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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2022/05/19

バセドウ病における甲状腺機能亢進症は交感神経活性に関連した睡眠障害をきたす

論文タイトル
Hyperthyroidism in Graves Disease Causes Sleep Disorders Related to Sympathetic Hypertonia
論文タイトル(訳)
バセドウ病における甲状腺機能亢進症は交感神経活性に関連した睡眠障害をきたす
DOI
10.1210/clinem/dgac013
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 107, Issue 5, May 2022, Pages e1938–e1945
著者名(敬称略)
松本 和久, 伊澤 正一郎 他
所属
鳥取大学医学部 循環器・内分泌代謝内科学分野

抄訳

甲状腺機能亢進症は睡眠障害をきたすが、治療による睡眠障害の改善効果は報告されていない。一方で甲状腺機能亢進症は交感神経を活性化すること、交感神経活性化が睡眠障害をきたすことが報告されている。本研究はバセドウ病 (GD) において甲状腺機能亢進症による交感神経活性と睡眠障害の関係を解明することを目的とした。本研究は横断的検討を伴う前向き研究である。ピッツバーグ睡眠質問票を用いて22人の甲状腺機能亢進症のGD患者と20人の甲状腺機能の正常化したGD患者、30人の健常人を比較し、さらに14人の甲状腺機能亢進症の患者において治療前後での睡眠障害の変化を比較した。結果、甲状腺機能亢進症で他の2群よりも睡眠障害特に睡眠困難や睡眠効率が悪化し、交感神経活性の増強も認めた。治療により睡眠障害特に睡眠の質、睡眠困難と交感神経活性の改善を認めた。甲状腺機能亢進症が交感神経活性を増強させ、睡眠困難や睡眠の質に関連した睡眠障害をきたすことが考えられた。

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2022/05/18

TRAF6はMYCの癌遺伝子としての機能活性を直接的に標的とすることで骨髄系腫瘍において腫瘍抑制因子として機能する

論文タイトル
TRAF6 functions as a tumor suppressor in myeloid malignancies by directly targeting MYC oncogenic activity
論文タイトル(訳)
TRAF6はMYCの癌遺伝子としての機能活性を直接的に標的とすることで骨髄系腫瘍において腫瘍抑制因子として機能する
DOI
10.1016/j.stem.2021.12.007
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Volume29, Issue2
著者名(敬称略)
武藤 朋也 他
所属
千葉大学 医学部附属病院血液内科

抄訳

クローン性造血とは、加齢による遺伝子変異を伴った造血細胞のクローン性増殖により特徴づけられた現象である。クローン性造血は骨髄系腫瘍の発症のリスク因子であることが判明していることから前白血病細胞とも表現されることがあり、前白血病状態から白血病への進展には付加的な異常が必要であると考えられている。そこで、前白血病細胞から白血病への進展において協調的に機能するシグナルを同定するために、今回我々はin vivo RNAiスクリーニングによるアプローチを用いた。スクリーニングの結果、ユビキチンリガーゼであるTRAF6を同定すると共に、マウス前白血病細胞におけるTRAF6欠損が癌遺伝子MYC依存性に骨髄性白血病を引き起こすことを見出した。重要なことに、TRAF6は一定割合でヒト骨髄性白血病患者細胞においても発現が低下していることから、TRAF6シグナルの抑制がヒト白血病発症に寄与していると思われた。分子学的機序の発見として、TRAF6はMYCをユビキチン化することで同修飾部位のアセチル化を抑制すると共に、MYCタンパクの安定化には関与せず転写因子活性を抑制することを見出した。

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Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

2022/05/18

切除不能進行・再発食道がん治療におけるペムブロリズマブ

論文タイトル
Pembrolizumab for the treatment of advanced esophageal cancer
論文タイトル(訳)
切除不能進行・再発食道がん治療におけるペムブロリズマブ
DOI
10.2217/fon-2022-0108
ジャーナル名
Future Oncology
巻号
Volume.18 No.18(2022)
著者名(敬称略)
原田 健太郎 加藤 健 他
所属
国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科

抄訳

 食道がんは解剖学的、生物学的な特徴から治療に難渋するがんで、特に切除不能進行・再発例の予後は約10ヶ月と限られ、かつ有効な薬剤も少ない状況である。
 そのような中、抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブの開発が食道がんで行われた。食道がんの2次治療例を対象としたKEYNOTE-181試験(ペムブロリズマブ vs 化学療法)において、事前に規定した集団ではペムブロリズマブの優越性は証明できなかったが、CPS10以上かつ扁平上皮癌の集団において、有望な結果が認められた。FDAは2019年7月に同集団に限り、ペムブロリズマブを承認した。また、食道がんの1次治療例を対象としたKEYNOTE-590試験(ペムブロリズマブ+2剤併用化学療法 vs プラセボ+2剤併用化学療法)において、副次的集団を含む全ての対象でペムブロリズマブ併用化学療法の優越性が証明された。この結果からFDAは2021年3月に1次治療においてペムブロリズマブ併用化学療法を承認した。
 しかし未だに食道がんの予後は12ヶ月程度と限られ、さらなる予後の改善のため、扁平上皮癌を対象に、ペムブロリズマブ併用化学療法に、レンバチニブの上乗せを検証するLEAP-014試験が進行中である。また免疫チェックポイント阻害剤に関する臨床的有用性の高いバイオマーカー探索も希求されており、今後の開発が期待される。

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2022/05/16

ヒト胚性ゲノム活性化は1細胞期で開始する

論文タイトル
Human embryonic genome activation initiates at the one-cell stage
論文タイトル(訳)
ヒト胚性ゲノム活性化は1細胞期で開始する
DOI
10.1016/j.stem.2021.11.012
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Volume29, Issue2
著者名(敬称略)
浅見 真紀 他
所属
バース大学

抄訳

 卵子と精子由来のそれぞれのゲノムは、受精後にリプログラミングされ、新たな個体発生に不可欠と考えられる胚性ゲノムの活性化(EGA:embryonic gene activation)が起こる。従来の知見では、ヒトにおいては受精直後の遺伝子発現は静止状態にあり、EGAは8細胞期胚頃までに起こると考えられてきたが、哺乳類におけるその詳細なタイミングやプロファイルには、未だ不明な点が多く残されている。 本研究では、7人のドナー由来の卵子と、異なる人種背景の6カップル由来の正常1細胞期受精卵(2pn)を実験試料として、単一細胞レベルでのpoly(A)+mRNA非選択的なscRNA-seqを行い、統計的に意義のある1細胞期胚遺伝子発現プロファイリングを得ることに成功した。解析の結果、ヒトEGAは1細胞期において起こり、成熟mRNAを産物としているという新たな知見を提示した。バイオインファマティクス解析により、1細胞期胚EGA遺伝子群の多くは、2〜4細胞胚期まで発現が維持されたのち、8細胞期胚までに顕著に減少すること。また、EGAの上流制御遺伝子候補にMYC, MYCN, RABL6, E2F4等が含まれることを明らかにした。更に、1細胞期胚EGAは正常受精卵特有の発生制御機構を担っていることをも示唆した。

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Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

2022/05/13

イオンポンプ様イオンチャネル型ロドプシンChRmineによるイオン受動輸送の構造基盤

論文タイトル
Structural basis for channel conduction in the pump-like channelrhodopsin ChRmine
論文タイトル(訳)
イオンポンプ様イオンチャネル型ロドプシンChRmineによるイオン受動輸送の構造基盤
DOI
10.1016/j.cell.2022.01.007
ジャーナル名
Cell
巻号
Volume185, Issue4
著者名(敬称略)
岸孝一郎、福田昌弘、加藤 英明 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 先進科学研究機構

抄訳

 光遺伝学は神経細胞の活動を光により制御する革新的技術である。光遺伝学には光駆動性イオンチャネルであるチャネルロドプシンが利用されており、中でも近年自然界から発見されたChRmineは、イオンポンプ型ロドプシンと類似の配列を持つにも関わらず、高い光感受性とチャネル活性、長波長光により活性化されるという強力な性質を有するイオンチャネルとして働くことが報告されており、その理由に注目が集まっていた。本研究では、ChRmineのクライオ電子顕微鏡構造を決定し、ChRmineがイオンチャネルとして機能する構造基盤の一端を明らかにした。また、得られた構造情報を用い、励起波長・キネティクス特性を向上させた改変型ChRmineを開発し、さらには3色の可視光を利用して複数の神経細胞集団を同時に光操作・計測するという発展的光遺伝学実験を成功させた。本研究成果は、ChRmineがイオンチャネルとして機能する仕組みの一端を解明しただけでなく、新規ロドプシンの設計や創製に対する道標、そして神経科学分野へ強力なツールを提供したという点で、神経科学、医療の発展につながると期待される。

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Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

2022/05/12

間葉系前駆細胞と筋幹細胞間のシグナル伝達が機械的負荷の増加に対する筋幹細胞応答を保証する

論文タイトル
Relayed signaling between mesenchymal progenitors and muscle stem cells ensures adaptive stem cell response to increased mechanical load
論文タイトル(訳)
間葉系前駆細胞と筋幹細胞間のシグナル伝達が機械的負荷の増加に対する筋幹細胞応答を保証する
DOI
10.1016/j.stem.2021.11.003
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Volume29, Issue2
著者名(敬称略)
金重 紀洋,深田 宗一朗 他
所属
大阪大学大学院 薬学研究科

抄訳

筋力トレーニング(筋トレ)のように骨格筋への力学的負荷を増加させると,骨格筋は適応し筋量・筋力が増大する。この筋量増大(筋肥大)には増殖した筋幹細胞(MuSC)から供給される筋線維(骨格筋の実質多核細胞)核の増加が必須である。しかし, MuSCが力学的負荷依存的に増殖するメカニズムは解明されていなかった。本研究では,外科的な筋トレマウスモデルにおいて,骨格筋固有の間葉系前駆細胞が力学的負荷に応答し,MuSCの増殖を刺激することを明らかにした。その機構として,間葉系前駆細胞内のYap/Tazが力学的負荷依存的に核に集積し,トロンボスポンジン-1(Thbs1)の産生を誘導,その後Thbs1がMuSC上の受容体CD47を介してMuSCの増殖が促進することが明らかとなった。またCD47を介したMuSCの増殖には,MuSCの静止期シグナルであるカルシトニン受容体 (CalcR) の発現低下が必須であり,MuSC特異的なCalcR欠損マウスにCD47 agonistを投与すると,損傷も運動もない条件下で人工的にMuSCの増殖・筋線維核の増加を誘導できた。

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Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

2022/05/11

日本人非定型大腿骨骨折のエクソーム解析

論文タイトル
The Contribution of Deleterious Rare Alleles in ENPP1 and Osteomalacia Causative Genes to Atypical Femoral Fracture
論文タイトル(訳)
日本人非定型大腿骨骨折のエクソーム解析
DOI
10.1210/clinem/dgac022
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107, Issue5, May 2022, Pages e1890–e1898
著者名(敬称略)
古川 宏 他
所属
独立行政法人国立病院機構東京病院リウマチ科

抄訳

非定型大腿骨骨折(AFF)は非外傷性に大腿骨骨幹部に起きる骨折であり、アジア人での発症率が高く、遺伝要因の関与が疑われている。近年アレル頻度1%以下のレアバリアントが多くの疾患の発症に関わっていることが明らかになってきた。そこで、日本人AFF患者のエクソーム解析を行い、骨軟化症に関わる遺伝子群の有害なレアバリアント頻度を、日本人健常人と比較した。ENPP1 の有害なレアバリアント頻度はAFFで高く、骨軟化症の発症に関わる遺伝子群の有害なレアバリアント頻度もAFFで高かった。有害なレアバリアントを持つAFF症例は自己免疫疾患を伴っていなかった。これらの結果から、日本人では骨軟化症の発症に関わる遺伝子群がAFFの発症に重要な役割を果たしていると考えられる。

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Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

2022/04/28

ビロードキンクロ(Melanitta fusca)から分離された鳥類ロタウイルスA株の特性解析:鳥類ロタウイルスの世界的拡散における渡り鳥の役割

論文タイトル
Characterization of an avian rotavirus A strain isolated from a velvet scoter (Melanitta fusca): implication for the role of migratory birds in global spread of avian rotaviruses
論文タイトル(訳)
ビロードキンクロ(Melanitta fusca)から分離された鳥類ロタウイルスA株の特性解析:鳥類ロタウイルスの世界的拡散における渡り鳥の役割
DOI
10.1099/jgv.0.001722
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology,Volume 103, Issue 2
著者名(敬称略)
藤井 祐至、伊藤 直人 他
所属
岐阜大学 応用生物科学部 共同獣医学科 人獣共通感染症学研究室

抄訳

 G18P[17]遺伝子型の鳥類ロタウイルスA(RVA)がハトや一部の哺乳動物に対して病原性を示した事例が、様々な国や地域で報告されている。しかし、これらの鳥類RVA株がどのようにして世界的に拡散したのかについては、不明な点が多い。本研究では、鳥類RVAの拡散における渡り鳥の役割を明らかにするために、渡り鳥であるビロードキンクロ由来RVA RK1株の全遺伝子配列を解読し、既知の株と比較した。その結果、RK1株は、世界各地で検出されたG18P[17]株と遺伝的に近縁な関係にあることが判明し、G18P[17]株の広域伝播に渡り鳥が関与した可能性が示された。さらに、RK1株は哺乳マウスに下痢を誘発したことから、渡り鳥RVAの中には哺乳動物に対して病原性を示すウイルス株が存在することが示された。以上より、哺乳動物に病原性を有する鳥類RVA株が、渡り鳥を介して世界的に拡散する可能性が明らかとなった。

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2022/04/27

牛第一胃内から分離された新規細菌種Prevotella lacticifex

論文タイトル
Prevotella lacticifex sp. nov., isolated from the rumen of cows
論文タイトル(訳)
牛第一胃内から分離された新規細菌種Prevotella lacticifex
DOI
10.1099/ijsem.0.005278
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,Volume 72, Issue 3
著者名(敬称略)
真貝 拓三 他
所属
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構  畜産研究部門

抄訳

反芻動物の第一胃では植物バイオマスの分解や発酵が行われており、プレボテラ属細菌はこのプロセスに重要な役割を担っている。プレボテラ属は遺伝系統学的に50を超える細菌種から構成されるが、その生理機能は細菌種によって異なる。このため、プレボテラ属細菌をより詳しく理解するためには、遺伝系統学的な多様性とともに、細菌種レベルでのゲノム・生理特性を詳しく明らかにしていく必要がある。本研究では、プロピオン酸産生の多い第一胃内発酵特性を持つホルスタイン種乳用牛の第一胃からグラム陰性、嫌気性の細菌株を分離し、同定した。分離代表株R5019株は、16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析によりプレボテラ属に分類された。R5019株と最近縁種との16S rRNA遺伝子の相同性、ゲノム全体の一致度、および類似性を判別するANI値、およびデジタルDNA–DNAハイブリダイゼーション値は同種とされる閾値を超えていた。またR5019株の生化学的・生理的特徴からも本細菌種がプレボテラ属に属する新菌種と考えられ、乳酸産生の特徴からPrevotella lacticifexと命名提案した。

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2022/04/20

大腸菌のL-アラニン排出輸送体AlaEの基質排出活性とオリゴマー形成における第4膜貫通領域の重要性

論文タイトル
Importance of transmembrane helix 4 of l-alanine exporter AlaE in oligomer formation and substrate export activity in Escherichia coli
論文タイトル(訳)
大腸菌のL-アラニン排出輸送体AlaEの基質排出活性とオリゴマー形成における第4膜貫通領域の重要性
DOI
10.1099/mic.0.001147
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology Volume 168, Issue 3
著者名(敬称略)
伊原 航平、金 世怜、安藤 太助、米山 裕
所属
東北大学大学院農学研究科 生物産業創成科学専攻

抄訳

AlaEは細胞内に過剰に蓄積したL-アラニンを細胞外に排出することで細胞の恒常性を維持する機能を担う。AlaEの構造に関する情報は少なく、基質排出のメカニズムは明らかになっていない。また、AlaEは149のアミノ酸残基からなる小さい輸送体であるため、オリゴマーを形成する可能性が考えられる。本研究では、架橋試薬による修飾実験やプルダウンアッセイを実施し、AlaEがホモオリゴマーを形成することを示した。また、これまでの研究でAlaEの第4膜貫通領域(TM4)上に存在するGxxxGモチーフが機能に重要である可能性が示唆されていた。本研究ではTM4の重要性を明らかにするため、TM4のアミノ酸残基をアラニン残基に置換した変異体を作製して活性を評価した。その結果、GxxxGモチーフ周囲のアミノ酸残基の置換体は低いL-アラニン排出活性を示し、TM4のGxxxGモチーフが基質の排出に重要であることが明らかとなった。次に、このモチーフがオリゴマー形成に関与するかどうかをプルダウンアッセイで評価した結果、AlaE変異体は依然としてオリゴマーを形成した。以上より、TM4のGxxxGモチーフはAlaE活性に不可欠な役割を果たすが、AlaEオリゴマーの形成には関与しないことが示された。

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