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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2026/10/15

浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性 New

論文タイトル
Fine-scale structural diversification among closely related Legionella pneumophila isolates from a bath-associated environmental reservoir.
論文タイトル(訳)
浴場環境に由来する近縁なLegionella pneumophila株間におけるゲノム構造の微細な差異に基づく多様性
DOI
10.1128/aem.01127-26
ジャーナル名
Applied and environmental microbiology
巻号
Appl Environ Microbiol 92:e01127-26
著者名(敬称略)
中嶋 直樹 他
所属
神奈川県衛生研究所 微生物部
著者からのひと言
本研究では、個々の検体から多数のコロニーを分離して解析することで、同一浴場環境中に存在するレジオネラ属菌のゲノム構造の多様性を明らかにしました。本研究が、レジオネラ属菌の環境中での多様化の理解や、感染源調査におけるゲノム解析手法の検討に役立てば幸いです。

抄訳

レジオネラ症の感染源調査では、コアゲノム一塩基変異(cgSNV)解析が分離株間の遺伝的近縁性の評価に用いられるが、近縁株間に存在するゲノム構造の違いを十分に捉えられない可能性がある。本研究では、レジオネラ症患者および関連する浴場施設の環境試料から分離されたLegionella pneumophila 138株を対象に、cgSNV解析と比較ゲノム構造解析を組み合わせ、近縁株間のゲノム多様性を調査した。cgSNV解析では全株間のSNV差が最大20であり、臨床由来株が遺伝的に均一な系統を形成する一方、環境由来株には多様な遺伝子型が認められた。さらに、代表48株のコンプリートゲノム配列を比較した結果、ゲノムシンテニーはほぼ保存されていたものの、挿入配列(IS)、特にIS256の挿入位置に顕著な多様性が認められた。同一のcgSNV遺伝子型を共有する株間でもIS挿入パターンが異なっており、ISに関連した構造的変異がコアゲノムSNVの蓄積とは独立して生じ得ることが示唆された。

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2026/10/13

 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構 New

論文タイトル
Step-by-step maturation mechanism of the binary toxin pore revealed by cryo-EM analysis
論文タイトル(訳)
 クライオ電子顕微鏡によって明らかになった二成分毒素ポアの段階的成熟機構
DOI
10.1073/pnas.2627537123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2627537123
著者名(敬称略)
筆頭著者:山田 等仁  連絡著者:津下 英明 
所属
京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科
著者からのひと言
 膜孔はいかにして出来上がるのか。まず、モノマーとして発現したタンパク質は、プロテアーゼによってプロ配列が切断され、7量体の可溶性プレ膜孔を形成します。さらにβバレルからなる「注射針」が形成され、膜に穴をあける膜孔へと成熟します。本研究では、これまで謎であったプレ膜孔が出来上がる過程を明らかにしました。段階を踏んで巧妙かつ合理的に膜孔が組み上がっていく仕組みは、まさに驚きです。

抄訳

膜孔形成タンパク質はそれがリング状に集合して多量体となり、細胞膜等に貫通する孔を形成し、感染や免疫、細胞殺傷に関与することが知られています。膜孔形成タンパク質は最初に不活性のプレ膜孔を形成し、その後に膜貫通型の膜孔に構造変化することが知られていましたが、これがどのような順序で進行するかは深く理解されてきませんでした。我々は細菌が産生する膜孔形成タンパク質の研究に取り組み、膜孔への構造変化が立体的な制約によって停止した試料「Ibロゼッタ」を得ることに成功し、クライオ電子顕微鏡を用いて構造解析を行いました。その結果、プレ膜孔と膜孔に加え、その中間段階に対応する複数の構造を解明することができました。これによって、プレ膜孔から膜孔への構造変化は、段階的かつドミノ倒しのように秩序だって進行することが明らかになりました。本研究から得られた知見は、膜孔形成タンパク質の分子メカニズムの理解を深めるだけでなく、膜孔を利用した研究用ナノデバイスの設計等への応用が期待されます。

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2026/10/13

ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明 New

論文タイトル
Uncovering the role of dimerization on dynamics and inhibitor stability in human versus Xenopus LTA4H.
論文タイトル(訳)
ヒトとアフリカツメガエル (Xenopus laevis) のロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)における、ダイナミクスおよび阻害剤の安定性に対する二量体化の役割の解明
DOI
10.1016/j.bpj.2026.03.027
ジャーナル名
Biophysical journal
巻号
Biophysical Journal, 2026; 125, 4300-4312
著者名(敬称略)
Gert-Jan Bekker, Sandhya P. Tiwari
所属
大阪大学 蛋白質研究所
著者ウェブサイト
著者からのひと言
This work is an exploration of the impact of oligomer assembly on small molecule stability in a very special, bifunctional enzyme. We are currently pursuing protein engineering efforts to switch the dimer/monomer states of human and X. laevis LTA4H, to better understand how their conformational dynamics and inhibition are altered.

抄訳

ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)は、炎症を促進するロイコトリエンB4の生合成の最終段階を担う酵素です。M1ファミリーの金属ペプチダーゼに属し、エポキシド加水分解酵素とアミノペプチダーゼの二つの活性を持ちます。本研究では、LTA4H阻害剤ベスタチンの結合が酵素の構造動態に及ぼす影響を調べました。ヒトの単量体とX. laevisの二量体のX線結晶構造を基に、阻害剤の有無および単量体・二量体の条件で全原子分子動力学シミュレーションを行い、比較解析しました。その結果、X. laevisの二量体ではサブユニット間の相互作用が活性部位とC末端ドメインの連動を変化させ、ベスタチンの結合を不安定にすることが示唆されました。この影響は、サブユニットを単独にすると弱まりました。本研究は、創薬において静的な構造だけでなく、酵素の会合状態と動的な性質を考慮する重要性を示しています。

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2026/10/13

thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加 New

論文タイトル
Patagonian Ice Sheet discharge enhanced by AMOC slowdown through thermal bipolar seesaw
論文タイトル(訳)
thermal bipolar seesawを介したAMOCの弱化に伴うパタゴニア氷床からの堆積物流出の増加
DOI
10.1073/pnas.2532733123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (38) e2532733123
著者名(敬称略)
粕谷 拓人 他
所属
国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境研究部門 地球表層システム研究センター

抄訳

全球の気候を調節する重要な役割を担う大西洋子午面循環(AMOC:Atlantic Meridional Overturning Circulation)は、将来的な弱化が懸念されているものの、遠隔地への影響には不明点が多く残されている。最終氷期に繰り返し発生したAMOCの弱化は、その影響が北大西洋から遠く離れた地域へどのように波及するかを理解する手がかりとなる。本研究では、南東太平洋チリ沖で得られた海底堆積物記録と気候モデル実験を組み合わせ、当時のAMOC弱化が南半球中・高緯度域に及ぼした影響を調査した。その結果、AMOCの弱化に応答して、パタゴニア氷床からの堆積物や融解水の流出が繰り返し増加したことを示す証拠を得た。数値シミュレーションからは、AMOC弱化に伴う南太平洋の海水温上昇と南半球偏西風帯の強化が、パタゴニアを含む南半球中・高緯度域の降水量の増加や氷床縁辺部での融解を促進した可能性が示された。本研究は、両半球間の熱の再分配(thermal bipolar seesaw)を介した大気・海洋循環の変化を通じて、AMOCの弱化が南半球中・高緯度域にまで広範な気候変動を引き起こし得ることを示している。

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2026/10/06

HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序

論文タイトル
Digenic HNF1A and ABCC8 variants provide mechanistic insight into early-onset diabetes
論文タイトル(訳)
HNF1A・ABCC8 二遺伝子病的バリアントから明らかになった若年発症糖尿病(MODY)の病態機序
DOI
10.1210/clinem/dgag183
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 10, October 2026, Pages 2827–2836
著者名(敬称略)
本田 真希江 堀川 幸男 他
所属
岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学
中部国際医療センター ゲノム医療研究センター・健康管理センター
著者からのひと言
MODY疑い例では、一つの原因遺伝子が同定されても、他の病的バリアントが発症時期や病態を修飾する可能性がある。本研究は、HNF1AとABCC8の病的バリアントの相加的作用を機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

抄訳

MODY様家系の発端者にHNF1A、HNF1B、ABCC8の3遺伝子に4変異を同定した。機能解析の結果、HNF1A p.Ser551Lysfs*2は転写活性が野生型の約5%に低下し、ABCC8 p.Arg298Cysはチャネル活性が77%に低下した。一方、HNF1Bともう片方のABCC8のバリアントは野生型と同等であった。家系解析ではHNF1AとABCC8の病的バリアントをそれぞれ糖尿病罹患した父と母から継承し、両変異を有する発端者は両親より早期に発症していた。子宮内高血糖曝露に加えてHNF1AとABCC8の病的バリアントが相加的に作用してMODYの発症に寄与することを機能解析により示し、複数のMODY関連遺伝子を評価する重要性を明らかにした。

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2026/10/02

同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性

論文タイトル
The diagnostic potential of combined quantitative polymerase chain reaction and next-generation sequencing using the same primers for periprosthetic joint infection.
論文タイトル(訳)
同一プライマーによる次世代シーケンシングと定量 PCRの併用による人工関節周囲感染症診断における可能性
DOI
10.1128/spectrum.04128-25
ジャーナル名
Microbiology spectrum
巻号
Microbiol Spectr 14:e04128-25
著者名(敬称略)
植田 成実
所属
日本赤十字社 和歌山医療センター 整形外科
著者からのひと言
本研究では、整形外科領域でこれまでほとんど検討されてこなかった低バイオマス検体のNGS解析に着目し、qPCRによる菌量評価と各種対照、汚染除去解析を組み合わせ、NGS結果を信頼して解釈するための定量的な境界を検討しました。本手法はPJI診断のみならず、低バイオマス検体を扱う他の診療領域におけるNGSの信頼性向上と今後の発展にもつながることを期待しています。

抄訳

人工関節周囲感染症(PJI)では、培養検査で原因菌を同定できない症例があり、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子診断が期待されている。一方、低バイオマス検体では環境由来のコンタミネーションが結果に影響するが、整形外科領域では十分な定量的検討が行われていなかった。本研究では、16S rRNA遺伝子V1–V2可変領域を標的とした同一プライマーによる定量PCR(qPCR)とNGS(Fusion Method)を行い、QIIMEによるシーケンス解析に加え、定量positive control、negative controlおよびmock communityを用いた検証と、decontamによる汚染候補配列の除去を行った。 qPCRは高い再現性を示し、NGSで細菌を安定して同定できる菌量に基づく定量カットオフを設定した。また、培養陰性例でも細菌を検出し、その後の臨床経過と一致する症例を認めた。qPCRによる菌量評価と汚染除去の併用により、低バイオマス検体におけるNGS結果の信頼性を高められる可能性が示された。

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2026/10/02

SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例

論文タイトル
Critical airway obstruction associated with extensive subglottic inflammatory slough and oedema following severe acute respiratory syndrome SARS-CoV-2 infection in a child
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物および高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児例
DOI
10.1136/bcr-2026-273982
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports CP 2026;19:e273982
著者名(敬称略)
太田 陽一朗 大村 和弘 他
所属
東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室
著者からのひと言
 SARS-CoV-2感染では、典型的なクループの好発年齢を超えた小児であっても、広範な炎症性付着物や高度な声門下浮腫により、急速に重篤な気道閉塞へ進展するリスクがあります。本症例を通して、適切な喉頭評価、耳鼻咽喉科・麻酔科・小児科等が緊急時に連携できる体制構築、そして迅速な気道確保の重要性を共有できれば幸いです。

抄訳

本症例は、SARS-CoV-2感染に伴う広範な炎症性付着物と高度な声門下浮腫により重篤な気道閉塞を来した小児の1例である。基礎疾患のない学童期児が咽頭痛と進行性呼吸困難で受診した。喉頭内視鏡検査で声帯周囲に広範な炎症性付着物を認め直ちに手術室へ搬送した。搬送中に意識消失と酸素飽和度の80%への低下を認めたが、ビデオ喉頭鏡下に閉塞物質を除去したところ自発呼吸と意識が回復した。高度な声門下浮腫のため内径4.5 mmのチューブで気管挿管を行った。翌日に自己抜管を認めたが、アドレナリン吸入とデキサメタゾン投与により再挿管を回避し、保存的加療のもと第10病日に退院した。本症例は、SARS-CoV-2感染がクループ好発年齢を超えた小児にも重篤な気道閉塞を引き起こし得ることを示し、適切な設備環境と多職種連携による迅速な気道管理の重要性を示唆している。

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2026/10/01

ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Anaerostipes stercorihominis sp. nov., isolated from human faeces.
論文タイトル(訳)
ヒト腸内から分離された新種Anaerostipes stercorihominis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007276
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 2026;76:007276
著者名(敬称略)
田辺 倫己、久富 敦、坂本 光央、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部
著者からのひと言
酪酸産生菌はヒトの健康維持に重要な役割を担う腸内細菌で、“腸内での酪酸産生菌の減少は万病の元”なのではないかと考えています。本菌がヒトの健康に及ぼす影響はまだわかっていませんが、本研究成果がヒトのウェルビーイングにつながればと考えています。

抄訳

Anaerostipes属は健常成人の腸内における主要な酪酸産生菌属の一つであり、腸内における存在量の低下は様々な疾病発症と関連する可能性が示唆されている。我々はヒト腸内有用菌の分離を進める中で、健常成人腸内から 17EGHSPOS18-1T 株を取得した。本菌株について多相分類学的な評価を行い、本菌がAnaerostipes属に分類される新種の酪酸産生菌であることを明らかにし、Anaerostipes stercorihominisとして提唱した。本菌種は近縁種と比較して利用可能な炭水化物の種類が限られており、この特徴はゲノム上にコードされる糖加水分解酵素の種類や数が限られていることと一致した。また、他のAnaerostipes菌種と同様に、糖からだけでなく、乳酸からも酪酸を産生する能力があることが明らかとなった。これは他の酪酸産生菌ではあまり見られない特徴であり、ビフィズス菌などの共生細菌が産生する乳酸からも酪酸を産生する能力があることから、ヒトの健康維持に重要な役割を担っている可能性も考えられた。 さらに、本研究を進める過程で、これまで別種として報告されていたAnaerostipes hominisとAnaerostipes faecisは同一種であることを明らかにし、A. faecisをA. hominisに統合することを提案した。

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2026/10/01

 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸

論文タイトル
Signatures of branched-chain fatty acids derived from a kidney reservoir confer stable chemical individuality on domestic cats
論文タイトル(訳)
 ネコの「においの個性」を生み出す腎臓由来の分岐鎖脂肪酸
DOI
10.1016/j.cub.2026.07.045
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 2026; 36, 4340-4353.e20
著者名(敬称略)
市沢翔太 宮崎雅雄 他
所属
岩手大学 農学部生命科学科
著者からのひと言
約20年前、ネコのフレーメン反応を観察したことから、「ネコは尿のにおいから相手の何を読み取っているのか」という疑問を持ちました。本研究は、その素朴な疑問を追い続けた末にたどり着いた成果です。腎臓に蓄えられた分岐鎖脂肪酸が、長期間変わりにくい「 においの個性 」をつくることを明らかにしました。途中で研究が中断した時期もありましたが、多くの共同研究者に支えられ、ようやく一つの形にまとめることができました。

抄訳

 動物は尿などのにおいを手掛かりに相手を識別しますが、時間とともに変化するにおいが、どのようにして安定した個体情報を保つのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、ネコのフレーメン反応を手掛かりに尿中成分を解析し、13種類の特殊な分岐鎖脂肪酸を同定しました。これらの種類と比率は個体ごとに異なる一方、同じ個体では採尿日が違っても比較的安定し、尿を室温で24時間置いた後も個体特有の組成が保たれました。さらに、ネコ自身が個体ごとに異なる分岐鎖脂肪酸の組成を嗅ぎ分けられることを行動試験で示しました。また、分岐鎖脂肪酸を含む脂質が腎臓皮質の脂肪滴に蓄積していることを発見し、この脂肪滴が個体特有の化学情報を安定して尿へ供給する貯蔵庫として働く可能性を示しました。さらに、ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、イリオモテヤマネコなどのネコ科動物でも関連する尿成分や腎臓の脂肪滴が確認され、その特徴がネコ科の進化の中で多様化してきた可能性が示されました。

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2026/09/30

 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす

論文タイトル
Tire wear particles impact a roadside wild plant species
論文タイトル(訳)
 タイヤ摩耗粒子は路傍の野草に影響を及ぼす
DOI
10.1016/j.cub.2026.06.087
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology, 36, R943-R944
著者名(敬称略)
都築洋一 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科
附属生態調和農学機構

抄訳

道路交通は現代の人間社会の基盤となる要素です。近年、タイヤと路面の摩擦によって発生する「タイヤ摩耗粒子」は、広範な生物に対して毒性を持つことが懸念されています。これまでの研究では水生生態系や農作物への影響が調査されてきましたが、道路近くに位置する公園や 路傍の緑化帯といった都市緑地への影響はほとんど解明されていませんでした。本研究では、日本で一般的な路傍雑草種であるイヌムギに対してタイヤ摩耗粒子の曝露実験を行いました。その結果、タイヤ摩耗粒子はシュート(地上部)および根の成長を著しく阻害することが実証されました。さらに、根における酸化ストレスを有意に上昇させました。これらの知見は、都市緑地生態系においてタイヤ摩耗粒子汚染が身近な野草にも害を与えていることを示しており、都市の緑地生態系全体へどのような影響が広がっているのか、詳しく調べる必要性を示しています。

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