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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2014/08/06

鉄の膜輸送に関与するシャペロン蛋白質

論文タイトル
Chaperone protein involved in transmembrane transport of iron
論文タイトル(訳)
鉄の膜輸送に関与するシャペロン蛋白質
DOI
10.1042/BJ20140225
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.462 No.1 25?37
著者名(敬称略)
簗取 いずみ、岸 文雄 他
所属
川崎医科大学 分子生物学2(遺伝学)

抄訳

鉄は生命にとって必須の分子であり、様々な補酵素として機能する。一方、活性酸素の産生に深く関与している。そのため、細胞内鉄量を厳密に制御することが重要である。鉄を細胞内に取り込む主な分子は二価鉄膜輸送体DMT1である。鉄は酸化ストレスの原因になるにも関わらず、DMT1によって取り込まれた鉄は細胞質内の“鉄イオンプール”に送られると長く信じられてきた。我々は、DMT1が取り込んだ二価鉄イオンを細胞質側で受容し輸送する分子があるという仮説のもと、解析を進めた。その結果、DMT1にポリC結合蛋白質(PCBP2)が結合することを見出した。DMT1又はPCBP2をノックダウンすると、細胞質内への鉄の取り込みが抑制された。さらに、鉄負荷DMT1はPCBP2と結合するが、鉄除去DMT1にはPCBP2が結合しないことを示した。即ち1) DMT1に鉄が取り込まれる、2) DMT1にPCBP2が結合、3) PCBP2へと鉄が渡される、4) DMT1から鉄結合PCBP2が乖離する、さらに5) 鉄排出を担う膜輸送体フェロポルチンFPN1と鉄結合PCBP2の間にも同様な結合を確認した。このように、膜輸送分子と細胞質の間で鉄の受け渡し機構が存在していることを証明し、PCBP2は「鉄のシャペロン分子」として“Gateway keeper”の役割を果たしていることが明らかになった。

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2014/07/25

コフィリン分子のアクチン線維への協同的結合の超解像イメージング

論文タイトル
Single-molecule imaging and kinetic analysis of cooperative cofilin?actin filament interactions
論文タイトル(訳)
コフィリン分子のアクチン線維への協同的結合の超解像イメージング
DOI
10.1073/pnas.1321451111
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
2014 111(27) 9953-9958; published ahead of print June 23, 2014
著者名(敬称略)
早川 公英、榊原 正太郎、曽我部 正博、辰巳 仁史
所属
名古屋大学大学院 医学系研究科 細胞情報医学専攻 細胞生物物理学・イメージング生理学、 メカノバイオロジーラボ

抄訳

ヘモグロビンは4つのサブユニットからなり、各サブユニットに1分子の酸素が結合する。一つの酸素分子が結合すると別(アロ)のサブユニットの構造変化を引き起こして、さらなる酸素分子の結合が容易になる。このような促進反応はアロステリック効果として知られ、その仕組みを知るために膨大な研究が行われてきた。しかしアロステリック効果はタンパク質のサブユニットスケールの微小空間で起きる現象なので、その反応過程を溶液中で直接観察した例はない。タンパク質アクチンの重合により形成されるアクチン線維にアクチン調節タンパク質コフィリンが結合する。このコフィリンの結合には正の協同性があり、コフィリンの結合によるアクチン線維の構造変化がこの協同性を生むと考えられている。この研究では超高解像蛍光顕微鏡を用いてアクチン線維へのコフィリン分子の結合が更なるコフィリン分子の結合を促進することを示し、それらの結合位置を超解像測定してコフィリンの結合で結合促進が生じる距離、すなわちアロステリック効果が到達する距離を世界に先駆けて明らかにした。また、コフィリン結合部位でのアクチン線維の揺らぎを分析し、コフィリンの結合による協同的結合促進(アロステリック効果)の分子メカニズムの一端を明らかにした。

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2014/07/25

昆虫とボルバキアの栄養相利共生関係の進化的起源

論文タイトル
Evolutionary origin of insect?Wolbachia nutritional mutualism
論文タイトル(訳)
昆虫とボルバキアの栄養相利共生関係の進化的起源
DOI
10.1073/pnas.1409284111
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
2014 111 (28) 10257-10262; published ahead of print June 30, 2014
著者名(敬称略)
二河 成男 深津武馬 他
所属
独立行政法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ

抄訳

昆虫と細菌の栄養相利共生は、あらゆる共生関係のうちで最も高度なものの1つであり、しばしば宿主と共生者はまるで一つの生命体のように統合され、お互いなしでは生きていけない。しかしこのような必須共生細菌も、もとをたどれば自由生活性の細菌に由来するはずである。どのようにして高度な必須相利共生が、より一般的な関係から生じたのかは進化的に興味深い。本研究では、昆虫類における共生細菌ボルバキアとの栄養相利共生に着目してこの問題に取り組んだ。ボルバキアは多様な昆虫類に普遍的にみられ、一般には宿主昆虫にとって必須でない寄生的な共生細菌であるが、トコジラミ(=南京虫)に共生するボルバキア系統wCleは例外で、宿主の成長および繁殖に必須である。このボルバキアwCleの1,250,060塩基対の全ゲノム配列を決定したところ、全般的なゲノム構造は他の寄生的なボルバキア系統とそっくりであったが、例外的な特徴として完全なビオチン(=ビタミンB7)合成経路を含むオペロンが存在していた。このビオチンオペロンは過去に共感染していた他の共生細菌から遺伝子水平転移により獲得したものと推定された。栄養生理学的実験により、ボルバキアwCleは確かに宿主体内でビオチンを合成しており、そのビオチンが宿主の適応度に有意に寄与していることが示された。これらの知見は、ビオチン合成遺伝子クラスターの獲得がボルバキアとトコジラミの栄養相利共生関係の基盤となったことを強く示唆しており、任意共生から必須共生への進化が遺伝子水平転移により促進されたことが明らかになった。

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2014/07/16

日本で分離されたネコモルビリウイルスの遺伝的多様性

論文タイトル
Genetic diversity of feline morbilliviruses isolated in Japan
論文タイトル(訳)
日本で分離されたネコモルビリウイルスの遺伝的多様性
DOI
10.1099/vir.0.065029-0
ジャーナル名
Journal of General Virology Society for General Microbiology
巻号
July 2014 vol. 95 no. Pt 7 1464-1468
著者名(敬称略)
坂口 翔一、宮沢 孝幸 他
所属
京都大学ウイルス研究所 細胞生物学研究部門 信号伝達学研究分野

抄訳

ネコモルビリウイルス(feline morbillivirus:FmoPV)感染症は、ネコの新興ウイルス感染症であり、尿細管間質性腎炎との関連が疑われている。FmoPVは中国で2012年に初めて報告されたが、他の国におけるウイルス分離の報告はなかった。我々は日本で初めてFmoPVの分離に成功し、その性状を調べたので報告する。日本国内の動物病院を受診したイエネコ13頭の尿をRT-PCR検査したところ、3頭が陽性と判定された。これらの陽性個体からFmoPVを3株分離した。FmoPVに感染したCRFK細胞では融合を伴うCPEが観察され、間接蛍光抗体法によりFmoPVのN蛋白質が検出された。また電子顕微鏡による観察では、多形性のウイルス粒子のエンベロープ上に明瞭な糖蛋白質のスパイクがみられた。HおよびL遺伝子の系統樹解析ではFmoPVの遺伝的多様性が見られたが、正の選択は受けていないことがわかった。

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2014/07/10

DAPK3は平滑筋細胞の増殖・遊走を刺激することで血管壁リモデリングを促進する

論文タイトル
Death-associated protein kinase 3 mediates vascular structural remodelling via stimulating smooth muscle cell proliferation and migration
論文タイトル(訳)
DAPK3は平滑筋細胞の増殖・遊走を刺激することで血管壁リモデリングを促進する
DOI
10.1042/CS20130591
ジャーナル名
Clinical Science Biochemical Society
巻号
Vol.127 No.8 539?548
著者名(敬称略)
臼井 達哉、山脇 英之 他
所属
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医薬理学

抄訳

Death-associated protein kinase 3 (DAPK3)は別名zipper-interacting kinase (ZIPK)としても知られるセリン・スレオニンキナーゼで、その主たる機能は細胞死や平滑筋収縮の調節であることが報告されている。加えて、我々のグループはこれまでにDAPK3の蛋白質発現が自然発症高血圧ラット(SHR)の血管組織で増加し、血管の炎症性反応を促進することで高血圧症の進展に関わることを報告してきた。本研究では、高血圧進展に関わる他の重要な病態プロセスである血管平滑筋の増殖・遊走に及ぼすDAPK3の影響をin vitro, ex vivo, in vivoにおいて検討した。その結果、DAPK3は血小板由来増殖因子PDGF-BBによるp38/HSP27シグナルの活性化を介して平滑筋細胞の増殖・遊走と新生血管内膜の形成を促進することを明らかにした。本研究結果からDAPK3は高血圧症治療に対する新たな分子標的となる可能性が示唆された。

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2014/06/30

日本で分離されたアシネトバクター属菌の流行型・非流行型の遺伝子型別とカルバペネム耐性遺伝子

論文タイトル
Distribution of carbapenem resistance determinants among epidemic and non-epidemic types of Acinetobacter species in Japan
論文タイトル(訳)
日本で分離されたアシネトバクター属菌の流行型・非流行型の遺伝子型別とカルバペネム耐性遺伝子
DOI
10.1099/jmm.0.069138-0
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology Society for General Microbiology
巻号
June 2014 vol.63 no. Pt 6 870-877
著者名(敬称略)
松井 真理 他
所属
国立感染症研究所 細菌第二部

抄訳

アシネトバクター属菌(Acinetobacter spp.)の薬剤耐性化・院内感染事例の増加は、Acinetobacter baumannii流行型(epidemic ST-AB)と呼ばれる特定の遺伝型株の広がりと関連があると言われている。一方で、A. baumannii非流行型(non-epidemic ST-AB)に関する報告は少ない。我々は、日本の臨床分離アシネトバクター属菌87株をepidemic-ST AB(31株)、non-epidemic ST-AB(15株)、他のアシネトバクター属菌(non-baumannii Acinetobacter spp.;41株)の3群に分類し、カルバペネム耐性遺伝子と薬剤感受性を比較した。カルバペネム耐性遺伝子に関して、epidemic ST-ABはOXA-23型、OXA-51型β-ラクタマーゼ遺伝子を保有したのに対し、non-epidemic ST-ABとnon-baumannii Acinetobacter spp.は、OXA-58型β-ラクタマーゼ遺伝子、メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子を保有していた。解析したepidemic ST-ABのうち48%が多剤耐性であり、non-epidemic ST-ABやnon-baumannii Acinetobacter spp.に比べ多剤耐性株の割合は有意に高かった。特にepidemic ST-ABのフルオロキノロン耐性率は、極めて高かった。今回の結果から、カルバペネム耐性遺伝子や薬剤感受性において、non-epidemic ST-ABは、non-baumannii Acinetobacter spp.と同様の特徴を示し、同じ種であるepidemic ST-ABとは異なる特徴を持つことが明らかとなった。

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2014/06/16

ミズナラ(Quercus crispula)の樹皮から分離した新種 Paenibacillus shirakamiensis

論文タイトル
Paenibacillus shirakamiensis sp. nov., isolated from the trunk surface of a Japanese oak (Quercus crispula)
論文タイトル(訳)
ミズナラ(Quercus crispula)の樹皮から分離した新種 Paenibacillus shirakamiensis
DOI
10.1099/ijs.0.055772-0
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology  Society for General Microbiology
巻号
IJSEM May 2014 vol. 64 no. Pt 5 1763-1769
著者名(敬称略)
殿内 暁夫 他
所属
弘前大学 農学生命科学部 分子生命科学科

抄訳

日本の白神山地に生育するミズナラ(Quercus crispula)の樹皮から細菌株P-1Tを分離した。P-1T株はグラム染色陰性で、楕円形の内生胞子を形成する好気的な、わずかに好酸性の、幅0.8 µm長さ2–5 µmの桿状細菌で、周鞭毛によって運動した。P-1T株は種々の炭水化物を増殖基質として利用したが、増殖試験に用いた有機酸は利用しなかった。主要な細胞脂肪酸はanteiso-C15?:?0で、全細胞脂肪酸の64.2%を占めていた。主要な呼吸鎖キノンはメナキノン7 (MK-7)であった。P-1T株の細胞膜には極性脂質として、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、未同定アミノ脂質が4種、未同定リン脂質が1種、未同定極性脂質が2種含まれていた。P-1T株はPaenibacillus pini S22T (96.6?%), Paenibacillus chibensis JCM 9905T (96.1?%)およびPaenibacillus anaericanus MH21T (95.9?%)に高い16S rRNA遺伝子配列類似性を示した(カッコ内は類似度)。DNAのG+C含量は43.9 mol%であった。これらのデータはP-1T株がPaenibacillus属内の新規種を代表することを示しており、筆者らは本種の名称として新種Paenibacillus shirakamiensisを提案する。本種の基準株はP-1T (NBRC 109471T?=?DSM 26806T?=?KCTC 33126T?=?CIP 110571T)である。

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2014/06/11

転写因子C/EBPβはSF-1と協調してプロゲステロン産生を転写レベルで調節する

論文タイトル
C/EBPβ (CCAAT/enhancer-binding protein β) mediates progesterone production through transcriptional regulation in co-operation with SF-1 (steroidogenic factor-1)
論文タイトル(訳)
転写因子C/EBPβはSF-1と協調してプロゲステロン産生を転写レベルで調節する
DOI
10.1042/BJ20131522
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Biochemical Journal Vol.460 No.3 459?471
著者名(敬称略)
水谷 哲也 他
所属
福井大学 医学部 医学科 生命情報医科学講座 分子生体情報学領域

抄訳

転写因子SF-1は性腺や副腎のマスター因子として、その発生・分化およびステロイドホルモン産生に必須の因子である。本研究では、核内で形成するSF-1複合体構成因子を同定することでSF-1の作用機序の解明を試みた。免疫沈降とMALDI-TOF MS/MS解析よりSF-1複合体構成因子の同定を試みたところ、約20のSF-1複合体構成因子を同定した。その中から排卵・黄体化に必須な転写因子C/EBPβに着目し、プロゲステロン産生に対する影響を検討した。その結果、プロゲステロン産生に関連するSTAR、CYP11A1およびHSD3B2の遺伝子発現にC/EBPβが関与することが示された。さらにその転写調節メカニズムを検討したところ、すべての遺伝子上流域にSF-1とC/EBPβの結合領域が近接して存在し、SF-1とC/EBPβが協調することで転写調節していることが示された。以上の結果から、C/EBPβはSF-1と共に転写レベルでプロゲステロン産生を調節する重要な転写因子であることが示された。

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2014/04/16

術前放射線化学療法および食道切除術を施行した食道腺癌の局所再発率とサルベージ治療の予後に関する検討

論文タイトル
Locoregional Failure Rate After Preoperative Chemoradiation of Esophageal Adenocarcinoma and the Outcomes of Salvage Strategies
論文タイトル(訳)
術前放射線化学療法および食道切除術を施行した食道腺癌の局所再発率とサルベージ治療の予後に関する検討
DOI
10.1200/JCO.2013.51.7250
ジャーナル名
Journal of Clinical Oncology American Society of Clinical Oncology
巻号
JCO Dec 1, 2013:4306-4310; published online on October 21, 2013
著者名(敬称略)
須藤一起、Jaffer A. Ajani 他
所属
The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Department of Gastrointestinal Medical Oncology

抄訳

食道腺癌に対する局所治療後サーベイランスの一番の目的は、治癒的治療の対象となりうる局所再発を発見することである。しかし、術前放射線化学療法および食道切除術後サーベイランスのベネフィットに関する研究報告はない。 対象及び方法;食道および胃食道接合部腺癌に対して、米国の標準治療である術前放射線化学療法および食道切除術を当院で施行した518人の患者を対象とした。治療後の局所再発頻度とタイミングを後ろ向きに検討した。また、局所再発後の治療成績に関しても検討した。 結果;遠隔転移なしの局所再発を認めた患者は27人(5%)であった。27人のうち89%は術後3年以内の再発であった。局所再発後の生存期間中央値は17ヶ月で、局所再発後2年以上生存した患者は10人(サーベイランスをうけた全518人の2%)であった。 結論;我々は多くの施設で行われているような治療後の定期的サーベイランスを行った。本研究はそのようなサーベイランス戦略に対して疑問を投げかけた。治療後の局所再発率が低いことは良い結果であったが、たとえ局所再発を発見してもその予後は不良であると判明した。本研究はエビデンスに基づいたサーベイランス戦略の構築に貢献できる。

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2014/04/16

シアノバクテリア概日時計蛋白質KaiCの自己リン酸化は、CIIドメインのATPase活性部位におけるADP-ATP交換反応によって促進される。

論文タイトル
Exchange of ADP with ATP in the CII ATPase domain promotes autophosphorylation of cyanobacterial clock protein KaiC
論文タイトル(訳)
シアノバクテリア概日時計蛋白質KaiCの自己リン酸化は、CIIドメインのATPase活性部位におけるADP-ATP交換反応によって促進される。
DOI
10.1073/pnas.1319353111
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
111 (12) 4455-4460; published ahead of print March 10, 2014
著者名(敬称略)
大川(西脇)妙子
所属
名古屋大学 大学院理学研究科 生命理学専攻

抄訳

シアノバクテリアの概日リズムは、KaiA、KaiB、KaiCとATPによりin vitroで再構成でき、KaiCのリン酸化状態は約24時間周期で振動する。KaiCは2つのATPaseドメインCI、CIIから成り、CIIは自己リン酸化、自己脱リン酸化活性を併せ持つ。KaiCの脱リン酸化はリン酸化の逆反応を介して起こる。KaiC上のリン酸基はまずADPに転移しATPが合成される。次にATP加水分解により反応が終結する。このことからリン酸化リズムは、自己リン酸化の正、逆両反応の繰り返しにより生じると考えられる。本研究では、KaiAとKaiBはKaiC結合ヌクレオチドを制御することを明らかにした。KaiCは主にADP結合型として存在するが、KaiA はADPの放出とATPの取り込みを促進し、KaiCをATP結合型に変換する。KaiA、KaiB共存下では、KaiBは周期的にKaiAを阻害し、KaiCのヌクレオチド結合状態は概日リズムを示す。これらの結果は、KaiA、KaiBが正、逆両反応を基質供給のレベルで制御していることを示唆する。

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