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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2019/11/19

小胞体膜タンパク質複合体はロドプシンの後続膜貫通ヘリックスの挿入に必要である

論文タイトル
ER membrane protein complex is required for the insertions of late-synthesized transmembrane helices of Rh1 in Drosophila photoreceptors
論文タイトル(訳)
小胞体膜タンパク質複合体はロドプシンの後続膜貫通ヘリックスの挿入に必要である
DOI
10.1091/mbc.E19-08-0434
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 30, No 23
著者名(敬称略)
平松 直樹、佐藤 卓至 他
所属
広島大学 総合科学部 総合科学研究科 人間科学部門

抄訳

  ER膜上のリボソームにより合成される複数回膜貫通型タンパク質は、翻訳と同時にトランスロコンによりER膜に挿入され、適切に折りたたまれ機能的なタンパク質となるが、その挿入・折りたたみの過程はよく分かっていない。私達は、小胞体膜タンパク質複合体(EMC)がロドプシンを含む複数膜貫通ドメインを持つ膜タンパク質の生合成に必要であり、その欠損が網膜変性を引き起こすことを報告していた(Satoh et al., 2015 eLife)。本研究では、EMCの機能を詳細に解析し、EMCがロドプシンの生合成とはじめの3つのヘリックスの挿入には必要がないが、それにひき続いて合成されるヘリックスの挿入に必要であることを示した。この結果は、EMCが複数膜貫通タンパク質の膜への挿入過程において、トランスロコンからの離脱が困難な膜貫通ヘリックスを認識し離脱を促進することによって、後方のヘリックスにトランスロコンを開放し、適切に挿入が行われることを可能にしていることを示している。

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2019/11/19

バンコマイシン感受性腸球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌によるマウス眼内炎に対するバクテリオファージ硝子体投与の治療効果

論文タイトル
Therapeutic Effects of Intravitreously Administered Bacteriophage in a Mouse Model of Endophthalmitis Caused by Vancomycin-Sensitive or -Resistant Enterococcus faecalis
論文タイトル(訳)
バンコマイシン感受性腸球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌によるマウス眼内炎に対するバクテリオファージ硝子体投与の治療効果
DOI
10.1128/AAC.01088-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 63, Issue 11
著者名(敬称略)
岸本 達真、福田 憲 他
所属
高知大学医学部眼科学講座

抄訳

  内眼手術後の腸球菌性眼内炎は,進行が早く、視力予後が不良な重篤な疾患である。またバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による術後眼内炎も増加している。バクテリオファージは細菌特異的に感染し溶菌させるウイルスである。我々は、マウス腸球菌眼内炎モデルに対しファージ硝子体投与の治療効果について検討した。
  バンコマイシン感受性腸球菌あるいはVREを硝子体に投与し眼内炎を誘導すると、24時間後には眼内炎が生じ,眼底は出血や硝子体混濁で透見不能となり、網膜電図での網膜機能は消失し、病理学的検討では網膜剥離を認めた。感染6時間後にファージを硝子体に投与すると,臨床スコア,生細菌数すべて有意に低下し、病理学的に網膜構造は保たれ、網膜電図でも網膜機能は維持されていた。
  ファージの硝子体投与は,薬剤感受性あるいは耐性に関わらずマウス眼内炎に対する治療効果があり,抗菌薬非依存性の新規治療法となる可能性が示唆された。

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2019/11/18

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ遺伝子の環境リザーバーとしての流入下水:キメラ型β-ラクタマーゼ CTX-M-64およびCTX-M-123の検出

論文タイトル
Wastewater as a Probable Environmental Reservoir of Extended-Spectrum-β-Lactamase Genes: Detection of Chimeric β-Lactamases CTX-M-64 and CTX-M-123
論文タイトル(訳)
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ遺伝子の環境リザーバーとしての流入下水:キメラ型β-ラクタマーゼ CTX-M-64およびCTX-M-123の検出
DOI
10.1128/AEM.01740-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 22
著者名(敬称略)
田中 隼斗、長野 則之 他
所属
信州大学大学院 医学系研究科 保健学専攻

抄訳

国内における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌およびESBL遺伝子拡散における水系環境の役割はほとんど知られていない。我々は長野県内の4箇所の下水処理場より採取した流入下水の実態調査の目的で、ESBL産生Escherichia coliの検出、薬剤耐性遺伝子の同定、一部の株のNGS解析などを行った。ESBL産生E. coli 50株は多様なST型に属していたが、主にblaCTX-M-15blaCTX-M-14blaCTX-M-27などの臨床上重要なESBL遺伝子を保有していた。特に全施設からヒト腸管外感染症に関連するB2-ST131クローンが分離されたこと、さらに、国内起源のヒト、食肉、畜産動物、環境由来株からこれまでに分離報告がないキメラ型ESBL遺伝子blaCTX-M-64およびblaCTX-M-123が検出されたことが注目された。NGS解析によりblaCTX-M-64保有E. coliではISEcp1介在性のblaCTX-M-64の染色体への転移が確認された。本研究からヒト臨床上重要な流行クローンやキメラ型ESBL産生株が流入下水中に存在していることが判明し、公衆衛生上重要な問題を提起している。

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2019/11/18

国内の下水処理施設流入下水に由来する家禽病原性大腸菌関連病原遺伝子保有Escherichia coliによるプラスミド性コリスチン耐性遺伝子mcr-1の獲得

論文タイトル
Acquisition of mcr-1 and Cocarriage of Virulence Genes in Avian Pathogenic Escherichia coli Isolates from Municipal Wastewater Influents in Japan
論文タイトル(訳)
国内の下水処理施設流入下水に由来する家禽病原性大腸菌関連病原遺伝子保有Escherichia coliによるプラスミド性コリスチン耐性遺伝子mcr-1の獲得
DOI
10.1128/AEM.01661-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 22
著者名(敬称略)
林 航、長野 則之 他
所属
信州大学大学院 総合医理工学研究科 医学系専攻

抄訳

コリスチン(CL)は多剤耐性グラム陰性桿菌感染症の最後の砦的治療薬であるが, プラスミド性CL耐性遺伝子mcrの拡散が世界的な問題となっている。mcrのリザーバーとして家畜が注目されているが, 国内の水系環境におけるmcrの実態は不明である。本研究では長野県内の下水処理場3施設の流入下水より検出されたCL耐性E. coli全7株を対象に, NGS解析を行った。その結果, 全株からmcr-1が認められ, 5株でIncX4プラスミド上に, 2株でIncI2プラスミド上に担われていた。これらのプラスミド全塩基配列は, 国内や中国をはじめとする海外で検出されたヒト臨床材料及び家畜由来CL耐性E. coliが保有するプラスミド全塩基配列と完全一致又は高い相同性を示した。さらに7株中5株がコリシンを含む家禽病原性大腸菌/新生児髄膜炎起因大腸菌関連病原遺伝子を同時に保有していた。そのうち4株でこれらがIncF typeのColVプラスミドに担われていたことが注目された。近年の異常気象による豪雨で地上への下水の溢水が頻繁化している。IncX4及びIncI2プラスミドはmcrの世界的な拡散に関与しており, 市中における薬剤耐性菌の拡散リスクの観点から水系環境の監視の重要性が示唆された。

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2019/11/18

もやもや病患者におけるベイズ推定法を用いた脳灌流MRIの脳血流量評価: 15OガスPETとSVD法との比較

論文タイトル
Bayesian Estimation of CBF Measured by DSC-MRI in Patients with Moyamoya Disease: Comparison with 15O-Gas PET and Singular Value Decomposition
論文タイトル(訳)
もやもや病患者におけるベイズ推定法を用いた脳灌流MRIの脳血流量評価: 15OガスPETとSVD法との比較
DOI
10.3174/ajnr.A6248
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 11 (1894-1900)
著者名(敬称略)
原 祥子 他
所属
東京医科歯科大学 脳神経外科

抄訳

【目的と背景】Singular value decomposition (SVD)法による脳潅流MRI(DSC)解析では、もやもや病患者の脳血流量(CBF)は不正確になることが知られている。ベイズ推定法によるDSC解析(ベイズ法)は最近考案され、平均通過時間(MTT)や脳血液量(CBV)を従来のSVD法より正確に算出可能と報告されている。本研究の目的は、もやもや病患者におけるベイズ法のDSC-CBFを、gold standardである15Oガスを用いたPET、および従来のSVD法と比較し、その有用性を検討することである。
【対象と方法】60日以内にDSC-MRIと15OガスPETを施行した19名のもやもや病患者(女性10名、22-52歳)を後方視的に解析した。DSCを3つのSVD法(standardと2つの block-circulant)およびベイズ法で解析し、CBFマップを作製した。DSC-MRIのCBFマップとPETのCBFを比較し、定性的・定量的評価を行った。
【結果】定性的な視覚評価において、ベイズ法のCBFはPETのCBFの低下をよく反映し(感度62.5%, 特異度100%, 陽性的中率100%, 陰性的中率78.6%)、SVD法(2つのblock-circulant)より有意に優れていた(特異度以外P < .03)。定量的評価において、ベイズ法のCBFとPETのCBFの絶対値の相関は3つのSVD法と同程度で(ρ = 0.46, P < .001)、ベイズ法のCBFはPETのCBFを過大評価した(平均+47.28 mL/min/100 g)。しかし、小脳比の相関をみると、ベイズ法のCBFはPETのCBFをよく反映しており(ρ = 0.56, P < .001)、3つのSVD法より有意に優れていた (P < .02)。
【結語】もやもや病患者において、ベイズ法によるDSC-CBF解析は、従来のSVD法よりも定性的・定量的に優れていた。

 

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2019/11/18

ヒートショックプロテイン90(HSP90)は風疹ウイルスp150タンパク質の機能性を担保して、ゲノム複製を支援する。

論文タイトル
Heat Shock Protein 90 Ensures the Integrity of Rubella Virus p150 Protein and Supports Viral Replication
論文タイトル(訳)
ヒートショックプロテイン90(HSP90)は風疹ウイルスp150タンパク質の機能性を担保して、ゲノム複製を支援する。
DOI
10.1128/JVI.01142-19
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology  Volume 93, Issue 22
著者名(敬称略)
坂田 真史 他
所属
国立感染症研究所 ウイルス第三部 第二室

抄訳

 風疹ウイルス感染細胞には、ゲノム複製を担う2種の非構造タンパク質、p150とp90が発現する。これらウイルスタンパク質は宿主細胞の様々な因子を利用して、ゲノム複製を行なっていることが予想される。本研究では、宿主細胞のタンパク質恒常性維持を担う分子シャペロンHSP90と非構造タンパク質の関連性を解析した。
 p150とp90は、前駆体ポリプロテインp200がp150領域に位置するウイルスプロテアーゼによって開裂されることにより生成される。この開裂は、ゲノム複製の進行に必須である。我々は、種々の分子生物学的手法を用いて、HSP90がp150領域と相互作用して開裂に関与すること、HSP90のシャペロン活性が開裂後のp150の安定性に寄与することを明らかにした。本知見より、HSP90とp150の相互作用がゲノム複製に重要であることが示唆された。

 

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2019/11/15

GATA2とPU.1は異なる分子機序によってマウス高親和性IgE受容体ベータサブユニット遺伝子(Ms4a2)の発現を制御する

論文タイトル
GATA2 and PU.1 Collaborate To Activate the Expression of the Mouse Ms4a2 Gene, Encoding FcεRIβ, through Distinct Mechanisms
論文タイトル(訳)
GATA2とPU.1は異なる分子機序によってマウス高親和性IgE受容体ベータサブユニット遺伝子(Ms4a2)の発現を制御する
DOI
10.1128/MCB.00314-19
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 39, Issue 22
著者名(敬称略)
大森 慎也、大根田 絹子 他
所属
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 人材育成部門 ゲノム予防医学分野

抄訳

造血系転写因子GATA2とPU.1は、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMCs)において、ともに高親和性IgE受容体ベータ鎖(Ms4a2)の遺伝子発現を正に制御する。本研究ではその分子機序を解明するため、薬剤誘導性ノックアウトまたはsiRNA導入によって、BMMCsでのGATA2またはPU.1の欠失効果を比較した。その結果、両者は欠失によりほぼ同程度にMs4a2の発現量を低下させたが、両者の同時欠失による相乗的/相加的な効果は観察されなかった。クロマチン免疫沈降では、Ms4a2 +10.4 kbp領域にGATA2、PU.1とクロマチンループ因子LDB1が結合し、転写開始点付近(-60 bp)にはGATA2のみが結合していた。これらのGATA2の結合はPU.1の欠失により低下した。さらにゲノム編集によって+10.4 kbp領域を除去するとMs4a2の発現は完全に失われ、マスト細胞表面の高親和性IgE受容体の発現も消失した。以上の結果から、+10.4 kbp領域はMs4a2の発現に必須のシス領域であることが示された。また、GATA2はMs4a2プロモーターを活性化し、PU.1とLDB1はループ形成などクロマチン高次構造の形成と維持に関与することが示唆され、両者の分子機能は異なっていると考えられた。

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2019/11/13

日本におけるKlebsiella pneumoniae血流感染症の臨床像と分子疫学:高病原性株の医療関連感染症への関与

論文タイトル
Clinical and Molecular Characteristics of Klebsiella pneumoniae Isolates Causing Bloodstream Infections in Japan: Occurrence of Hypervirulent Infections in Health Care
論文タイトル(訳)
日本におけるKlebsiella pneumoniae血流感染症の臨床像と分子疫学:高病原性株の医療関連感染症への関与
DOI
10.1128/JCM.01206-19
ジャーナル名
Journal of Clinical Microbiology
巻号
Journal of Clinical Microbiology  Volume 57, Issue 11
著者名(敬称略)
原田 壮平 他
所属
藤田医科大学 医学部 感染症科

抄訳

   Klebsiella pneumoniae(Kp)の一部は莢膜の過剰産生や細菌細胞の鉄取り込みと関連する病原遺伝子を保有する高病原性株(hvKp)であり、市中発症の重症感染症と関連していることが主に東アジア諸国から報告されている。
   今回、日本全国23医療機関におけるKp血流感染症140例の起因菌株の全ゲノム解析結果と臨床情報を対比した。140例のうち26例(18.6%)がhvKpであり、hvKp感染症は肺炎、肝膿瘍、播種性感染症の頻度が有意に高かった(単変量解析)。さらに、他国の報告とは異なり、hvKp血流感染症の半数以上は医療関連あるいは院内感染症として発症しており、院内伝播を背景としたと推測される症例も認められた。hvKpのクローンは多様であり、K1-ST23、K2-ST86などのよく知られたものとともに、K57-ST218, K62-ST36などのこれまではあまり認識されていなかったものも認められた。

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2019/11/11

バロキサビル・マルボキシル(BXM)の馬インフルエンザウイルス(EIV)に対する効果および低感受性ウイルスの検出

論文タイトル
Mutated influenza A virus exhibiting reduced susceptibility to baloxavir marboxil from an experimentally infected horse
論文タイトル(訳)
バロキサビル・マルボキシル(BXM)の馬インフルエンザウイルス(EIV)に対する効果および低感受性ウイルスの検出
DOI
10.1099/jgv.0.001325
ジャーナル名
Journal of General Virology  Microbiology Society
巻号
Journal of General Virology Volume 100, Issue 11
著者名(敬称略)
根本 学、田村 周久 他
所属
日本中央競馬会 競走馬総合研究所

抄訳

 BXMは新規抗インフルエンザウイルス薬であり、ウイルスのPAタンパクの機能を阻害することによって、抗ウイルス効果を発揮する。人医療において2018年から用いられているが、低感受性ウイルスが比較的高率に検出されており問題となりつつある。本研究ではBXMのEIVに対する効果、およびBXM投与馬から低感受性ウイルスが検出されるかを調査した。EIVを6頭の馬に実験感染させ、3頭にBXMを投与し(投与群)、残り3頭は無処置とした(無処置群)。その結果、投与群では臨床症状の軽減および鼻咽頭スワブ中のウイルス量の低下が観察された。このことからBXMはEIVに対して有効であると考えられた。投与群から検出されたウイルスのPA遺伝子を解析したところ、1頭から38番目のアミノ酸がイソロイシンからスレオニンに変異しているウイルスが検出された。変異ウイルスは、通常のウイルスと比較してウイルス増殖抑制のために16倍量のBXMを必要とした。この変異による感受性の低下はヒトインフルエンザウイルスでも観察されている。この結果から、BXM投与によってEIVにおいても低感受性ウイルスが容易に誘導される可能性があるといえる。

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2019/11/01

Comamonas testosteroni TA441 によるステロイド化合物の分解:開裂したB環のβ酸化による分解全体の解明



論文タイトル

Steroid Degradation in Comamonas testosteroni TA441: Identification of the Entire β-Oxidation Cycle of the Cleaved B Ring

論文タイトル(訳)

Comamonas testosteroni TA441 によるステロイド化合物の分解:開裂したB環のβ酸化による分解全体の解明

DOI

10.1128/AEM.01204-19

ジャーナル名

Applied and Environmental Microbiology

巻号

Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 20

著者名(敬称略)

堀之内 正枝 他

所属

理化学研究所 加藤分子物性研究室


抄訳


  Comamonas testosteroni TA441 は、ステロイド化合物のA,B環をA環の芳香環化を経て開裂し、生成した9,17-dioxo-1,2,3,4,10,19-hexanorandrostan-5-oic acidを主にβ酸化により完全分解する。本研究では、ScdE (3-hydroxylacyl CoA-dehydrogenase)及びScdF (3-ketoacyl-CoA transferase)をコードする遺伝子の単離、解析により、CD環開裂に必須な、B環由来側鎖のβ酸化サイクルによる分解全体を明らかとした。ステロイド分解遺伝子はクラスターを形成しており、β酸化に関わる遺伝子群に類似の遺伝子群は、Mycobacterium tuberculosis H37Rv等、多くの細菌に見いだされる。これらクラスターの構造の違いが、細菌のステロイド分解遺伝子群の進化の解明の手がかりとなる可能性も考えられる。


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