本文へスキップします。

【全】メガメニュー
H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2026/08/10

One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析 New

論文タイトル
One Health genomic insights into environmental and animal reservoirs of community-associated Clostridioides difficile in Japan.
論文タイトル(訳)
One Healthの視点から探る日本における市中関連Clostridioides difficileの環境および動物リザーバーのゲノム学的解析
DOI
10.1128/aem.00397-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e00397-26
著者名(敬称略)
吉澤 定子 他
所属
東邦大学 医学部 医学科(大森病院)
著者からのひと言

抄訳

Clostridioides difficileC. difficile)は抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌であるが、近年では医療機関外で発症する市中関連感染(CA-CDI)の増加が世界的な課題となっている。本研究では、日本国内で採取した下痢外来患者、伴侶動物、家畜、野生動物および土壌由来検体を対象として、C. difficileの分離および全ゲノム解析を実施し、One Healthの観点から分子疫学的解析を行った。その結果、公園土壌および伴侶動物から高率に菌が検出され、コアゲノムSNP解析により、患者由来株と公園土壌由来株、ならびに犬由来株と公園土壌由来株の一部が近縁である可能性が明らかとなった。一方、これらの結果は感染伝播の方向性を示すものではなく、人・動物・環境の間で共通する環境リザーバーの存在を示唆する知見である。本研究は、日本におけるCA-CDIの疫学を理解する上でOne Healthの視点が重要であることを示すとともに、環境リザーバーの役割の解明や今後の公衆衛生対策の基盤となる知見を提供するものである。

論文掲載ページへ

2026/08/10

ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題 New

論文タイトル
Massive gas-forming iliopsoas abscess during bevacizumab-containing chemotherapy for recurrent sigmoid colon cancer: a diagnostic challenge
論文タイトル(訳)
ベバシズマブ併用化学療法中の再発S状結腸癌患者に発症した巨大ガス産生性腸腰筋膿瘍:診断上の課題
DOI
10.1136/bcr-2026-275685
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e275685
著者名(敬称略)
中川 直貴、永坂 岳司 ほか
所属
川崎医科大学附属病院 臨床腫瘍科
著者からのひと言
がん薬物療法中の感染症では、薬剤性有害事象、腫瘍の進展、医療デバイス関連感染などが重なり、原因を一つに絞れないことがあります。本症例は、早期CTと救急・放射線科・臨床腫瘍科の連携が患者救命に直結した実例です。

抄訳

再発S状結腸癌に対してカペシタビン・オキサリプラチン・ベバシズマブによる治療中であった50歳代女性に、発熱、腹痛、下痢、意識障害を契機として巨大なガス産生性左腸腰筋膿瘍を発症した症例を報告しました。CTで後腹膜から腎周囲に及ぶ多房性膿瘍を確認し、緊急CTガイド下ドレナージと広域抗菌薬治療を行いました。膿瘍培養は腸管由来を示唆する多菌種性・嫌気性菌を含む所見で、尿培養とは一致しませんでした。腫瘍再発、過去の腸管由来菌血症、尿管ステント、ベバシズマブ投与など複数の要因が重なった可能性があり、がん治療中の腹痛・発熱では早期CT、多職種連携、原因を一つに決めつけない診断姿勢が重要であることを示しました。
 

論文掲載ページへ

2026/08/10

手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究 New

論文タイトル
Automatic acromegaly detection using deep learning on hand images: a multicenter observational study.
論文タイトル(訳)
手の画像データを用いた深層学習による先端巨大症の検出:多施設共同観察研究
DOI
10.1210/clinem/dgag027
ジャーナル名
The Journal of clinical endocrinology and metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 8, August 2026, Pages e1994–e2005
著者名(敬称略)
大町 侑香, 福岡 秀規
所属
神戸大学 医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
著者からのひと言
AIによる身体所見の評価は疾患の早期発見に大きな可能性を秘めていますが、社会実装にはプライバシーへの配慮が欠かせません。私たちはその課題に着目し、個人が特定されにくい「手」の画像を用いたAIモデルを開発しました。手に異常を呈する疾患は先端巨大症以外にも数多く存在します。本研究を第一歩として、さまざまな疾患の早期発見につながるAI技術の実用化を目指していきたいと考えています。

抄訳

先端巨大症は成長ホルモン過剰分泌により特徴的な顔貌や手足の肥大を呈するが、症状が緩徐に進行するため診断遅延が多く、早期診断法の開発が課題である。本研究では、プライバシー保護の観点から顔画像ではなく手背および握り拳画像を用いたAIスクリーニングモデルを開発した。全国15施設で716例(先端巨大症317例、対照399例)を登録し、ResNet-50を基盤とした深層学習モデルを構築・評価した。その結果、感度0.89、特異度0.91、ROC-AUC 0.96、PR-AUC 0.95と高い診断性能を示し、内分泌専門医10名を上回る精度を示した。本研究は、手背と握り拳画像を用いて高精度な先端巨大症検出を実現した初めての報告であり、健診やプライマリケア、遠隔医療におけるスクリーニングツールとしての実用化が期待される。希少疾患である先端巨大症のみならず、関節リウマチなどの他の疾患への応用を目指している。一方、本モデルは専門医の診断を代替するものではなく、臨床判断を補完する補助ツールとしての活用が望まれる。

論文掲載ページへ

2026/08/07

共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る New

論文タイトル
Symbiotic Escherichia coli strains can better colonize host stinkbugs and outcompete natural symbiotic bacteria, but confer less fitness benefit.
論文タイトル(訳)
共生進化大腸菌は本来の共生細菌よりすぐれた宿主カメムシへの感染定着能力を示すが、適応度への貢献では劣る
DOI
10.1128/mbio.00951-26
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio 17:e00951-26
著者名(敬称略)
Wenjin Cai 森山 実 深津 武馬 他
所属
産業総合技術研究所 モレキュラーバイオシステム研究部門 バイオシステム多様性研究グループ
著者からのひと言
長い共進化の過程を共にしてきた昆虫と共生微生物の相互依存関係は極めて安定なものと考えていましたが、実験室で人為的に作出した共生進化大腸菌が、本来の共生細菌を定着能力で上回り、駆逐してしまったことは、私たちにとっても驚きの発見でした。

抄訳

多くの昆虫は体内に共生微生物を保有し、世代を超えて受け継ぎながら、緊密な相利共生関係を築いてきた。長い共生進化の過程においては、こうした共生微生物の置換が幾度となく起こり、多様な共生系を生み出す要因となっている。しかし、微生物置換の具体的な進化プロセスには依然として不明な点が多い。最近私たちは、Pantoea属の相利共生細菌を中腸共生器官に保有するチャバネアオカメムシにおいて、共生器官に定着可能な人工共生進化大腸菌の作出に成功した。この共生進化大腸菌と本来の共生細菌を競合感染させたところ、共生進化大腸菌は本来の共生細菌を上回る定着能力を示す一方で、宿主昆虫の適応度への貢献は劣ることが判明した。自然界において長期にわたり共進化してきた本来の共生細菌を上回る共生能力が、非共生細菌である大腸菌で実験室において短期間に進化したという驚くべき知見である。本研究成果は、宿主にとって不利益であっても高い定着能力を備えた「裏切り者 cheater」的な感染戦略をもつ細菌が、共生進化にどのような影響を与えるかについて、実験的に検証可能なモデル系を提示するものである。

論文掲載ページへ

2026/08/07

高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連 New

論文タイトル
Loneliness and Resting-State Functional Brain Connectivity Among Older Adults: A Proportional Correlation
論文タイトル(訳)
高齢者における孤独感と安静時機能的脳結合との関連
DOI
10.1176/appi.neuropsych.20230167
ジャーナル名
The Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences
巻号
Volume 37, Number 1
著者名(敬称略)
今井 鮎  松岡 照之 他
所属
京都府立医科大学大学院 医学研究科 精神機能病態学
著者からのひと言
本研究は、孤独感は認知症のリスク因子であるだけでなく、認知症前駆期の神経変性に伴う早期徴候である可能性も示唆している。両者の因果関係を明らかにするためには今後の縦断研究が期待される。

抄訳

孤独感は認知症のリスクを高めると報告されているが、その機序は十分には解明されていない。そこで、43名の高齢者(健忘型軽度認知障害13名、正常認知機能30名)を対象に孤独感と安静時機能的MRIによる機能的脳結合との関連を調べた。孤独感は改訂版UCLA孤独感尺度を用いて評価した。先行研究で孤独感との関連が報告されている両側の海馬、視床、前部島皮質、扁桃体、外側前頭前野、内側前頭前野、後部帯状回、前部帯状回をシード領域とし、CONN toolboxを用いたROI-to-ROI解析により全脳の関心領域との機能的結合を解析した。その結果、孤独感が強いほど、右海馬と左外側頭頂葉との機能的結合は強く、左扁桃体と左前頭弁蓋、および左扁桃体と右縁上回との機能的結合は弱かった。これらの結果から、孤独感は海馬、頭頂葉、前頭葉、扁桃体の機能異常と関連し、これらの脳領域はアルツハイマー病や軽度認知障害で異常が認められることから、孤独感は認知症に関連した脳機能変化と関連する可能性が示唆された。

論文掲載ページへ

2026/08/07

血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺 New

論文タイトル
Hypoglossal nerve palsy secondary to cervical spondylosis mimicking angio-oedema
論文タイトル(訳)
 血管性浮腫様の舌腫脹を呈した頸椎症による舌下神経麻痺
DOI
10.1136/bcr-2025-267982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e267982
著者名(敬称略)
福井遼太  上田 剛士 他
所属
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科
著者からのひと言
 片側性の舌腫脹では、舌癌などの腫瘍性病変をはじめとした局所病変が鑑別に挙がりますが、血管性浮腫や神経原性浮腫でも同様の所見を呈することがあります。本症例では、舌偏位やMRI所見に加え、環椎後頭関節周囲まで注意深く診察・画像評価することが診断につながりました。「舌の腫れ」という症候を局所病変だけでなく、神経学的・解剖学的な視点から捉えることの重要性を示す症例として、日常診療の一助となれば幸いです。

抄訳

 50歳代男性が、急性に発症した右側の舌腫脹、構音障害、嚥下障害を主訴に受診した。片側性の舌腫脹が目立ったことから当初は血管性浮腫が疑われたが、その後も右方への舌偏位が持続し、右舌下神経麻痺と診断した。画像を再検討すると、右舌下神経管出口部に骨棘を認め、環椎後頭関節の変形性変化、関節液貯留および周囲の骨髄浮腫を伴っており、頸椎症による舌下神経の圧迫が原因と考えられた。舌下神経麻痺では慢性期には舌萎縮を呈する一方、急性期には神経原性浮腫による舌腫脹が前景に立ち、舌偏位が目立たない場合がある。MRIで舌浮腫が正中を境に片側に限局する場合は、神経原性浮腫を示唆する手掛かりとなり得る。また、片側性舌腫脹では血管性浮腫のみならず舌下神経麻痺を鑑別に挙げ、その原因として腫瘍性病変や内頸動脈解離などを除外するとともに、頸椎症も考慮することが重要である。

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

 インフルエンザウイルス感染が引き起こす上気道常在細菌叢の病原性転化 New

論文タイトル
Influenza A virus infection induces initial proliferation of commensal Streptococcus pneumoniae in the larynx leading to dissemination into the lower respiratory tract
論文タイトル(訳)
インフルエンザウイルス感染が引き起こす上気道常在細菌叢の病原性転化
DOI
10.1128/jvi.00555-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Vol. 100, No. 7
著者名(敬称略)
加藤 広介 川口 敦史 他
所属
筑波大学医学医療系・分子ウイルス学研究室
著者からのひと言
 二次性細菌性肺炎はインフルエンザウイルス感染症による死亡例の多くを占める重要な合併症です。
その多くは、外環境からの病原性細菌による感染ではなく、体内常在菌の病原性転化(ディスバイオーシス)によるものです。
本研究で開発した動物モデルによって、詳細な分子機構を明らかにしていくことをめざしております。

抄訳

普段は病原性を示さず上気道に定着している常在菌が、インフルエンザウイルス感染をきっかけに病原性を発揮し、重篤な二次性細菌性肺炎を引き起こすことがあります。しかし、常在菌が上気道の「どこで」増殖を開始し、どのように下気道へ拡大するのかは明らかになっていませんでした。
本研究では、マウス上気道に定着できる肺炎球菌株を選定し、対数増殖期にのみ近赤外発光を示す組換え株を構築しました。これをマウスに定着させ、感染後の増殖動態をin vivoイメージングで解析しました。
その結果、菌増殖が顕著となる主要部位は鼻腔や肺ではなく、声帯周囲の喉頭であり、増殖能が活性して気管や肺へ拡大することが明らかになりました。
本研究は喉頭が常在菌の増殖が活性化する重要部位であることを示しています。今後、喉頭の微小環境変化を解明することで、二次性細菌性肺炎の早期予防や新たな局所介入法の開発につながると期待されます。

 

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

グアニル酸キナーゼ1は、イノシン三リン酸分解酵素が欠損した哺乳動物細胞のRNAにおいて、イノシンが蓄積する原因となる酵素である。 New

論文タイトル
Guanylate kinase 1 is an enzyme responsible for inosine accumulation in RNA of mammalian cells deficient in inosine triphosphatase
論文タイトル(訳)
グアニル酸キナーゼ1は、イノシン三リン酸分解酵素が欠損した哺乳動物細胞のRNAにおいて、イノシンが蓄積する原因となる酵素である。
DOI
10.1073/pnas.2606968123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (31) e2606968123
著者名(敬称略)
土本 大介 他
所属
九州大学 生体防御医学研究所 研究推進ユニット 先端研究開発室
著者からのひと言
 稀少な難病である発達性およびてんかん性脳症35の治療を目指して原因物質ITPの生体内生成経路の解明を試み、成功しました。治療標的となりそうなGUK1は、強く抑制されると別の疾患の原因となることが最近報告されたことからまだまだ治療法開発までは遠いようですが、今後も研究を続けて治療に結び付けたいと考えています。

抄訳

 イノシン三リン酸(ITP)分解酵素欠損は、発達性およびてんかん性脳症35 (DEE35)の原因となる。しかし原因物質ITPの生体内生成経路は不明であった。我々はITP分解酵素欠損培養細胞と組換えタンパク質を用いた研究により、グアニル酸キナーゼ1(GUK1)が細胞中に存在しているイノシン一リン酸を間違ってリン酸化し、生じたイノシン二リン酸が更にリン酸化されてITPが生成されることを明らかにした。続いてDEE35モデルマウスでGUK1を半分欠損させると寿命が延長し、大脳皮質におけるRNA中のイノシンが減少した。RNA中イノシンはRNA合成中にITPが取り込まれたと考えられる。本研究の結果は、ほ乳動物における主なITP生成経路がGUK1に依存したイノシン一リン酸からの二段階リン酸化であることを示している。

論文掲載ページへ

2026/08/07

液-液相分離(LLPS)依存性および非依存性機構によるC型肝炎ウイルス感染細胞における脂肪滴関連リング構造の形成 New

論文タイトル
Assembly of lipid droplet-associated ring structures in hepatitis C virus-infected cells via liquid–liquid phase separation (LLPS) and non-LLPS mechanisms
論文タイトル(訳)
液-液相分離(LLPS)依存性および非依存性機構によるC型肝炎ウイルス感染細胞における脂肪滴関連リング構造の形成
DOI
10.1128/jvi.00780-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
J Virol 100:e00780-26
著者名(敬称略)
Mengyu Jiao、紺野 在、鈴木 哲朗 他
所属
浜松医科大学医学部 微生物学・免疫学講座

抄訳

 C型肝炎ウイルス(HCV)は感染性粒子形成の場として脂肪滴(lipid droplet: LD)を利用することが知られているが、粒子形成に関与する因子がLDへ集積する分子機構は十分解明されていなかった。本研究では、HCV感染後にウイルスカプシド(Core)タンパク質がLDへ局在した後、ストレス顆粒(stress granule: SG)の中核的な分子スイッチとして働くRNA結合因子G3BP1が時間差をもってLD周囲へ集積することを見いだした。液-液相分離(liquid–liquid phase separation: LLPS)阻害剤処理により、G3BP1およびG3BP1とともにストレス顆粒形成を担うTIA-1のLD局在は消失した一方、HCVタンパク質CoreおよびNS5Aの局在には影響を認めなかった。また、Core単独ではG3BP1をLDへ誘導できないが、HCV RNAとの共発現によりG3BP1がLD周囲へ集積することを明らかにした。
以上より、HCV感染細胞ではLD上のCoreに新生ウイルスRNAが加わることでLLPS依存的な生体分子凝縮体が形成され、G3BP1をはじめとするSG関連因子がLDへ集積する新たな機構を提唱する。本研究はHCV粒子形成およびゲノムパッケージング機構の理解を深め、新たな抗ウイルス戦略の基盤となる知見を提供する。

 

 

論文掲載ページへ

2026/08/07

高精度な古代人ゲノムが明らかにする日本列島の先史集団史とでんぷん食への適応進化 New

論文タイトル
High-coverage ancient genomes reveal divergent population histories and prehistoric starch-related genetic variation in Japan
論文タイトル(訳)
高精度な古代人ゲノムが明らかにする日本列島の先史集団史とでんぷん食への適応進化
DOI
10.1073/pnas.2606162123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (30) e2606162123
著者名(敬称略)
石谷 孔司 他
所属
金沢大学 サピエンス進化医学研究センター
著者からのひと言
本研究では、考古学・人類学・進化学の知見を高精度な古代人ゲノム解析によって結びつけ、日本列島における人々の移動、集団の変化、食への適応進化の可能性を総合的に議論しています。今回得られた縄文人と弥生人の高精度ゲノムは、祖先集団の起源や近隣集団との関係性、日本本土における先史時代の集団史にさまざまな知見をもたらしました。日本列島の古代人ゲノム研究における重要なマイルストーンになったと考えています。

抄訳

本研究では、群馬県・居家以岩陰遺跡から出土した縄文時代早期の人骨と、山口県・土井ヶ浜遺跡から出土した弥生時代中期の人骨から、従来の水準を大きく上回る高精度な全ゲノム配列が構築された。これにより、低被覆度データでは困難だった人口動態の推定や遺伝子コピー数の解析が可能となった。解析の結果、両者の祖先集団はいずれも最終氷期に集団サイズを減少させたが、その後、縄文人の祖先集団は比較的安定した規模を維持した一方、弥生人の祖先集団は大陸側で段階的に増加し、新石器時代以降の複数の大陸系集団との交流を経て形成された可能性が示された。また、両個体は唾液アミラーゼ遺伝子のコピー数が比較的高く、稲作が広く普及する以前の縄文時代にも、でんぷん質の植物資源利用と関連しうる遺伝的多様性が存在したことが示唆された。本研究によって先史時代の集団移動や生業の変化が日本列島の人々の遺伝的特徴をどのように形作ってきたのかが明らかになった。

論文掲載ページへ