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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2026/05/20

膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している New

論文タイトル
Transmembrane ROOM proteins ensure rooms for germ cells by maintaining intercellular bridges
論文タイトル(訳)
膜貫通ROOMタンパク質は細胞間橋を維持することにより生殖細胞のためのRoomを確保している
DOI
10.1073/pnas.2522264123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.19 e2522264123
著者名(敬称略)
杉浦健太 佐藤健 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
著者からのひと言
卵母細胞が正常に形成されるためには各生殖細胞に雌性核が1つずつ含まれた”個室“となる必要がありますが、この仕組みはあまりわかっていません。細胞間橋や細胞分裂溝に局在してアクトミオシン系と協調して働く因子のなかでも膜貫通タンパク質はあまり知られておらず、ROOMタンパク質の解析により得られる知見は生殖細胞、卵母細胞の形成だけではなく、その他の細胞の分裂や細胞間橋形成等の理解にも役立つ可能性があります。

抄訳

多くの有性生殖を行う動物において、生殖細胞は不完全な細胞分裂の結果として合胞体を形成し、くびれた細胞間橋を介して細胞質成分を共有しています。この合胞体の状態が維持できないと、将来の卵母細胞の形成に異常が生じ、不妊となることが知られています。しかしながら、これらの過程を制御する分子メカニズムはいまだ不明な点が多く残されています。本研究では、線虫(Caenorhabditis elegans)の成体生殖腺の合胞体において、生殖細胞の細胞区画維持に不可欠な構成要素として、パラログである膜貫通タンパク質ROOM-1およびROOM-2を同定しました。これらのタンパク質は生殖細胞と細胞質コアを繋ぐ細胞間橋においてF-アクチンと共に特異的に局在しており、両者を欠損すると生殖腺内における個々の生殖細胞の区画化が不全となり、卵母細胞が形成されず子孫を残せないことが判明しました。また、ROOMタンパク質は細胞間橋を構成するアクトミオシン制御因子と共局在し、これらの局在は相互依存していることが明らかとなりました。以上のことから、ROOMタンパク質は、アクトミオシン複合体と協調して生殖細胞-細胞質コア間の細胞間橋を安定化し不完全な細胞分裂を維持することで、生殖細胞のための「Room」を確保していることが明らかとなりました。

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2026/05/18

潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序 New

論文タイトル
Immunological mechanism behind reactivated cryptococcosis in persistently infected mice following FTY720 treatment
論文タイトル(訳)
潜在性クリプトコックス感染マウスモデルにおけるFingolimod(FTY720)投与による内因性再燃の免疫学的機序
DOI
10.1128/iai.00612-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
𠮷田  美智子 他
所属
東北大学病院 総合感染症科
著者からのひと言
既存モデルでは困難であった,有莢膜株を用いた臨床に即した新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した点が本研究の強みである.本モデルは再活性化解析にも応用可能であり,本研究で構築した新規マウスモデルを用いたさらなる研究により,潜在性クリプトコックス感染の新規診断法,予防戦略,さらには免疫応答を標的とした補助治療の開発につながる可能性がある.

抄訳

クリプトコックス症は,Cryptococcus neoformans species complex(CNSC)による侵襲性真菌感染症であり,Th1免疫応答による肉芽腫形成が感染制御に重要である.CNSCは初感染後に潜在性感染状態へ移行し,免疫制御が破綻すると再活性化すると考えられるが,その機序は十分解明されていない.本研究では,CNSCの主要T細胞抗原であるChitin deacetylase 2(Cda2)特異的CD4陽性T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(CnT-Ⅱマウス)を用いて,肺肉芽腫形成を伴う新規潜在性クリプトコックス感染マウスモデルを構築した.本モデルに多発性硬化症治療薬であるFingolimod(FTY720)を投与したところ,肺内IFN-γおよびIL-12レベルの低下に伴い肉芽腫構造の破綻を認め,その後,肺内生真菌数が増加し,内因性再燃を示唆する変化を認めた.また,IFN-γ産生CD4陽性エフェクターメモリーT細胞(Tem)が著減していた.以上より,潜在性感染状態の維持にはCD4陽性Tem細胞が重要である可能性が示され,FTY720はCD4陽性Tem細胞の減少を介してTh1免疫応答を障害し,内因性再燃を促進すると考えられた.

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2026/05/18

チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる New

論文タイトル
Tubulin acetylation deficiency promotes axonemal turnover and increases cytoplasmic microtubules
論文タイトル(訳)
チューブリンアセチル化の欠損は、鞭毛軸糸のターンオーバーを促進し、細胞質性微小管を増加させる
DOI
10.1091/mbc.E26-01-0058
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 37, No. 6
著者名(敬称略)
久保 智広 他
所属
山梨大学大学院 総合研究部 医学域 解剖学講座構造生物学教室
著者からのひと言
チューブリン翻訳後修飾の中でも、アセチル化は古くから最も研究が進められてきた修飾の一つです。私たちは、微小管研究に適した単細胞緑藻類クラミドモナスを用いて、チューブリンアセチル化が完全に欠損した株を作製しました。その結果、鞭毛および細胞質性微小管の動態に大きな異常が生じることを見出しました。このような現象はこれまで報告されておらず、単細胞モデルを用いた研究の有用性を示す結果であると考えています。

抄訳

微小管を構成するチューブリンは、多様な翻訳後修飾を受ける。本研究では、鞭毛・繊毛研究のモデル生物である単細胞緑藻類クラミドモナスを用い、チューブリンアセチル化が細胞全体の微小管動態に果たす役割を追究した。クラミドモナスでは、チューブリンアセチル化は鞭毛軸糸およびルートレット微小管と呼ばれる一部の細胞質性微小管に観察される。αチューブリンアセチル基転移酵素1 (αTAT1)をゲノム編集によりノックアウトした変異株atat1-1を樹立したところ、atat1-1ではチューブリンアセチル化が完全に消失していた。ダイオアリオンアッセイによる解析から、atat1-1では軸糸のターンオーバー頻度が著しく増加することが明らかになった。加えて、興味深いことに、atat1-1ではルートレット微小管だけでなく全ての細胞質性微小管の量が有意に増加していた。これらの結果は、チューブリンアセチル化が軸糸微小管の安定性維持に関与するとともに、細胞全体の微小管の動態制御を担っていることを示唆するものである。

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2026/05/15

植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される

論文タイトル
Two-step, long-distance nuclear migration guided by distinct actin networks prior to plant root hair formation
論文タイトル(訳)
植物の根毛形成前に起こる核の二段階の長距離移動は、異なるアクチンネットワークによって駆動される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgag141
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 5, Issue 5, May 2026, pgag141,
著者名(敬称略)
高塚 大知 他
所属
国立大学法人奈良国立大学機構・奈良女子大学・研究院自然科学系
著者からのひと言
植物細胞は一般に動物細胞よりも巨大化する能力が高いことが広く知られている。しかし、そのように巨大化した植物細胞内で、空間的な位置情報を精確に統御し、適切な細胞内構造を形成する仕組みについては、殆ど理解が進んでいない。本研究は、植物細胞内において、核が多段階の過程を経て長距離移動することを示した初めての例であり、植物細胞における細胞内構造制御の新たな原理を明らかにした独自性の高い研究である。

抄訳

植物細胞の特徴の一つは、細胞体積を劇的に増大させる能力である。そのような巨大化した細胞内で、必要に応じて核が最適な位置へ移動することは細胞が機能を果たすのに不可欠である。しかし、核が巨大な植物細胞内を精確に、長距離移動する仕組みは未解明であった。本研究では、根の表皮細胞から伸びる管状構造である根毛が形成される前に、核が空間的に厳密に規定された目的地まで、約50 µmの長距離を精確に移動すること、そしてその移動が二段階で進行し、それぞれが異なるアクチンアイソフォームから構成される別々のF-actinネットワークによって誘導されることを示した。さらに、目的地で活性化される低分子量GTPaseシグナルがF-actin形成を促進することを発見した。低分子量GTPaseシグナル依存的なF-actin形成は、第二段階の核移動には必須である一方、第一段階には必要ないことも見出した。これらの結果は、巨大な植物細胞内で核の精確な移動を保証する、複雑で段階的な仕組みの存在を示すものである。

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2026/05/14

一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布

論文タイトル
Diversity and geographical distribution of potential carbon monoxide oxidizers using molybdenum-containing enzymes in the ocean
論文タイトル(訳)
一酸化炭素を酸化する潜在能力を持つ海洋細菌の多様性および地理的分布
DOI
10.1128/msphere.00062-26
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
今浦 由就 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

海洋では化学反応により一酸化炭素(CO)が生じ、その90%は原核生物(CO酸化菌)に消費されると推定されている。CO酸化菌は、鍵酵素のCOデヒドロゲナーゼ(CODH)を用い、COをエネルギー源として利用する。CODH遺伝子を持つ原核生物(潜在的CO酸化菌)は海洋において少なくとも8つの原核生物門に属し、群集の10–20%を占めると考えられてきたが、その多様性は過大評価されていた。本研究では過大評価を除いた方法で潜在的CO酸化菌を探索した。その結果、9門233種(うち207種は新たに潜在的CO酸化菌と同定)が検出され、原核生物の0.1–6.7%が潜在的CO酸化菌であると推定された。233種のうち優占11種は20種の原核生物と共起し、共起の相手は種ごとに異なった。11種はCODH以外に共通の遺伝子を持たず、潜在的CO酸化菌-原核生物の相互作用には共通の分子的基盤が存在しないと示唆された。

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2026/05/13

進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ

論文タイトル
Evolution-guided prioritization identifies a tissue-specific phosphorylation switch on herpes simplex virus 1 UL7 regulating viral replication and pathogenicity
論文タイトル(訳)
進化情報に基づく抽出戦略により見出されたHSV-1 UL7の組織特異的リン酸化スイッチ
DOI
10.1128/jvi.00200-26
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
オミクス解析の進展により、生物学は“データ不足”から“候補過剰”の時代へ移行しつつある。本研究は、Simplexvirus属における進化的保存性を利用することで、膨大なHSV-1リン酸化情報から機能的重要性の高い修飾部位を効率的に抽出できる可能性を示した。進化情報とリン酸化プロテオーム情報を統合する本アプローチは、ビッグデータ時代における効率的な生命機能探索戦略として発展することが期待される。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)タンパク質には多数のリン酸化部位が同定されているが、その大部分の機能的意義は不明なままである。本研究では、リン酸化プロテオーム情報とSimplexvirus属におけるアミノ酸保存性を統合した抽出戦略を構築し、機能的重要性が高いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、UL7 Tyr-89に着目し解析を行ったところ、リン酸化模倣変異はUL7欠損変異と類似して、ウイルス粒子形成、培養細胞での増殖、さらにマウス中枢神経系および眼における病原性を低下させた。一方、非リン酸化変異は培養細胞や眼では大きな影響を示さず、中枢神経系でのみHSV-1増殖と病原性を低下させた。これらの知見より、UL7 Tyr-89リン酸化は組織特異的にUL7機能を微調整する抑制性スイッチとして働くことが示唆された。本研究で採用した進化情報に基づく抽出戦略は、HSV-1タンパク質における機能的リン酸化部位の効率的な同定に寄与することが期待される。

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2026/05/12

ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する

論文タイトル
A phage-derived reconfigurable effector associated with an actinobacterial contractile nanomachine tailors bacterial responses to competition
論文タイトル(訳)
ファージに由来する再構成可能なエフェクターが放線菌の収縮性ナノマシンに付随し、細菌間競争への応答を調節する
DOI
10.1128/jb.00532-25
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Ahead of Print
著者名(敬称略)
永久保 利紀 他
所属
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系/高等研究院/MiCS
ライデン大学 客員研究員
著者からのひと言
この論文では、何らかのきっかけで細菌のゲノムに残された「ウイルスの残骸」がその細菌の役に立っていることを示しています。「ウイルスの残骸」はその機能を容易に改変可能なタンパク質のモジュール構造に落とし込み、細菌が外部から受ける選択圧への柔軟な対応を可能にすることで、自らを保持する細菌の繁栄に貢献しその存在を維持している可能性があります。その機能中枢が、ウイルスの感染機構に由来していると思われる点も注目されます。

抄訳

収縮性注入機構(CISs)は、ファージ尾部から派生したナノマシンであり、細菌を中心とした原核生物に広く分布している。CISsはエフェクターと呼ばれる特定のタンパク質を格納し、様々な生物学的プロセスを仲介するエフェクターを射出する。本研究では、ファージの感染機構の一部から派生した新規エフェクター群の発見について報告する。CISsが最も高度に保存されている細菌群である放線菌のモデル種Streptomyces lividansにおいて、細胞内CISの一種であるSLPのエフェクターSle1が同定された。Sle1はSLPに格納され、S. lividansの細胞膜関連プロテオーム画分の割合を増加させ、最終的に細菌間競争に対する本菌の適応を促す。Sle1ホモログは放線菌において広く分布している。以上の結果は、ファージの感染機構が細菌によって環境適応を補助する因子として取り込まれてきたことを示唆している。

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2026/05/12

LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する

論文タイトル
LRBA organizes distinct vesicular trafficking systems in distal nephron segments for water and sodium conservation
論文タイトル(訳)
LRBAは腎臓の遠位ネフロンにおいて水と塩の恒常性を維持するために複数の小胞輸送機構を制御する
DOI
10.1073/pnas.2525505123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.18 e2525505123
著者名(敬称略)
長岡 可楠子 安藤 史顕 他
所属
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野
著者からのひと言
LRBA欠損症は、これまで主に「免疫の病気」と考えられてきましたが、本研究により、LRBAが腎臓にも発現し、水と塩の保持を担うことが明らかになりました。患者レジストリ解析とモデルマウスの解析を統合することで、腎臓の体液恒常性維持機構を新たに解明した点が本研究の特徴です。本成果は、LRBA欠損症に「尿濃縮障害」という新たな病態概念を加えるものであり、脱水症や電解質異常への早期治療介入の必要性を示しています。

抄訳

LRBA欠損症は、慢性的な下痢や繰り返す感染症を特徴とする先天性免疫異常症に分類される疾患として知られていますが、免疫系以外の表現型については十分に解明されていませんでした。本研究では、LRBA欠損症患者の国際共同レジストリ解析、LRBA欠損症モデルマウスの病態解析、腎臓膜タンパクの網羅的解析を組み合わせることで、LRBA欠損症において尿濃縮力障害、多尿、電解質異常が生じることを明らかにしました。その機序として、LRBAが腎臓集合管ではAQP2・AQP4水チャネルの小胞輸送を担い、さらに遠位尿細管ではSPAKキナーゼの小胞輸送を介して塩輸送体の活性制御を担うことを解明しました。LRBAは腎臓において水と塩を協調的に保持する役割を有し、尿中への喪失を防いでいました。LRBA欠損症患者の診療では、脱水症への注意が必要となる一方で、一部の変異では抗利尿薬デスモプレシンが多尿の治療へ有効となる可能性を示せており、遺伝子変異に応じた個別化医療への発展が期待されます。

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2026/05/11

スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定

論文タイトル
Molecular epidemiology of rodent-borne Leptospira spp. in Sri Lanka: identification of novel sequence types
and previously unrecognized reservoir animals
論文タイトル(訳)
スリランカにおけるネズミ媒介性レプトスピラ属菌の分子疫学:新規シーケンスタイプおよびこれまで認識されていなかった保菌動物の同定
DOI
10.1099/jmm.0.002133
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Volume 75, Issue 3
著者名(敬称略)
Nipun Rathnayake 小泉 信夫 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部-第四室
著者からのひと言
本研究では、スリランカのネズミ類における病原性レプトスピラの遺伝的多様性を明らかにし、ヒト感染に関与する新たな保菌動物を同定した。さらに、これまで未報告であった新規シーケンスタイプも検出され、スリランカにおける多様なレプトスピラ感染環の存在が示された。本研究成果は、レプトスピラ症の感染源解明と制御対策の構築に貢献すると期待される。

抄訳

レプトスピラ症は,全世界で発生する人獣共通感染症であり、特に熱帯地域で流行がみられる。スリランカは本症の流行地域の一つであり、病原体(レプトスピラ属菌)、保菌動物、ならびに環境・職業要因が複雑に関与することで、公衆衛生上の問題となっている。
本研究では、ヒト患者由来レプトスピラとネズミ類が保有するレプトスピラとの遺伝学的関連性を明らかにするため、スリランカのKurunegala、Anuradhapura、Badullaの3地区に生息するネズミ類におけるレプトスピラの遺伝的多様性を調査した。
その結果、257検体中33検体(12.8%)から病原性レプトスピラDNAが検出され、陽性個体はBandicota bengalensisMus boodugaRattus rattus、およびVandeleuria sp.の4種であった。flaB遺伝子配列解析および多遺伝子座配列タイピング(MLST)により、検出されたレプトスピラ種はLeptospira borgpeterseniiL. interrogansL. kirschneri、およびL. licerasiaeであり、2つの新規シーケンスタイプ(ST389およびST392)を含む計5種類のシーケンスタイプが同定された。また、R. rattusがヒト感染に関与するL. interrogans ST49の、M. boodugaL. borgpetersenii ST144およびL. licerasiaeの保菌動物であることが示された。

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2026/05/11

原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例

論文タイトル
Dendriform pulmonary ossification in fibrosing interstitial lung disease with primary biliary cholangitis
論文タイトル(訳)
原発性胆汁性胆管炎を伴う間質性肺炎に認めた樹枝状肺骨化症の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-271743
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 4
著者名(敬称略)
尾形 朋之 他
所属
茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター 呼吸器内科
著者からのひと言
間質性肺疾患に伴う微細結節影では、肉芽腫性疾患のみならず樹枝状肺骨化症(DPO)も重要な鑑別となります。本症例は、骨条件CTでの再評価と経気管支鏡下クライオバイオプシーにより診断に至りました。背景因子として慢性微小誤嚥の関与も示唆され、DPOの病態理解にも示唆を与える症例です。

抄訳

Dendriform pulmonary ossification(DPO)は、肺内に樹枝状の骨形成を認める稀な病態であり、UIPパターンを呈する肺線維症との関連が知られている。今回、無症候性の原発性胆汁性胆管炎(PBC)を有する80歳代男性において、胸部CTで両側下葉の非特異的なすりガラス影と線維化に加え、胸膜下に微小結節の出現を認めたため、PBCに関連した肉芽腫性の間質性肺炎が疑われた。しかし、経気管支鏡下クライオバイオプシー(TBLC)では肉芽腫は認められず、UIPパターンの線維化とともに肺胞内の骨化が確認された。これを受けてCTを骨条件で再評価したところ、微小結節は高吸収の樹枝状構造として描出され、DPOに合致する所見であることが確認された。本報告は、間質性肺炎に付随するDPOの臨床的意義と、TBLCの有用性を示すものである。

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