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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/08/06

カンピロバクターの相変異型安定化ライブラリーを用いた相変異遺伝子機能の包括的解析

論文タイトル
Genome-scale dissection of phase-variable gene function in Campylobacter jejuni using a stabilized phasotype library.
論文タイトル(訳)
カンピロバクターの相変異型安定化ライブラリーを用いた相変異遺伝子機能の包括的解析
DOI
10.1128/msphere.00064-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere 11:e00064-26
著者名(敬称略)
山本 章治 他
所属
国立感染症研究所 細菌第一部
著者からのひと言
カンピロバクターが相変異を介して免疫や宿主環境に適応する仕組みを、再現性高く追跡できるようにした。宿主ごとに選ばれる相変異型を捉えることで、病原性の理解を深め、感染対策の新たな標的探索を加速する。

抄訳

食中毒の主要起因菌カンピロバクターは、単純反復配列の変化を介して、表層構造に関わる遺伝子の発現をランダムにON/OFFへ切り替える「相変異」により、免疫回避や宿主環境への適応を行う。こうした適応は、複数の相変異遺伝子のON/OFF組合せ(相変異型)に左右されるが、相変異は確率的に起こるため、機能解析は困難だった。本研究では、多数の相変異遺伝子のON/OFF状態を固定して多様な相変異型からなるライブラリーを構築し、選択圧に応じて優勢となる相変異型の変化を安定的かつ体系的に解析できる技術「PV-GenShift」を確立した。ヒト血清、マウス腸管、ニワトリ腸管での選択実験により、血清抵抗性やマウス定着には、莢膜多糖の修飾に関わる遺伝子を含む特定の相変異型が有利に働くことを示した。一方、ニワトリでは個体ごとに異なる相変異型がみられた。本技術は、相変異型と適応力の関係を解明し、ワクチン、診断・治療法の開発に貢献すると期待される。

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2026/08/05

新規抗真菌化合物NPD2560はRho1を中心とするシグナルネットワークを攪乱し、細胞壁ストレス応答を誘導する

論文タイトル
The novel antifungal agent NPD2560 perturbs the Rho1-centered signaling network to induce a cell wall integrity response.
論文タイトル(訳)
新規抗真菌化合物NPD2560はRho1を中心とするシグナルネットワークを攪乱し、細胞壁ストレス応答を誘導する
DOI
10.1128/spectrum.03630-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e03630-25
著者名(敬称略)
劉 薇、大矢 禎一 他
所属
長岡技術科学大学 技術科学イノベーション系
著者からのひと言

抄訳

真菌感染症の増加や薬剤耐性の出現により、新しい作用機序をもつ抗真菌剤の開発が求められています。本研究では、クマリン誘導体NPD2560が、治療の難しい病原真菌Candida kruseiに対して殺菌作用を示すことを見いだしました。出芽酵母を用いた網羅的な化学遺伝学解析から、NPD2560の作用には、細胞壁形成を制御する低分子量GTPase Rho1を中心としたネットワークが重要であることが明らかになりました。NPD2560処理により細胞壁のβ-(1,6)-グルカンが減少し、細胞壁ストレス応答が活性化されるとともに、キチンの蓄積を含む代償的な細胞壁再構築が誘導されました。その作用は、β-(1,3)-グルカン合成を標的とする既存の抗真菌剤や、既知のβ-(1,6)-グルカン合成阻害剤とは異なっており、本化合物は真菌細胞壁の制御機構を解析する新たな化学プローブとして、また新規抗真菌剤開発の候補化合物として期待されます。

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2026/08/04

腸炎ビブリオTsrAは核様体タンパク質H-NSの共調節因子としてⅢ型分泌装置2の発現を制御する

論文タイトル
TsrA modulates type III secretion system 2 expression as a co-regulator of H-NS in Vibrio parahaemolyticus.
論文タイトル(訳)
腸炎ビブリオTsrAは核様体タンパク質H-NSの共調節因子としてⅢ型分泌装置2の発現を制御する
DOI
10.1128/jb.00556-25
ジャーナル名
Journal of bacteriology
巻号
J Bacteriol 208:e00556-25
著者名(敬称略)
Tan Paramita Wibowo Sutanto, Andre Pratama, 松田 重輝 他
所属
大阪大学 微生物病研究所 細菌感染分野
著者からのひと言
本論文では、腸炎ビブリオの病原性遺伝子発現に関わる因子として、ビブリオ属細菌に保存されるTsrAというタンパク質に着目しました。TsrAが核様体タンパク質H-NSと相互作用することを初めて実験的に示し、ビブリオ属細菌ではこれまで知られていなかったH-NS共調節因子として機能することを明らかにしました。

抄訳

核様体タンパク質は細菌の病原性遺伝子発現制御に重要な役割を果たしている。代表的な核様体タンパク質であるH-NSは、しばしば共調節因子と協調して機能する。本研究では、ビブリオ属細菌に保存される小型タンパク質TsrAが、主要な食中毒原因細菌である腸炎ビブリオの病原因子であるⅢ型分泌装置2(T3SS2)の遺伝子発現を負に制御することを明らかにした。TsrAはC末端領域を介してH-NSと直接相互作用し、T3SS2遺伝子群のマスター転写因子であるVtrBの発現を転写レベルで抑制していた。さらに、TsrAのC末端領域の変異解析により、その調節活性に重要なアミノ酸残基を明らかにした。以上より、TsrAがH-NSの共調節因子として機能することを初めて明らかにするとともに、腸炎ビブリオにおける病原性遺伝子発現制御機構に関する新たな知見を提供した。

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2026/08/04

原子間力顕微鏡と弾性シェル理論による接着動物細胞の硬さと内部圧力の同時評価

論文タイトル
Simultaneous quantification of cell elasticity and internal pressure in adherent animal cells
論文タイトル(訳)
原子間力顕微鏡と弾性シェル理論による接着動物細胞の硬さと内部圧力の同時評価
DOI
10.1016/j.bpj.2026.06.009
ジャーナル名
Biophysical Journal
巻号
Biophysical Journal Volume 125, Issue 14 p3653-3662
著者名(敬称略)
Emi Kurnia Sari、釣 優香、細川 陽一郎 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究領域生体プロセス工学研究室
著者からのひと言
動物細胞のミクロな構造に、建築学のマクロな理論を適用し、細胞の力学を明らかにする奇抜な発想の論文です。

抄訳

本研究では、複数の動物細胞について、細胞の形状と力学応答を詳細に解析しました。その結果、動物細胞では、細胞膜とその内側を支える細胞骨格が一体となり、薄い殻(シェル)のように細胞全体を支える構造を形成していることを明らかにしました。この構造に、建築学において薄い屋根やタンクの力学解析に用いられるシェル理論を適用することで、これまで区別して評価することが難しかった「細胞膜とその裏打ち構造を合わせた表層部分の硬さ」と「細胞内部から細胞を押し広げる力(内部圧力)」を同時に評価することに成功しました。これにより、細胞の力学特性を単なる硬さとして捉えるだけでなく、その背景にある力学状態を考えることが可能になりました。今後、より多様な細胞種に本手法を適用することで、細胞骨格構造と力学特性との関係の解明が進むことが期待されます。

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2026/08/03

成人型びまん性神経膠腫の1H-MR spectroscopyによるシスタチオニンの定量的評価

論文タイトル
The Utility of Cystathionine Assessment Using Proton MRS for the Preoperative Differential Diagnosis of Adult-Type Diffuse Gliomas.
論文タイトル(訳)
成人型びまん性神経膠腫の1H-MR spectroscopyによるシスタチオニンの定量的評価
DOI
10.3174/ajnr.A9192
ジャーナル名
AJNR. American journal of neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology July 2026, 47 (7) 1869-1878
著者名(敬称略)
菊地 一史
所属
九州大学病院 放射線科
著者からのひと言

抄訳

【目的/背景】
本研究の目的は、シスタチオニンの定量的評価が成人型びまん性神経膠腫の術前鑑別に有用か検討することである。
【方法】
2019年から2025年に当院で手術前にMRIおよび1H-MRSを施行し、病理学的に成人型びまん性神経膠腫と診断された83例を後方視的に選択し、乏突起膠腫25例、星細胞腫28例、膠芽腫30例が対象となった。LCModelを用いてシスタチオニン濃度を定量し、群間比較にはボンフェロニ補正したunpaired t-test、3群全体の統計解析にKruskal–Wallis検定を用い、ROC解析により診断能を評価した。
【結果】
星細胞腫 (0.437±0.403 mM) と比較して、乏突起膠腫 (1.040±0.908 mM) ではシスタチオニン濃度が有意に高値 (P=0.0025) であった。膠芽腫 (0.538±0.796) も星細胞腫より高値を示したが、有意差はなかった。乏突起膠腫と膠芽腫の間にも有意差は認めなかった。ROC解析では、乏突起膠腫と星細胞腫の鑑別において中等度の診断能を示した (AUC 0.69、感度56%、特異度86%)。
【考察】
シスタチオニンは乏突起膠腫において、特異的に高値を示す代謝マーカーとして有用であるが、一部の膠芽腫においても増加とする報告がある。本研究でも同様の傾向が確認された。膠芽腫では壊死や微小出血によるコンタミネーションや代謝経路の変化が影響する可能性が考えられる。したがって、シスタチオニンは、成人びまん性神経膠腫において補助的な診断ツールと考えられた。
【結論】
1H-MRSによるシスタチオニン評価は、乏突起膠腫および膠芽腫と星細胞腫の鑑別に有用であり、術前診断の精度向上に寄与し得る。ただし乏突起膠腫と膠芽腫の区別には限界があり、臨床的特徴や他の画像所見と併用することが望ましい。

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2026/08/03

日本人健康被験者におけるナキュバクタムとβ-ラクタム系抗菌薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、またはピペラシリン)との薬物相互作用の評価

論文タイトル
Evaluation of drug-drug interaction between nacubactam and β-lactam antibiotic (cefepime, aztreonam, meropenem, or piperacillin) in Japanese healthy participants.
論文タイトル(訳)
日本人健康被験者におけるナキュバクタムとβ-ラクタム系抗菌薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、またはピペラシリン)との薬物相互作用の評価
DOI
10.1128/aac.00282-26
ジャーナル名
Antimicrobial agents and chemotherapy
巻号
Antimicrob Agents Chemother 70:e00282-26
著者名(敬称略)
森田 順
所属
Meiji Seika ファルマ株式会社
著者からのひと言

抄訳

日本人健康成人を対象に、ナキュバクタムと各併用薬(セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、ピペラシリン)の薬物相互作用を評価する単施設、非盲検、3期クロスオーバー単回投与試験を実施した。各期でナキュバクタムと各併用薬を60分静脈内注射し、Cmax、AUC0–t、AUC0–∞の幾何平均比と90%信頼区間で相互作用を評価した。セフェピム及びアズトレオナム併用時を含め、いずれの併用薬でもナキュバクタムおよび各併用薬の曝露は単独投与と同等で、幾何平均比の90%信頼区間はすべて0.80–1.25内で尿中排泄も同等であった。ナキュバクタム代謝物(M1/M2)はナキュバクタムに比べ低値で、併用による変動は小さかった。各β-ラクタム系抗菌薬との併用時においても安全性・忍容性は良好で、新たな安全性上の懸念は認められなかった。以上より、セフェピムおよびアズトレオナムを含めいずれのβ-ラクタム系抗菌薬との併用時に薬物相互作用は認められなかった。

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2026/08/03

エゾヤチネズミを宿主とするオルソハンタウイルスであるHokkaidoウイルスの自然環境下における感染維持機構

論文タイトル
Maintenance of Hokkaido virus, a genotype of Orthohantavirus puumalaense, in the rodent host Myodes rufocanus bedfordiae under natural conditions
論文タイトル(訳)
エゾヤチネズミを宿主とするオルソハンタウイルスであるHokkaidoウイルスの自然環境下における感染維持機構
DOI
10.1128/jvi.00321-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Vol. 100, No. 7
著者名(敬称略)
Thi Ngoc Thuy Duong 苅和 宏明 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院衛生学分野 公衆衛生学教室
著者からのひと言
 オルソハンタウイルスは、宿主となるげっ歯類から人に感染してハンタウイルス感染症を引き起こす。オルソハンタウイルスに属するHokkaido virus(HOKV)は、宿主のエゾヤチネズミにおいて、急性感染期と持続感染期のいずれの時期にも重大な病理学的変化を引き起こすことなく、多臓器にウイルスが分布し、唾液、尿、および糞便から感染性ウイルスが排出されることが明らかになった。これらの知見は、宿主におけるオルソハンタウイルスの持続感染、および伝播機序に関する理解を深めるものとして重要である。

抄訳

自然条件下におけるオルソハンタウイルスの維持および伝播のメカニズムは依然として明らかになっていない。そこで本研究では、オルソハンタウイルスの一つであるHokkaido virus(HOKV)の自然宿主となっているエゾヤチネズミを2022年から2025年にかけて北海道当別町の森林において捕獲し、HOKVの宿主体内での分布と排出について調べた。捕獲された199匹のげっ歯類のうち、23匹がHOKVに感染していた。これらの個体についてウイルスRNAと抗体の保有状況を調べたところ、5個体は急性感染期であり、18個体は持続感染期あると考えられた。Realtime PCRおよび免疫組織化学染色により、HOKVは感染の急性感染期と持続感染期のいずれの個体においても、肺、腎臓、脾臓から高レベルのウイルスRNAおよび抗原が一貫して検出された。また、感染個体の口腔スワブ、尿、糞便からも感染性のあるHOKVが回収された。これらの知見は、オルソハンタウイルスが宿主の臓器内で高いウイルス量を維持して持続感染し、感染期間を通じて排出され得ることを示している。

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2026/07/31

難治性末梢性T細胞リンパ腫非特定型に対し、ゲムシタビン単剤が同種造血幹細胞移植への橋渡しとなった1例

論文タイトル
Single-agent gemcitabine enabling successful bridging to allogeneic haematopoietic stem-cell transplantation in refractory peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified
論文タイトル(訳)
難治性末梢性T細胞リンパ腫非特定型に対し、ゲムシタビン単剤が同種造血幹細胞移植への橋渡しとなった1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268692
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
北川 智也 他
所属
関西電力病院 血液内科

抄訳

末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)は不均一性が高く、再発・難治例の予後は不良です。本症例は20歳代男性で、brentuximab vedotin併用CHP療法、SMILE療法、pralatrexate療法のいずれにも抵抗性を示しました。その後、ゲムシタビン単剤療法により不確定な完全寛解(CRu)が得られ、骨髄非破壊的処置による同種造血幹細胞移植へ移行することができました。移植後36か月時点でも再発なく経過しています。また、治療経過を通じて白血球/リンパ球比(LLR)が病勢と概ね並行して推移しており、簡便な補助的指標となる可能性が示唆されました。本症例は、難治性PTCL-NOSにおいて、ゲムシタビン単剤が毒性を抑えつつ移植への橋渡し治療となり得る可能性を示すものです

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2026/07/31

光合成酸素発生系における脂肪族アミノ酸からカルボキシレート配位子の翻訳後生成

論文タイトル
Posttranslational generation of carboxylate ligands from aliphatic side chains in the photosynthetic oxygen-evolving complex
論文タイトル(訳)
光合成酸素発生系における脂肪族アミノ酸からカルボキシレート配位子の翻訳後生成
DOI
10.1073/pnas.2610028123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2610028123
著者名(敬称略)
水江 初音 野口 巧 他
所属
名古屋大学大学院理学研究科物理科学領域
著者からのひと言
光合成による酸素発生は、太古の地球環境を大きく変え、生命の進化に大きな影響を与えました。この酸素発生を担う光化学系Ⅱにおける酸素発生系が、脂肪族アミノ酸をはじめとする様々なアミノ酸から、触媒中心であるマンガンクラスターのカルボキシレート配位子を翻訳後修飾によってタンパク質レベルで生成する能力を有することが明らかとなりました。この能力は、24億年以前に起こった光合成酸素発生の起源と進化に重要な役割を果たしたと考えられます。

抄訳

光合成酸素発生は、光化学系Ⅱの酸素発生系に存在するMn4CaO5クラスターによって触媒される。この反応は約24億年前の大酸化イベント以前に始まったと考えられるが、光化学系Ⅱの進化の過程で酸素発生系がどのように形成されたかは未だ不明である。我々は以前、シアノバクテリアにおけるMn4CaO5クラスターのアスパラギン酸/グルタミン酸配位子をヒスチジンやアスパラギン/グルタミンに改変した変異体において、これらのアミノ酸残基が翻訳後に本来のカルボキシレート残基に変換されることを見出した。本研究では、反応性置換基を持たない脂肪族アミノ酸が同様なアミノ酸変換を起こすか否かを調べた。その結果、アスパラギン酸配位子D1-Asp170をバリン/ロイシン/イソロイシンに、またグルタミン酸配位子D1-Glu189をロイシン/イソロイシンに改変した変異体では、これらの脂肪族アミノ酸がアスパラギン酸/グルタミン酸またはそれらの誘導体に翻訳後変換され、酸素発生活性を回復することが示された。これらの結果は、翻訳後アミノ酸変換による配位子形成が、光合成酸素発生系に本来備わっている一般的な特性であることを示している。このことは、翻訳後アミノ酸変換が光合成酸素発生の起源と進化に重要な役割を果たしたという我々の仮説を支持するものである。

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2026/07/31

液胞リパーゼAtg15の膜認識と活性化を支える構造・分子機構

論文タイトル
Structural and mechanistic basis for membrane recognition and activation of the vacuolar lipase Atg15
論文タイトル(訳)
液胞リパーゼAtg15の膜認識と活性化を支える構造・分子機構
DOI
10.1073/pnas.2601290123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2601290123
著者名(敬称略)
堀江 (川俣)朋子1 境 祐二2
所属
1 東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター
2 横浜市立大学 理学部 理学科 生命ナノシステム科学研究科
著者からのひと言
細胞の中では、不要な膜を分解しながら、液胞膜などの大切な膜は守らなければなりません。本研究では、分子動力学シミュレーションと酵母・試験管内での実験を組み合わせ、脂質分解酵素Atg15が活性化され、分解対象の膜に優先的に働く仕組みを明らかにしました。計算による予測を実験で確かめることで、切断、膜結合、膜曲率認識という多段階の制御が見えてきました。細胞が膜を「安全に壊す」巧妙な仕組みを、ぜひご覧ください。

抄訳

オートファジーでは、細胞質成分を取り込んだオートファゴソームが液胞へ融合し、液胞内のオートファジックボディーなどの膜が分解される。しかし、脂質分解酵素Atg15が、周囲の液胞膜を傷つけることなく標的となる内腔膜に作用する仕組みは不明であった。
本研究では、酵母を用いた細胞内解析と試験管内実験に、全原子・粗視化分子動力学シミュレーションを組み合わせ、Atg15の活性化と膜認識機構を明らかにした。ジスルフィド結合は触媒コアの構造を安定化し、切断前のC末端領域は活性中心を閉じた状態に固定していた。C末端の切断後、膜への結合によって活性中心が開き、脂質が触媒部位へ到達できるようになった。さらにAtg15は、平坦な膜よりも小胞に相当する正の曲率をもつ膜に優先的に結合した。これらの結果から、Atg15は構造安定化、切断、膜結合、膜曲率認識という多段階の制御により、分解対象となる内腔膜を安全かつ優先的に分解すると考えられる。

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2026/07/31

ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小サブユニットM20は、自己脱リン酸化の抑制によりMYPT1の抑制性リン酸化を増強する

論文タイトル
Small subunit M20 augments inhibitory phosphorylation of MYPT1 in myosin light chain phosphatase by inhibiting autodephosphorylation
論文タイトル(訳)
 ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小サブユニットM20は、自己脱リン酸化の抑制によりMYPT1の抑制性リン酸化を増強する
DOI
10.1073/pnas.2534343123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2534343123
著者名(敬称略)
山下哲生1、平野勝也1,2
所属
1香川大学医学部自律機能生理学
2現・福岡歯科大学
著者からのひと言
本研究の特筆すべき成果は、出芽酵母発現系を用いて長大な天然変性領域をもつ完全長MYPT1を含むMLCP複合体を高純度で再構成し、発見以来30年にわたり機能不明であったM20の機能を明らかにしたことです。本成果は、MLCPの新たな調節原理を示すものであり、高血圧や血管疾患、がんなど、MLCPが関与する病態の解明や治療法開発の基盤となることが期待されます。

抄訳

 ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素(MLCP)は、ミオシン軽鎖を脱リン酸化し、平滑筋の弛緩やさまざまな細胞機能を調節します。MLCPを構成する三つのサブユニット(PP1c, MYPT1, M20)のうち、M20が酵素機能にどのように関与するかは明らかではありませんでした。本研究では、M20の有無で再構成したMLCPを生化学的に比較するとともに、高速原子間力顕微鏡を用いてその分子動態を観察しました。M20を欠くMLCPでは、MYPT1を介した複合体間の会合によってスーパー二量体が形成され、MYPT1の自己脱リン酸化が促進されました。これに対し、M20はMYPT1のC末端領域に結合して複合体間の会合を妨げ、Thr696およびThr853のリン酸化状態を維持しました。以上から、M20はMLCPの高次構造を変化させることにより自己脱リン酸化を制御し、酵素の抑制状態を調節することが示されました。本研究は、平滑筋収縮や細胞運動に関わるMLCPの新たな調節原理を提示するものです。

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2026/07/29

大腸菌 ST131 のパンデミック動態に迫る地域(コミュニティ)基盤のワンヘルス・アプローチ

論文タイトル
A community-based One Health approach to the pandemic dynamics of Escherichia coli ST131
論文タイトル(訳)
大腸菌 ST131 のパンデミック動態に迫る地域(コミュニティ)基盤のワンヘルス・アプローチ
DOI
10.1128/aac.00007-26
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
前田 愛子 佐藤 豊孝 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院 衛生学分野 獣医衛生学教室
著者からのひと言

抄訳

薬剤耐性菌の世界的拡散はゲノム研究で解明が進むが、採取期間や地域の不均一さから、パンデミック確立の詳細過程は不明であった。本研究では国際的高リスククローンであるフルオロキノロン耐性(FQ-R)大腸菌 ST131 に着目し、札幌圏を対象に統一期間(2021–2022年)でヒト・伴侶動物・下水・家畜を統合し、世帯レベルまで捉えるワンヘルス枠組みを構築した。大腸菌2,358株のうち FQ-R 235株(ST131 88株を含む)をゲノム解析した結果、ST131 は高いクローン多様性の中に明確な集団構造をもち、ヒトと伴侶動物で共有されるサブクラスターが認められた。コアゲノム SNP 解析からは、健常人の保菌、無症候のヒト間伝播、世帯内のヒト–伴侶動物間伝播が示唆された。これら保菌株は多様な耐性遺伝子・病原因子を保有し臨床株と酷似しており、院内へ拡散が示唆された。国際ゲノムとの統合解析では、札幌の伝播が ST131 の世界的拡大の一部であることが示された。本研究は地域社会から世界規模への耐性菌拡散を解明する拡張可能なモデルであり、地域・世帯レベルでの介入の必要性を示す。

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2026/07/17

トランスポゾンシーケンシングとパンゲノムの統合解析による、Mycobacterium avium subsp. hominissuisにおける共通および系統特異的必須遺伝子の同定

論文タイトル
Integrated analysis of transposon insertion sequencing and pangenome reveals core and lineage-specific essential genes in Mycobacterium avium subsp. hominissuis
論文タイトル(訳)
トランスポゾンシーケンシングとパンゲノムの統合解析による、Mycobacterium avium subsp. hominissuisにおける共通および系統特異的必須遺伝子の同定
DOI
10.1099/mgen.0.001753
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Volume 12, Issue 6
著者名(敬称略)
澤井 宏太郎  港 雄介 他
所属
藤田医科大学 感染症研究センター 感染症創薬創薬研究部門
著者からのひと言
これまでMAHの研究では、日本の臨床で問題となっているEA系統株とは異なる遺伝系統の株が用いられることが多く、EA系統株の性質は十分に理解されていませんでした。本研究では、EA系統株と他系統株の比較解析を行い、MAHでは菌株によって必須遺伝子の構成が大きく異なることを明らかにしました。特に、当初の予想よりも共通必須遺伝子や系統内で保存される必須遺伝子が少なかった点は、MAHの多様性を理解するうえで重要な知見です。

抄訳

結核菌の類縁菌である非結核性抗酸菌(NTM)に起因する肺疾患(NTM-PD)が近年増加しており、世界的に問題となっている。NTMの一種である Mycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)は、NTM-PDの主要な原因菌である。MAHは結核菌と同様に複数の遺伝系統が存在し、系統ごとに特有の地理的分布と宿主適応性を示す。本研究では、日本の患者環境由来のMAH 3株を対象にゲノム解析を実施した。その結果、これら3株は日本および韓国の患者由来株で多く見られる東アジア(EA)系統に属することが明らかとなった。次に、公開済みMAH 23株の全ゲノム配列を含めたパンゲノム解析を実施し、異なるMAH系統間で保存されている3,313個のコア遺伝子を同定した。さらに、トランスポゾンシーケンシングによって3株の必須遺伝子を網羅的に同定し、既報のSC3系統株であるMAC109の必須遺伝子と比較した。多くの必須遺伝子はコア遺伝子に由来していた一方で、EA系統とSC3系統に共通する必須遺伝子に加え、系統特異的な必須遺伝子も同定された。

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2026/06/30

近接標識用偽型ウイルスを用いた宿主細胞側ウイルス接着因子の同定

論文タイトル
Pseudovirus-mediated proximity labeling identifies candidate host cell membrane proteins involved in viral attachment
論文タイトル(訳)
近接標識用偽型ウイルスを用いた宿主細胞側ウイルス接着因子の同定
DOI
10.1128/jvi.00507-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
100(5):e0050726
著者名(敬称略)
小谷 典弘
所属
埼玉医科大学 医学部 薬理学
著者からのひと言
任意のウイルスのウイルス受容体候補をスクリーニングできる方法です。

抄訳

ウイルス感染は、COVID-19パンデミックに代表されるように、人類にとって重大な脅威である。被害を軽減するためには、原因ウイルスの生物学的特性を理解し対処することが不可欠となる。
本研究では、各種ウイルスの結合・感染に重要な宿主細胞側分子群(ウイルス受容体等)を同定する新手法を報告する。これら分子群はウイルス結合部位近傍に局在すると考えられるため、近接標識技術(proximity labeling: PL)を利用して特異的に標識・同定する手法を着想した。PL酵素をウイルス表面に発現する偽型ウイルスを作製し、宿主細胞に処理後、PL反応でこれら分子群を標識した。本法により、インフルエンザ偽型ウイルスを作製し、複数の候補分子を同定した。CHO細胞を用いたウイルス結合実験により、Neurophlin-1がインフルエンザウイルスの宿主細胞への結合に重要である可能性が示唆された。
本法は簡便かつ迅速に結果が得られるため、緊急解析が必要なパンデミックウイルスを含む、幅広いエンベロープウイルスに適用可能である。

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2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae
members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania
triglochinis
」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

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2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania triglochinis」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

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2026/06/12

 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例

論文タイトル
T-cell large granular lymphocyte leukaemia with pure red cell aplasia harbouring a somatic STAT3 P715L mutation
論文タイトル(訳)
 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268958
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
岡本 裕介 石山 賢一 他
所属
京都大学大学院医学研究科 血液内科学
著者からのひと言
 T-LGLLではSTAT3変異の多くがSH2ドメインに集中することが知られているが、本症例は初めてSH2ドメイン外のSTAT3 P715L体細胞変異を同定した点で極めて興味深い。さらに、病理学的にSTAT3活性化を証明し、シクロスポリンに良好な治療反応を示したことから、希少変異であっても臨床的意義を有する可能性が示された。分子異常と自己免疫性血球減少症との関連を考える上で、診断・病態解明・治療戦略に新たな視点を提供する症例報告である。

抄訳

本症例は、進行性貧血を契機に診断された50歳代女性のT細胞性大顆粒リンパ球白血病(T-LGLL)に伴う赤芽球癆(PRCA)の報告である。骨髄検査では赤芽球系の著明な減少を認め、末梢血フローサイトメトリーおよびT細胞受容体遺伝子再構成解析により単クローン性CD8陽性細胞傷害性T細胞の増殖が確認された。さらにNGS解析によりSTAT3遺伝子のP715L体細胞変異を同定した。この変異はこれまでSTAT3 gain-of-function(GOF)症候群における生殖細胞系列変異として報告されていたが、T-LGLLにおける体細胞変異としての報告はなかった。骨髄生検ではCD8陽性T細胞におけるリン酸化STAT3の核内集積が確認され、P715L変異によるSTAT3シグナルの恒常的活性化が示唆された。患者はシクロスポリン治療により徐々に造血能が改善し、6か月以内に輸血依存から離脱した。本症例は、T-LGLLにおけるSTAT3変異スペクトラムを拡張するだけでなく、SH2ドメイン外のSTAT3変異が疾患発症や治療反応性に関与する可能性を示した重要な症例である。

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2026/06/11

 動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。

論文タイトル
Animals have expanded the evolutionary legacy of unicellular ancestors in blood cells
論文タイトル(訳)
動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。
DOI
10.1073/pnas.2528110123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.23 e2528110123
著者名(敬称略)
長畑 洋佑 河本 宏 他
所属
京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野
スペイン国バルセロナ 進化生物学研究所(筆頭著者現所属)
著者からのひと言
(河本)私達の研究室は、造血幹細胞が分化していく際に、マクロファージへ分化する能力が長く保持されているというミエロイド基本型モデルを、20年以上前に提唱しました。今回の成果は、ミエロイド基本型モデルが、7億年の血液細胞の進化過程を反映している事を示す集大成的な成果であり、とても感慨深く思います。
(長畑)T細胞、マスト細胞、赤血球、血小板が近縁であるということは、驚くべきことであり、重要な知見になると考えます。また、7億年前の先祖の遺産が、血液細胞として我々の体内を巡っていると思うと、遠い祖先も身近に感じることができます。

抄訳

本研究では、様々な動物と単細胞生物における、多種多様な細胞の遺伝子発現プロファイルを比較する手法を開発することで、血液細胞の起源と多様化の歴史を7億年前の単細胞生物時代の祖先にまで遡って明らかにしました。①まず、動物の祖先は、まだ単細胞生物であった頃の遺伝子プログラムを用いて、マクロファージ様の血液細胞として誕生させました。その後、動物進化の過程で、②寄生虫感染症に対抗してマクロファージからマスト細胞が分岐し、③そのマスト細胞から原始的なT細胞が、④マクロファージから原始的なB細胞が、⑤再びマスト細胞から赤血球が、それぞれ分岐していった事がわかりました。この7億年間の進化の記憶は、造血・分化過程として、現在生きる我々の体内にも刻まれていることもわかりました。私達の体内を巡る血液細胞は、単細胞生物時代の祖先が私達に遺したレガシーをうまく拡張・発展させたものと言えます。

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2026/06/11

 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上

論文タイトル
Utilizing vmTracking to Improve the Accuracy of Multi-Animal Pose Estimation in Rodent Social Behavior Studies
論文タイトル(訳)
 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上
DOI
10.3791/69506-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (225), e69506
著者名(敬称略)
筆頭著者:畦地 裕統 連絡著者:畦地 裕統
所属
同志社大学大学院脳科学研究科 システム神経科学分野 認知行動神経機構部門
著者からのひと言
動物の行動を定量的に解析するには、個体ごとの動きを正確に追跡したデータが必要です。しかし、複数個体が自由に行動する場面では、接触や遮蔽により個体識別が不安定になるため、データの精度が低下し、社会行動の定量評価にも影響します。本論文では、仮想マーカーを用いて既存のマーカーレス姿勢推定を補強するvmTrackingの手順を紹介しています。多個体行動解析の信頼性を高めるために有用な内容です。

抄訳

げっ歯類の社会行動研究では、動物が自由に動き回る環境下で、より自然な相互作用を評価する必要性が高まっている。そのためには、複数個体の姿勢を正確に追跡することが重要であるが、現在のマーカーレス多個体姿勢追跡ツールでは、遮蔽や密集場面、特に個体同士を視覚的に区別しにくい条件で精度が低下しやすい。本研究で提示する仮想マーカー追跡(vmTracking)は、仮想マーカーを用いてフレーム間の個体識別を維持し、困難な条件下での多個体姿勢追跡精度を向上させる手法である。本手法は標準的な追跡ワークフローに組み込むことができ、既存のマーカーレス多個体動画データにも適用可能である。本稿では仮想マーカーの割り当て方法と、ラベル付けされた動画における動物追跡の手順を示す。vmTrackingにより得られる高精度な多個体追跡データは、自由行動下で生じる社会的相互作用行動を、より信頼性高く定量解析することを可能にする。

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2026/06/10

SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析

論文タイトル
Combinatorial analysis of clinical and genomic data used to assess the association between SARS-CoV-2 mutations and disease severity
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag191
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 6, June 2026, pgag191,
著者名(敬称略)
石渡 早織、谷本 幸介、 武内 寛明  他
所属
東京科学大学 医歯学総合研究科 ハイリスク感染症研究マネジメント学分野

抄訳

2019年末に出現し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを引き起こしたsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)は、ゲノム進化を経て、アルファ、デルタ、オミクロン株などの懸念される変異株を生み出した。本研究ではSARS-CoV-2変異が感染者の重症度に及ぼす影響を評価することを目的とし、東京科学大学病院に入院した310名の患者由来のウイルスゲノムデータと臨床データの統合解析を行なった。解析の結果、統計的有意に重症度と関連する変異が64個同定された。オミクロン株は一般的にデルタ株よりも症状が軽いとされているが、本研究ではオミクロン株の中にも重症化と統計的有意に関連する変異が同定された。SARS-CoV-2のゲノム情報と臨床情報のレトロスペクティブ解析は、ウイルス変異の生物学的意義の解明に有用であると考えられる。

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