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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/05/01

ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見

論文タイトル
Factors contributing to the frequent interspecies transmission of G4P[6] Rotavirus alphagastroenteritidis
strains from pigs to humans in Vietnam: molecular epidemiological insights
論文タイトル(訳)
ベトナムにおけるブタ由来G4P[6]ロタウイルス株のヒトへの頻回な種間 伝播に寄与する要因:分子疫学的解析からの知見
DOI
10.1099/mgen.0.001685
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 4
著者名(敬称略)
金子 美穂 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染分子解析学分野
著者からのひと言
ロタウイルスA(RVA)は、小児における重症胃腸炎の主要な原因の一つであり、動物由来株のヒトへの種間伝播が報告されている。本研究では、ヒトとブタの双方で検出されるP[6]遺伝子型VP4に着目した。P[6]のアミノ酸特性と宿主糖鎖との相互作用との関連を示した点は、ウイルスの宿主適応機構の理解に重要な示唆を与える。また、動物由来株が比較的高頻度でヒトへ種間伝播しているにもかかわらず、持続的なヒト-ヒト間伝播には至っていないことから、ヒト宿主への適応には追加的な遺伝的要因が必要である可能性が示された。本研究の成果は、動物由来ロタウイルスの進化およびヒト適応機構の理解を深めるとともに、感染対策やワクチン開発に向けた基盤的知見を提供する。

抄訳

アジアの一部地域では、ブタ由来ロタウイルス(RVA)、特にG4P[6]株がヒトから比較的高頻度で検出されている。本研究では、ベトナム小児から検出されたG4P[6]株の起源と高頻度検出の要因を分子疫学的に解析した。2年間に収集したRVA陽性糞便1,252検体中28検体(2.2%)がG4P[6]株単独感染に起因し、23株の全ゲノム解析により、いずれもヒトRVAとのリアソートメントを伴わないブタ由来株と確認された。一部のG4P[6]株に全ゲノムが一致するクラスターが認められ、限定的なヒト-ヒト間伝播の可能性が示唆された一方、多くの株は遺伝的に異なっており、ブタからヒトへの複数回の独立した種間伝播が推測された。さらに系統解析から、本研究株を含むブタ様RVAのP[6]は典型的ヒトRVAのP[6]とは遺伝的に異なり、それぞれのP[6]株の検出頻度には地理的差異が認められた。加えて、アミノ酸配列解析によりブタ様P[6]に特徴的な残基が同定され、一部は既知のヒト細胞表面糖鎖への結合部位に対応していた。以上より、本事例は持続的なヒト-ヒト間伝播株の出現ではなく、頻回な種間伝播に起因すると考えられ、ブタ様P[6]のアミノ酸特性が種間伝播を促進し得る可能性が示された。

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2026/04/30

quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ

論文タイトル
quickARSC: standalone package and web interface for profiling elemental stoichiometry of proteomes
論文タイトル(訳)
quickARSC: プロテオームの元素組成を解析するためのツールとWebページ
DOI
10.1128/mra.00031-26
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Ahead of Print
著者名(敬称略)
西野 聡 吉澤 晋 他
所属
東京大学 大気海洋研究所 海洋生態系科学部門(微生物)
著者からのひと言
詳細はGitHub Wikiをご確認ください。
https://github.com/stsnsn/quickARSC/wiki 

抄訳

本稿では、原核生物の塩基配列またはアミノ酸配列のFASTAファイルから元素組成指標(ARSC)を計算するコマンドラインツール quickARSC を紹介する。quickARSCでは、タンパク質またはプロテオームの窒素、炭素、硫黄組成指標を算出可能である。本ツールはgz圧縮済みファイルや並列計算に対応しており、パイプなどを用いてシームレスにUNIXコマンドと接続できる。
併せて、FASTAファイルをアップロードすることでこれらの指標を計算可能なWebページを公開した。このページではGenome Taxonomy Database r226.0に登録されている143,614種の代表原核生物プロテオームにおける事前計算済みデータも提供している。ユーザーはGUI操作のみでこれらの情報を検索・取得可能である。

 

 

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2026/04/21

Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる

論文タイトル
Alternative microexon splicing code for a four-amino acid peptide of PTPRD governs behavioral development
論文タイトル(訳)
Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択的スプライシングコードが行動発達の鍵をにぎる
DOI
10.1073/pnas.2515310123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.15 e2515310123
著者名(敬称略)
今井彩子 吉田知之 他
所属
富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座

抄訳

マイクロエクソンは3~27ヌクレオチドから構成され、神経細胞で選択的に利用されることから神経系のタンパク質の機能を修飾する微小ゲノム素子として近年、注目されている。本研究ではシナプスの形成と再編を担う細胞接着タンパク質(シナプスオーガナイザー)をコードするPtprd遺伝子のもつ3つのマイクロエクソンの調節機構とその生理的な意義に注目した。これらのマイクロエクソンの選択的スプライシングは遺伝的なプログラムと環境依存的なプログラムに従って脳内で時空間的に調節されることがわかった。3つのマイクロエクソンのうちの1つは僅か4アミノ酸のペプチドをコードし、この遺伝的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスでは感覚、運動、情動、社会性など広範な行動に大きな異常が観察された。一方、環境依存的な選択的スプライシングプログラムを欠失したマウスはある種の学習と記憶ができなくなった。本研究からシナプスオーガナイザータンパク質内の僅か4アミノ酸のペプチドの使い方が行動の発達を大きく左右することが示された。今回の知見は、精神疾患や神経発達障害の発病機構の解明、さらには高度で複雑なヒトの脳機能や個性を作り出す仕組みの解明に繋がるものとして期待される。

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2026/04/15

メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する

論文タイトル
Three cholecystokinin receptors differentially regulate reproduction, digestion, lipid metabolism, and growth in medaka
論文タイトル(訳)
メダカにおける3種のコレシストキニン受容体は、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ制御する
DOI
10.1530/JOE-25-0353
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JOE-25-0353
著者名(敬称略)
村下 幸司 他
所属
福井県立大学 海洋生物資源学部 先端増養殖科学科
著者からのひと言
本研究は、メダカをモデルとして3種のコレシストキニン(Cck)受容体が、生殖、消化、脂質代謝および成長をそれぞれ異なって制御することを明らかにした。特に、Cck受容体が脂質代謝や体成長の調節に関与することを示した初めての報告であり、Cckの生理機能を従来の枠組みから拡張するものとなる。

抄訳

コレシストキニン(Cck)は、消化、摂食および生殖の制御に関与する多機能ペプチドホルモンである。本研究では、メダカ(Oryzias latipes)において3種のCck受容体遺伝子(cck1r、cck2ra、cck2rb)が欠損したノックアウト系統を作製し、それぞれの生理機能を解析した。cck1r欠損魚では消化酵素分泌の低下と成長遅延が認められ、消化制御および初期成長における重要性が示された。cck2ra欠損魚では軽微な生殖能の低下と脂質蓄積の増加が観察された。一方、cck2rb欠損魚では雌の不稔、顕著な脂質蓄積および成熟期以降の成長促進が認められた。さらに網羅的遺伝子発現解析により、脂質代謝および成長制御における各受容体の機能特異性が支持された。

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2026/04/14

Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定

論文タイトル
Identification of the C9-hydrogenase for 9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) and the 7α-dehydratase essential for initiating β-oxidation of the B-, C-, and D-rings in steroid degradation by Comamonas testosteroni TA441
論文タイトル(訳)
Comamonas testosteroni TA441株のステロイド分解においてBCD環のベータ酸化開始に必須な酵素9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acid (9,17-DOHNA) のC9-hydrogenase、および7α-dehydrataseの同定
DOI
10.1128/aem.02331-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
堀之内 正枝
所属
理化学研究所Kim表面界面科学研究室
著者からのひと言
細菌による好気的ステロイド分解の分解経路および関連遺伝子の大半は長らく不明であり、TA441株を用いた一連の研究で初めてステロイド骨格の分解がほぼ明らかになったものの、細菌がこの分解系を持つメリット、この分解系の環境中での役割についてはまだ不明である。その解明にはより広範囲の分解細菌の解析が必要だが、遺伝的に遠い細菌では酵素のアミノ酸配列の相同性も低くなる。立体構造での検索が可能になれば、新たな一面が見えてくるかもしれない。

抄訳

Comamonas testosteroni TA441株は、ステロイド骨格の分解経路が最も詳細に解明されている、好気的ステロイド分解細菌のモデル株である。TA441株と同様の分解経路は、他のプロテオバクテリアや結核菌などの放線菌を含む幅広い属の細菌に存在する。本研究では新たにCD環開裂に必須なhydrogenase(ScdB)およびdehydratase(ScdH)を同定した。AlphaFoldによるモデリングでは、TA441株のステロイド分解に関わるhydrogenaseのうち5種がScdBと類似構造をとる事が示され、ScdHは、BCD環の分解に関与するScdYおよびScdNと同様のホモヘキサマー構造を形成すると予測された。同様に他の酵素も解析した結果、TA441のC12βdehydrataseが、アミノ酸配列のidentityが約28%しかないClostridium scindensの胆汁酸7α dehydratase BaiEと強い構造的類似性を示すことが明らかになった。

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2026/04/09

変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子

論文タイトル
Phenotypic characterization of signature-tagged mutants identifies physiological determinants of Vibrio vulnificus fitness
論文タイトル(訳)
変異株の表現型解析から明らかになったVibrio vulnificusの宿主体内適応因子
DOI
10.1128/aem.02505-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
山﨑 浩平 柏本 孝茂 他
所属
北里大学 獣医公衆衛生学研究室
著者からのひと言
短時間内に宿主体内で増殖し、重篤な病態へと陥れるNSTI起因菌の病原性の基礎には、宿主環境への適応とそれを制御する遺伝子群が有機的繋がりを持って機能しており、毒素等の古典的因子による病原性の発揮を支えていることが明らかとなった。この発見は、NSTI起因菌による、迅速な組織侵襲機構を説明し得るものであると共に、細菌の病原性研究に、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

抄訳

Vibrio vulnificusは、ヒトへの感染後、極めて短期間のうちに壊死性軟部組織感染症(NSTI)や敗血症を引き起こす。本研究では、本菌が宿主体内での増殖に必要とする遺伝子群を網羅的に同定した。同定した37遺伝子の変異株について、マウスNSTIモデルにおける増殖能、運動性、莢膜形成、および好中球抵抗性などの表現型を解析した。 その結果、本菌の生体内増殖は、運動性、細胞内シグナル制御、代謝、およびストレス耐性等の生理機能に強く依存していることが明らかとなった。特に、莢膜や細胞傷害性といった従来の「病原因子」とは独立して、宿主環境への適応に直接寄与する制御・代謝関連因子が多数見出された。 
本研究の結果は、V. vulnificusが代謝を含む生理機能をダイナミックに変化させて宿主環境に適応し、病原因子の時空間制御に繋げることで、迅速な組織侵襲を可能にしていることを示している。これは、細菌の病原性を「毒素の有無」という従来の枠組みから解き放ち、「生理機能と病原性の統合的理解」という新たな解析基盤を提供するものとなった。

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2026/04/08

アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定

論文タイトル
Identification of two Wolbachia genes with cell proliferation-inhibitory activity in Ostrinia cultured cells
論文タイトル(訳)
アワノメイガ培養細胞において細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子の同定
DOI
10.1128/mbio.00074-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
勝間 進 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 昆虫遺伝研究室
著者からのひと言
ボルバキアは蚊を介したウイルス等の媒介抑制などにおいて、応用上重要な細胞内共生細菌です。さらには、宿主の性や生殖を操作するという点で、基礎生物学的にも注目されています。一方、感染・移植技術や遺伝子操作法が確立していないことから、その遺伝子機能の解析はあまり進んでいません。本研究はアワノメイガとそれに感染するオス殺しボルバキアを対象に、培養細胞を利用した機能解析例を報告したものになります。ボルバキア研究の発展に貢献できれば幸いです。

抄訳

細胞内共生細菌であるボルバキアは、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っています。基礎生物学的にも応用上も重要な共生細菌ですが、ボルバキア遺伝子の機能解析については非常に遅れています。その理由としては、確立した移植方法がないこと、そして遺伝子操作法が存在しないことが挙げられます。本研究では、アワノメイガにおいてオス殺しを引き起こすボルバキア(wFur)とアワノメイガ由来の培養細胞を用いて、ボルバキア移植方法を構築しました。その結果、非感染細胞へのwFur移植が細胞毒性を伴う細胞増殖抑制を引き起こすことがわかりました。さらに、wFur遺伝子を非感染アワノメイガ培養細胞で発現させる発現スクリーニングによって、w52w75と名付けた細胞増殖抑制活性を示すボルバキア遺伝子を発見しました。これら2つの遺伝子はwFur感染におけるアワノメイガの細胞増殖抑制に関与している可能性が考えられます。

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2026/04/02

Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda

論文タイトル
Reclassification of the genus Dysgonomonas and description of Dysgonomonas reticulitermitis sp. nov. and Viscerimonas tarda gen. nov., sp. nov. from the gut of the subterranean termite Reticulitermes speratus
論文タイトル(訳)
Dysgonomonas属の再分類およびシロアリ腸内から分離された新種Dysgonomonas reticulitermitisならびに新属・新種Viscerimonas tarda
DOI
10.1099/ijsem.0.007031
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 1
著者名(敬称略)
高橋 一樹 坂本 光央 他
所属
理化学研究所 バイオリソース研究センター(BRC)微生物材料開発室 (JCM)
著者からのひと言
腸内や環境中で注目されるDysgonomonas属の分類学的曖昧さに真正面から取り組み、ゲノム指標と生理学的特性を統合して再定義した点が本研究の大きな魅力である。属レベルの再編成に加え、新属・新種の提案により、本群の多様性と進化的関係に新たな視点を提供し、今後の機能解析や生態学研究の基盤を大きく前進させる重要な成果といえる。

抄訳

2000年に設立されたDysgonomonas属はBacteroidales目に属し、現在9種が知られるが、その分類基準は十分に整理されていない。本研究ではコアゲノム系統解析、平均アミノ酸同一性、保存タンパク質割合などのゲノム指標と生理学的特性に基づき再評価を行った。その結果、本属は少なくとも3つの属レベル系統群に分かれることが示され、Dysgonomonas(狭義)、新属Indolivaga、新属Pseudodysgonomonasを提案した。さらにシロアリ腸内から分離した2株について、1株はDysgonomonas属の新種、もう1株は新属・新種Viscerimonas tardaとして提案した。

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2026/03/31

ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析

論文タイトル
Efficacy and Safety of Stent-Assisted Coiling with Low-Profile Visualized Intraluminal Support versus Neuroform Atlas for Unruptured Internal Carotid Aneurysms: A Propensity Score–Matched Analysis
論文タイトル(訳)
ステント併用コイル塞栓術におけるLVISステントとNeuroform Atlasステントの有効性・安全性比較:未破裂内頸動脈瘤に対する傾向スコアマッチング解析
DOI
10.3174/ajnr.A9034
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
March 2026, 47 (3) 671-677
著者名(敬称略)
長山 剛太 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科

抄訳

ステント併用コイル塞栓術(SAC)は広頸の未破裂脳動脈瘤に広く用いられているが、異なるステント間の直接比較データは乏しい。本研究は、直径10mm未満の未破裂内頸動脈(ICA)動脈瘤を対象に、編み込み型のLVISステントとオープンセル型のNeuroform Atlasステントの安全性・有効性を比較検討した。 3施設において2017年から2023年の間にSACを施行した247名・287病変を対象に後方視的解析を行い、傾向スコアマッチングにより各群46例ずつを抽出した。術後1年時点での完全閉塞率(Raymond class I)は、**LVIS群52%に対してAtlas群24%**と、LVIS群が有意に高率であった(P=.007)。術直後の完全閉塞率および体積塞栓率(VER)もLVIS群で有意に優れていた。一方、虚血・出血性合併症、再開通率、再治療率は両群間で差を認めなかった。 以上より、10mm未満の未破裂ICA動脈瘤においてLVISステントは、周術期合併症を増加させることなく、Neuroform Atlasと比較して有意に高い完全閉塞率を達成することが示された。

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2026/03/30

カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築

論文タイトル
Establishment of an in vivo-based assay using a silkworm infection model for phenotypic evaluation of antimicrobial drug combinations against Mycobacterium abscessus
論文タイトル(訳)
カイコ感染モデルを用いたMycobacterium abscessusに対する抗菌薬併用効果のin vivo評価系の構築
DOI
10.1128/aac.01665-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
八木 瑛穂 内田 龍児 他
所属
東北医科薬科大学 薬学部天然物化学教室
著者からのひと言
本研究では、カイコM. abscessus感染モデルを用いて、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的かつ網羅的に評価可能なin vivo評価系を確立しました。従来のin vitro評価では捉えきれなかった薬剤間相互作用を、用量依存的に可視化できる点が特徴です。さらに、in vivo評価指標であるFEDIを導入し、相乗・拮抗作用を定量的に判定可能としました。本手法は、抗菌薬併用療法の合理的設計に資する新たな評価基盤となることが期待されます。

抄訳

非結核性抗酸菌Mycobacterium abscessusは高度な薬剤耐性を示し、治療には多剤併用療法が不可欠であるが、併用効果の評価は主にin vitro系に依存している。本研究では、カイコ(Bombyx mori)感染モデルを用い、抗菌薬併用効果を生体レベルで定量的に評価可能なin vivo表現型評価系を構築した。本評価系では、複数用量の組み合わせを網羅的に検討することで、用量依存的な薬剤間相互作用を生存率に基づいて評価できる。さらに、in vivoにおける併用効果を定量化する指標としてfractional effective dose index(FEDI)を導入し、相乗・拮抗作用の判定を可能とした。クラリスロマイシン+アミカシンにおける拮抗作用およびイミペネム+セフォキシチンにおける相乗効果は、既報のin vitro結果と同様の傾向を示し、本評価系の有用性が示された。本手法は倫理的負担が少なく、哺乳類モデルでは困難な多数条件の系統的評価を可能とすることから、抗菌薬併用療法の最適化および前臨床段階における有用な評価基盤となることが期待される。

 

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2026/03/30

日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見

論文タイトル
Thirteen-Year Trends and Advancements of Endovascular Therapy for Dural Arteriovenous Fistulas in Japan: Insights from a Nationwide Study of 6470 Procedures
論文タイトル(訳)
日本における硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の13年間の変遷と発展:全国6470例から得られた知見
DOI
10.3174/ajnr.A8840
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
November 2025, 46 (11) 2273-2278
著者名(敬称略)
村井 智 他
所属
川崎医科大学 脳神経外科
著者からのひと言
本論文は、全国6470件という大規模データを用いて、日本の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の進歩を明らかにした点が大きな特徴です。Onyx®などの導入により治療成績が向上した一方で、安全な普及には指導医の関与が重要であることも示しました。新しい技術の恩恵を最大限に活かすには、教育体制の充実も不可欠である伝える意義深い報告です。

抄訳

頭蓋内硬膜動静脈瘻は比較的まれな疾患であるが、静脈梗塞やくも膜下出血を引き起こすことがある。本研究では日本脳神経血管内治療学会の全国レジストリー (JR-NET)に登録された2007年から2019年の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療6470例を解析し、治療方法や治療成績の変化を検証した。その結果、Onyx®などの析出型液体塞栓物質が導入されたことで、従来は直達手術が行われることの多かったテント部や前頭蓋窩の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療の件数が約5倍に増加し、経動脈的塞栓術の完全閉塞率も有意に向上した。一方で、これらの新しい塞栓物質の使用は合併症リスクとも関連していたが、学会認定指導医による監督下で治療を行うことで、そのリスクが低減されることも示された。

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2026/03/30

シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
 

論文タイトル
Intrinsic period stability of the cyanobacterial circadian oscillator across in vitro and in vivo conditions
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアの体内時計の周期は、試験管の中でも細胞の中でも、高い精度で安定している
DOI
10.1073/pnas.2526714123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2526714123
著者名(敬称略)
三輪 久美子 他
所属
大阪大学 生命惑星進化学グループ
著者からのひと言
本研究は、約25年にわたり、故近藤特別教授の研究室でこつこつと積み重ねてきた成果です。実験で、シアノバクテリアの細胞内や試験管内のとてもきれいなリズムを見るたびに、1ミリメートルの500分の1程度しかない小さな微生物の中に、これほど正確な時計を生み出す仕組みがあるという事実に、いつも驚かされます。

抄訳

多くの生物は昼夜の環境変化に適応するため、約24時間周期の体内時計を備えています。体内時計は気温や光が変わっても周期がほとんど変わらず、高い精度で保たれることが知られています。シアノバクテリアの体内時計は試験管内で再現することができ、3つの時計タンパク質(KaiC、KaiA、KaiB)を試験管の中で混合すると、KaiCの活性が約24時間周期のリズムを示します。しかし、細胞内では遺伝子の働きも関わるため、時計の正確さを決めているのがタンパク質か細胞全体かは長年の課題でした。本研究では、細胞内と試験管内のリズムを比較し、時計の精度がKaiCという単一タンパク質の性質に備わっていることを明らかにしました。さらに、細胞内では周期がわずかに調整され、地球の昼夜のリズムに近づく可能性も示されました。これらの結果は、生物が正確に時間を刻む仕組みの理解を大きく前進させるものです。

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2026/03/25

インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する

論文タイトル
N-glucosylation of indole-3-acetyl amino acids modulates auxin metabolism and growth traits in Oryza sativa
論文タイトル(訳)
インドール酢酸アミノ酸結合体のN-グルコシル化は、イネにおけるオーキシン代謝と成長形質を調節する
DOI
10.1073/pnas.2527570123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.12 e2527570123
著者名(敬称略)
善治 杏菜, 秦 毅実彦, 瀬上 紹嗣, 榊原 均 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 植物情報分子研究室
著者からのひと言
本研究では、オーキシン代謝にこれまで見落とされていた「分岐経路」を見出し、成長ホルモンの働きを支える新しい調節概念を提示しました。代謝中間体の行き先が環境応答や形質に影響することを示した点は、基礎科学として重要であると同時に、作物の適応性や肥料利用効率の改良にもつながる知見です。ホルモン代謝の再解釈を通じて、植物の成長制御の理解を一歩進めた成果と考えています。

抄訳

植物ホルモンであるオーキシン(インドール酢酸、IAA)は、根や穂の形成など作物の成長と収量を左右する重要な因子である。本研究では、イネにおいてIAAのアミノ酸結合体に糖を付加する酵素IAAspGTを同定し、オーキシン代謝に新たな分岐経路が存在することを明らかにした。IAAはアミノ酸結合後に酸化反応により不可逆的に不活性化されるが、本酵素はアミノ酸結合体を酸化される前にN-グルコシル化することで、再利用可能な安定な代謝プールへと変換する機能を持つ。さらに、この酵素活性には品種間差が存在し、高活性型対立遺伝子は低栄養条件下での根系発達や穂への同化産物配分に影響を与えることが示された。本成果は、オーキシン代謝の新たな制御機構を提示するとともに、環境適応性や肥料利用効率に優れた作物育種への応用可能性を示すものである。

 

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2026/03/24

未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較

論文タイトル
Feasibility and Safety of 8F Guiding Catheter Navigation in Transradial Neurointervention for Unruptured Intracranial Aneurysms: A Propensity Score–Matched Comparison of Sheath-Based versus Sheathless Approaches
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤に対する経橈骨動脈アプローチにおける8Frガイディングカテーテル誘導の実現可能性と安全性:シース併用法とシースレス法の傾向スコアマッチング比較
DOI
10.3174/ajnr.A8987
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
February 2026, 47 (2) 363-370
著者名(敬称略)
府賀 道康 他
所属
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科
著者からのひと言
経橈骨動脈アプローチでは、大口径デバイス使用時の安全性が常に課題となります。本研究は、未破裂脳動脈瘤治療における8Frガイディングカテーテル使用時に、8Frシース併用がシースレス法と比べて橈骨動脈閉塞や攣縮を抑えつつ、成功率や他の合併症を損なわない可能性を示しました。TRAの実践を一歩前進させる知見です。

抄訳

近年、脳血管内治療では、穿刺部合併症の少なさや患者負担の軽減から、経橈骨動脈アプローチ(TRA)が広く用いられている。一方、8Frのような大口径デバイス使用時には、橈骨動脈閉塞や攣縮などのアクセス部合併症が懸念されるため、挿入システム全体の外径を抑える目的でシースレス法が選択されることも多い。しかし、8Frシース併用法とシースレス法を直接比較した検討はこれまで限られていた。本研究では、未破裂脳動脈瘤に対して8Frガイディングカテーテルを用いてTRAで治療した症例を後方視的に解析し、8Frシース併用群とシースレス群を比較した。傾向スコアマッチ後の解析では、手技成功率に有意差を認めなかった一方、シース併用群では橈骨動脈閉塞および橈骨動脈攣縮の発生率が有意に低かった。アクセス部・非アクセス部合併症の増加も認めず、未破裂脳動脈瘤に対するTRAにおいて、8Frシース併用は実行可能かつ安全であり、適切な症例では有用な選択肢となる可能性が示された。

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2026/03/18

脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化

論文タイトル
Digital FDG-PET Detects MYD88 Mutation-Driven Glycolysis in Primary CNS Lymphoma
論文タイトル(訳)
脳悪性リンパ腫の遺伝子異常を最新型の半導体PET画像で可視化
DOI
10.3174/ajnr.A8935
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
January 2026, 47 (1) 117-125
著者名(敬称略)
佐々木麻結 立石 健祐 他
所属
横浜市立大学脳神経外科
著者からのひと言
本研究では、dFDG-PETにおけるFDG集積の亢進が、MYD88遺伝子変異に関連する明確な神経画像学的特徴として同定されました。この知見は、PCNSLにおける画像検査を用いた遺伝学的分類を支援するツールとして、dFDG-PETが有する潜在的な有用性を示唆するものであり、また今後の個別化治療戦略への応用が期待されるところです。

抄訳

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)におけるFDG-PET所見と糖代謝関連遺伝子異常との関連は十分に解明されていない。本研究では、解糖系活性を促進する主要な遺伝子異常であるMYD88変異を、半導体PETにより非侵襲的に検出可能か検討した。PCNSL 54例(55病変)を対象に、SUVmaxおよび腫瘍対背景比(TBR)とMYD88変異との関連を解析した。その結果、半導体FDG-PETではMYD88変異例でSUVmaxおよびTBRが有意に高値を示し、TBRは高い診断能(AUC=0.913)を示した。多変量解析でも両指標は独立した予測因子であった。さらにトランスクリプトーム解析により、MYD88変異例で解糖系関連遺伝子の発現亢進が確認された。以上より、半導体FDG-PETはMYD88変異に伴う代謝亢進を反映する有用な非侵襲的診断法となり得る。

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2026/03/17

単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性

論文タイトル
Geometrical preference of anchoring sites in the unicellular organism Stentor coeruleus
論文タイトル(訳)
単細胞生物ソライロラッパムシにおける固着場所の幾何選好性
DOI
10.1073/pnas.2518816123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.9 e2518816123
著者名(敬称略)
越後谷駿 西上幸範 他
所属
北海道大学電子科学研究所知能数理研究分野
著者からのひと言
ラッパムシを含む単細胞性の真核生物「原生生物」は、下水浄化を行ったり赤潮や、マラリアなどの感染症を引き起こしたりと、様々なところで活躍しています。これらのマクロな現象は、どれも個々の原生生物の行動が組み合わさり現れています。原生生物の行動はまだまだ謎に満ちており、オモシロ行動がたくさん観察されます。それらの行動が生物や環境に与える役割を解き明かしていきたいと思います。

抄訳

我々のような「目」を持っていない単細胞生物でも実は周りの形の違いに応じて棲家を選んでいることが分かりました。そんな能力を持った単細胞生物の名は「ソライロラッパムシ」。体の大きさは1 mm程、肉眼では点にしか見えない生き物ですが、普段はラッパのような形で水の中を泳ぎ、自身の棲家を探しまわっています。どのような場所を棲家として好み、どうやって選んでいるのでしょうか。
ラッパムシが生きるミクロな水環境中にはたくさんの構造物がありふれています。そこで自然界のミクロな形の複雑さ模した観察容器を使ってソライロラッパムシの行動を観察しました。その結果、すみっこを棲家として好むことが分かりました。もちろん神経系や視覚情報は持っていませんが、体の形を変化させるシンプルな機構によって探索の空間解像度を切り替え、空間中のすみっこを見つけやすくする戦略をとっていることも行動観察と行動シミュレーションから明らかになりました。

 

 

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2026/03/16

卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例

論文タイトル
Dysgerminoma of the ovary presenting as acute abdomen with intratumoural gas image: a diagnostic challenge suspected as a gastrointestinal stromal tumour
論文タイトル(訳)
卵巣未分化胚細胞腫における、腫瘍内ガス像を伴う急性腹症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-270400
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 3
著者名(敬称略)
吉田 志歩、 豊島 将文 他
所属
日本医科大学付属病院 女性診療科・産科
著者からのひと言
「腫瘍内のガス像」という、通常は消化管穿孔や感染を疑う極めて稀な所見を示した卵巣未分化胚細胞腫の症例報告である。一見、消化管疾患(GIST)と誤認しそうな画像所見が、実は茎捻転による血管内ガスの捕捉であったというメカニズムの考察は極めて示唆に富む。画像診断の落とし穴と、若年女性の急性腹症における迅速な外科的介入の重要性を再認識させる、教訓的な一報と言える。

抄訳

20代女性が急激な左下腹部痛と嘔吐で救急搬送された。身体所見で臍レベルまで達する硬い腫瘤を認め、血液検査ではLDHやALPの上昇、腫瘍マーカーであるCA125およびCA19-9の高値が確認された。AFPやhCGは正常範囲であった。造影CTでは腫瘍内に複数の線状ガス像が認められ、消化管間質腫瘍や膿瘍との鑑別が困難であったが、造影効果の欠如から卵巣茎捻転も疑われた。緊急手術の結果、360度捻転しうっ血した左卵巣腫瘍を確認し、病理検査にて卵巣未分化胚細胞腫と確定診断された。本例のガス像は、茎捻転による血管内ガスが、本腫瘍特有の構造である線維血管性隔壁に捕捉された結果であると考えられた。CTから約13時間後のMRIではガス像が消失していたことから、この現象が虚血に関連した一過性の現象と推測された。画像上、消化管疾患を疑う所見があっても、若年女性の急性腹症では卵巣腫瘍の茎捻転を念頭に置くべきである。

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2026/03/16

カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する

論文タイトル
Coupling of functionality to trafficking of KCNQ2/3 potassium channels at the axon initial segment
論文タイトル(訳)
カリウムチャネルの機能性がニューロンにおける”適材適所”の局在を決定する
DOI
10.1073/pnas.2527749123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.10 e2527749123
著者名(敬称略)
好岡 大輔 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 統合生理学教室
著者からのひと言
本研究の最も重要な点の1つは、これまで独立した別物だと考えられてきた2つの主要なチャネル制御機構—機能と局在の制御機構—を結びつける統一的な原理を明らかにしたことです。この原理は、正常な分子だけを選んで“適材適所”に配置するという「品質管理機構」がKCNQ2/3自身に備わっていることを示しています。またKCNQ2/3の異常は、てんかんをはじめとする多くの神経・精神疾患の原因となることが知られています。本研究の成果は、これら疾患の病態理解を深めるとともに、新規治療戦略の開発に有益な洞察をもたらすと期待されます。

抄訳

KCNQ2/3は神経の興奮性を決める主要な電位依存性カリウムチャネルです。ニューロンは高度に極性化した細胞のため、KCNQ2/3が神経活動に及ぼす影響はチャネル自体の機能性だけでなく、活動電位の発生部位である軸索起始部(AIS)への局在性にも左右されます。KCNQ2/3の機能性は電位感受による構造変化によって制御される一方、AIS局在はアンキリンG(ankG)という主要な足場タンパク質によって制御されています。しかし、チャネルの機能性と局在性を規定する機構の間にどのような連関が存在するのかはこれまで未解明でした。本研究では、チャネル機能の遺伝子工学的操作と、チャネルトラフィッキングの先端イメージングを組み合わせることで、KCNQ2/3の機能・局在連関を検証しました。その結果、KCNQ3の機能低下がエキソ/エンドサイトーシスや側方拡散を含むトラフィッキング経路全体に影響し、KCNQ2/3複合体のAIS局在効率を顕著に低下させることが明らかになりました。さらに、KCNQ3とankGの全長タンパク質間の相互作用を定量できる生細胞アッセイを開発し、KCNQ3の活性化コンフォメーションがankGへの安定した結合のために必須であることを解明しました。これらの結果は、神経興奮性の制御においてKCNQ2/3の機能性と局在性を統合する機構的基盤を確立します。

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2026/03/13

豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響

論文タイトル
Impact of an amino acid deletion detected in the hemagglutinin (HA) antigenic site of swine influenza A virus field strains on HA antigenicity
論文タイトル(訳)
豚インフルエンザAウイルス野外株のヘマグルチニン(HA)抗原部位におけるアミノ酸欠失がHA抗原性に及ぼす影響
DOI
10.1128/jvi.01820-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
中野 大知 小澤 真 他
所属
鹿児島大学 共同獣医学部 病態予防獣医学講座

抄訳

本研究では、日本の7農場から分離した豚インフルエンザAウイルス11株を遺伝学的に解析し、そのうち1株のH1N2ウイルスで、ヘマグルチニン(HA)の主要な抗原部位に位置する155番アミノ酸の欠失を確認した。そこで、155位に人工的な挿入または欠失を導入した組換えウイルスを作出し、培養細胞での増殖性と抗原性への影響を比較した。その結果、この欠失はイヌ腎臓上皮由来AX4細胞およびヒト肺胞上皮由来A549細胞における増殖性には大きな影響を与えなかった一方、モノクローナル抗体およびフェレット抗血清を用いた中和試験では、HA抗原性を顕著に変化させた。さらに、立体構造予測ではHA全体の大きな構造変化は示されず、局所的な抗体認識の変化が主因である可能性が示唆された。以上より、豚インフルエンザAウイルスは、1アミノ酸の欠失でも免疫逃避に関わる可能性があり、ブタ集団における流行株の継続的監視が重要であることが示された。

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2026/03/13

表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 

論文タイトル
Pleiotropic roles of elongation factor P in Bacillus subtilis physiology revealed by phenotypic and multi-omics analyses
論文タイトル(訳)
表現型解析とマルチオミクス解析が明らかにした伸長因子Pの枯草菌生理機能における多面的な役割 
DOI
10.1128/spectrum.03142-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
小倉 光雄 他
所属
東海大学 海洋研究所
著者からのひと言
TranscriptomeとProteomeは、直感的には大体一致するものと思われてきたが、本研究では、検出された遺伝子とタンパク質の量的変化はかなり異なっていた。つまり、転写制御はもちろん第一義的に重要だが翻訳水準でもかなりの制御が行われていることがわかる。もちろんその解析はこれからの点が多いのだろうが、本研究のような網羅的、枚挙的な研究がその一助になれば良いと思う。

抄訳

枯草菌ECFシグマ因子sigXのグルコースによる発現誘導(GI)の阻害因子としてefp変異を同定した。伸長因子P (EF-P)は全生物に保存されており、タンパク質のXPPX配列におけるリボソーム停止を緩和する。efp変異体でのproteome変化を明らかにするため、iTRAQ解析を実施した。翻訳への影響を評価するには、mRNAあたりのタンパク質量を決定する必要があるから、RNA-seq実験も行った。iTRAQでは2187タンパク質を検出し、XPPXモチーフを含む84タンパク質の翻訳量減少を観察した。その結果efp変異による主要シグマ因子SigA とRNAPサブユニットRpoBとRpoCの減少をWestern解析やiTRAQで観察した。すなわち、RNAPコアをめぐる各シグマ因子の競争に変化が起こり、sigXのGIも影響されたと考えられる。さらに、鞭毛構成成分FliYとMotBの減少は運動性を欠損させ、チオレドキシンTrxAの減少は耐熱性を喪失させた。また、マンガン輸送体MntGの減少は低温下での成長に必要なマンガンの要求量を変化させた。この論文でefp変異によるトランスクリプトームとプロテオーム間の複雑な相互作用に光を当てた。

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