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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2019/10/17

変異毒素性ショック症候群毒素-1ワクチン免疫記憶T細胞が産生するインターロイキン-10 (IL-10)はIL-17産生を低下させ黄色ブドウ球菌感染に対する防御効果を消失させる

論文タイトル
Interleukin-10 (IL-10) Produced by Mutant Toxic Shock Syndrome Toxin 1 Vaccine-Induced Memory T Cells Downregulates IL-17 Production and Abrogates the Protective Effect against Staphylococcus aureus Infection
論文タイトル(訳)
変異毒素性ショック症候群毒素-1ワクチン免疫記憶T細胞が産生するインターロイキン-10 (IL-10)はIL-17産生を低下させ黄色ブドウ球菌感染に対する防御効果を消失させる
DOI
10.1128/IAI.00494-19
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 87, Issue 10
著者名(敬称略)
成田 浩司、中根 明夫 他
所属
弘前大学大学院 医学研究科 感染生体防御学講座

抄訳

長期免疫記憶はワクチンの予防効果に必須である。著者らは、黄色ブドウ球菌 (S. aureus)の産生するスーパー抗原毒素である毒素性ショック症候群毒素-1の弱毒変異タンパク質(mTSST-1)で免疫したマウスにおいて、獲得免疫成立早期のS. aureus感染に対し17型ヘルパーT (Th17)細胞依存性にワクチン効果が認められることを報告した。Th17細胞には可塑性があるため、本研究では、mTSST-1免疫による長期記憶期のワクチン効果を検討したところ、S. aureus感染に対するワクチン効果は認められなかった。この時期の脾臓由来CD4+T細胞とマクロファージをmTSST-1刺激すると、サイトカイン応答はIL-17AからIL-10に変換していた。そこで、抗IL-10抗体添加の影響を見たところ、IL-17A産生が回復した。また、S. aureus感染前のmTSST-1免疫マウスに抗IL-10抗体を投与すると、脾臓のIL-17mRNA発現とワクチン効果が回復した。これらの結果から、mTSST-1免疫マウスの長期記憶期ではIL-10産生が主体となりIL-17A依存性感染防御を抑制することが理由で、ワクチン効果が発揮されないことが示唆された。

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2019/10/16

糖尿病の有無別にみた血糖・血圧・脂質・喫煙の各管理目標達成状況と冠動脈疾患発症の関連

論文タイトル
Relationship Between Number of Multiple Risk Factors and Coronary Artery Disease Risk With and Without Diabetes Mellitus
論文タイトル(訳)
糖尿病の有無別にみた血糖・血圧・脂質・喫煙の各管理目標達成状況と冠動脈疾患発症の関連
DOI
10.1210/jc.2019-00168
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.11 (5084–5090)
著者名(敬称略)
山田 万祐子, 藤原 和哉 他
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科

抄訳

リアルワールドデータを用い、糖尿病の有無別に、冠動脈疾患のリスク因子(血圧、LDLコレステロール、HbA1c、喫煙)の管理目標の達成状況、および管理目標の達成状況とその後の冠動脈疾患発症の関連を検討した。対象は日本全国からなる220,894名。健診結果とレセプトデータを用いて、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、喫煙の管理目標の達成状況と冠動脈疾患発症の関連を検討した。糖尿病・非糖尿病群ともに、2つ管理目標を達成していた対象の割合が最も多かった(39.6%、36.4%)。糖尿病の有無に関わらず、管理目標を2つ達成している群と比較して、1つ達成している群、いずれも達成していなかった群では、冠動脈疾患発症リスクがそれぞれ2倍、4倍上昇した。管理目標を2つ達成した非糖尿病群と比較して、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、喫煙のいずれの管理目標も達成していなかった糖尿病群では冠動脈疾患発症リスクが約9.4倍上昇していたが、一方で、4つ全ての管理目標を達成することで、冠動脈発症リスクは同程度まで低下していた。糖尿病の有無に関わらず、修正可能なリスク因子の管理目標を達成することは冠動脈疾患発症の抑制に有用な可能性があり、糖尿病患者で4つ全ての管理目標を達成することで、非糖尿患者で2つ管理目標を達成している群と同等までリスクが低下する可能性あることが示唆された。

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2019/10/16

みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析

論文タイトル
Pseudofructophilic Leuconostoc citreum Strain F192-5, Isolated from Satsuma Mandarin Peel
論文タイトル(訳)
みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析
DOI
10.1128/AEM.01077-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 20
著者名(敬称略)
前野 慎太朗、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科

抄訳

 フルクトフィリック乳酸菌 (FLAB) は花や果物といったフルクトース豊富な環境に生息および適応している乳酸菌である。筆者らがみかんの皮から分離した乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株は他の L. citreum 菌株と大きく異なり、一般的な生物が生育基質として最も好むグルコースをほとんど代謝しない一方で、フルクトースを好むという FLAB 様の特徴を菌株特異的に示す。既知の FLAB は糖代謝関連遺伝子の特異的欠損を含むゲノムレベルでの退行的進化を行っていることを我々はこれまでに報告しているが、当該菌株ではこのゲノムレベルでの退行的進化は見られなかった。
 FLAB はアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素の活性を有する二機能性タンパク質 (AdhE) をコードする遺伝子 adhE を欠損させているために細胞内の酸化還元バランスを欠き、グルコースを代謝しないことが知られている。しかし、本菌株は adhE を有しているもののプロモーターの欠落により当該遺伝子が発現していないため、グルコースを代謝することができない事を明らかにした。FLAB はフルクトースを代謝することでグルコース代謝時よりも効率よくエネルギーを生産することが知られていることから、本菌株の菌株特異的な特徴は、多様な生息域を有する乳酸菌の生存戦略の一環であると考えられた。

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2019/10/10

パーキンソン病原因遺伝子iPLA2-VIA/PLA2G6は生体膜リモデリングを介して、α-synucleinの安定性と神経機能を制御する

論文タイトル
Parkinson’s disease-associated iPLA2-VIA/PLA2G6 regulates neuronal functions and α-synuclein stability through membrane remodeling
論文タイトル(訳)
パーキンソン病原因遺伝子iPLA2-VIA/PLA2G6は生体膜リモデリングを介して、α-synucleinの安定性と神経機能を制御する
DOI
10.1073/pnas.1902958116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS October 8, 2019 116 (41) 20689-20699
著者名(敬称略)
森 聡生, 今居 譲 他
所属
順天堂大学医学研究科パーキンソン病病態解明研究講座

抄訳

パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで罹患率の高い神経変性疾患である。その病変部位にはレヴィ小体と呼ばれる神経封入体が蓄積する。レヴィ小体の形成には前シナプスタンパク質α-Synucleinの凝集・線維化が関わっており、その凝集・線維化が神経変性を引き起こすと考えられている。しかし、パーキンソン病発症の最初のステップであるα-Synucleinの凝集のメカニズムは不明である。PARK14遺伝子座にリンクするパーキンソン病は、レヴィ小体の病理が顕著に認められる。PARK14の責任遺伝子PLA2G6/iPLA2-VIAはホスホリパーゼA2をコードし、その変異の違いにより脳の鉄沈着を伴う遺伝性神経変性疾患(NBIA)の原因にもなる。我々は、iPLA2-VIAノックアウトハエが発生初期から神経伝達の障害、ドーパミン神経を含む脳神経細胞の進行性の変性を示すことを見出した。ハエの脳の脂質解析から、iPLA2-VIA活性の喪失でアシル基の短縮が起こること、アシル基短縮がリン脂質膜の平衡状態を攪乱し小胞体ストレスを惹起することが明らかとなった。
ミトコンドリア-小胞体の接点に局在するC19orf12の変異もNBIAの原因となる。iPLA2-VIAノックアウトハエにおいて、ヒトiPLA2-VIAやC19orf12の過剰発現は、脂質変化、小胞体ストレス、ドーパミン神経変性の表現型を改善した。一方、疾患型のヒトiPLA2-VIA A80Tはこれらの表現型を改善しなかった。さらに、iPLA2-VIAノックアウトハエへのリノール酸の投与によって脂質異常が改善し、ノックアウトハエでみられるα-Synuclein凝集の促進が抑制できた。これらの結果から、iPLA2-VIAによる生体膜のリモデリング(アシル基の短縮抑制)が、ドーパミン神経の生存性だけでなくα-Synucleinの凝集抑制に必要であることが示唆された。

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2019/10/07

アンジオテンシン1-7は加齢による筋力と骨量の低下を改善するが、ACE2欠損マウスにおける老化の亢進には関連しない。

論文タイトル
Angiotensin 1-7 alleviates aging-associated muscle weakness and bone loss, but is not associated with accelerated aging in ACE2-knockout mice
論文タイトル(訳)
アンジオテンシン1-7は加齢による筋力と骨量の低下を改善するが、ACE2欠損マウスにおける老化の亢進には関連しない。
DOI
10.1042/CS20190573
ジャーナル名
Clinical Science
巻号
Vol.133 No.18 (2005-2018)
著者名(敬称略)
野里 聡子, 山本 浩一 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学

抄訳

ACE2-アンジオテンシン1-7(A1-7)-A1-7受容体(Mas)軸はレニン-アンジオテンシン(RA)系において、アンジオテンシンIIによるAT1活性化に対して拮抗的に作用する。我々は最近ACE2欠損マウスが早期から握力の低下と骨格筋における老化指標の亢進を認めること、A1-7が高齢マウスの筋力低下を改善させることを報告した(2018 J Cachexia Sarcopenia Muscle.)。本研究ではACE2欠損マウスの生理的老化の亢進がA1-7の産生低下に関連するか検討する目的でACE2欠損マウスとMas欠損マウス、野生型マウスの比較実験を行った。結果として、ACE2欠損マウスでは早期の骨格筋機能低下や骨格筋老化指標の亢進に加え、皮下脂肪組織の加齢性の減少の亢進を認めたが、MAS欠損マウスではそのような変化を認めなかった。一方、A1-7投与は高齢野生型マウス、ACE2欠損マウスに対しては筋力低下の抑制に加え、筋サイズや骨量の増加をもたらしたが、Mas欠損マウスではそのような効果を認めなかった。本研究の結果からA1-7はMasを介して高齢マウスの筋機能や骨量を改善させるが、ACE2欠損マウスに認めた老化の亢進はA1-7-Masに関連しないことが示唆される。ACE2はRA系以外にも多彩な機能を有しており、ACE2が生体老化に及ぼす影響に関しては更なる検討が必要である。

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2019/09/19

ピロリシルtRNA合成酵素PylRS-AF変異体による、嵩高い非天然型リジン誘導体を利用した遺伝暗号拡張の構造的基盤

論文タイトル
Structural Basis for Genetic-Code Expansion with Bulky Lysine Derivatives by an Engineered Pyrrolysyl-tRNA Synthetase
論文タイトル(訳)
ピロリシルtRNA合成酵素PylRS-AF変異体による、嵩高い非天然型リジン誘導体を利用した遺伝暗号拡張の構造的基盤
DOI
10.1016/j.chembiol.2019.03.008
ジャーナル名
Cell Chemical Biology
巻号
Cell Chemical Biology Vol.28 Iss.7 (July 18,2019)
著者名(敬称略)
柳沢 達男 他
所属
理化学研究所・生命機能科学研究センター・非天然型アミノ酸技術研究チーム(研究当時)

抄訳

近年天然アミノ酸にはない機能を発揮する人工アミノ酸をタンパク質に導入する技術の開発が進んでいる。筆者等が開発したピロリシルtRNA合成酵素(PylRS)のY306A/Y384F変異体(AF変異PylRS)は、様々な官能基をもつ大きなサイズの人工アミノ酸を認識できることから世界中でタンパク質への導入に利用され、抗体医薬の作製などさまざまな用途に用いられて来た。一方でAF変異PylRSが多様な人工アミノ酸を取り込むメカニズムについては不明であった。筆者等は14種類の人工アミノ酸がAF変異PylRSにどのように結合しているかX線結晶構造解析で詳しく調べることにより、AF変異PylRSがそれぞれの人工アミノ酸に特異的に対応し、1結合型、2結合型、3結合型という異なる結合様式で人工アミノ酸を認識していることを明らかにした。AF変異PylRSの構造情報を元に設計された人工アミノ酸でタンパク質を高機能化することにより、医療や産業分野への展開が期待できる。

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2019/09/18

一酸化窒素による消化管制御の進化

論文タイトル
Evolution of nitric oxide regulation of gut function
論文タイトル(訳)
一酸化窒素による消化管制御の進化
DOI
10.1073/pnas.1816973116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS March 19, 2019 116 (12) 5607-5612
著者名(敬称略)
谷口 順子、谷口 俊介
所属
筑波大学 生命環境系下田臨海実験センター

抄訳

 バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)を用いて、その幼生期の胃腸において、幽門の開口は一酸化窒素によって制御されており、その近傍には神経型一酸化窒素合成酵素を発現している内胚葉由来の神経様細胞が存在していることを明らかにしました。
 ヒトを含む脊椎動物では、神経堤細胞由来の腸管神経が胃や腸といった消化管の機能を制御しています。しかし、神経堤細胞は脊椎動物でしか見られないため、消化管制御の仕組みが動物進化の過程でどのように獲得され、多様化してきたのかを議論することが不可能でした。そこで、脊椎動物と同じ後口動物に属しながら、神経堤細胞を持たない無脊椎動物である棘皮動物のウニ幼生の消化管に着目し、特に幽門の開閉がどのように制御されているのかを明らかにすることを試みました。その結果、ウニ幼生の幽門付近に神経様細胞が存在しており、そこで生産されている一酸化窒素が幽門の開口を制御していることが明らかになりました。さらに、この神経様細胞の由来を調べてみると、内胚葉由来であることが明らかになりました。このことは、ヒトを含む脊椎動物においても、消化管制御に関わる内胚葉由来の神経が新たに発見される可能性や、幽門開口の制御システムが進化の過程でどのように神経堤細胞由来のシステムへと移行していったのかを議論する上で重要なヒントを与える成果です。

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2019/09/17

中鎖脂肪酸(8:0,10:0)はサルコペニアの改善に期待される栄養素である:無作為化比較試験

論文タイトル
Medium-chain triglycerides (8:0 and 10:0) are promising nutrients for sarcopenia: a randomized controlled trial
論文タイトル(訳)
中鎖脂肪酸(8:0,10:0)はサルコペニアの改善に期待される栄養素である:無作為化比較試験
DOI
10.1093/ajcn/nqz138
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.110, No.3 (652–665)
著者名(敬称略)
阿部 咲子, 江崎 治 他
所属
昭和女子大学 生活科学研究専攻 女性健康科学研究所

抄訳

高齢フレイル入所者に、ロイシン、ビタミンD強化サプリメントと中鎖脂肪酸(MCT)6gを夕食に加えて3ケ月間摂取した群(LD+MCT群)では、筋力や筋肉機能の増加が認められている。本研究では、MCTのみの効果を調べた。介護老人保健施設の入所者(平均86歳)64人を登録し、LD + MCT群、MCT6gのみのMCT群、LCT6gのみのLCT群の3群にて3ケ月間の介入試験を実施した。ベースライン、介入開始後1.5ケ月・3ケ月(介入時)、介入終了後1.5ケ月の4回、筋力や筋肉機能、ADLを測定し、各測定項目のベースラインからの変化量を従属変数とし、群、測定時期、群と測定時期の交互作用を固定因子とし、ベースライン時の各測定値、年齢、性、BMI、握力、ADLを交絡固定因子として調整し、線形混合モデルで解析した。介入3ケ月においてベースラインからの変化量は、下肢反復開閉回数(10秒間)では、LD + MCT群2.70回、MCT群 2.28回、 LCT群 -0.59回であり、機能的自立度評価(FIM)スコア(総点126点)では、LD + MCT群6.9点、MCT群 5.6点、LCT群 -6.6点と変化した。介入開始後1.5ケ月より3ケ月でより増加し、介入終了後1.5ケ月後で減少した。MCT6g摂取のみでも、高齢者の筋力や筋肉機能、ADLを高めた。

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2019/09/13

オミックス解析で明らかになった有毒アオコ原因ラン藻ミクロキスティス・エルギノーサ感染性広域および狭域宿主ウイルスの共在

論文タイトル
Cooccurrence of Broad- and Narrow-Host-Range Viruses Infecting the Bloom-Forming Toxic Cyanobacterium Microcystis aeruginosa
論文タイトル(訳)
オミックス解析で明らかになった有毒アオコ原因ラン藻ミクロキスティス・エルギノーサ感染性広域および狭域宿主ウイルスの共在
DOI
10.1128/AEM.01170-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 18
著者名(敬称略)
森本 大地, 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

ラン藻ミクロキスティスは肝臓毒生産能を有し、世界中の湖沼で異常増殖してアオコを形成するため、重要な生物種と捉えられています。本種は極めて多くのウイルス耐性遺伝子を有し、多種多様なウイルスと環境中で相互作用すると示唆されてきましたが、本種感染ウイルス分離例は当研究室保有のMa-LMM01に限られていました。本研究では京都府広沢池にてウイルスメタゲノム解析をおこない、24時間に渡ってミクロキスティスとウイルスの包括的転写解析をおこないました。その結果、大きく3つのグループから成る15の新規本種感染ウイルスゲノムを明らかにしました。また環境中にはMa-LMM01のような非常に限られたミクロキスティス株にのみ感染可能な狭域宿主ウイルスと、様々なミクロキスティス株に感染可能な広域宿主ウイルスが共存することを見出しました。包括的転写解析より、ミクロキスティスは特に後者による感染に応じてウイルス耐性遺伝子を発現させることが示唆されました。

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2019/09/06

劇症1型糖尿病における膵の炎症性病変の特徴

論文タイトル
Unique Inflammatory Changes in Exocrine and Endocrine Pancreas in Enterovirus-Induced Fulminant Type 1 Diabetes
論文タイトル(訳)
劇症1型糖尿病における膵の炎症性病変の特徴
DOI
10.1210/jc.2018-02672
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.10 (4282–4294)
著者名(敬称略)
滝田 美夏子, 小林 哲郎 他
所属
冲中記念成人病研究所

抄訳

劇症1型糖尿病(FT1DM)では発症時、膵外分泌酵素の上昇に加え、膵臓の腫大を伴う症例も報告されており、急激なβ細胞破壊と外分泌の炎症とともにおこっている可能性を裏付ける。本研究ではFT1DM膵臓の免疫組織学的および病理学的変化を検討することを目標とし、3例のFT1DM膵と17例の非糖尿病患者膵を比較検討した。CD45、CD3、CD8、CD4、CD20、CD11c、CD68陽性細胞、VP1(エンテロウイルスカプシド蛋白)、CXCL10、そのレセプターであるCXCR3を染色し、膵島および周辺の外分泌腺組織(Exo)の各免疫細胞数を計測した。膵島およびExoの各免疫細胞数はFT1DM膵ではコントロール群と比較し有意に増加し、特にCD8、CD11c、CD68陽性細胞数が高値であった。VP1はFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管上皮細胞、十二指腸粘膜で陽性であった。また、FT1DM膵では膵島および外分泌腺にCXCL10陽性細胞を認め、周囲にCXCR3陽性T細胞を認めた。以上のことからFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管、十二指腸粘膜のウイルス感染に伴って樹状細胞やマクロファージが浸潤することが明らかとなった。またサイトカインやケモカインを介して活性化した自己反応性T細胞によって外分泌腺の炎症が惹起され、β細胞死に陥る可能性が示唆された。

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