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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2022/11/07

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染カニクイザルモデルの樹立

論文タイトル
Establishment of a Cynomolgus Macaque Model of Human T-Cell Leukemia Virus Type 1 (HTLV-1) Infection by Direct Inoculation of Adult T-Cell Leukemia Patient-Derived Cell Lines for HTLV-1 Infection
論文タイトル(訳)
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染カニクイザルモデルの樹立
DOI
10.1128/jvi.01339-22
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology 31 October 2022 e01339-22
著者名(敬称略)
浦野 恵美子 保富 康宏 他
所属
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター

抄訳

HTLV-1感染により、感染者(キャリア)のおよそ5%が長い潜伏期間を経て難病である成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を発症するリスクを背負っているが、HTLV-1感染に対する予防法や効果的な治療法は開発されいない。本研究グループはこれらの開発を加速するため、HTLV-1感染霊長類モデルが必要であると考え、HTLV-1感染カニクイザルモデルの確立に成功した。ウイルス単体としてではなく感染細胞から新たな細胞へ伝搬するHTLV-1では、感染源として用いるHTLV-1産生細胞株が重要であると考え、ATL患者由来のHTLV-1高産生細胞株であるATL-040細胞をウイルス源としてカニクイザルに静脈接種したところ、100%の確率で感染が認められた。感染も長期にわたり維持され、慢性感染症であるHTLV-1感染を反映していた。また、ヒトにおいて高いウイルス量や宿主免疫環境と発症の関連が報告されていることから、免疫制御によるアプローチによりウイルス量の増加が観察され、宿主免疫によるHTLV-1制御が示唆された。

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2022/11/04

Ligilactobacillus agilisがもつフラジェリンの特定アミノ酸置換による抗原性の改変

論文タイトル
Immunogenic Modification of Ligilactobacillus agilis by Specific Amino Acid Substitution of Flagellin
論文タイトル(訳)
Ligilactobacillus agilisがもつフラジェリンの特定アミノ酸置換による抗原性の改変
DOI
10.1128/aem.01277-22
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology October 2022  Volume 88  Issue 20  e01277-22
著者名(敬称略)
梶川 揚申 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科

抄訳

有べん毛乳酸菌Ligilactobacillus agilisは運動性を示す腸内共生細菌である。細菌べん毛繊維構成タンパク質であるフラジェリンはToll-like receptor 5 (TLR5)のアゴニストとして知られるが、興味深いことにL. agilis由来のフラジェリンは、他と類似した構造を持つにも関わらず抗原性が低い。我々はこの理由がTLR5認識部位におけるわずかなアミノ酸残基の違いにあるという仮説に基づき、当該アミノ酸残基を置換した組換えフラジェリンタンパク質およびL. agilis変異株を作製してこれを検証した。結果として、低い抗原性に関わると予測された3か所のアミノ酸残基を置換することで、L. agilisのフラジェリンおよび変異株の抗原性が顕著に増強された。以上より、宿主免疫系が病原細菌と共生細菌を識別する上で、これらのアミノ酸残基の違いが重要であると結論付けられた。

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2022/11/04

Pre-mRNAから翻訳されたCDKインヒビターp27のトランケート型タンパク質はG2期停止を引き起こす

論文タイトル
A Truncated Form of the p27 Cyclin-Dependent Kinase Inhibitor Translated from Pre-mRNA Causes G2-Phase Arrest
論文タイトル(訳)
Pre-mRNAから翻訳されたCDKインヒビターp27のトランケート型タンパク質はG2期停止を引き起こす
DOI
10.1128/mcb.00217-22
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology 01 November 2022 e00217-22
著者名(敬称略)
甲斐田大輔 他
所属
富山大学 学術研究部医学系 遺伝子発現制御学講座

抄訳

Pre-mRNAスプライシングは、真核生物の遺伝子発現にとって必須の機構である。我々は、スプライシング阻害が細胞周期停止を引き起こすことや、細胞周期停止がスプライシング阻害剤の抗がん活性の原因であることを明らかとしてきた。しかしながら、細胞周期停止の詳細な分子メカニズムは明らかではなかった。今回我々は、スプライシング阻害によりG2期で停止した細胞で、pre-mRNAから翻訳されたp27タンパク質のトランケート型(以下p27*)が蓄積していることを明らかとした。p27*の過剰発現はG2期停止を引き起こし、逆に、p27*のノックダウンによりG2/M期からG1期への移行が促進された。また、p27*はM期サイクリンと結合し、そのリン酸化活性を阻害した。さらに、全長のp27はG2/M期においてプロテアソームにより分解されるものの、p27*はプロテアソームによる分解を受けないことも明らかとなった。これらのことから、スプライシング異常時には、pre-mRNA由来のトランケート型タンパク質であるp27*が蓄積し、M期サイクリンを阻害することでG2期停止を引き起こしていると考えられる。

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2022/10/27

新型コロナウイルス変異株でスパイク蛋白質のL452部位に特定のアミノ酸が繰り返し選択される機序を探る

論文タイトル
Dissecting Naturally Arising Amino Acid Substitutions at Position L452 of SARS-CoV-2 Spike
論文タイトル(訳)
新型コロナウイルス変異株でスパイク蛋白質のL452部位に特定のアミノ酸が繰り返し選択される機序を探る
DOI
10.1128/jvi.01162-22
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology October 2022  Volume 96  Issue 20  e01162-22
著者名(敬称略)
Toong Seng Tan 上野 貴将 他
所属
熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター感染免疫学分野

抄訳

新型コロナウイルスのパンデミック宣言から3年足らずの間に、SARS-CoV-2の懸念される変異株が世界各地で出現し、感染者数の増加につながっています。また、こうした変異の蓄積が、ウイルスが複製する能力、感染性や免疫逃避性を高める方向へ進化しているのではないかと懸念されています。我々は、SARS-CoV-2スパイク蛋白質の中で、頻度が高く、繰り返して選択されるL452部位のアミノ酸置換に焦点を絞り、変異が選択される機序を解析しました。この部位にさまざまな変異を導入してウイルス学的、免疫学的な解析を行ったところ、新型コロナウイルスの変異獲得においては、ウイルス感染性や免疫逃避性のみならず、1つの塩基置換のみで、翻訳される蛋白質のアミノ酸が置換される変異が有意に選ばれていることを明らかにしました。

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2022/10/20

母体甲状腺機能低下症はM-オプシン発達遅延と関連する

論文タイトル
Maternal hypothyroidism is associated with M-opsin developmental delay
論文タイトル(訳)
母体甲状腺機能低下症はM-オプシン発達遅延と関連する
DOI
10.1530/JME-22-0114
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Journal of Molecular Endocrinology Volume 69: Issue 3 391–399
著者名(敬称略)
齊藤千真 堀口和彦 他
所属
群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座内分泌代謝内科学

抄訳

甲状腺ホルモンは、色覚に関わるオプシンの発達に重要であり、甲状腺機能低下モデルマウスでは、M-オプシンの発達が遅れ、S-オプシンの網膜上での分布が拡大する。しかし、母体甲状腺機能低下症がオプシンの発達に及ぼす影響については不明であった。本研究では、中枢性甲状腺機能低下モデルマウスである甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンノックアウトマウス(TRH-/-)を用い、TRH+/-の血清T4値が野生型と同様であるが、TRH-/-の血清T4が約60%低くなる特性を生かし、母体甲状腺機能低下症がオプシン発達に及ぼす影響について検討した。その結果、甲状腺機能が低下した母体TRH-/-から生まれたTRH+/-では、甲状腺機能がほとんど低下していない母体TRH+/-から生まれたTRH+/-に比べて、生後12日目のM-オプシン発現が低かった。これらの結果は、母体甲状腺機能低下症が新生児マウスの発育初期にM-オプシン発達遅延を引き起こす可能性を示唆するものであった。

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2022/10/13

プレシジョン医療における前立腺癌のアンドロゲン受容体変異

論文タイトル
Androgen receptor mutations for precision medicine in prostate cancer
論文タイトル(訳)
プレシジョン医療における前立腺癌のアンドロゲン受容体変異
DOI
10.1530/ERC-22-0140
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Volume 29: Issue 10 R143–R155
著者名(敬称略)
塩田 真己 他
所属
九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野

抄訳

進行性前立腺癌の治療には、アンドロゲン遮断療法やアビラテロン、エンザルタミドなどのアンドロゲン受容体(AR)経路阻害剤などのホルモン療法が広く用いられている。しかし、ほとんどの前立腺癌においてホルモン療法後に治療抵抗性が出現し、その原因のひとつとしてAR変異が知られている。前立腺癌では様々なAR変異が報告されているが、とりわけAR変異(L702H、W742L/C、H875Y、F877L、T878A/S)は治療抵抗性となった後に頻繁にみられる。興味深いことに、これらのホットスポット変異は、ステロイドや抗アンドロゲンなどのリガンドの結合親和性を変化させ、AR経路阻害剤に対する反応を変化させる可能性がある。現在、前立腺癌の治療において、ゲノム情報を活用して患者に適した治療を選択するプレシジョン医療は、ますます重要な役割を果たすようになってきている。AR変異とAR経路阻害剤の効果に関する臨床データが蓄積されつつあることから、AR変異の状態をリキッドバイオプシーによりモニタリングすることは、前立腺癌のプレシジョン医療を提供するための有望なアプローチである。しかし、前立腺癌におけるARホットスポット変異の臨床的意義に関する総説はほとんどないため、本総説では、AR変異に関する報告をまとめ、臨床利用へ向けた展望について考察した。

 

 

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2022/10/11

糖尿病クラスター分類によるサルコペニア予測:日本人前向きコホート研究

論文タイトル
Detecting Sarcopenia Risk by Diabetes Clustering: A Japanese Prospective Cohort Study
論文タイトル(訳)
糖尿病クラスター分類によるサルコペニア予測:日本人前向きコホート研究
DOI
10.1210/clinem/dgac430
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 107, Issue 10, October 2022, Pages 2729–2736
著者名(敬称略)
田辺 隼人, 島袋 充生 他
所属
福島県立医科大学 糖尿病内分泌代謝内科学講座

抄訳

糖尿病は、現在、1型、2型に分類する。2018年、北欧グループは人工知能解析で、成人発症糖尿病は5つのクラスター(群)にわかれることを報告し、福島医大グループは、日本人糖尿病も同様に5群にわかれることを確認した。糖尿病の臨床的特徴や合併症(腎症や冠動脈疾患)の割合が各群で違うことが様々な人種で報告されている。本研究は、糖尿病におけるサルコペニア発症率が各群で違うか検討した。対象は1型または2型糖尿病586名。観察開始時サルコペニアは38名(6.5%)。これを除外した548名を3年間前向きに観察し、55名がサルコペニア新規発症と診断された。1群(自己免疫型)と2群(重度インスリン欠乏型)が、サルコペニア発症の高リスク群と判明した。一方、従来の1型、2型糖尿病間でサルコペニアの発症頻度に差はなかった。本研究は、クラスター分類が、糖尿病患者のサルコペニアの予測や予防に有用である可能性を初めて示した。

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2022/10/03

Pseudoxanthomonas japonensisに由来するサブクラスB3メタロβラクタマーゼの特徴

論文タイトル
Biochemical Characterization of the Subclass B3 Metallo-β-Lactamase PJM-1 from Pseudoxanthomonas japonensis
論文タイトル(訳)
Pseudoxanthomonas japonensisに由来するサブクラスB3メタロβラクタマーゼの特徴
DOI
10.1128/aac.00691-22
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy September 2022  Volume 66  Issue 9  e00691-22
著者名(敬称略)
山田 景土 
所属
東邦大学 医学部微生物・感染症学講座

抄訳

 メタロβラクタマーゼ(MBL)は3つのサブクラス(B1, B2およびB3)に分類され、活性中心に亜鉛を有する高域スペクトラムなβラクタマーゼである。Pseudoxanthomonas japonensisは環境中に生息するブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌であり、環状ゲノム上(染色体性)にB3のMBL遺伝子(blaPJMと命名)を有する。本酵素遺伝子は、配列多様性を認めるものの、Pseudoxanthomonas属の中で、周辺配列を含めて高い保存性が認められた。また、これらの一部が確率は低いながら外来性に緑膿菌に運ばれたという事実も報告されており、Pseudoxanthomonasは薬剤耐性因子のプールになっている可能性も示唆されている。本研究では、blaPJMの遺伝的特徴に加え、pETシステムを用いたPJM大量発現系からPJMの精製、酵素学的機能解析を行なっている。

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2022/09/29

TIA-1プリオン様ドメインのALS変異は高度に凝縮した病原体構造を誘起する

論文タイトル
ALS mutations in the TIA-1 prion-like domain trigger highly condensed pathogenic structures
論文タイトル(訳)
TIA-1プリオン様ドメインのALS変異は高度に凝縮した病原体構造を誘起する
DOI
10.1073/pnas.2122523119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS2022 Vol. 119 No. 38 e2122523119
著者名(敬称略)
関山 直孝 他
所属
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理学教室構造生理学分科

抄訳

T-cell intracellular antigen-1(TIA-1)は、プリオン様ドメイン(PLD)の自己組織化を介してストレス顆粒の形成に関与している。TIA-1のPLDには、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やウェランダー遠位型ミオパチー(WDM)といった神経変性疾患に関連するアミノ酸変異が同定されていたが、これらの変異がPLDの自己組織化特性にどのような影響を及ぼすのかは不明であった。本研究ではこれらの変異が引き起こす微細な構造変化を明らかにした。NMR解析では、PLDの動的構造が5アミノ酸残基の物理化学的性質の協調により決定されることを示した。分子動力学シミュレーション、3次元電子線結晶構造解析、生化学的アッセイにより、ALS変異のP362LとA381Tはそれぞれ、ベータシート相互作用と高密度凝縮を誘導することにより、液滴形成を促進することが明らかとなった。これらの結果は、ALS変異が液滴形成とそれに続くアミロイド線維化を促進することを示唆しており、我々はこの凝縮過程が病原性を生み出しているのではないかと考えている。

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2022/09/22

PD-1/PD-L1抗体で治療された肺がん患者の帯状疱疹

論文タイトル
Herpes zoster in patients with lung cancer treated with PD-1/PD-L1 antibodies
論文タイトル(訳)
PD-1/PD-L1抗体で治療された肺がん患者の帯状疱疹
DOI
10.2217/imt-2021-0318
ジャーナル名
Immunotherapy
巻号
Immunotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
長井 良昭、萩原 弘一 他
所属
自治医科大学 呼吸器内科学部門

抄訳

【背景】帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされ、免疫力の低下または悪性腫瘍と関連している。また、免疫システムが低下した状態から回復する際に見られる免疫再構築症候群として発生することも知られている。免疫チェックポイント阻害薬と帯状疱疹のリスクに関する臨床データは報告されていない。我々は、PD-1/PD-L1抗体またはEGFR-TKIのいずれかで治療された肺癌患者における帯状疱疹の発症を比較した。
【方法】149例のEGFR-TKIで治療されたEGFR-TKI治療群と136例のPD-1/PD-L1抗体で治療されたPD-1/PD-L1抗体治療群にてカプラン・マイヤー法を使用して帯状疱疹の発症を比較した。
【結果】帯状疱疹の発症は、PD-1/PD-L1抗体治療群で、EGFR-TKI治療群よりも有意に多かった(P=0.016、ハザード比=0.20) 、95% 信頼区間 = 0.048–0.84)。
【結論】PD-1/PD-L1抗体治療は帯状疱疹の発症に関与していた。臨床医は免疫チェックポイント阻害薬による帯状疱疹の発症に注意する必要がある。

 

 

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