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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2012/03/07

局所的な神経の活性が、免疫細胞の血液脳関門の通過ゲートを形成する

論文タイトル
Regional Neural Activation Defines a Gateway for Autoreactive T Cells to Cross the Blood-Brain Barrier
論文タイトル(訳)
局所的な神経の活性が、免疫細胞の血液脳関門の通過ゲートを形成する
DOI
10.1016/j.cell.2012.01.022
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
February 2012 |Vol. 148 |Issue 3 |447-457
著者名(敬称略)
有馬 康伸、村上 正晃 他
所属
大阪大学大学院生命機能研究科、医学系研究科、免疫学フロンティア研究センター、JST-CREST、免疫発生学

抄訳

中枢神経系である脳や脊髄の血管は、細菌やウイルスなどの影響を防ぐために特殊な関所として血液脳関門を形成しています。血液脳関門は、免疫細胞はもとより、大きなたんぱく質なども通過できません。しかし、中枢神経系にも細菌やウイルスが感染し、がんや炎症などに起因する難病が発症します。こうした背景から、病原体や免疫細胞などが中枢神経系に入るゲートがある可能性が考えられてきました。しかし、そのゲートがどこにあり、またどのように形成されるのかなど、実体は不明でした。私たちは、中枢神経系の難病である多発性硬化症の動物モデルを用いて、血液脳関門のゲートの部位とその形成機構を調べ、第5腰椎の背側の血管がそのゲートであることを突き止めました。また、地球からの重力による日常的な刺激が第5腰椎付近の神経を活性化させ、それが慢性炎症の誘導機構"IL−6アンプ"を活性化することによってこのゲートが形成されることを突き止めました。今回の成果により、精神的ストレスでさまざまな病気が増悪する仕組み、あるいは、適度な運動が病気を改善するメカニズム、さらに、なぜ針治療で多くの病気が改善するのかなど、今まで不明であった神経や精神と免疫系の相互作用の分子基盤が解明されることが期待されます。

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2012/03/07

相手の状況に合わせたチンパンジーの手助け行動

論文タイトル
Chimpanzees’ flexible targeted helping based on an understanding of conspecifics’ goals
論文タイトル(訳)
相手の状況に合わせたチンパンジーの手助け行動
DOI
10.1073/pnas.1108517109
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Februay 2012 |publish ahead of print
著者名(敬称略)
山本 真也
所属
京都大学 霊長類研究所 ヒト科3種比較研究プロジェクト

抄訳

チンパンジーは相手が何を必要としているかを理解し、それにあわせて利他行動を柔軟に変化させるのだろうか。本研究では、利他行動の文脈におけるチンパンジーの他者理解についてより詳細に検討した。隣接する2つのブースのうち、片方には道具使用場面(ステッキ使用場面あるいはストロー使用場面)を設定し、もう一方にはステッキ・ストローを含む7つの道具を与えた。ブース間パネルが透明な条件(「見える」条件)と不透明な条件(「見えない」条件)を48試行ずつ交互におこなったところ、どちらの条件でも道具使用場面の個体が穴から手を伸ばして道具を要求する行動がみられた。しかし、渡し手の道具選択には2条件間に違いがみられ、「見える」条件では相手の状況にあわせて渡す道具の割合を有意に変化させていたのに対し、「見えない」条件ではそのような適切な道具選択ができなかった。5個体中1個体は「見えない」条件でも適切な道具を選択できていたが、この個体は道具を渡す前に穴から相手ブースを覗き見したあとに道具を選択して渡していた。これらの結果から、チンパンジーが相手の置かれている状況を見て相手の欲求を理解し、それに応じて利他行動を柔軟に変化させていることが示唆された。本研究からは、要求行動そのものからではなく、相手の状況から相手の欲求を理解していることが示唆された。チンパンジーの利他行動の生起には状況の理解と要求の理解が別々かつ相補的に働いている可能性が考えられる。

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2011/08/02

線虫Caenorhabditis elegansのSNAP-29は腸上皮細胞における小胞輸送経路のオルガネラの構造維持とエキソサイトーシスに重要である

論文タイトル
Caenorhabditis elegans SNAP-29 is required for organellar integrity of the endomembrane system and general exocytosis in intestinal epithelial cells
論文タイトル(訳)
線虫Caenorhabditis elegansのSNAP-29は腸上皮細胞における小胞輸送経路のオルガネラの構造維持とエキソサイトーシスに重要である
DOI
10.1091/mbc.E11-04-0279
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
July 2011 |Vol. 22 |Issue 14 |2579-2587
著者名(敬称略)
佐藤 美由紀、2佐藤 健、他
所属
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野

抄訳

SNAP-29(synaptosomal-associated protein 29)は細胞内物質輸送において小胞膜と標的膜の融合に働くSNARE(soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor)分子の1つであり、その遺伝子異常は皮膚表皮角化細胞において層板顆粒分子が蓄積するCEDNIK syndrome(cerebral disgenesis、neuropathy、ichthyosis、keratoderma)の原因となることが報告されている。本研究では、線虫C. elegans の腸上皮細胞におけるSNAP-29ホモログの役割に注目し、解析を行った。その結果、SNAP-29の機能阻害をすると、腸細胞からの卵黄成分(リポタンパク質)の分泌や膜タンパク質の細胞膜への輸送に異常を示し、また違う組織である卵母細胞においても細胞膜への物質輸送に異常を示した。また、SNAP-29はゴルジ体、細胞膜、エンドソームに局在し、この遺伝子の機能阻害によってゴルジ体やエンドソームに局在する膜タンパク質が小型の膜小胞へと分散してしまうことが明らかとなった。これらのことから、SNAP-29は小胞輸送経路における様々なオルガネラに局在し、細胞膜への物質輸送を制御するとともに、ダイナミックに変化するこれらのオルガネラの機能と恒常性維持に働くことが明らかとなった。

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2011/06/13

祖先型タンパク質の立体構造解析による魚類ガレクチンの進化トレース

論文タイトル
Tracing Protein Evolution through Ancestral Structures of Fish Galectin
論文タイトル(訳)
祖先型タンパク質の立体構造解析による魚類ガレクチンの進化トレース
DOI
10.1016/j.str.2011.02.014
ジャーナル名
Structure Cell Press
巻号
May 2011 |Vol. 19 |Issue 5 |711-721
著者名(敬称略)
1今野 歩、2白井 剛、他
所属
1東北大学大学院生命科学研究科
2長浜バイオ大学 コンピュータバイオサイエンス学科

抄訳

生命体を化石から復活することは不可能だが、遺伝子については現存DNA配列から計算により祖先配列を求め、分子生物学的に復元することが可能である。魚類の生体防御タンパク質であるコンジェリンには、加速進化しつつあるConIとConIIのアイソフォームが存在する。本研究では最尤法によりアイソフォームの共通祖先Con-anc'の配列を決定し、立体構造をX線結晶構造解析で求めることに成功した。ConIとIIではフォールドが変化しているが、Con-anc'は予想通り祖系フォールドであった。しかし、構造の詳細はConIとII の中間的性質を示し、Con-anc'が祖先型であることを裏付けていた。Con-anc'の細胞毒性活性は現存タンパク質より低く、生体防御機能に選択圧がかかっている事が示された。また、耐熱性はConI のみで強化され、糖鎖特異性はConIとIIで変化しており、両タンパク質が分化しつつある事が実験的に裏付けられた。

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2011/04/27

結晶シリカやアルミニウム塩はNALP3インフラマソーム非依存性のメカニズムでマクロファージからのプロスタグランジン産生を制御する

論文タイトル
Silica Crystals and Aluminum Salts Regulate the Production of Prostaglandin in Macrophages via NALP3 Inflammasome-Independent Mechanisms
論文タイトル(訳)
結晶シリカやアルミニウム塩はNALP3インフラマソーム非依存性のメカニズムでマクロファージからのプロスタグランジン産生を制御する
DOI
10.1016/j.immuni.2011.03.019
ジャーナル名
Immunity Cell Press
巻号
April 2011 |Vol. 34 |Issue 4 |514-526
著者名(敬称略)
黒田 悦史、他
所属
産業医科大学 医学部免疫学寄生虫学講座

抄訳

結晶シリカやアルミニウム塩(アラム)などの粒子状物質の多くはアジュバント活性を有していることが知られており、特にIgE産生促進をはじめとするII型免疫反応を誘導する特徴がある。これらの粒子状物質は細胞内パターン認識レセプターの一つであるインフラマソームを活性化し、炎症性サイトカインを誘導することが知られている。我々はさらに脂質メディエータであるプロスタグランジンE2(PGE2)を介した免疫制御機構を見いだした。  シリカやアラムはマクロファージを刺激してインフラマソーム依存性にインターロイキン1を、インフラマソーム非依存性にPGE2産生を誘導した。PGE2のin vivoにおける役割を検討したところ、PGE2を産生しないPGE合成酵素欠損マウスでは野生型マウスに比べて粒子状物質により誘導される血清IgEの産生が有意に低下していた。粒子状物質によるPGE2産生の分子メカニズムについて解析したところ、p38 MAPキナーゼとspleen tyrosine kinase(Syk)の活性化が関与していることが明らかになった。  これらの結果は粒子状物質によって誘導される脂質メディエータがin vivoにおける免疫反応を制御するという新しいメカニズムを提唱するものである。

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2011/04/19

種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態

論文タイトル
Fluorescence kinetics in HeLa cells after treatment with cell cycle arrest inducers visualized with Fucci (fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator) 
論文タイトル(訳)
種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態
DOI
10.1042/CBI20100643
ジャーナル名
Cell Biology International 
巻号
April 2011 |Vol. 35 |No. 4 |359-363
著者名(敬称略)
戒田 篤志、三浦 雅彦
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔放射線腫瘍学分野

抄訳

Fucciは、理研の宮脇らによって開発された生細胞における細胞周期動態を可視化するシステムである。Fucciを導入した細胞は、正常な細胞周期回転中において、G0/G1期に赤色、S/G2/M期には緑色の蛍光を発する。このシステムは、抗癌剤による細胞動態解析等、癌治療分野への応用が期待されるが、その蛍光動態に関する基本的特性は不明である。そこで我々は、Fucci導入HeLa細胞を用いて、G2/Mアレストを誘導するX線照射や、S期初期でのアレストを誘導するハイドロキシウレア(HU)、そしてM期アレストを誘導するノコダゾールによる処理を施し、それぞれの処理後の蛍光動態を、蛍光顕微鏡での観察とフローサイトメトリーにより解析した。X線照射後またはHU投与後20hには、ほとんどの細胞が緑色蛍光を発し、DNA量によって評価した細胞周期動態と蛍光動態が一致していたが、ノコダゾール投与後では、M期に同調しているにもかかわらず、異常な赤色蛍光の誘導が認められた。このように処理によっては、細胞周期動態と一致しない予期せぬ蛍光動態をもたらす場合があり、Fucciを応用する上で注意が必要であることが分かった。ノコダゾールは微小管重合阻害剤であり、この処理によって赤色蛍光を制御するCdt1のSCFSkp2によるユビキチン化がM期で抑制される知見は興味深い。

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2011/02/04

ユビキチンリガーゼのRiplet分子はウイルス感染時の分子に依存した自然免疫応答に必須である

論文タイトル
The Ubiquitin Ligase Riplet Is Essential for RIG-I-Dependent Innate Immune Responses to RNA Virus Infection
論文タイトル(訳)
ユビキチンリガーゼのRiplet分子はウイルス感染時の分子に依存した自然免疫応答に必須である
DOI
10.1016/j.chom.2010.11.008
ジャーナル名
Cell Host & Microbe Cell Press
巻号
December 2010|Vol. 8 |Issue 6 |496-509
著者名(敬称略)
押海裕之
所属
北海道大学大学院医学研究科免疫学分野

抄訳

 新型インフルエンザやC型肝炎ウイルス等はヒトの細胞に感染すると、そのウイルスRNAが細胞質内にあるウイルス認識センサーのRIG-I分子によって認識される。RIG-IはウイルスRNAを認識すると強い抗ウイルス作用をもつI型インターフェロンの産生を誘導する。我々はこれまでに、RIG-Iと結合する分子として新規ユビキチンリガーゼのRiplet分子を単離し、RipletがRIG-IのC末端領域をユビキチン化することでRIG-Iを活性化することを発見した。今回、さらにこのRiplet遺伝子のノックアウトマウスを作成しRipletの生体内での役割の解明を試みた。
 Ripletノックアウトマウスより単離した胎児繊維芽細胞や骨髄由来の樹状細胞とマクロファージでは牛水泡性口内炎ウイルスやインフルエンザウイルス感染時のI型インターフェロン産生が消失していた。また、C型肝炎ウイルスのRNAに対する応答も消失し、Ripletが必須の役割をすることが明らかとなった。またウイルス感染時の生存率もRipletノックアウトマウスで大きく低下したことから、Ripletが、ウイルス認識センサーのRIG-Iの活性化に必須であることが示された。

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2010/11/10

超分子ナノキャリアによる見えるドラッグデリバリー:単一プラットフォームを用いた膵臓がんの診断と治療

論文タイトル
Visible Drug Delivery by Supramolecular Nanocarriers Directing to Single-Platformed Diagnosis and Therapy of Pancreatic Tumor Model
論文タイトル(訳)
超分子ナノキャリアによる見えるドラッグデリバリー:単一プラットフォームを用いた膵臓がんの診断と治療
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-10-0303
ジャーナル名
Cancer Research(AACR Comprehensive Cancer Collection) 
巻号
September 2010|Vol. 70 |Issue 18 |7031-7041
著者名(敬称略)
貝田 佐知子、西山伸宏、片岡 一則、他
所属
東京大学 医学系研究科附属疾患生命工学センター臨床医工学部門

抄訳

現在、がん化学療法では、薬剤のがん集積性を迅速に判別する手段は無く、また、治療効果が判明するまで長い期間が必要となり、その結果「手遅れ」となる場合も多く見受けられる。本研究では、我々が開発した高分子ミセル型DDSに、MRI造影剤(Gd-DTPA)を搭載することによって、がんへの集積から治療効果までをイメージングにより追跡することができる「見えるDDS」を開発した。Gd-DTPA搭載ミセルは、Gd-DTPA単体の24倍の水プロトン緩和時間短縮効果を有しており、MRI造影剤として高い性能を有することが明らかになった。また、難治性の膵臓がんに対して見えるDDSの効果を評価するために、マウス膵臓がんモデルを用いたMRイメージングとMRIによるDDSの治療効果の追跡を行った。その結果、高分子ミセルは、膵臓がんモデルに効果的に集積し、優れた薬理効果を示すことが、MRイメージングによって明らかになった。
 本システムを利用すれば、がん治療が薬物の患部への到達を確認しながら行うことができ、さらに治療効果をリアルタイムで追跡できるようになるものと考えられ、「手遅れのない」確実ながん治療の実現が期待される。

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2010/09/27

多能性幹細胞の異種間胚盤胞注入によりマウス内にラットの膵臓を作製

論文タイトル
Generation of Rat Pancreas in Mouse by Interspecific Blastocyst Injection of Pluripotent Stem Cells
論文タイトル(訳)
多能性幹細胞の異種間胚盤胞注入によりマウス内にラットの膵臓を作製
DOI
10.1016/j.cell.2010.07.039
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
September 2010|Vol. 142|Issue 5|787 - 799
著者名(敬称略)
小林 俊寛*1, *2、中内 啓光*1, *2
所属
*1 東京大学 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野
*2 JST ERATO 中内幹細胞制御プロジェクト

抄訳

多能性幹細胞からin vitroで臓器を作製することは再生医療における究極的な目標であるが、構成細胞の多様性や3次元的な立体構造を再現する必要があるため非常に困難であるとされている。 そこで我々は膵臓欠損を示すPdx1ノックアウト(KO)マウスの胚盤胞にマウス多能性幹細胞を注入することで、発生段階における膵臓の空きを補完し、完全に多能性幹細胞由来の細胞から構成される膵臓をマウス生体内に作製することに成功した。 またこの“胚盤胞補完法”の原理が異種間でも成立するためには多能性幹細胞が異種の胚発生に寄与できなくてはならない。そこでマウスおよびラットの多能性幹細胞をお互いの胚盤胞に注入し、マウス-ラット異種間キメラの作製を試みた。 その結果、異種間キメラはどちらの方法でも成立し、全身に多能性幹細胞由来の細胞が存在していた。さらに以上の知見を組み合わせ、Pdx1 KOマウスの胚盤胞にラット多能性幹細胞を注入すると、機能的なラットの膵臓がマウス体内に作製できた。 これらの結果は異種生体内の環境を利用して多能性幹細胞由来の臓器を作製することが可能であることを示すものである。

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2010/07/22

アデノウイルスベクターを用いた副甲状腺細胞への遺伝子導入法の開発

論文タイトル
Development of a Technique for Introduction of an Expressed Complementary Deoxyribonucleic Acid into Parathyroid Cells by Direct Injection
論文タイトル(訳)
アデノウイルスベクターを用いた副甲状腺細胞への遺伝子導入法の開発
DOI
10.1210/en.2010-0012
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
August 2010|Vol. 151|No. 8|4031 - 4038
著者名(敬称略)
椎崎 和弘、他
所属
自治医科大学 内科学講座 腎臓内科学教室

抄訳

副甲状腺は非常に小さい臓器であり、またin vitro実験に適したcell lineが存在しないことなどにより、基礎的研究が難しく副甲状腺細胞の生理学的特徴や病理学的変化の解明が十分でない。 アデノウイルスベクターと副甲状腺内に薬剤などを直接注入する技術を用いて、副甲状腺細胞特異的な標的遺伝子の発現および機能の調節を試みた。本研究では副甲状腺細胞での発現部位や機能がよく知られているカルシウム感知受容体レセプター(CaSR) を標的遺伝子として用いた。腎機能低下により過形成とCaSR発現および機能の低下を誘発したラットの副甲状腺に確実に感染するアデノウイルス量および感染したアデノウイルスの経時的変化を確認し、CaSR cDNAを導入したアデノウイルスを直接注入した 副甲状腺細胞のCaSRの発現や、カルシウムに対する反応を検討した。免疫組織学的CaSR発現は著明に増加し、これはアデノウイルス感染部位と一致した。カルシウム−副甲状腺ホルモン反応曲線は左に変移し、カルシウムに対する副甲状腺細胞の感受性(CaSR機能) の改善が確認された。副甲状腺細胞特異的な標的遺伝子の発現や機能の調節法の確立により、副甲状腺細胞に関する基礎的研究の進歩と難治性副甲状腺疾患に対する遺伝子治療への進展の可能性が示唆された。

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