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国内研究者論文紹介

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日本人論文紹介:一覧

2019/11/18

ヒートショックプロテイン90(HSP90)は風疹ウイルスp150タンパク質の機能性を担保して、ゲノム複製を支援する。

論文タイトル
Heat Shock Protein 90 Ensures the Integrity of Rubella Virus p150 Protein and Supports Viral Replication
論文タイトル(訳)
ヒートショックプロテイン90(HSP90)は風疹ウイルスp150タンパク質の機能性を担保して、ゲノム複製を支援する。
DOI
10.1128/JVI.01142-19
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology  Volume 93, Issue 22
著者名(敬称略)
坂田 真史 他
所属
国立感染症研究所 ウイルス第三部 第二室

抄訳

 風疹ウイルス感染細胞には、ゲノム複製を担う2種の非構造タンパク質、p150とp90が発現する。これらウイルスタンパク質は宿主細胞の様々な因子を利用して、ゲノム複製を行なっていることが予想される。本研究では、宿主細胞のタンパク質恒常性維持を担う分子シャペロンHSP90と非構造タンパク質の関連性を解析した。
 p150とp90は、前駆体ポリプロテインp200がp150領域に位置するウイルスプロテアーゼによって開裂されることにより生成される。この開裂は、ゲノム複製の進行に必須である。我々は、種々の分子生物学的手法を用いて、HSP90がp150領域と相互作用して開裂に関与すること、HSP90のシャペロン活性が開裂後のp150の安定性に寄与することを明らかにした。本知見より、HSP90とp150の相互作用がゲノム複製に重要であることが示唆された。

 

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2019/11/15

GATA2とPU.1は異なる分子機序によってマウス高親和性IgE受容体ベータサブユニット遺伝子(Ms4a2)の発現を制御する

論文タイトル
GATA2 and PU.1 Collaborate To Activate the Expression of the Mouse Ms4a2 Gene, Encoding FcεRIβ, through Distinct Mechanisms
論文タイトル(訳)
GATA2とPU.1は異なる分子機序によってマウス高親和性IgE受容体ベータサブユニット遺伝子(Ms4a2)の発現を制御する
DOI
10.1128/MCB.00314-19
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 39, Issue 22
著者名(敬称略)
大森 慎也、大根田 絹子 他
所属
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 人材育成部門 ゲノム予防医学分野

抄訳

造血系転写因子GATA2とPU.1は、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMCs)において、ともに高親和性IgE受容体ベータ鎖(Ms4a2)の遺伝子発現を正に制御する。本研究ではその分子機序を解明するため、薬剤誘導性ノックアウトまたはsiRNA導入によって、BMMCsでのGATA2またはPU.1の欠失効果を比較した。その結果、両者は欠失によりほぼ同程度にMs4a2の発現量を低下させたが、両者の同時欠失による相乗的/相加的な効果は観察されなかった。クロマチン免疫沈降では、Ms4a2 +10.4 kbp領域にGATA2、PU.1とクロマチンループ因子LDB1が結合し、転写開始点付近(-60 bp)にはGATA2のみが結合していた。これらのGATA2の結合はPU.1の欠失により低下した。さらにゲノム編集によって+10.4 kbp領域を除去するとMs4a2の発現は完全に失われ、マスト細胞表面の高親和性IgE受容体の発現も消失した。以上の結果から、+10.4 kbp領域はMs4a2の発現に必須のシス領域であることが示された。また、GATA2はMs4a2プロモーターを活性化し、PU.1とLDB1はループ形成などクロマチン高次構造の形成と維持に関与することが示唆され、両者の分子機能は異なっていると考えられた。

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2019/11/13

日本におけるKlebsiella pneumoniae血流感染症の臨床像と分子疫学:高病原性株の医療関連感染症への関与

論文タイトル
Clinical and Molecular Characteristics of Klebsiella pneumoniae Isolates Causing Bloodstream Infections in Japan: Occurrence of Hypervirulent Infections in Health Care
論文タイトル(訳)
日本におけるKlebsiella pneumoniae血流感染症の臨床像と分子疫学:高病原性株の医療関連感染症への関与
DOI
10.1128/JCM.01206-19
ジャーナル名
Journal of Clinical Microbiology
巻号
Journal of Clinical Microbiology  Volume 57, Issue 11
著者名(敬称略)
原田 壮平 他
所属
藤田医科大学 医学部 感染症科

抄訳

   Klebsiella pneumoniae(Kp)の一部は莢膜の過剰産生や細菌細胞の鉄取り込みと関連する病原遺伝子を保有する高病原性株(hvKp)であり、市中発症の重症感染症と関連していることが主に東アジア諸国から報告されている。
   今回、日本全国23医療機関におけるKp血流感染症140例の起因菌株の全ゲノム解析結果と臨床情報を対比した。140例のうち26例(18.6%)がhvKpであり、hvKp感染症は肺炎、肝膿瘍、播種性感染症の頻度が有意に高かった(単変量解析)。さらに、他国の報告とは異なり、hvKp血流感染症の半数以上は医療関連あるいは院内感染症として発症しており、院内伝播を背景としたと推測される症例も認められた。hvKpのクローンは多様であり、K1-ST23、K2-ST86などのよく知られたものとともに、K57-ST218, K62-ST36などのこれまではあまり認識されていなかったものも認められた。

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2019/11/11

バロキサビル・マルボキシル(BXM)の馬インフルエンザウイルス(EIV)に対する効果および低感受性ウイルスの検出

論文タイトル
Mutated influenza A virus exhibiting reduced susceptibility to baloxavir marboxil from an experimentally infected horse
論文タイトル(訳)
バロキサビル・マルボキシル(BXM)の馬インフルエンザウイルス(EIV)に対する効果および低感受性ウイルスの検出
DOI
10.1099/jgv.0.001325
ジャーナル名
Journal of General Virology  Microbiology Society
巻号
Journal of General Virology Volume 100, Issue 11
著者名(敬称略)
根本 学、田村 周久 他
所属
日本中央競馬会 競走馬総合研究所

抄訳

 BXMは新規抗インフルエンザウイルス薬であり、ウイルスのPAタンパクの機能を阻害することによって、抗ウイルス効果を発揮する。人医療において2018年から用いられているが、低感受性ウイルスが比較的高率に検出されており問題となりつつある。本研究ではBXMのEIVに対する効果、およびBXM投与馬から低感受性ウイルスが検出されるかを調査した。EIVを6頭の馬に実験感染させ、3頭にBXMを投与し(投与群)、残り3頭は無処置とした(無処置群)。その結果、投与群では臨床症状の軽減および鼻咽頭スワブ中のウイルス量の低下が観察された。このことからBXMはEIVに対して有効であると考えられた。投与群から検出されたウイルスのPA遺伝子を解析したところ、1頭から38番目のアミノ酸がイソロイシンからスレオニンに変異しているウイルスが検出された。変異ウイルスは、通常のウイルスと比較してウイルス増殖抑制のために16倍量のBXMを必要とした。この変異による感受性の低下はヒトインフルエンザウイルスでも観察されている。この結果から、BXM投与によってEIVにおいても低感受性ウイルスが容易に誘導される可能性があるといえる。

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2019/11/01

Comamonas testosteroni TA441 によるステロイド化合物の分解:開裂したB環のβ酸化による分解全体の解明



論文タイトル

Steroid Degradation in Comamonas testosteroni TA441: Identification of the Entire β-Oxidation Cycle of the Cleaved B Ring

論文タイトル(訳)

Comamonas testosteroni TA441 によるステロイド化合物の分解:開裂したB環のβ酸化による分解全体の解明

DOI

10.1128/AEM.01204-19

ジャーナル名

Applied and Environmental Microbiology

巻号

Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 20

著者名(敬称略)

堀之内 正枝 他

所属

理化学研究所 加藤分子物性研究室


抄訳


  Comamonas testosteroni TA441 は、ステロイド化合物のA,B環をA環の芳香環化を経て開裂し、生成した9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acidを主にβ酸化により完全分解する。本研究では、ScdE (3-hydroxylacyl CoA-dehydrogenase)及びScdF (3-ketoacyl-CoA transferase)をコードする遺伝子の単離、解析により、CD環開裂に必須な、B環由来側鎖のβ酸化サイクルによる分解全体を明らかとした。ステロイド分解遺伝子はクラスターを形成しており、β酸化に関わる遺伝子群に類似の遺伝子群は、Mycobacterium tuberculosis H37Rv等、多くの細菌に見いだされる。これらクラスターの構造の違いが、細菌のステロイド分解遺伝子群の進化の解明の手がかりとなる可能性も考えられる。


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2019/10/30

優性遺伝性GH1遺伝子異常症モデルマウスのGH分泌不全は、GhrhrおよびGhプロモーター活性の低下による

論文タイトル
Decreased Activity of the Ghrhr and Gh Promoters Causes Dominantly Inherited GH Deficiency in Humanized GH1 Mouse Models
論文タイトル(訳)
優性遺伝性GH1遺伝子異常症モデルマウスのGH分泌不全は、GhrhrおよびGhプロモーター活性の低下による
DOI
10.1210/en.2019-00306
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.11 (2673–2691)
著者名(敬称略)
有安 大典, 荒木 喜美 他
所属
熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野

抄訳

 優性遺伝性GH1遺伝子異常症(本症)における、exon 3が欠失した変異型GH(Δ3 GH)による優性阻害効果の詳細は不明である。我々は、Cre-変異loxによる遺伝子置換システムを用いて、マウス内在性Gh遺伝子の両アリルを、ヒトGH1遺伝子に置換したモデルマウスを作製した。作出した本症モデルマウスは、健常コントロールモデルと比べて明らかな成長障害を呈し、ヒト本症の臨床像を再現した。各種検討の結果、Δ3 GHによる優性阻害効果はGH1 mRNAが低下することにより発揮されていた。さらに、LacZノックインマウスを用いた検討により、小胞体に局在するΔ3 GHにより、Ghrhr遺伝子のpromoter活性が低下することが明らかになった。最後に我々は近年同定されたCREB3ファミリーに着目し、Δ3 GHによる小胞体ストレスにより核内に移行するCREB3L2が低下することが、GhrhrおよびGh promoter活性低下に関与することを突き止めた。1994年の初報以来不明であった本症GH分泌不全の解明のためのモデルマウスの重要性について、先行研究結果と共に考察を加える。

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2019/10/18

4-amino-2-sulfanylbenzoic acidはサブクラスB3メタロ-β-ラクタマーゼ特異的阻害剤であり、メタロ-β-ラクタマーゼのサブクラス識別を可能とする

論文タイトル
4-Amino-2-Sulfanylbenzoic Acid as a Potent Subclass B3 Metallo-β-Lactamase-Specific Inhibitor Applicable for Distinguishing Metallo-β-Lactamase Subclasses
論文タイトル(訳)
4-amino-2-sulfanylbenzoic acidはサブクラスB3メタロ-β-ラクタマーゼ特異的阻害剤であり、メタロ-β-ラクタマーゼのサブクラス識別を可能とする
DOI
10.1128/AAC.01197-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 63, Issue 10
著者名(敬称略)
和知野 純一、荒川 宜親 他
所属
名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学

抄訳

近年、「最後の切り札」とされるカルバペネム系薬に耐性を獲得した病原細菌の蔓延が問題となっている。病原細菌における主要なカルバペネム耐性機構は、カルバペネム系薬を分解するmetallo-β-lactamase(MBL)の産生である。著者らは、4-amino-2-sulfanylbenzoic acid (以下ASB)がMBLの1つであるSMB-1を強く阻害することを見出した。ASBはチメロサール(ワクチンの防腐剤の一種)の代謝物であるチオサリチル酸を基に改良された化合物である。著者らは、ASBがカルボキシル基とチオール基を介し、MBLの活性中心にある2つの亜鉛イオンに結合することをX線結晶構造解析によりあきらかにした。また、ASBはMBLの中でもサブクラスB3に属するMBLを特異的に阻害することがわかった。これらの結果から、ASBの特異性を利用し、MBLのサブクラス識別が可能であると考えられた。さらに、マウス全身感染モデルを用いた実験結果から、メロペネムなどのカルバペネム系薬とASBの併用が、MBL産生菌による感染症の治療に有用である可能性が示唆された。

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2019/10/17

変異毒素性ショック症候群毒素-1ワクチン免疫記憶T細胞が産生するインターロイキン-10 (IL-10)はIL-17産生を低下させ黄色ブドウ球菌感染に対する防御効果を消失させる

論文タイトル
Interleukin-10 (IL-10) Produced by Mutant Toxic Shock Syndrome Toxin 1 Vaccine-Induced Memory T Cells Downregulates IL-17 Production and Abrogates the Protective Effect against Staphylococcus aureus Infection
論文タイトル(訳)
変異毒素性ショック症候群毒素-1ワクチン免疫記憶T細胞が産生するインターロイキン-10 (IL-10)はIL-17産生を低下させ黄色ブドウ球菌感染に対する防御効果を消失させる
DOI
10.1128/IAI.00494-19
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 87, Issue 10
著者名(敬称略)
成田 浩司、中根 明夫 他
所属
弘前大学大学院 医学研究科 感染生体防御学講座

抄訳

長期免疫記憶はワクチンの予防効果に必須である。著者らは、黄色ブドウ球菌 (S. aureus)の産生するスーパー抗原毒素である毒素性ショック症候群毒素-1の弱毒変異タンパク質(mTSST-1)で免疫したマウスにおいて、獲得免疫成立早期のS. aureus感染に対し17型ヘルパーT (Th17)細胞依存性にワクチン効果が認められることを報告した。Th17細胞には可塑性があるため、本研究では、mTSST-1免疫による長期記憶期のワクチン効果を検討したところ、S. aureus感染に対するワクチン効果は認められなかった。この時期の脾臓由来CD4+T細胞とマクロファージをmTSST-1刺激すると、サイトカイン応答はIL-17AからIL-10に変換していた。そこで、抗IL-10抗体添加の影響を見たところ、IL-17A産生が回復した。また、S. aureus感染前のmTSST-1免疫マウスに抗IL-10抗体を投与すると、脾臓のIL-17mRNA発現とワクチン効果が回復した。これらの結果から、mTSST-1免疫マウスの長期記憶期ではIL-10産生が主体となりIL-17A依存性感染防御を抑制することが理由で、ワクチン効果が発揮されないことが示唆された。

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2019/10/16

糖尿病の有無別にみた血糖・血圧・脂質・喫煙の各管理目標達成状況と冠動脈疾患発症の関連

論文タイトル
Relationship Between Number of Multiple Risk Factors and Coronary Artery Disease Risk With and Without Diabetes Mellitus
論文タイトル(訳)
糖尿病の有無別にみた血糖・血圧・脂質・喫煙の各管理目標達成状況と冠動脈疾患発症の関連
DOI
10.1210/jc.2019-00168
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.11 (5084–5090)
著者名(敬称略)
山田 万祐子, 藤原 和哉 他
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科

抄訳

リアルワールドデータを用い、糖尿病の有無別に、冠動脈疾患のリスク因子(血圧、LDLコレステロール、HbA1c、喫煙)の管理目標の達成状況、および管理目標の達成状況とその後の冠動脈疾患発症の関連を検討した。対象は日本全国からなる220,894名。健診結果とレセプトデータを用いて、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、喫煙の管理目標の達成状況と冠動脈疾患発症の関連を検討した。糖尿病・非糖尿病群ともに、2つ管理目標を達成していた対象の割合が最も多かった(39.6%、36.4%)。糖尿病の有無に関わらず、管理目標を2つ達成している群と比較して、1つ達成している群、いずれも達成していなかった群では、冠動脈疾患発症リスクがそれぞれ2倍、4倍上昇した。管理目標を2つ達成した非糖尿病群と比較して、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、喫煙のいずれの管理目標も達成していなかった糖尿病群では冠動脈疾患発症リスクが約9.4倍上昇していたが、一方で、4つ全ての管理目標を達成することで、冠動脈発症リスクは同程度まで低下していた。糖尿病の有無に関わらず、修正可能なリスク因子の管理目標を達成することは冠動脈疾患発症の抑制に有用な可能性があり、糖尿病患者で4つ全ての管理目標を達成することで、非糖尿患者で2つ管理目標を達成している群と同等までリスクが低下する可能性あることが示唆された。

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2019/10/16

みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析

論文タイトル
Pseudofructophilic Leuconostoc citreum Strain F192-5, Isolated from Satsuma Mandarin Peel
論文タイトル(訳)
みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析
DOI
10.1128/AEM.01077-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 20
著者名(敬称略)
前野 慎太朗、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科

抄訳

 フルクトフィリック乳酸菌 (FLAB) は花や果物といったフルクトース豊富な環境に生息および適応している乳酸菌である。筆者らがみかんの皮から分離した乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株は他の L. citreum 菌株と大きく異なり、一般的な生物が生育基質として最も好むグルコースをほとんど代謝しない一方で、フルクトースを好むという FLAB 様の特徴を菌株特異的に示す。既知の FLAB は糖代謝関連遺伝子の特異的欠損を含むゲノムレベルでの退行的進化を行っていることを我々はこれまでに報告しているが、当該菌株ではこのゲノムレベルでの退行的進化は見られなかった。
 FLAB はアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素の活性を有する二機能性タンパク質 (AdhE) をコードする遺伝子 adhE を欠損させているために細胞内の酸化還元バランスを欠き、グルコースを代謝しないことが知られている。しかし、本菌株は adhE を有しているもののプロモーターの欠落により当該遺伝子が発現していないため、グルコースを代謝することができない事を明らかにした。FLAB はフルクトースを代謝することでグルコース代謝時よりも効率よくエネルギーを生産することが知られていることから、本菌株の菌株特異的な特徴は、多様な生息域を有する乳酸菌の生存戦略の一環であると考えられた。

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