抄訳
Gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)は、胃体部から穹窿部に限局して多発性ポリープを形成し、胃癌を高率に発症する常染色体顕性遺伝性疾患である。これまでGAPPSにおいて、正常粘膜からポリープ、さらに癌へと進展する過程で蓄積する遺伝子変異については明らかにされていなかった。本研究では、GAPPSにおける正常粘膜、ポリープ、癌への進化的過程を明らかにすることを目的とした。7人のGAPPS患者(計54検体)から採取した癌、ポリープ、正常粘膜のサンプルに対して全エクソームシーケンスおよびRNAシーケンスを行い、ゲノム変化(コピー数異常および体細胞変異)、トランスクリプトーム動態を包括的に解析した。その結果、GAPPSではAPC遺伝子の体細胞変異がポリープおよび癌に認められ、さらに癌ではKRAS変異が追加的に出現することが明らかになった。また、APCおよびKRAS変異の共存が症例間および同一症例内のサブクローン間で反復して認められ、これらの共変異がGAPPSの発がんに寄与する可能性が示唆された。本研究は、GAPPS発がん過程におけるゲノムおよびトランスクリプトームのランドスケープを明らかにし、その分子機構の理解に貴重な知見を提供するものである。