに分離したKtedonobacteria株、メタゲノム由来ゲノム、公共ゲノムを統合し、計183ゲノムを対象に生合成遺伝子クラスター(BGC)を比較解析した。その結果、1,546個のBGCを同定し、その多くが既知データベース中のBGCとは大きく異なることを示した。さらに、長鎖リードによる高品質ゲノム解析から、クロミド様の特徴をもつ大型二次レプリコンが複数の系統で見出され、BGCや可動性関連遺伝子がそこに濃縮していることが明らかとなった。本成果は、Ktedonobacteriaが未開拓の二次代謝資源であることを示すとともに、微生物の二次代謝能の多様化を支えるゲノム構造の理解に貢献するものである。

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2026/06/09

腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である

論文タイトル
TusDCB-mediated tRNA sulfur modification is required for virulence and intestinal fitness in enterohemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である
DOI
10.1128/iai.00186-26
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
佐藤百美佳、 平川 秀忠 他
所属
国立大学法人群馬大学 医学部医学科 細菌学
著者からのひと言
本研究では、これまで病原性との関連がほとんど知られていなかった「tRNAの硫黄修飾」に着目しました。細菌は単に病原因子を持つだけでなく、それらを適切なタイミングで作り出す仕組みが必要です。TusDCBはその根幹を支える翻訳制御に関与し、腸管出血性大腸菌の病原性や環境ストレス耐性に重要な役割を果たしていました。本研究が、新しい感染症制御法の開発につながることを期待しています。また、本研究は学部学生を中心とした日々の研究活動から生まれた成果であり、基礎研究と人材育成の重要性を示すものでもあります。

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は、重度の出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす重要な食中毒の原因菌である。しかし、抗菌薬の使用によって毒素放出が促進される危険性があるため、有効な治療法は限られている。
本研究では、タンパク質合成に関わるtRNAの硫黄修飾を担うTusDCB複合体に着目し、その病原性への役割を解析した。TusDCBの機能を欠失させると、III型分泌装置(T3SS)関連遺伝子の発現および病原因子EspBの産生が低下し、ヒト赤血球に対する溶血活性やマウス腸管感染モデルにおける病原性が著しく減弱した。また、酸や酸化ストレスに対する抵抗性も低下した。さらに、プロテオーム解析により、EHECの薬剤耐性や病原性の増強に寄与するインドールシグナル産生に関与するTnaAなど複数のタンパク質の発現低下が認められた。これらの結果から、TusDCBは病原因子発現のみならず、細菌の環境適応や生存能力を支える重要な因子であり、新たな抗病原性治療標的となる可能性が示された。

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2026/06/08

同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立

論文タイトル
Establishment of Tumor Organoids, Carcinoma-Associated Fibroblasts, and Counterpart Fibroblasts from the Same Esophageal Cancer Patient
論文タイトル(訳)
同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立
DOI
10.3791/69548-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (230), e69548
著者名(敬称略)
筆頭著者:張霈宁、連絡著者:小林哲夫 他
所属
順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座

抄訳

食道扁平上皮がんでは、治療抵抗性や再発が大きな課題である。がん関連線維芽細胞(CAF)は、がん微小環境を構成する主要な細胞であり、がんの進展や治療応答に重要な役割を果たす。従来の研究では、長期間培養されたがん細胞株と患者由来CAFを組み合わせることが多く、両者の遺伝的背景の違いが実験結果の再現性や信頼性に影響する可能性があった。本論文では、同一の食道扁平上皮がん患者の手術検体から、がんオルガノイド、CAF、さらに非がん部由来の対照線維芽細胞(CF)を同時に樹立する方法を紹介する。本手法で樹立した細胞群を用いることにより、患者間差を抑えた条件でがん細胞とCAFの相互作用を解析することが可能である。その研究成果は、CAFによるがん増殖や薬剤抵抗性の機序解明、さらには個別化治療の開発の基盤となることが期待される。

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2026/06/04

新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Prevotella mikamonis sp. nov., isolated from equine clinical specimens
論文タイトル(訳)
新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007112
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
 (兼 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター)
著者からのひと言
馬の呼吸器感染症由来検体から新たなPrevotella属細菌を発見し、新種 Prevotella mikamonis sp. nov. として提唱しました。本菌は、日本の嫌気性菌感染症研究を牽引してきた三鴨廣繁(みかもひろしげ)博士にちなんで命名されています。本研究は、馬に関連する嫌気性細菌の未知の多様性を明らかにしたものであり、獣医領域における感染症理解と微生物分類学の発展に新たな知見を提供します。

抄訳

本研究では、日本において馬の呼吸器感染症由来検体から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌5株について、表現型、生化学的性状およびゲノム情報に基づく包括的な分類学的解析を実施した。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、これらの菌株は既知の近縁種とは明確に区別される独立したクラスターを形成した。ゲノムのGC含量は46.7%であり、主要な菌体脂肪酸としてC16:0、3-OH-C16:0および3-OH-iso-C16:0が検出された。さらに、全ゲノム比較により平均ヌクレオチド同一性(ANIb)およびデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーション(dDDH)を解析したところ、近縁種であるPrevotella phocaeensisおよびPrevotella merdaeの基準株に対し、それぞれ73.1%未満および28.6%未満と、新種提唱の基準値を大きく下回る結果が得られた。これらの表現型および遺伝学的特徴を総合的に評価した結果、本菌株群はPrevotella属の新種に相当すると判断され、
新種 Prevotella mikamonis sp. nov. を提唱した。本研究は、馬の呼吸器感染症に関連する嫌気性細菌の多様性解明に貢献するとともに、新たな病原細菌の分類学的知見を提供するものである。

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2026/06/04

共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性

論文タイトル
Boson peak in covalent network glasses: Isostaticity and marginal stability
論文タイトル(訳)
共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性
DOI
10.1073/pnas.2528998123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.22 e2528998123
著者名(敬称略)
水野英如 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
著者からのひと言
一見すると、窓ガラスと砂団子はまったく異なるものに見えます。しかし本研究は、両者が硬さを獲得する背後に、「自由度と拘束数の釣り合い」という共通の物理原理が働いていることを明らかにしました。物理学のおもしろさは、このように異なる現象の奥に潜む普遍的な仕組みを見いだせる点にあります。本研究は、身近な砂の詰まりから窓ガラスの本質に迫り、物理学の魅力と威力を示す研究です。

抄訳

窓ガラスは、私たちの暮らしの中で身近にあり、当たり前のように使われている材料である。しかし、その主成分であるシリカガラスがどのように硬さを獲得し、なぜ低周波領域に特有の振動励起である「ボソンピーク」を示すのかは、長く未解明の問題であった。本研究は、この身近でありながら謎を残すシリカガラスの硬さの起源を、砂団子が固まる仕組みである「ジャミング転移」の物理と結びつけて調べた。分子動力学シミュレーションにより、シリカガラスのシリコン原子と酸素原子から成る共有結合ネットワークを解析したところ、このネットワークが、砂団子が剛性を獲得する状態と同じく、自由度と拘束数がちょうど釣り合った「等拘束性」の状態にあることが明らかになった。等拘束的なネットワークは安定と不安定の境界にある臨界的な骨格であり、そこにファンデルワールス力やクーロン力などの弱い相互作用が加わることで、実際のガラスは有限の剛性を獲得する。さらに、ボソンピークもこの等拘束的ネットワークに由来することを示した。本成果は、身近な窓ガラスの背後に、砂団子と共通する普遍的な物理原理が潜んでいることを明らかにし、ガラスの剛性と振動特性を統一的に理解するものである。

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2026/06/01

両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症

論文タイトル
Hypertrophic pulmonary osteoarthropathy in bilateral distal tibia and fibula
論文タイトル(訳)
両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症
DOI
10.1136/bcr-2025-269739
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 5
著者名(敬称略)
井上 文太 他
所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 足の外科
著者からのひと言
足の外科外来を受診した両側足関節痛の患者が、実は肺がんに伴う肥大性肺性骨関節症(HPOA)であった症例です。稀な疾患であるため、認知度が低く診断に難渋しますが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見が診断の手がかりとなります。原因不明の両側足関節痛では本疾患を念頭に置き、すみやかに原疾患(特に肺悪性腫瘍)の全身検索を行うことが重要です。

抄訳

肥大性肺性骨関節症(HPOA)は、四肢の骨膜新生、関節痛、ばち指を特徴とするまれな症候群であり、多くは肺疾患に続発する。整形外科的疾患と誤診されやすく、全身評価の遅れにつながりうる。本症例は、両側足関節痛を主訴に足の外科外来を受診した60歳代後半の男性である。単純X線およびCTにて両側脛骨・腓骨に左右対称性の骨膜新生を認め、MRIでは骨膜の浮腫・炎症を認める一方で骨髄浮腫は認めず、HPOAの診断を支持する所見であった。両手指および足趾のばち指も確認された。全身検索の結果、右肺尖部に腫瘍を認め、気管支鏡により肺腺癌と診断された。右上葉切除術後、両側足関節痛は速やかに消失し、JSSF足関節・後足部スケールおよびSAFE-Qの各スコアも術後1年で著明に改善した。下肢の骨膜新生をきたす疾患の鑑別は多岐にわたるが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見はHPOAを示唆する重要な診断手がかりである。原因不明の両側足関節痛に際しては本疾患を念頭に置き、原因疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する全身評価を行うことが重要である。

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2026/05/25

ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性

論文タイトル
High-density microdroplet cultivation reveals the essential role of microbial interactions in the growth of environmental microbes
論文タイトル(訳)
ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性
DOI
10.1128/mbio.03953-25
ジャーナル名
mBio
巻号
Vol.17, No.5
著者名(敬称略)
Eun-Young Seo 鈴木 陸太 青井 議輝 他
所属
広島大学大学院 統合生命科学研究科 代謝変換制御学研究室 青井グループ
著者からのひと言
本論文ではこれまで培養の難しかった微生物を培養する新たな手段として、ドロップレットを用いた超高菌体密度での微生物培養手法を提案しています。これまで実現不可能だった高いレベルでの相互作用を実現することで、増殖の困難な微生物の培養を可能にしました。99%の微生物が現在まで培養されていないと言われていますが、本手法はこれらの微生物の大部分を培養可能にするポテンシャルを持っており、我々は現在、新たな微生物を資源化することに取り組んでいます。

抄訳

環境中の微生物の大多数は依然として培養されておらず、その生理機能や生態学的役割の理解は大きく制限されている。微生物間相互作用は、培養できない微生物の成長を支える重要な要因の一つと考えられてきたが、それらが培養可能性に与える影響は十分には解明されていない。 本研究では、純粋培養を維持しつつ微生物間相互作用を促進し、さらに単一細胞レベルでの観察を可能にする新しいドロップレット共培養手法を開発した。この培養手法により、環境微生物の培養効率は従来の寒天平板法から大幅に向上(約10倍)し、従来は培養が困難であった分類群の増殖も確認された。また、純菌株を用いて微生物群集内での増殖の様子を観察した結果、微生物間相互作用がいくつかの微生物の増殖にとって重要であることが明確に示された。本研究の知見は、微生物の培養における相互作用の重要性を強調するとともに、利用可能な微生物バイオマスの大幅な拡張、微生物群集の制御、そしてこれまで認識されていなかった微生物間相互作用の解明に向大きく貢献するものである。

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2026/05/20

膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している

論文タイトル
Transmembrane ROOM proteins ensure rooms for germ cells by maintaining intercellular bridges
論文タイトル(訳)
膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している
DOI
10.1073/pnas.2522264123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.19 e2522264123
著者名(敬称略)
杉浦健太 佐藤健 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
著者からのひと言
卵母細胞が正常に形成されるためには各生殖細胞に雌性核が1つずつ含まれた”個室“となる必要がありますが、この仕組みはあまりわかっていません。細胞間橋や細胞分裂溝に局在してアクトミオシン系と協調して働く因子のなかでも膜貫通タンパク質はあまり知られておらず、ROOMタンパク質の解析により得られる知見は生殖細胞、卵母細胞の形成だけではなく、その他の細胞の分裂や細胞間橋形成等の理解にも役立つ可能性があります。

抄訳

多くの有性生殖を行う動物において、生殖細胞は不完全な細胞分裂の結果として合胞体を形成し、くびれた細胞間橋を介して細胞質成分を共有しています。この合胞体の状態が維持できないと、将来の卵母細胞の形成に異常が生じ、不妊となることが知られています。しかしながら、これらの過程を制御する分子メカニズムはいまだ不明な点が多く残されています。本研究では、線虫(Caenorhabditis elegans)の成体生殖腺の合胞体において、生殖細胞の細胞区画維持に不可欠な構成要素として、パラログである膜貫通タンパク質ROOM-1およびROOM-2を同定しました。これらのタンパク質は生殖細胞と細胞質コアを繋ぐ細胞間橋においてF-アクチンと共に特異的に局在しており、両者を欠損すると生殖腺内における個々の生殖細胞の区画化が不全となり、卵母細胞が形成されず子孫を残せないことが判明しました。また、ROOMタンパク質は細胞間橋を構成するアクトミオシン制御因子と共局在し、これらの局在は相互依存していることが明らかとなりました。以上のことから、ROOMタンパク質は、アクトミオシン複合体と協調して生殖細胞-細胞質コア間の細胞間橋を安定化し不完全な細胞分裂を維持することで、生殖細胞のための「Room」を確保していることが明らかとなりました。

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2026/05/18

潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序

論文タイトル
Immunological mechanism behind reactivated cryptococcosis in persistently infected mice following FTY720 treatment
論文タイトル(訳)
潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序
DOI
10.1128/iai.00612-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
𠮷田  美智子 他
所属
東北大学病院 総合感染症科
著者からのひと言
既存モデルでは困難であった,有莢膜株を用いた臨床に即した新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した点が本研究の強みである.本モデルは再活性化解析にも応用可能であり,本研究で構築した新規マウスモデルを用いたさらなる研究により,潜在性クリプトコックス感染の新規診断法,予防戦略,さらには免疫応答を標的とした補助治療の開発につながる可能性がある.

抄訳

クリプトコックス症は,Cryptococcus neoformans species complex(CNSC)による侵襲性真菌感染症であり,Th1免疫応答による肉芽腫形成が感染制御に重要である.CNSCは初感染後に潜在性感染状態へ移行し,免疫制御が破綻すると再活性化すると考えられるが,その機序は十分解明されていない.本研究では,CNSCの主要T細胞抗原であるChitin deacetylase 2(Cda2)特異的CD4陽性T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(CnT-Ⅱマウス)を用いて,肺肉芽腫形成を伴う新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した.本モデルに多発性硬化症治療薬であるFingolimod(FTY720)を投与したところ,肺内IFN-γおよびIL-12レベルの低下に伴い肉芽腫構造の破綻を認め,その後,肺内生真菌数が増加し,内因性再燃を示唆する変化を認めた.また,IFN-γ産生CD4陽性エフェクターメモリーT細胞(Tem)が著減していた.以上より,潜在性感染状態の維持にはCD4陽性Tem細胞が重要である可能性が示され,FTY720はCD4陽性Tem細胞の減少を介してTh1免疫応答を障害し,内因性再燃を促進すると考えられた.

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2026/05/18

チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる

論文タイトル
Tubulin acetylation deficiency promotes axonemal turnover and increases cytoplasmic microtubules
論文タイトル(訳)
チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる
DOI
10.1091/mbc.E26-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 6
著者名(敬称略)
久保 智広 他
所属
山梨大学大学院 総合研究部 医学域 解剖学講座構造生物学教室
著者からのひと言
チューブリン翻訳後修飾の中でも、アセチル化は古くから最も研究が進められてきた修飾の一つです。私たちは、微小管研究に適した単細胞緑藻類クラミドモナスを用いて、チューブリンアセチル化が完全に欠損した株を作製しました。その結果、鞭毛および細胞質性微小管の動態に大きな異常が生じることを見出しました。このような現象はこれまで報告されておらず、単細胞モデルを用いた研究の有用性を示す結果であると考えています。

抄訳

微小管を構成するチューブリンは、多様な翻訳後修飾を受ける。本研究では、鞭毛・繊毛研究のモデル生物である単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、チューブリンアセチル化が細胞全体の微小管動態に果たす役割を追究した。クラミドモナスでは、チューブリンアセチル化は鞭毛軸糸およびルートレット微小管と呼ばれる一部の細胞質性微小管に観察される。αチューブリンアセチル基転移酵素1 (αTAT1)をゲノム編集によりノックアウトした変異株atat1-1を樹立したところ、atat1-1ではチューブリンアセチル化が完全に消失していた。ダイオアリオンアッセイによる解析から、atat1-1では軸糸のターンオーバー頻度が著しく増加することが明らかになった。加えて、興味深いことに、atat1-1ではルートレット微小管だけでなく全ての細胞質性微小管の量が有意に増加していた。これらの結果は、チューブリンアセチル化が軸糸微小管の安定性維持に関与するとともに、細胞全体の微小管の動態制御を担っていることを示唆するものである。

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2026/05/15

植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される

論文タイトル
Two-step, long-distance nuclear migration guided by distinct actin networks prior to plant root hair formation
論文タイトル(訳)
植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag141
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 5, May 2026, pgag141,
著者名(敬称略)
高塚 大知 他
所属
国立大学法人奈良国立大学機構・奈良女子大学・研究院自然科学系
著者からのひと言
植物細胞は一般に動物細胞よりも巨大化する能力が高いことが広く知られている。しかし、そのように巨大化した植物細胞内で、空間的な位置情報を精確に統御し、適切な細胞内構造を形成する仕組みについては、殆ど理解が進んでいない。本研究は、植物細胞内において、核が多段階の過程を経て長距離移動することを示した初めての例であり、植物細胞における細胞内構造制御の新たな原理を明らかにした独自性の高い研究である。

抄訳

植物細胞の特徴の一つは、細胞体積を劇的に増大させる能力である。そのような巨大化した細胞内で、必要に応じて核が最適な位置へ移動することは細胞が機能を果たすのに不可欠である。しかし、核が巨大な植物細胞内を精確に、長距離移動する仕組みは未解明であった。本研究では、根の表皮細胞から伸びる管状構造である根毛が形成される前に、核が空間的に厳密に規定された目的地まで、約50 µmの長距離を精確に移動すること、そしてその移動が二段階で進行し、それぞれが異なるアクチンアイソフォームから構成される別々のF-actinネットワークによって誘導されることを示した。さらに、目的地で活性化される低分子量GTPaseシグナルがF-actin形成を促進することを発見した。低分子量GTPaseシグナル依存的なF-actin形成は、第二段階の核移動には必須である一方、第一段階には必要ないことも見出した。これらの結果は、巨大な植物細胞内で核の精確な移動を保証する、複雑で段階的な仕組みの存在を示すものである。

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2026/05/14

一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布

論文タイトル
Diversity and geographical distribution of potential carbon monoxide oxidizers using molybdenum-containing enzymes in the ocean
論文タイトル(訳)
一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布
DOI
10.1128/msphere.00062-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
今浦 由就 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

海洋では化学反応により一酸化炭素(CO)が生じ、その90%は原核生物(CO酸化菌)に消費されると推定されている。CO酸化菌は、鍵酵素のCOデヒドロゲナーゼ(CODH)を用い、COをエネルギー源として利用する。CODH遺伝子を持つ原核生物(潜在的CO酸化菌)は海洋において少なくとも8つの原核生物門に属し、群集の10–20%を占めると考えられてきたが、その多様性は過大評価されていた。本研究では過大評価を除いた方法で潜在的CO酸化菌を探索した。その結果、9門233種(うち207種は新たに潜在的CO酸化菌と同定)が検出され、原核生物の0.1–6.7%が潜在的CO酸化菌であると推定された。233種のうち優占11種は20種の原核生物と共起し、共起の相手は種ごとに異なった。11種はCODH以外に共通の遺伝子を持たず、潜在的CO酸化菌-原核生物の相互作用には共通の分子的基盤が存在しないと示唆された。

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2026/05/13

進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ

論文タイトル
Evolution-guided prioritization identifies a tissue-specific phosphorylation switch on herpes simplex virus 1 UL7 regulating viral replication and pathogenicity
論文タイトル(訳)
進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ
DOI
10.1128/jvi.00200-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
オミクス解析の進展により、生物学は“データ不足”から“候補過剰”の時代へ移行しつつある。本研究は、Simplexvirus属における進化的保存性を利用することで、膨大なHSV-1リン酸化情報から機能的重要性の高い修飾部位を効率的に抽出できる可能性を示した。進化情報とリン酸化プロテオーム情報を統合する本アプローチは、ビッグデータ時代における効率的な生命機能探索戦略として発展することが期待される。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)タンパク質には多数のリン酸化部位が同定されているが、その大部分の機能的意義は不明なままである。本研究では、リン酸化プロテオーム情報とSimplexvirus属におけるアミノ酸保存性を統合した抽出戦略を構築し、機能的重要性が高いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、UL7 Tyr-89に着目し解析を行ったところ、リン酸化模倣変異はUL7欠損変異と類似して、ウイルス粒子形成、培養細胞での増殖、さらにマウス中枢神経系および眼における病原性を低下させた。一方、非リン酸化変異は培養細胞や眼では大きな影響を示さず、中枢神経系でのみHSV-1増殖と病原性を低下させた。これらの知見より、UL7 Tyr-89リン酸化は組織特異的にUL7機能を微調整する抑制性スイッチとして働くことが示唆された。本研究で採用した進化情報に基づく抽出戦略は、HSV-1タンパク質における機能的リン酸化部位の効率的な同定に寄与することが期待される。

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2026/05/12

ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する

論文タイトル
A phage-derived reconfigurable effector associated with an actinobacterial contractile nanomachine tailors bacterial responses to competition
論文タイトル(訳)
ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する
DOI
10.1128/jb.00532-25
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Ahead of Print
著者名(敬称略)
永久保 利紀 他
所属
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系/高等研究院/MiCS
ライデン大学 客員研究員
著者からのひと言
この論文では、何らかのきっかけで細菌のゲノムに残された「ウイルスの残骸」がその細菌の役に立っていることを示しています。「ウイルスの残骸」はその機能を容易に改変可能なタンパク質のモジュール構造に落とし込み、細菌が外部から受ける選択圧への柔軟な対応を可能にすることで、自らを保持する細菌の繁栄に貢献しその存在を維持している可能性があります。その機能中枢が、ウイルスの感染機構に由来していると思われる点も注目されます。

抄訳

収縮性注入機構(CISs)は、ファージ尾部から派生したナノマシンであり、細菌を中心とした原核生物に広く分布している。CISsはエフェクターと呼ばれる特定のタンパク質を格納し、様々な生物学的プロセスを仲介するエフェクターを射出する。本研究では、ファージの感染機構の一部から派生した新規エフェクター群の発見について報告する。CISsが最も高度に保存されている細菌群である放線菌のモデル種Streptomyces lividansにおいて、細胞内CISの一種であるSLPのエフェクターSle1が同定された。Sle1はSLPに格納され、S. lividansの細胞膜関連プロテオーム画分の割合を増加させ、最終的に細菌間競争に対する本菌の適応を促す。Sle1ホモログは放線菌において広く分布している。以上の結果は、ファージの感染機構が細菌によって環境適応を補助する因子として取り込まれてきたことを示唆している。

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