本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2021/03/15

重症肺炎カニクイザルモデルを用いたH7N9高病原性鳥インフルエンザウイルスに対するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬とノイラミニダーゼ阻害薬の有効性評価

論文タイトル
Efficacy of a Cap-Dependent Endonuclease Inhibitor and Neuraminidase Inhibitors against H7N9 Highly Pathogenic Avian Influenza Virus Causing Severe Viral Pneumonia in Cynomolgus Macaques
論文タイトル(訳)
重症肺炎カニクイザルモデルを用いたH7N9高病原性鳥インフルエンザウイルスに対するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬とノイラミニダーゼ阻害薬の有効性評価
DOI
10.1128/AAC.01825-20
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy March 2021; volume 65,issue 3
著者名(敬称略)
鈴木 紗織、伊藤 靖 他
所属
滋賀医科大学病理学講座疾患制御病態学部門

抄訳

H7N9高病原性鳥インフルエンザウイルスが日本の空港検疫で押収されたカモ肉より分離された。このウイルス株のカニクイザルにおける病原性と抗ウイルス薬の有効性を解析した。このウイルス株をカニクイザルに感染させると発熱と高度の肺炎がみられ、またウイルスが気道で複製し、カニクイザルにおいて病原性を示すことが判明した。感染させたサルでは、サイトカイン反応が起きた。さらに血液中には免疫チェックポイント分子PD-1、TIGITを発現するTリンパ球が増加し、ウイルス排除反応を抑制する可能性が示唆された。このウイルス株を感染させたサルにキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビルを投与すると、気道のウイルス量は薬剤を投与しないサルより低く、バロキサビルは有効であった。バロキサビルを投与されたサルではPD-1、TIGIT陽性Tリンパ球の割合は治療されないサルより低く、ウイルス排除反応の抑制が軽度であることが推測された。

論文掲載ページへ

2021/03/10

アフリカツメガエルにおいてDNAの量は細胞核のサイズ制御に影響を与える

論文タイトル
DNA content contributes to nuclear size control in Xenopus laevis
論文タイトル(訳)
アフリカツメガエルにおいてDNAの量は細胞核のサイズ制御に影響を与える
DOI
10.1091/mbc.E20-02-0113
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 24(2631-2747)
著者名(敬称略)
平城 裕子, 原 裕貴 他
所属
山口大学 理学部 生物・化学科 進化細胞生物学研究室

抄訳

 真核生物の細胞は、生物進化や細胞周期により生じるDNA量の変化に適応するために、DNA機能の場である細胞核(以降「核」とする)のサイズを調節する。しかし、「DNAの量」により核のサイズを制御する仕組み理解されていなかった。そこで我々は、アフリカツメガエル卵抽出液の無細胞再構成系を利用し、実験的に核内DNAやクロマチンの物理特性を操作することで、DNAが核サイズ制御に与える影響を評価した。まずDNA複製の薬剤阻害、ならびに異なるゲノムサイズを有する異生物種のゲノムDNAを核の材料として用いることで、核再構成時のDNA量を実験的に変化させた。その結果、核のサイズ増大速度と最大サイズがDNA量依存的に変化する特徴を発見した。さらに、核内クロマチンの凝縮度や核膜とクロマチンの相互作用の強度を操作すると、核のサイズ増大速度が変化することを見出した。以上の結果より、DNA配列そのものやコードする遺伝子とは無関係に、ゲノムの量やクロマチンの凝縮度などの核内DNAの物理特性依存的に核サイズを制御する新規モデルを提案する。

論文掲載ページへ

2021/03/08

IFT-A複合体とIFT-B複合体の協同による繊毛内逆行性タンパク質輸送とGタンパク質共役受容体の繊毛内移行の調節

論文タイトル
Cooperation of the IFT-A complex with the IFT-B complex is required for ciliary retrograde protein trafficking and GPCR import
論文タイトル(訳)
IFT-A複合体とIFT-B複合体の協同による繊毛内逆行性タンパク質輸送とGタンパク質共役受容体の繊毛内移行の調節
DOI
10.1091/mbc.E20-08-0556
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 1(45-56)
著者名(敬称略)
古林 拓也, 加藤 洋平, 中山 和久 他
所属
京都大学大学院薬学研究科生体情報制御学分野

抄訳

 繊毛内タンパク質輸送装置(IFT装置)は、繊毛タンパク質の順行輸送と逆行輸送に加えて、繊毛ゲートを越えるタンパク質の繊毛内への移行および繊毛外への排出も仲介している。IFT装置は、IFT-A複合体とIFT-B複合体という2つのマルチサブユニット複合体から成るが、この2つの複合体がどのように協同して繊毛内タンパク質輸送を仲介しているのかについてはほとんどわかっていない。本研究では、IFT-A複合体のIFT144–IFT122とIFT-B複合体のIFT88–IFT52が、複合体同士の相互作用を媒介していることを発見した。IFT88ノックアウト(KO)細胞にIFT-A複合体との相互作用が減弱したIFT88(Δα)変異体を発現させると、IFT88-KO細胞で見られた繊毛形成不全が部分的に回復した。しかし、IFT88(Δα)発現細胞では、IFT-A複合体の繊毛内への侵入障害、IFT-Bタンパク質の繊毛先端への異常蓄積、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の繊毛内移行障害が見られた。さらに、繊毛先端部に過剰に蓄積したIFTタンパク質は細胞外小胞として放出されていた。これらの表現型はIFT144-KO細胞の表現型に類似していた。以上の観察結果から、IFT-A複合体はIFT-B複合体と協同することによって、繊毛先端からの逆行輸送だけでなく、GPCRの繊毛内移行も仲介していることが明らかになった。

論文掲載ページへ

2021/03/08

小腸の絨毛構造は上皮細胞を均一に脱落させる

論文タイトル
Intestinal villus structure contributes to even shedding of epithelial cells
論文タイトル(訳)
小腸の絨毛構造は上皮細胞を均一に脱落させる
DOI
10.1016/j.bpj.2021.01.003
ジャーナル名
Biophysical Journal
巻号
Biophysical Journal Vol.120 Issue 4 (February 16, 2021)
著者名(敬称略)
甲斐 悠斗
所属
九州大学大学院医学研究院 系統解剖学分野

抄訳

小腸粘膜には、絨毛と呼ばれる上皮細胞に覆われた無数の突起が存在し、それぞれの絨毛は陰窩と呼ばれるくぼみで囲まれている。 腸上皮細胞の代謝回転(ターンオーバー)では、陰窩内で増殖した細胞が陰窩から絨毛へと移動し、絨毛を登り、最終的に絨毛の 頂点から腸管内腔に脱落する。本研究では、絨毛がターンオーバーに与える影響を理論的に検討し、絨毛がターンオーバーを厳密 に制御していることを提案した。絨毛の指のような形状は、細胞が増殖する陰窩から細胞が脱落する絨毛頂点を遠ざけることにより、 細胞が早期に脱落したり、上皮内に長期間滞在したりしないようにしていることを確率モデルやシミュレーションによって示した。 この結果は、脱落する細胞齢をおよそ一定に維持することにより、絨毛が小腸の恒常性維持に寄与していることを示唆している。

論文掲載ページへ

2021/03/04

敗血症性DIC患者に対する低用量IgGの有用性の研究

論文タイトル
Study of usefulness of low-dose IgG for patients with septic disseminated intravascular coagulation
論文タイトル(訳)
敗血症性DIC患者に対する低用量IgGの有用性の研究
DOI
10.2217/bmm-2020-0204
ジャーナル名
Biomarkers in Medicine
巻号
Biomarkers in Medicine Vol.14, No.13 (2020)
著者名(敬称略)
高橋 学 他
所属
岩手医科大学 救急・災害・総合医学講座 岩手県高度救命救急センター

抄訳

背景:敗血症患者を対象とした大規模な多施設ランダム化比較試験では、静脈内免疫グロブリンG(IVIG)による予後の改善効果は証明されていません。ただし、敗血症性播種性血管内凝固症候群(DIC)の場合の有効性は十分に研究されていません。 結果/方法論:敗血症性DIC患者80例の重症度スコアと28日生存率に対するIVIGの効果を後方視的に評価しました。感染関連マーカー、凝固関連マーカー、重症度スコア、および28日生存率の変化を、IVIG治療群と未治療群の間で比較しました。 考察/結論:IVIG治療は、28日死亡率は低下させたものの、有意差は認めませんでした。しかし臓器不全評価スコアとDICスコアを有意に減少させ、血小板数を有意に増加させました。

論文掲載ページへ

2021/03/04

単回使用滅菌手術用手袋のエンドトキシン汚染

論文タイトル
Endotoxin contamination of single-use sterile surgical gloves
論文タイトル(訳)
単回使用滅菌手術用手袋のエンドトキシン汚染
DOI
10.2217/fmb-2020-0153
ジャーナル名
Future Microbiology
巻号
Future Microbiology Vol.15, No.15 (2020)
著者名(敬称略)
高橋 学 他
所属
岩手医科大学 救急・災害・総合医学講座 岩手県高度救命救急センター

抄訳

体内に挿入される医療用のインプラントやカテーテルには、厳格なエンドトキシン規格値が設定されています。しかし単回使用滅菌手術用手袋には標準的な規格値は設定されていません。そこで日本国内で販売されている4種類の手袋を生理食塩水に浸し、そのエンドトキシンレベルを測定しました。その結果、4種類の手袋のうち3種類からエンドトキシンを検出しました。 また、エンドトキシンの汚染が強度であった手袋では陰イオン界面活性剤の混入も認めました。さらにエンドトキシンの汚染が確認された手袋を健常人から採取した全血に浸しサイトカインの値を検討したところ、これらの手袋でサイトカインの上昇を確認しました。検出されたエンドトキシンが手術中に体内に入る程度については議論の余地がありますが、単回使用滅菌手術用手袋には厳密なエンドトキシンの規格値を確立する必要があると考えます。

論文掲載ページへ

2021/03/04

加温したデキストランを用いて作成した多白血球検体によるエンドトキシン測定の臨床応用の検討

論文タイトル
A dextran-based warming method for preparing leukocyte-rich plasma and its clinical application for endotoxin assay
論文タイトル(訳)
加温したデキストランを用いて作成した多白血球検体によるエンドトキシン測定の臨床応用の検討
DOI
10.2144/btn-2020-0005
ジャーナル名
BioTechniques
巻号
BioTechniques Vol.68, No.6 (2020)
著者名(敬称略)
高橋 学 他
所属
岩手医科大学 救急・災害・総合医学講座 岩手県高度救命救急センター

抄訳

ヒトの血液中のエンドトキシン測定では比濁時間分析法が保険収載されていますが、その精度の低さが問題視されています。エンドトキシンは血液忠では白血球に結合したり取り込まれて存在していることが多く、我々は測定検体に白血球の豊富な検体を用いています。今回この白血球の豊富な検体を作成するにあたり、デキストランを用いた方法を開発し、さらに検体を得るための最適温度を見つけるために、37°Cおよび0°Cで調製したサンプルを使用して測定結果を比較しました。検体の分離時間は、温度が0°Cよりも37°Cの方が大幅に短縮されることが分かりました。またエンドトキシンの測定値は、2つの温度で強い相関関係を示し、37°Cで作成された検体の多くは0°Cでの測定値を超えていました。グラム陰性菌感染の診断精度は、37°Cで作成された方が優れており、感度と特異度はそれぞれ96.8%と100%でした。

論文掲載ページへ

2021/03/01

バソプレシン産生ニューロンから放出されるGABAは,サーカディアンリズム中枢・視交叉上核の分子時計が何時に行動を引き起こすかを制御する

論文タイトル
GABA from vasopressin neurons regulates the time at which suprachiasmatic nucleus molecular clocks enable circadian behavior
論文タイトル(訳)
バソプレシン産生ニューロンから放出されるGABAは,サーカディアンリズム中枢・視交叉上核の分子時計が何時に行動を引き起こすかを制御する
DOI
10.1073/pnas.2010168118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS February 9, 2021 118 (6) e2010168118
著者名(敬称略)
前島 隆司、三枝 理博 他
所属
金沢大学 医薬保健研究域 医学系 統合神経生理学

抄訳

視床下部の視交叉上核は、中枢時計として、安定したサーカディアンリズムを発振する機能と、動物の行動や身体機能をオン・オフにする時間帯を定める機能を持つ。今回、視交叉上核の背内側部に局在するバソプレシン/GABA神経が、GABA伝達を介して視交叉上核の神経活動を制御し、動物が行動を起こす時間帯を設定することを明らかにした。バソプレシン神経から特異的にGABA放出能を欠損させた遺伝子改変マウスは、時計遺伝子により駆動される視交叉上核の分子時計リズムには異常がないものの、行動の開始時刻が分子時計の進みに対して早くなり、終了時刻は遅れるという異常を示した。また視交叉上核全体の神経活動は、正常マウスでは、昼に高く夜に低い、単峰性のリズムを示すが、この遺伝子改変マウスでは、昼に加え、夜にも活動のピークを生じる二峰性のリズムを示し、神経活動が低下するリズムの谷間に、動物の行動が表出することが分かった。このようにGABAを介した視交叉上核の神経活動調節は、分子時計上の適切な時間帯に脳や身体機能をオン・オフするタイマー設定を担っていると見なせる。

論文掲載ページへ

2021/03/01

原発性アルドステロン症における機能確認結果の乖離が診断に及ぼす意義

論文タイトル
Significance of Discordant Results Between Confirmatory Tests in Diagnosis of Primary Aldosteronism
論文タイトル(訳)
原発性アルドステロン症における機能確認結果の乖離が診断に及ぼす意義
DOI
10.1210/clinem/dgaa812
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.106 No.2 (Pages e866–e874)
著者名(敬称略)
福元 多鶴,  馬越 洋宜 他
所属
九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)

抄訳

原発性アルドステロン症(PA)の診断において、現在のガイドラインでは、1つ以上の機能検査の陽性確認が推奨されているが、機能検査の結果が乖離した場合に複数の検査を実施する臨床的意義は確立していない。本研究では2種類の機能確認検査の実施がPAの病型診断に与える影響を明らかにすることを目的とした。PAが疑われカプトプリル負荷試験(CCT)と生理食塩水負荷試験(SIT)を施行、1つ以上の検査が陽性であり、副腎静脈サンプリング(AVS)の結果が得られた193人を対象とした。193人のうち127人がCCT、SITともに陽性、 34人がCCT単独陽性、32人がSIT単独陽性であり、58人が片側PA、135人が両側性PAと診断された。単独陽性群は、ともに陽性であった群と比較し、両側性PAと診断された割合が有意に高かった(63/66 [95.3%]対72/127 [56.7%]、P <0.01)。
本研究からCCTとSITの結果が乖離する症例では、AVSで両側性と診断される確率が高率であることが明らかになった 。

論文掲載ページへ

2021/02/22

酸化ストレス応答時に発現誘導される転写産物を長鎖リード・トランスクリプトーム解析によって同定

論文タイトル
Identification of Dominant Transcripts in Oxidative Stress Response by a Full-Length Transcriptome Analysis
論文タイトル(訳)
酸化ストレス応答時に発現誘導される転写産物を長鎖リード・トランスクリプトーム解析によって同定
DOI
10.1128/MCB.00472-20
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology February 2021; volume 41,issue 2
著者名(敬称略)
大槻 晃史、山本 雅之 他
所属
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
東北大学大学院医学系研究科 医化学分野

抄訳

ヒトを含む多くの生物では、ひとつの遺伝子から複数種類の転写産物(転写産物アイソフォーム)が発現している。NRF2は生体の酸化ストレス応答を制御するマスター転写因子であるが、その標的遺伝子における転写産物アイソフォームが、どのような量的バランスで発現しているかは、これまで十分に明らかではなかった。本研究では、長鎖リード型シークエンサーを用いた全長トランスクリプトーム解析を実施し、親電子性ストレス応答時に発現する転写産物アイソフォームの正確な構造決定と発現量の評価を行った。これにより、転写産物レベルでの発現解析における、長鎖リード解析の有用性を実証した。また、親電子性ストレス条件下では、比較的少数の転写産物アイソフォームが選択的に発現していることが明らかとなった。この結果は、生体のストレス応答において、転写産物の利用が厳密に制御されることにより、機能的なタンパク質が産生されていることを裏付けるものである。

論文掲載ページへ