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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2026/10/26

 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連 New

論文タイトル
Classification of glucose profile in Japanese patients with type 1 diabetes and its association with complications
論文タイトル(訳)
 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連
DOI
10.1210/clinem/dgag224
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 11, November 2026, Pages 3085–3093
著者名(敬称略)
筆頭著者:益田 貴史、連絡著者:片上 直人
所属
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
著者からのひと言
近年、皮下連続グルコースモニタリング(CGM)は1型糖尿病患者の血糖管理において広く普及していますが、CGMから得られるデータだけで患者を分類したにも関わらず、各群で患者背景や合併症のリスクが異なっていたことが興味深いと考えております。各群の特徴を考慮した治療戦略を講じ、合併症を予防することが1型糖尿病患者の予後改善に重要であると考えます。

抄訳

20歳以上80歳以下の日本人1型糖尿病患者153名を対象に、皮下連続グルコースモニタリングから得られる各血糖変動指標を用いたクラスター分析を実施し、合併症のリスクを比較した。クラスター分析の結果、4つのClusterが同定された。Cluster 1 (n=53)は全ての血糖変動指標が良好であった。Cluster 2 (n=46)は高血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 3 (n=39)は低血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 4 (n=15)は高血糖・低血糖時間とも長く、血糖変動も大きかった。Cluster 1と比較して、Cluster 2は脈波伝播速度上昇のリスクが高く、Cluster 3は重症低血糖のリスクが高く、Cluster 4は多発神経障害、脈波伝播速度上昇、心血管疾患リスクスコア高値のリスクが高かった。

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2026/10/26

 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み New

論文タイトル
A conserved Hox9–10 code underlies the early establishment of hind appendage progenitors in zebrafish and the Iberian ribbed newt
論文タイトル(訳)
 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み
DOI
10.1073/pnas.2621291123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2621291123
著者名(敬称略)
中澤 秀道 川村 哲規 他
所属
埼玉大学大学院理工学研究科生命科学部門・理学部生体制御学科
著者からのひと言
 2025年のeLife誌で発表した胸鰭の研究に続き、今回は腹鰭の形成に不可欠なHox遺伝子群を明らかにしました。特に、魚の腹鰭と両生類の後肢に共通する仕組みを発見したことは、胸鰭と腹鰭、さらには私たちの手足に、なぜ共通のHoxA/D9–13による形態形成の仕組みが備わっているのか、その進化的起源を考える重要な手がかりとなります。2021年のHoxクラスター欠失変異体の作製から研究を積み重ね、学生や共同研究者の皆さんと今回の成果にたどり着けたことを大変うれしく思います。

抄訳

 魚の胸鰭と腹鰭は、進化の過程で四肢動物の前肢と後肢へと変化し、私たちの手足につながりました。これらの器官は形が大きく異なりますが、その複雑な形をつくるために共通のHoxA/D9–13遺伝子システムを利用しています。しかし、この仕組みが進化の過程でどのように成立したのかは不明でした。
本研究では、ゼブラフィッシュの5つのHoxA/D9–10遺伝子を同時に欠失させると、腹鰭のもとになる細胞集団が検出されなくなり、腹鰭が完全に消失することを発見しました。さらに、両生類のイベリアトゲイモリでもHox9–10遺伝子群を破壊すると、後肢の形成が大きく損なわれました。
これらの結果は、魚の腹鰭と四肢動物の後肢の形成開始に共通するHox9–10の働きが、進化を通じて保存されていることを示しています。また、もともと体の後方を決めていたHox遺伝子の仕組みが、まず腹鰭の形成に利用され、やがて胸鰭にも共通するHoxA/D9–13システムへと発展したという進化モデルを支持する成果です。

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2026/10/23

雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割 New

論文タイトル
Role of nuclear receptor NR4A2 in prolactin secretion by female rat lactotrophs.
論文タイトル(訳)
雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割
DOI
10.1530/JOE-26-0188
ジャーナル名
The Journal of endocrinology
巻号
J Endocrinol (2026) 270 (3): e260188
著者名(敬称略)
寺島 涼太 他
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医生理学研究室
著者からのひと言
NR4A2は、神経伝達物質の合成や神経細胞の機能維持など、多様な機能に関わる転写因子です。これまで主に遺伝子発現の調節を通じた働きが注目されてきましたが、本研究では、ホルモンの放出過程にも関与する可能性を示しました。この新たな視点が、下垂体にとどまらず、神経伝達物質やさまざまなホルモンの分泌調節機構、さらには関連する病態の解明につながることを期待しています。

抄訳

プロラクチン (PRL) は、下垂体のラクトトロフから分泌され、乳汁産生を促すホルモンです。しかし、その働きは広く、雌では発情周期や妊娠、偽妊娠、授乳などの生殖状態に応じて、分泌量が大きく変わります。成熟ラクトトロフは高い分泌能を備えながら、ドパミンによる持続的な抑制を受けています。抑制を受けつつ、必要に応じて分泌を速やかに変える。本研究では、その特徴的な仕組みに着目し、分泌制御に関わる因子として、刺激応答性核内受容体NR4Aファミリーを見出しました。成熟雌ラットでは、妊娠や泌乳に伴うPRL分泌の亢進とともにNr4a遺伝子の発現が上昇し、分泌が低下する条件では発現も減少しました。さらに、下垂体初代培養細胞でNr4a2を抑制すると、Prl遺伝子の発現は変わらず、PRL分泌が選択的に低下しました。これらの結果は、NR4A2がPRLの放出過程に関わり、成熟ラクトトロフの高い分泌能を支える可能性を示しています。

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2026/10/23

胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する New

論文タイトル
Constitutive sporulation in wild fission yeast enhances insect-mediated survival.
論文タイトル(訳)
胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する
DOI
10.1073/pnas.2607475123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2607475123
著者名(敬称略)
仁木 宏典 筆頭著者、連絡著者
清家 泰介 連絡著者
所属
国立遺伝学研究所 微生物機能研究室
九州工業大学 大学院情報工学研究院 生命情報工学研究系
著者からのひと言
ジャポニカス分裂酵母は全国各地に生息しており、道端の花や樹皮など、ごく身近な場所にいます。その酵母が昆虫との共生によって今も進化しています。生物の適応進化を身近に感じてもらえる研究です。(仁木)
なぜ、栄養が十分にあるのに胞子をつくる酵母がいるのか。今回の研究では、その不思議な性質が自然界での生存に有利に働くことがわかりました。実験室では見えてこない野生酵母の巧みな生存戦略と、微生物の進化の面白さを感じてもらえれば嬉しいです。(清家)

抄訳

酵母は、栄養条件に応じて栄養増殖と有性生殖を使い分ける。ところが、国内のショウジョウバエから分離されたジャポニカス分裂酵母は、栄養条件が良いにもかかわらず、恒常的に胞子を形成した。この形質は栄養条件が良い環境では増殖に不利であるにもかかわらず、国内各地から同じ形質を持つジャポニカス分裂酵母が見つかった。
そこで、昆虫による捕食がこの形質を維持する選択圧になっていると考え、ショウジョウバエとジャポニカス分裂酵母を用いた共生実験を行った。その結果、ハエによる捕食と消化が、恒常的に胞子を形成する形質に対する正の選択圧になり得ることが明らかになった。また、この形質は、有性生殖の開始を調節する複数の因子に生じた比較的軽微な変異が組み合わさることで獲得されたことが示唆された。
以上の結果から、国内の野生酵母集団では、昆虫との相互作用を介した自然選択により、恒常的な胞子形成という新たな形質を持つ遺伝集団が形成され、維持されていると考えられる。

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2026/10/22

ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる New

論文タイトル
Network topology creates independent control of multiple checkpoints in the cell cycle system.
論文タイトル(訳)
ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる
DOI
10.1073/pnas.2537815123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (39) e2537815123
著者名(敬称略)
山内 悠平 望月 敦史 他
所属
京都大学医生物学研究所 生命システム研究部門・数理生物学分野 望月理論生物学研究室
著者からのひと言

抄訳

細胞が生きるためには、細胞内で様々な機能を持った反応が働き、それぞれが適切に制御される必要があります。ある反応の生成物が別の反応の材料になることで、細胞内の全ての反応が連結したひとつのネットワークとなることが知られています。では、ひとつにつながった動的システムで、異なる機能を担う異なる物質を、それぞれ個別に制御することは果たして可能でしょうか? 京都大学医生研のグループはこれまでに、反応ネットワークの一部がある数式を満たすと「緩衝構造」となり、他の部分から独立して制御される「モジュール性」を獲得することを、数学理論によって示してきました。今回、東京科学大学や京都大学生命科学研究科の研究グループとの共同研究により、細胞のライフステージを支配する「細胞周期システム」に、実際にこの緩衝構造が存在し、重要な役割を果たしていることを実証しました。本研究により、数学的な予測であった緩衝構造が実際に重要な生物機能を果たしていることが示され、細胞周期システムの理解が更新されました。さらには理論と実験から、未知の情報を得る、新しいシステム生物学の方法が提案されました。

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2026/10/21

 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov. New

論文タイトル
Ureaplasma rhincodontis sp. nov. isolated from the faeces of whale shark (Rhincodon typus)
論文タイトル(訳)
 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007317
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology  Volume 76, Issue 10
著者名(敬称略)
瀬川 太雄 他
所属
日本大学生物資源科学部 獣医学科 獣医衛生学研究室
著者からのひと言
 本分離株の名称「TOSA-KAIYUᵀ」は,ジンベエザメが飼育されていた高知県土佐の地名と,共同研究先である海遊館にちなんでいます.
イルカ由来のUreaplasma cetiの培養で得た知見をもとに,ジンベエザメの糞便から新たなウレアプラズマ属細菌を分離できました.
株名には,採取地と研究をともに進めてくださった海遊館の皆様への感謝を込めています.

抄訳

 これまでに私たちは独自の培養法を確立し,イルカから新種細菌Ureaplasma cetiを分離することに成功しました(Segawa et al., Int J Syst Evol Microbiol. 2025).
一方、ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便には,U. ceti と近縁と考えられるウレアプラズマ属細菌が優占することが報告されていましたが,培養分離には至っていませんでした.
そこで本研究は,U. cetiの培養法を基盤に条件を応用することで,ジンベエザメの糞便からこの細菌の分離培養に成功しました.
そして分離株の全ゲノム解析および培養性状の解析を行った結果,本菌がウレアプラズマ属の新種であることを明らかにし,ジンベエザメの学名に因んで「Ureaplasma rhincodontis」と命名しました.
これまで正式に命名されたウレアプラズマ属細菌はすべて恒温脊椎動物から分離されており,本菌は変温脊椎動物から初めて分離・培養されたウレアプラズマ属細菌に位置付けられます.

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2026/10/21

シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計 New

論文タイトル
Quantum Fisher information and photon statistics from shift current shot noise.
論文タイトル(訳)
シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計
DOI
10.1073/pnas.2611254123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2611254123,
著者名(敬称略)
Evgenii Barts 永長 直人 他
所属
理化学研究所 基礎量子科学研究プログラムおよび創発物性科学研究センター
著者からのひと言
光検出器、特にテラヘルツ領域におけるそれは、自動運転を含む多くの応用が期待されていますが、将来は量子情報操作への展開が考えられます。本研究は量子としての光の性質が光検出器の電気信号としてどのように現れるかを理論的に明らかした仕事であり、その基礎学理を与える一歩であると考えています。

抄訳

光は一見なめらかに見えますが、微視的には「光子」と呼ばれる粒として振る舞い、その数にはゆらぎがあります。このゆらぎには、光の平均的な明るさだけではわからない、量子としての性質が隠れています。本研究では、その情報を電気信号として読み出す新しい方法を提案しました。利用するのは、反転中心を持たない結晶に光を当てると、電子の位置がわずかにずれることで生じる「シフト電流」です。この仕組みにより、光子数のゆらぎを、流れる電気量のゆらぎへと変換できます。つまり、電気信号の細かな変動を調べることで、光の隠れた性質を知ることができます。さらに、一定の条件のもとでは、この変動から、光を使ってどれほど精密な測定ができるかを示す量子フィッシャー情報量と呼ばれる量も得られます。電子を次々に増やして信号を強める仕組みなどを必要とせず、光と結晶の性質を直接利用する点が特徴です。光の量子的な性質を電気で読み取る新たな技術として、高感度な光検出や精密測定への応用が期待されます。

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2026/10/21

 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす New

論文タイトル
Skin-resident CXCR6+ memory CD4+ T cells and dendritic cells form dermal perivascular hubs that drive relapse in allergic dermatitis
論文タイトル(訳)
 皮膚常在性CXCR6陽性メモリーCD4陽性T細胞と樹状細胞が形成する血管周囲の細胞集積がアレルギー性皮膚炎の再発を引き起こす
DOI
10.1016/j.immuni.2026.09.010
ジャーナル名
Immunity
巻号
Immunity, October 12, 2026
著者名(敬称略)
椛島 健治 他
所属
京都大学大学院医学研究科 皮膚科学
著者からのひと言
 本研究は、途中で何度も挫折しそうになる困難に直面しましたが、そのたびに筆頭著者の朝比奈良太君が粘り強く乗り越え、ようやく実を結んだものです。今回同定した分子機構は、アトピー性皮膚炎の再燃を防ぐ、すなわち対症療法にとどまらない、より根本的な治療法の開発につながる可能性を秘めています。さらに、この仕組みはアトピー性皮膚炎に限らず、他の慢性炎症性疾患にも共通する可能性があり、今後の幅広い疾患への応用を期待しています。

抄訳

 アトピー性皮膚炎は、治療によって症状が改善しても再発を繰り返すことが多い。その背景には、皮膚に長期間残存する組織常在性メモリーT細胞(TRM細胞)の関与が示唆されているが、その維持機構は十分に解明されていなかった。
本研究では、複数のアレルギー性皮膚炎モデルを用いて、CXCR6を発現するCD4陽性TRM細胞が、炎症の再発を迅速に誘導する病原性細胞集団であることを明らかにした。さらに、これらの細胞は皮膚の血管周囲でCD301b陽性樹状細胞(cDC2)と集積し、CXCL16–CXCR6を介した相互作用によって局所で維持されることを見いだした。このシグナルを阻害すると、病原性TRM細胞の増殖と維持が抑制された。
興味深いことに、ヒトのアトピー性皮膚炎においても、IL-13阻害薬による治療で症状が改善した後の皮膚に、同様の細胞集積が残存していた。
本研究は、アトピー性皮膚炎が再発する仕組みの一端を解明するとともに、CXCL16–CXCR6経路を標的とした再発予防につながる新たな治療戦略の可能性を示した。

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2026/10/20

細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する

論文タイトル
Quiescence to proliferation transition regulates asynchronous mitochondrial DNA replication dynamics
論文タイトル(訳)
細胞の休止期から増殖期への移行はミトコンドリアDNAの非同期複製の動態を制御する
DOI
10.1073/pnas.2602028123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2602028123
著者名(敬称略)
宮川 清、細谷 紀子
所属
東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 放射線分子医学部門
著者からのひと言
 ミトコンドリアDNAでは、細胞核DNAとは異なり、リーディング鎖とラギング鎖の複製が同期しないことが知られていましたが、なぜ極めて単純な環状構造DNAにこの非同期複製が必要とされるかは長年不明でした。今回その1分子解析によって生物学的意義の一つが解明されたことによって、エネルギー代謝と細胞機能の関係について今後新しい展開が期待されます。

抄訳

一つのヒト細胞は数百から数千コピーのミトコンドリアDNAを有しますが、その一部のみが細胞周期に関係なく複製します。リーディング鎖とラギング鎖の非同期複製がミトコンドリアDNAの主な複製機構とされていますが、これまでは、細胞内で刻々と変化するDNA複製動態を観察することが難しかったために、その制御機構の解明は困難でした。本論文は、各鎖の複製開始部位と時間を鑑別するミトコンドリアDNA1分子解析法を用いることにより、細胞の休止期から増殖期への移行過程では、ミトコンドリアDNAの鎖特異的な複製頻度が動的に解離し、複製・転写に必要な分子の要求度が変化することを示しました。すなわち、この過程では、ミトコンドリアRNAポリメラーゼの複製開始における要求度が高まるとともに、DNA障害部位でDNA再プライミングを行うプライマーゼ-ポリメラーゼの要求度が低下します。このように、単鎖レベルで正確にミトコンドリアDNA複製頻度を定量化することで、休止期から増殖期への移行過程におけるミトコンドリアDNA複製機構の動的な性状が明らかになりました。

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2026/10/19

 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス

論文タイトル
Trans- and cis-interaction dynamics of cadherin complexes on membranes visualized by high-speed atomic force microscopy
論文タイトル(訳)
 高速原子間力顕微鏡で可視化された膜上におけるカドヘリン複合体のトランスおよびシス相互作用ダイナミクス
DOI
10.1073/pnas.2620441123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2620441123
著者名(敬称略)
西口 茂孝 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
モレキュラーバイオシステム研究部門
著者からのひと言
 細胞間接着タンパク質の機能は、隣り合う膜間の結合 (トランス結合) と同一膜上の結合 (シス結合) によって異なることが推察されていますが、これらの相互作用を識別して解析することは実現されていませんでした。本研究では、高速原子間力顕微鏡と人工膜システムを組み合わせることによって、膜タンパク質のトランス、シス結合を識別しながらリアルタイムで解析することを可能にしました。様々な膜タンパク質の相互作用解析に応用可能な成果です。

抄訳

 カドヘリンは、細胞同士を接着させ、動物のからだを形成・維持するために重要な細胞間接着タンパク質です。カドヘリンによる細胞間接着には、向かい合う細胞間のトランス相互作用と、同じ細胞膜上のシス相互作用による分子の集合が重要と考えられています。しかし、膜上でこれらの相互作用がどのように形成され、カドヘリンがどのように集合するのか、その動的な過程は十分にわかっていませんでした。本研究では、カドヘリンのトランス・シス相互作用を人工膜上に再構成し、高速原子間力顕微鏡を用いて直接観察しました。その結果、トランス結合したカドヘリンが向きや位置を変えながら動的に相互作用する様子や、シス相互作用を介した多様な相互作用パターンを捉えました。さらに、過去に報告された結晶構造とは異なる複合体構造も観察され、カドヘリンが膜上で複数の会合経路を介して動的かつ多様な構造を形成することが示唆されました。

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