抄訳
排卵は卵巣から受精可能な卵が放出される現象を指し,有性生殖により子孫を残すすべての動物にとって不可欠な過程である。10動物門に属する11種の動物の排卵について文献調査から,多くの動物では濾胞破裂という様式によって排卵すること,さらに濾胞破裂による排卵する動物の濾胞においては,2つの重要な細胞学的イベントが共通して誘起されることを提唱した。1)卵を取り囲む濾胞細胞の細胞結合システム(Cell-Cell junctions およびcell-ECM junctions)に変化が起こり,それによって濾胞細胞内の細胞骨格タンパク質の再配置が誘導され,同時に,2)濾胞細胞間を埋めるECMタンパク質の分解が起こることによって,濾胞細胞が変形および移動性を獲得し,濾胞壁の一部に卵を濾胞外に送り出すための通路が形成される。哺乳類や魚類などの脊椎動物の濾胞においては多量のECMタンパク質が濾胞壁に蓄積しており,これらの動物の排卵ではECMタンパク質の分解がより一層重要性を増す。本論文では,動物の排卵の進化および今後の排卵研究の課題についても論じている