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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2016/03/01

CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。

論文タイトル
CD8+CD122+CD49dlow regulatory T cells maintain T-cell homeostasis by killing activated T cells via Fas/FasL-mediated cytotoxicity
論文タイトル(訳)
CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。
DOI
10.1073/pnas.1525098113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 11, 2016,
著者名(敬称略)
赤根 和之、鈴木 治彦 他
所属
名古屋大学 大学院医学系研究科 分子細胞免疫学

抄訳

Fas/FasL経路は古くから知られるアポトーシス経路であるが、生体内でどのタイミング、どの細胞集団で働いているかの詳細は不明であった。我々は、細胞増殖の制御を測定するin vitro細胞培養実験系を構築し、さらにはin vivoのアッセイを行い、CD8+T細胞のどの分画が制御活性を持つかを検討した結果、in vitro、in vivoともにCD8+CD122+CD49dlow分画に制御活性が高いことを発見した。Fas分子の働かないlprマウスとFasLの働かないgldマウスを用い、Fas/FasL経路に異常があるとこの制御経路が働かないことをin vitroとin vivo双方において証明した。この結果、Fas及びFasLは活性化T細胞とCD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞との間で働き、免疫反応の収束時に活性化T細胞にアポトーシスを誘導して数を減らす作用が重要とわかった。さらに、MHC class I分子を欠損するCD8+T細胞はこの抑制作用を受けないことから、CD8+制御性T細胞が働くにはTCRとMHC class Iとの相互作用が必要であることが証明された。

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2016/02/25

代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する

論文タイトル
Territories of heterologous inputs onto Purkinje cell dendrites are segregated by mGluR1-dependent parallel fiber synapse elimination
論文タイトル(訳)
代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する
DOI
10.1073/pnas.1511513113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Published online before print February 8
著者名(敬称略)
市川 量一 他
所属
札幌医科大学 医学部 医学科 解剖学第一講座

抄訳

発生初期の神経系では、過剰でしかも重複する神経回路が多く見られる。しかし、生後早期の神経活動の亢進がシナプス回路の選択的強化と除去を引き起こし、それによってその冗長な神経回路は機能的な神経回路へと改築される。これまで、骨格筋を支配する脊髄運動神経や小脳プルキンエ細胞を支配する登上線維などで、入力線維が競合することにより多重支配から単一支配へ移行し、その結果として適正な神経回路が形成されることが明らかにされた。プルキンエ細胞には興奮性線維としてもう一種類、平行線維が入力する。しかし、そのシナプス回路がどのような発達変化を遂げるのかは不明であった。本研究により、以下の点が明らかになった。生後早期のマウスのプルキンエ細胞では樹状突起の全域に渡って平行線維シナプスが形成されるが、生後15-20日の間にて樹状突起の近位部から平行線維シナプスが除去されることで成体でみられるようなシナプス分布が完成する。具体的には、近位部に局在する登上線維シナプステリトリーと遠位部に局在する平行線維シナプステリトリーとに、シナプス分布が分離することである。また、この平行線維シナプスの除去作用には、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1-PKCgamma系が重要な役割を果たしていることが判明した。

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2016/02/19

Gtr1-Gtr2によるTORC1-Gtr1/Gtr2-Ego1/2/3複合体の局在調節

論文タイトル
Dynamic relocation of the TORC1?Gtr1/2?Ego1/2/3 complex is regulated by Gtr1 and Gtr2
論文タイトル(訳)
Gtr1-Gtr2によるTORC1-Gtr1/Gtr2-Ego1/2/3複合体の局在調節
DOI
10.1091/mbc.E15-07-0470
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society of Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell January 15, 2016 vol. 27 no. 2 382-396
著者名(敬称略)
吉良 新太郎, 野田 健司 他
所属
大阪大学 歯学研究科 口腔科学フロンティアセンター, 生命機能研究科(兼)

抄訳

TORC1プロテインキナーゼ複合体は、細胞増殖制御に中心的役割を果たす分子であり、真核生物に広く保存されています。TORC1の活性調節分子として低分子量Gタンパク質であるGtr1/Gtr2、またその足場タンパク質としてEgo複合体が知られています。本論文では、1. Ego複合体の新規サブユニットEgo2の同定 2.TORC1-Gtr1/Gtr2-Ego複合体は、Gtr1/Gtr2により局在が制御されていること、の2点を報告しています。出芽酵母において、これらの分子群は液胞膜及びそれに付随した輝点として観察されます。Gtr1GTP型のとき、これらの分子は液胞膜全体に局在し、それに付随する輝点は減少しました。一方Gtr1GDP型の時は、これらの分子は液胞に付随する輝点上への局在が増加しました。このことからGtr1GTP/GDPサイクルにより、これらの分子の局在が制御されることが明らかになりました。さらに、TORC1が液胞近傍の輝点上に局在するGtr1-GDP型発現時に、TORC1を人為的に液胞膜全体に局在化させる系を用いた時、TORC1の液胞膜全体への局在化はGtr2存在下で阻害されました。このことからGtr2TORC1の液胞近傍輝点局在を正に制御していると考えられました。Gtr1-GDP型発現時にTORC1は液胞近傍の輝点に局在化し、このときTORC1は不活性化するため、TORC1の液胞近傍への輝点局在がTORC1の不活性化に関与する可能性が示唆されます。

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2016/02/17

脂肪体のメチオニン代謝によるショウジョウバエ成虫原基修復の遠隔調節

論文タイトル
Tissue nonautonomous effects of fat body methionine metabolism on imaginal disc repair in Drosophila
論文タイトル(訳)
脂肪体のメチオニン代謝によるショウジョウバエ成虫原基修復の遠隔調節
DOI
10.1073/pnas.1523681113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2016 113 (7) 1835?1840
著者名(敬称略)
樫尾宗志朗、小幡史明、三浦正幸 他
所属
東京大学 大学院薬学系研究科・遺伝学教室

抄訳

傷害を受けた組織が修復する機構に関して、これまでに傷害組織に内在したメカニズムが多く研究されてきた。近年、組織傷害に対して傷害部位とは異なる組織が応答する全身性創傷応答が様々な生物で見出され注目されている。本研究では、高い組織修復能と再生能とを持つショウジョウバエ翅成虫原基をモデルとして用い、組織修復に関わる組織間相互作用を解析した。温度感受性ジフテリア毒素を翅成虫原基に発現させ、飼育温度を29度から18度に変化させることによって一過的に組織傷害をおこし、その後29度に戻すことで組織修復と再生が見られる実験系を構築した。組織傷害後におこる全身性の応答を解析すると、傷害部位から離れた脂肪体でメチオニン代謝が変動することが明らかになった。ショウジョウバエの脂肪体はヒトの肝臓と白色脂肪組織に相当する。遺伝学的にメチオニン代謝に関わる酵素遺伝子を脂肪体で操作すると翅成虫原基の組織修復と再生が著しく阻害された。メチオニン代謝経路はショウジョウバエとヒトで共通しており、高度な遺伝学的解析を可能にするショウジョウバエを用いた研究によって、種を超えた脂肪組織による組織修復の遠隔制御機構の解明が期待される。

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2016/02/16

クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構

論文タイトル
Chromatin binding of RCC1 during mitosis is important for its nuclear localization in interphase
論文タイトル(訳)
クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構
DOI
10.1091/mbc.E15-07-0497
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell January 15, 2016 vol. 27 no. 2 371-381
著者名(敬称略)
古田満衣子, 深川 竜郎 他
所属
大阪大学大学院生命機能研究科

抄訳

小分子GTPaseであるRanと関連するRCC1は、細胞周期の各時期において多様な機能を持つと考えられている。RCC1は、機能に関連した各種ドメインを持つが、それらの生物学的な役割については不明な点も多い。我々は、各ドメインの生物学的な役割を解明する目的で、RCC1のノックアウト細胞を樹立して、その細胞へ各種RCC1変異体を導入することで各ドメインの生物機能を解析した。その結果、RCC1のクロマチン結合ドメインも核内局在シグナルもRCC1の持つ核膜形成能には必須でないことが判明した。しかしながら、その両ドメインを欠失させるとRCC1の核膜形成能は失われた。両ドメインを欠失したRCC1に人工的な核局在シグナルを付加させることで、核膜形成能が復帰したことから、我々は、「RCC1の核膜形成能には、RCC1自身の核内局在が必須である」ことを証明した。ところが、RCC1自身の核内局在シグナルを欠損させても、RCC1自身は核内に局在して核膜を形成できることから、クロマチン結合ドメインが核内局在にも関与していると考えた。そこで、核内局在シグナルを欠いたRCC1を細胞へ導入し、その過程を詳細に解析すると、導入直後、RCC1は細胞核には局在しないが、細胞分裂期にクロマチンと結合した後、核内へ移行することが判明した。これらの結果は、クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構の発見を意味している。

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2016/02/10

生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性

論文タイトル
Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing
論文タイトル(訳)
生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性
DOI
10.1073/pnas.1520560113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 1, 2016
著者名(敬称略)
茶谷 悠平、丹羽 達也、千葉 志信、田口 英樹、伊藤 維昭
所属
京都産業大学・総合生命科学部 , 東京工業大学・大学院生命理工学研究科

抄訳

タンパク質の合成(遺伝情報の翻訳)においては、アミノ酸が遺伝子によって指定された順番で、一つ一つ連結されていく。この反応はリボソームの内部で起こり、新たに作られたポリペプチド鎖(新生鎖)の一端はtRNAを介してリボソームに繋がれ、他端は通り道(トンネル)を通ってリボソームの外に向かう。このポリペプチドの伸長過程が緩急の制御を受けることが知られるようになったが、翻訳の一時停止(pausing)がどの程度一般的におこるのかは不明であった。本研究では、この問題を解決するため、リボソームプロファイリング法という強力ではあるが間接的な方法によらず、翻訳の中間体であるペプチジルtRNAを直接的に検出する手法(iNP = integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling)を用いた。大腸菌の1038個の遺伝子の翻訳過程の詳細像を網羅解析した結果、大部分の遺伝子が、1回~複数回の停滞を伴って翻訳されることが明らかになった。一時停止は、in vitro のみで起こるもの、in vivoのみで起こるもの、両方で起こるものに大別され、膜タンパク質と細胞質タンパク質で異なる性質の停滞が起こる傾向や、自発的フォールディングの能力との相関が観察された。翻訳の過程では、広範かつ多様な様式の一時停止が起こることがわかり、機能的タンパク質の形成は翻訳の緩急によっても支えられているものと考えられる。

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2016/02/09

2種類の擬似液体層は氷結晶上で動力学的に生成する

論文タイトル
Two types of quasi-liquid layers on ice crystals are formed kinetically
論文タイトル(訳)
2種類の擬似液体層は氷結晶上で動力学的に生成する
DOI
10.1073/pnas.1521607113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 1, 2016
著者名(敬称略)
麻川 明俊 、佐崎 元 他
所属
北海道大学 低温科学研究所

抄訳

氷の表面は、融点(0°C)以下の温度においても、擬似液体層と呼ばれる薄い水膜で覆われる。この現象は表面融解と呼ばれ、スケートの滑りやすさから雷の発生まで、様々な自然現象を支配する。我々は近年、形状が異なる2種類の擬似液体層(液滴状と薄い層状)が生成することを見出した。しかし、これらの擬似液体層の熱力学的安定性はまだ明らかになってはいなかった。我々は今回、2種類の擬似液体層が、水蒸気圧がある臨界の過飽和度よりも高い条件でのみ生成することを見出した。我々は、水1分子高さの段差を検出することができる光学顕微鏡を用いて、氷結晶表面上で擬似液体層を直接可視化した。その結果、ある一定の温度下では、水蒸気圧が減少するにつれて、まず薄い層状の擬似液体層が消滅し、続いて液滴状の擬似液体層が消滅する様子が観察された。しかし、2種類の擬似液体層が消滅した後も、氷結晶上では単位ステップが成長していた。これらの結果は、2種類の擬似液体層が、氷表面が融解するのではなく、過飽和な水蒸気が氷表面に析出することで、動的に生成することを示している。本成果は,これまて?長らく「表面融解」と呼は?れて来た現象の描像を根底から覆すものて?あり、擬似液体層が重要な役割を果たす幅広い現象の機構解明に役立つと共に,半導体結晶や有機物結晶なと?,様々な材料て?見られる融点直下て?の超高温表面・界面現象の解明に役立つと期待されます。

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2016/02/09

ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来ヒドロキシニトリルリアーゼの発見、分子生物学的および触媒的特性

論文タイトル
Discovery and molecular and biocatalytic properties of hydroxynitrile lyase from an invasive millipede、 Chamberlinius hualienensis[2]
論文タイトル(訳)
ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来ヒドロキシニトリルリアーゼの発見、分子生物学的および触媒的特性
DOI
10.1073/pnas.1508311112
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2015 112 (34) 10605-10610
著者名(敬称略)
Mohammad Dadashipour, 石田裕幸、山本和範、浅野泰久
所属
公立大学法人富山県立大学 国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) 浅野酵素活性分子プロジェクト

抄訳

シアン産生生物の防御機構を構成するヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)は、立体選択的にシアノヒドリンを合成することができる。シアノヒドリンは、ファインケミカルや農薬、医薬品の合成におけるビルディングブロックとして利用価値が高く、HNLは重要な生物触媒として工業的に利用されている。ヤンバルトサカヤスデから新たに発見したHNLは、既知のタンパク質とは全く相同性はないが、青酸と様々な芳香族アルデヒドの縮合反応を触媒し、マンデロニトリル合成においては、同様の活性を示す酵素の中で最も高い比活性を示した。更に、本酵素は広い範囲の温度とpH領域で高い安定性を示し、有機溶媒の使用なしに、99%の鏡像体過剰率でベンズアルデヒドから(R)-マンデロニトリルを合成できた。陸上動物の80%を構成している節足動物相は、バイオテクノロジーにおいて、HNLのみならず様々な新奇酵素を探索する新たな生物資源となるに違いない。

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2015/10/15

授乳時の乳頭吸飲刺激によるラット視床下部Kiss1ニューロンの急速な発現調節

論文タイトル
Rapid modulation of hypothalamic Kiss1 levels by the suckling stimulus in the lactating rat
論文タイトル(訳)
授乳時の乳頭吸飲刺激によるラット視床下部Kiss1ニューロンの急速な発現調節
DOI
10.1530/JOE-15-0143
ジャーナル名
Journal of Endocrinology Bioscientifica
巻号
J Endocrinol Vol.227 No.2 (105-115)
著者名(敬称略)
肥後 心平(筆頭著者),小澤 一史(連絡著者) 他
所属
日本医科大学大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野

抄訳

授乳時には乳頭吸引刺激による急性的な視床下部GnRH分泌抑制, 引き続く下垂体LH分泌の減少が生じ, 一時的な不妊状態となるが, GnRH/LHの減少がなぜ誘導されるのかはよくわかっていない. 本研究では, 異なる授乳状態のラットをモデルに, GnRH分泌の上流制御因子であるKiss1が授乳時の急性的GnRH/LH減少に関わる可能性を調べた.

ラットの視床下部Kiss1発現は母仔分離・再哺乳により急性的な変動を示した. 神経投射解析により, 乳頭吸飲刺激が脊髄・中脳を介した直接投射により視床下部弓状核のKiss1ニューロンに伝達され, Kiss1発現の急性的抑制, GnRHの分泌低下を惹起する可能性を見出した. また, 授乳時の血中プロラクチンの上昇に対してもKiss1は急性的に抑制されることがわかった. 弓状核のKiss1ニューロンは背側弓状核Dopamineニューロンへの投射を介して下垂体からのプロラクチン分泌にも関わるため, この回路を介した再帰的なKiss1の発現抑制も授乳期におけるGnRH分泌の減少に関わる可能性を見出した.

これらの結果は, 授乳期の排卵抑制~一時的不妊状態の分子メカニズムを機能形態学的に明らかにするものである.

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2015/08/18

3T-MRIを用いた2-point Dixon法による棘上筋内の脂肪変性の定量化

論文タイトル
Quantification of Fatty Degeneration Within the Supraspinatus Muscle by Using a 2-Point Dixon Method on 3-T MRI
論文タイトル(訳)
3T-MRIを用いた2-point Dixon法による棘上筋内の脂肪変性の定量化
DOI
10.2214/AJR.14.13518
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR July 2015, Vol. 205, No. 1 116-122
著者名(敬称略)
野崎 太希 他
所属
聖路加国際病院 放射線科

抄訳

腱板断裂の術前評価において、腱板構成筋の筋内の脂肪変性と筋萎縮の評価は治療を考える上で大切であり、特にMRIを用いた筋内の脂肪変性の画像評価は腱板断裂の予後予測および手術適応の決定において重要とされる。本研究では、2-point Dixon法を用いて棘上筋の脂肪変性の程度を定量化し、年齢、性別、腱板断裂の進行度、筋萎縮の程度との関連性について検討した。対象は肩痛に対してグラジエントエコーによる2-point Dixon法を含む肩関節3T-MRIを施行した359例。そのうち、棘上筋腱の全層断裂群は63例(平均年齢68.8歳)、部分断裂群は54例(平均年齢64.2歳)、断裂なし群242例(平均年齢55.歳)であった。棘上筋の脂肪変性の定量値と年齢との相関係数は0.348であった。脂肪含有量の上昇率には性差があり、女性の方が男性よりも年齢の上昇に伴う脂肪含有量の上昇率が高かった。棘上筋の脂肪含有量の平均値は全層断裂群で25.8%、部分断裂群で16.6%、断裂なし群で12.8%であった。また、女性の方が男性よりも筋萎縮の進行に伴う脂肪変性の進行速度が速いことが示された。63例の全層断裂群のうち、23例が広範囲断裂群で、40例がそれ以外の全層断裂群であり、それぞれ脂肪含有量の平均値は34.9%、20.5%で両者に統計学的有意差がみられた(p<0.001)。2-point Dixon法を用いた肩関節MRIは臨床的に容易に応用が可能で、腱板断裂とくに広範囲断裂の予後予測の指標に用いることを可能にしうる。

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2015/08/10

Kcnq1遺伝子領域における父親由来の変異は、Cdkn1cのエピジェネティック修飾を介して膵β細胞量を減少させる

論文タイトル
Paternal allelic mutation at the Kcnq1 locus reduces pancreatc β-cell mass by epigenetic modification of Cdkn1c
論文タイトル(訳)
Kcnq1遺伝子領域における父親由来の変異は、Cdkn1cのエピジェネティック修飾を介して膵β細胞量を減少させる
DOI
10.1073/pnas.1422104112
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2015 112 (27) 8332-8337
著者名(敬称略)
浅原 俊一郎、木戸 良明 他
所属
神戸大学大学院保健学研究科 病態解析学領域 分析医科学分野

抄訳

日本人2型糖尿病患者を対象とした大規模ゲノム関連解析によって、KCNQ1遺伝子の一塩基多形が糖尿病発症の有意な危険因子であることが2008年に報告された。しかしながら、KCNQ1遺伝子が2型糖尿病を発症させるメカニズムに関してはこれまで明らかにされていなかった。筆者らは、KCNQ1遺伝子がインプリンティング遺伝子である点に注目した。マウスを用いた検討により、父親から引き継いだKcnq1遺伝子の変異は、インプリンティング制御に異常を起こすことによって、細胞周期抑制因子Cdkn1cの発現量を増加させることが明らかとなった。Cdkn1cは膵β細胞特異的に蓄積することによって、膵β細胞量を減少させ、2型糖尿病発症に至ると考えられた。今回の研究により、2型糖尿病原因遺伝子Kcnq1による糖尿病発症機序を解明し、またインプリンティング制御の異常が2型糖尿病発症につながることを初めて見出した。

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2015/07/22

アルドステロン産生腺腫におけるメチローム・トランスクリプトーム統合解析

論文タイトル
Integration of transcriptome and methylome analysis of aldosterone-producing adenomas
論文タイトル(訳)
アルドステロン産生腺腫におけるメチローム・トランスクリプトーム統合解析
DOI
10.1530/EJE-15-0148
ジャーナル名
European Journal of Endocrinology Bioscientifica
巻号
Eur J Endocrinol Vol.173 No.2 (185-195)
著者名(敬称略)
村上 正憲, 吉本 貴宣 他
所属
東京医科歯科大学大学院総合研究科 分子内分泌代謝学分野 医学部付属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科

抄訳

原発性アルドステロン症は高血圧症の10%を占めるとされる二次性高血圧症である。近年、網羅的遺伝子発現解析によりアルドステロン産生腺腫(APA)と隣接する副腎組織(AAG)において発現量の異なる遺伝子が多数報告されているが、これらの遺伝子発現の変化とアルドステロンの自律性分泌や腫瘍化の関連には不明な点が多い。一方、APAにおけるDNAメチル化修飾に関する報告はほとんどない。本研究ではAPA発症の分子機構を明らかにするために、同意を得た患者の手術時に採取したAPAとAAGの7症例14検体を用い、網羅的遺伝子発現解析とゲノムワイドDNAメチル化解析を同時に行った。トランスクリプトーム解析では、 APAではAAGと比較してPCP4、CYP11B2などの遺伝子の発現量増加を認め、メチローム解析ではゲノム全体が低メチル化状態であることが明らかになった。遺伝子発現とDNAメチル化修飾の統合解析により、CYP11B2やMC2Rなど遺伝子発現増加とDNA低メチル化の負の関連性を示す36遺伝子を同定した。本研究は同一症例においてAPAとAAGのトランスクリプトーム解析とメチローム解析を統合的に比較検討し、APAの発症にDNA脱メチル化による遺伝子発現制御が関与する可能性を示した初の報告である。

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2015/07/22

ホスホリパーゼ A2グループIVc (Pla2g4c) 遺伝子の欠失はNF-κB /リポカリン 2 経路を介してラット乳がん細胞にアポトーシスを誘導する

論文タイトル
Deletion of phospholipase A2 group IVc induces apoptosis in rat mammary tumour cells by the nuclear factor-kB/lipocalin 2 pathway
論文タイトル(訳)
ホスホリパーゼ A2グループIVc (Pla2g4c) 遺伝子の欠失はNF-κB /リポカリン 2 経路を介してラット乳がん細胞にアポトーシスを誘導する
DOI
10.1042/BJ20150064
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Biochemical Journal Vol.469 No.2 (315-324)
著者名(敬称略)
七島 直樹、山田 俊幸、清水 武史、土田 成紀
所属
弘前大学大学院医学研究科ゲノム生化学 弘前大学大学院保健学研究科生体機能

抄訳

Hirosaki hairless rat (HHR) はSprague-Dawley rat (SDR) から自然発生した遺伝性の変異ラットである。Comparative genomic hybridizationで、HHRでは第1染色体長腕21に phospholipase A2 group IVc (Pla2g4c)を含む50-kbの欠損を認めた。Pla2g4cはSDR乳腺の腺管細胞と筋上皮細胞に発現していた。7,12-dimethylbenz[a]anthraceneによるHHRの乳がん発生率はSDRより低く、乳がんもSDRに比べ小さく、TUNEL陽性のアポトーシスが観察された。ラット乳腺腫瘍細胞(RMT-1)を用いてPla2g4cをsiRNAでノックダウンすると、アポトーシスが誘導されるとともにlipocalin 2 (Lcn2) と NF-κB関連遺伝子の発現が亢進した。Pla2g4cノックダウンによるアポトーシスは、Lcn2のノックダウンあるいはNF-κB阻害剤により抑制された。これらの結果から、Pla2g4cを欠損したラット乳腺ではNF-κB/Lcn2 経路の活性化によりアポトーシスが誘導され、乳がん発生が抑制されることを明らかにした。

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2015/04/15

CTによる尿管癌のT因子診断 : T2 以下/ T3以上の選別を目的とした診断基準の提案に関する予備的研究

論文タイトル
T Categorization of Urothelial Carcinomas of the Ureter With CT: Preliminary Study of New Diagnostic Criteria Proposed for Differentiating T2 or Lower From T3 or Higher
論文タイトル(訳)
CTによる尿管癌のT因子診断 : T2 以下/ T3以上の選別を目的とした診断基準の提案に関する予備的研究
DOI
10.2214/AJR.14.13167
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR April 2015, Volume 204, Number 4 792-797
著者名(敬称略)
本田 有紀子 他
所属
広島大学大学院医歯薬保健学研究院/研究科 放射線診断学研究室

抄訳

尿管癌では、術前CTによるT因子診断が治療方針の決定に重要である。今回、術前CT診断にて、T2以下 / T3以上の選別を目的とした新たな診断基準を提案し、その臨床的妥当性を検討した。尿管癌30例(手術・病理診断例)の術前CTを、3名の放射線診断医(腹部を専門としない放射線科医)で読影実験を行い、提案基準の有無で診断能がどのように変化するかについてROC解析を行った。提案するCT基準では、mass形成と索状影の有無により病変を6 patternに分類した。「提案基準あり」及び「提案基準なし」でのROC曲線におけるArea under the curve (AUC)は、それぞれ0.54 (SD 0.09)、0.73 (SD 0.08)であり、提案基準を用いた方が診断能は統計学的に有意に高かった(p<0.01)。提案基準がT因子診断の精度向上に寄与する可能性が示唆された。

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2015/02/17

Porphyromonas gingivalis のバイオフィルムを介したマクロライド系抗菌薬の浸透は sinR のオルソログ PGN_0088 の糖成分の合成抑制により間接的に制御される

論文タイトル
Inhibition of polysaccharide synthesis by the sinR orthologue PGN_0088 is indirectly associated with the penetration of Porphyromonas gingivalis biofilms by macrolide antibiotics
論文タイトル(訳)
Porphyromonas gingivalis のバイオフィルムを介したマクロライド系抗菌薬の浸透は sinR のオルソログ PGN_0088 の糖成分の合成抑制により間接的に制御される
DOI
10.1099/mic.0.000013
ジャーナル名
Microbiology Society for General Microbiology
巻号
February 2015 vol. 161 no. Pt 2 422-429
著者名(敬称略)
山本 れいこ,野杁 由一郎 他
所属
大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)

抄訳

一般に、微生物は固体と液体の界面に付着し、自ら生産した菌体外マトリックス内で凝集し、バイオフィルムの中で生息する。歯周病は Porphyromonas gingivalis 等のバイオフィルム形成によって始まる口腔感染症である。菌体外マトリックスがバイオフィルム細菌を保護するバリアとして機能するため、バイオフィルム感染症の治療に化学療法は不適切である。先行研究では、最小発育阻止濃度以下のマクロライド系抗菌薬が P. gingivalis バイオフィルムを減少させること、さらに、枯草菌の遺伝子 sinR のオルソログ PGN_0088 が P. gingivalis バイオフィルムの菌対外マトリックスの構成要素である糖成分の合成を抑制することを報告した。本研究では、この遺伝子による菌体外マトリックス中の糖成分の減少が、マクロライド系抗菌薬の浸透率やバイオフィルムの機械的強度に影響を及ぼすことを解明した。

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2015/01/26

マウスアルデヒドデヒドロゲナーゼALDH3B2はC末端の2つのトリプトファン残基と脂質修飾を介して脂肪滴に局在する

論文タイトル
Mouse aldehyde dehydrogenase ALDH3B2 is localized to lipid droplets via two C-terminal tryptophan residues and lipid modification
論文タイトル(訳)
マウスアルデヒドデヒドロゲナーゼALDH3B2はC末端の2つのトリプトファン残基と脂質修飾を介して脂肪滴に局在する
DOI
10.1042/BJ20140624
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.465 No.1 (79?87)
著者名(敬称略)
北村 拓也, 木原 章雄 他
所属
北海道大学大学院薬学研究院生化学研究室

抄訳

生体には多数のアルデヒド分子が存在する。アルデヒド分子は一般的に反応性が高いため,蓄積すると毒性を示す。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は,アルデヒドを毒性の低いカルボン酸へと変換する酵素である。マウスには21種のALDHが存在するが,本報告ではそれらのうちALDH3サブファミリーメンバー(ALDH3A2,ALDH3B1,ALDH3B2,ALDH3B3)が,長鎖アルデヒド(炭素数10-20)を除去する役割があることを明らかにした。これらの基質特異性は類似していたが,細胞内の局在場所は異なっていた(ALDH3A2,小胞体;B1とB3,細胞膜;B2,脂肪滴)。ALDH3A2は膜貫通領域により小胞体膜に局在するが,ALDH3B1-3には膜貫通領域が存在しない。その代わりに,これらはC末端が脂質修飾(ゲラニルゲラニル化)されることで膜局在をしていた。さらに脂質修飾部位近傍の正電荷アミノ酸残基がALDH3B3の細胞膜局在,2つのトリプトファン残基がALDH3B2の脂肪滴局在を規定していた。生体膜を構成する脂質分子には不飽和結合が存在するため,酸化ストレスによりアルデヒドへと変換される。様々なオルガネラで生じたこれらの脂質由来アルデヒドを除去するために細胞内には異なった局在性を示す複数のALDHが存在すると考えられる。

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2014/12/16

プロドラッグ、代謝物等に関する特許の保護範囲

論文タイトル
Scope of protection of a patent directed to prodrugs, metabolites and the like
論文タイトル(訳)
プロドラッグ、代謝物等に関する特許の保護範囲
DOI
10.4155/ppa.14.42
ジャーナル名
Pharmaceutical Patent Analyst Future Science Ltd
巻号
Vol. 3, No. 6, Pages 567-570
著者名(敬称略)
駒谷 剛志 (※編集注:お名前の「駒」は正しくは馬偏に勺という字です。)
所属
山本特許法律事務所

抄訳

本論文は、医薬品特許の保護範囲について、有効成分(API)とは化学的に異なる物質であるプロドラッグや代謝物、あるいは、代謝物自体が有効成分となる場合について、主要国でどのように保護されるか(あるいはされないか)を概説するものである。特許の保護範囲は、文言解釈に従い、物質特許の場合は、構造が異なる場合は権利範囲外となることも多く、実際の有効成分が当初の理解と異なる場合に権利行使が十分に行えない問題や、文言上は特許の権利範囲に入らないが実質的に「均等」の場合は侵害を問えるいわゆる「均等論」の適用があるかどうか、あるいは、医師や患者の侵害行為に基づき侵害を問う、米国などで法的理論が進む間接侵害/教唆侵害の適用を論じ、日米欧の判例にも触れ、最近問題となっている米国最高裁判例(天然物や自然法則を特許の対象外と判断したMayo事件やMyriad事件)からみた将来の知財保護の問題点を解説している。そして、プロドラッグや代謝物を考慮し、研究開発の進展をにらみつつ、各国の特許要件について十分な理解に基づく専門的な見地から有効な知的財産戦略を提案する内容となっている。

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2014/11/18

代謝物分析における超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析法

論文タイトル
Supercritical fluid chromatography/mass spectrometry in metabolite analysis
論文タイトル(訳)
代謝物分析における超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析法
DOI
10.4155/bio.14.120
ジャーナル名
Bioanalysis Future Science Ltd
巻号
Vol.6, No.12, Pages 1679-1689
著者名(敬称略)
田口 歌織(筆頭著者),福崎 英一郎,馬場 健史(連絡著者)
所属
大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻

抄訳

高拡散,低粘性の超臨界流体二酸化炭素(SCCO2)を移動相として用いる超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)は,高分離,ハイスループットなど分離分析技術として多くの利点を有する.また,SFCはSCCO2が低極性であることから疎水性化合物の分離に好適であるとされてきたが,最近の研究で親水性化合物の分析にも利用できることが示され注目を集めている.代謝物の網羅的な解析を目的とするメタボロミクスにおいては,幅広い性質の化合物が対象となるだけなく,夾雑物が混在する試料において多成分の一斉分析が必要となる場面も少なくない.そのため,クロマトグラフィーによる分離の重要性は高く,また選択性及び感度の高い質量分析計(MS)による検出も必要となっている.そこで本稿では,SFCの分離技術としての基本的な特性を説明するとともに,SFC/MSを用いた代謝物分析手法の開発とその応用例について紹介する.

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2014/09/11

死後CTで異常所見を呈さない頚髄損傷:外傷死検出のための死後画像検査におけるピットフォール

論文タイトル
Spinal Cord Injuries With Normal Postmortem CT Findings: A Pitfall of Virtual Autopsy for Detecting Traumatic Death
論文タイトル(訳)
死後CTで異常所見を呈さない頚髄損傷:外傷死検出のための死後画像検査におけるピットフォール
DOI
10.2214/AJR.13.11775
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
August 2014 vol. 203 no. 2 240-244
著者名(敬称略)
槇野陽介 他
所属
千葉大学大学院医学研究院付属法医学研究教育センター

抄訳

【目的】死後多列検出器型CT検査(PMMDCT:post-mortem multidetector CT)において所見のない頚髄損傷(SCIWORA:spinal cord injuries without radiographic abnormalities)の頻度を調査し、その特徴を検討する。
【方法】解剖前PMMDCTが施行された894例の連続事例の剖検所見を検討し、頚髄損傷が死因であった30事例を集めた。死後画像読影経験4年以上の放射線科専門医2名がCT読影を行い、画像上頚髄・頚椎に外傷所見のないものをSCIWORAと定義した。
【結果・考察】30事例中6事例(20%、95%信頼区間 6-34%)がSCIWORAの定義を満たした。全SCIWORA事例で、CT前に外表所見などから外傷死であることは推定できなかった。また全SCIWORA事例がC3レベル以下の損傷であった。さらに全SCIWORA事例で、解剖所見において、頚椎骨折は認めない一方、CT陰性の頚椎椎間板損傷と椎体周囲出血が認められた。5事例(83%)のSCIWORAで頚髄以外の部位に致死的な外傷は見られなかった。
【結論】致死的な頚髄損傷事例の中には、かなりの割合でSCIWORA事例が見られた。PMMDCTで死亡を評価するとき、評価者はSCIWORAの存在を認識し、CT所見のみで頚髄損傷による死亡を除外してはならない。MRIを使わない限り、頚髄損傷の除外のためには、解剖を行わなければいけない。

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2014/08/06

鉄の膜輸送に関与するシャペロン蛋白質

論文タイトル
Chaperone protein involved in transmembrane transport of iron
論文タイトル(訳)
鉄の膜輸送に関与するシャペロン蛋白質
DOI
10.1042/BJ20140225
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.462 No.1 25?37
著者名(敬称略)
簗取 いずみ、岸 文雄 他
所属
川崎医科大学 分子生物学2(遺伝学)

抄訳

鉄は生命にとって必須の分子であり、様々な補酵素として機能する。一方、活性酸素の産生に深く関与している。そのため、細胞内鉄量を厳密に制御することが重要である。鉄を細胞内に取り込む主な分子は二価鉄膜輸送体DMT1である。鉄は酸化ストレスの原因になるにも関わらず、DMT1によって取り込まれた鉄は細胞質内の“鉄イオンプール”に送られると長く信じられてきた。我々は、DMT1が取り込んだ二価鉄イオンを細胞質側で受容し輸送する分子があるという仮説のもと、解析を進めた。その結果、DMT1にポリC結合蛋白質(PCBP2)が結合することを見出した。DMT1又はPCBP2をノックダウンすると、細胞質内への鉄の取り込みが抑制された。さらに、鉄負荷DMT1はPCBP2と結合するが、鉄除去DMT1にはPCBP2が結合しないことを示した。即ち1) DMT1に鉄が取り込まれる、2) DMT1にPCBP2が結合、3) PCBP2へと鉄が渡される、4) DMT1から鉄結合PCBP2が乖離する、さらに5) 鉄排出を担う膜輸送体フェロポルチンFPN1と鉄結合PCBP2の間にも同様な結合を確認した。このように、膜輸送分子と細胞質の間で鉄の受け渡し機構が存在していることを証明し、PCBP2は「鉄のシャペロン分子」として“Gateway keeper”の役割を果たしていることが明らかになった。

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