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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2015/08/18

3T-MRIを用いた2-point Dixon法による棘上筋内の脂肪変性の定量化

論文タイトル
Quantification of Fatty Degeneration Within the Supraspinatus Muscle by Using a 2-Point Dixon Method on 3-T MRI
論文タイトル(訳)
3T-MRIを用いた2-point Dixon法による棘上筋内の脂肪変性の定量化
DOI
10.2214/AJR.14.13518
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR July 2015, Vol. 205, No. 1 116-122
著者名(敬称略)
野崎 太希 他
所属
聖路加国際病院 放射線科

抄訳

腱板断裂の術前評価において、腱板構成筋の筋内の脂肪変性と筋萎縮の評価は治療を考える上で大切であり、特にMRIを用いた筋内の脂肪変性の画像評価は腱板断裂の予後予測および手術適応の決定において重要とされる。本研究では、2-point Dixon法を用いて棘上筋の脂肪変性の程度を定量化し、年齢、性別、腱板断裂の進行度、筋萎縮の程度との関連性について検討した。対象は肩痛に対してグラジエントエコーによる2-point Dixon法を含む肩関節3T-MRIを施行した359例。そのうち、棘上筋腱の全層断裂群は63例(平均年齢68.8歳)、部分断裂群は54例(平均年齢64.2歳)、断裂なし群242例(平均年齢55.歳)であった。棘上筋の脂肪変性の定量値と年齢との相関係数は0.348であった。脂肪含有量の上昇率には性差があり、女性の方が男性よりも年齢の上昇に伴う脂肪含有量の上昇率が高かった。棘上筋の脂肪含有量の平均値は全層断裂群で25.8%、部分断裂群で16.6%、断裂なし群で12.8%であった。また、女性の方が男性よりも筋萎縮の進行に伴う脂肪変性の進行速度が速いことが示された。63例の全層断裂群のうち、23例が広範囲断裂群で、40例がそれ以外の全層断裂群であり、それぞれ脂肪含有量の平均値は34.9%、20.5%で両者に統計学的有意差がみられた(p<0.001)。2-point Dixon法を用いた肩関節MRIは臨床的に容易に応用が可能で、腱板断裂とくに広範囲断裂の予後予測の指標に用いることを可能にしうる。

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2015/08/10

Kcnq1遺伝子領域における父親由来の変異は、Cdkn1cのエピジェネティック修飾を介して膵β細胞量を減少させる

論文タイトル
Paternal allelic mutation at the Kcnq1 locus reduces pancreatc β-cell mass by epigenetic modification of Cdkn1c
論文タイトル(訳)
Kcnq1遺伝子領域における父親由来の変異は、Cdkn1cのエピジェネティック修飾を介して膵β細胞量を減少させる
DOI
10.1073/pnas.1422104112
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2015 112 (27) 8332-8337
著者名(敬称略)
浅原 俊一郎、木戸 良明 他
所属
神戸大学大学院保健学研究科 病態解析学領域 分析医科学分野

抄訳

日本人2型糖尿病患者を対象とした大規模ゲノム関連解析によって、KCNQ1遺伝子の一塩基多形が糖尿病発症の有意な危険因子であることが2008年に報告された。しかしながら、KCNQ1遺伝子が2型糖尿病を発症させるメカニズムに関してはこれまで明らかにされていなかった。筆者らは、KCNQ1遺伝子がインプリンティング遺伝子である点に注目した。マウスを用いた検討により、父親から引き継いだKcnq1遺伝子の変異は、インプリンティング制御に異常を起こすことによって、細胞周期抑制因子Cdkn1cの発現量を増加させることが明らかとなった。Cdkn1cは膵β細胞特異的に蓄積することによって、膵β細胞量を減少させ、2型糖尿病発症に至ると考えられた。今回の研究により、2型糖尿病原因遺伝子Kcnq1による糖尿病発症機序を解明し、またインプリンティング制御の異常が2型糖尿病発症につながることを初めて見出した。

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2015/07/22

アルドステロン産生腺腫におけるメチローム・トランスクリプトーム統合解析

論文タイトル
Integration of transcriptome and methylome analysis of aldosterone-producing adenomas
論文タイトル(訳)
アルドステロン産生腺腫におけるメチローム・トランスクリプトーム統合解析
DOI
10.1530/EJE-15-0148
ジャーナル名
European Journal of Endocrinology Bioscientifica
巻号
Eur J Endocrinol Vol.173 No.2 (185-195)
著者名(敬称略)
村上 正憲, 吉本 貴宣 他
所属
東京医科歯科大学大学院総合研究科 分子内分泌代謝学分野 医学部付属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科

抄訳

原発性アルドステロン症は高血圧症の10%を占めるとされる二次性高血圧症である。近年、網羅的遺伝子発現解析によりアルドステロン産生腺腫(APA)と隣接する副腎組織(AAG)において発現量の異なる遺伝子が多数報告されているが、これらの遺伝子発現の変化とアルドステロンの自律性分泌や腫瘍化の関連には不明な点が多い。一方、APAにおけるDNAメチル化修飾に関する報告はほとんどない。本研究ではAPA発症の分子機構を明らかにするために、同意を得た患者の手術時に採取したAPAとAAGの7症例14検体を用い、網羅的遺伝子発現解析とゲノムワイドDNAメチル化解析を同時に行った。トランスクリプトーム解析では、 APAではAAGと比較してPCP4、CYP11B2などの遺伝子の発現量増加を認め、メチローム解析ではゲノム全体が低メチル化状態であることが明らかになった。遺伝子発現とDNAメチル化修飾の統合解析により、CYP11B2やMC2Rなど遺伝子発現増加とDNA低メチル化の負の関連性を示す36遺伝子を同定した。本研究は同一症例においてAPAとAAGのトランスクリプトーム解析とメチローム解析を統合的に比較検討し、APAの発症にDNA脱メチル化による遺伝子発現制御が関与する可能性を示した初の報告である。

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2015/07/22

ホスホリパーゼ A2グループIVc (Pla2g4c) 遺伝子の欠失はNF-κB /リポカリン 2 経路を介してラット乳がん細胞にアポトーシスを誘導する

論文タイトル
Deletion of phospholipase A2 group IVc induces apoptosis in rat mammary tumour cells by the nuclear factor-kB/lipocalin 2 pathway
論文タイトル(訳)
ホスホリパーゼ A2グループIVc (Pla2g4c) 遺伝子の欠失はNF-κB /リポカリン 2 経路を介してラット乳がん細胞にアポトーシスを誘導する
DOI
10.1042/BJ20150064
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Biochemical Journal Vol.469 No.2 (315-324)
著者名(敬称略)
七島 直樹、山田 俊幸、清水 武史、土田 成紀
所属
弘前大学大学院医学研究科ゲノム生化学 弘前大学大学院保健学研究科生体機能

抄訳

Hirosaki hairless rat (HHR) はSprague-Dawley rat (SDR) から自然発生した遺伝性の変異ラットである。Comparative genomic hybridizationで、HHRでは第1染色体長腕21に phospholipase A2 group IVc (Pla2g4c)を含む50-kbの欠損を認めた。Pla2g4cはSDR乳腺の腺管細胞と筋上皮細胞に発現していた。7,12-dimethylbenz[a]anthraceneによるHHRの乳がん発生率はSDRより低く、乳がんもSDRに比べ小さく、TUNEL陽性のアポトーシスが観察された。ラット乳腺腫瘍細胞(RMT-1)を用いてPla2g4cをsiRNAでノックダウンすると、アポトーシスが誘導されるとともにlipocalin 2 (Lcn2) と NF-κB関連遺伝子の発現が亢進した。Pla2g4cノックダウンによるアポトーシスは、Lcn2のノックダウンあるいはNF-κB阻害剤により抑制された。これらの結果から、Pla2g4cを欠損したラット乳腺ではNF-κB/Lcn2 経路の活性化によりアポトーシスが誘導され、乳がん発生が抑制されることを明らかにした。

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2015/04/15

CTによる尿管癌のT因子診断 : T2 以下/ T3以上の選別を目的とした診断基準の提案に関する予備的研究

論文タイトル
T Categorization of Urothelial Carcinomas of the Ureter With CT: Preliminary Study of New Diagnostic Criteria Proposed for Differentiating T2 or Lower From T3 or Higher
論文タイトル(訳)
CTによる尿管癌のT因子診断 : T2 以下/ T3以上の選別を目的とした診断基準の提案に関する予備的研究
DOI
10.2214/AJR.14.13167
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR April 2015, Volume 204, Number 4 792-797
著者名(敬称略)
本田 有紀子 他
所属
広島大学大学院医歯薬保健学研究院/研究科 放射線診断学研究室

抄訳

尿管癌では、術前CTによるT因子診断が治療方針の決定に重要である。今回、術前CT診断にて、T2以下 / T3以上の選別を目的とした新たな診断基準を提案し、その臨床的妥当性を検討した。尿管癌30例(手術・病理診断例)の術前CTを、3名の放射線診断医(腹部を専門としない放射線科医)で読影実験を行い、提案基準の有無で診断能がどのように変化するかについてROC解析を行った。提案するCT基準では、mass形成と索状影の有無により病変を6 patternに分類した。「提案基準あり」及び「提案基準なし」でのROC曲線におけるArea under the curve (AUC)は、それぞれ0.54 (SD 0.09)、0.73 (SD 0.08)であり、提案基準を用いた方が診断能は統計学的に有意に高かった(p<0.01)。提案基準がT因子診断の精度向上に寄与する可能性が示唆された。

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2015/02/17

Porphyromonas gingivalis のバイオフィルムを介したマクロライド系抗菌薬の浸透は sinR のオルソログ PGN_0088 の糖成分の合成抑制により間接的に制御される

論文タイトル
Inhibition of polysaccharide synthesis by the sinR orthologue PGN_0088 is indirectly associated with the penetration of Porphyromonas gingivalis biofilms by macrolide antibiotics
論文タイトル(訳)
Porphyromonas gingivalis のバイオフィルムを介したマクロライド系抗菌薬の浸透は sinR のオルソログ PGN_0088 の糖成分の合成抑制により間接的に制御される
DOI
10.1099/mic.0.000013
ジャーナル名
Microbiology Society for General Microbiology
巻号
February 2015 vol. 161 no. Pt 2 422-429
著者名(敬称略)
山本 れいこ,野杁 由一郎 他
所属
大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)

抄訳

一般に、微生物は固体と液体の界面に付着し、自ら生産した菌体外マトリックス内で凝集し、バイオフィルムの中で生息する。歯周病は Porphyromonas gingivalis 等のバイオフィルム形成によって始まる口腔感染症である。菌体外マトリックスがバイオフィルム細菌を保護するバリアとして機能するため、バイオフィルム感染症の治療に化学療法は不適切である。先行研究では、最小発育阻止濃度以下のマクロライド系抗菌薬が P. gingivalis バイオフィルムを減少させること、さらに、枯草菌の遺伝子 sinR のオルソログ PGN_0088 が P. gingivalis バイオフィルムの菌対外マトリックスの構成要素である糖成分の合成を抑制することを報告した。本研究では、この遺伝子による菌体外マトリックス中の糖成分の減少が、マクロライド系抗菌薬の浸透率やバイオフィルムの機械的強度に影響を及ぼすことを解明した。

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2015/01/26

マウスアルデヒドデヒドロゲナーゼALDH3B2はC末端の2つのトリプトファン残基と脂質修飾を介して脂肪滴に局在する

論文タイトル
Mouse aldehyde dehydrogenase ALDH3B2 is localized to lipid droplets via two C-terminal tryptophan residues and lipid modification
論文タイトル(訳)
マウスアルデヒドデヒドロゲナーゼALDH3B2はC末端の2つのトリプトファン残基と脂質修飾を介して脂肪滴に局在する
DOI
10.1042/BJ20140624
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.465 No.1 (79?87)
著者名(敬称略)
北村 拓也, 木原 章雄 他
所属
北海道大学大学院薬学研究院生化学研究室

抄訳

生体には多数のアルデヒド分子が存在する。アルデヒド分子は一般的に反応性が高いため,蓄積すると毒性を示す。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は,アルデヒドを毒性の低いカルボン酸へと変換する酵素である。マウスには21種のALDHが存在するが,本報告ではそれらのうちALDH3サブファミリーメンバー(ALDH3A2,ALDH3B1,ALDH3B2,ALDH3B3)が,長鎖アルデヒド(炭素数10-20)を除去する役割があることを明らかにした。これらの基質特異性は類似していたが,細胞内の局在場所は異なっていた(ALDH3A2,小胞体;B1とB3,細胞膜;B2,脂肪滴)。ALDH3A2は膜貫通領域により小胞体膜に局在するが,ALDH3B1-3には膜貫通領域が存在しない。その代わりに,これらはC末端が脂質修飾(ゲラニルゲラニル化)されることで膜局在をしていた。さらに脂質修飾部位近傍の正電荷アミノ酸残基がALDH3B3の細胞膜局在,2つのトリプトファン残基がALDH3B2の脂肪滴局在を規定していた。生体膜を構成する脂質分子には不飽和結合が存在するため,酸化ストレスによりアルデヒドへと変換される。様々なオルガネラで生じたこれらの脂質由来アルデヒドを除去するために細胞内には異なった局在性を示す複数のALDHが存在すると考えられる。

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2014/12/16

プロドラッグ、代謝物等に関する特許の保護範囲

論文タイトル
Scope of protection of a patent directed to prodrugs, metabolites and the like
論文タイトル(訳)
プロドラッグ、代謝物等に関する特許の保護範囲
DOI
10.4155/ppa.14.42
ジャーナル名
Pharmaceutical Patent Analyst Future Science Ltd
巻号
Vol. 3, No. 6, Pages 567-570
著者名(敬称略)
駒谷 剛志 (※編集注:お名前の「駒」は正しくは馬偏に勺という字です。)
所属
山本特許法律事務所

抄訳

本論文は、医薬品特許の保護範囲について、有効成分(API)とは化学的に異なる物質であるプロドラッグや代謝物、あるいは、代謝物自体が有効成分となる場合について、主要国でどのように保護されるか(あるいはされないか)を概説するものである。特許の保護範囲は、文言解釈に従い、物質特許の場合は、構造が異なる場合は権利範囲外となることも多く、実際の有効成分が当初の理解と異なる場合に権利行使が十分に行えない問題や、文言上は特許の権利範囲に入らないが実質的に「均等」の場合は侵害を問えるいわゆる「均等論」の適用があるかどうか、あるいは、医師や患者の侵害行為に基づき侵害を問う、米国などで法的理論が進む間接侵害/教唆侵害の適用を論じ、日米欧の判例にも触れ、最近問題となっている米国最高裁判例(天然物や自然法則を特許の対象外と判断したMayo事件やMyriad事件)からみた将来の知財保護の問題点を解説している。そして、プロドラッグや代謝物を考慮し、研究開発の進展をにらみつつ、各国の特許要件について十分な理解に基づく専門的な見地から有効な知的財産戦略を提案する内容となっている。

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2014/11/18

代謝物分析における超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析法

論文タイトル
Supercritical fluid chromatography/mass spectrometry in metabolite analysis
論文タイトル(訳)
代謝物分析における超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析法
DOI
10.4155/bio.14.120
ジャーナル名
Bioanalysis Future Science Ltd
巻号
Vol.6, No.12, Pages 1679-1689
著者名(敬称略)
田口 歌織(筆頭著者),福崎 英一郎,馬場 健史(連絡著者)
所属
大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻

抄訳

高拡散,低粘性の超臨界流体二酸化炭素(SCCO2)を移動相として用いる超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)は,高分離,ハイスループットなど分離分析技術として多くの利点を有する.また,SFCはSCCO2が低極性であることから疎水性化合物の分離に好適であるとされてきたが,最近の研究で親水性化合物の分析にも利用できることが示され注目を集めている.代謝物の網羅的な解析を目的とするメタボロミクスにおいては,幅広い性質の化合物が対象となるだけなく,夾雑物が混在する試料において多成分の一斉分析が必要となる場面も少なくない.そのため,クロマトグラフィーによる分離の重要性は高く,また選択性及び感度の高い質量分析計(MS)による検出も必要となっている.そこで本稿では,SFCの分離技術としての基本的な特性を説明するとともに,SFC/MSを用いた代謝物分析手法の開発とその応用例について紹介する.

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2014/09/11

死後CTで異常所見を呈さない頚髄損傷:外傷死検出のための死後画像検査におけるピットフォール

論文タイトル
Spinal Cord Injuries With Normal Postmortem CT Findings: A Pitfall of Virtual Autopsy for Detecting Traumatic Death
論文タイトル(訳)
死後CTで異常所見を呈さない頚髄損傷:外傷死検出のための死後画像検査におけるピットフォール
DOI
10.2214/AJR.13.11775
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
August 2014 vol. 203 no. 2 240-244
著者名(敬称略)
槇野陽介 他
所属
千葉大学大学院医学研究院付属法医学研究教育センター

抄訳

【目的】死後多列検出器型CT検査(PMMDCT:post-mortem multidetector CT)において所見のない頚髄損傷(SCIWORA:spinal cord injuries without radiographic abnormalities)の頻度を調査し、その特徴を検討する。
【方法】解剖前PMMDCTが施行された894例の連続事例の剖検所見を検討し、頚髄損傷が死因であった30事例を集めた。死後画像読影経験4年以上の放射線科専門医2名がCT読影を行い、画像上頚髄・頚椎に外傷所見のないものをSCIWORAと定義した。
【結果・考察】30事例中6事例(20%、95%信頼区間 6-34%)がSCIWORAの定義を満たした。全SCIWORA事例で、CT前に外表所見などから外傷死であることは推定できなかった。また全SCIWORA事例がC3レベル以下の損傷であった。さらに全SCIWORA事例で、解剖所見において、頚椎骨折は認めない一方、CT陰性の頚椎椎間板損傷と椎体周囲出血が認められた。5事例(83%)のSCIWORAで頚髄以外の部位に致死的な外傷は見られなかった。
【結論】致死的な頚髄損傷事例の中には、かなりの割合でSCIWORA事例が見られた。PMMDCTで死亡を評価するとき、評価者はSCIWORAの存在を認識し、CT所見のみで頚髄損傷による死亡を除外してはならない。MRIを使わない限り、頚髄損傷の除外のためには、解剖を行わなければいけない。

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