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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2013/04/22

初期化を阻害する転写因子が分化を促進する

論文タイトル
Transcription factors interfering with dedifferentiation induce cell type-specific transcriptional profiles 
論文タイトル(訳)
初期化を阻害する転写因子が分化を促進する
DOI
10.1073/pnas.1220200110
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2013 110 (16) 6412-6417; published ahead of print April 2, 2013, doi:10.1073/pnas.1220200110
著者名(敬称略)
引地 貴亮、升井 伸治 他
所属
京都大学 iPS細胞研究所初期化機構研究部門

抄訳

転写因子は、遺伝子の発現を調節することで、細胞の初期化や分化を制御するが、そのメカニズムの理解は断片的である。本研究では、初期化と分化を転写制御で統合的に理解するモデルを報告する。 神経系細胞に特異的に発現する158転写因子をリストアップし、それらを過剰発現させたところ、初期化する効率を下げる(iPS細胞化に干渉する)因子が少数存在した。これらの因子を肝臓細胞などに導入したところ、神経系細胞を誘導できた。また、同様に肝臓の細胞でiPS細胞化に干渉する因子は、既に肝臓細胞へと誘導することが知られている転写因子だった。これらの結果から、細胞特異的発現プロファイルを強く維持するコア因子は、iPS細胞化に強く干渉すること、すなわち初期化には細胞特異的発現プロファイルの抑制が必要であることがわかった。今後は、干渉を指標に様々な分化細胞でコア因子同定が期待される。

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2013/01/28

転写因子Jdp2は骨恒常性と細菌感染防御を破骨細胞と好中球の分化を制御することで調節する

論文タイトル
The Transcription Factor Jdp2 Controls Bone Homeostasis and Antibacterial Immunity by Regulating Osteoclast and Neutrophil Differentiation 
論文タイトル(訳)
転写因子Jdp2は骨恒常性と細菌感染防御を破骨細胞と好中球の分化を制御することで調節する
DOI
10.1016/j.immuni.2012.08.022
ジャーナル名
Immunity Cell Press
巻号
Immunity Volume 37, Issue 6, 14 December 2012, Pages 1024-1036
著者名(敬称略)
丸山 健太、審良 静男 他
所属
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学研究室

抄訳

Jdp2はAP-1ファミリーに属する転写因子であり、破骨細胞分化やヒストンアセチル化制御に関与することが知られている。しかし、血球分化におけるその機能や個体レベルでの生理的意義については謎に包まれていた。そこでJdp2ノックアウトマウスを作成し解析したところ、このマウスがin vivoにおける破骨細胞分化の障害により大理石骨病を発症することを発見した。さらに我々は、Jdp2ノックアウトマウスが黄色ブドウ球菌やカンジダに対し易感染であることを見出し、その原因が分化マーカーLy6Gの発現が減弱した機能異常を有する好中球にあることを明らかにした。好中球のJdp2はC/EBPaと結合しその転写活性を最終分化段階において抑制することで好中球機能(殺菌能、好中球細胞外トラップ形成や自発的なアポトーシス)を最適化させていた。また、好中球の分化マーカーLy6GはATF3によって抑制され、Jdp2はATF3のプロモーター領域に結合してヒストンを脱アセチル化することでATF3の発現を抑制し、適切な分化状態を作り出していた。以上より、Jdp2はin vivoにおける骨恒常性と細菌感染防御を、破骨細胞と好中球分化に特異的な遺伝子の発現調節を介して複雑に制御していることが明らかとなった。

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2013/01/28

シアノバクテリアの走光性光受容体であるシアノバクテリオクロムタンパク質AnPixJとTePixJの結晶構造から明らかになった光変換反応の普遍性と特異性

論文タイトル
Structures of cyanobacteriochromes from phototaxis regulators AnPixJ and TePixJ reveal general and specific photoconversion mechanism 
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアの走光性光受容体であるシアノバクテリオクロムタンパク質AnPixJとTePixJの結晶構造から明らかになった光変換反応の普遍性と特異性
DOI
10.1073/pnas.1212098110
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2013 110 (3) 918-923; published ahead of print December 19, 2012, doi:10.1073/pnas.1212098110
著者名(敬称略)
成川 礼、池内 昌彦 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系(生物)

抄訳

シアノバクテリオクロムは、シアノバクテリアに広く分布するテトラピロール結合型光受容体で、フィトクロムのスーパーファミリーに属する色素結合型GAFドメインをもつ。シアノバクテリオクロムは多様な分光特性をもついくつものサブクラスに分かれる。そのなかで、糸状性アナベナAnabaena sp. PCC 7120と好熱性Thermosynechococcus elongatus BP-1の走光性光受容体(以下、AnPixJとTePixJ)はそれぞれ赤/緑型と青/緑型サブクラスの代表である。論文では、AnPixJのGAFドメインの赤色光吸収型(Pr)とTePixJのGAFドメインの緑色光吸収型(Pg)の結晶構造を決定した。その構造は、フィトクロムのGAFドメインとおおむね似ていたが、以下のような大きな特徴がみられた。(1) 発色団は、C5-Z,syn/C10-Z,syn/C15-Z/antiのフィコシアノビリン(AnPixJ Pr)とC10-Z,syn/C15-E,anti のフィコビオロビリン(TePixJ Pg)である。(2) ピロール環に配位する保存されたAsp残基は、AnPixJではA・B・C環に、TePixJ PgではD環に水素結合していた。これによって、光励起によるD環の異性化に続く構造変化の普遍性と特異性が明らかになった

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2012/12/05

オートファジー必須因子・Atg16L1はPC12細胞においてオートファジーとは独立にホルモン顆粒の分泌を制御する

論文タイトル
Atg16L1, an essential factor for canonical autophagy, participates in hormone secretion from PC12 cells independently of autophagic activity 
論文タイトル(訳)
オートファジー必須因子・Atg16L1はPC12細胞においてオートファジーとは独立にホルモン顆粒の分泌を制御する
DOI
10.1091/mbc.E12-01-0010
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell August 15, 2012 vol. 23 no. 16 3193-3202
著者名(敬称略)
石橋弘太郎、福田 光則 他
所属
東北大学大学院 生命科学研究科 膜輸送機構解析分野

抄訳

オートファジーは、あらゆる真核細胞に保存された細胞内分解機構であり、様々な生命現象において重要な役割を担うことが明らかになっている。近年、オートファジーと分泌との関連性を示す研究が幾つか報告されているが、両者を結び付ける分子メカニズムはこれまで全く明らかになっていない。そこで本論文では、分泌研究のモデル細胞株である副腎髄質クロマフィン細胞由来のPC12細胞を用いて解析を行ったところ、オートファジー必須因子の1つであるAtg16L1が低分子量G蛋白質Rab33A依存的にホルモン顆粒上に局在することを見出した。興味深いことに、このAtg16L1のホルモン顆粒への局在はオートファジー阻害の影響を全く受けなかった。また、RNA干渉法を用いた内在性のAtg16L1(あるいは足場となるRab33A)分子のノックダウンの結果、ホルモン分泌量が顕著に減少することが明らかになった。以上の結果から、Atg16L1はホルモン顆粒上のRab33Aと協調してオートファジーとは独立にホルモン顆粒の分泌過程を制御することが示唆された。

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2012/12/05

心筋L型カルシウムチャネルが結合膜構造に局在化するためには,α1CサブユニットのC末端近位側が必要である。

論文タイトル
The proximal C-terminus of α1C subunits is necessary for junctional membrane targeting of cardiac L-type calcium channels 
論文タイトル(訳)
心筋L型カルシウムチャネルが結合膜構造に局在化するためには,α1CサブユニットのC末端近位側が必要である。
DOI
10.1042/BJ20120773
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Biochem.J (2012) 448, 221-231
著者名(敬称略)
中田勉、山田充彦 他
所属
信州大学医学部 分子薬理学講座

抄訳

心筋におけるL型カルシウムチャネル(LTCC)は,形質膜・筋小胞体膜結合膜構造でリアノジン受容体と機能的複合体を形成している。心筋のLTCCが結合膜構造に局在することは効率的な興奮収縮連関に不可欠であるが,その分子機構は明らかでない。本研究ではα1Cサブユニット(骨格筋型LTCCのポアサブユニット)を欠損したdysgenicマウス由来の骨格筋細胞株GLTを用いた研究を行った。α1Cサブユニット(心筋型LTCCのポアサブユニット)の種々の変異体を作成しGLT細胞に発現させ,免疫染色法を行った結果,C末端近位側に存在するL1681QAGLRTL1688とP1693EIRRAIS1700の部位に変異が導入されるとチャネルの結合膜構造への集積が強く抑制された。また,この部位の変異体を導入したGLT細胞は,野生型の遺伝子を導入したものと比べて,電気刺激によるカルシウムトランジェントを起こす確率が減少していた。この結果から,今回同定したモチーフがLTCCの結合膜への局在と機能に重要な意味を持つことが示唆された。

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2012/12/05

Rab27エフェクター・Slp2-aはMDCK II細胞においてシグナル分子podocalyxinのapical輸送とclaudin-2の発現調節を行う

論文タイトル
Rab27 effector Slp2-a transports the apical signaling molecule podocalyxin to the apical surface of MDCK II cells and regulates claudin-2 expression 
論文タイトル(訳)
Rab27エフェクター・Slp2-aはMDCK II細胞においてシグナル分子podocalyxinのapical輸送とclaudin-2の発現調節を行う
DOI
10.1091/mbc.E12-02-0104
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
Mol. Biol. Cell August 15, 2012 vol. 23 no. 16 3229-3239
著者名(敬称略)
安田貴雄、福田 光則 他
所属
東北大学大学院 生命科学研究科 膜輸送機構解析分野

抄訳

上皮細胞は細胞間のバリアであるタイトジャンクションを仕切りに、頂端側(apical面)と側底側(basolateral面)という極性を持ち、それぞれに特異的な蛋白質や脂質を運ぶ極性輸送という仕組みを持つ。我々はこれまで、マウスの胃上皮細胞のapical面に特異的に局在する分子としてSlp2-a(synaptotagmin-like protein 2-a)を同定している。Slp2-aは膜輸送を制御する低分子量G蛋白質Rab27と結合することから、上皮細胞のapical面への極性輸送に関与することが示唆されていたが、その機能はこれまで明らかではなかった。本論文では、極性輸送のモデル細胞であるイヌの腎臓尿細管上皮細胞MDCK II細胞を用い、Slp2-aがRab27によって運ばれてきたシグナル分子podocalyxinを含む小胞をapical面に繋ぎ留め、podocalyxinのapical細胞膜への輸送を促進することを初めて明らかにした。さらに、apical面に輸送されたpodocalyxinは、その下流分子である細胞骨格関連蛋白質ezrinの活性調節およびMAPキナーゼカスケード(ERK1/2)の活性調節を行うことで、タイトジャンクションの構成因子claudin-2の発現調節に関与することを突き止めた。以上の結果から、Slp2-aを介した「apical面への極性輸送」と「細胞間相互作用」との間に新たな機能的関係が存在することが明らかになった。

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2012/10/04

卵丘細胞卵複合体の膨潤は、EGF like factor-Calpain活性を介した細胞遊走によって引き起こされる

論文タイトル
EGF-Like Factors Induce Expansion of the Cumulus Cell-Oocyte Complexes by Activating Calpain-Mediated Cell Movement 
論文タイトル(訳)
卵丘細胞卵複合体の膨潤は、EGF like factor-Calpain活性を介した細胞遊走によって引き起こされる
DOI
10.1210/en.2012-1059
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology August 1, 2012 vol. 153 no. 8 3949-3959
著者名(敬称略)
川島一公、島田昌之 他
所属
広島大学生物圏科学研究科 生物資源科学専攻

抄訳

哺乳類の卵は、多層の卵丘細胞に覆われ、卵丘細胞・卵複合体 (COC) を形成している。排卵過程において、COCは、EGF like factor刺激によりヒアルロン酸を主とした細胞外マトリックス (ECM) を卵丘細胞間に蓄積し、その複合体の体積が増大する(この現象を膨潤と呼ぶ)。しかし、ECMを蓄積するスペースを得るために、結合していた細胞が脱接着し、移動する必要があると推察されるが、これまで全く検討されていない。そこで、ガン細胞の脱接着・遊走を司るプロテアーゼであるCalpain1, 2に着目し、卵丘細胞での発現と活性化、その役割について検討した。その結果、卵丘細胞ではCalpain2が発現し、排卵刺激後にEGF-like factor-EGFRによるCa2+上昇とERK1/2の活性化依存的に酵素活性が上昇していた。標的タンパク質であるPaxillinやTalinの分解も、排卵刺激後に検出され、PaxillinとCalpain2においては細胞間結合部位と細胞突起 (Bleb) 形成の起点特異的に検出された。このBleb形成は、Calpain inhibitorで抑制され、その結果、Calpain inhibitor処理により卵丘細胞の脱接着と遊走が認められず、COC膨潤と排卵が有意に抑制された。以上の結果から、EGFR-Calpain2による卵丘細胞の脱接着・細胞遊走がCOC膨潤による排卵に必須であることが明らかとなった.

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2012/10/03

フォトン単位の隠れマルコフモデルに基づく1分子 FRET 軌跡の変分ベイズ解析

論文タイトル
Variational Bayes Analysis of a Photon-Based Hidden Markov Model for Single-Molecule FRET Trajectories 
論文タイトル(訳)
フォトン単位の隠れマルコフモデルに基づく1分子 FRET 軌跡の変分ベイズ解析
DOI
10.1016/j.bpj.2012.07.047
ジャーナル名
Biophysical Journal Cell Press
巻号
Biophysical JournalVolume 103, Issue 6, 1315-1324, 19 September 2012
著者名(敬称略)
岡本憲二
所属
独立行政法人理化学研究所 基幹研究所 佐甲細胞情報研究室

抄訳

1分子 FRET 計測法は、生体分子の構造変化ダイナミクスの実時間での計測を可能とする有力な手法である。近年、タイムスタンプ (TS) フォトン検出方式を用いることで、高精度・高時間分解能で時系列信号を得ることが可能となった。一方、微弱な信号では揺らぎを無視できず、乱雑な信号から意味のある情報を取り出す信号解析が必要とされる。これまで、1分子ダイナミクスを状態遷移の繰り返しと見なし、隠れマルコフモデル (HMM) 等を用いて状態遷移軌跡を復元する方法論が提案されてきた。
 本論文では、TS-FRET 信号の HMM を変分ベイズ (VB) 法で取り扱うことにより、時系列信号から状態数を推定し、状態遷移軌跡を復元する新たなデータ解析法を紹介する。シミュレーションにより生成した信号に適用することで解析法の評価をおこない、従来法よりも優れた結果を得られることを示し、性能の限界についての評価をおこなった。また、Holliday junction DNA の1分子 FRET 計測実験をおこない、その実測データに新たな解析法を適用した例を示した。
 その結果、予想される状態数を正しく推定し、状態遷移軌跡を復元することに成功した。得られた結果は、branch migration の1ステップがたびたび複数塩基対のジャンプを含むことを示唆するものであった。

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2012/10/02

エクト型酵素CD38の細胞表面における四量体形成は触媒活性と脂質ラフトへの局在化に必要である

論文タイトル
Tetrameric Interaction of the Ectoenzyme CD38 on the Cell Surface Enables Its Catalytic and Raft-Association Activities 
論文タイトル(訳)
エクト型酵素CD38の細胞表面における四量体形成は触媒活性と脂質ラフトへの局在化に必要である
DOI
10.1016/j.str.2012.06.017
ジャーナル名
Structure Cell Press
巻号
Structure, Volume 20, Issue 9, 1585-1595, 02 August 2012
著者名(敬称略)
横山三紀 他
所属
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生体支持組織学系 生体硬組織再生学講座 硬組織病態生化学分野

抄訳

リンパ球表面抗原CD38は哺乳類細胞における主要なNAD分解酵素であり、サイクリックADPリボースの産生を介して細胞内カルシウム動員に関与する。また脂質ラフトに局在化して細胞増殖や細胞死のシグナルを制御する。CD38は細胞表面上で四量体を形成することが知られていたが四量体の構造と機能的な意義は不明だった。本論文では部位特異的架橋反応と結晶構造解析を組み合わせてマウスCD38の細胞表面での多量体化に関与する3種類の接触面 (I-III) を明らかにした。接触面 (I) により膜の直上で二量体化したCD38が、接触面 (II, III) によりさらに組み合わされて四量体が形成される。コアとなる二量体同士が結合することはCD38の触媒活性と脂質ラフトへの局在化のどちらにも必要であった。CD38の糖鎖付加は四量体の自己重合を抑制していることが示唆された。四量体形成はCD38の多彩な分子機能の構造基盤であると考えられる。

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2012/10/01

右利き健常人の中枢性ベンゾジアゼピン受容体分布:I-123 イオマゼニールSPECTの部分容積効果補正および統計画像解析

論文タイトル
Distribution of Cortical Benzodiazepine Receptor Binding in Right-Handed Healthy Humans: A Voxel-Based Statistical Analysis of Iodine 123 Iomazenil SPECT with Partial Volume Correction
論文タイトル(訳)
右利き健常人の中枢性ベンゾジアゼピン受容体分布:I-123 イオマゼニールSPECTの部分容積効果補正および統計画像解析
DOI
10.3174/ajnr.A3005
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 33, No. 8 (1458-1463)
著者名(敬称略)
加藤 弘樹
所属
大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座 核医学講座

抄訳

中枢性ベンゾジアゼピン受容体リガンドであるイオマゼニールは薄い大脳灰白質に高い特異性をもって集積する。このためI-123 イオマゼニールSPECT画像は部分容積効果(PVE)を受けやすく、加齢性脳萎縮による見かけの信号低下を呈する。本研究ではI-123 イオマゼニールSPECTのPVE補正によって、中枢性ベンゾジアゼピン受容体結合分布の加齢性変化を明らかにすることを目的とした。
 19例の右利き健常者(25 - 82 歳; 55 ± 21 歳)を対象としている。I-123 イオマゼニールSPECT をMRIを用いてPVE補正を行い、統計画像解析の方法に基づいて灰白質体積および補正前後のSPECT値と年齢との関連を調べた。
 その結果灰白質体積と補正前SPECT値の加齢性変化に強い正比例の相関が認められ、補正後SPECT値には有意な加齢性変化は検出されなかった。
 I-123 イオマゼニールSPECT のPVE補正によって、右利き健常人の中枢性ベンゾジアゼピン受容体分布に加齢性変化がないことが明らかになった。

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