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国内研究者論文紹介

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2016/03/02

piRNA前駆体の3'末端を削りこむカイコTrimmerの同定と機能解析

論文タイトル
Identification and Functional Analysis of the Pre-piRNA 3′Trimmer in Silkworms
論文タイトル(訳)
piRNA前駆体の3'末端を削りこむカイコTrimmerの同定と機能解析
DOI
10.1016/j.cell.2016.01.008
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Cell Vol.164 No.5 (2016/Feb./25) p962-973
著者名(敬称略)
泉 奈津子 , 泊 幸秀 他
所属
東京大学 分子細胞生物学研究所

抄訳

 piRNA(PIWI-interacting RNA)は、動物の生殖巣においてトランスポゾンの発現抑制に機能する小分子RNAである。piRNAは、成熟型より少し長い前駆体RNAがPIWIタンパク質に取り込まれ、その3'末端が削りこまれることによりつくられる。piRNA前駆体を成熟型の長さまで削るヌクレアーゼ「Trimmer(トリマー)」の存在はこれまで予想されていたが、分子実体は不明であった。
 本研究ではpiRNAを発現するカイコ卵巣由来の培養細胞BmN4を用いた生化学的解析から、PNLDC1(PARN (polyA specific ribonuclease) -like domain containing 1)をカイコTrimmerとして同定した。Trimmerは、PARNと相同性のあるヌクレアーゼドメインを有する機能未知のタンパク質で、先行研究においてトリミングへの関与が示唆されていたPIWIタンパク質結合因子Papiと相互作用する。Trimmerには膜貫通ドメインが予測され、ミトコンドリア画分に存在することから、Papiと同様にミトコンドリア外膜タンパク質だと考えられた。興味深いことにTrimmerは単独では機能できず、piRNA前駆体のトリミングにはPapiを必要とすることが明らかとなった。また、PapiのPIWIタンパク質結合能およびRNA結合能がトリミングに必要であることから、PapiはpiRNA前駆体を取りこんだPIWIタンパク質をTrimmerにリクルートする役割があると考えられた。さらにpiRNA前駆体の3'末端が削りこまれ成熟型になることが、piRNAの安定性や機能発揮に重要であることを見出した。上記の結果は、ミトコンドリア膜上でTrimmerとPapiが協働してpiRNA前駆体の末端を削りこむというトリミングの分子機構とその意義を明らかにしたものである。

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2016/03/01

CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。

論文タイトル
CD8+CD122+CD49dlow regulatory T cells maintain T-cell homeostasis by killing activated T cells via Fas/FasL-mediated cytotoxicity
論文タイトル(訳)
CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。
DOI
10.1073/pnas.1525098113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 11, 2016,
著者名(敬称略)
赤根 和之、鈴木 治彦 他
所属
名古屋大学 大学院医学系研究科 分子細胞免疫学

抄訳

Fas/FasL経路は古くから知られるアポトーシス経路であるが、生体内でどのタイミング、どの細胞集団で働いているかの詳細は不明であった。我々は、細胞増殖の制御を測定するin vitro細胞培養実験系を構築し、さらにはin vivoのアッセイを行い、CD8+T細胞のどの分画が制御活性を持つかを検討した結果、in vitro、in vivoともにCD8+CD122+CD49dlow分画に制御活性が高いことを発見した。Fas分子の働かないlprマウスとFasLの働かないgldマウスを用い、Fas/FasL経路に異常があるとこの制御経路が働かないことをin vitroとin vivo双方において証明した。この結果、Fas及びFasLは活性化T細胞とCD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞との間で働き、免疫反応の収束時に活性化T細胞にアポトーシスを誘導して数を減らす作用が重要とわかった。さらに、MHC class I分子を欠損するCD8+T細胞はこの抑制作用を受けないことから、CD8+制御性T細胞が働くにはTCRとMHC class Iとの相互作用が必要であることが証明された。

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2016/02/25

代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する

論文タイトル
Territories of heterologous inputs onto Purkinje cell dendrites are segregated by mGluR1-dependent parallel fiber synapse elimination
論文タイトル(訳)
代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する
DOI
10.1073/pnas.1511513113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Published online before print February 8
著者名(敬称略)
市川 量一 他
所属
札幌医科大学 医学部 医学科 解剖学第一講座

抄訳

発生初期の神経系では、過剰でしかも重複する神経回路が多く見られる。しかし、生後早期の神経活動の亢進がシナプス回路の選択的強化と除去を引き起こし、それによってその冗長な神経回路は機能的な神経回路へと改築される。これまで、骨格筋を支配する脊髄運動神経や小脳プルキンエ細胞を支配する登上線維などで、入力線維が競合することにより多重支配から単一支配へ移行し、その結果として適正な神経回路が形成されることが明らかにされた。プルキンエ細胞には興奮性線維としてもう一種類、平行線維が入力する。しかし、そのシナプス回路がどのような発達変化を遂げるのかは不明であった。本研究により、以下の点が明らかになった。生後早期のマウスのプルキンエ細胞では樹状突起の全域に渡って平行線維シナプスが形成されるが、生後15-20日の間にて樹状突起の近位部から平行線維シナプスが除去されることで成体でみられるようなシナプス分布が完成する。具体的には、近位部に局在する登上線維シナプステリトリーと遠位部に局在する平行線維シナプステリトリーとに、シナプス分布が分離することである。また、この平行線維シナプスの除去作用には、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1-PKCgamma系が重要な役割を果たしていることが判明した。

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2016/02/19

Gtr1-Gtr2によるTORC1-Gtr1/Gtr2-Ego1/2/3複合体の局在調節

論文タイトル
Dynamic relocation of the TORC1?Gtr1/2?Ego1/2/3 complex is regulated by Gtr1 and Gtr2
論文タイトル(訳)
Gtr1-Gtr2によるTORC1-Gtr1/Gtr2-Ego1/2/3複合体の局在調節
DOI
10.1091/mbc.E15-07-0470
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society of Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell January 15, 2016 vol. 27 no. 2 382-396
著者名(敬称略)
吉良 新太郎, 野田 健司 他
所属
大阪大学 歯学研究科 口腔科学フロンティアセンター, 生命機能研究科(兼)

抄訳

TORC1プロテインキナーゼ複合体は、細胞増殖制御に中心的役割を果たす分子であり、真核生物に広く保存されています。TORC1の活性調節分子として低分子量Gタンパク質であるGtr1/Gtr2、またその足場タンパク質としてEgo複合体が知られています。本論文では、1. Ego複合体の新規サブユニットEgo2の同定 2.TORC1-Gtr1/Gtr2-Ego複合体は、Gtr1/Gtr2により局在が制御されていること、の2点を報告しています。出芽酵母において、これらの分子群は液胞膜及びそれに付随した輝点として観察されます。Gtr1GTP型のとき、これらの分子は液胞膜全体に局在し、それに付随する輝点は減少しました。一方Gtr1GDP型の時は、これらの分子は液胞に付随する輝点上への局在が増加しました。このことからGtr1GTP/GDPサイクルにより、これらの分子の局在が制御されることが明らかになりました。さらに、TORC1が液胞近傍の輝点上に局在するGtr1-GDP型発現時に、TORC1を人為的に液胞膜全体に局在化させる系を用いた時、TORC1の液胞膜全体への局在化はGtr2存在下で阻害されました。このことからGtr2TORC1の液胞近傍輝点局在を正に制御していると考えられました。Gtr1-GDP型発現時にTORC1は液胞近傍の輝点に局在化し、このときTORC1は不活性化するため、TORC1の液胞近傍への輝点局在がTORC1の不活性化に関与する可能性が示唆されます。

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2016/02/17

脂肪体のメチオニン代謝によるショウジョウバエ成虫原基修復の遠隔調節

論文タイトル
Tissue nonautonomous effects of fat body methionine metabolism on imaginal disc repair in Drosophila
論文タイトル(訳)
脂肪体のメチオニン代謝によるショウジョウバエ成虫原基修復の遠隔調節
DOI
10.1073/pnas.1523681113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2016 113 (7) 1835?1840
著者名(敬称略)
樫尾宗志朗、小幡史明、三浦正幸 他
所属
東京大学 大学院薬学系研究科・遺伝学教室

抄訳

傷害を受けた組織が修復する機構に関して、これまでに傷害組織に内在したメカニズムが多く研究されてきた。近年、組織傷害に対して傷害部位とは異なる組織が応答する全身性創傷応答が様々な生物で見出され注目されている。本研究では、高い組織修復能と再生能とを持つショウジョウバエ翅成虫原基をモデルとして用い、組織修復に関わる組織間相互作用を解析した。温度感受性ジフテリア毒素を翅成虫原基に発現させ、飼育温度を29度から18度に変化させることによって一過的に組織傷害をおこし、その後29度に戻すことで組織修復と再生が見られる実験系を構築した。組織傷害後におこる全身性の応答を解析すると、傷害部位から離れた脂肪体でメチオニン代謝が変動することが明らかになった。ショウジョウバエの脂肪体はヒトの肝臓と白色脂肪組織に相当する。遺伝学的にメチオニン代謝に関わる酵素遺伝子を脂肪体で操作すると翅成虫原基の組織修復と再生が著しく阻害された。メチオニン代謝経路はショウジョウバエとヒトで共通しており、高度な遺伝学的解析を可能にするショウジョウバエを用いた研究によって、種を超えた脂肪組織による組織修復の遠隔制御機構の解明が期待される。

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2016/02/16

クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構

論文タイトル
Chromatin binding of RCC1 during mitosis is important for its nuclear localization in interphase
論文タイトル(訳)
クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構
DOI
10.1091/mbc.E15-07-0497
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell January 15, 2016 vol. 27 no. 2 371-381
著者名(敬称略)
古田満衣子, 深川 竜郎 他
所属
大阪大学大学院生命機能研究科

抄訳

小分子GTPaseであるRanと関連するRCC1は、細胞周期の各時期において多様な機能を持つと考えられている。RCC1は、機能に関連した各種ドメインを持つが、それらの生物学的な役割については不明な点も多い。我々は、各ドメインの生物学的な役割を解明する目的で、RCC1のノックアウト細胞を樹立して、その細胞へ各種RCC1変異体を導入することで各ドメインの生物機能を解析した。その結果、RCC1のクロマチン結合ドメインも核内局在シグナルもRCC1の持つ核膜形成能には必須でないことが判明した。しかしながら、その両ドメインを欠失させるとRCC1の核膜形成能は失われた。両ドメインを欠失したRCC1に人工的な核局在シグナルを付加させることで、核膜形成能が復帰したことから、我々は、「RCC1の核膜形成能には、RCC1自身の核内局在が必須である」ことを証明した。ところが、RCC1自身の核内局在シグナルを欠損させても、RCC1自身は核内に局在して核膜を形成できることから、クロマチン結合ドメインが核内局在にも関与していると考えた。そこで、核内局在シグナルを欠いたRCC1を細胞へ導入し、その過程を詳細に解析すると、導入直後、RCC1は細胞核には局在しないが、細胞分裂期にクロマチンと結合した後、核内へ移行することが判明した。これらの結果は、クロマチン結合を介した新規のRCC1核内局在機構の発見を意味している。

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2016/02/10

生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性

論文タイトル
Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing
論文タイトル(訳)
生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性
DOI
10.1073/pnas.1520560113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 1, 2016
著者名(敬称略)
茶谷 悠平、丹羽 達也、千葉 志信、田口 英樹、伊藤 維昭
所属
京都産業大学・総合生命科学部 , 東京工業大学・大学院生命理工学研究科

抄訳

タンパク質の合成(遺伝情報の翻訳)においては、アミノ酸が遺伝子によって指定された順番で、一つ一つ連結されていく。この反応はリボソームの内部で起こり、新たに作られたポリペプチド鎖(新生鎖)の一端はtRNAを介してリボソームに繋がれ、他端は通り道(トンネル)を通ってリボソームの外に向かう。このポリペプチドの伸長過程が緩急の制御を受けることが知られるようになったが、翻訳の一時停止(pausing)がどの程度一般的におこるのかは不明であった。本研究では、この問題を解決するため、リボソームプロファイリング法という強力ではあるが間接的な方法によらず、翻訳の中間体であるペプチジルtRNAを直接的に検出する手法(iNP = integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling)を用いた。大腸菌の1038個の遺伝子の翻訳過程の詳細像を網羅解析した結果、大部分の遺伝子が、1回~複数回の停滞を伴って翻訳されることが明らかになった。一時停止は、in vitro のみで起こるもの、in vivoのみで起こるもの、両方で起こるものに大別され、膜タンパク質と細胞質タンパク質で異なる性質の停滞が起こる傾向や、自発的フォールディングの能力との相関が観察された。翻訳の過程では、広範かつ多様な様式の一時停止が起こることがわかり、機能的タンパク質の形成は翻訳の緩急によっても支えられているものと考えられる。

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2016/02/09

2種類の擬似液体層は氷結晶上で動力学的に生成する

論文タイトル
Two types of quasi-liquid layers on ice crystals are formed kinetically
論文タイトル(訳)
2種類の擬似液体層は氷結晶上で動力学的に生成する
DOI
10.1073/pnas.1521607113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 1, 2016
著者名(敬称略)
麻川 明俊 、佐崎 元 他
所属
北海道大学 低温科学研究所

抄訳

氷の表面は、融点(0°C)以下の温度においても、擬似液体層と呼ばれる薄い水膜で覆われる。この現象は表面融解と呼ばれ、スケートの滑りやすさから雷の発生まで、様々な自然現象を支配する。我々は近年、形状が異なる2種類の擬似液体層(液滴状と薄い層状)が生成することを見出した。しかし、これらの擬似液体層の熱力学的安定性はまだ明らかになってはいなかった。我々は今回、2種類の擬似液体層が、水蒸気圧がある臨界の過飽和度よりも高い条件でのみ生成することを見出した。我々は、水1分子高さの段差を検出することができる光学顕微鏡を用いて、氷結晶表面上で擬似液体層を直接可視化した。その結果、ある一定の温度下では、水蒸気圧が減少するにつれて、まず薄い層状の擬似液体層が消滅し、続いて液滴状の擬似液体層が消滅する様子が観察された。しかし、2種類の擬似液体層が消滅した後も、氷結晶上では単位ステップが成長していた。これらの結果は、2種類の擬似液体層が、氷表面が融解するのではなく、過飽和な水蒸気が氷表面に析出することで、動的に生成することを示している。本成果は,これまて?長らく「表面融解」と呼は?れて来た現象の描像を根底から覆すものて?あり、擬似液体層が重要な役割を果たす幅広い現象の機構解明に役立つと共に,半導体結晶や有機物結晶なと?,様々な材料て?見られる融点直下て?の超高温表面・界面現象の解明に役立つと期待されます。

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2016/02/09

ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来ヒドロキシニトリルリアーゼの発見、分子生物学的および触媒的特性

論文タイトル
Discovery and molecular and biocatalytic properties of hydroxynitrile lyase from an invasive millipede、 Chamberlinius hualienensis[2]
論文タイトル(訳)
ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来ヒドロキシニトリルリアーゼの発見、分子生物学的および触媒的特性
DOI
10.1073/pnas.1508311112
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2015 112 (34) 10605-10610
著者名(敬称略)
Mohammad Dadashipour, 石田裕幸、山本和範、浅野泰久
所属
公立大学法人富山県立大学 国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) 浅野酵素活性分子プロジェクト

抄訳

シアン産生生物の防御機構を構成するヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)は、立体選択的にシアノヒドリンを合成することができる。シアノヒドリンは、ファインケミカルや農薬、医薬品の合成におけるビルディングブロックとして利用価値が高く、HNLは重要な生物触媒として工業的に利用されている。ヤンバルトサカヤスデから新たに発見したHNLは、既知のタンパク質とは全く相同性はないが、青酸と様々な芳香族アルデヒドの縮合反応を触媒し、マンデロニトリル合成においては、同様の活性を示す酵素の中で最も高い比活性を示した。更に、本酵素は広い範囲の温度とpH領域で高い安定性を示し、有機溶媒の使用なしに、99%の鏡像体過剰率でベンズアルデヒドから(R)-マンデロニトリルを合成できた。陸上動物の80%を構成している節足動物相は、バイオテクノロジーにおいて、HNLのみならず様々な新奇酵素を探索する新たな生物資源となるに違いない。

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2015/10/15

授乳時の乳頭吸飲刺激によるラット視床下部Kiss1ニューロンの急速な発現調節

論文タイトル
Rapid modulation of hypothalamic Kiss1 levels by the suckling stimulus in the lactating rat
論文タイトル(訳)
授乳時の乳頭吸飲刺激によるラット視床下部Kiss1ニューロンの急速な発現調節
DOI
10.1530/JOE-15-0143
ジャーナル名
Journal of Endocrinology Bioscientifica
巻号
J Endocrinol Vol.227 No.2 (105-115)
著者名(敬称略)
肥後 心平(筆頭著者),小澤 一史(連絡著者) 他
所属
日本医科大学大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野

抄訳

授乳時には乳頭吸引刺激による急性的な視床下部GnRH分泌抑制, 引き続く下垂体LH分泌の減少が生じ, 一時的な不妊状態となるが, GnRH/LHの減少がなぜ誘導されるのかはよくわかっていない. 本研究では, 異なる授乳状態のラットをモデルに, GnRH分泌の上流制御因子であるKiss1が授乳時の急性的GnRH/LH減少に関わる可能性を調べた.

ラットの視床下部Kiss1発現は母仔分離・再哺乳により急性的な変動を示した. 神経投射解析により, 乳頭吸飲刺激が脊髄・中脳を介した直接投射により視床下部弓状核のKiss1ニューロンに伝達され, Kiss1発現の急性的抑制, GnRHの分泌低下を惹起する可能性を見出した. また, 授乳時の血中プロラクチンの上昇に対してもKiss1は急性的に抑制されることがわかった. 弓状核のKiss1ニューロンは背側弓状核Dopamineニューロンへの投射を介して下垂体からのプロラクチン分泌にも関わるため, この回路を介した再帰的なKiss1の発現抑制も授乳期におけるGnRH分泌の減少に関わる可能性を見出した.

これらの結果は, 授乳期の排卵抑制~一時的不妊状態の分子メカニズムを機能形態学的に明らかにするものである.

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