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国内研究者論文紹介

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2018/02/21

甲状腺原発MALTリンパ腫107例の長期予後-日本の単一医療機関における検討

論文タイトル
Long-Term Outcomes of 107 Cases of Primary Thyroid Mucosa-Associated Lymphoid Tissue Lymphoma at a Single Medical Institution in Japan
論文タイトル(訳)
甲状腺原発MALTリンパ腫107例の長期予後-日本の単一医療機関における検討
DOI
10.1210/jc.2017-01478
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.2 (732?739)
著者名(敬称略)
渡邊 奈津子 他
所属
伊藤病院 内科

抄訳

背景:甲状腺原発MALTリンパ腫は予後良好な節外性リンパ腫である。目的:至適治療を検討するため長期予後を明らかにする。対象と方法:伊藤病院にて診断されたステージIE又はIIEの限局期MALTリンパ腫107例の後方視的研究。結果:対象は年齢中央値67(範囲28-88)才、男女比1対4。初期治療は放射線治療単独(RT):58例、化学療法と放射線治療併用(CMT):48例、化学療法単独(CT):1例で、全症例で治療が奏功した。この内6例で再発を認めた。5年全生存率及び無イベント生存率は、順に94(95%信頼区間 (CI):87-97) %、92(95%CI:85-95)%、10年全生存率及び無イベント生存率は、順に91(95%CI:83-95)%、84(95%CI:74-90)%と良好だった。初期治療別では、5年全生存率は、順にCMT群93(95%CI:81-98)% vs RT群94(95%CI:84-98)%、(log rank test:p=0.91)で有意差は認めなかった。有害事象はCMT群では化学療法に由来する好中球減少症、神経障害、便秘、肺臓炎がRT群の有害事象に加えて認められた。甲状腺機能低下症は71例(67%)で治療による差はなかった。結語:甲状腺原発MALTリンパ腫の長期予後は何れの初期治療によっても良好である。

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2018/02/02

骨芽細胞AMP-activated protein kinaseは雄マウスの出生後骨成長を制御する

論文タイトル
Osteoblast AMP-Activated Protein Kinase Regulates Postnatal Skeletal Development in Male Mice
論文タイトル(訳)
骨芽細胞AMP-activated protein kinaseは雄マウスの出生後骨成長を制御する
DOI
10.1210/en.2017-00357
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.2 (597?608)
著者名(敬称略)
金沢 一平 他
所属
島根大学医学部内科学講座 内科学第一

抄訳

我々はこれまでに骨代謝におけるAMP kinase (AMPK)の重要性について報告してきた。骨芽細胞におけるAMPK活性化は分化、石灰化を促進するが、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割については不明な点が多い。本研究では骨芽細胞特異的にAMPKをノックアウト(AMPK-KO)して骨構造解析を行うことにより、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割について検討した。AMPK-KOは生後から成長障害を認め、海綿骨・皮質骨ともに骨量が有意に低下していた。皮質骨内膜面の骨形成が有意に低下していたのに対し、破骨細胞が有意に増加していた。頭蓋骨、大腿骨から骨芽細胞、未分化骨髄細胞を採取し、real-time PCRにて骨代謝関連遺伝子の発現を検討したところ、Runx2、Osterix、BMP-2などの骨形成関連因子が有意に低下し、ALP、osteocalcin、type 1 collagenの分化マーカーの発現も低下していた。一方、破骨細胞誘導因子であるRANKLは有意に上昇を認めた。AMPK-KOでは骨芽細胞分化障害による骨形成低下とRANKL発現上昇による骨吸収誘導により骨量が低下することが明らかになった。しかたがって、骨芽細胞AMPKは骨形成、骨リモデリングにおいて重要な因子であり、新たな骨粗鬆症治療標的因子である可能性が示唆された。

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2018/01/23

妊娠後期における母体からのプロラクチンは、次世代の子孫が育児行動を発現させる上で重要である

論文タイトル
Maternal prolactin during late pregnancy is important in generating nurturing behavior in the offspring
論文タイトル(訳)
妊娠後期における母体からのプロラクチンは、次世代の子孫が育児行動を発現させる上で重要である
DOI
10.1073/pnas.1621196114
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America  National Academy of Sciences
巻号
November 20, 2017 vol. 114 no. 49, 13042-13047
著者名(敬称略)
西連寺 拓、池澤 淳、下川 哲昭 他
所属
高崎健康福祉大学 健康福祉学部・健康栄養学科 他

抄訳

母親の育児行動は種の保全にとって極めて重要であるが、育児行動の生物学的基盤に関する私たちの知識は不十分である。この論文では、母親の育児行動の程度は自分の胎児期に存在する因子によって制御されることを示す。我々は、Cin85欠損(Cin85-/-)母マウスは、脳における過剰なドーパミンシグナルの結果、下垂体ホルモンであるプロラクチン(PRL)分泌が減少していることを見出した。この雌の子孫は正常に成熟し自分の仔を産む。しかし、仔の巣への回収行動や授乳などの育児行動は強く抑制されていた。驚いたことに、WT由来の胚をCin85-/-マウスの卵管に移植すると、得られた仔は母親になりWTにも関わらず抑制された育児行動を示した。逆にCin85-/-由来の胚をWTマウスの卵管に移植すると、得られた仔は母親になりCin85-/-にも関わらず正常な育児行動を示した。さらにPRLをCin85-/-マウスの妊娠末期に投与した場合、誕生した仔の多くは母親になり育児行動を示した。これは、育児行動に関連する脳内神経回路がCin85-/-から生まれた子どもでは活動的ではなかったが、母親へのPRL投与はこの回路の神経活動を正常レベルに回復させたという知見と相関する。これらの結果から、妊娠後期は次世代における育児行動の発現を決定する上で極めて重要であり、母親のPRLはこの発現のための重要な因子であることが示唆される。周産期に分泌される母体からのPRLは、母親だけでなく仔においても将来母親になった際の育児行動の発現に影響を及ぼす。

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2017/12/28

Alcadein α酸性ドメイン内複数サイトのリン酸化はキネシン‐1への結合とGolgi体におけるカーゴ小胞形成に必要である

論文タイトル
Phosphorylation of multiple sites within an acidic region of Alcadein α is required for kinesin-1 association and Golgi exit of Alcadein α cargo
論文タイトル(訳)
Alcadein α酸性ドメイン内複数サイトのリン酸化はキネシン‐1への結合とGolgi体におけるカーゴ小胞形成に必要である
DOI
10.1091/mbc.E17-05-0301
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society of Cell Biology
巻号
December 15, 2017 vol.28 no.6 3844-3856
著者名(敬称略)
蘇武 佑里子、鈴木 利治 他
所属
北海道大学大学院 薬学研究院 神経科学研究室

抄訳

Alcadeinα(Alcα)/Calsyntenin-1はキネシン-1と直接結合することで輸送小胞カーゴとして神経軸索上を輸送される。しかしながら、ゴルジ体において特異的にAlcαカーゴが形成される仕組みやキネシン-1がAlcαと結合する制御機構は未解明であった。
我々はAlcα細胞質ドメインの3ヶ所のSer残基のリン酸化がキネシン-1への結合に必要であることを新たに見いだした。AlcαはGolgi体においてアダプタータンパク質X11Lを介してアミロイド前駆体タンパク質(APP)と複合体を形成しているが、通常これらは別々の輸送小胞を形成し軸索中を輸送される。しかし、キネシン-1結合能の低いAlcαリン酸化サイトのアラニン変異体はAPP小胞に入り込むことで軸索中を高速に輸送されていた。加えて、Alcαアラニン変異体はGolgi体における輸送小胞の形成効率が低いことを見いだした。これらの結果から、Golgi体におけるAlcα特異的な小胞形成にはリン酸化により制御されるキネシン-1への結合が必要であることが明らかになった。Alcαはカーゴ受容体として機能すると考えられており、Alcαのリン酸化は小胞内に含まれるカーゴ分子が必要な時期に必要な量を軸索末端に送るためのシグナルとして機能することが示唆された。

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2017/12/26

糖尿病マウス血清のプロテオーム解析により同定されたsoluble EGFRはインスリン抵抗性の指標となるバイオマーカー候補である

論文タイトル
Serum Quantitative Proteomic Analysis Reveals Soluble EGFR To Be a Marker of Insulin Resistance in Male Mice and Humans
論文タイトル(訳)
糖尿病マウス血清のプロテオーム解析により同定されたsoluble EGFRはインスリン抵抗性の指標となるバイオマーカー候補である
DOI
10.1210/en.2017-00339
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.158 No.12 (4152?4164)
著者名(敬称略)
京原 麻由, 白川 純, 寺内康夫 他
所属
横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学

抄訳

新規糖尿病バイオマーカーの探索のため、我々は肥満糖尿病モデルであるdb/dbマウスを用いて、1) 4, 8, 12, 24週齢の血清、2) 抗糖尿病薬であるGLP-1受容体作動薬のリラグルチド(Lira)投与後の血清のプロテオーム解析を行った。db/dbマウス血清で低下し、Lira投与で回復するEpidermal growth factor receptor (EGFR、血清中でsoluble EGFR (sEGFR) として存在) を同定し、血清ELISA、肝臓・脂肪組織の遺伝子発現で同様の変化を確証した。血清sEGFRは、肥満とインスリン抵抗性を呈する高脂肪食負荷マウスやob/obマウスでも低下し、一方、インスリン分泌が低下するグルコキナーゼ欠損マウス、STZ投与マウスで上昇、また、インスリン受容体/IGF-1受容体阻害薬投与マウスで上昇した。糖尿病患者を含むヒト血清sEGFRは空腹時血糖、血清インスリン、HOMA-IR、HbA1cと正相関した。これより血清sEGFRはインスリン抵抗性を反映しうる新規バイオマーカー候補である。

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2017/12/18

L-セリンは光による概日時計のリセットを増強する

論文タイトル
l-Serine Enhances Light-Induced Circadian Phase Resetting in Mice and Humans
論文タイトル(訳)
L-セリンは光による概日時計のリセットを増強する
DOI
10.3945/?jn.117.255380
ジャーナル名
Journal of Nutrition American Society for Nutrition
巻号
J. Nutr. December 1, 2017 vol. 147 no. 12 2347-2355
著者名(敬称略)
安尾しのぶ、樋口重和 ほか
所属
九州大学大学院 ほか

抄訳

約24時間のリズムを刻む概日時計(体内時計)は食事の時刻や内容により調節される。しかし、特定の栄養素が概日時計に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究では、概日時計に影響を及ぼすアミノ酸を同定することを目的とした。
CBA/Nマウスにおいて、回転輪活動リズムの位相変化量を指標として解析を行った。20種類のアミノ酸のうち、L-セリンを投与したマウスでは、光による概日時計の位相変化が強まることが判明した。この効果はGABA-A受容体アンタゴニストであるピクロトキシンにより阻害された。また、明暗周期を6時間前進させてL-セリンを経口投与したところ、新しい明暗周期に対する再同調が早まった。
L-セリンの効果をヒトで実証するため、L-セリンが光による概日時計の位相前進に及ぼす影響について、男子大学生を対象として解析した。L-セリンを就寝前に摂取して翌朝に強い光を浴びると、概日時計の位相の指標であるメラトニン分泌開始時刻が有意に大きく前進した。
以上の結果から、光による概日時計のリセットがL-セリンの摂取により強まることが解明された。本成果により、概日時計の乱れや時差ぼけの改善にL-セリンが有用である可能性が示唆された。

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2017/11/10

GPR62はcAMPシグナルを恒常的に活性化するが,雄マウスの生殖には必須ではない

論文タイトル
GPR62 constitutively activates cAMP signaling but is dispensable for male fertility in mice
論文タイトル(訳)
GPR62はcAMPシグナルを恒常的に活性化するが,雄マウスの生殖には必須ではない
DOI
10.1530/REP-17-0333
ジャーナル名
Reproduction Bioscientifica
巻号
Reproduction Vol.154 No.6 (755-764)
著者名(敬称略)
室井 智之, 与語 圭一郎 他
所属
静岡大学学術院農学領域

抄訳

Gタンパク共役型受容体(GPCRs)は,多様な生理的機能に関わっており,創薬の標的因子として有望だが,まだ機能の不明なオーファン受容体も多い。我々は,オーファン受容体の1つであるGpr62がマウスにおいて雄の生殖細胞に発現していること,また,その発現が精子分化に伴って上昇することを見出した。また,GPR62は多くのGPCRsに保存されているBBXXBモチーフやDRYモチーフを欠いており,リガンドの非存在下でcAMPシグナルを活性化することを見出した。変異体を用いた解析から,これらのモチーフの欠損が恒常活性化能に関係していることが分かった。Gpr62遺伝子欠損マウスを作製し,生殖における働きを調べたが,KOマウスの生殖能力は正常で,精子の分化や運動性にも異常はなかった。これらの結果は,GPR62は恒常的にcAMPシグナルを活性化するGPCRsであるが雄の生殖能には必須ではないことを示している。一方,我々はGpr61がGpr62と同様の発現パターンを示すとともに,cAMPシグナルを活性化する恒常活性化能を有することを見出した。この結果はGPR62とGPR61は機能的冗長性を有し,協調的に精子の分化や機能に関与していることを示唆している。

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2017/10/26

ビタミンEの過剰摂取は、通常および高脂肪食摂取においても、卵巣摘出したメスやオスマウスの骨量を減少しない

論文タイトル
Excessive Vitamin E Intake Does Not Cause Bone Loss in Male or Ovariectomized Female Mice Fed Normal or High-Fat Diets
論文タイトル(訳)
ビタミンEの過剰摂取は、通常および高脂肪食摂取においても、卵巣摘出したメスやオスマウスの骨量を減少しない
DOI
10.3945/jn.117.248575
ジャーナル名
Journal of Nutrition American Society for Nutrition
巻号
Vol. 147 No. 10
著者名(敬称略)
藤原 葉子, 池上 寛子 他
所属
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻食品栄養科学コース

抄訳

主要なビタミンEであるαトコフェロールの破骨細胞活性化作用が報告されたことから、ビタミンE過剰摂取の骨粗鬆症に対するリスクが危惧されたが、ビタミンEの骨に対する影響については十分な見解は得られていない。本研究では、過剰量のビタミンE摂取が骨に及ぼす影響を、雄マウスおよび閉経後モデル雌マウスで検討した。
C57BL/6J雄性マウスに過剰量のビタミンE(1000mg/kg)を含む通常脂肪食(16%脂肪)を18週間投与したが、骨への影響は観察されなかった。肥満時の影響を観察するために、0, 200, 500, 1000mg/kgのビタミンEを含む高脂肪食(46%脂肪)を投与したが、同様に影響は観察されなかった。さらに、卵巣摘出手術を行った閉経後モデル雌マウスに1000mg/kgのビタミンEを含む高脂肪食を8週間投与したが、悪影響は観察されなかった。
1000mg/kgのビタミンE投与はヒトの摂取上限の8倍に相当し、過剰量のビタミンEを摂取しても骨に対する悪影響は認められなかった。また、肥満や閉経に伴う骨粗鬆症のリスク上昇時にも、ビタミンEは骨に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。

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2017/10/10

分界条床核主核の雌優位な性的二型細胞集団の性ホルモンに依存した性分化

論文タイトル
Gonadal Hormone?Dependent Sexual Differentiation of a Female―Biased Sexually Dimorphic Cell Group in the Principal Nucleus of the Bed Nucleus of the Stria Terminalis in Mice
論文タイトル(訳)
分界条床核主核の雌優位な性的二型細胞集団の性ホルモンに依存した性分化
DOI
10.1210/en.2017-00240
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.158 No.10 (3512?3525)
著者名(敬称略)
森下 雅大, 塚原 伸治 他
所属
埼玉大学理学部生体制御学科調節生理学研究室

抄訳

 これまでに知られていなかった性的二型の領域がマウスの視索前野と分界条床核の境界に存在することを我々は以前報告した。我々はこの領域を再調査し、この領域が雄優位な性的二型核である分界条床核主核の腹側領域の一部であり、雌優位な性差を示すことを明らかにした。さらに、分界条床核主核腹側部(BNSTpv)の性差は性ホルモンの影響を受けて形成されることを明らかにした。
 雄のBNSTpvは出生日の精巣除去により雌化し、雌のBNSTpvは周生期のテストステロン投与により雄化した。BNSTpvの性差は思春期前から見られたが、雌では思春期にBNSTpvの体積が増加し、雄ではBNSTpvのニューロンが脱落することで成熟期に性差が顕著になった。思春期前の精巣除去はBNSTpvの性分化に影響を及ぼさなかったが、思春期前の卵巣除去はBNSTpvの体積増加を抑制するとともにニューロンの脱落を引き起こした。新生仔期の精巣由来テストステロンにはBNSTpvを雄化する作用があり、思春期の卵巣由来ホルモンはBNSTpvの雌化に重要であることが示唆された。

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2017/08/30

雌メダカにおけるGnRH1ニューロンの高頻度発火活動は、脳下垂体GnRH1神経終末からのGnRH1ペプチド放出を引き起こす

論文タイトル
HighーFrequency Firing Activity of GnRH1 Neurons in Female Medaka Induces the Release of GnRH1 Peptide From Their Nerve Terminals in the Pituitary
論文タイトル(訳)
雌メダカにおけるGnRH1ニューロンの高頻度発火活動は、脳下垂体GnRH1神経終末からのGnRH1ペプチド放出を引き起こす
DOI
10.1210/en.2017-00289
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.158 No.8 (2603?2617)
著者名(敬称略)
長谷部 政治, 岡 良隆
所属
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻

抄訳

 脊椎動物の脳において、視床下部の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンは、GnRHペプチド放出を介して脳下垂体の黄体形成ホルモン(LH)分泌とそれに続く排卵を引き起こす。このGnRHペプチド放出の調節には、GnRHニューロンの発火活動が関与していることが示唆されていたが、それらの直接的な関係性については不明瞭であった。本研究では、2種類の遺伝子組み換えメダカ(GnRH1ニューロンにEGFP、LH細胞に蛍光Ca2+インジケーターIPを導入)の全脳in vitro標本を用いて電気生理学・Ca2+イメージングを行うことで、両者の関係性をより直接的に明らかにした。
 視床下部GnRH(GnRH1)ニューロン細胞体へのグルタミン酸局所投与により、それらの高頻度発火活動を引き起こすと、GnRH1ニューロンの軸索投射先である脳下垂体LH細胞で、軸索終末から放出されたGnRHペプチドが受容されたことによるCa2+応答が見られた。
本研究により、GnRH1ニューロンの細胞体における高頻度発火活動が、脳下垂体LH細胞に投射する軸索の終末からGnRH1ペプチド放出を引き起こすことが明らかとなった。

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