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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2012/09/24

染色体高次構造とS期チェックポイントを減数分裂期組換えの開始と連係させる中心的な因子

論文タイトル
A Central Coupler for Recombination Initiation Linking Chromosome Architecture to S Phase Checkpoint 
論文タイトル(訳)
染色体高次構造とS期チェックポイントを減数分裂期組換えの開始と連係させる中心的な因子
DOI
10.1016/j.molcel.2012.06.023
ジャーナル名
Molecular Cell Cell Press
巻号
Molecular Cell, Volume 47, Issue 5, 722-733, 26 July 2012
著者名(敬称略)
三好知一郎、伊藤将、太田邦史 他
所属
東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

抄訳

真核生物は、減数分裂期において両親由来のゲノムDNAを組換え、子孫に遺伝的多様性をもたらす。減数分裂期に入るとDNAが複製され、次いで染色体に「軸」と「ループ」と呼ばれる高次構造が形成される。ループ部には「組換えホットスポット」という領域が含まれ、この領域でDNAの複製後に、DNA二本鎖切断 (DSB: DNA double-strand break) が導入されることで、組換えが開始される。DSB形成に関わる因子は数多く単離されてきたが、その時空間的な制御メカニズムについては不明な点が多く残されていた。
 今回の分裂酵母を用いた解析から、DSB形成に関わるタンパク質群は、「DSBC (DSB core)複合体」と「SFT (seven, fifteen, twenty-four)複合体」の2種の複合体を形成することが分かった。DSBC複合体の中核をなすSpo11という種間で保存されたタンパク質は、基本的にループ部のホットスポットでDSBを導入する。一方、SFT複合体は軸部およびループ部のホットスポットにも結合し、両者を連係させることが示唆された。減数分裂期前DNA複製が完了すると、S期チェックポイントが解除され、Mde2という第3グループのDSB形成因子が発現する。Mde2は、SFT複合体の安定化を介して、軸−ループ間の相互作用を促進することが分かった。さらにMde2は、DSBC複合体構成因子と結合し、Spo11をホットスポット上に呼び込むことも分かった。すなわち、Mde2が、DNA複製、染色体高次構造の構築、DSB形成因子の集合を統合的に制御する、中心的な因子であることが、今回初めて明らかになった。

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2012/09/21

ヒト多能性幹細胞からの高機能性褐色脂肪細胞の作製

論文タイトル
Production of Functional Classical Brown Adipocytes from Human Pluripotent Stem Cells using Specific Hemopoietin Cocktail without Gene Transfer 
論文タイトル(訳)
ヒト多能性幹細胞からの高機能性褐色脂肪細胞の作製
DOI
10.1016/j.cmet.2012.08.001
ジャーナル名
Cell Metabolism Cell Press
巻号
Cell Metabolism, Volume 16, Issue 3, 394-406, 5 September 2012
著者名(敬称略)
西尾美和子、佐伯久美子 他
所属
独立行政法人 国立国際医療研究センター研究所 疾患制御研究部

抄訳

褐色脂肪細胞は、脂肪を燃焼して体熱産生を行う「痩せる脂肪細胞」として知られ、メタボリックシンドローム(以下メタボ)の治療開発に向けて世界中から注目されている。しかしヒト検体の入手は困難であり研究は遅れている。今回、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞)から熱産生能を有する褐色脂肪細胞を高純度に作製する技術が開発された。遺伝子操作を行わず、異種動物細胞や異種動物血清を用いないクリーンな環境下で、独自に開発した「造血性サイトカインカクテル」を用いた2段階培養により約10日間でほぼ純粋な褐色脂肪細胞が得られる。これをマウスに移植すると「耐脂能」と「耐糖能」が向上することが確認された。一方、白色脂肪細胞(いわゆる脂肪細胞)を移植したマウスは、耐脂能は向上したが耐糖能は悪化した。驚くべきことに、ヒト多能性幹細胞由来褐色脂肪細胞の同時移植により白色脂肪細胞移植に伴う耐糖能障害は正常化され、メタボ治療開発に向けた大きな一歩となった。さらにヒト多能性幹細胞由来褐色脂肪細胞が造血支持能を発揮するという意外な一面も示され、ヒト褐色脂肪細胞研究の新たな可能性が提示された。

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2012/08/30

間質性肺炎に合併する肺癌の形態的・局在性の特徴:その初期像について

論文タイトル
Lung Cancer in Chronic Interstitial Pneumonia: Early Manifestation From Serial CT Observations 
論文タイトル(訳)
間質性肺炎に合併する肺癌の形態的・局在性の特徴:その初期像について
DOI
10.2214/AJR.11.7516
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR July 2012 vol. 199 no. 1 85-90
著者名(敬称略)
吉田理佳、荒川浩明 他
所属
獨協医科大学放射線科

抄訳

目的;間質性肺炎(IP)に合併する肺癌の初期像の特徴を明らかにする。
方法;間質性肺炎経過観察中の患者のうち1999年から2010年に肺癌と診断され、初回CTで癌が無いことが確認されている22名(23病変)を対象とした。2名の放射線専門医が独立して後ろ向きにCT画像を参照した。
結果;経過観察期間は4.1年、CT撮影回数は8回、腫瘍径は陰影出現時11mm、生検診断時22mm、陰影出現から臨床的診断日までは409日であった(いずれも中央値)。発生部位は、15病変 (65.2%) は線維性嚢包(蜂巣肺や傍隔壁肺気腫)と正常肺の境界に生じ、4病変はすりガラス影内、1病変は蜂巣肺内に生じた。形状は12病変round or oval, 8病変ill-defined stellate shape、2病変band-like、1病変は境界不明瞭な肺野濃度上昇であった。
結論; IP合併肺癌の初期像は、約2分の1の病変はstellate shapeやband-likeで初期は腫瘍として認識することが難しい。大部分の腫瘍は蜂巣肺と正常肺の境界に生じ、蜂巣肺内に生ずることは稀である。

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2012/08/16

福島第一原子力発電所職員へのメンタルヘルスサポートの立ち上げ

論文タイトル
Launch of Mental Health Support to the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Workers 
論文タイトル(訳)
福島第一原子力発電所職員へのメンタルヘルスサポートの立ち上げ
DOI
10.1176/appi.ajp.2012.12030387
ジャーナル名
American Journal of Psychiatry American Psychiatric Publishing
巻号
American Journal of Psychiatry, August 01, 2012 VOL. 169, No. 8, 784-784
著者名(敬称略)
重村淳(筆頭筆者)、谷川武(連絡筆者) 他
所属
防衛医科大学校 精神科学講座愛媛大学大学院医学系研究科 医療環境情報解析学講座 公衆衛生・健康医学分野

抄訳

福島第一原子力発電所事故は、発電所の爆発、原子炉のメルトダウン、放射性物質の放出などで、1986年のチェルノブイリ事故以来最悪の原子力災害となり、医療者もしばらく警戒区域内に入れなかった。谷川武医師は第一原発および隣接する第二原発の非常勤産業医を長年務めていたが、警戒区域に立ち入りを許可されたのは4月半ばだった。職員たちの壮絶な体験を知り、谷川氏はメディアを通じてメンタルヘルス支援を訴え、筆者と協働することとなった。
 この写真は2011年5月6日午後8時16分、筆者が精神科医師として事故後はじめて現地入りした際に、第一原発職員が寝泊りする第二原発体育館で撮影したものである。再体験、回避、過覚醒、解離、被曝への恐怖など多彩なストレス反応が見られ、同僚・身内の死亡への悲嘆と罪責感も顕著だった。職員のアパートに「ここから出て行け」と張り紙がされるなど激しい差別体験により、職員一人ひとりが事故の責任をすべて負っているかのような加害者意識に苛まれていた。何千人もの職員の個別対応は不可能な状態のなか、重症度のトリアージを行わざるをえなかった。ストレス対処などのカウンセリングより真っ先に行ったのは、彼らに最大限の敬意を表すことだった。
 この支援は後に政府の支援を経て、現在も続けているが、現地では常勤精神科医師が不在な状態である。廃炉までには数十年かかると予想され、悲嘆反応を持つ者、高線量被曝者、死の危険性にさらされた者など、リスクの高い者を中心に、継続的なケアが求められる。しかし、このような英雄たちへのケアを継続するためには、高い使命感を持つ専門家、資金、組織的システムが喫緊の課題となっている。

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2012/07/30

肥満に伴う高レプチン血症が,肝において少量のエンドトキシンに過剰反応をきたし,非アルコール性脂肪肝炎の進展に関与する

論文タイトル
Hyperresponsivity to Low-Dose Endotoxin during Progression to Nonalcoholic Steatohepatitis Is Regulated by Leptin-Mediated Signaling 
論文タイトル(訳)
肥満に伴う高レプチン血症が,肝において少量のエンドトキシンに過剰反応をきたし,非アルコール性脂肪肝炎の進展に関与する
DOI
10.1016/j.cmet.2012.05.012
ジャーナル名
Cell Metabolism Cell Press
巻号
Cell Metabolism, Volume 16, Issue 1, 44-54, 3 July 2012
著者名(敬称略)
今城健人、中島淳 他
所属
横浜市立大学消化器内科学教室

抄訳

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)発症には腸管由来エンドトキシンの関与が示唆されているが詳細なメカニズムは不明である。我々は野生型マウスを用いて,健常肝では炎症や線維化を来さない少量のエンドトキシンに対しても,高脂肪食誘導下脂肪肝ではエンドトキシンの共受容体であるCD14の発現がクッパー細胞で亢進することによりその反応性を亢進させ,著明な炎症及び線維化を惹起することを示した。また,レプチン欠損肥満マウス(ob/ob)では著明な脂肪肝を呈するにも関わらず肝におけるCD14発現が著明に低下することから,レプチンが肝クッパー細胞におけるCD14発現に関与することが示唆された。ヒトにおける検討でもNASHでは血清レプチン値及び肝CD14発現が増加しており,かつ両者には有意な正の相関を認めていた。これらの結果から,肥満に伴う高レプチン血症が少量エンドトキシンに対する肝クッパー細胞の反応性を亢進し,炎症性サイトカインなどを介してNASH病態を進展させる可能性を示唆した。

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2012/07/24

昆虫変態抑制因子Krppel homolog 1の幼若ホルモンによる誘導の転写制御

論文タイトル
Transcriptional regulation of juvenile hormone-mediated induction of Krppel homolog 1, a repressor of insect metamorphosis 
論文タイトル(訳)
昆虫変態抑制因子Krppel homolog 1の幼若ホルモンによる誘導の転写制御
DOI
10.1073/pnas.1204951109
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2012 109 (29) 11729-11734; published ahead of print July 2, 2012, doi:10.1073/pnas.1204951109
著者名(敬称略)
粥川琢巳、篠田徹郎 他
所属
独立行政法人 農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域 昆虫成長制御研究ユニット

抄訳

Krppel homolog 1(kr-h1)は昆虫変態抑制の鍵となる役割を果たしている。Kr-h1は、幼若ホルモン(JH)により、JH受容体methoprene tolerant(Met)を介して誘導されると推定されているが、その機構は不明である。JHによるKr-h1の誘導機構を解明するために、カイコからKr-h1(BmKr-h1)と2種類のMet(BmMet1, BmMet2)をクローニングした。カイコ培養細胞において、BmKr-h1はナノモル以下の濃度の天然JHによって速やかに誘導された。レポーターアッセイによって、BmKr-h1転写開始点の約2キロ上流に141塩基からなるJH応等配列(kJHRE)を特定した。kJHREのコア配列(GGCCTCCACGTG)には、bHLH-PAS転写因子が結合する可能性がある標準的なE-box配列が含まれていた。内在性のJH受容体を欠く哺乳類培養細胞HEK293において、GAL4のDNA結合ドメインとBmMet2の融合タンパク質を発現すると、JH依存的にUASレポーターが誘導された。一方、kJHREレポーターは、HEK293細胞において、BmMet2とbHLH-PASファミリーの一因であるBmSRCを共発現させた時のみ、JH依存的に誘導された。また、BmMet2とBmSRCはJH依存的に相互作用することがわかった。以上のことから、JHによるBmKr-h1の誘導機構仮説を提唱した。すなわち、BmMet2がJHを受容すると、BmMet2はBmSRCと相互作用し、JH/BmMet2/BmSRCの複合体がkJHREと相互作用することで、BmKr-h1を活性化する。

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2012/06/29

複製開始前複合体(pre-RC)はXEco2を染色体に呼び込みコヒーシンのアセチル化を促進する

論文タイトル
The Prereplication Complex Recruits XEco2 to Chromatin to Promote Cohesin Acetylation in Xenopus Egg Extracts 
論文タイトル(訳)
複製開始前複合体(pre-RC)はXEco2を染色体に呼び込みコヒーシンのアセチル化を促進する
DOI
10.1016/j.cub.2012.04.013
ジャーナル名
Current Biology Cell Press
巻号
Current Biology Volume 22, Issue 11, 977-988, 03 May 2012
著者名(敬称略)
東寅彦、高橋達郎 他
所属
大阪大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 分子遺伝学研究室

抄訳

コヒーシンはDNA複製時に姉妹染色体を接着することにより、M期での正確な染色体分配に機能する。S期での姉妹染色体の接着には、コヒーシンアセチル基転移酵素(CoAT)によるコヒーシンSmc3サブユニットのアセチル化が必須である。一方、CoATの機能と局在が、どのようにDNA複製と協調して制御されるのかはよく分かっていなかった。  我々はツメガエル卵抽出液を脊椎動物のモデル系に用い、Smc3のアセチル化がDNA複製開始の準備反応である複製開始前複合体(pre-RC)形成に依存することを見いだした。ツメガエルが持つ二つのCoAT、XEco1とXEco2のうち、初期胚ではXEco2が優先的に発現し、染色体接着に必須であった。XEco2はpre-RCに依存して染色体に結合し、その結合にはXEco2のN末端領域に存在する二つの領域(PBM-A/B)が必要であった。PBM-A/Bの欠失変異はSmc3のアセチル化と染色体接着の成立に欠損を示した。一方でコヒーシンのDNA結合の安定化には、pre-RC形成だけでなくDNA複製が必要であった。これらの結果はpre-RCがXEco2の染色体結合を介してSmc3のアセチル化を制御すること、及びDNA複製はSmc3のアセチル化以外の経路で接着成立に寄与することを示唆する。

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2012/06/27

長期記憶学習に応じたCREB依存性長期記憶関連遺伝子発現誘導のNMDA受容体Mg2+ブロックによる制御

論文タイトル
Mg2+ Block of Drosophila NMDA Receptors Is Required for Long-Term Memory Formation and CREB-Dependent Gene Expression 
論文タイトル(訳)
長期記憶学習に応じたCREB依存性長期記憶関連遺伝子発現誘導のNMDA受容体Mg2+ブロックによる制御
DOI
10.1016/j.neuron.2012.03.039
ジャーナル名
Neuron Cell Press
巻号
Neuron Volume 74, Issue 5, 887-898, 7 June 2012
著者名(敬称略)
宮下知之、齊藤実 他
所属
東京都医学総合研究所 学習記憶とその障害の分子機構の解明プロジェクト

抄訳

NMDA受容体ではMg2+ブロック特性によりシナプス後細胞の非興奮時NMDA受容体を介したCa2+流入が抑制される。NMDA受容体が連合学習(記憶情報の獲得)や長期記憶形成に必要なことが示されてきたが、Mg2+ブロックがこうした過程にどのような役割を果たすかは不明であった。我々はMg2+ブロックが欠失した変異NMDA受容体を発現するトランスジェニックフライを作成し、Mg2+ブロックが連合学習の成立には不要だが、長期記憶形成には必須であること、また長期記憶学習に応じて転写因子CREB依存性に長期記憶・長期シナプス可塑性関連遺伝子の発現が上昇するために必要なことなどが分かった。興味深いことにMg2+ブロック変異体脳では抑制型CREBの発現が顕著に増加していた。抑制型CREBの発現量と長期記憶形成の障害には顕著な正の相関があり、Mg2+ブロック変異体でみられた長期記憶形成障害の一因は抑制型CREBの発現上昇であることが示唆された。こうした結果からMg2+ブロックの生理的役割は非学習時(定常状態)にNMDA受容体を介したCa2+流入を阻止して抑制型CREBの発現を抑えることであり、これにより長期記憶学習時のCREB依存性の遺伝子発現が可能となることが示唆された。

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2012/06/21

Fruitlessタンパク質は拮抗的な作用を持った二つのクロマチン因子を動員することによって個々のニューロンに性的二型を作り出す

論文タイトル
Fruitless Recruits Two Antagonistic Chromatin Factors to Establish Single-Neuron Sexual Dimorphism 
論文タイトル(訳)
Fruitlessタンパク質は拮抗的な作用を持った二つのクロマチン因子を動員することによって個々のニューロンに性的二型を作り出す
DOI
10.1016/j.cell.2012.04.025
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Volume 149, Issue 6, 1327-1338, 8 June 2012
著者名(敬称略)
伊藤弘樹、山元大輔 他
所属
東北大学 大学院生命科学研究科 生命機能科学専攻 脳機能解析構築学講座 脳機能遺伝分野

抄訳

ショウジョウバエのfruitless(fru)遺伝子は推定転写因子をコードし、神経回路に性的二型を生み出すことを通じて雄の性行動の生成に寄与する。今回、Fruが転写補助因子のBonus (Bon, 哺乳類TIF1相同分子)と複合体を形成し、Bonはさらにクロマチン制御因子のHDAC1(Histone deacetylase 1)またはHP1a(Heterochromatin protein 1a)を動員することが明らかとなった。HDAC1は形態の性的二型を示すmALニューロン群の雄化を促進し、HP1aはそれに拮抗する。すなわち野生型雄でHDAC1をノックダウンすると、fruの機能低下型変異体と同様、mALニューロン群中に雌型の細胞が出現し、一方fru変異体でHP1aをノックダウンすると雄型の細胞が増加した。雌雄中間型の細胞はいずれの場合も出現しなかった。つまりこれらのタンパク質は、個々のニューロンの性的特徴を全か無か式に切り換えるスイッチとして働く。

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2012/06/21

補体分子C1qはWntシグナル活性化を通じて老化の表現型を誘導する

論文タイトル
Complement C1q Activates Canonical Wnt Signaling and Promotes Aging-Related Phenotypes 
論文タイトル(訳)
補体分子C1qはWntシグナル活性化を通じて老化の表現型を誘導する
DOI
10.1016/j.cell.2012.03.047
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Volume 149, Issue 6, 1298-1313, 8 June 2012
著者名(敬称略)
内藤篤彦、小室一成 他
所属
大阪大学 大学院医学系研究科 循環器内科学
大阪大学 大学院医学系研究科 心血管再生医学

抄訳

近年、血中のWntシグナル活性化物質が老化を誘導することが報告されたが、その分子の正体は不明であった。
 血清のWntシグナル活性化能は加齢マウスだけでなく、心不全モデルマウスでも亢進していたことから、心不全モデルマウスの血清から新規Wntシグナル活性化物質として補体分子C1qを同定した。C1qはWnt受容体であるFrizzledに結合後、C1r, C1sの活性化を介してWnt共受容体であるLRP5/6を切断することでWntシグナルを活性化した。C1q欠損マウスでは全身でWnt標的遺伝子の発現低下が認められ、老化に伴う全身のWntシグナル活性化も認められなかった。
 加齢に伴い、骨格筋障害後の再生能が低下する。若齢マウスにC1qを投与すると同様に再生能低下が認められる一方、C1sに対する中和抗体を投与することで、加齢に伴う再生能低下が改善され、C1q欠損マウスでは加齢に伴う再生能低下が軽度であった。これらの結果はC1qがWntシグナル活性化を介し老化の表現型の一つである骨格筋障害後の再生能低下を引き起こすことを示している。

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