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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2018/10/15

出芽酵母におけるジヒドロキシアセトンの毒性はメチルグリオキサールの形成を介して発揮される:アクチン極性と核分裂への影響

論文タイトル
Toxicity of dihydroxyacetone is exerted through the formation of methylglyoxal in Saccharomyces cerevisiae: effects on actin polarity and nuclear division
論文タイトル(訳)
出芽酵母におけるジヒドロキシアセトンの毒性はメチルグリオキサールの形成を介して発揮される:アクチン極性と核分裂への影響
DOI
10.1042/BCJ20180234
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Vol. 475 No. 16 (2637-2652)
著者名(敬称略)
野村 亘, 井上 善晴
所属
京都大学大学院農学研究科 応用生命科学専攻 エネルギー変換細胞学分野

抄訳

 ジヒドロキシアセトン(DHA)は最小のケトースである。DHAはジヒドロキシアセトンキナーゼ(DAK)によりリン酸化されてジヒドロキシアセトンリン酸となり、解糖系に流入する。しかしながら、高濃度のDHAは細胞毒性を示すことが知られている。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、DHAはホルムアルデヒドに変換されて細胞毒性が発揮されるというモデルが提唱されている。これに対しわれわれは、DHAはメチルグリオキサール(MG)に変換されることにより細胞毒性を発揮することを明らかにした。
 MGは主に解糖系から派生する2-オキソアルデヒドである。MGは一つの分子内にケト基とアルデヒド基を持つことから、極めて反応性が高く、MGの代謝異常と種々の疾患(糖尿病、アルツハイマー病、自閉症など)との関連が指摘されている。
 MGを代謝する酵素(グリオキサラーゼI、Glo1;MG還元酵素、Gre2;アルドース還元酵素、Gre3)を破壊したglo1?gre2?gre3株はDHA感受性を示すとともに、DHA処理により細胞内MGレベルが上昇した。しかしながら、DAK1を過剰発現させると、それらの表現型はキャンセルされた。われわれは以前、MGは酵母のアクチンを脱極性化させ、極性成長を阻害すること(Mol. Cell. Biol. 35:1269-1280, 2015)、液胞の脱フラグメント化(肥大化)を引き起こすこと(J. Biol. Chem. 292:15039-15048, 2017)を明らかにしているが、glo1?gre2?gre3株をDHAで処理するとアクチンの脱極性化や液胞の脱フラグメント化が誘導され、これらの表現型はいずれも、DAK1の過剰発現によりキャンセルされた。さらに今回、glo1?gre2?gre3株をDHAで処理すると、核分配が阻害されることを見いだした。同様の表現型はMG処理によっても起こった。このとき、核は肥大化した液胞に押されて芽の近傍で成長軸に対して扁平な形態を示すものの、芽(娘細胞)には分配されないことを明らかにした。われわれは、このような扁平な核形態をjellybean-like shape nucleus(ジェリービーンのような形態の核)と命名した。
 以上のことから、酵母におけるDHAによる細胞毒性は、細胞内でDHAがMGに変換され、生じたMGがアクチンを脱極性化して細胞極性を失わせるとともに、核分配を阻害することに起因していると結論した。

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2018/09/25

マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発

論文タイトル
Cataract-preventing contact lens for in vivo imaging of mouse retina
論文タイトル(訳)
マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発
DOI
10.2144/btn-2018-0040
ジャーナル名
BioTechniques Future Science Group
巻号
Vol.65,No.2(2018)101-104
著者名(敬称略)
池田 わたる 他
所属
株式会社カン研究所 臨床科学部

抄訳

2光子または共焦点レーザー顕微鏡を用いたマウス網膜のin vivoイメージングは、中枢神経系組織における細胞動態解析の強力なツールである。
しかし、麻酔下ではマウス眼内の水晶体が可逆的に不透明化(白内障化)するため、眼底の視認性が著しく悪化する。
マウス眼球表面に平凹型コンタクトレンズを装用して角膜の乾燥を防ぐことにより、白内障の進行を遅延させることはできるが、その効果には限界がある。
こうした問題を解決するため、我々はマウス眼球表面を完全に覆うコンタクトレンズを開発することにより、6時間以上にわたって麻酔下での白内障を防止することに成功した。
その結果、マウス網膜における白血球の動態を長時間にわたって解析することが可能となった。
今後、本コンタクトレンズを補償光学システムと組み合わせることにより、マウス網膜におけるin vivo分子イメージングも可能になることが期待される。

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2018/09/25

KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性

論文タイトル
Aldosterone Suppression by Dexamethasone in Patients With KCNJ5-Mutated Aldosterone-Producing Adenoma
論文タイトル(訳)
KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性
DOI
10.1210/jc.2018-00738
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.9 (3477?3485)
著者名(敬称略)
井上 浩輔, 西川 哲男 他
所属
横浜労災病院内分泌・糖尿病センター

抄訳

原発性アルドステロン症(PA)でのRAS系の検討はされているも、ACTH系の病態への関与は知られていない。一方、KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫の症例は、重症型PAである。そこで、KCNJ5変異の有無とACTH経路の臨床的関与につき検討した。方法:APA141例を対象とし、ACTH負荷試験、1mgデキサメサゾン負荷試験(DST)を含む各種術前内分泌検査とKCNJ5遺伝子変異の相関を横断的に検討した。また、超選択的副腎静脈サンプリング(SS-ACTH-AVS)におけるACTH負荷後PAC, 血清コルチゾール値(F)と変異の相関についても検討した。結果:KCNJ5変異は76%に認められ、非変異群に比し、血漿アルドステロン濃度(PAC)基礎値、生食負荷試験後PAC・ACTH負荷試験後PACが高値を示していた。一方、変異群でDST後にPACの強い抑制を認め、多変量解析でもDST後PAC抑制度はKCNJ5変異の有無と正の相関を認めた (P=0.01)。SS-ACTH-AVSでは、変異群において病変側のPAC/F比が高値を示した。免疫組織染色にて、CYP11B1とCYP17が有意に発現増強していた。考案:変異群においてDST後のPAC抑制度が強いことは内因性ACTHへの高い反応性を示し、AVS所見もそれを支持する結果であった。結論:1mg DSTによるPAC抑制性は、APAのKCNJ5変異を予測する上で重要な指標である可能性が示された。

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2018/09/11

栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響

論文タイトル
Effect of diurnal variations in the carbohydrate and fat composition of meals on postprandial glycemic response in healthy adults: a novel insight for the second-meal phenomenon
論文タイトル(訳)
栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響
DOI
10.1093/ajcn/nqy086
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition American Society for Nutrition
巻号
Vol.108, No.2 (332?342)
著者名(敬称略)
安藤 貴史・田中 茂穂
所属
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部

抄訳

1食毎の栄養素組成の変化は,日常的に見られる.しかし,これまでの研究は1食のみや1日単位の栄養素組成と血糖値の関連のみにフォーカスしており,1食毎の栄養素組成の変化が1日全体の中で血糖値変動に及ぼす影響は明らかになっていない.我々は,「高脂質を摂取した次の食事において相対的に高糖質の食事を摂取すると,体内の基質利用優先度が脂質に傾いているため高血糖が引き起こされる」という仮説を立て,14名の健康な成人男性を対象とした3試行のクロスオーバー試験で検証した.各試行は, 3日間の規定食摂取の後に1日間の試験食摂取で構成されており,試験食摂取日に1日3食摂取した時の血糖値変動をcontinuous glucose monitoring systemを用いて評価した.基質の利用バランス(RQ)はヒューマンカロリメーターを用いて評価された.試験食には,3食普通食(R)試行,朝高糖質・昼高脂質・夜高糖質(CB)試行,朝高脂質・昼夜高糖質(FB)試行があり,3試行の1日合計の栄養素組成(糖質摂取量)は同一に設定された.その結果,1日の血糖値最高値はR試行に比べCB,FB試行において高値を示し,各食後の血糖値については,高脂質摂取後に高糖質食を摂取した場合において,他の高糖質摂取時と比べ20mg/dL程度の高値を示した.また,食後の血糖値と食前のRQに有意な負の関連が見られた.したがって我々の研究結果は,高脂質から高糖質への食事変化が基質の利用優先度の変化を伴い,食後高血糖をもたらすことを示唆する.

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2018/09/10

海藻藻場がサンゴ群集へ置き換わる:温暖化影響下における海流輸送と植食圧の役割

論文タイトル
Ocean currents and herbivory drive macroalgae-to-coral community shift under climate warming
論文タイトル(訳)
海藻藻場がサンゴ群集へ置き換わる:温暖化影響下における海流輸送と植食圧の役割
DOI
10.1073/pnas.1716826115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 115 no. 36 8990-8995
著者名(敬称略)
熊谷直喜 他
所属
国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター

抄訳

海藻藻場やサンゴ群集は重要な生態系の構成要素だが、近年、温帯の海藻藻場が衰退しサンゴ群集に置き換わる現象が生じている。本研究は60年以上にわたる生物出現記録の文献を収集・精査し、国内の温帯で進行している海藻藻場の分布縮小と造礁サンゴ群集の分布拡大の全貌を明らかにした。さらに気候変動と海流輸送、海藻を食害する魚類の影響を組み込んだ解析を行い、海藻藻場からサンゴ群集への置き換わりが進行する機構を解明した。海流を利用した移動分散に長けた食害魚類やサンゴは、温暖化によって新たに生息可能になった海域へとより早く分布を拡大するが、移動分散能力の低い海藻は徐々にしか分布を更新できなかった。このため魚類による食害とサンゴの加入によって分布が縮小し、次第にサンゴ群集へと置き換わることが分かった。さらに今後も温帯では海藻藻場の減少とサンゴ群集の増加が進行すると予測され、生態系機能・サービスも大きく変化すると予想される。

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2018/08/08

寛骨臼形成不全の症状を有する股関節における、坐骨大腿スペースと股関節の形態学的特徴の間のレントゲン学的相関性

論文タイトル
Radiologic Correlation Between the Ischiofemoral Space and Morphologic Characteristics of the Hip in Hips With Symptoms of Dysplasia
論文タイトル(訳)
寛骨臼形成不全の症状を有する股関節における、坐骨大腿スペースと股関節の形態学的特徴の間のレントゲン学的相関性
DOI
10.2214/AJR.17.18465
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR March 2018, Volume 210, Number 3, 608-614
著者名(敬称略)
大西康央 内田 宗志 他
所属
産業医科大学若松病院 整形外科

抄訳

目的:本研究の目的は、症候性寛骨臼形成不全DDH、境界型DDH、及び大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)を有する患者らの股関節におけるischiofemoralスペースと形態学的所見のレントゲン的相関性を調査することにあった。
対象及び方法:股関節鏡を受けた84患者における108股がLCEAに応じて3群に分けられた:DDH群(LCEA<20度;18股)、境界型DDH群(20度≦LCEA<25度;26股)、及びFAI群(LCEA≧25度;64股)。坐骨大腿ディスタンスがレントゲンによって、そして坐骨大腿スペースと大腿方形筋スペースがMRIによって評価された。術前CTスキャン上の、LCEAのレントゲンパラメータ、femoral neck-shaftアングル、及びfemoral neck anteversionを計測するためにソフトウェアが用いられた。
結果:坐骨大腿ディスタンス、坐骨大腿スペース、及び大腿方形筋スペースは、FAI群におけるよりも、DDH及び境界型DDH群において、有意に小さかった。17mm未満の坐骨大腿スペースを有する股関節の有病率は、FAI群(4/64患者【6%】)におけるよりも、DDH群(10/18患者【56%】)及び境界型DDH群(8/26患者【31%】)において有意に高かった。さらに、8mm未満の大腿方形筋スペースを有する股関節の有病率は、FAI群(0/64患者【0%】)におけるよりも、DDH群(2/18【11%】)及び境界型DDH群(3/26【12%】)において有意に高かった。Femoral neck-shaftアングル及びfemoral neck anteversionは、FAI群よりもDDH群において有意に大きかった。

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2018/08/07

LTBP2は肺筋線維芽細胞から分泌され、特発性肺線維症の血清バイオマーカーとなり得る

論文タイトル
LTBP2 is secreted from lung myofibroblasts and is a potential biomarker for idiopathic pulmonary fibrosis
論文タイトル(訳)
LTBP2は肺筋線維芽細胞から分泌され、特発性肺線維症の血清バイオマーカーとなり得る
DOI
10.1042/CS20180435
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Clinical Science Vol.132 No.14 (1565-1580)
著者名(敬称略)
榎本 泰典, 岩下 寿秀 他
所属
浜松医科大学医学部医学科再生・感染病理学講座

抄訳

目的:肺の線維化における重要プロセスである、線維芽細胞からα-smooth muscle actin (αSMA)陽性筋線維芽細胞への分化を反映する、特発性肺線維症(IPF: idiopathic pulmonary fibrosis)のバイオマーカーを探索する。
方法:FACSを用いて、bleomycin誘導性マウス線維化肺から筋線維芽細胞を、未処置マウス肺から定常状態の線維芽細胞を直接単離する。microarrayデータの比較により、Acta2 (αSMAをコードする遺伝子)とシグナル比が近似し、かつ細胞外分泌タンパク質をコードする遺伝子を同定し、ヒトの細胞・組織における再現性を確認する。IPF患者において、血清中の同タンパク質濃度を測定し、臨床情報との関連を後方視的に検証する。
結果:マウス肺筋線維芽細胞に高発現する遺伝子Ltbp2(latent TGFβ-binding protein-2)を同定した。ヒト肺線維芽細胞にTGFβ1を投与しin vitroで筋線維芽細胞へ分化させた場合でも、ACTA2の遺伝子発現上昇と合わせてLTBP2発現が上昇し、また同時に細胞外に分泌されるLTBP2のタンパク質量が増加することがわかった。マウス線維化肺及びヒトIPF肺の免疫染色では共に、線維化した間質領域及び一部の筋線維芽細胞でLTBP2陽性であった。IPF患者の血清LTBP2濃度は健常者と比較して有意に高く、努力性肺活量と負の相関を示した。Coxハザードモデルの結果、血清LTBP2濃度は予後不良例ほど高値であった。
結論:LTBP2はIPFの新規バイオマーカーとして期待される。

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2018/07/24

シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している

論文タイトル
Cholesterol Metabolism Is Enhanced in the Liver and Brain of Children With Citrin Deficiency
論文タイトル(訳)
シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している
DOI
10.1210/jc.2017-02664
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.7 (2488?2497)
著者名(敬称略)
平山 哲 他
所属
順天堂大学医学部・臨床検査医学講座

抄訳

シトリン欠損症は、シトリン遺伝子(SLC25A13)の異常による常染色体劣性遺伝疾患である。発症時期により、新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)と成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)に分類される。シトリンは、肝臓のミトコンドリア膜にあるアスパラギン酸とグルタミン酸の輸送蛋白であり、リンゴ酸‐アスパラギン酸シャトルを構成する。細胞質で生じたNADHの還元エネルギーをミトコンドリア内に輸送し、NADHを産生する。一方、シトリンの機能低下では、細胞質のNADH過剰とNAD+枯渇が生じるが、リンゴ酸‐クエン酸シャトルが代償的に働き、多くのNICCDは、幼児期から学童期に一旦改善する(適応・代償期 = post NICCD期)。post NICCD期のシトリン欠損症は、糖質を嫌い、高脂肪・高蛋白食を好む。高コレステロール血症を生じるが、肝機能は正常であり、一部患児にのみ種々の代謝障害が生じ、思春期以降にCTLN2を発症する。我々は、post NICCD期のシトリン欠損症における高コレステロール血症の病態を明らかにするため、LC-ESI-MS/MSを用いてコレステロール合成・吸収・異化マーカーを測定し、脂質プロファイルとの関連を調べた。対象は、5歳から13歳のシトリン欠損症小児20名と健常小児37名である。シトリン欠損症群は、健常群に比しHDL-C濃度が有意に高く(78 ± 11 vs. 62 ± 14 mg/dL)、LDL-CおよびTG濃度は差がなかった。シトリン欠損症群のコレステロール合成マーカー(lathosterol・7-dehydrocholesterol)と異化マーカー(7α-hydroxycholesterol・27-hydroxycholesterol)は、健常群に比し各々1.5~2.8倍、1.5~3.9倍高かった。中枢神経系でのコレステロール異化マーカーである24S-hydroxycholesterolは、シトリン欠損症群で2.5倍高かった。両群のHDL-C濃度は、胆汁酸合成の副経路で産生される27-hydroxycholesterol濃度と有意な正相関を示した。以上より、post NICCD期のシトリン欠損症は、HDL-Cおよび種々のステロールマーカー濃度が高く、特に肝臓および脳でのコレステロール合成と異化が亢進していると考えられる。

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2018/07/03

20番染色体母性片親性ダイソミー:5症例の身体的および内分泌学的特徴

論文タイトル
Maternal Uniparental Disomy for Chromosome 20: Physical and Endocrinological Characteristics of Five Patients
論文タイトル(訳)
20番染色体母性片親性ダイソミー:5症例の身体的および内分泌学的特徴
DOI
10.1210/jc.2017-02780
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.6 (2083?2088)
著者名(敬称略)
川嶋 明香, 鏡 雅代 他
所属
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部

抄訳

20番染色体がともに母親に由来する20番染色体母性片親性ダイソミー (UPD(20)mat) は、近年、Silver-Russell症候群(SRS)やSGA性低身長と臨床診断された症例で同定、報告されている。20q13領域に存在するGsαをコードするGNAS遺伝子は、組織特異的にインプリンティングされる。本疾患と鏡像関係となる20番染色体父性片親性ダイソミーではGsα発現低下によるホルモン抵抗性を認めるが、UPD(20)matの内分泌学的異常などの詳細な臨床像や発症頻度はこれまで検討されていない。我々は、原因不明のSGA性低身長96例、SRS 55例で、それぞれ3例(5.5%)および1例(1.0%)のUPD(20)matを同定した。さらに1例を加え、計5例を対象に臨床像を検討した。2例で血清Ca軽度高値を示した。1例で低TSHを示した。本研究はUPD(20)mat症例におけるホルモン受容体の感受性亢進を示唆した。

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2018/07/02

マウスモデルにおけるglucose-dependent insulinotropic polypeptideの末梢動脈リモデリング抑制作用

論文タイトル
Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Suppresses Peripheral Arterial Remodeling in Male Mice
論文タイトル(訳)
マウスモデルにおけるglucose-dependent insulinotropic polypeptideの末梢動脈リモデリング抑制作用
DOI
10.1210/en.2018-00336
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.7 (2717?2732)
著者名(敬称略)
森 雄作 他
所属
昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門

抄訳

インクレチンのglucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は心血管系への直接的な作用を示す。本研究は、マウスの大腿動脈ワイヤー傷害モデルを用いてGIPの末梢動脈リモデリングに対する作用を評価した。野生型のマウスにGIPを持続投与することで動脈リモデリング(新生内膜過形成)が抑制された。この作用は一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬の同時投与で消失したことから、NOの関与が示唆された。反対に、GIP受容体をノックアウトすると動脈リモデリングが悪化した。培養のヒト臍帯静脈内皮細胞において、GIPは細胞内カルシウム濃度を増加させ、AMP-activated protein kinase (AMPK)依存的にNO産生を促進した。GIPはリン酸化AMPKを増加させ、この作用はカルシウムを介したシグナル伝達に関与するphospholipase Cとcalcium-calmodulin-dependent protein kinase kinaseの阻害で抑制された。さらにGIPの効果は、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスと高血糖で培養したヒト臍帯静脈内皮細胞においても同様に認められた。本研究から、マウスモデルにおいてGIPが末梢動脈のリモデリングを抑制し、この作用に血管内皮細胞におけるカルシウムを介したAMPKの活性化が関与することが示された。

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