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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2023/03/01

肥満マウスの脂肪沈着と耐糖能におけるSphingosine 1-phosphate受容体1, 2 (S1P1, S1P2)の背反する役割

論文タイトル
Opposing Roles of Sphingosine 1-Phosphate Receptors 1 and 2 in Fat Deposition and Glucose Tolerance in Obese Male Mice
論文タイトル(訳)
肥満マウスの脂肪沈着と耐糖能におけるSphingosine 1-phosphate受容体1, 2 (S1P1, S1P2)の背反する役割
DOI
10.1210/endocr/bqad019
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 3, March 2023, bqad019
著者名(敬称略)
浅野 元尋, 梶田 和男 他
所属
岐阜女子大学 家政学部 健康栄養学科

抄訳

Sphingosine 1-phosphate (S1P)は、様々な細胞活動を5つの受容体(S1P1-S1P5)によって制御している。我々は以前、高脂肪食負荷を行ったS1P2欠損マウスにおいて、脂肪細胞肥大化、耐糖能障害が抑止されたこと、S1P2阻害薬JTE-013は脂肪細胞への分化を抑制し、S1P1/3阻害薬VPC23019はこれを促進したことを報告した。今回我々はS1P1作動薬SEW-2871の、肥満糖尿病を呈するob/obマウスへの影響を検討した。SEW-2871、JTE-013の経口投与は、体重、傍精巣脂肪重量、傍精巣脂肪/鼠径脂肪サイズを減少させ、耐糖能、脂肪組織の炎症を改善させ、傍精巣脂肪のTNFα、Cd11cのmRNAを減少させ、CD206、adiponectinのmRNAを増加させた。SEW-2781とVPC23019の同時投与により、SEW-2781の効果は打ち消された。この結果から内因性のS1PはS1P2の作用により肥満/糖尿病を引き起こすが、外因性のS1PはS1P1を介してそれを阻止すると考えられた。

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2023/03/01

ヒトパルボウイルス B19粒子のペプチドタグによる標識と生体膜による被膜ウイルス粒子の同定

論文タイトル
Tracking of Human Parvovirus B19 Virus-Like Particles Using Short Peptide Tags Reveals a Membrane-Associated Extracellular Release of These Particles
論文タイトル(訳)
ヒトパルボウイルス B19粒子のペプチドタグによる標識と生体膜による被膜ウイルス粒子の同定
DOI
10.1128/jvi.01631-22
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology February 2023  Volume 97  Issue 2  e01631-22
著者名(敬称略)
石田 幸太郎 森田 英嗣 他
所属
弘前大学 農学生命科学部分子生命科学科細胞分子生物学分野

抄訳

ヒトパルボウイルスB19(B19V)は母子感染による胎児水腫・流産の原因として知られている。B19Vは外被膜を持たない非エンベロープウイルスであり、細胞溶解を介して細胞外に放出されると考えられてきたがその実態は不明であった。この研究では、まず、B19V粒子を形成する構造タンパク質: VP2に、粒子形成に影響を与えずに高感度検出用ペプチドタグ:HiBiTを挿入可能な箇所を同定し、高感度にてウイルス粒子を検出可能な実験系を確立した。培養上清に分泌されるVLPは、界面活性剤処理依存的に検出されること、また、電子顕微鏡解析により多数の膜小胞と共に検出されることからウイルス粒子は生体膜によって被膜され細胞外へ分泌されている可能性が示唆された。また、微小管重合阻害剤ノコダゾール処理により被膜VLP分泌が増加すること、さらに、蛍光標識VLPの蛍光ライブイメージング観察にて細胞分裂に伴い核から細胞質への移行が確認されたことから、一部のB19V粒子は、細胞分裂を介した核外移行と細胞外小胞を介した経路によって分泌されていることが示された。

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2023/02/24

単鎖抗体のペリプラズム内発現増強をもたらすN端アミノ酸配列

論文タイトル
Specific N-terminal amino acids potentiate the periplasmic expression of single-chain variable fragments in
Escherichia coli
論文タイトル(訳)
単鎖抗体のペリプラズム内発現増強をもたらすN端アミノ酸配列
DOI
10.2144/btn-2022-0107
ジャーナル名
BioTechniques
巻号
BioTechniques Ahead of Print
著者名(敬称略)
羽生 義郎、 加藤 三恵子
所属
産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 (株)バイオピーク 生化学研究部

抄訳

抗体は研究・診断・治療に必須のタンパク質であり、大腸菌を用いた安価で簡便な生産方法が求められている。大腸菌で機能的抗体断片を発現させる場合、N端にペリプラズム移行シグナルペプチドを付加し、酸化的環境にあるペリプラズムに移行させ、S-S結合をもった正しい立体構造で発現させる必要がある。ペリプラズム画分はホスト由来のタンパク質が少なく、浸透圧ショックにより抽出できるため、目的抗体断片の精製に大変有利であるが、発現量が少ないという欠点がある。我々は、このペリプラズム移行シグナルペプチドに隣り合うアミノ酸配列、すなわち単鎖抗体のN端アミノ酸配列による大腸菌ペリプラズム内単鎖抗体発現の変化を調べた。この部分に3アミノ酸からなるランダム配列ライブラリーを挿入し、ダイレクトクローニング法 [1] を用いて、スクリーニングを行い、もっとも発現を高くする配列の同定を試みた。その結果、単鎖抗体のペリプラズム内発現を2倍以上に高めるN端ペプチド配列の同定に成功した。
[1] Hanyu Y, Kato M. Screening antibody libraries with colony assay using scFv-alkaline phosphatase fusion proteins. Molecules. 25(12) (2020).

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2023/02/07

タバコ煙はミトコンドリアDNA損傷とcGAS-STING経路の活性化を誘発する:動脈硬化のバイオマーカーへの応用

論文タイトル
Cigarette smoke induces mitochondrial DNA damage and activates cGAS-STING pathway: application to a biomarker for atherosclerosis
論文タイトル(訳)
タバコ煙はミトコンドリアDNA損傷とcGAS-STING経路の活性化を誘発する:動脈硬化のバイオマーカーへの応用
DOI
10.1042/CS20220525
ジャーナル名
Clinical Science
巻号
Clin Sci (Lond) (2023) 137 (2): 163-180.
著者名(敬称略)
上田 桂太郎 石田 万里 他
所属
広島大学大学院 医系科学研究科 心臓血管生理医学

抄訳

喫煙は動脈硬化の主要なリスクファクターである。血管内皮細胞は炎症を調節することから、本研究では喫煙が内皮細胞の自然免疫を活性化する機構をDNA損傷の観点から明らかにし、診断への臨床応用の可能性を探索した。タバコ煙抽出物(CSE)は、ヒト内皮細胞において、核およびミトコンドリアのDNA損傷を誘発し、その結果として蓄積した細胞質DNA断片がcyclic GMP-AMP synthase(cGAS)-stimulator of interferon genes(STING)経路の活性化を介した炎症を惹起することを示した。ミトコンドリアおよび核DNA損傷の結果である血漿中cell-free DNA (cfDNA)は、ミトコンドリア由来cfDNA、核由来cfDNAとも動脈硬化患者において増加しており、特にミトコンドリアcfDNAが動脈硬化のリスクと有意に関連していることを明らかにした。本研究成果は、喫煙をはじめとする種々の動脈硬化危険因子がcfDNAを増加させることを示唆し、cfDNAが動脈硬化の有用な新規バイオマーカーである可能性を示した。

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2023/02/03

感覚器の可能性のある背面突起を持つ新種の無腸類

論文タイトル
A New Species of Acoela Possessing a Middorsal Appendage with a Possible Sensory Function
論文タイトル(訳)
感覚器の可能性のある背面突起を持つ新種の無腸類
DOI
10.2108/zs210058
ジャーナル名
Zoological Science
巻号
Zoological Science Volume 39, Issue 1
著者名(敬称略)
浅井 仁、中野 裕昭、他
所属
筑波大学 下田臨海実験センター

抄訳

 無腸類は非常に単純な体制を持つ海産無脊椎動物であり、その研究から左右相称動物の祖先や進化について新たな知見が得られると期待されている。しかし、その研究は進んでおらず、日本国内には100種程度生息すると推測されているものの約10種しか報告されていない。
 本研究では、背面中央のアンテナ状の突起という他の無腸類にはみられない特徴を持つ、体長3mm程の無腸類の一種を日本沿岸複数箇所から採集した。観察の結果、この背面突起は水流などを感じる感覚器であり、この無腸類の獰猛な捕食行動の際に利用されていることが示唆された。
 この無腸類の形態・行動・発生の観察、および分子系統解析の結果から本種は未記載種であると判断し、背面突起を鬼のツノに見立ててAmphiscolops oni(和名:オニムチョウウズムシ)という学名で新種として報告した。
 今後は、背面突起が本当に感覚器なのか、本種がどのようにこの新奇器官を獲得したのかなどの研究を進める予定である。

 

 

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2023/02/02

アオコを形成する有毒シアノバクテリア、ミクロキスティス・エルギノーサに感染する広域および狭域宿主ウイルスの生態学的挙動

論文タイトル
Ecological Dynamics of Broad- and Narrow-Host-Range Viruses Infecting the Bloom-Forming Toxic Cyanobacterium Microcystis aeruginosa
論文タイトル(訳)
アオコを形成する有毒シアノバクテリア、ミクロキスティス・エルギノーサに感染する広域および狭域宿主ウイルスの生態学的挙動
DOI
10.1128/aem.02111-22
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology 23 January 2023 e02111-22
著者名(敬称略)
森本 大地 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

シアノバクテリア・ミクロキスティスは肝臓毒生産能を有し、世界中の湖沼で異常増殖してアオコを形成するため、生態学的に極めて重要な生物種と位置付けられています。本種は全遺伝子の約3割を多様なウイルス耐性遺伝子が占め、多種多様なウイルスと環境中で相互作用すると示唆されてきました。本研究では、以前に分離・メタゲノム解析により見出した本種感染ウイルスについて、宿主域の違いに着目しました。定量PCR法ならびにアンプリコン解析を確立し、広域および狭域宿主ウイルスがミクロキスティスの種内個体群に与える影響を評価しました。その結果、狭域宿主ウイルスは調査期間を通じて存在量が大きく変化しないのに対し、広域宿主ウイルスはミクロキスティスの生物量増加に伴い、存在量が増加することが示されました。一方で、ミクロキスティスの種内個体群は同期間中に組成が大きく変動することが明らかとなりました。広域宿主ウイルスによる感染が拡大するにも関わらず、ミクロキスティスがその生物量を拡大・維持できるのは、その卓越したウイルス耐性機構に依ることが強く示唆されました。

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2023/01/25

POU1F1/Pou1f1 c.143-83A > Gバリアントはpre-mRNAの分岐部位を破壊し、成長障害を引き起こす

論文タイトル
POU1F1/Pou1f1 c.143-83A > G Variant Disrupts the Branch Site in Pre-mRNA and Leads to Dwarfism
論文タイトル(訳)
POU1F1/Pou1f1 c.143-83A > Gバリアントはpre-mRNAの分岐部位を破壊し、成長障害を引き起こす
DOI
10.1210/endocr/bqac198
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 2, February 2023, bqac198
著者名(敬称略)
秋葉 和壽, 鳴海 覚志 他
所属
国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部

抄訳

POUクラス1ホメオボックス1(POU1F1/Pou1f1)は、下垂体特異的な転写因子であり、機能喪失変異により複合型下垂体ホルモン欠乏症を引き起こす。POU1F1/Pou1f1は、α/βアイソフォームの2つのアイソフォームを有する。近年、βアイソフォーム特異的領域(βドメイン)とそのエキソン-イントロン境界付近に病原性変異が複数報告された。しかし、その機序は不明であった。本研究では、Pou1f1 c.143-83A>G置換を持つマウスを作製した。ホモマウスは出生後の成長不全、下垂体前葉低形成、インスリン様成長因子1およびサイロキシンの欠乏を示した。さらに下垂体Pou1f1 mRNA解析により、スプライシングの異常(αアイソフォームの減少、βアイソフォームの増加、エキソンスキップ体の出現)を認めた。そこで、POU1F1全長およびスプライシングの分岐部位候補を置換した人工遺伝子をHEK293細胞に一過性発現させたところ、c.143-83A>Gのみがホモマウスと同様の結果を示した。本研究は、c.143-83A>G変異体がスプライシング異常により、下垂体の形態的・機能的異常を起こすことを世界で初めて明らかにした。

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2023/01/19

Dダイマー陰性であったが、リスクスコアが高リスクであり診断に至った大動脈解離の症例

論文タイトル
Aortic dissection diagnosed with the aortic dissection detection risk score of 2 without D-dimer elevation
論文タイトル(訳)
Dダイマー陰性であったが、リスクスコアが高リスクであり診断に至った大動脈解離の症例
DOI
10.1136/bcr-2022-250680
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.15 Issue 12
著者名(敬称略)
斎藤 佳菜子 相馬 俊介
所属
青森県立中央病院 救命救急センター 総合診療部

抄訳

急性大動脈解離の診断の見逃しは致死的であり、Dダイマー陰性から除外診断を行うことがしばしば行われている。しかし、Dダイマー陰性の急性大動脈解離を経験したため報告する。70歳代の男性が腰背部痛で救急外来を受診した。Dダイマーは1.0μg/mL以下と陰性であったが、突然発症かつ疼痛部位も移動していたため、急性大動脈解離を強く疑った。両上肢の収縮期血圧にも左右差を認め、造影CTにてStanford B型急性大動脈解離と診断された。直ちに心臓血管外科へコンサルトを行い、厳格な血圧管理によって臓器虚血症状などの合併症なく退院となった。急性大動脈解離には診断予測ツールであるAortic dissection detection risk score(ADD-RS)があり、身体所見、疼痛の性状、患者背景の3項目からなり、本症例は高リスクであった。急性大動脈解離の除外診断を行う際には、D-ダイマーの結果だけに頼るのではなく、病歴からリスクを評価した上で用いる必要があることが改めて示唆される。

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2023/01/18

胃瘻造設後に胃壁内気腫をきたした一例

論文タイトル
Gastric emphysema after percutaneous endoscopic gastrostomy placement
論文タイトル(訳)
胃瘻造設後に胃壁内気腫をきたした一例
DOI
10.1136/bcr-2022-253374
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.15 Issue 12
著者名(敬称略)
馬渕 沙弥佳    和足 孝之
所属
飯南町立飯南病院・来島診療所 総合診療科

抄訳

気腫性胃炎と胃壁内気腫は異なる疾患だが、どちらも稀な疾患であり、気腫性胃炎は死亡率も55%と高いことからしばしば区別されずに治療される。胃瘻造設後は気腫性胃炎よりも胃壁内気腫がみられることが多く、胃壁内気腫は自然治癒する疾患なので抗生剤投与などの治療は不要である。また画像診断を行うにあたり、CTはわずかなガス産生の検出にも有効であるため胃壁内気腫・気腫性胃炎どちらにおいてもよく用いられている。しかしその後のフォローアップにも用いるとなると被爆量が懸念される。今回我々は胃瘻造設後に胃壁内気腫を認めた92歳男性の一例を経験した。ガス消失確認目的のフォローアップにはレントゲンが有効で、抗生剤投与などの特別な治療は一切行わなかった。過剰な検査や治療を避けるためにも、やはり胃壁内気腫と気腫性胃炎は区別する必要がある。

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2023/01/05

こどもの社会形成を促すプレーパークの各斜面を活かした4つの仮設置式のウォータースライダー

論文タイトル
Four Temporary Waterslide Designs Adapted to Different Slope Conditions to Encourage Child Socialization in Playgrounds
論文タイトル(訳)
こどもの社会形成を促すプレーパークの各斜面を活かした4つの仮設置式のウォータースライダー
DOI
10.3791/64235
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (190), e64235
著者名(敬称略)
Zhudi Hua 小柴 満美子 他
所属
山口大学工学部附属ものづくり創成センター

抄訳

こどもが多様な自然・屋外で仲間とコミュニケーションしながら将来、多様な課題を乗り越える複雑な学びを遊びを介して育む。しかし、現代は都市化が進み、自然環境や屋外での仲間どうしの交流ができなくなっている。その解決を目指した都市部の街区公園や小学校庭が有す斜面や階段を活かして、斜面がなければ簡易な斜面をつくり、こどもからおとなまでの市民が一体となって用意し片づける簡易仮設置式のウォータースライダーのデザイン・作成法を4つの事例を伴い紹介する。1-2時間の開催中、多数のこどもたちがひっきりなしに遊び、分け隔てのないダイバーシティなふれあいが生まれ、社会相互作用が育まれた。行動定量分析を伴い、こども全員がよく連携して高速で次々と滑るパターンなどが生まれたことが、認められた。こどもの小さなリスク体験は大事な学びであり、成人社会で進むリスク回避で抑制してしまったこどもの自主的課題発見と協働し克服する術を学ぶ補完が、こどもたちによってこれらの動画に表現された。

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