本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2012/06/21

3.0-T MRIと1.5-T MRIによるマンモグラフィで認められたスピクラ腫瘤の描出能の比較

論文タイトル
Comparison of 3- and 1.5-T Dynamic Breast MRI for Visualization of Spiculated Masses Previously Identified Using Mammography 
論文タイトル(訳)
3.0-T MRIと1.5-T MRIによるマンモグラフィで認められたスピクラ腫瘤の描出能の比較
DOI
10.2214/AJR.11.7463
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
June 2012 vol. 198 no. 6 W611-W617
著者名(敬称略)
植松孝悦 他
所属
静岡県立静岡がんセンター 生理検査科

抄訳

スピクラという乳癌画像診断において重要な微細構造について16ch breast coil併用 3.0-T MRIと4ch breast coil併用1.5-T MRIにおいて、その描出能について比較検討した。対象はマンモグラフィで明らかなスピクラ腫瘤を示して乳腺MRIを施行された乳癌120症例(3.0-T MRI71症例、1.5T- MRI49症例)。乳腺MRI読影経験豊富な3人の放射線専門医が判定した。3.0-T MRIは両側横断像と片側矢状断像、1.5T- MRIは両側横断像について、各々スピクラの描出能について視覚的に比較した。結果はスピクラの描出能においてultrathin slice撮像法を用いた3.0-T MRIの片側矢状断像が3.0-T MRIの両側横断像と1.5-T MRIの両側横断像に比し統計学的に有意に優れていた(p = 0.009 and p = 0.004)。1cm未満の小病変のスピクラ描出能においても、ultrathin slice撮像法を用いた3.0-T MRIの片側矢状断像が、1.5T -MRIの両側横断像に比し統計学的に有意に優れていた(p = 0.029)。以上より、脂肪抑制併用両側乳房撮像法を用いて高い時間分解能を保持したままin-planeとthrough-plane において高分解能撮像が容易にできる3.0-T MRIはスピクラという乳癌画像診断において重要な微細構造の描出において1.5-T MRIより優れることが証明された。よって3.0-T MRIから得られる超高分解能画像は乳腺MRIの質的診断能の向上に寄与すると考えられるが、3.0-T MRIの能力を十分に生かすためには我々の用いた撮像プロトコルのように創意工夫が必要である。

論文掲載ページへ

2012/06/18

光化学系II蛋白質(Thermosynechococcus vulcanus由来)においてアミノ酸軸配位子がクロロフィル二量体の正電荷状態に与える影響

論文タイトル
Influence of the Axial Ligand on the Cationic Properties of the Chlorophyll Pair in hotosystem II from Thermosynechococcus vulcanus 
論文タイトル(訳)
光化学系II蛋白質(Thermosynechococcus vulcanus由来)においてアミノ酸軸配位子がクロロフィル二量体の正電荷状態に与える影響
DOI
10.1016/j.bpj.2012.04.016
ジャーナル名
Biophysical Journal Cell Press
巻号
Volume 102, Issue 11, 2634-2640, 6 June 2012
著者名(敬称略)
斉藤圭亮、石北 央 他
所属
京都大学 生命科学系キャリアパス形成ユニット 石北グループ

抄訳

光化学系II蛋白質にはPD1, PD2クロロフィルから構成されるクロロフィル二量体が存在する。Thermosynechococcus vulcanus由来の光化学系II結晶構造に理論計算を適応し、PD1のアミノ酸軸配位子(D1-His198)が1)PD1、PD2の酸化還元電位に及ぼす影響、2)正電荷分布比(PD1+ : PD2+)に及ぼす影響を解析した。D1-H198Qアミノ酸変異体では、両クロロフィルの電位と正電荷分布比は野生型に比べ、変化しなかった。しかし、D1-H198A変異体ではPD1側の酸化還元電位は上昇し、結果として正電荷はPD1、PD2上により均等に分布した。Ala変異体で空いたPD1の配位部位に水分子を軸配位子として挿入して計算を行うと、電位・正電荷分布比共に野生型と同じ値に戻った。実験では電位・正電荷分布比共に野生型とほぼ同じであることが既知なので、今回の結果は、「D1-H198A変異体における水分子の配位」の存在を立証するものである。

論文掲載ページへ

2012/06/13

mVam2依存のエンドサイトーシス経路によってマウス初期胚の骨形成因子(BMP)シグナルのパターンが制御される

論文タイトル
Spatial Restriction of Bone Morphogenetic Protein Signaling in Mouse Gastrula through the mVam2-Dependent Endocytic Pathway 
論文タイトル(訳)
mVam2依存のエンドサイトーシス経路によってマウス初期胚の骨形成因子(BMP)シグナルのパターンが制御される
DOI
10.1016/j.devcel.2012.05.009
ジャーナル名
Developmental Cell Cell Press
巻号
Volume 22, Issue 6, 1163-1175, 12 June 2012
著者名(敬称略)
和田洋 他
所属
大阪大学 産業科学研究所 生体機能科学研究分野

抄訳

細胞外のシグナルは細胞膜上の受容体によって受け取られ、活性化された受容体は細胞基質のメディエーターを活性化して、遺伝子発現の調節や細胞骨格のリモデリング、あるいは細胞死などの諸反応を引き起こす。受容体はエンドサイトーシスにより後期エンドソーム・リソソームに運搬されることによって細胞基質より隔離され、シグナル伝達がOFFになるとされる。さまざまなシグナル伝達が受精卵から前後左右背腹軸をもつ胎仔の発生を制御している。初期発生は比較的短時間で進行するため、シグナル伝達をOFFにする機構は重要なポイントであるが、後期エンドソーム・リソソームが果たす役割は不明であった。本研究では後期エンドソームの膜融合に機能するmVam2/mVps41遺伝子を欠損するマウスを作出し、初期胚臓側内胚葉のリソソームの形成にmVam2機能が必須であることを見出した。mVam2欠損細胞ではBMP・BMP受容体が後期エンドソーム様オルガネラに蓄積し、BMPシグナルをOFFにすることができない。これと良く対応して、mVam2欠損胚ではBMPシグナルが異所的に亢進し、胚体中胚葉の欠落・予定神経外胚葉領域での細胞死が起き、胚の形態形成が停止する。すなわち、mVam2によるエンドソームダイナミクスがBMPシグナル活性を適切に制御しており、マウス初期胚の空間パターン構築に必須な機能を果たしていることを明らかにした。

論文掲載ページへ

2012/06/08

Hsp70を核に運搬する分子Hikeshiは熱ショックストレスによる核ダメージから細胞を守る

論文タイトル
Hikeshi, a Nuclear Import Carrier for Hsp70s, Protects Cells from Heat Shock-Induced Nuclear Damage 
論文タイトル(訳)
Hsp70を核に運搬する分子Hikeshiは熱ショックストレスによる核ダメージから細胞を守る
DOI
10.1016/j.cell.2012.02.058
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Volume 149, Issue 3, 578-589, 27 April 2012
著者名(敬称略)
小瀬真吾 今本尚子
所属
理化学研究所 基幹研究所 今本細胞核機能研究室

抄訳

核-細胞質間分子流通は主にImportinβファミリーに属する運搬体分子によって行われる。しかし、ストレス応答時には、Importinβファミリー分子による輸送活性が顕著に低下する。本論文では、分子シャペロンHsc70/Hsp70のストレス応答性核局在化機構の解析を行った。その結果、熱ショック時にはImportinβファミリー分子とは全く異なる新しい輸送経路が機能していることを明らかにし、その運搬体分子をHikeshi(火消し)と命名した。Hikeshiは、ATP型Hsp70に強く結合し、熱ショック時にHsp70を細胞質から核に運搬する機能をもつ。さらに、siRNA処理によってHikeshiの輸送経路を抑制した細胞は、熱ストレス後の生存率が低下し、熱ショック応答からの回復が顕著に遅れることを明らかとなった。本研究によって、熱ストレス時のHikeshi輸送経路と分子シャペロンHsp70の核内機能の重要性を示された。

論文掲載ページへ

2012/05/28

共生細菌による殺虫剤抵抗性

論文タイトル
Symbiont-mediated insecticide resistance 
論文タイトル(訳)
共生細菌による殺虫剤抵抗性
DOI
10.1073/pnas.1200231109
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Published online before print April 23, 2012, doi: 10.1073/pnas.1200231109
著者名(敬称略)
菊池義智 他
所属
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 環境生物機能開発研究グループ

抄訳

害虫の殺虫剤抵抗性は世界中で大きな問題となっている。抵抗性のメカニズムとしては解毒機構の活性化や標的タンパクの構造変化などが知られるが、いずれも昆虫自身の遺伝子によって決まる性質だと考えられてきた。本研究では、害虫が殺虫剤分解菌を体内に共生させることで殺虫剤抵抗性になるという、これまでまったく知られていなかった抵抗性の発達メカニズムを発見したので報告する。ダイズの害虫であるホソヘリカメムシは消化管に「盲嚢」と呼ばれる袋状の組織を多数発達させており、その中にBurkholderia属細菌を保持している。このカメムシは共生細菌を母子間伝達せず、毎世代環境土壌中から共生細菌を獲得する。我々は野外調査と操作実験により、農耕地土壌中には殺虫剤であるフェニトロチオンを分解できるBurkholderiaが生息しており、ホソヘリカメムシがこれを取り込むことで殺虫剤抵抗性になることを実証した。さらに、農耕地土壌にフェニトロチオンを連続散布したところ、フェニトロチオン分解菌の土壌中密度が上昇し、これに伴いフェニトロチオン分解菌を取り込むカメムシの頻度も増大することを明らかにした。このことは、殺虫剤の散布が土壌微生物叢に影響を及ぼし、これが害虫の殺虫剤抵抗性化を引き起こす可能性を示している。

論文掲載ページへ

2012/05/28

ユビキチン結合モチーフUIMをもつAnkrd13ファミリータンパク質による増殖因子受容体のエンドサイトーシス制御

論文タイトル
The Ankrd 13 family of UIM-bearing proteins regulates EGF receptor endocytosis from the plasma membrane 
論文タイトル(訳)
ユビキチン結合モチーフUIMをもつAnkrd13ファミリータンパク質による増殖因子受容体のエンドサイトーシス制御
DOI
10.1091/mbc.E11-09-0817
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
April 1, 2012 vol. 23 no. 7 1343-1353
著者名(敬称略)
丹野秀崇、駒田雅之 他
所属
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生体システム専攻 細胞生物学分野 駒田研究室

抄訳

増殖因子により細胞膜上で活性化された増殖因子受容体は、エンドサイトーシスされてリソソームに運ばれ分解される。この受容体ダウンレギュレーションは、細胞の過増殖・癌化を防ぐ重要な調節機構である。活性化された受容体はリジン(K)63連結型のポリユビキチン化を受け、これが受容体のエンドサイトーシスを始動するシグナルとなる。本論文では、ユビキチン結合モチーフUIMをもつ新規タンパク質ファミリーAnkrd13 A, B, Dの細胞機能の解析を行った。ヒト培養細胞を上皮細胞増殖因子EGFで刺激すると、細胞膜上でAnkrd13がUIMを介してEGF受容体に結合した。また、Ankrd13はエンドサイトーシス・シグナルとして働くK63ポリユビキチン鎖と選択的に結合した。そして、Ankrd13やそのドメイン欠失変異体の過剰発現はEGF受容体のエンドサイトーシスを阻害した。以上から、Ankrd13はUIMを介して細胞膜上でK63ポリユビキチン化された増殖因子受容体を認識し、そのエンドサイトーシスを制御することが示された。

論文掲載ページへ

2012/05/28

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は血管新生を抑制する

論文タイトル
Acetylcholinesterase inhibitors attenuate angiogenesis 
論文タイトル(訳)
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は血管新生を抑制する
DOI
10.1042/CS20110633
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
August 2012 | Vol.123 No.4 | 241-249
著者名(敬称略)
宮崎良平、市來俊弘 他
所属
九州大学 医学研究院 先端心血管治療学講座

抄訳

ドネペジルはアルツハイマー病患者の治療に用いられる可逆性のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬である。近年、ドネペジルの投与が炎症性サイトカインの産生を抑制すること、また炎症は血管新生に重要な役割を果たす事が報告されている。そこでドネペジルが血管新生に及ぼす影響を検討した。ドネペジル投与はマウス下肢虚血モデルにおいて血流の回復を抑制し、虚血下肢の毛細血管密度を減少させた。構造の異なるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるフィゾスチグミンでも同様の結果が得られた。ドネペジル投与を受けたマウスの虚血下肢ではインターロイキン(IL)-1βとvascular endothelial growth factor (VEGF)の発現が低下していた。ドネペジル投与を受けたマウスの虚血下肢にIL-1βを投与すると,VEGFの発現が増加し、血流低下や毛細血管密度低下が回復した。またドネペジルを投与したマウスの虚血下肢では対照群と比べてAktのリン酸化が低下していた。これらのデータより、ドネペジルによるアセチルコリンの増加が、Akt活性化を抑制し、IL-1βの産生/VEGF誘導を抑制するため血管新生が抑制されると考えられた。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が新規の血管新生抑制薬となる可能性が示唆された。

論文掲載ページへ

2012/05/28

黄色ブドウ球菌由来莢膜合成酵素CapFは2つの機能ドメインからなるユニークな構造を有する

論文タイトル
Crystal structure of the enzyme CapF of Staphylococcus aureus reveals a unique architecture composed of two functional domains 
論文タイトル(訳)
黄色ブドウ球菌由来莢膜合成酵素CapFは2つの機能ドメインからなるユニークな構造を有する
DOI
10.1042/BJ20112049
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
May 2012 | Vol.443 | Issue 3| 671-680
著者名(敬称略)
宮房 孝光、津本浩平 他
所属
東京大学医科学研究所疾患プロテオミクスラボラトリー 新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻疾患蛋白質工学分野 工学系研究科化学生命工学専攻

抄訳

莢膜は細胞壁の外側に発現される多糖類であり、黄色ブドウ球菌の重要な病原因子の一つである。CapFはこの莢膜の合成に必須な酵素であり、創薬標的と見なしうる。本論文では、CapFのX線結晶構造解析、酵素機能解析を行い、また補酵素であるNADPHとの特異的な相互作用を等温滴定型熱量測定により観察した。
 X線結晶構造解析の結果、CapFは2つの独立したドメイン(N末端ドメイン、C末端ドメイン)を有していることが明らかとなった。これらのドメインを分割した変異体を作成し、酵素機能解析を進めたところ、C末端ドメインがC3-エピマー化反応に必須であること、N末端ドメインがC4-還元反応を触媒していることが示された。後者はNADPHの還元力を要するが、このNADPHはCapFに包摂されておらず1反応毎に1分子が消費されていた。等温滴定型熱量測定の結果はNADPHとCapFの親和性はNADPHが反応後にNADP+へと酸化されることにより40倍程度低下することを示しており、この親和性の変化によりNADPHの結合/放出、還元反応が加速しているものと考察される。このような活性制御機構の報告は今までになく、CapFに特有のメカニズムである可能性がある。

論文掲載ページへ

2012/05/11

シナプス小胞の開口・回収バランスを支えるPKG依存性逆行性メカニズムの生後発達

論文タイトル
Maturation of a PKG-Dependent Retrograde Mechanism for Exoendocytic Coupling of Synaptic Vesicles 
論文タイトル(訳)
シナプス小胞の開口・回収バランスを支えるPKG依存性逆行性メカニズムの生後発達
DOI
10.1016/j.neuron.2012.03.028
ジャーナル名
Neuron Cell Press
巻号
Volume 74, Issue 3, 517-529, 10 May 2012
著者名(敬称略)
江口工学、高橋智幸 他
所属
沖縄科学技術大学院大学 細胞分子シナプス機能ユニット
同志社大学大学院 脳科学研究科
JST-CREST

抄訳

神経細胞間のつなぎ目「シナプス」では電気信号が一旦、化学信号に変換されてから再び電気信号に変換され、これが神経回路を伝わることにより、脳が働くことになります。したがって脳の働きを持続させるためには、シナプスにおける信号変換プロセスが滞りなく作動することが必要です。そのための仕組みとして、化学信号を担う伝達物質を細胞内膜「小胞」に蓄えておき、電気信号によって伝達物質を開口放出させ、空になった小胞を回収・再利用する「小胞リサイクリング」が知られています。この仕組みを有効に作動させるために、小胞の開口数に応じて回収速度を調節するメカニズムがあると考えられていましたが、その実体は不明でした。今回、私たちは、伝達物質の放出量に応じてNOが産生され、これが酵素"PKG"を活性化して、小胞の回収を加速することを突き止めました。また、この仕組みは、生誕後、PKGの発現の上昇に伴って構築されることが分かりました。実際、PKGの活性阻害薬を神経細胞の軸索の先端に注入すると、シナプス伝達が脱落し、電気信号入力の出力変換率が著しく低下しました。今回明らかになったシナプス小胞開口・回収連関メカニズムは、脳神経疾患や向精神薬の標的となっている可能性があります。

論文掲載ページへ

2012/04/26

膵・胆道癌に対する膵切除後の肝動注化学療法の安全性についての検討

論文タイトル
Safety and Optimal Management of Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy After Pancreatectomy for Pancreatobiliary Cancer 
論文タイトル(訳)
膵・胆道癌に対する膵切除後の肝動注化学療法の安全性についての検討
DOI
10.2214/AJR.11.6751
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
April 2012 vol. 198 no. 4 923-930
著者名(敬称略)
西尾福英之、田中利洋、橋本彩、庄雅之、中島祥之、穴井洋、吉川公彦 他
所属
奈良県立医科大学 放射線医学教室

抄訳

膵・胆道癌に対する膵切除後の肝動注化学療法(HAIC)の安全性を検討した。対象は、51例(術式;PD(膵頭十二指腸切除術) 29、TP(膵全摘術) 2、DP(膵尾部切除術) 20)。肝動注の方法はリザーバーを経皮的に留置し、5-fluorouracilを毎週5時間かけて持続動注し、3投1休を1コースとして実施した。1コース毎にフローチェック(F/C)を行い、合併症の有無について評価した。留置は全例で成功。肝動脈閉塞を1例(2%)、無症候性の肝動脈狭窄を10例(19.6%)で認めた。狭窄例のうち3例(5.9%)で同時性に肝膿瘍(2例)、胆汁漏(1例)を認めた。いずれもPD後の症例でHAIC開始後3ヵ月以内に出現したが、保存的加療またはドレナージにより改善した。狭窄症例のうち4例は1ヵ月の休薬により治療を再開することができた。膵切除後のHAICは、F/Cを定期的に行うことで安全に施行可能であるが、PD後では合併症に留意する必要がある。

論文掲載ページへ