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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2026/09/03

 間接互恵性における二重評価更新の役割 New

論文タイトル
Indirect reciprocity with dual private assessment
論文タイトル(訳)
 間接互恵性における二重評価更新の役割
DOI
10.1073/pnas.2624656123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2624656123
著者名(敬称略)
ターン 有加里ジェシカ 他
所属
神戸大学大学院人文学研究科

抄訳

私たちは日常生活で「評判」をもとに誰を助けるか判断することがよくあります。この仕組みは「間接互恵性」とよばれ、人間社会で協力が維持される重要な要因の一つと考えられています。しかし、同じ人に対する評価が人によって異なると、たまたま生じたわずかな食い違いが次の食い違いを生み、協力が成り立ちにくくなります。そのため先行研究では、評価の食い違いを抑えて協力を維持する仕組みが様々提案されてきました(例えば、ゴシップを通じた意見交換など)。本研究では、より単純な仕組みで評価の食い違いを抑えられることを、理論解析とスーパーコンピューター「富岳」を用いたシミュレーションで示しました。従来の研究では、人々がある対象者を評価するとき、その対象者が他者に協力したかどうかが着目されるという前提を置いていました。本研究ではこれに加え、その対象者が他者から協力されたかどうかも着目されるという前提を導入しました。この二つを組み合わせた「二重評判更新」によって、他者との意見交換といった複雑な過程がなくても、人々の評価が揃いやすくなり、協力も維持されやすくなることが分かりました。

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2026/09/03

滑膜炎・ざ瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎(SAPHO)症候群の早期骨関節病期における純粋な溶骨性骨病変 New

論文タイトル
Purely osteolytic bone lesions in the early osteoarticular phase of synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis and osteitis syndrome
論文タイトル(訳)
滑膜炎・ざ瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎(SAPHO)症候群の早期骨関節病期における純粋な溶骨性骨病変
DOI
10.1136/bcr-2026-273281
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e273281
著者名(敬称略)
懸樋 英一,他
所属
鳥取市立病院 総合診療科
著者からのひと言
本症例では、骨病変だけでなく、先行していた皮膚所見を含めて臓器横断的に情報を統合することで、早期のSAPHO症候群を診断しました。診断の不確実性や患者の意向を踏まえて骨生検を見送り、その後も継続的に再評価した診療過程が、同様の症例における意思決定の一助となれば幸いです。

抄訳

 SAPHO症候群は、滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症、骨炎を特徴とするまれな炎症性疾患である。一般に骨硬化や骨増殖性変化を呈するが、早期には溶骨性病変のみを示すことがあり、悪性腫瘍や感染症との鑑別が問題となる。症例は10歳代後半の女性で、前胸部痛と腰痛を主訴に受診した。CTで胸骨、胸椎および腰椎に多発する純粋な溶骨性病変を認めた。一方、手掌と足底には角化や落屑を伴う皮疹があり、画像上、椎間板は保たれ、悪性腫瘍や化膿性脊椎炎を積極的に示唆する所見に乏しかった。臨床所見を統合してSAPHO症候群と診断し、患者との相談のうえ骨生検は行わず、慎重に経過を観察した。治療後、症状と皮疹は改善し、4か月後のCTでは溶骨性病変に硬化性変化が出現した。典型的な部位の溶骨性病変では、皮膚所見を含む臓器横断的な評価と継続的な画像再評価が、早期SAPHO症候群の診断に重要である。

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2026/09/03

レンサ球菌ABCトランスポーターによるホスホマイシン排出の構造基盤 New

論文タイトル
Structural insights into fosfomycin efflux by a streptococcal ABC transporter
論文タイトル(訳)
レンサ球菌ABCトランスポーターによるホスホマイシン排出の構造基盤
DOI
10.1073/pnas.2535933123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2535933123
著者名(敬称略)
田口 厚志 他
所属
大阪大学感染症総合教育研究拠点 病原体認識研究チーム 細菌生理学研究ユニット
著者からのひと言
薬剤排出ポンプはその重要性から長年研究が進められてきましたが、その中で抗菌薬の排出に直接関わる新たな薬剤排出ポンプを見つけ、その機能や仕組みを明らかにできたことに大きな意義を感じています。今後も、細菌感染症の新たな治療法の開発を見据え、薬剤耐性菌への対策につながる研究を進めていきます。

抄訳

 病原細菌が薬剤耐性を獲得する手段の一つとして、細胞内に入った抗菌薬を細胞外に排出する薬剤排出ポンプが存在します。薬剤排出ポンプは大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性病原細菌で研究が進められてきた一方、肺炎球菌に代表されるグラム陽性病原細菌における役割や仕組みについては未解明な点が多く残されていました。本研究では、肺炎球菌の薬剤排出ポンプを網羅的に解析することで、機能未知のABCトランスポーターが細胞壁合成を阻害する抗菌薬ホスホマイシンの排出を担うことを突き止め、FoeABと命名しました。さらに、クライオ電子顕微鏡による構造解析とリポソーム再構成系を用いた生化学的解析を組み合わせることで、FoeABによる抗菌薬輸送の分子機構を明らかにしました。これまでホスホマイシンを排出する薬剤排出ポンプは報告されておらず、本研究はグラム陽性細菌における薬剤排出ポンプの基質認識特性がこれまで想定されていた以上に多様であることを示唆しています。

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2026/09/02

SFPQ がRNA依存性に形成するコンデンセートが、神経超長鎖遺伝子の多次元的発現制御を統合する New

論文タイトル
RNA-dependent SFPQ condensates coordinate multidimensional regulation of extra-long neuronal genes.
論文タイトル(訳)
SFPQ がRNA依存性に形成するコンデンセートが、神経超長鎖遺伝子の多次元的発現制御を統合する
DOI
10.1016/j.chembiol.2026.06.004
ジャーナル名
Cell chemical biology
巻号
Cell Chemical Biology, 2026; 33, 1146-1164.e9
著者名(敬称略)
細川 元靖 武内 章英 他
所属
愛媛大学大学院医学系研究科 生体構造医学講座
著者からのひと言
ヒトの遺伝子を1塩基=1 mの距離に見立てると、平均的な遺伝子でもおおよそフルマラソンほどですが、神経細胞では100 kmを超え、中には1,000 kmを超える長大な遺伝子が数多く働いています。ポリメラーゼがこれほど長い距離を安定して転写するために、多様な制御機構がどのように連携しているのか? 本研究でその謎の一端を明らかにしました。今後は、核内構造やコンデンセートという視点を含め遺伝子発現制御を理解していきたいと考えています。

抄訳

哺乳類の脳では、神経機能を支える100 kbを超える「超長鎖遺伝子」が数多く発現していますが、これら長大な遺伝子の転写伸長を担う分子複合体の実体は長らく謎のままでした。本研究では、RNA結合タンパク質SFPQが長鎖RNAを足場として、液-液相分離(LLPS)により核内にメッシュ状のコンデンセートを形成することを発見しました。この構造には、転写伸長、RNAプロセシング、クロマチン制御に関わる多様な因子が集積し、超長鎖遺伝子の発現を統合的に制御していました。さらに、この「転写伸長コンデンセート」が形成できなくなると、超長鎖遺伝子の転写やスプライシングが障害されることを明らかにしました。SFPQやその関連分子は自閉スペクトラム症(ASD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)とも関連しており、超長鎖遺伝子発現異常(long gene transcriptopathy)が神経疾患の発症に関与する可能性が示唆されました。

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2026/09/01

血液培養検体におけるグラム染色判定精度の比較 ― コンピュータ支援診断アプリと微生物検査専門家 ― New

論文タイトル
Comparison of Gram stain interpretation accuracy between a computer-aided diagnosis app and microbiology specialists in blood culture samples.
論文タイトル(訳)
血液培養検体におけるグラム染色判定精度の比較 ― コンピュータ支援診断アプリと微生物検査専門家 ―
DOI
10.1128/spectrum.00081-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00081-26
著者名(敬称略)
海老澤 馨 大路 剛 他
所属
神戸大学医学部附属病院感染症内科・神戸大学都市安全研究センター
著者からのひと言
AIのClass 1 accuracyは約75%で、専門家の約90%にはまだ届きませんでした。 ただしAIの弱点は血液培養から検出頻度の非常に低い、GNC、H. influenzae、Campylobacterなど特定カテゴリーに集中しています。現状でも臨床現場の診断補助に使用できると考えられます。

抄訳

血液培養陽性時のグラム染色画像をスマートフォンで撮影し、AIで判定するシステムを専門家と比較した研究である。AIの形態判定精度は約75%で、専門家の約90%には及ばず非劣性は証明できなかった。一方、臨床現場で血液培養から検出される頻度が高いGPCやGPRでは比較的高い性能を示し、AIが苦手な菌はGNC、H. influenzae、Campylobacterなどに集中していた。現時点では本AIは専門家を代替しきれないかもしれないが、夜間・休日や微生物専門家がいない施設でグラム染色判読を支援する技術として期待される。

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2026/08/31

ネック領域と微小管の相互作用がキネシン-1の反時計回りの歩行を導く New

論文タイトル
Neck region-microtubule interactions direct counterclockwise stepping of kinesin-1
論文タイトル(訳)
ネック領域と微小管の相互作用がキネシン-1の反時計回りの歩行を導く
DOI
10.1016/j.bpj.2026.03.043
ジャーナル名
Biophysical Journal
巻号
Biophysical Journal, 2026; 125, 4357-4368
著者名(敬称略)
鄭 誠虎 飯野 亮太
所属
熊本大学大学院生命科学研究部創薬データサイエンス講座
著者からのひと言
キネシン-1が二つの頭部を交互に動かして歩く様子はよく知られていますが、その歩行を原子レベルで再現することは容易ではありません。本研究では、大規模な分子シミュレーションによって、これまで構造が十分に分かっていなかったネック領域の役割に迫りました。実験で観測されてきた特徴的な歩行方向を、分子間相互作用から説明できたことが本研究の大きなポイントです。

抄訳

細胞内では、キネシン-1と呼ばれる分子モーターが、微小管という「レール」の上を二つの頭部を交互に動かしながら進み、さまざまな物質を運んでいます。しかし、二つの頭部をつなぐ「ネック領域」が微小管上でどのような構造をとり、歩行にどのような役割を果たすのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた全原子分子動力学シミュレーションにより、ネック領域が微小管の長軸に対してほぼ垂直に配置され、微小管表面の近くで弱く相互作用する構造を見いだしました。さらに歩行の初期過程をシミュレーションしたところ、後方の頭部が前方の頭部の右側を回り込む、反時計回りの運動が優先的に現れました。この運動はこれまでの実験結果とも一致しており、ネック領域と微小管表面との相互作用が、キネシン-1の歩行方向を制御する重要な要因であることが示されました。 

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2026/08/31

UFSP2–ODR4複合体による脱UFM1化修飾の空間的・動的制御が神経細胞のプロテオスタシスを維持する New

論文タイトル
The UFSP2-ODR4 complex spatially confines and dynamically controls UFM1 deconjugation to safeguard neuronal proteostasis.
論文タイトル(訳)
UFSP2–ODR4複合体による脱UFM1化修飾の空間的・動的制御が神経細胞のプロテオスタシスを維持する
DOI
10.1016/j.molcel.2026.06.026
ジャーナル名
Molecular cell
巻号
Molecular Cell, 2026; 86, 3035-3049.e8
著者名(敬称略)
毛 高鑫 小松 雅明 他
所属
順天堂大学医学部生理学第二講座
著者からのひと言
本研究の重要な点は、UFM1化の「付加」だけでなく「除去」もER上で空間的に制御され、それがER-RQCの終結に必要であることを明らかにした点です。UFM1化酵素と脱UFM1化酵素のいずれが欠損しても神経発生異常を引き起こすことから、神経細胞の恒常性維持には、UFM1修飾の適切なバランスが重要であることが示されました。

抄訳

UFM1システムはユビキチン様タンパク質修飾系の一つであり、小胞体(ER)上で翻訳の品質を監視する小胞体関連リボソーム品質管理機構(ER-RQC)において重要な役割を担っている。これまでに、当研究室らは、UFM1 E3リガーゼ複合体による60Sリボソームタンパク質RPL26のUFM1化と、 UFM1化RPL26の認識がER-RQCの進行に重要であることを明らかにしてきた。本研究では、脱UFM1化酵素UFSP2がER膜タンパク質ODR4と安定な複合体を形成し、RPL26を脱UFM1化することでER-RQCの終結に機能することを明らかにした。また、ODR4はUFM1 E3リガーゼ複合体の構成因子であるUFBP1とも結合し、この結合がER-RQCの進行に必要であった。これらの結果から、UFM1化および脱UFM1化に関与する超複合体が、UFM1の付加、認識、除去という一連の過程をER膜上で協調的に制御することが示唆された。神経前駆細胞特異的に触媒活性欠損型UFSP2を発現するノックインマウスでは、UFM1化RPL26の蓄積、神経細胞死、小頭症および周産期致死が認められ、適切な脱UFM1化が神経発生に必須であることが示された。さらに、重篤な神経発達障害患者で同定された両アレル性UFC1変異はUFM1 E3リガーゼ複合体の中核因子UFL1との結合を増強し、患者由来神経細胞においてRPL26の過剰UFM1化を引き起こした。以上の結果から、RPL26の過剰なUFM1化が神経発生異常につながることが示唆され、ER膜上に局在する脱UFM1化機構が、ER-RQCの適切な終結と神経細胞のプロテオスタシス維持に必須であることが明らかになった。

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2026/08/28

肺上皮被覆液への移行性が異なる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬:マウス肺感染モデルにおける感染部位特異的PK/PD解析

論文タイトル
Three fluoroquinolones with different epithelial lining fluid penetration in a murine lung infection model: an experimental site-specific PK/PD study.
論文タイトル(訳)
肺上皮被覆液への移行性が異なる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬:マウス肺感染モデルにおける感染部位特異的PK/PD解析
DOI
10.1128/aac.00375-26
ジャーナル名
Antimicrobial agents and chemotherapy
巻号
Antimicrob Agents Chemother 70:e00375-26
著者名(敬称略)
細井 彩夏、五十嵐 裕貴 他
所属
慶応義塾大学 薬学部 薬効解析学講座
著者からのひと言
抗菌薬のPK/PD目標値は血漿中濃度をもとに設定されることが多いが、肺炎での作用部位は主にELFである。本研究は、ELF移行性の異なる3剤の比較により、血漿基準とELF基準の目標値の乖離がELF移行性に依存することを示した。ELF移行性の高い薬物では、血漿中濃度のみを指標とすると感染部位での曝露を過小評価しうる。抗菌薬の選択や投与設計に、感染部位の薬物曝露という視点を加える意義を示した研究である。

抄訳

本研究では、肺炎治療に用いられる3種類のフルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、ガレノキサシン、ラスクフロキサシン)について、肺上皮被覆液(ELF)への移行性の違いがPK/PD解析に及ぼす影響を検討した。マウス肺炎球菌性肺炎モデルを用いて血漿およびELF中の薬物濃度を測定し、肺内の菌量変化との関係からPK/PD指標を評価した。その結果、すべての薬剤でAUC/MICが抗菌効果を最もよく反映したが、ELF移行性の違いにより、血漿基準とELF基準のPK/PD目標値には乖離が認められた。特にELF移行性が高いラスクフロキサシンではその乖離が顕著であった。さらに、ELF基準の目標値をヒトのELF/血漿曝露比を用いて換算すると、いずれの薬物も臨床で報告された目標値と概ね一致した。以上より、肺炎における抗菌薬の薬効評価には、ELFに基づくPK/PD目標値を考慮することが、抗菌効果の理解や投与設計の最適化に有用である可能性が示された。

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2026/08/26

フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴

論文タイトル
Genomic signatures of native (Japanese) and introduced (Oceanian) populations of the Asian longhorned tick Haemaphysalis longicornis
論文タイトル(訳)
フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag232
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 8, August 2026, pgag232
著者名(敬称略)
尾針 由真, 中尾 亮 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院
北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所
著者からのひと言
当研究では、フタトゲチマダニにおける「単為生殖」という極めてユニークな生殖形態について、その発生メカニズムに関する仮説を導き出しました。現在は、この仮説の検証に向けて解析対象(採集地点・個体数)を拡大しており、世界中からのマダニ収集を進めております。

抄訳

フタトゲチマダニは人や動物に寄生して病原体を媒介します。原産地である東アジアからオセアニアや北米にも侵入・定着しており、その分布拡大には雌のみで繁殖可能な単為生殖が関与すると考えられていますが、その発生機序は明らかになっていません。本研究では、日本とオセアニアで野外採集した個体と繁殖様式が確定されている実験室維持株から、ミトコンドリア全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型を取得し、分子系統解析や集団遺伝学的解析を実施しました。その結果、ミトコンドリア系統樹では二つの系統群が認められましたが、雄は両群に含まれ、系統群と繁殖様式の関係はありませんでした。また、日本集団では明瞭な地域的遺伝構造がみられませんでしたが、オセアニア集団は日本集団とは異なる遺伝的特徴を示しました。さらに、二系統群間で遺伝子流動が検出されました。以上の結果は、単為生殖が単一起源ではなく、複数回独立に成立した可能性を示唆しています。

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2026/08/26

Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究

論文タイトル
Risk factors for mortality in Stenotrophomonas maltophilia bacteraemia: a 22-year retrospective study in a Japanese acute care hospital.
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究
DOI
10.1099/acmi.0.001194.v3
ジャーナル名
Access microbiology
巻号
Access Microbiology 2026;8:001194.v3
著者名(敬称略)
田沼 道也 他
所属
NTT東日本関東病院 薬剤部
著者からのひと言
Stenotrophomonas maltophiliaに関する国内での知見は依然として限られています。本研究の結果が、S. maltophilia感染症の予後改善や効果的な感染対策の推進に貢献することを期待します。

抄訳

Stenotrophomonas maltophiliaは、院内感染の原因菌として知られるグラム陰性菌であり、高い死亡率との関連が報告されている。しかし、その死亡リスク因子については見解が一致していない。そこで本研究では、22年間にわたるS. maltophilia菌血症の43例を対象に死亡リスク因子について後方視的に解析した。その結果、死亡率は44.2%であった。単変量解析では、Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) スコア、中心静脈カテーテル (CVC) 留置、中心静脈栄養、および糖尿病が死亡と有意に関連していた。多変量解析では、SOFAスコアおよびCVC留置が独立した死亡リスク因子であることが示唆された。一方、適切な抗菌薬治療は全体の死亡率低下とは有意な関連を示さなかった。さらに、CVC留置患者においては、カテーテル抜去が生存率の改善と有意に関連していた。以上より、S. maltophilia菌血症においてSOFAスコアおよびCVC留置は死亡率と関連する重要な因子であることが示された。また、抗菌薬治療の有用性は疾患重症度によって異なる可能性が示唆された。

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