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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2018/11/16

肥満は特発性アルドステロン症の重要な背景因子である

論文タイトル
Obesity as a Key Factor Underlying Idiopathic Hyperaldosteronism
論文タイトル(訳)
肥満は特発性アルドステロン症の重要な背景因子である
DOI
10.1210/jc.2018-00866
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
Vol.103 No.12 (4456?4464)
著者名(敬称略)
大野 洋一, 曽根 正勝 他
所属
京都大学医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科

抄訳

原発性アルドステロン症と肥満との関連についてはいくつか報告されているが、本態性高血圧(EHT)と差がないとする報告もある。原発性アルドステロン症はアルドステロン産生腺腫(APA)と特発性アルドステロン症(IHA)に大別され、その病因は異なる。そこで、日本の29施設で構築したJPASデータベースを用いて、516例のAPA患者と1015例のIHA患者、および274例のEHT患者の肥満度と代謝指標を比較検討した。IHA患者ではAPA患者にくらべ血漿アルドステロン濃度(PAC)が低いにもかかわらず、BMIが高く、肥満(BMI≧25)の頻度も有意に高かった。ロジスティック回帰分析にて年齢、性別、血圧、喫煙、飲酒、高血圧罹病期間、腎機能、PACなどの背景因子で調整しても、IHAでAPAよりBMIは有意に高く、肥満のオッズ比も1.665倍(99%CI:1.029-2.694)と有意に高かった。年齢、性別、血圧をマッチさせたEHTと比較したところ、IHAでは有意に肥満が多かったが、APAでは有意な差は認めなかった。高PACが肥満の原因と考えると、APAでIHAより肥満が少ない理由は説明がつかないため、逆に肥満がIHAの病因となっている可能性が示唆された。

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2018/11/14

Cryptochrome遺伝子欠損は松果体Aanat遺伝子の転写を促進するがタンパク量を低下させる

論文タイトル
Cryptochrome deficiency enhances transcription but reduces protein levels of pineal Aanat
論文タイトル(訳)
Cryptochrome遺伝子欠損は松果体Aanat遺伝子の転写を促進するがタンパク量を低下させる
DOI
10.1530/JME-18-0101
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology Bioscientifica
巻号
Vol.103 No.12 (4450–4455)
著者名(敬称略)
山仲勇二郎, 山田淑子, 本間さと, 本間研一
所属
北海道大学大学院教育学研究院生活健康学研究室

抄訳

Cryptochrome(Cry)は哺乳類の概日リズム生成に関わる時計遺伝子である。松果体ホルモンであるメラトニンは明瞭な概日リズムを示し、メラトニン合成の律速酵素とされるアリルアミンN-アセチル転移酵素 (AANAT)活性の概日リズムがメラトニンリズムを作り出している。AANAT活性の概日リズムは、中枢時計であるSCNから松果体への交感神経を介するシグナルによって作り出されていると考えられてきたが、AANAT遺伝子は、そのプロモーター領域にE-box配列を有しているため、CLOCK/BMALヘテロ2量体の結合による転写促進と、CRY/PER蛋白による転写抑制という時計遺伝子の転写翻訳フィードバックループがAanat遺伝子発現の概日リズムをつくりだしている可能性もある。その場合、転写抑制因子のCRYを欠損するマウス(Cry1−/−/Cry2−/−)では、Aanatの mRNAが持続的に発現し、メラトニンが恒常的に高値を示すことが予想される。しかし、著者らはメラトニンを合成可能なC3H系マウスをバックグランドとするCry1−/−/Cry2−/−マウスでは、松果体メラトニンの概日リズムが消失し、さらにメラトニン濃度も野生型マウスと比較し低レベルであることを過去に報告した(Yamanaka et al. Genes Cells 2010)。今回の研究では、Cry1−/−/Cry2−/−マウスを用いて松果体Aanatの概日リズム形成メカニズムを検討した。このため、Aanat mRNAレベルおよびAANATタンパク量、AANAT酵素活性を測定した。その結果、Cry1−/−/Cry2−/−マウスの松果体ではAanat mRNAが持続的に高値を示し、そのレベルは野生型マウスにおける概日リズムのピーク値に一致していた。しかし、AANATタンパク量およびAANAT酵素活性は持続的に低値であった。さらに、Cry1−/−/Cry2−/−マウスの培養松果体を交感神経作動薬であるイソプロテレノールで刺激すると野生型対照群よりも低いもののメラトニン合成が認められること、ノルアドレナリン刺激によるAANAT活性上昇やフォルスコリン刺激によるcAMP の上昇には野生型マウスと差がないことを確認した。これらの知見は、Cry1−/−/Cry2−/−マウスでは松果体細胞内でのメラトニン合成経路は正常であるが、生物時計中枢である視交叉上核からの神経入力が障害されるためにアドレナリンβ受容体を介する松果体細胞内のcAMP濃度が上昇せず、AANATは、mRNAレベルは高いものの、タンパク分解が亢進するため、AANATレベルおよび酵素活性が持続的に低下し、メラトニンを合成することができないことが示唆された。さらに、マウス松果体においてAANATのE-boxを介する転写調節機構が生理的活性をもつことも明らかにした。

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2018/11/02

雌優位に発現するSerpina3nはマウス分化骨芽細胞の表現型を抑制する。

論文タイトル
Serpina3n, Dominantly Expressed in Female Osteoblasts, Suppresses the Phenotypes of Differentiated Osteoblasts in Mice
論文タイトル(訳)
雌優位に発現するSerpina3nはマウス分化骨芽細胞の表現型を抑制する。
DOI
10.1210/en.2018-00639
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Vol.159 No.11 (3775–3790)
著者名(敬称略)
石田 昌義, 梶 博史 他
所属
近畿大学医学部再生機能医学講座

抄訳

骨粗鬆症の病態には明らかな性差があり、性ホルモン以外の要因も骨代謝の性差に関与する可能性が示唆されてきた。マウス初代培養骨芽細胞表現型における性差を検討したところ、分化や石灰化は、雄と比較して雌において著明に低かった。このような骨芽細胞の性差を決定する因子の探索を網羅的遺伝子発現解析を用いて行ったところ、最も雌に発現量が優位に高い遺伝子として、Serpina3nを同定した。内因性Serpina3nの減少は骨芽細胞分化を有意に促進し、Serpina3n過剰発現は、マウス骨芽細胞株における骨芽細胞分化を有意に抑制した。また、Serpina3n発現は、マウス間葉系ST2細胞の骨芽細胞への分化には影響をおよぼさなかったが、石灰化を有意に抑制した。以上の結果より、雌の骨芽細胞に優位に発現するSerpina3nは、分化した骨芽細胞における表現型を抑制する作用を有し、マウスの骨芽細胞表現型や骨粗鬆症病態の性差を部分的に説明する可能性が考えられた。

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2018/10/30

オートファゴソーム形成においてAtg2-Atg18複合体はオートファゴソーム前駆体膜を小胞体に繋ぎ留める

論文タイトル
The Atg2-Atg18 complex tethers pre-autophagosomal membranes to the endoplasmic reticulum for autophagosome formation
論文タイトル(訳)
オートファゴソーム形成においてAtg2-Atg18複合体はオートファゴソーム前駆体膜を小胞体に繋ぎ留める
DOI
10.1073/pnas.1806727115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 115 no. 41 10363-10368
著者名(敬称略)
小谷 哲也, 中戸川 仁 他
所属
東京工業大学 生命理工学院

抄訳

オートファジーは真核生物に広く保存された細胞内の分解機構である。オートファジーが誘導されると、分解すべき細胞内成分がオートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞内に隔離され、リソソーム/液胞へ運ばれ、分解される。オートファゴソームの形成はオートファジーの最大の特徴であるが、その形成機構は未だに明らかとなっていない。我々は出芽酵母を用いてオートファゴソーム形成に必須のAtg2の機能解析を行った。その結果、Atg2のN末端領域とC末端領域内にオートファゴソーム形成に重要な部分があることを突き止めた。どちらも膜へ結合する機能を持っており、この2つの膜結合領域を介してAtg2が2つの人工膜小胞を繋ぎ合わせることを明らかにした。さらに、Atg2のC末端領域はAtg2と複合体を形成するAtg18のホスファチジルイノシトール 3-リン酸を含む膜への結合を促進し、Atg2-Atg18複合体のオートファゴソーム前駆体膜への結合に関わること、一方、N末端領域はAtg2-Atg18複合体が前駆体膜に結合した後、小胞体との結合に関与する可能性があることを示した。以上の結果から、Atg2-Atg18複合体はオートファゴソーム前駆体を小胞体に繋ぎ留めることで、膜の伸張を開始するというモデルを提唱した。

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2018/10/26

周期的圧迫によるマクロファージの機能調節と不動性筋萎縮の抑制

論文タイトル
Local cyclical compression modulates macrophage function in situ and alleviates immobilization-induced muscle atrophy
論文タイトル(訳)
周期的圧迫によるマクロファージの機能調節と不動性筋萎縮の抑制
DOI
10.1042/CS20180432
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Vol.132 No.19 (2147-2161)
著者名(敬称略)
斎藤 久美子, 澤田 泰宏 他
所属
国立障害者リハビリテーションセンター運動機能系障害研究部

抄訳

身体活動性低下によって骨格筋が萎縮することは広く知られており、予防策を講ずることが喫緊の課題となっている。そこで、運動が身体にもたらす作用の‘本質’は何かを解明するために、同様に骨格筋の変形を惹起するマッサージに着目した。
身体不活動モデルとしてマウスの体幹と後肢の関節運動を制限したところ、腓腹筋に筋線維断面積の縮小・炎症因子の発現増加・マクロファージ数の増加を認め、骨格筋に不動性の萎縮と炎症が生じていた。
萎縮筋にマッサージ様周期的圧迫(Local cyclical compression)を負荷したところ、筋線維断面積の縮小・炎症因子の発現増加・マクロファージ数の増加が抑制された。
そこで、腓腹筋に造影剤を投与し周期的圧迫を負荷する実験を行った。周期的圧迫負荷の前後にCT撮影をし、画像を比較すると、造影剤の移動が筋の長軸方向に促進されていた。そこで、間質液流のシアストレスが増加したと仮説を立て、培養マクロファージにシアストレスを負荷したところ、炎症因子の発現が抑制され、生体内で起きた炎症抑制が再現された。
これらの結果から、運動とマッサージによる筋萎縮・炎症抑制作用の本質は、間質液の移動で生じるシアストレスが間質細胞へ与えるメカニカルストレスである可能性が示唆された。

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2018/10/24

CRFによる大腸感覚とバリア機能に対する効果-TLR4とIL-1の役割

論文タイトル
Altered colonic sensory and barrier functions by CRF: roles of TLR4 and IL-1
論文タイトル(訳)
CRFによる大腸感覚とバリア機能に対する効果-TLR4とIL-1の役割
DOI
10.1530/JOE-18-0441
ジャーナル名
Journal of Endocrinology BioScientifica
巻号
Vol. 239 No.2 (241?252)
著者名(敬称略)
野津 司
所属
旭川医科大学・地域医療教育学講座

抄訳

内臓知覚過敏と大腸透過性の亢進は,過敏性腸症候群(IBS)の病態に関与していると考えられているが,その詳細は明らかではない.我々は,ラットで大腸伸展に伴う腹筋収縮をとらえることにより,またエバンスブルーの大腸吸収量を定量することにより,これらの機序を検討した.Corticotropin-releasing factor(CRF)の末梢投与は大腸透過性を亢進させ,それはCRF1受容体を介する反応で,CRF2の刺激はそれを抑制した.TLR4拮抗薬のeritoran,IL-1受容体拮抗薬のanakinraは,CRFによる内臓知覚過敏と透過性亢進を阻止した.IBSのモデルであるLPSあるいは反復水回避ストレスによる内臓知覚過敏及び透過性の亢進は,CRF受容体拮抗薬,eritoranあるいはanakinraで阻止された.以上より,ストレスによって誘導される内臓知覚過敏,大腸透過性の亢進は,末梢CRF受容体を介し,CRFはCRF1依存性にTLR4,サイトカインを介してこれらの変化を惹起している.またCRF2の刺激は反応を抑制する.CRFは免疫機能を制御することで内臓機能変化を誘導し,IBSの病態に関わっていると考えられる.

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2018/10/15

出芽酵母におけるジヒドロキシアセトンの毒性はメチルグリオキサールの形成を介して発揮される:アクチン極性と核分裂への影響

論文タイトル
Toxicity of dihydroxyacetone is exerted through the formation of methylglyoxal in Saccharomyces cerevisiae: effects on actin polarity and nuclear division
論文タイトル(訳)
出芽酵母におけるジヒドロキシアセトンの毒性はメチルグリオキサールの形成を介して発揮される:アクチン極性と核分裂への影響
DOI
10.1042/BCJ20180234
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Vol. 475 No. 16 (2637-2652)
著者名(敬称略)
野村 亘, 井上 善晴
所属
京都大学大学院農学研究科 応用生命科学専攻 エネルギー変換細胞学分野

抄訳

 ジヒドロキシアセトン(DHA)は最小のケトースである。DHAはジヒドロキシアセトンキナーゼ(DAK)によりリン酸化されてジヒドロキシアセトンリン酸となり、解糖系に流入する。しかしながら、高濃度のDHAは細胞毒性を示すことが知られている。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、DHAはホルムアルデヒドに変換されて細胞毒性が発揮されるというモデルが提唱されている。これに対しわれわれは、DHAはメチルグリオキサール(MG)に変換されることにより細胞毒性を発揮することを明らかにした。
 MGは主に解糖系から派生する2-オキソアルデヒドである。MGは一つの分子内にケト基とアルデヒド基を持つことから、極めて反応性が高く、MGの代謝異常と種々の疾患(糖尿病、アルツハイマー病、自閉症など)との関連が指摘されている。
 MGを代謝する酵素(グリオキサラーゼI、Glo1;MG還元酵素、Gre2;アルドース還元酵素、Gre3)を破壊したglo1?gre2?gre3株はDHA感受性を示すとともに、DHA処理により細胞内MGレベルが上昇した。しかしながら、DAK1を過剰発現させると、それらの表現型はキャンセルされた。われわれは以前、MGは酵母のアクチンを脱極性化させ、極性成長を阻害すること(Mol. Cell. Biol. 35:1269-1280, 2015)、液胞の脱フラグメント化(肥大化)を引き起こすこと(J. Biol. Chem. 292:15039-15048, 2017)を明らかにしているが、glo1?gre2?gre3株をDHAで処理するとアクチンの脱極性化や液胞の脱フラグメント化が誘導され、これらの表現型はいずれも、DAK1の過剰発現によりキャンセルされた。さらに今回、glo1?gre2?gre3株をDHAで処理すると、核分配が阻害されることを見いだした。同様の表現型はMG処理によっても起こった。このとき、核は肥大化した液胞に押されて芽の近傍で成長軸に対して扁平な形態を示すものの、芽(娘細胞)には分配されないことを明らかにした。われわれは、このような扁平な核形態をjellybean-like shape nucleus(ジェリービーンのような形態の核)と命名した。
 以上のことから、酵母におけるDHAによる細胞毒性は、細胞内でDHAがMGに変換され、生じたMGがアクチンを脱極性化して細胞極性を失わせるとともに、核分配を阻害することに起因していると結論した。

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2018/09/25

マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発

論文タイトル
Cataract-preventing contact lens for in vivo imaging of mouse retina
論文タイトル(訳)
マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発
DOI
10.2144/btn-2018-0040
ジャーナル名
BioTechniques Future Science Group
巻号
Vol.65,No.2(2018)101-104
著者名(敬称略)
池田 わたる 他
所属
株式会社カン研究所 臨床科学部

抄訳

2光子または共焦点レーザー顕微鏡を用いたマウス網膜のin vivoイメージングは、中枢神経系組織における細胞動態解析の強力なツールである。
しかし、麻酔下ではマウス眼内の水晶体が可逆的に不透明化(白内障化)するため、眼底の視認性が著しく悪化する。
マウス眼球表面に平凹型コンタクトレンズを装用して角膜の乾燥を防ぐことにより、白内障の進行を遅延させることはできるが、その効果には限界がある。
こうした問題を解決するため、我々はマウス眼球表面を完全に覆うコンタクトレンズを開発することにより、6時間以上にわたって麻酔下での白内障を防止することに成功した。
その結果、マウス網膜における白血球の動態を長時間にわたって解析することが可能となった。
今後、本コンタクトレンズを補償光学システムと組み合わせることにより、マウス網膜におけるin vivo分子イメージングも可能になることが期待される。

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2018/09/25

KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性

論文タイトル
Aldosterone Suppression by Dexamethasone in Patients With KCNJ5-Mutated Aldosterone-Producing Adenoma
論文タイトル(訳)
KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性
DOI
10.1210/jc.2018-00738
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.9 (3477?3485)
著者名(敬称略)
井上 浩輔, 西川 哲男 他
所属
横浜労災病院内分泌・糖尿病センター

抄訳

原発性アルドステロン症(PA)でのRAS系の検討はされているも、ACTH系の病態への関与は知られていない。一方、KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫の症例は、重症型PAである。そこで、KCNJ5変異の有無とACTH経路の臨床的関与につき検討した。方法:APA141例を対象とし、ACTH負荷試験、1mgデキサメサゾン負荷試験(DST)を含む各種術前内分泌検査とKCNJ5遺伝子変異の相関を横断的に検討した。また、超選択的副腎静脈サンプリング(SS-ACTH-AVS)におけるACTH負荷後PAC, 血清コルチゾール値(F)と変異の相関についても検討した。結果:KCNJ5変異は76%に認められ、非変異群に比し、血漿アルドステロン濃度(PAC)基礎値、生食負荷試験後PAC・ACTH負荷試験後PACが高値を示していた。一方、変異群でDST後にPACの強い抑制を認め、多変量解析でもDST後PAC抑制度はKCNJ5変異の有無と正の相関を認めた (P=0.01)。SS-ACTH-AVSでは、変異群において病変側のPAC/F比が高値を示した。免疫組織染色にて、CYP11B1とCYP17が有意に発現増強していた。考案:変異群においてDST後のPAC抑制度が強いことは内因性ACTHへの高い反応性を示し、AVS所見もそれを支持する結果であった。結論:1mg DSTによるPAC抑制性は、APAのKCNJ5変異を予測する上で重要な指標である可能性が示された。

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2018/09/11

栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響

論文タイトル
Effect of diurnal variations in the carbohydrate and fat composition of meals on postprandial glycemic response in healthy adults: a novel insight for the second-meal phenomenon
論文タイトル(訳)
栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響
DOI
10.1093/ajcn/nqy086
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition American Society for Nutrition
巻号
Vol.108, No.2 (332?342)
著者名(敬称略)
安藤 貴史・田中 茂穂
所属
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部

抄訳

1食毎の栄養素組成の変化は,日常的に見られる.しかし,これまでの研究は1食のみや1日単位の栄養素組成と血糖値の関連のみにフォーカスしており,1食毎の栄養素組成の変化が1日全体の中で血糖値変動に及ぼす影響は明らかになっていない.我々は,「高脂質を摂取した次の食事において相対的に高糖質の食事を摂取すると,体内の基質利用優先度が脂質に傾いているため高血糖が引き起こされる」という仮説を立て,14名の健康な成人男性を対象とした3試行のクロスオーバー試験で検証した.各試行は, 3日間の規定食摂取の後に1日間の試験食摂取で構成されており,試験食摂取日に1日3食摂取した時の血糖値変動をcontinuous glucose monitoring systemを用いて評価した.基質の利用バランス(RQ)はヒューマンカロリメーターを用いて評価された.試験食には,3食普通食(R)試行,朝高糖質・昼高脂質・夜高糖質(CB)試行,朝高脂質・昼夜高糖質(FB)試行があり,3試行の1日合計の栄養素組成(糖質摂取量)は同一に設定された.その結果,1日の血糖値最高値はR試行に比べCB,FB試行において高値を示し,各食後の血糖値については,高脂質摂取後に高糖質食を摂取した場合において,他の高糖質摂取時と比べ20mg/dL程度の高値を示した.また,食後の血糖値と食前のRQに有意な負の関連が見られた.したがって我々の研究結果は,高脂質から高糖質への食事変化が基質の利用優先度の変化を伴い,食後高血糖をもたらすことを示唆する.

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