本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2026/06/12

塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov. New

論文タイトル
Qipengyuania triglochinis sp. nov. and Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.: two novel Erythrobacteraceae members isolated from rhizosphere and root in Triglochin maritima L.
論文タイトル(訳)
塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏および根内部から分離された新種細菌 Qipengyuania triglochinis sp. nov. および Alteriqipengyuania triglochinis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007113
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
山本 紘輔 他
所属
東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 植物共生微生物学研究室

抄訳

北海道・能取湖の塩湿地に生育する塩生植物シバナ(Triglochin maritima L.)の根圏土壌および根内部から、新種と考えられる2株の細菌を分離しました。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子解析、全ゲノム解析、生理・生化学的性状解析、および化学分類学的解析を行った結果、既知の近縁種とは明確に区別される新種であることが明らかとなりました。そこで、それぞれを「Qipengyuania triglochinis」および「Alteriqipengyuania triglochinis」として提案しました。種小名の triglochinis は、分離源であるシバナの学名に由来しています。
現在までに陸生の塩生植物から、これらの属に属する新種細菌が分離、記載された例はなく、本発見は世界初の報告となります。また、両菌株は高塩濃度環境下でも生育可能であり、塩湿地という特殊な環境への適応能を有していると考えられます。シバナは高塩環境に適応した植物であることから、これらの細菌がシバナの生育向上に何らかの役割を果たしている可能性も期待されます。

論文掲載ページへ

2026/06/11

 動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。 New

論文タイトル
Animals have expanded the evolutionary legacy of unicellular ancestors in blood cells
論文タイトル(訳)
動物は、単細胞生物時代の祖先の遺産を継承・拡張して、血液細胞を進化させた。
DOI
10.1073/pnas.2528110123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.23 e2528110123
著者名(敬称略)
長畑 洋佑 河本 宏 他
所属
京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野
スペイン国バルセロナ 進化生物学研究所(筆頭著者現所属)
著者からのひと言
(河本)私達の研究室は、造血幹細胞が分化していく際に、マクロファージへ分化する能力が長く保持されているというミエロイド基本型モデルを、20年以上前に提唱しました。今回の成果は、ミエロイド基本型モデルが、7億年の血液細胞の進化過程を反映している事を示す集大成的な成果であり、とても感慨深く思います。
(長畑)T細胞、マスト細胞、赤血球、血小板が近縁であるということは、驚くべきことであり、重要な知見になると考えます。また、7億年前の先祖の遺産が、血液細胞として我々の体内を巡っていると思うと、遠い祖先も身近に感じることができます。

抄訳

本研究では、様々な動物と単細胞生物における、多種多様な細胞の遺伝子発現プロファイルを比較する手法を開発することで、血液細胞の起源と多様化の歴史を7億年前の単細胞生物時代の祖先にまで遡って明らかにしました。①まず、動物の祖先は、まだ単細胞生物であった頃の遺伝子プログラムを用いて、マクロファージ様の血液細胞として誕生させました。その後、動物進化の過程で、②寄生虫感染症に対抗してマクロファージからマスト細胞が分岐し、③そのマスト細胞から原始的なT細胞が、④マクロファージから原始的なB細胞が、⑤再びマスト細胞から赤血球が、それぞれ分岐していった事がわかりました。この7億年間の進化の記憶は、造血・分化過程として、現在生きる我々の体内にも刻まれていることもわかりました。私達の体内を巡る血液細胞は、単細胞生物時代の祖先が私達に遺したレガシーをうまく拡張・発展させたものと言えます。

論文掲載ページへ

2026/06/11

 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上 New

論文タイトル
Utilizing vmTracking to Improve the Accuracy of Multi-Animal Pose Estimation in Rodent Social Behavior Studies
論文タイトル(訳)
 vmTrackingを用いたげっ歯類社会行動研究における多個体姿勢推定精度の向上
DOI
10.3791/69506-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (225), e69506
著者名(敬称略)
筆頭著者:畦地 裕統 連絡著者:畦地 裕統
所属
同志社大学大学院脳科学研究科 システム神経科学分野 認知行動神経機構部門
著者からのひと言
動物の行動を定量的に解析するには、個体ごとの動きを正確に追跡したデータが必要です。しかし、複数個体が自由に行動する場面では、接触や遮蔽により個体識別が不安定になるため、データの精度が低下し、社会行動の定量評価にも影響します。本論文では、仮想マーカーを用いて既存のマーカーレス姿勢推定を補強するvmTrackingの手順を紹介しています。多個体行動解析の信頼性を高めるために有用な内容です。

抄訳

げっ歯類の社会行動研究では、動物が自由に動き回る環境下で、より自然な相互作用を評価する必要性が高まっている。そのためには、複数個体の姿勢を正確に追跡することが重要であるが、現在のマーカーレス多個体姿勢追跡ツールでは、遮蔽や密集場面、特に個体同士を視覚的に区別しにくい条件で精度が低下しやすい。本研究で提示する仮想マーカー追跡(vmTracking)は、仮想マーカーを用いてフレーム間の個体識別を維持し、困難な条件下での多個体姿勢追跡精度を向上させる手法である。本手法は標準的な追跡ワークフローに組み込むことができ、既存のマーカーレス多個体動画データにも適用可能である。本稿では仮想マーカーの割り当て方法と、ラベル付けされた動画における動物追跡の手順を示す。vmTrackingにより得られる高精度な多個体追跡データは、自由行動下で生じる社会的相互作用行動を、より信頼性高く定量解析することを可能にする。

論文掲載ページへ

2026/06/10

SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析 New

論文タイトル
Combinatorial analysis of clinical and genomic data used to assess the association between SARS-CoV-2 mutations and disease severity
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2変異とCOVID-19重症度との関連性を評価するための臨床・ゲノム情報の統合解析
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag191
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 6, June 2026, pgag191,
著者名(敬称略)
石渡 早織、谷本 幸介、 武内 寛明  他
所属
東京科学大学 医歯学総合研究科 ハイリスク感染症研究マネジメント学分野

抄訳

2019年末に出現し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを引き起こしたsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)は、ゲノム進化を経て、アルファ、デルタ、オミクロン株などの懸念される変異株を生み出した。本研究ではSARS-CoV-2変異が感染者の重症度に及ぼす影響を評価することを目的とし、東京科学大学病院に入院した310名の患者由来のウイルスゲノムデータと臨床データの統合解析を行なった。解析の結果、統計的有意に重症度と関連する変異が64個同定された。オミクロン株は一般的にデルタ株よりも症状が軽いとされているが、本研究ではオミクロン株の中にも重症化と統計的有意に関連する変異が同定された。SARS-CoV-2のゲノム情報と臨床情報のレトロスペクティブ解析は、ウイルス変異の生物学的意義の解明に有用であると考えられる。

論文掲載ページへ

2026/06/10

 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン New

論文タイトル
Chromid-like secondary replicons as predicted key sites of biosynthetic gene clusters in Ktedonobacteria
論文タイトル(訳)
 Ktedonobacteriaにおいて生合成遺伝子クラスターの主要な蓄積場と予測されるクロミド様二次レプリコン
DOI
10.1128/msystems.00197-26
ジャーナル名
mSystems
巻号
mSystems Ahead of Print
著者名(敬称略)
矢部 修平他
所属
理化学研究所 環境資源科学研究センター ホロビオント・レジリエンス研究チーム
著者からのひと言
 クテドノバクテリアは培養例が限られ、これまで十分に研究されてこなかった細菌群です。本研究では、この細菌群が多様な生合成遺伝子クラスターをもち、それらがクロミド様の大型二次レプリコンに集積している可能性を示しました。創薬微生物の代表格である放線菌に続く、新たな微生物資源としての展開が期待されます。

抄訳

 土壌微生物は、医薬品や農薬などの候補となる多様な二次代謝産物を生み出す重要な生物資源である。しかし、多くの土壌細菌系統では、その生合成能や、それを支えるゲノム構造が十分に理解されていない。本研究では、火山土壌から新たに分離したKtedonobacteria株、メタゲノム由来ゲノム、公共ゲノムを統合し、計183ゲノムを対象に生合成遺伝子クラスター(BGC)を比較解析した。その結果、1,546個のBGCを同定し、その多くが既知データベース中のBGCとは大きく異なることを示した。さらに、長鎖リードによる高品質ゲノム解析から、クロミド様の特徴をもつ大型二次レプリコンが複数の系統で見出され、BGCや可動性関連遺伝子がそこに濃縮していることが明らかとなった。本成果は、Ktedonobacteriaが未開拓の二次代謝資源であることを示すとともに、微生物の二次代謝能の多様化を支えるゲノム構造の理解に貢献するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/09

腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である New

論文タイトル
TusDCB-mediated tRNA sulfur modification is required for virulence and intestinal fitness in enterohemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌のTusDCBを介したtRNAの硫黄修飾は、病原性および腸管内での適応力に不可欠である
DOI
10.1128/iai.00186-26
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
佐藤百美佳、 平川 秀忠 他
所属
国立大学法人群馬大学 医学部医学科 細菌学
著者からのひと言
本研究では、これまで病原性との関連がほとんど知られていなかった「tRNAの硫黄修飾」に着目しました。細菌は単に病原因子を持つだけでなく、それらを適切なタイミングで作り出す仕組みが必要です。TusDCBはその根幹を支える翻訳制御に関与し、腸管出血性大腸菌の病原性や環境ストレス耐性に重要な役割を果たしていました。本研究が、新しい感染症制御法の開発につながることを期待しています。また、本研究は学部学生を中心とした日々の研究活動から生まれた成果であり、基礎研究と人材育成の重要性を示すものでもあります。

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は、重度の出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす重要な食中毒の原因菌である。しかし、抗菌薬の使用によって毒素放出が促進される危険性があるため、有効な治療法は限られている。
本研究では、タンパク質合成に関わるtRNAの硫黄修飾を担うTusDCB複合体に着目し、その病原性への役割を解析した。TusDCBの機能を欠失させると、III型分泌装置(T3SS)関連遺伝子の発現および病原因子EspBの産生が低下し、ヒト赤血球に対する溶血活性やマウス腸管感染モデルにおける病原性が著しく減弱した。また、酸や酸化ストレスに対する抵抗性も低下した。さらに、プロテオーム解析により、EHECの薬剤耐性や病原性の増強に寄与するインドールシグナル産生に関与するTnaAなど複数のタンパク質の発現低下が認められた。これらの結果から、TusDCBは病原因子発現のみならず、細菌の環境適応や生存能力を支える重要な因子であり、新たな抗病原性治療標的となる可能性が示された。

論文掲載ページへ

2026/06/08

同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立 New

論文タイトル
Establishment of Tumor Organoids, Carcinoma-Associated Fibroblasts, and Counterpart Fibroblasts from the Same Esophageal Cancer Patient
論文タイトル(訳)
同一食道がん患者からのがんオルガノイド、がん関連線維芽細胞、および非がん部線維芽細胞の同時樹立
DOI
10.3791/69548-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (230), e69548
著者名(敬称略)
筆頭著者:張霈宁、連絡著者:小林哲夫 他
所属
順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座

抄訳

食道扁平上皮がんでは、治療抵抗性や再発が大きな課題である。がん関連線維芽細胞(CAF)は、がん微小環境を構成する主要な細胞であり、がんの進展や治療応答に重要な役割を果たす。従来の研究では、長期間培養されたがん細胞株と患者由来CAFを組み合わせることが多く、両者の遺伝的背景の違いが実験結果の再現性や信頼性に影響する可能性があった。本論文では、同一の食道扁平上皮がん患者の手術検体から、がんオルガノイド、CAF、さらに非がん部由来の対照線維芽細胞(CF)を同時に樹立する方法を紹介する。本手法で樹立した細胞群を用いることにより、患者間差を抑えた条件でがん細胞とCAFの相互作用を解析することが可能である。その研究成果は、CAFによるがん増殖や薬剤抵抗性の機序解明、さらには個別化治療の開発の基盤となることが期待される。

論文掲載ページへ

2026/06/04

新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱

論文タイトル
Prevotella mikamonis sp. nov., isolated from equine clinical specimens
論文タイトル(訳)
新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007112
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
 (兼 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター)
著者からのひと言
馬の呼吸器感染症由来検体から新たなPrevotella属細菌を発見し、新種 Prevotella mikamonis sp. nov. として提唱しました。本菌は、日本の嫌気性菌感染症研究を牽引してきた三鴨廣繁(みかもひろしげ)博士にちなんで命名されています。本研究は、馬に関連する嫌気性細菌の未知の多様性を明らかにしたものであり、獣医領域における感染症理解と微生物分類学の発展に新たな知見を提供します。

抄訳

本研究では、日本において馬の呼吸器感染症由来検体から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌5株について、表現型、生化学的性状およびゲノム情報に基づく包括的な分類学的解析を実施した。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、これらの菌株は既知の近縁種とは明確に区別される独立したクラスターを形成した。ゲノムのGC含量は46.7%であり、主要な菌体脂肪酸としてC16:0、3-OH-C16:0および3-OH-iso-C16:0が検出された。さらに、全ゲノム比較により平均ヌクレオチド同一性(ANIb)およびデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーション(dDDH)を解析したところ、近縁種であるPrevotella phocaeensisおよびPrevotella merdaeの基準株に対し、それぞれ73.1%未満および28.6%未満と、新種提唱の基準値を大きく下回る結果が得られた。これらの表現型および遺伝学的特徴を総合的に評価した結果、本菌株群はPrevotella属の新種に相当すると判断され、
新種 Prevotella mikamonis sp. nov. を提唱した。本研究は、馬の呼吸器感染症に関連する嫌気性細菌の多様性解明に貢献するとともに、新たな病原細菌の分類学的知見を提供するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/04

共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性

論文タイトル
Boson peak in covalent network glasses: Isostaticity and marginal stability
論文タイトル(訳)
共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性
DOI
10.1073/pnas.2528998123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.22 e2528998123
著者名(敬称略)
水野英如 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
著者からのひと言
一見すると、窓ガラスと砂団子はまったく異なるものに見えます。しかし本研究は、両者が硬さを獲得する背後に、「自由度と拘束数の釣り合い」という共通の物理原理が働いていることを明らかにしました。物理学のおもしろさは、このように異なる現象の奥に潜む普遍的な仕組みを見いだせる点にあります。本研究は、身近な砂の詰まりから窓ガラスの本質に迫り、物理学の魅力と威力を示す研究です。

抄訳

窓ガラスは、私たちの暮らしの中で身近にあり、当たり前のように使われている材料である。しかし、その主成分であるシリカガラスがどのように硬さを獲得し、なぜ低周波領域に特有の振動励起である「ボソンピーク」を示すのかは、長く未解明の問題であった。本研究は、この身近でありながら謎を残すシリカガラスの硬さの起源を、砂団子が固まる仕組みである「ジャミング転移」の物理と結びつけて調べた。分子動力学シミュレーションにより、シリカガラスのシリコン原子と酸素原子から成る共有結合ネットワークを解析したところ、このネットワークが、砂団子が剛性を獲得する状態と同じく、自由度と拘束数がちょうど釣り合った「等拘束性」の状態にあることが明らかになった。等拘束的なネットワークは安定と不安定の境界にある臨界的な骨格であり、そこにファンデルワールス力やクーロン力などの弱い相互作用が加わることで、実際のガラスは有限の剛性を獲得する。さらに、ボソンピークもこの等拘束的ネットワークに由来することを示した。本成果は、身近な窓ガラスの背後に、砂団子と共通する普遍的な物理原理が潜んでいることを明らかにし、ガラスの剛性と振動特性を統一的に理解するものである。

論文掲載ページへ

2026/06/01

両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症

論文タイトル
Hypertrophic pulmonary osteoarthropathy in bilateral distal tibia and fibula
論文タイトル(訳)
両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症
DOI
10.1136/bcr-2025-269739
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 5
著者名(敬称略)
井上 文太 他
所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 足の外科
著者からのひと言
足の外科外来を受診した両側足関節痛の患者が、実は肺がんに伴う肥大性肺性骨関節症(HPOA)であった症例です。稀な疾患であるため、認知度が低く診断に難渋しますが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見が診断の手がかりとなります。原因不明の両側足関節痛では本疾患を念頭に置き、すみやかに原疾患(特に肺悪性腫瘍)の全身検索を行うことが重要です。

抄訳

肥大性肺性骨関節症(HPOA)は、四肢の骨膜新生、関節痛、ばち指を特徴とするまれな症候群であり、多くは肺疾患に続発する。整形外科的疾患と誤診されやすく、全身評価の遅れにつながりうる。本症例は、両側足関節痛を主訴に足の外科外来を受診した60歳代後半の男性である。単純X線およびCTにて両側脛骨・腓骨に左右対称性の骨膜新生を認め、MRIでは骨膜の浮腫・炎症を認める一方で骨髄浮腫は認めず、HPOAの診断を支持する所見であった。両手指および足趾のばち指も確認された。全身検索の結果、右肺尖部に腫瘍を認め、気管支鏡により肺腺癌と診断された。右上葉切除術後、両側足関節痛は速やかに消失し、JSSF足関節・後足部スケールおよびSAFE-Qの各スコアも術後1年で著明に改善した。下肢の骨膜新生をきたす疾患の鑑別は多岐にわたるが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見はHPOAを示唆する重要な診断手がかりである。原因不明の両側足関節痛に際しては本疾患を念頭に置き、原因疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する全身評価を行うことが重要である。

論文掲載ページへ