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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2018/06/13

心筋ミオシン結合タンパク質CとフォルミンFhod3との相互作用

論文タイトル
Interaction between cardiac myosin-binding protein C and formin Fhod3
論文タイトル(訳)
心筋ミオシン結合タンパク質CとフォルミンFhod3との相互作用
DOI
10.1073/pnas.1716498115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Vol.115 No.19
著者名(敬称略)
松山 翔、武谷 立 他
所属
宮崎大学 医学部 薬理学分野

抄訳

心筋ミオシン結合タンパク質C(cMyBP-C)の遺伝子変異は、家族性肥大性心筋症の主因のひとつである。cMyBP-Cは、心筋サルコメア内のC-ゾーンと呼ばれる領域に局在し、クロスブリッジ制御を介して心機能を調節すると考えられているが、そのメカニズムには不明な点が多い。今回我々は、新規のcMyBP-C結合タンパク質として、心筋サルコメアの形成・維持に必須のアクチン調節因子であるフォルミンFhod3を同定した。cMyBP-Cの心臓特異的なN末端Ig様ドメインが、Fhod3の心臓特異的なN末領域と直接相互作用していた。cMyBP-Cとの結合領域を欠いた非心筋型Fhod3バリアントはC-ゾーンに局在できないこと、逆に心筋型Fhod3バリアントがcMyBP-C欠損マウスのC-ゾーンに局在できないことから、本相互作用がFhod3のC-ゾーンへの局在を決定していると考えられた。cMyBP-C欠損マウスにおける心筋症様の表現型は、Fhod3の過剰発現によって増悪し、逆にFhod3タンパク質レベルの低下により部分的に改善されたことから、Fhod3が正しい部位に局在できないcMyBP-C-欠損の状態下ではFhod3が心機能に有害な作用を及ぼすことが示唆された。以上より、Fhod3はcMyBP-Cとの直接結合を介して心機能の制御に関わると考えられる。

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2018/06/13

X染色体優性低リン血症性くる病とFGF23関連低リン血症性疾患: 新規治療への期待

論文タイトル
X-Linked Hypophosphatemia and FGF23-Related Hypophosphatemic Diseases: Prospect for New Treatment
論文タイトル(訳)
X染色体優性低リン血症性くる病とFGF23関連低リン血症性疾患: 新規治療への期待
DOI
10.1210/er.2017-00220
ジャーナル名
Endocrine Reviews Endocrine Society
巻号
Endocrine Reviews Vol.39 No.3 (274?291)
著者名(敬称略)
木下 祐加, 福本 誠二
所属
徳島大学 藤井節郎記念医科学センター

抄訳

リンは生体内で多様な作用を有しており、血中リン濃度は一定の範囲に維持されている。線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)は骨により産生されるリン調節ホルモンで、腎近位尿細管リン再吸収と、血中1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介する腸管リン吸収の抑制により、血中リン濃度を低下させる。過剰なFGF23活性により、いくつかのFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症が惹起されることが明らかにされた。特に、phosphate-regulating endopeptidase homolog, X-linked (PHEX)遺伝子不活性型変異によるX染色体優性低リン血症性くる病(X-linked hypophosphatemic rickets: XLH)は、遺伝性低リン血症性くる病の中で最も頻度の高い疾患である。リン製剤と活性型ビタミンD製剤が、現状ではXLH等に対し使用されている。しかしこれらの治療には、有効性や有害事象の点で、限界があることが知られている。そこでFGF23の活性阻害が、XLH等に対する新たな治療法となるかどうかが検討されている。特に、FGF23活性を阻害するモノクローナル抗体は、FGF23関連低リン血症性疾患に対する新規治療として有望視されている。

追記
本論文執筆後の2018年に、抗FGF23抗体はEuropean Medicines Agency(EMA)、およびFood and Drug Administration(FDA)からXLHに対し認可された。

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2018/06/05

腸管出血性大腸菌の低分子RNA Esr41はLEEとべん毛遺伝子群の発現を逆向きに調節する。

論文タイトル
Small RNA Esr41 inversely regulates expression of LEE and flagellar genes in enterohaemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌の低分子RNA Esr41はLEEとべん毛遺伝子群の発現を逆向きに調節する。
DOI
10.1099/mic.0.000652
ジャーナル名
Microbiology Microbiology Society
巻号
Microbiology Volume 164, Issue 5, May 2018 821-834
著者名(敬称略)
須藤 直樹、関根 靖彦 他
所属
立教大学 理学部 生命理学科 分子生物学研究室

抄訳

腸管出血性大腸菌(以下、EHEC)は溶血性尿毒素症候群などの重症例を伴う感染症を引き起こす、臨床上重要な病原性細菌である。EHECの多くは、宿主細胞への感染に直接に関与する3型分泌装置をコードするLEEと呼ばれる病原性遺伝子群をもつ。このLEEの発現が活性化するとき、べん毛をコードするべん毛遺伝子群の発現が抑制される。この遺伝子発現制御の意義は、宿主細胞への感染の際、宿主側の免疫系を活性化するべん毛の発現を抑制することで、免疫系の誘導を回避することにあると考えられる。本研究は、低分子RNAであるEsr41が、LEEの主要な転写活性化因子をコードするlerを転写後段階で抑制すること、lerの転写活性化因子をコードするpchの転写を間接的に抑制することでLEEの発現を抑制し、EHECの宿主細胞への接着性を低下させることを示した。さらに、Esr41がべん毛特異的シグマ因子をコードするfliAの転写を間接的に活性化させることで、べん毛遺伝子群の発現を上昇させることを示した。これらの結果は、LEEとべん毛遺伝子群間における逆相関の発現制御においてEsr41が重要な役割を担うことを示唆する。

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2018/05/23

オステオポンチンの細胞接着活性とリン酸化修飾における部位特異的O-結合型糖鎖修飾の生物学的役割

論文タイトル
Biological role of site-specific O-glycosylation in cell adhesion activity and phosphorylation of osteopontin
論文タイトル(訳)
オステオポンチンの細胞接着活性とリン酸化修飾における部位特異的O-結合型糖鎖修飾の生物学的役割
DOI
10.1042/BCJ20170205
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Biochemical Journal Vol. 475 No. 9 (1583-1595)
著者名(敬称略)
大山 翠、苅谷 慶喜 他
所属
福島県立医科大学医学部生化学講座

抄訳

 オステオポンチン(OPN)は、細胞の接着や運動の制御により、癌をはじめとする様々な疾患の増悪に関わる糖タンパク質である。OPN は5か所のO-結合型糖鎖付加部位に加え、40か所以上のリン酸化部位をもつ。これまでOPNの生物学的活性は、糖鎖やリン酸化により調節を受けると考えられてきたが、直接的な証拠は得られていない。それゆえ、OPNのO-結合型糖鎖修飾とリン酸化修飾、接着活性の3者の関係については不明である。
 本研究では、部位特異的にO-結合型糖鎖をもつOPN変異体を用いて、それらの関係について詳細な検討をおこなった。その結果、1) OPNのO-結合型糖鎖が部位特異的に細胞接着活性およびリン酸化に影響を与えること、2)リン酸化レベルとO-結合型糖鎖の数、接着活性は必ずしも相関しないこと、が明らかとなった。これらの結果は、O-結合型糖鎖によるOPN機能およびリン酸化の新たな調節メカニズムを示唆するものである。

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2018/05/18

ウシ胚盤胞期胚栄養外胚葉の発生におけるTEAD4とCCN2の相互制御

論文タイトル
Reciprocal regulation of TEAD4 and CCN2 for the trophectoderm development of the bovine blastocyst
論文タイトル(訳)
ウシ胚盤胞期胚栄養外胚葉の発生におけるTEAD4とCCN2の相互制御
DOI
10.1530/REP-18-0043
ジャーナル名
Reproduction Bioscientifica
巻号
Reproduction Vol.155 No.6 (563-571)
著者名(敬称略)
秋沢 宏紀, 川原 学 他
所属
北海道大学大学院農学研究院 生物資源科学専攻 家畜生産生物学講座

抄訳

哺乳類胚では胚盤胞期胚において最初の分化として二つの細胞集団、すなわち内部細胞塊 (ICM)と栄養外胚葉 (TE)への特徴づけが行われる。げっ歯類モデルでは、胚割球をTEに導く制御因子としてTEA domain transcription factor 4 (TEAD4)が重要な役割を果たすことが広く知られている。しかし、ウシ胚ではTEAD4の役割は不明である。本研究ではまず、ウシ胚盤胞期胚におけるTEAD4発現はmRNAとタンパク質の両方のレベルでICMと比べてTEで高いという部位優勢な発現様式を確かめた。そして、TEAD4遺伝子発現抑制 (knockdown: KD)により、TE分化関連遺伝子、CDX2GATA2CCN2の発現レベルが対照区と比較し有意に低下することを見出した。次いで、下方制御された遺伝子の中で最も大きく発現を低下させていたCCN2に着目し、ウシ胚においてCCN2 KDを試したところ、CDX2GATA2TEAD4の発現レベルが対照区と比べ有意に低下した。さらに、CCN2 KD胚では対照区と比べ、ICMに対するTEの細胞数比が減少していた。以上より、CCN2がTEAD4の制御を受けること、ならびに、これら二因子の相互的な制御が、胚盤胞期胚の適切な遺伝子発現の制御を介してTE細胞分化に重要な役割を果たすことが明らかになった。

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2018/05/16

生体試料中薬物濃度分析法における一般的な変更に対するフルバリデ-ション及びパーシャルバリデーションへの科学的リスクベースドアプローチの提案

論文タイトル
Proposal for risk-based scientific approach on full and partial validation for general changes in bioanalytical method
論文タイトル(訳)
生体試料中薬物濃度分析法における一般的な変更に対するフルバリデ-ション及びパーシャルバリデーションへの科学的リスクベースドアプローチの提案
DOI
10.4155/bio-2017-0226
ジャーナル名
Bioanalysis Future Science Group
巻号
Bioanalysis: Ahead of Print, Published Online: 10 Apr 2018
著者名(敬称略)
望月あゆみ、家木克典、上森 浩、永尾 明美、中井 恵子、中山 聡、難波 英太郎
所属
(望月)大塚製薬株式会社 新薬開発本部 クリニカルマネジメント部 臨床薬理室

抄訳

FDA,EMA及びMHLWが発出している生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン/ガイダンスには,フルバリデーションの評価項目は詳しく記載されているが,パーシャルバリデーションの詳細は殆ど記載されていない。そのような中で,著者らはJapan Bioanalysis Forum(JBF)の活動の一環として,2012年から2014年にかけて製薬企業やCROに在席するメンバーで構成された3つのディスカッショングループを結成し,日本におけるLC-MS/MSを用いた低分子の生体試料中薬物濃度分析で考え得るパーシャルバリデーション項目に焦点を当てて議論を行った。この論文では,各種分析法の部分変更に対するフルバリデーション又はパーシャルバリデーションの必要評価項目について,著者らの経験およびJBFシンポジウムの参加者と行った意見交換を基に導き出した見解並びに推奨内容を紹介する。なお,本論文はJBFの総意を代弁するものではなく,執筆段階の著者の意見である。

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2018/05/15

新生仔低酸素性虚血性脳症の後遺症に対するプロゲステロンの予防効果

論文タイトル
Progesterone as a Postnatal Prophylactic Agent for Encephalopathy Caused by Prenatal Hypoxic Ischemic Insult
論文タイトル(訳)
新生仔低酸素性虚血性脳症の後遺症に対するプロゲステロンの予防効果
DOI
10.1210/en.2018-00148
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.6 (2264?2274)
著者名(敬称略)
河原井 麗正, 生水 真紀夫 他
所属
千葉大学大学院医学研究院生殖医学講座

抄訳

周産期の低酸素虚血性イベント(HIE)は、小児麻痺(CP)の原因のひとつである。プロゲステロンは脳内で合成され、プレグナノロンをはじめとするニューロステロイドに転換されて神経保護作用を示すことが知られている。われわれは、妊娠中に胎盤で合成されたプロゲステロンが胎児脳に保護的に働いていると推定している。今回ラットHIEモデルを用い、出生後のプロゲステロン投与がその後の協調運動障害の発生を阻止するか検討した。妊娠18日の母獣の子宮動脈を30分間駆血した。その後、自然分娩した新生仔にプロゲステロン(PD1-9, 0.1mg/day)を投与したところ、 PD50におけるロタロッドスコア(運動能)は正常対照と同等のレベルにまで回復していた。プロゲステロン投与中にオリゴデンドログリアが正常化し、投与終了後に軸索形態と神経細胞数が徐々に正常化していた。出生後のプロゲステロン投与がCP発生を予防する可能性が示された。

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2018/05/14

大腸癌肝転移の術前化学療法後の腫瘍内脂肪の検出

論文タイトル
MRI Detection of Intratumoral Fat in Colorectal Liver Metastases After Preoperative Chemotherapy
論文タイトル(訳)
大腸癌肝転移の術前化学療法後の腫瘍内脂肪の検出
DOI
10.2214/AJR.17.18814
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Journal of Roentgenology
巻号
AJR May 2018, Volume 210, Number 5 196-204
著者名(敬称略)
中井 雄大, 五ノ井 渉 他
所属
東京大学 医学部附属病院 放射線科

抄訳

磁気共鳴画像(MRI)を用いると組織内の微量な脂肪を検出できる。この技術を悪性腫瘍の化学療法後の評価に応用した研究は少なく、予後への影響は検討されていない。我々は、大腸癌肝転移病巣では化学療法後に腫瘍内脂肪が高頻度に検出されることを発見し、さらに、その頻度や臨床的意義を検討した。大腸癌肝転移があり、術前化学療法・根治切除手術が行われた59名の患者を対象に、肝MRI(dual-echo法)を撮像したところ、腫瘍内脂肪は化学療法前では0%、化学療法後では54%で検出された。多変量解析では、独立した予後不良因子として、15個以上の肝転移、212%以上の脂肪含有率、365歳以上の年齢、4治療効果判定(RECIST 1.1法)で進行ないし安定、が残った。まとめると、大腸癌肝転移の化学療法後には頻繁に腫瘍内脂肪が検出され、一定以上の脂肪量は予後不良因子である可能性が示された。本結果は、大腸癌肝転移の適切な治療効果判定や治療の個別化に役立つ可能性がある。

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2018/05/02

M2ムスカリン受容体サブタイプはラット視索上核におけるバソプレシン合成を促進する

論文タイトル
Muscarinic M2 receptor promotes vasopressin synthesis in mice supraoptic nuclei
論文タイトル(訳)
M2ムスカリン受容体サブタイプはラット視索上核におけるバソプレシン合成を促進する
DOI
10.1530/JOE-17-0630
ジャーナル名
Journal of Endocrinology Bioscientifica
巻号
Journal of Endocrinology Vol.237 No.2 (207-216)
著者名(敬称略)
永野 宏, 海野 年弘 他
所属
岐阜大学 応用生物科学部 共同獣医学科 獣医薬理学分野

抄訳

バソプレシン(AVP)は、視床下部視索上核および室傍核に存在する巨細胞性神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉の神経終末から血中へと分泌される。これまでに、ムスカリン受容体がAVPの分泌を促進性に調節する可能性が示唆されており、また、視床下部ではM2ムスカリン受容体サブタイプが多く発現していることも報告されている。本研究では、同サブタイプを介したAVPの分泌調節機構について明らかにする目的で、M2サブタイプを欠損したマウスを用いてAVPの合成・分泌能を検討した。視床下部におけるAVPの免疫陽性細胞数を野生型と欠損型で比較すると、室傍核では両者の間に差は認められなかったが、視索上核では欠損型で有意に低下していた。また、欠損型では血中AVP濃度が野生型と比較して有意に低下しており、飲水量および排尿量は有意に増加していた。これらの結果は、M2ムスカリン受容体サブタイプが視索上核におけるAVPの合成・分泌を促進性に調節することにより体液量の恒常性調節に関与することを示唆している。

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2018/04/26

シスタチオニンβ-リアーゼはD-アミノ酸代謝に関与する

論文タイトル
Cystathionine β-lyase is involved in D-amino acid metabolism
論文タイトル(訳)
シスタチオニンβ-リアーゼはD-アミノ酸代謝に関与する
DOI
10.1042/BCJ20180039
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Biochemical Journal Vol.475 No.8 (1397-1410)
著者名(敬称略)
宮本 哲也, 本間 浩 他
所属
北里大学 薬学部 生体分子解析学教室

抄訳

細菌は、ペプチドグリカンを構成するD-アラニンやD-グルタミン酸以外の多様なD-アミノ酸(非標準的D-アミノ酸)を生合成している。これらはペプチドグリカン代謝やバイオフィルム解体などにおいて重要な役割を担っており、多様な環境変化に適応するための機能分子と考えられている。したがって、非標準的D-アミノ酸の生合成経路を理解することは重要である。本論文で我々は、大腸菌が有する2つのシスタチオニンβ-リアーゼ (MetC、MalY) が非標準的D-アミノ酸合成能を有することを明らかとした。さらに、MetCはD-およびL-セリンに対するデヒドラターゼ活性を有することを新たに発見した。興味深いことに、MetCのアラニンラセマーゼ活性、システインリアーゼ活性、セリンデヒドラターゼ活性は、同程度の強さであった。したがって、シスタチオニンβ-リアーゼは、異なる3つの活性を有する多機能酵素であり、L-メチオニンの生合成経路に関与するだけでなく、非標準的D-アミノ酸の生合成やセリン代謝にも関与している可能性が示唆された。

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