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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2026/06/04

新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱 New

論文タイトル
Prevotella mikamonis sp. nov., isolated from equine clinical specimens
論文タイトル(訳)
新種Prevotella mikamonis sp. nov. の提唱
DOI
10.1099/ijsem.0.007112
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 76, Issue 4
著者名(敬称略)
林 将大 他
所属
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 糖鎖分子科学研究センター
 (兼 高等研究院 微生物遺伝資源保存センター)
著者からのひと言
馬の呼吸器感染症由来検体から新たなPrevotella属細菌を発見し、新種 Prevotella mikamonis sp. nov. として提唱しました。本菌は、日本の嫌気性菌感染症研究を牽引してきた三鴨廣繁(みかもひろしげ)博士にちなんで命名されています。本研究は、馬に関連する嫌気性細菌の未知の多様性を明らかにしたものであり、獣医領域における感染症理解と微生物分類学の発展に新たな知見を提供します。

抄訳

本研究では、日本において馬の呼吸器感染症由来検体から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌5株について、表現型、生化学的性状およびゲノム情報に基づく包括的な分類学的解析を実施した。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、これらの菌株は既知の近縁種とは明確に区別される独立したクラスターを形成した。ゲノムのGC含量は46.7%であり、主要な菌体脂肪酸としてC16:0、3-OH-C16:0および3-OH-iso-C16:0が検出された。さらに、全ゲノム比較により平均ヌクレオチド同一性(ANIb)およびデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーション(dDDH)を解析したところ、近縁種であるPrevotella phocaeensisおよびPrevotella merdaeの基準株に対し、それぞれ73.1%未満および28.6%未満と、新種提唱の基準値を大きく下回る結果が得られた。これらの表現型および遺伝学的特徴を総合的に評価した結果、本菌株群はPrevotella属の新種に相当すると判断され、
新種 Prevotella mikamonis sp. nov. を提唱した。本研究は、馬の呼吸器感染症に関連する嫌気性細菌の多様性解明に貢献するとともに、新たな病原細菌の分類学的知見を提供するものである。

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2026/06/04

共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性 New

論文タイトル
Boson peak in covalent network glasses: Isostaticity and marginal stability
論文タイトル(訳)
共有結合性ネットワークガラスにおけるボソンピーク:等拘束性と限界安定性
DOI
10.1073/pnas.2528998123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.22 e2528998123
著者名(敬称略)
水野英如 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
著者からのひと言
一見すると、窓ガラスと砂団子はまったく異なるものに見えます。しかし本研究は、両者が硬さを獲得する背後に、「自由度と拘束数の釣り合い」という共通の物理原理が働いていることを明らかにしました。物理学のおもしろさは、このように異なる現象の奥に潜む普遍的な仕組みを見いだせる点にあります。本研究は、身近な砂の詰まりから窓ガラスの本質に迫り、物理学の魅力と威力を示す研究です。

抄訳

窓ガラスは、私たちの暮らしの中で身近にあり、当たり前のように使われている材料である。しかし、その主成分であるシリカガラスがどのように硬さを獲得し、なぜ低周波領域に特有の振動励起である「ボソンピーク」を示すのかは、長く未解明の問題であった。本研究は、この身近でありながら謎を残すシリカガラスの硬さの起源を、砂団子が固まる仕組みである「ジャミング転移」の物理と結びつけて調べた。分子動力学シミュレーションにより、シリカガラスのシリコン原子と酸素原子から成る共有結合ネットワークを解析したところ、このネットワークが、砂団子が剛性を獲得する状態と同じく、自由度と拘束数がちょうど釣り合った「等拘束性」の状態にあることが明らかになった。等拘束的なネットワークは安定と不安定の境界にある臨界的な骨格であり、そこにファンデルワールス力やクーロン力などの弱い相互作用が加わることで、実際のガラスは有限の剛性を獲得する。さらに、ボソンピークもこの等拘束的ネットワークに由来することを示した。本成果は、身近な窓ガラスの背後に、砂団子と共通する普遍的な物理原理が潜んでいることを明らかにし、ガラスの剛性と振動特性を統一的に理解するものである。

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2026/06/01

両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症 New

論文タイトル
Hypertrophic pulmonary osteoarthropathy in bilateral distal tibia and fibula
論文タイトル(訳)
両側遠位脛骨および腓骨に生じた肺性肥大性骨関節症
DOI
10.1136/bcr-2025-269739
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 5
著者名(敬称略)
井上 文太 他
所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 足の外科
著者からのひと言
足の外科外来を受診した両側足関節痛の患者が、実は肺がんに伴う肥大性肺性骨関節症(HPOA)であった症例です。稀な疾患であるため、認知度が低く診断に難渋しますが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見が診断の手がかりとなります。原因不明の両側足関節痛では本疾患を念頭に置き、すみやかに原疾患(特に肺悪性腫瘍)の全身検索を行うことが重要です。

抄訳

肥大性肺性骨関節症(HPOA)は、四肢の骨膜新生、関節痛、ばち指を特徴とするまれな症候群であり、多くは肺疾患に続発する。整形外科的疾患と誤診されやすく、全身評価の遅れにつながりうる。本症例は、両側足関節痛を主訴に足の外科外来を受診した60歳代後半の男性である。単純X線およびCTにて両側脛骨・腓骨に左右対称性の骨膜新生を認め、MRIでは骨膜の浮腫・炎症を認める一方で骨髄浮腫は認めず、HPOAの診断を支持する所見であった。両手指および足趾のばち指も確認された。全身検索の結果、右肺尖部に腫瘍を認め、気管支鏡により肺腺癌と診断された。右上葉切除術後、両側足関節痛は速やかに消失し、JSSF足関節・後足部スケールおよびSAFE-Qの各スコアも術後1年で著明に改善した。下肢の骨膜新生をきたす疾患の鑑別は多岐にわたるが、MRIで骨髄浮腫を伴わない両側対称性の骨膜炎症所見はHPOAを示唆する重要な診断手がかりである。原因不明の両側足関節痛に際しては本疾患を念頭に置き、原因疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する全身評価を行うことが重要である。

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2026/05/25

ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性

論文タイトル
High-density microdroplet cultivation reveals the essential role of microbial interactions in the growth of environmental microbes
論文タイトル(訳)
ドロップレットを用いた超高菌体密度での培養から明らかになった微生物間相互作用の重要性
DOI
10.1128/mbio.03953-25
ジャーナル名
mBio
巻号
Vol.17, No.5
著者名(敬称略)
Eun-Young Seo 鈴木 陸太 青井 議輝 他
所属
広島大学大学院 統合生命科学研究科 代謝変換制御学研究室 青井グループ
著者からのひと言
本論文ではこれまで培養の難しかった微生物を培養する新たな手段として、ドロップレットを用いた超高菌体密度での微生物培養手法を提案しています。これまで実現不可能だった高いレベルでの相互作用を実現することで、増殖の困難な微生物の培養を可能にしました。99%の微生物が現在まで培養されていないと言われていますが、本手法はこれらの微生物の大部分を培養可能にするポテンシャルを持っており、我々は現在、新たな微生物を資源化することに取り組んでいます。

抄訳

環境中の微生物の大多数は依然として培養されておらず、その生理機能や生態学的役割の理解は大きく制限されている。微生物間相互作用は、培養できない微生物の成長を支える重要な要因の一つと考えられてきたが、それらが培養可能性に与える影響は十分には解明されていない。 本研究では、純粋培養を維持しつつ微生物間相互作用を促進し、さらに単一細胞レベルでの観察を可能にする新しいドロップレット共培養手法を開発した。この培養手法により、環境微生物の培養効率は従来の寒天平板法から大幅に向上(約10倍)し、従来は培養が困難であった分類群の増殖も確認された。また、純菌株を用いて微生物群集内での増殖の様子を観察した結果、微生物間相互作用がいくつかの微生物の増殖にとって重要であることが明確に示された。本研究の知見は、微生物の培養における相互作用の重要性を強調するとともに、利用可能な微生物バイオマスの大幅な拡張、微生物群集の制御、そしてこれまで認識されていなかった微生物間相互作用の解明に向大きく貢献するものである。

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2026/05/20

膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している

論文タイトル
Transmembrane ROOM proteins ensure rooms for germ cells by maintaining intercellular bridges
論文タイトル(訳)
膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している
DOI
10.1073/pnas.2522264123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.19 e2522264123
著者名(敬称略)
杉浦健太 佐藤健 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
著者からのひと言
卵母細胞が正常に形成されるためには各生殖細胞に雌性核が1つずつ含まれた”個室“となる必要がありますが、この仕組みはあまりわかっていません。細胞間橋や細胞分裂溝に局在してアクトミオシン系と協調して働く因子のなかでも膜貫通タンパク質はあまり知られておらず、ROOMタンパク質の解析により得られる知見は生殖細胞、卵母細胞の形成だけではなく、その他の細胞の分裂や細胞間橋形成等の理解にも役立つ可能性があります。

抄訳

多くの有性生殖を行う動物において、生殖細胞は不完全な細胞分裂の結果として合胞体を形成し、くびれた細胞間橋を介して細胞質成分を共有しています。この合胞体の状態が維持できないと、将来の卵母細胞の形成に異常が生じ、不妊となることが知られています。しかしながら、これらの過程を制御する分子メカニズムはいまだ不明な点が多く残されています。本研究では、線虫(Caenorhabditis elegans)の成体生殖腺の合胞体において、生殖細胞の細胞区画維持に不可欠な構成要素として、パラログである膜貫通タンパク質ROOM-1およびROOM-2を同定しました。これらのタンパク質は生殖細胞と細胞質コアを繋ぐ細胞間橋においてF-アクチンと共に特異的に局在しており、両者を欠損すると生殖腺内における個々の生殖細胞の区画化が不全となり、卵母細胞が形成されず子孫を残せないことが判明しました。また、ROOMタンパク質は細胞間橋を構成するアクトミオシン制御因子と共局在し、これらの局在は相互依存していることが明らかとなりました。以上のことから、ROOMタンパク質は、アクトミオシン複合体と協調して生殖細胞-細胞質コア間の細胞間橋を安定化し不完全な細胞分裂を維持することで、生殖細胞のための「Room」を確保していることが明らかとなりました。

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2026/05/18

潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序

論文タイトル
Immunological mechanism behind reactivated cryptococcosis in persistently infected mice following FTY720 treatment
論文タイトル(訳)
潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序
DOI
10.1128/iai.00612-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
𠮷田  美智子 他
所属
東北大学病院 総合感染症科
著者からのひと言
既存モデルでは困難であった,有莢膜株を用いた臨床に即した新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した点が本研究の強みである.本モデルは再活性化解析にも応用可能であり,本研究で構築した新規マウスモデルを用いたさらなる研究により,潜在性クリプトコックス感染の新規診断法,予防戦略,さらには免疫応答を標的とした補助治療の開発につながる可能性がある.

抄訳

クリプトコックス症は,Cryptococcus neoformans species complex(CNSC)による侵襲性真菌感染症であり,Th1免疫応答による肉芽腫形成が感染制御に重要である.CNSCは初感染後に潜在性感染状態へ移行し,免疫制御が破綻すると再活性化すると考えられるが,その機序は十分解明されていない.本研究では,CNSCの主要T細胞抗原であるChitin deacetylase 2(Cda2)特異的CD4陽性T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(CnT-Ⅱマウス)を用いて,肺肉芽腫形成を伴う新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した.本モデルに多発性硬化症治療薬であるFingolimod(FTY720)を投与したところ,肺内IFN-γおよびIL-12レベルの低下に伴い肉芽腫構造の破綻を認め,その後,肺内生真菌数が増加し,内因性再燃を示唆する変化を認めた.また,IFN-γ産生CD4陽性エフェクターメモリーT細胞(Tem)が著減していた.以上より,潜在性感染状態の維持にはCD4陽性Tem細胞が重要である可能性が示され,FTY720はCD4陽性Tem細胞の減少を介してTh1免疫応答を障害し,内因性再燃を促進すると考えられた.

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2026/05/18

チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる

論文タイトル
Tubulin acetylation deficiency promotes axonemal turnover and increases cytoplasmic microtubules
論文タイトル(訳)
チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる
DOI
10.1091/mbc.E26-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 6
著者名(敬称略)
久保 智広 他
所属
山梨大学大学院 総合研究部 医学域 解剖学講座構造生物学教室
著者からのひと言
チューブリン翻訳後修飾の中でも、アセチル化は古くから最も研究が進められてきた修飾の一つです。私たちは、微小管研究に適した単細胞緑藻類クラミドモナスを用いて、チューブリンアセチル化が完全に欠損した株を作製しました。その結果、鞭毛および細胞質性微小管の動態に大きな異常が生じることを見出しました。このような現象はこれまで報告されておらず、単細胞モデルを用いた研究の有用性を示す結果であると考えています。

抄訳

微小管を構成するチューブリンは、多様な翻訳後修飾を受ける。本研究では、鞭毛・繊毛研究のモデル生物である単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、チューブリンアセチル化が細胞全体の微小管動態に果たす役割を追究した。クラミドモナスでは、チューブリンアセチル化は鞭毛軸糸およびルートレット微小管と呼ばれる一部の細胞質性微小管に観察される。αチューブリンアセチル基転移酵素1 (αTAT1)をゲノム編集によりノックアウトした変異株atat1-1を樹立したところ、atat1-1ではチューブリンアセチル化が完全に消失していた。ダイオアリオンアッセイによる解析から、atat1-1では軸糸のターンオーバー頻度が著しく増加することが明らかになった。加えて、興味深いことに、atat1-1ではルートレット微小管だけでなく全ての細胞質性微小管の量が有意に増加していた。これらの結果は、チューブリンアセチル化が軸糸微小管の安定性維持に関与するとともに、細胞全体の微小管の動態制御を担っていることを示唆するものである。

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2026/05/15

植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される

論文タイトル
Two-step, long-distance nuclear migration guided by distinct actin networks prior to plant root hair formation
論文タイトル(訳)
植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag141
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 5, May 2026, pgag141,
著者名(敬称略)
高塚 大知 他
所属
国立大学法人奈良国立大学機構・奈良女子大学・研究院自然科学系
著者からのひと言
植物細胞は一般に動物細胞よりも巨大化する能力が高いことが広く知られている。しかし、そのように巨大化した植物細胞内で、空間的な位置情報を精確に統御し、適切な細胞内構造を形成する仕組みについては、殆ど理解が進んでいない。本研究は、植物細胞内において、核が多段階の過程を経て長距離移動することを示した初めての例であり、植物細胞における細胞内構造制御の新たな原理を明らかにした独自性の高い研究である。

抄訳

植物細胞の特徴の一つは、細胞体積を劇的に増大させる能力である。そのような巨大化した細胞内で、必要に応じて核が最適な位置へ移動することは細胞が機能を果たすのに不可欠である。しかし、核が巨大な植物細胞内を精確に、長距離移動する仕組みは未解明であった。本研究では、根の表皮細胞から伸びる管状構造である根毛が形成される前に、核が空間的に厳密に規定された目的地まで、約50 µmの長距離を精確に移動すること、そしてその移動が二段階で進行し、それぞれが異なるアクチンアイソフォームから構成される別々のF-actinネットワークによって誘導されることを示した。さらに、目的地で活性化される低分子量GTPaseシグナルがF-actin形成を促進することを発見した。低分子量GTPaseシグナル依存的なF-actin形成は、第二段階の核移動には必須である一方、第一段階には必要ないことも見出した。これらの結果は、巨大な植物細胞内で核の精確な移動を保証する、複雑で段階的な仕組みの存在を示すものである。

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2026/05/14

一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布

論文タイトル
Diversity and geographical distribution of potential carbon monoxide oxidizers using molybdenum-containing enzymes in the ocean
論文タイトル(訳)
一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布
DOI
10.1128/msphere.00062-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
今浦 由就 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

海洋では化学反応により一酸化炭素(CO)が生じ、その90%は原核生物(CO酸化菌)に消費されると推定されている。CO酸化菌は、鍵酵素のCOデヒドロゲナーゼ(CODH)を用い、COをエネルギー源として利用する。CODH遺伝子を持つ原核生物(潜在的CO酸化菌)は海洋において少なくとも8つの原核生物門に属し、群集の10–20%を占めると考えられてきたが、その多様性は過大評価されていた。本研究では過大評価を除いた方法で潜在的CO酸化菌を探索した。その結果、9門233種(うち207種は新たに潜在的CO酸化菌と同定)が検出され、原核生物の0.1–6.7%が潜在的CO酸化菌であると推定された。233種のうち優占11種は20種の原核生物と共起し、共起の相手は種ごとに異なった。11種はCODH以外に共通の遺伝子を持たず、潜在的CO酸化菌-原核生物の相互作用には共通の分子的基盤が存在しないと示唆された。

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2026/05/13

進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ

論文タイトル
Evolution-guided prioritization identifies a tissue-specific phosphorylation switch on herpes simplex virus 1 UL7 regulating viral replication and pathogenicity
論文タイトル(訳)
進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ
DOI
10.1128/jvi.00200-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
オミクス解析の進展により、生物学は“データ不足”から“候補過剰”の時代へ移行しつつある。本研究は、Simplexvirus属における進化的保存性を利用することで、膨大なHSV-1リン酸化情報から機能的重要性の高い修飾部位を効率的に抽出できる可能性を示した。進化情報とリン酸化プロテオーム情報を統合する本アプローチは、ビッグデータ時代における効率的な生命機能探索戦略として発展することが期待される。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)タンパク質には多数のリン酸化部位が同定されているが、その大部分の機能的意義は不明なままである。本研究では、リン酸化プロテオーム情報とSimplexvirus属におけるアミノ酸保存性を統合した抽出戦略を構築し、機能的重要性が高いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、UL7 Tyr-89に着目し解析を行ったところ、リン酸化模倣変異はUL7欠損変異と類似して、ウイルス粒子形成、培養細胞での増殖、さらにマウス中枢神経系および眼における病原性を低下させた。一方、非リン酸化変異は培養細胞や眼では大きな影響を示さず、中枢神経系でのみHSV-1増殖と病原性を低下させた。これらの知見より、UL7 Tyr-89リン酸化は組織特異的にUL7機能を微調整する抑制性スイッチとして働くことが示唆された。本研究で採用した進化情報に基づく抽出戦略は、HSV-1タンパク質における機能的リン酸化部位の効率的な同定に寄与することが期待される。

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