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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2019/02/18

クッシング症候群において脂肪細胞GRは多様な機序を介して健康的肥満を抑制する

論文タイトル
Adipocyte GR Inhibits Healthy Adipose Expansion Through Multiple Mechanisms in Cushing Syndrome
論文タイトル(訳)
クッシング症候群において脂肪細胞GRは多様な機序を介して健康的肥満を抑制する
DOI
10.1210/en.2018-01029
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Vol.160 No.3 (504–521)
著者名(敬称略)
林 令子, 奥野 陽亮, 大月 道夫 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学

抄訳

クッシング症候群(CS)は、グルココルチコイド過剰により肥満・糖脂質代謝異常・脂肪肝等を惹起する。今回、CSにおける脂肪細胞グルココルチコイド受容体(GR)の病態学的意義を検討した。脂肪細胞特異的GR欠損マウス(AGRKO)を作出し、コルチコステロン飲水投与によりCS病態モデルを作成したところ、AGRKOでは対照群と比較し、白色脂肪組織重量の増加、脂肪肝の改善、血中FFAやHOMA-Rの低下を認めた。特に白色脂肪組織では脂質分解酵素Atglの遺伝子発現量が低下した。3T3-L1脂肪細胞における検討では、Atglのイントロン上に新規GR結合配列を同定した。AGRKOでは、白色脂肪組織重量の増加にも関わらず、インスリン抵抗性の改善を認め、Adipose Healthy Expansionを呈していると考えられた。ヒトCSの副腎周囲脂肪組織の臨床検体およびAGRKO脂肪組織を用いたRNAシークエンス解析から、脂肪組織GRはCS病態のヒト、マウスにおいて、脂肪分解、脂肪組織リモデリング抑制、preadipocyteの増殖抑制、糖取り込み低下などを介してAdipose Healthy Expansionを抑制すると考えられた。以上の結果は、CSの代謝異常や中心性肥満の機序解明につながる可能性がある。

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2019/02/14

HER2陽性唾液腺導管癌に対するトラスツズマブ+ドセタキセル療法の第II相試験

論文タイトル
Phase II Trial of Trastuzumab and Docetaxel in Patients With Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Salivary Duct Carcinoma
論文タイトル(訳)
HER2陽性唾液腺導管癌に対するトラスツズマブ+ドセタキセル療法の第II相試験
DOI
10.1200/JCO.18.00545
ジャーナル名
Journal of Clinical Oncology American Society of Clinical Oncology
巻号
Journal of Clinical Oncology 37, no. 2 (January 2019) 125-134.
著者名(敬称略)
高橋 秀聡、多田雄一郎 他
所属
国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センター

抄訳

唾液腺導管癌は、唾液腺癌の10~20%程度を占め、1年間の発症率が10万人あたり0.3人以下とされる希少癌である。標準治療である根治切除術と術後放射線治療を施行しても、約半数が遠隔転移をきたし、5年生存率が約40%の予後不良な高悪性度唾液腺癌である。しかし、症例数が少ないため、これまで標準的薬物療法は確立されていない。病理学的に、本腫瘍は約40%の症例でHER2が強発現を示すことが知られている。そこで、切除不能・再発転移HER2陽性唾液腺導管癌に対するトラスツズマブ+ドセタキセル療法の有効性と安全性を検討する単施設、単アーム、第II相臨床試験(UMIN000009437)を実施した。 トラスツズマブは初回8 mg/kg、維持量6 mg/kgとドセタキセル70 mg/m2 を3週毎に投与した。唾液腺導管癌57例が登録された。奏効率70.2%(95%CI: 56.6–81.6%)、臨床的有用率84.2% (95% CI: 72.1–92.5%)、平均無増悪期間8.9ヶ月(95%CI: 7.8–9.9ヶ月)、平均全生存期間39.7ヶ月(95%CI: not reached)であった。頻度の高い有害事象として、貧血(52例91%)、白血球減少症(51例89%)、好中球減少症(50例88%) であった。最も頻度の高いGrade4の有害事象は好中球減少症(34例60%)であった。Grade3発熱性好中球減少症は8例14%に認めた。Grade2以上の心機能障害、50%以上の心拍出量低下の症例は認めなかった。 本研究により、切除不能・再発転移HER2陽性唾液腺導管癌に対し、トラスツズマブ+ドセタキセル療法が有望な治療であることが示された。

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2019/02/07

320 列面検出器 CT を用いた Bone subtraction iodine画像による上咽頭癌の頭蓋底浸潤評価

論文タイトル
Bone Subtraction Iodine Imaging Using Area Detector CT for Evaluation of Skull Base Invasion by Nasopharyngeal Carcinoma
論文タイトル(訳)
320 列面検出器 CT を用いた Bone subtraction iodine画像による上咽頭癌の頭蓋底浸潤評価
DOI
10.3174/ajnr.A5906
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 1 (135-141)
著者名(敬称略)
檜山 貴志,久野 博文 他
所属
国立がん研究センター東病院 放射線診断科

抄訳

従来のCTはMRIに比べコントラスト分解能が低く、上咽頭癌の頭蓋底浸潤評価において骨内の造影効果を正確に評価することは困難であった。Bone subtraction iodine (BSI) 画像は、320 列面検出器 CT を用いて造影前後のCT 画像を正確に差分することにより,骨内のヨード造影剤を描出する手法である.本研究は,上咽頭癌頭蓋底浸潤の評価にBSI画像が有用かを検証した.連続した上咽頭癌患者44例を対象とし,320列面検出器CTを用いて,造影前後の volume scanを非剛体位置あわせを用いて差分し,BSI画像を作成した.2名の神経放射線科医により,頭蓋底6部位に対し,従来のCTのみ(CCT)の評価とCCTとBSIを組み合わせた(CT-BSI画像) 評価を比較し、MRI・CTの総合的評価を参照基準として診断能を算出した。26症例(84亜部位)で頭蓋底浸潤を認め、CT-BSI画像ではCCTよりも高い感度(92.9% vs 78.6%, P=.02),特異度(95.6% vs 86.1%, P=.01)を示し、ROC曲線によるAUCはCT-BSIで有意に大きかった(AUC = 0.98 vs 0.90, P<.001).BSI画像は骨組織内のヨード造影剤分布が正確に評価可能となり,CTによる頭蓋底浸潤の診断能向上に寄与する。この技術により造影MRIが撮像できない患者に対しても、正確な病期決定と放射線治療計画が可能となると考えられる.

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2019/02/05

隕石母天体での水質変質過程における有機物と鉱物の相互作用の理解に向けた炭素質コンドライト隕石のナノスケール赤外分光イメージング分析

論文タイトル
Nanoscale infrared imaging analysis of carbonaceous chondrites to understand organic-mineral interactions during aqueous alteration
論文タイトル(訳)
隕石母天体での水質変質過程における有機物と鉱物の相互作用の理解に向けた炭素質コンドライト隕石のナノスケール赤外分光イメージング分析
DOI
10.1073/pnas.1816265116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 116 no. 3 753-758
著者名(敬称略)
癸生川 陽子 他
所属
横浜国立大学 大学院工学研究院

抄訳

Synthetic MRIは任意のコントラスト強調像を1回のスキャンのデータに基づいて作成する事ができる技術であるが、 Synthetic FLAIRは従来法FLAIRよりも画質が低く、臨床導入を妨げる要因となっていた。本研究は、Deep LearningによりSynthetic FLAIRの画質を向上させることを目的として行った。40人の多発性硬化症患者を従来法FLAIRとSynthetic MRIによってスキャンし、30人の訓練データと10人のテストデータに分けた。従来法FLAIRを教師データとして、Synthetic MRIの元画像からDeep Learningを用いてFLAIR画像を作成した(DL-FLAIR)。従来法FLAIRを真の画像として計算したエラーはDL-FLAIRにおいてSyntheitc FLAIRよりも減少していた。DL-FLAIRにおける病変の描出能は従来法FLAIRと同程度であった。また、DL-FLAIRにおいてSynthetic FLAIRに特有のアーチファクトであるgranular artifactとswelling artifactはDL-FLAIRにおいて減少した。Deep Learningを用いて、Synthetic FLAIRの画質を向上させることに成功したと考えられる。

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2019/01/24

腎集合管における電解質輸送とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の制御機構

論文タイトル
Electrolyte transport in the renal collecting duct and its regulation by the renin–angiotensin–aldosterone system
論文タイトル(訳)
腎集合管における電解質輸送とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の制御機構
DOI
10.1042/CS20180194
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press Limited
巻号
Vol.133 No.1 (75-82)
著者名(敬称略)
山崎 修, 柴田 茂 他
所属
帝京大学医学部内科学講座腎臓グループ/研究室

抄訳

Synthetic MRIは任意のコントラスト強調像を1回のスキャンのデータに基づいて作成する事ができる技術であるが、 Synthetic FLAIRは従来法FLAIRよりも画質が低く、臨床導入を妨げる要因となっていた。本研究は、Deep LearningによりSynthetic FLAIRの画質を向上させることを目的として行った。40人の多発性硬化症患者を従来法FLAIRとSynthetic MRIによってスキャンし、30人の訓練データと10人のテストデータに分けた。従来法FLAIRを教師データとして、Synthetic MRIの元画像からDeep Learningを用いてFLAIR画像を作成した(DL-FLAIR)。従来法FLAIRを真の画像として計算したエラーはDL-FLAIRにおいてSyntheitc FLAIRよりも減少していた。DL-FLAIRにおける病変の描出能は従来法FLAIRと同程度であった。また、DL-FLAIRにおいてSynthetic FLAIRに特有のアーチファクトであるgranular artifactとswelling artifactはDL-FLAIRにおいて減少した。Deep Learningを用いて、Synthetic FLAIRの画質を向上させることに成功したと考えられる。

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2018/12/20

アンギオポエチン様因子2の増加は,糖尿病性腎症悪化の誘因となる

論文タイトル
Angiopoietin-Like Protein 2 Promotes the Progression of Diabetic Kidney Disease
論文タイトル(訳)
アンギオポエチン様因子2の増加は,糖尿病性腎症悪化の誘因となる
DOI
10.1210/jc.2017-02705
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
Vol.104 No.1 (172–180)
著者名(敬称略)
石井俊史, 古屋 文彦,北村 健一郎 他
所属
山梨大学大学院医学工学総合研究部医学域内科学講座第3教室

抄訳

アンギオポエチン様因子2 (ANGPTL2)は,生活習慣病を背景とする慢性炎症により血管内皮細胞での産生が増加し,血中濃度が上昇することが知られている.本研究ではANGPTL2の発現が誘導されるメカニズムと,産生されたANGPTL2の糸球体上皮細胞(ポドサイト)への作用をin vitroで解析し,糖尿病性腎症患者を対象に腎機能障害進展を予測するバイオマーカーとしての血中ANGPTL2値の有用性を検討した. ANGPTL2蛋白の発現はエピジェネティクな制御を受け,慢性炎症やインスリン抵抗性を合併する糖尿病性腎症では,プロモーターが脱メチル化され発現が増加し,血中濃度が増加していると考えられた.さらに血中のANGPTL2はポドサイトに直接作用し,細胞骨格蛋白の局在を変化させることで糖尿病性腎症の進展に作用している可能性があり,糖尿病性腎症悪化を予測するバイオマーカーとしての有用性に加えて,新規の治療標的になりうることが示唆された.

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2018/12/19

ゲート残基変異体の結晶構造で明らかになったカルシウムポンプのE2→E1遷移のメカニズム

論文タイトル
Mechanism of the E2 to E1 transition in Ca2+ pump revealed by crystal structures of gating residue mutants
論文タイトル(訳)
ゲート残基変異体の結晶構造で明らかになったカルシウムポンプのE2→E1遷移のメカニズム
DOI
10.1073/pnas.1815472115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 115 no. 50 12722-12727
著者名(敬称略)
恒川 直樹 豊島 近 他
所属
東京大学定量生命科学研究所膜蛋白質解析研究分野 豊島研究室

抄訳

筋小胞体カルシウムポンプは濃度勾配に抗してCa2+を細胞質から小胞体内腔へと能動輸送する膜蛋白質である。Ca2+に対する親和性の改変と2つあるゲートの開閉をATPの加水分解と共役させることで能動輸送を実現する。Ca2+運搬直後のE2状態ではCa2+に対する親和性は低くCa2+に配位する酸性残基はプロトン化している。プロトンが離脱するとCa2+親和性の高いE1状態へと遷移する。このとき非常に大規模で複雑な構造変化が起こるが、その順序等は不明である。細胞質側ゲートであるGlu309はCa2+に配位し、E2状態ではプロトン化していると考えられている。従って、そのGln置換体はE2状態の構造に何ら影響を与えないと期待されたが、X線結晶解析の結果、非常に大規模な構造変化が生じており、細胞質ドメインの配置等はE1に近いことが判明した。一方で、Ca2+配位残基の配置(従ってプロトン化状態)は天然蛋白質のE2状態と完全に同一であった。この結果、何がE2状態の本質的構造要素であるかが判明し、量子化学計算の結果、大規模な構造変化はカルボニル基とプロトン化Glu / Gln間に形成される水素結合の僅かな距離の差によること、Glu309脱プロトン化がE2状態に必須な構造要素を破壊しE1状態への遷移を誘起することが理解された。

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2018/12/18

Vasostatin-1の動脈硬化抑制作用

論文タイトル
Inhibitory effects of vasostatin-1 against atherogenesis
論文タイトル(訳)
Vasostatin-1の動脈硬化抑制作用
DOI
10.1042/CS20180451
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Vol.132 No.23 (2493-2507)
著者名(敬称略)
佐藤 裕希, 渡部 琢也 他
所属
東京薬科大学 生命科学部 心血管医科学研究室

抄訳

我々のトランスレーショナルリサーチにより、新規ペプチドであるVasostatin-1 (VS1)の動脈硬化抑制作用が世界で初めて明らかになった。動脈硬化の主要現象である血管内皮細胞やマクロファージの炎症、マクロファージの泡沫化、血管平滑筋細胞の遊走・増殖、細胞外マトリックスの産生に対するVS1の作用をin vitroで、ApoE欠損マウスへのVS1投与により動脈硬化病変進展に対する作用をin vivoで検討した。更に、ヒト動脈硬化病変でのVS1発現を検討した。VS1は、ヒト橈骨動脈の動脈硬化病変に強発現していた。また、VS1の発現は、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にも確認された。VS1は、HUVECにおいてLipopolysaccharide刺激によるMonocyte Chemotactic Protein-1、Vascular Cell Adhesion Molecule-1、E-Selectinの発現の増加を抑制した。ヒト単球(THP1)からマクロファージへの分化過程でVS1に暴露すると炎症性M1が抑制され、Lipopolysaccharide刺激によるInterleukin-6とTumor Necrosis Factor-αの分泌を減少させた。VS1は、酸化LDLによるマクロファージの泡沫化を抑制した。その分子メカニズムとして、VS1によるCD36とAcyl-CoA:Cholesterol Acyltransferase-1の発現の抑制及びATP-Binding Cassette Transporter A1の発現の促進が認められた。VS1は、Angiotensin Ⅱ刺激によるHASMCの遊走、Collagen-3と Fibronectinの発現を抑制した。ApoE欠損マウスにVS1を投与したところ、空腹時血糖値とインスリン抵抗性は改善し、大動脈における動脈硬化病変、プラーク内のマクロファージ浸潤や炎症、血管平滑筋細胞の含有量、Collagen-3発現を抑制した。故に、VS1は血管壁の分子を直接ターゲットにし、動脈硬化の予防・治療に有用である事が示唆された。

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2018/12/17

ヒト子宮内膜上皮細胞に発現するversicanV1はin vitroにおいてBeWo細胞スフェロイドの接着を促進する

論文タイトル
Versican V1 in human endometrial epithelial cells promotes BeWo spheroid adhesion in vitro
論文タイトル(訳)
ヒト子宮内膜上皮細胞に発現するversicanV1はin vitroにおいてBeWo細胞スフェロイドの接着を促進する
DOI
10.1530/REP-18-0333
ジャーナル名
Reproduction BioScientifica
巻号
Vol.157 No.1 (53–64)
著者名(敬称略)
宮﨑 有美子, 堀江 昭史 他
所属
京都大学医学部附属病院 産科婦人科

抄訳

子宮内膜の細胞外基質(ECM)は胚着床に重要な役割を果たす。ECMの一つであるversicanは大型のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンで、細胞増殖、接着、遊走をはじめとする種々の生命現象に関与する。本研究では、ヒト胚着床に果たすversicanの役割について検討した。免疫組織学的染色およびwestern blottingにて、ヒト子宮内膜上皮細胞(EECs)におけるversicanV1の発現は、分泌期中期において最大であった。EECsにエストロゲンとプロゲステロンを添加すると、versicanV1の発現が優位に上昇した。更に、in vitro着床モデルにおいて、versicanV1を強制発現させたIshikawa 細胞(ヒト子宮内膜癌細胞株)は、ヒト絨毛癌細胞株であるBeWo細胞塊の接着率を有意に上昇させた。以上の結果より、versicanV1はヒト胚着床に寄与している可能性が示唆された。

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2018/11/19

新生児のコルチゾール値は哺乳によって上昇する

論文タイトル
Versican V1 in human endometrial epithelial cells promotes BeWo spheroid adhesion in vitro
論文タイトル(訳)
新生児のコルチゾール値は哺乳によって上昇する
DOI
10.1210/jc.2018-01052
ジャーナル名
Reproduction BioScientifica
巻号
Vol.103 No.12 (4450–4455)
著者名(敬称略)
木下 正啓, 岩田 欧介 他
所属
名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野

抄訳

唾液コルチゾールの評価は成人だけでなく,乳幼児の生体リズムやストレスの評価に多用されるが,その影響因子は解明されていない。哺乳前後でコルチゾール値が変化するかを評価するために,修正在胎週数30-40週のNICU入院児53名の唾液を午前・午後の2回,3時間ごとの哺乳前および1時間後に採取し,コルチゾール値を評価した。哺乳によるコルチゾール値の上昇を,生後日齢と個体内の繰り返しを加味した一般化推定方程式で評価した結果,修正在胎週数37週以上と哺乳はコルチゾール高値と関連していた(共にp<0.001)。経口哺乳児は,経管栄養のみの児に比べて哺乳によるコルチゾール値の上昇が顕著であった(P = 0.034)。30分以上の緩徐 な栄養投与は,より短時間の哺乳・投与に比べてコルチゾール値の上昇が少なかった(p<0.001)。成人では食事によるコルチゾール値の上昇が知られていたが,新生児でも哺乳による同様の反応の存在が明らかになった。新生児では哺乳を加味することなくコルチゾールの評価が行われてきたため,これまでの研究結果の多くに解釈の見直しが必要である。早期の哺乳,特に経口哺乳が,視床下部-下垂体-副腎系の制御やその成熟に影響を与えるかを,今後の研究で明らかにする必要がある。

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