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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2021/09/01

ヒトパルボウイルスB19感染症による全身性浮腫

論文タイトル
Generalised edema with human parvovirus B19 infection
論文タイトル(訳)
ヒトパルボウイルスB19感染症による全身性浮腫
DOI
10.1136/bcr-2021-243130
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 7 (2021)
著者名(敬称略)
早野 聡史 押川 英仁
所属
熊本赤十字病院

抄訳

46歳女性が14日前からの全身浮腫と息切れにて来院した。彼女は1週間で6kgの体重増加を認めた。1ヶ月前に先行する発熱・倦怠感があり、関節痛はなかったが、体幹や四肢に紅斑を認めていた。身体所見では、両側性の下腿の圧痕性浮腫を認めた。また、胸部X線検査では、両側の胸水が貯留していた。その後、ヒトパルボウイルスB19(B19V)IgM(9.80)が陽性だったため、B19Vによる全身性浮腫と診断した。浮腫は少量の利尿薬の内服で改善を認めた。 B19V感染症による心不全や腎不全を伴わない全身浮腫の症例が報告されている。胎児と違って、成人のB19V感染症では心不全や溶血などは起こりにくく、本症例では、心筋炎・心外膜炎などを疑う所見はなく、心不全徴候も認めなかった。病因はまだ解明されておらず、発症から浮腫の期間は多くの場合、4-13日ほどであり、体重は2.5-7kg程度増加する。成人の急性発症の全身浮腫を認めた場合、B19V感染症も鑑別に挙げる必要がある。

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2021/09/01

成人XLH25例における合併症の頻度

論文タイトル
Incidence of Complications in 25 Adult Patients With X-linked Hypophosphatemia
論文タイトル(訳)
成人XLH25例における合併症の頻度
DOI
10.1210/clinem/dgab282
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.106 Issue9 (e3682–e3692)
著者名(敬称略)
加藤 創生, 伊東 伸朗 他
所属
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

抄訳

X連鎖性低リン血症性低リン血症性くる病 (X-linked hypophosphatemic rickets:XLH)では成人期に骨軟化症以外の合併症を呈するが、頻度・重症度についてのまとまった報告は少ない。
今回我々は、成人XLH25例の脊椎CT、股関節・膝関節・アキレス腱Xp、腹部超音波検査、聴力検査の結果を後方視的に解析し、骨軟化症以外の合併症についてまとめた。前縦靭帯・後縦靭帯・黄色靭帯骨化症の重症度評価にOA・OP・OY indexを用い、OA/OP/OY indexの合計をOS indexとして脊柱靭帯骨化症の重症度の指標とした。また、股関節・膝関節の骨棘評価にはKellgren-Lawrence (KL) gradeを用いた。25例中20例(80%)で脊柱靭帯骨化を認め、OA/OP/OY/OS indexの中央値(range)はそれぞれ2(0-22), 0(0-15), 6(0-13), 12(0-41)であった。股関節骨棘・膝関節骨棘はそれぞれ24例(96%)、17例(68%)で認め、KL gradeの中央値はそれぞれ3および2であった。アキレス腱付着部症、腎石灰化、聴力障害はそれぞれ、17例(72%)、17例(72%)、8例(32%)で認めた。本検討によって、成人XLHの異所性骨化の頻度は一般人口と比較して高く、また重症であることが明らかとなった。今後は若年成人の脊柱靭帯骨化症や関節骨棘、および年齢にかかわらずそれらが顕著な症例では、未診断のXLHが背景にある可能性を考慮したい。

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2021/08/31

S1PR3-G12バイアスド作動薬ALESIAによるがん飢餓療法の可能性

論文タイトル
S1PR3–G12-biased agonist ALESIA targets cancer metabolism and promotes glucose starvation
論文タイトル(訳)
S1PR3-G12バイアスド作動薬ALESIAによるがん飢餓療法の可能性
DOI
10.1016/j.chembiol.2021.01.004
ジャーナル名
Cell Chemical Biology
巻号
Cell Chemical Biology Volume 28, Issue 8, August 19, 2021
著者名(敬称略)
萩原 正敏 豊本 雅靖
所属
京都大学大学院医学研究科・医学部 形態形成機構学

抄訳

がん組織は周辺の正常組織に比べて、組織重量あたりのグルコース量が著しく低下している。この現象は、がん細胞がワールブルグ効果によって多量のグルコースを消費していることに起因する。そこで我々は、低グルコース環境下のみでがん細胞増殖阻害を示す化合物を表現型スクリーニングで見出し、その化合物の標的分子と作用機序を解明した。本化合物はスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体S1PR3に結合するが、内因性リガンドのS1Pとは異なるバイアスド作用によって一酸化窒素産生を促進し、がん細胞のプログラム細胞死を引き起こすことが判明した。本化合はXenograftモデルマウスにおいても抗腫瘍作用を示し、がん細胞だけをグルコース飢餓で死滅させる副作用の少ない新しい抗がん剤として期待できるため、ALESIA; Anti-cancer Ligand Enhancing Starvation-Induced Apoptosisと命名した。

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2021/08/17

頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価

論文タイトル
Assessment of MR Imaging and CT in Differentiating Hereditary and Nonhereditary Paragangliomas
論文タイトル(訳)
頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価
DOI
10.3174/ajnr.A7166
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 42 No.7
著者名(敬称略)
太田 義明 他
所属
ミシガン大学神経放射線

抄訳

背景: 頭頸部の傍神経節腫は,コハク酸脱水素酵素ファミリーの遺伝子変異と関連することが報告されている。本研究は、頭頸部の傍神経節腫におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異を従来型C TとM R Iの画像的特徴や拡散強調画像により検出できるかどうかを評価したものである。 方法: 2015年1月から2020年1月の観察期間で、48病変(コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陽性30病変、コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陰性18病変を対象とした。従来型CTとMRIの画像的特徴とADC値を上記2群間で比較した。診断性能における2群間の差はt-testを用いて評価した。P値<.05を有意とした。 結果: ADCの平均値と最大値、正規化されたADCの平均値と最大値に2群間で統計的な有意差が認められた。従来型C TとM R Iの画像的特徴やA D Cの最小値、正規化されたADC値には有意差は認められなかった。 結論: ADC値は、頭頸部のコハク酸デヒドロゲナーゼ変異陽性を検出できる画像バイオマーカーである。

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2021/08/13

正常肝患者における左下横隔静脈の血管造影解剖
―門脈圧亢進症の治療戦略へのインパクト―

論文タイトル
Anatomy of Left Inferior Phrenic Vein in Patients Without Portal Hypertension
論文タイトル(訳)
正常肝患者における左下横隔静脈の血管造影解剖 ―門脈圧亢進症の治療戦略へのインパクト―
DOI
10.2214/AJR.20.23106
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
American Journal of Roentgenology Vol.217 No.2
著者名(敬称略)
荒木 拓次 他
所属
山梨大学医学部放射線医学講座

抄訳

左下横隔静脈は門脈圧亢進症の胃静脈瘤の排血路となりうる静脈であるが、正常肝患者での血管解剖はまとまった報告がない。今回、副腎静脈側からの左下横隔静脈造影血管解剖を分類評価した。逆行性左下横隔静脈造影を行った214例が対象。血管造影分類1型:造影剤が横隔膜下水平枝に到達71.5% (153/214); 1a:1本の主静脈で連続22.4% (48/214)、1b: 数本の細い静脈が吻合しながら到達49.0% (105/214)、2型: 造影剤が横隔膜下水平枝に到達しない28.5% (61/214); 2a: 非常に細く未発達6.5% (14/214)、2b:吻合枝から体循環静脈に流出11.2% (24/214)、2c: 門脈に流出10.7% (23/214)であった。門脈の描出は2c型以外にも1ab型などで17.3%(37/214)で認められ、門脈の吻合は28.0% (60/214)で確認された。左下横隔静脈は複雑な解剖的形態を持ち、門脈との吻合が28%で認められた。この吻合が胃静脈瘤の原型となると推測された。

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2021/08/06

多成分系であることがクモ糸高機能発現に必須である。

論文タイトル
Multicomponent nature underlies the extraordinary mechanical properties of spider dragline silk
論文タイトル(訳)
多成分系であることがクモ糸高機能発現に必須である。
DOI
10.1073/pnas.2107065118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS August 3, 2021 118 (31) e2107065118
著者名(敬称略)
河野 暢明, 荒川 和晴 他
所属
慶應義塾大学先端生命科学研究所

抄訳

ジョロウグモ亜目のクモ牽引糸は、優れた伸縮性と引張強度を兼ね備えた比類のない強靭さが特徴であり、持続可能なバイオポリマー素材としての産業応用が期待されている。本研究では、クモ牽引糸の分子組成を明らかにするとともに、その機械的特性の発現における構成要素の役割を明らかにすることを目的として、ジョロウグモ亜目の4種のクモを対象に、高品質なゲノム配列の決定、絹糸腺のトランスクリプトミクス、牽引糸タンパクのプロテオミクスを組み合わせたマルチオミクス解析を行った。その結果、ジョロウグモ亜科に特有のクモ糸遺伝子スピドロインであるMaSp3Bと、スピドロイン以外のいくつかのSpiCEタンパク質が一貫して存在していることが確認された。これらの成分を人工的に合成し、in vitroで組み合わせたところ、従来考えられていたMaSp1とMaSp2に加えて、新規に見つかったMaSp3BとSpiCEを持つ多成分系であることがクモ牽引糸の機械的特性を実現するために不可欠であることがわかった。

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2021/08/05

後脳におけるグルコース利用率の低下により活性化する、後脳グルコースセンサーと視床下部を結ぶ神経伝達経路の形態学的解析

論文タイトル
Morphological Analysis of the Hindbrain Glucose Sensor-Hypothalamic Neural Pathway Activated by Hindbrain Glucoprivation
論文タイトル(訳)
後脳におけるグルコース利用率の低下により活性化する、後脳グルコースセンサーと視床下部を結ぶ神経伝達経路の形態学的解析
DOI
10.1210/endocr/bqab125
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Volume 162 Issue 9 (bqab125)
著者名(敬称略)
佐藤 真梨萌, 松田 二子 他
所属
東京大学 大学院 農学生命科学研究科 獣医学専攻 獣医繁殖育種学研究室

抄訳

後脳には、低栄養を感知し、糖新生や摂食、生殖機能を制御する機構が存在する。これまでのin vitro実験により、後脳の第4脳室(4V)を裏打ちする上衣細胞が、グルコースセンサーである可能性が示唆されてきた。本研究では、4V上衣細胞がグルコース利用率の低下を感知することをin vivoで証明すると同時に、低栄養時に生理機能を制御する、4V上衣細胞を起点とした神経伝達経路を同定することを目的とした。グルコース代謝阻害剤を雄ラットの4Vに0.5時間投与すると、4V上衣細胞が最初に活性化することを組織学的手法により明らかにした。また、1時間投与した場合は、血糖値上昇、摂食量増加及び血中テストステロン濃度低下が生じるほか、4V上衣細胞に加え、後脳のカテコールアミン神経細胞及びニューロペプチドY(NPY)神経細胞、視床下部の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン神経細胞及びNPY神経細胞が活性化することを発見した。以上の結果から、4V上衣細胞はグルコース利用率の低下を感知し、後脳の神経細胞ならびに視床下部の神経細胞を介して、生理機能を制御する可能性が示唆された。

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2021/08/02

稀な初発症状である視神経周囲炎と後腹膜脂肪織炎で発症したベーチェット病の一例

論文タイトル
Optic nerve perineuritis and retroperitoneal panniculitis: rare first presentations of Behçet’s disease
論文タイトル(訳)
稀な初発症状である視神経周囲炎と後腹膜脂肪織炎で発症したベーチェット病の一例
DOI
10.1136/bcr-2021-243997
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 7 (2021)
著者名(敬称略)
吉岡 克宣  森田 英子
所属
四天王寺病院 内科

抄訳

症例は46歳女性。高熱と腰痛のため入院となった。CTでは大動脈周囲の脂肪織濃度の上昇がみられ、後腹膜脂肪織炎が疑われた。翌日患者は下腿痛、口内痛、排尿時痛、および眼球運動によって増強する右眼痛を訴えた。診察上、下腿結節性紅斑・アフタ性口内炎・陰部潰瘍を認めた。眼科的検索では視力は両眼とも正常であったが、軽度の右視神経乳頭浮腫を認めた。ガドリニウム造影MRIでは右視神経周囲の著明な造影効果を認め、視神経周囲炎が疑われた。以上からベーチェット病と診断した。プレドニンおよびコルヒチンによる治療にて臨床症状、CT, MRIでの異常所見は速やかに改善した。視神経周囲炎は特発性に生じることもあるが、ベーチェット病などの自己免疫疾患に伴って生じる事もある。視神経周囲炎を示唆する初期徴候は眼球運動によって増強する眼痛である。視力低下の後遺症を残さないためにも、その様な症例では視神経周囲炎を疑い速やかに造影MRIを施行する事が重要である。

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2021/07/29

視床下部腹内側核(SF1細胞)におけるCRTC1欠損は高脂肪食に対して過食と肥満を誘導する

論文タイトル
Loss of CREB Coactivator CRTC1 in SF1 Cells Leads to Hyperphagia and Obesity by High-fat Diet But Not Normal Chow Diet
論文タイトル(訳)
視床下部腹内側核(SF1細胞)におけるCRTC1欠損は高脂肪食に対して過食と肥満を誘導する
DOI
10.1210/endocr/bqab076
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Volume 162 Issue 9 (bqab076)
著者名(敬称略)
松村 成暢 他
所属
大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科栄養療法学専攻

抄訳

CREB-regulated transcription coactivator-1(CRTC1)は、細胞内cAMPの上昇に伴い活性化されるCREBのcoactivatorである。 これまでCRTC1の全身性の欠損は過食とエネルギー消費の減少により肥満を引き起こすことが報告されている(Altarejos et al., Nat Med. 2008)。 CRTC1は脳神経細胞で脳の広範にわたり発現しているためCRTC1によるエネルギー代謝調節メカニズムは不明であった。我々は視床下部腹(SF1細胞)特異的にCRTC1を欠損させたマウス新たに作成し、このマウスに高脂肪食を摂取させると肥満すること、耐糖能が悪化することを発見した。視床下部腹内側核より切り出したサンプルのRNAシーケンス解析により、CRTC1の欠損は特定の遺伝子群の発現レベルを有意に変化させることが明らかとなった。これらの結果より、CRTC1は視床下部腹内側核において遺伝子発現を制御し、高脂肪食の摂取調節および糖代謝を制御しているという新たな経路が示唆された。

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2021/07/28

電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法

論文タイトル
Rapid Freezing using Sandwich Freezing Device for Good Ultrastructural Preservation of Biological Specimens in Electron Microscopy
論文タイトル(訳)
電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法
DOI
10.3791/62431
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (173), e62431
著者名(敬称略)
山口正視 他
所属
千葉大学・真菌医学研究センター

抄訳

生物試料の電子顕微鏡観察には、これまで、主に化学固定法による超薄切片法が用いられてきたが、この方法では、様々なアーティファクトが生じることが知られている。これを回避するために、近年、急速凍結・凍結置換固定法が用いられるようになった。サンドイッチ凍結法は、熱伝導のよい2枚の銅板に薄い試料をはさんで、液体プロパンに素早く投入することによって、氷晶のないガラス状凍結を得るすぐれた急速凍結法の一つである。この方法により、これまで、生きた酵母、真菌、細菌の高解像の自然な微細構造が観察されてきた。最近、サンドイッチ凍結法は、グルタルアルデヒド固定した培養細胞、動物細胞、ヒト組織でも、すぐれた微細構造の保持に有効であることがわかり、応用範囲が格段に広がった。
この論文は、最近、マリン・ワーク・ジャパン(株)が商品化した「サンドイッチ凍結装置」の使い方について、酵母や培養細胞などの細胞懸濁液、動物組織、およびウイルス試料のそれぞれの場合について、ビデオで手順を解説しものである。サンドイッチ凍結法は、30μmまでの生きた細胞懸濁液、0.2 mm までのグルタルアルデヒド固定した動物組織を無氷晶で凍結でき、高圧凍結法にかわるすぐれた方法となりうる。この論文では、凍結後の凍結置換、樹脂包埋、超薄切、切片染色の方法についても解説を行っている。

 

 

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