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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2026/08/26

フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴 New

論文タイトル
Genomic signatures of native (Japanese) and introduced (Oceanian) populations of the Asian longhorned tick Haemaphysalis longicornis
論文タイトル(訳)
フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の在来集団(日本)と侵入集団(オセアニア)における遺伝的特徴
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag232
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 8, August 2026, pgag232
著者名(敬称略)
尾針 由真, 中尾 亮 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究院
著者からのひと言

抄訳

フタトゲチマダニは人や動物に寄生して病原体を媒介します。原産地である東アジアからオセアニアや北米にも侵入・定着しており、その分布拡大には雌のみで繁殖可能な単為生殖が関与すると考えられていますが、その発生機序は明らかになっていません。本研究では、日本とオセアニアで野外採集した個体と繁殖様式が確定されている実験室維持株から、ミトコンドリア全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型を取得し、分子系統解析や集団遺伝学的解析を実施しました。その結果、ミトコンドリア系統樹では二つの系統群が認められましたが、雄は両群に含まれ、系統群と繁殖様式の関係はありませんでした。また、日本集団では明瞭な地域的遺伝構造がみられませんでしたが、オセアニア集団は日本集団とは異なる遺伝的特徴を示しました。さらに、二系統群間で遺伝子流動が検出されました。以上の結果は、単為生殖が単一起源ではなく、複数回独立に成立した可能性を示唆しています。

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2026/08/26

Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究 New

論文タイトル
Risk factors for mortality in Stenotrophomonas maltophilia bacteraemia: a 22-year retrospective study in a Japanese acute care hospital.
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia菌血症における死亡リスク因子の検討: 日本の急性期病院での22年間の後方視的研究
DOI
10.1099/acmi.0.001194.v3
ジャーナル名
Access microbiology
巻号
Access Microbiology 2026;8:001194.v3
著者名(敬称略)
田沼 道也 他
所属
NTT東日本関東病院 薬剤部
著者からのひと言
Stenotrophomonas maltophiliaに関する国内での知見は依然として限られています。本研究の結果が、S. maltophilia感染症の予後改善や効果的な感染対策の推進に貢献することを期待します。

抄訳

Stenotrophomonas maltophiliaは、院内感染の原因菌として知られるグラム陰性菌であり、高い死亡率との関連が報告されている。しかし、その死亡リスク因子については見解が一致していない。そこで本研究では、22年間にわたるS. maltophilia菌血症の43例を対象に死亡リスク因子について後方視的に解析した。その結果、死亡率は44.2%であった。単変量解析では、Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) スコア、中心静脈カテーテル (CVC) 留置、中心静脈栄養、および糖尿病が死亡と有意に関連していた。多変量解析では、SOFAスコアおよびCVC留置が独立した死亡リスク因子であることが示唆された。一方、適切な抗菌薬治療は全体の死亡率低下とは有意な関連を示さなかった。さらに、CVC留置患者においては、カテーテル抜去が生存率の改善と有意に関連していた。以上より、S. maltophilia菌血症においてSOFAスコアおよびCVC留置は死亡率と関連する重要な因子であることが示された。また、抗菌薬治療の有用性は疾患重症度によって異なる可能性が示唆された。

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2026/08/25

天然変性タンパク質の自己組織化様式と、アミノ酸配列に符号化された局所構造バイアスとの相関関係 New

論文タイトル
Sequence-encoded conformational biases correlate with self-assembly modes of intrinsically disordered proteins.
論文タイトル(訳)
天然変性タンパク質の自己組織化様式と、アミノ酸配列に符号化された局所構造バイアスとの相関関係
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag189
ジャーナル名
PNAS nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 7, July 2026, pgag189
著者名(敬称略)
小林 凌河 関山 直孝 他
所属
京都大学 理学研究科
著者からのひと言
一般的なタンパク質との対比から、IDPはしばしば構造のないタンパク質と言われます。しかし、アミロイド線維化や相分離といった秩序立った自己組織化は、本当にそんなランダムな分子から生じるのでしょうか?本研究はこうした素朴な疑問に始まり、「IDPには構造がないのではなく、そのアミノ酸配列には自己組織化を方向付ける局所構造バイアスが書き込まれている」という新たなIDP観の提示に繋がりました。IDPの物性理解に新しい視点を提供できれば幸いです。

抄訳

天然変性タンパク質(IDP)は、相分離による凝縮体形成やアミロイド線維化などの自己組織化を介して様々な生理機能や疾患に関わります。しかし、IDPがどちらの自己組織化様式をとるのかを方向付ける仕組みは十分解明されていませんでした。そこで本研究では、アミノ酸配列に符号化された「5残基単位の構造選好性(局所構造バイアス)」が自己組織化を規定すると仮説を立てました。このバイアスを定量化した「5残基スコア」を開発し、強バイアス領域の配置のみが異なる人工IDP群「lag-series IDPs」を設計しました。その自己組織化特性を検証した結果、強バイアス領域は伸長したβシート様構造をとりやすく、この領域がアミノ酸配列上で密に配置された場合には凝縮体からアミロイド線維への転移が促進され、分散配置された場合には線維化が抑制されることが判明しました。本研究は局所構造バイアスがIDPの自己組織化様式を規定することを示唆しており、IDP物性の構造学的理解に寄与する成果です。

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2026/08/25

未培養細菌門WOR-3として知られていた新規細菌門Caldifarciminota門に属する通性嫌気性好熱性細菌の新属新種Caldifarcimen microaerophilum New

論文タイトル
Caldifarcimen microaerophilum gen. nov., sp. nov., a facultatively anaerobic, thermophilic bacterium of a novel bacterial phylum, Caldifarciminota phyl. nov., formerly called candidate phylum WOR-3, description of Caldifarciminaceae fam. nov., Caldifarciminales ord. nov. and Caldifarciminia classis nov.
論文タイトル(訳)
未培養細菌門WOR-3として知られていた新規細菌門Caldifarciminota門に属する通性嫌気性好熱性細菌の新属新種Caldifarcimen microaerophilum
DOI
10.1099/ijsem.0.007229
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
International journal of systematic and evolutionary microbiology 76 7 (2026): n. pag.
著者名(敬称略)
森浩二、日高皓平、玉澤聡、細山哲、玉木秀幸、掛川武、花田智
所属
製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター
著者からのひと言
培養株としてsy37株を分離し、その性状や系統分類的位置を明らかにしたことで新しい細菌門を本論文で提案し、Caldifarciminota門は有効に公表された49番目の細菌門として承認されました。

抄訳

未培養細菌門WOR-3は、イエローストーン国立公園から得られた環境クローン配列として初めてその存在が認識され、世界各地の多様な環境から検出されてきました。しかし、これまでに培養株の報告が無く、その生理学的特徴などは全く解明されていませんでした。私たちは太平洋にある水曜海山の深海底熱水から未培養細菌門WOR-3に属する最初の培養株である偏性嫌気性好熱性グラム陰性細菌sy37株の分離に成功しました。sy37株は繊毛を持つ非運動性の長桿菌で、硫黄又は酸素を電子受容体として呼吸により増殖しました。sy37株の表現型の特徴と16S rRNA遺伝子及びゲノム配列を用いた系統解析の結果に基づき、sy37株を新属新種Caldifarcimen microaerophilumとして提案します。また、Caldifarcimen属を基準属として、未培養細菌門WOR-3をPseudomonadati界に属する新しい細菌門としてCaldifarciminota門を提案します。

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2026/08/25

魚類皮膚粘膜微生物叢は1日以内に環境微生物群集に類似する方向へ迅速かつ可逆的に変化する New

論文タイトル
Rapid and reversible fish skin mucosal microbiota shift toward environmental microbial communities within a day.
論文タイトル(訳)
魚類皮膚粘膜微生物叢は1日以内に環境微生物群集に類似する方向へ迅速かつ可逆的に変化する
DOI
10.1128/spectrum.00522-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00522-26
著者名(敬称略)
今村 千絵、古田 芳一、田中 秀典
所属
豊田中央研究所
著者からのひと言

抄訳

魚は常に環境水に暴露され、皮膚粘液菌叢は環境水菌叢から強い影響を受けているが、その変化の速さや程度は十分に明らかでない。本研究では、ヤリタナゴ(Tanakia lanceolata)を人工アクアポニックス環境と自然環境に近い池の間で繰り返し移動させ、皮膚菌叢の経時変化と再現性を解析した。16S rRNA遺伝子アンプリコン解析の結果、皮膚菌叢は移動後1日以内に急速に再構成され、移動前よりも移動先の環境水菌叢に類似した。この傾向は複数回の移動を含む2回の独立実験で一貫して認められた。また、環境ごとにコア皮膚菌叢は大きく異なり、移動に伴って増減または置換した。さらに、皮膚および環境水菌叢のα多様性は池で増加し、アクアポニックス環境で低下した。以上より、魚類皮膚菌叢が急速な環境変化に応答する高い生態学的可塑性を有することが示された。

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2026/08/24

巨大ウイルスの系統を見直す:フルティヴォウイルスの発見により明らかになった、マモノウイルス科と新規マネスウイルス科を統合する新規の目の設定について New

論文タイトル
Refining a giant virus lineage: a novel order unifying Mamonoviridae and "Manesviridae," unveiled by the discovery of furtivovirus.
論文タイトル(訳)
巨大ウイルスの系統を見直す:フルティヴォウイルスの発見により明らかになった、マモノウイルス科と新規マネスウイルス科を統合する新規の目の設定について
DOI
10.1128/jvi.02031-25
ジャーナル名
Journal of virology
巻号
J Virol 100:e02031-25
著者名(敬称略)
ぺ ジワン, 武村 政春
所属
東京理科大学 大学院理学研究科
著者からのひと言
日本で発見されたメドゥーサウイルスを含むこのウイルスのグループは、未だにその分類が明確ではありませんが、私たち真核生物の起源や進化と密接に関係していると考えられている、とても面白い巨大ウイルスです。その仲間で本論文の主役であるフルティヴォウイルスは鎌倉から、そして同じ仲間のウシクウイルスは茨城からそれぞれ見つかっています。日本産のこれら巨大ウイルスの進化史を見つめることで、私たち人間を含めた真核生物の起源にも迫れるのです!

抄訳

メドゥーサウイルスを含むマモノウイルス科と、クランデスティノウイルスを含む関連ウイルスは、これら二つのグループ間でゲノムサイズや宿主域に大きな隔たりがあり、進化的起源や分類は未確定のままでした。本研究では、単細胞真核微生物ヴェルムアメーバを宿主として、新たな巨大ウイルス・フルティヴォウイルスを分離し、解析しました。このウイルスはおよそ56万塩基対のゲノムをもち、最も近縁なクランデスティノウイルスと特徴を共有していました。興味深いことに、核膜の崩壊と核質内での新生ウイルス粒子のパッケージングを特徴とする、宿主の細胞核に強く依存した独自の複製戦略が明らかになりました。巨大ウイルス全体を見渡した分子系統解析および比較ゲノム解析の結果、フルティヴォウイルス、クランデスティノウイルス、ウシクウイルス、ウサルパティウイルスが明確な単系統群を形成することが示されたため、この未分類だったウイルスグループに対して「マネスウイルス科」という新科を提唱しました。この新科はマモノウイルス科の姉妹群として位置づけられ、ウイルス粒子サイズは類似しているもののゲノムサイズと宿主が異なるこれら二つの科間の進化的関係を明らかにしました。さらに我々は、これら二つの科を統合する新目の設立を提案しました。これらの結果から、この系統のウイルスの多様性がより拡大し、巨大ウイルス全体におけるマモノウイルス科・マネスウイルス科の進化史に、新たな知見をもたらすことが期待できます。

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2026/08/24

馬鼻疽の迅速診断を目的としたラテラルフローアッセイの開発 New

論文タイトル
Development of lateral flow assays for the rapid diagnosis of glanders in equids.
論文タイトル(訳)
馬鼻疽の迅速診断を目的としたラテラルフローアッセイの開発
DOI
10.1128/spectrum.00154-26
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e00154-26
著者名(敬称略)
新保 了, 木村 享史 他
所属
北海道大学大学院獣医学研究科比較病理学教室
著者からのひと言
本研究は、「結核と鼻疽の制圧プロジェクト」(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)2020~2025)の一環として実施されました。
https://www.amed.go.jp/program/list/20/01/001.html
https://www.jica.go.jp/oda/project/1900802/

抄訳

本研究では、鼻疽菌 Burkholderia mallei による人獣共通感染症「鼻疽」の迅速診断を目的として、抗体検出用ラテラルフローアッセイ(LFA)を3種類開発した。抗原には、間接ELISAで有用とされたHcp1、GroEL、全菌体抽出液(WCL)を用い、金コロイド標識組換えプロテインGで抗原結合抗体の発色を行った。モンゴルで収集した陽性31例・陰性51例のウマ血清で評価した結果、Hcp1-LFAは感度・特異度とも100%、WCL-LFAは感度100%、特異度98.0%を示した。GroEL-LFAは感度100%であったが特異度は90.2%と低かった。Hcp1およびWCL-LFAは無症状馬にも高感度で、日本由来の他疾患60例では交差反応を認めなかった。さらに、全LFAは37℃で16週間以上安定して機能した。以上より、Hcp1およびWCLを用いたLFAは、簡便・迅速・高精度で、資源の限られた流行地域における現場診断に有用であることが示された。

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2026/08/24

 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響 New

論文タイトル
Metabolic and muscular effects of switching from somatropin to somapacitan in adults with growth hormone deficiency
論文タイトル(訳)
 成人成長ホルモン分泌不全症におけるソマトロピンからソマパシタンへの切り替えによる代謝及び筋肉への影響
DOI
10.1210/clinem/dgag153
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 9, September 2026, Pages e2096–e2107
著者名(敬称略)
大井(葉)佑夏, 山本 雅昭 他
所属
神戸大学大学院医学系研究科内科学講座 糖尿病・内分泌・総合内科学分野
糖尿病・内分泌内科学部門
著者からのひと言
 ソマパシタンは、成人成長ホルモン分泌不全症に対して承認された週1回投与の成長ホルモン製剤である。本研究は、連日製剤からソマパシタンへの切り替え群と連日製剤継続群を、実臨床下で世界で初めて52週間前向きに比較した。両群で除脂肪量を含む代謝指標に大きな差はみられなかった一方、ソマパシタン群では握力および身体機能の改善が示され、週1回製剤の新たな臨床的意義が明らかとなった。

抄訳

 成人成長ホルモン分泌不全症57例を対象に、連日GH製剤から週1回ソマパシタンへ切り替えた群と連日投与を継続した群を52週間、前向き観察研究で比較した。主要評価項目であるDXAによる全身除脂肪量の変化には群間差を認めなかった(平均差−0.2 kg)。IGF-1 SDSの上昇は連日群で大きく、ソマパシタン群では脂肪量増加を認めた一方、HDLコレステロール、握力、Timed Up and Go Testが改善した。新たな安全性上の懸念はなく、週1回製剤は身体機能を改善する可能性が示されたが、長期的な代謝への影響は今後の検討を要する。

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2026/08/24

ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する New

論文タイトル
Restricting efferocytosis pathway to CD91 via phosphatidylserine-targeting chimeric protein augments antitumor immune responses
論文タイトル(訳)
ホスファチジルセリン標的型キメラタンパク質によるエフェロサイトーシス経路のCD91限定化は抗腫瘍免疫応答を増強する
DOI
10.1016/j.ymthe.2026.05.013
ジャーナル名
Molecular Therapy
巻号
Molecular Therapy, 2026; 34, 4729-4742
著者名(敬称略)
溝手 雄 他
所属
大阪国際がんセンター 次世代がん医療開発研究センター先進探索研究領域 がん免疫療法開発部
著者からのひと言
 新規人工タンパク質であるPStRAPを用いると、細胞が生体内で処理されるときの目印であるホスファチジルセリンを利用して、がんに対する免疫反応を誘導することができました。PStRAPは理論上、従来の化学療法や放射線療法、免疫チェックポイント阻害剤などの細胞死を伴う治療法の効果を増強すると考えられます。今回の研究結果を基にした臨床試験を経て、PStRAPがこれまでにない革新的な免疫治療となることが期待されます。

抄訳

ホスファチジルセリン(PS)は、アポトーシス細胞膜上に表出する代表的なeat-meシグナルであり、MFG-E8などの複数の分子によって認識されてエフェロサイトーシスを促進し、免疫寛容を誘導する。この機序を制御するため、MFG-E8由来のPS認識ドメインと、免疫刺激性貪食受容体として知られるCD91のリガンドであるRAPからなる新規キメラタンパク質PStRAPを設計した。PStRAPは、PSが露出したアポトーシス細胞を、本来の免疫抑制性経路ではなく、CD91を介した免疫刺激性経路によって貪食させる。PStRAP存在下では、アポトーシス細胞の貪食効率、および細胞傷害性T細胞への交差提示能が上昇し、強力な抗腫瘍獲得免疫応答が誘導された。さらに、脂質ナノ粒子に封入したPStRAP mRNAと抗がん剤を併用投与すると、PStRAPは抗がん剤単独の抗腫瘍効果を優位に増強した。これらの結果は、PStRAPがCD91を介したアポトーシス細胞の貪食を誘導し、効果的な抗腫瘍獲得免疫応答を始動させ得ることを示唆している。

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2026/08/24

微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害 New

論文タイトル
Selective saccular plasticity under microgravity links peripheral transcriptomic remodeling to postflight vestibular dysfunction
論文タイトル(訳)
微小重力下における球形嚢の選択的可塑性:遺伝子発現変化と宇宙飛行後の前庭機能障害
DOI
10.1073/pnas.2605593123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (35) e2605593123
著者名(敬称略)
安部 力 他
所属
福井大学 学術研究院医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 生理学分野

抄訳

長期宇宙飛行から地球に帰還した宇宙飛行士では、ふらつきや歩行障害などの前庭機能低下がみられますが、そのメカニズムは十分に解明されていません。本研究では、国際宇宙ステーション(ISS)で35日間飼育したマウスの内耳から、重力を感知する球形嚢と卵形嚢を個別に採取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、球形嚢では神経伝達やシナプス機能に関連する多数の遺伝子が変化した一方、卵形嚢では大きな変化を認めませんでした。さらに、157~328日間ISSに滞在した宇宙飛行士を調べたところ、地球帰還直後には球形嚢機能が選択的に低下し、姿勢のふらつきも増加していました。また、微弱な前庭電気刺激により帰還後の姿勢バランスが改善しました。これらの結果は、球形嚢が重力環境の変化に応じて分子・機能の両面で適応する可能性を示しており、将来の長期宇宙飛行における重力再適応や前庭リハビリテーションへの応用が期待されます。

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