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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2026/11/02

新種Streptomyces salinomycinicusの提案とS. rubiginosus, S. niveoruber, S. griseomycini, S. roseoviolaceus, S. violaceochromogenes及びS. virensの再分類 New

論文タイトル
Streptomyces salinomycinicus sp. nov. and reclassifications of Streptomyces rubiginosus, Streptomyces niveoruber, Streptomyces griseomycini, Streptomyces roseoviolaceus, Streptomyces violaceochromogenes and Streptomyces virens.
論文タイトル(訳)
新種Streptomyces salinomycinicusの提案とS. rubiginosus, S. niveoruber, S. griseomycini, S. roseoviolaceus, S. violaceochromogenes及びS. virensの再分類
DOI
10.1099/ijsem.0.007293
ジャーナル名
International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻号
Int J Syst Evol Microbiol. 2026 Oct;76(10). doi: 10.1099/ijsem.0.007293
著者名(敬称略)
小牧 久幸
所属
独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター (NBRC)
著者からのひと言
近年のゲノム解析や系統分類学の進展により、従来の分類結果の見直しが進んでいます。本研究では、代表的な抗生物質サリノマイシンの生産菌がS. albusではなく、新種であることを明らかにしました。また、最新の分類基準でS. albusと同定される株のゲノムにはサリノマイシン生合成遺伝子クラスターが存在しないことも既に報告されています。本研究は、天然物研究において正確な菌種同定の重要性を示す一例になったと考えています。

抄訳

サリノマイシン生産菌80614株はこれまでStreptomyces albusとされていたが、その分類学的位置を再検討した。16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性は“Streptomyces physcomitrii”の基準株に対して99.8%であったが、S. albusの基準株に対しては96.1%であり、系統樹においてもS. albusとは離れ、“S. physcomitrii”と同一のクレードに含まれた。さらに、“S. physcomitrii”に対するデジタルDNA-DNAハイブリダイゼーションの値は67.8%、平均塩基配列一致率(ANI)が96.5%であり、いずれも種の判別基準値(70%、96.7%)を下回った。また、胞子の形態、耐塩性、炭素源の利用能などの表現性状でも近縁種との違いが認められたので、新種に分類し、Streptomyces salinomycinicusと命名した。

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2026/11/02

受容体を脳内で直接亜鉛センサーに変換し、シナプス近傍の亜鉛イオン動態をイメージングによって記録する新戦略 New

論文タイトル
Imaging and recording of synaptic zinc in the brain by covalent chemistry-based semisynthetic biosensors.
論文タイトル(訳)
受容体を脳内で直接亜鉛センサーに変換し、シナプス近傍の亜鉛イオン動態をイメージングによって記録する新戦略
DOI
10.1073/pnas.2606947123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2606947123
著者名(敬称略)
Hao Zhu 濵地 格 他
所属
京都大学 エネルギー理工学研究所
著者からのひと言
リガンド指向性化学とクリック反応をタンデムに、脳内で行う方法は、我々独自の化学戦略でchemical KIと呼んでいます。この論文では神経伝達物質受容体を標的に脳内で実施し、その有用性を実証しましたが、他の受容体や脳以外の組織にも適用可能と思いますので、ご興味あればお声掛けください。

抄訳

マウス脳内でリガンド指向性化学とクリック反応をタンデムに行うことによって、グルタミン酸受容体およびGABA受容体を蛍光性の亜鉛センサーに変換することに成功した。これらを用いて、興奮性と抑制性シナプス近傍の亜鉛イオン変化を、高い空間分解能で記録することが可能となった。マウス脳内でのシナプス近傍のbasal亜鉛濃度の定量値が得られるだけでなく、カイニン酸刺激によって興奮性シナプス間隙に放出される亜鉛の海馬での領域ごとのマッピングや、抑制性シナプスに漏れ込む亜鉛イオン(興奮性シナプスの1/100程度)の定量化が実現した。

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2026/11/02

胸腺制御性T細胞の発生に影響を及ぼすエピゲノム異常に起因する自己免疫 New

論文タイトル
Autoimmunity induced by epigenome alteration affecting thymic Treg cell development.
論文タイトル(訳)
胸腺制御性T細胞の発生に影響を及ぼすエピゲノム異常に起因する自己免疫
DOI
10.1073/pnas.2626262123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2626262123
著者名(敬称略)
Jia Long、市山 健司 他
所属
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
著者からのひと言
2025年の坂口志文教授によるノーベル生理学・医学賞の受賞を契機に、制御性T細胞(Treg)への関心は世界的に一層高まっており、Tregの分化・機能を制御する分子機構の解明に加え、Tregを標的とした新たな治療法の開発も注目されています。本論文では、Tregの早期分化に関する新たな制御機構を明らかにしており、様々な免疫関連疾患に対する画期的な治療法開発につながることが期待されます。

抄訳

エピジェネティック制御因子MBD3は、クロマチン構造の制御に関与するNuRD複合体の必須構成因子であるが、制御性T細胞(Treg)の分化および恒常性維持における役割は明らかになっていなかった。本研究では、T細胞特異的MBD3欠損マウスが、Tregの減少に伴って重篤な多臓器自己免疫疾患を発症することを見出した。さらに、網羅的な遺伝子発現およびエピゲノム解析により、MBD3が胸腺Tregの分化過程において、Il2ra(CD25)遺伝子領域に存在するTreg特異的エンハンサーの活性化を介してCD25の発現を促進することで、胸腺細胞からTreg前駆細胞への分化を支持することを明らかにした。本研究は、胸腺T細胞発生におけるエピゲノム制御の破綻が、Treg分化の障害を介して自己免疫疾患の発症につながることを示しており、Treg分化を支えるエピジェネティック制御機構の重要性を改めて提示するものである。

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2026/10/26

 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連

論文タイトル
Classification of glucose profile in Japanese patients with type 1 diabetes and its association with complications
論文タイトル(訳)
 日本人1型糖尿病患者の血糖プロファイルの分類およびその糖尿病合併症との関連
DOI
10.1210/clinem/dgag224
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 111, Issue 11, November 2026, Pages 3085–3093
著者名(敬称略)
筆頭著者:益田 貴史、連絡著者:片上 直人
所属
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
著者からのひと言
近年、皮下連続グルコースモニタリング(CGM)は1型糖尿病患者の血糖管理において広く普及していますが、CGMから得られるデータだけで患者を分類したにも関わらず、各群で患者背景や合併症のリスクが異なっていたことが興味深いと考えております。各群の特徴を考慮した治療戦略を講じ、合併症を予防することが1型糖尿病患者の予後改善に重要であると考えます。

抄訳

20歳以上80歳以下の日本人1型糖尿病患者153名を対象に、皮下連続グルコースモニタリングから得られる各血糖変動指標を用いたクラスター分析を実施し、合併症のリスクを比較した。クラスター分析の結果、4つのClusterが同定された。Cluster 1 (n=53)は全ての血糖変動指標が良好であった。Cluster 2 (n=46)は高血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 3 (n=39)は低血糖を呈す時間が長く、血糖変動も大きかった。Cluster 4 (n=15)は高血糖・低血糖時間とも長く、血糖変動も大きかった。Cluster 1と比較して、Cluster 2は脈波伝播速度上昇のリスクが高く、Cluster 3は重症低血糖のリスクが高く、Cluster 4は多発神経障害、脈波伝播速度上昇、心血管疾患リスクスコア高値のリスクが高かった。

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2026/10/26

 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み

論文タイトル
A conserved Hox9–10 code underlies the early establishment of hind appendage progenitors in zebrafish and the Iberian ribbed newt
論文タイトル(訳)
 ゼブラフィッシュとイベリアトゲイモリにおける腹鰭・後肢の前駆細胞集団の初期形成を支える、保存されたHox9–10遺伝子の仕組み
DOI
10.1073/pnas.2621291123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (42) e2621291123
著者名(敬称略)
中澤 秀道 川村 哲規 他
所属
埼玉大学大学院理工学研究科生命科学部門・理学部生体制御学科
著者からのひと言
 2025年のeLife誌で発表した胸鰭の研究に続き、今回は腹鰭の形成に不可欠なHox遺伝子群を明らかにしました。特に、魚の腹鰭と両生類の後肢に共通する仕組みを発見したことは、胸鰭と腹鰭、さらには私たちの手足に、なぜ共通のHoxA/D9–13による形態形成の仕組みが備わっているのか、その進化的起源を考える重要な手がかりとなります。2021年のHoxクラスター欠失変異体の作製から研究を積み重ね、学生や共同研究者の皆さんと今回の成果にたどり着けたことを大変うれしく思います。

抄訳

 魚の胸鰭と腹鰭は、進化の過程で四肢動物の前肢と後肢へと変化し、私たちの手足につながりました。これらの器官は形が大きく異なりますが、その複雑な形をつくるために共通のHoxA/D9–13遺伝子システムを利用しています。しかし、この仕組みが進化の過程でどのように成立したのかは不明でした。
本研究では、ゼブラフィッシュの5つのHoxA/D9–10遺伝子を同時に欠失させると、腹鰭のもとになる細胞集団が検出されなくなり、腹鰭が完全に消失することを発見しました。さらに、両生類のイベリアトゲイモリでもHox9–10遺伝子群を破壊すると、後肢の形成が大きく損なわれました。
これらの結果は、魚の腹鰭と四肢動物の後肢の形成開始に共通するHox9–10の働きが、進化を通じて保存されていることを示しています。また、もともと体の後方を決めていたHox遺伝子の仕組みが、まず腹鰭の形成に利用され、やがて胸鰭にも共通するHoxA/D9–13システムへと発展したという進化モデルを支持する成果です。

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2026/10/23

雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割

論文タイトル
Role of nuclear receptor NR4A2 in prolactin secretion by female rat lactotrophs.
論文タイトル(訳)
雌ラットラクトトロフのプロラクチン分泌における核内受容体NR4A2の役割
DOI
10.1530/JOE-26-0188
ジャーナル名
The Journal of endocrinology
巻号
J Endocrinol (2026) 270 (3): e260188
著者名(敬称略)
寺島 涼太 他
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医生理学研究室
著者からのひと言
NR4A2は、神経伝達物質の合成や神経細胞の機能維持など、多様な機能に関わる転写因子です。これまで主に遺伝子発現の調節を通じた働きが注目されてきましたが、本研究では、ホルモンの放出過程にも関与する可能性を示しました。この新たな視点が、下垂体にとどまらず、神経伝達物質やさまざまなホルモンの分泌調節機構、さらには関連する病態の解明につながることを期待しています。

抄訳

プロラクチン (PRL) は、下垂体のラクトトロフから分泌され、乳汁産生を促すホルモンです。しかし、その働きは広く、雌では発情周期や妊娠、偽妊娠、授乳などの生殖状態に応じて、分泌量が大きく変わります。成熟ラクトトロフは高い分泌能を備えながら、ドパミンによる持続的な抑制を受けています。抑制を受けつつ、必要に応じて分泌を速やかに変える。本研究では、その特徴的な仕組みに着目し、分泌制御に関わる因子として、刺激応答性核内受容体NR4Aファミリーを見出しました。成熟雌ラットでは、妊娠や泌乳に伴うPRL分泌の亢進とともにNr4a遺伝子の発現が上昇し、分泌が低下する条件では発現も減少しました。さらに、下垂体初代培養細胞でNr4a2を抑制すると、Prl遺伝子の発現は変わらず、PRL分泌が選択的に低下しました。これらの結果は、NR4A2がPRLの放出過程に関わり、成熟ラクトトロフの高い分泌能を支える可能性を示しています。

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2026/10/23

胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する

論文タイトル
Constitutive sporulation in wild fission yeast enhances insect-mediated survival.
論文タイトル(訳)
胞子形成の恒常化は野生分裂酵母の昆虫との共生を促進する
DOI
10.1073/pnas.2607475123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (40) e2607475123
著者名(敬称略)
仁木 宏典 筆頭著者、連絡著者
清家 泰介 連絡著者
所属
国立遺伝学研究所 微生物機能研究室
九州工業大学 大学院情報工学研究院 生命情報工学研究系
著者からのひと言
ジャポニカス分裂酵母は全国各地に生息しており、道端の花や樹皮など、ごく身近な場所にいます。その酵母が昆虫との共生によって今も進化しています。生物の適応進化を身近に感じてもらえる研究です。(仁木)
なぜ、栄養が十分にあるのに胞子をつくる酵母がいるのか。今回の研究では、その不思議な性質が自然界での生存に有利に働くことがわかりました。実験室では見えてこない野生酵母の巧みな生存戦略と、微生物の進化の面白さを感じてもらえれば嬉しいです。(清家)

抄訳

酵母は、栄養条件に応じて栄養増殖と有性生殖を使い分ける。ところが、国内のショウジョウバエから分離されたジャポニカス分裂酵母は、栄養条件が良いにもかかわらず、恒常的に胞子を形成した。この形質は栄養条件が良い環境では増殖に不利であるにもかかわらず、国内各地から同じ形質を持つジャポニカス分裂酵母が見つかった。
そこで、昆虫による捕食がこの形質を維持する選択圧になっていると考え、ショウジョウバエとジャポニカス分裂酵母を用いた共生実験を行った。その結果、ハエによる捕食と消化が、恒常的に胞子を形成する形質に対する正の選択圧になり得ることが明らかになった。また、この形質は、有性生殖の開始を調節する複数の因子に生じた比較的軽微な変異が組み合わさることで獲得されたことが示唆された。
以上の結果から、国内の野生酵母集団では、昆虫との相互作用を介した自然選択により、恒常的な胞子形成という新たな形質を持つ遺伝集団が形成され、維持されていると考えられる。

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2026/10/22

ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる

論文タイトル
Network topology creates independent control of multiple checkpoints in the cell cycle system.
論文タイトル(訳)
ネットワークトポロジーにより、細胞周期システムにおける複数のチェックポイントの独立した制御が可能となる
DOI
10.1073/pnas.2537815123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (39) e2537815123
著者名(敬称略)
山内 悠平 望月 敦史 他
所属
京都大学医生物学研究所 生命システム研究部門・数理生物学分野 望月理論生物学研究室
著者からのひと言

抄訳

細胞が生きるためには、細胞内で様々な機能を持った反応が働き、それぞれが適切に制御される必要があります。ある反応の生成物が別の反応の材料になることで、細胞内の全ての反応が連結したひとつのネットワークとなることが知られています。では、ひとつにつながった動的システムで、異なる機能を担う異なる物質を、それぞれ個別に制御することは果たして可能でしょうか? 京都大学医生研のグループはこれまでに、反応ネットワークの一部がある数式を満たすと「緩衝構造」となり、他の部分から独立して制御される「モジュール性」を獲得することを、数学理論によって示してきました。今回、東京科学大学や京都大学生命科学研究科の研究グループとの共同研究により、細胞のライフステージを支配する「細胞周期システム」に、実際にこの緩衝構造が存在し、重要な役割を果たしていることを実証しました。本研究により、数学的な予測であった緩衝構造が実際に重要な生物機能を果たしていることが示され、細胞周期システムの理解が更新されました。さらには理論と実験から、未知の情報を得る、新しいシステム生物学の方法が提案されました。

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2026/10/21

 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov.

論文タイトル
Ureaplasma rhincodontis sp. nov. isolated from the faeces of whale shark (Rhincodon typus)
論文タイトル(訳)
 ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便から分離された新種細菌,Ureaplasma rhincodontis sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.007317
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology  Volume 76, Issue 10
著者名(敬称略)
瀬川 太雄 他
所属
日本大学生物資源科学部 獣医学科 獣医衛生学研究室
著者からのひと言
 本分離株の名称「TOSA-KAIYUᵀ」は,ジンベエザメが飼育されていた高知県土佐の地名と,共同研究先である海遊館にちなんでいます.
イルカ由来のUreaplasma cetiの培養で得た知見をもとに,ジンベエザメの糞便から新たなウレアプラズマ属細菌を分離できました.
株名には,採取地と研究をともに進めてくださった海遊館の皆様への感謝を込めています.

抄訳

 これまでに私たちは独自の培養法を確立し,イルカから新種細菌Ureaplasma cetiを分離することに成功しました(Segawa et al., Int J Syst Evol Microbiol. 2025).
一方、ジンベエザメ(Rhincodon typus)の糞便には,U. ceti と近縁と考えられるウレアプラズマ属細菌が優占することが報告されていましたが,培養分離には至っていませんでした.
そこで本研究は,U. cetiの培養法を基盤に条件を応用することで,ジンベエザメの糞便からこの細菌の分離培養に成功しました.
そして分離株の全ゲノム解析および培養性状の解析を行った結果,本菌がウレアプラズマ属の新種であることを明らかにし,ジンベエザメの学名に因んで「Ureaplasma rhincodontis」と命名しました.
これまで正式に命名されたウレアプラズマ属細菌はすべて恒温脊椎動物から分離されており,本菌は変温脊椎動物から初めて分離・培養されたウレアプラズマ属細菌に位置付けられます.

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2026/10/21

シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計

論文タイトル
Quantum Fisher information and photon statistics from shift current shot noise.
論文タイトル(訳)
シフト電流のショット雑音から読み解く量子フィッシャー情報と光子統計
DOI
10.1073/pnas.2611254123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻号
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (41) e2611254123,
著者名(敬称略)
Evgenii Barts 永長 直人 他
所属
理化学研究所 基礎量子科学研究プログラムおよび創発物性科学研究センター
著者からのひと言
光検出器、特にテラヘルツ領域におけるそれは、自動運転を含む多くの応用が期待されていますが、将来は量子情報操作への展開が考えられます。本研究は量子としての光の性質が光検出器の電気信号としてどのように現れるかを理論的に明らかした仕事であり、その基礎学理を与える一歩であると考えています。

抄訳

光は一見なめらかに見えますが、微視的には「光子」と呼ばれる粒として振る舞い、その数にはゆらぎがあります。このゆらぎには、光の平均的な明るさだけではわからない、量子としての性質が隠れています。本研究では、その情報を電気信号として読み出す新しい方法を提案しました。利用するのは、反転中心を持たない結晶に光を当てると、電子の位置がわずかにずれることで生じる「シフト電流」です。この仕組みにより、光子数のゆらぎを、流れる電気量のゆらぎへと変換できます。つまり、電気信号の細かな変動を調べることで、光の隠れた性質を知ることができます。さらに、一定の条件のもとでは、この変動から、光を使ってどれほど精密な測定ができるかを示す量子フィッシャー情報量と呼ばれる量も得られます。電子を次々に増やして信号を強める仕組みなどを必要とせず、光と結晶の性質を直接利用する点が特徴です。光の量子的な性質を電気で読み取る新たな技術として、高感度な光検出や精密測定への応用が期待されます。

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