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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2011/04/27

結晶シリカやアルミニウム塩はNALP3インフラマソーム非依存性のメカニズムでマクロファージからのプロスタグランジン産生を制御する

論文タイトル
Silica Crystals and Aluminum Salts Regulate the Production of Prostaglandin in Macrophages via NALP3 Inflammasome-Independent Mechanisms
論文タイトル(訳)
結晶シリカやアルミニウム塩はNALP3インフラマソーム非依存性のメカニズムでマクロファージからのプロスタグランジン産生を制御する
DOI
10.1016/j.immuni.2011.03.019
ジャーナル名
Immunity Cell Press
巻号
April 2011 |Vol. 34 |Issue 4 |514-526
著者名(敬称略)
黒田 悦史、他
所属
産業医科大学 医学部免疫学寄生虫学講座

抄訳

結晶シリカやアルミニウム塩(アラム)などの粒子状物質の多くはアジュバント活性を有していることが知られており、特にIgE産生促進をはじめとするII型免疫反応を誘導する特徴がある。これらの粒子状物質は細胞内パターン認識レセプターの一つであるインフラマソームを活性化し、炎症性サイトカインを誘導することが知られている。我々はさらに脂質メディエータであるプロスタグランジンE2(PGE2)を介した免疫制御機構を見いだした。  シリカやアラムはマクロファージを刺激してインフラマソーム依存性にインターロイキン1を、インフラマソーム非依存性にPGE2産生を誘導した。PGE2のin vivoにおける役割を検討したところ、PGE2を産生しないPGE合成酵素欠損マウスでは野生型マウスに比べて粒子状物質により誘導される血清IgEの産生が有意に低下していた。粒子状物質によるPGE2産生の分子メカニズムについて解析したところ、p38 MAPキナーゼとspleen tyrosine kinase(Syk)の活性化が関与していることが明らかになった。  これらの結果は粒子状物質によって誘導される脂質メディエータがin vivoにおける免疫反応を制御するという新しいメカニズムを提唱するものである。

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2011/04/19

種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態

論文タイトル
Fluorescence kinetics in HeLa cells after treatment with cell cycle arrest inducers visualized with Fucci (fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator) 
論文タイトル(訳)
種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態
DOI
10.1042/CBI20100643
ジャーナル名
Cell Biology International 
巻号
April 2011 |Vol. 35 |No. 4 |359-363
著者名(敬称略)
戒田 篤志、三浦 雅彦
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔放射線腫瘍学分野

抄訳

Fucciは、理研の宮脇らによって開発された生細胞における細胞周期動態を可視化するシステムである。Fucciを導入した細胞は、正常な細胞周期回転中において、G0/G1期に赤色、S/G2/M期には緑色の蛍光を発する。このシステムは、抗癌剤による細胞動態解析等、癌治療分野への応用が期待されるが、その蛍光動態に関する基本的特性は不明である。そこで我々は、Fucci導入HeLa細胞を用いて、G2/Mアレストを誘導するX線照射や、S期初期でのアレストを誘導するハイドロキシウレア(HU)、そしてM期アレストを誘導するノコダゾールによる処理を施し、それぞれの処理後の蛍光動態を、蛍光顕微鏡での観察とフローサイトメトリーにより解析した。X線照射後またはHU投与後20hには、ほとんどの細胞が緑色蛍光を発し、DNA量によって評価した細胞周期動態と蛍光動態が一致していたが、ノコダゾール投与後では、M期に同調しているにもかかわらず、異常な赤色蛍光の誘導が認められた。このように処理によっては、細胞周期動態と一致しない予期せぬ蛍光動態をもたらす場合があり、Fucciを応用する上で注意が必要であることが分かった。ノコダゾールは微小管重合阻害剤であり、この処理によって赤色蛍光を制御するCdt1のSCFSkp2によるユビキチン化がM期で抑制される知見は興味深い。

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2011/02/04

ユビキチンリガーゼのRiplet分子はウイルス感染時の分子に依存した自然免疫応答に必須である

論文タイトル
The Ubiquitin Ligase Riplet Is Essential for RIG-I-Dependent Innate Immune Responses to RNA Virus Infection
論文タイトル(訳)
ユビキチンリガーゼのRiplet分子はウイルス感染時の分子に依存した自然免疫応答に必須である
DOI
10.1016/j.chom.2010.11.008
ジャーナル名
Cell Host & Microbe Cell Press
巻号
December 2010|Vol. 8 |Issue 6 |496-509
著者名(敬称略)
押海裕之
所属
北海道大学大学院医学研究科免疫学分野

抄訳

 新型インフルエンザやC型肝炎ウイルス等はヒトの細胞に感染すると、そのウイルスRNAが細胞質内にあるウイルス認識センサーのRIG-I分子によって認識される。RIG-IはウイルスRNAを認識すると強い抗ウイルス作用をもつI型インターフェロンの産生を誘導する。我々はこれまでに、RIG-Iと結合する分子として新規ユビキチンリガーゼのRiplet分子を単離し、RipletがRIG-IのC末端領域をユビキチン化することでRIG-Iを活性化することを発見した。今回、さらにこのRiplet遺伝子のノックアウトマウスを作成しRipletの生体内での役割の解明を試みた。
 Ripletノックアウトマウスより単離した胎児繊維芽細胞や骨髄由来の樹状細胞とマクロファージでは牛水泡性口内炎ウイルスやインフルエンザウイルス感染時のI型インターフェロン産生が消失していた。また、C型肝炎ウイルスのRNAに対する応答も消失し、Ripletが必須の役割をすることが明らかとなった。またウイルス感染時の生存率もRipletノックアウトマウスで大きく低下したことから、Ripletが、ウイルス認識センサーのRIG-Iの活性化に必須であることが示された。

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2010/11/10

超分子ナノキャリアによる見えるドラッグデリバリー:単一プラットフォームを用いた膵臓がんの診断と治療

論文タイトル
Visible Drug Delivery by Supramolecular Nanocarriers Directing to Single-Platformed Diagnosis and Therapy of Pancreatic Tumor Model
論文タイトル(訳)
超分子ナノキャリアによる見えるドラッグデリバリー:単一プラットフォームを用いた膵臓がんの診断と治療
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-10-0303
ジャーナル名
Cancer Research(AACR Comprehensive Cancer Collection) 
巻号
September 2010|Vol. 70 |Issue 18 |7031-7041
著者名(敬称略)
貝田 佐知子、西山伸宏、片岡 一則、他
所属
東京大学 医学系研究科附属疾患生命工学センター臨床医工学部門

抄訳

現在、がん化学療法では、薬剤のがん集積性を迅速に判別する手段は無く、また、治療効果が判明するまで長い期間が必要となり、その結果「手遅れ」となる場合も多く見受けられる。本研究では、我々が開発した高分子ミセル型DDSに、MRI造影剤(Gd-DTPA)を搭載することによって、がんへの集積から治療効果までをイメージングにより追跡することができる「見えるDDS」を開発した。Gd-DTPA搭載ミセルは、Gd-DTPA単体の24倍の水プロトン緩和時間短縮効果を有しており、MRI造影剤として高い性能を有することが明らかになった。また、難治性の膵臓がんに対して見えるDDSの効果を評価するために、マウス膵臓がんモデルを用いたMRイメージングとMRIによるDDSの治療効果の追跡を行った。その結果、高分子ミセルは、膵臓がんモデルに効果的に集積し、優れた薬理効果を示すことが、MRイメージングによって明らかになった。
 本システムを利用すれば、がん治療が薬物の患部への到達を確認しながら行うことができ、さらに治療効果をリアルタイムで追跡できるようになるものと考えられ、「手遅れのない」確実ながん治療の実現が期待される。

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2010/09/27

多能性幹細胞の異種間胚盤胞注入によりマウス内にラットの膵臓を作製

論文タイトル
Generation of Rat Pancreas in Mouse by Interspecific Blastocyst Injection of Pluripotent Stem Cells
論文タイトル(訳)
多能性幹細胞の異種間胚盤胞注入によりマウス内にラットの膵臓を作製
DOI
10.1016/j.cell.2010.07.039
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
September 2010|Vol. 142|Issue 5|787 - 799
著者名(敬称略)
小林 俊寛*1, *2、中内 啓光*1, *2
所属
*1 東京大学 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野
*2 JST ERATO 中内幹細胞制御プロジェクト

抄訳

多能性幹細胞からin vitroで臓器を作製することは再生医療における究極的な目標であるが、構成細胞の多様性や3次元的な立体構造を再現する必要があるため非常に困難であるとされている。 そこで我々は膵臓欠損を示すPdx1ノックアウト(KO)マウスの胚盤胞にマウス多能性幹細胞を注入することで、発生段階における膵臓の空きを補完し、完全に多能性幹細胞由来の細胞から構成される膵臓をマウス生体内に作製することに成功した。 またこの“胚盤胞補完法”の原理が異種間でも成立するためには多能性幹細胞が異種の胚発生に寄与できなくてはならない。そこでマウスおよびラットの多能性幹細胞をお互いの胚盤胞に注入し、マウス-ラット異種間キメラの作製を試みた。 その結果、異種間キメラはどちらの方法でも成立し、全身に多能性幹細胞由来の細胞が存在していた。さらに以上の知見を組み合わせ、Pdx1 KOマウスの胚盤胞にラット多能性幹細胞を注入すると、機能的なラットの膵臓がマウス体内に作製できた。 これらの結果は異種生体内の環境を利用して多能性幹細胞由来の臓器を作製することが可能であることを示すものである。

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2010/07/22

アデノウイルスベクターを用いた副甲状腺細胞への遺伝子導入法の開発

論文タイトル
Development of a Technique for Introduction of an Expressed Complementary Deoxyribonucleic Acid into Parathyroid Cells by Direct Injection
論文タイトル(訳)
アデノウイルスベクターを用いた副甲状腺細胞への遺伝子導入法の開発
DOI
10.1210/en.2010-0012
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
August 2010|Vol. 151|No. 8|4031 - 4038
著者名(敬称略)
椎崎 和弘、他
所属
自治医科大学 内科学講座 腎臓内科学教室

抄訳

副甲状腺は非常に小さい臓器であり、またin vitro実験に適したcell lineが存在しないことなどにより、基礎的研究が難しく副甲状腺細胞の生理学的特徴や病理学的変化の解明が十分でない。 アデノウイルスベクターと副甲状腺内に薬剤などを直接注入する技術を用いて、副甲状腺細胞特異的な標的遺伝子の発現および機能の調節を試みた。本研究では副甲状腺細胞での発現部位や機能がよく知られているカルシウム感知受容体レセプター(CaSR) を標的遺伝子として用いた。腎機能低下により過形成とCaSR発現および機能の低下を誘発したラットの副甲状腺に確実に感染するアデノウイルス量および感染したアデノウイルスの経時的変化を確認し、CaSR cDNAを導入したアデノウイルスを直接注入した 副甲状腺細胞のCaSRの発現や、カルシウムに対する反応を検討した。免疫組織学的CaSR発現は著明に増加し、これはアデノウイルス感染部位と一致した。カルシウム−副甲状腺ホルモン反応曲線は左に変移し、カルシウムに対する副甲状腺細胞の感受性(CaSR機能) の改善が確認された。副甲状腺細胞特異的な標的遺伝子の発現や機能の調節法の確立により、副甲状腺細胞に関する基礎的研究の進歩と難治性副甲状腺疾患に対する遺伝子治療への進展の可能性が示唆された。

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2010/06/21

肺サルコイドーシスにおける血清マーカーの比較検討

論文タイトル
Comparative Evaluation of Serum Markers in Pulmonary Sarcoidosis
論文タイトル(訳)
肺サルコイドーシスにおける血清マーカーの比較検討
DOI
10.1378/chest.09-1975
ジャーナル名
CHEST 
巻号
June 2010|Vol. 137|No. 6|1391-1397
著者名(敬称略)
三好 誠吾、濱田 泰伸、他
所属
愛媛大学大学院 病態情報内科学

抄訳

背景:いくつかの血清マーカーが肺サルコイドーシスの胞隔炎や疾患の進行を反映することが報告されているが、それらを比較検討した報告はない。 目的と方法:43例の肺サルコイドーシス患者を対象として、血清マーカーが胞隔炎を反映するか、診断時の血清マーカーが2年後の肺野陰影の増加の予測因子となるかについて検討した。血清マーカーは血清アミロイド蛋白A、可溶性interleukin-2受容体(sIL-2R)、リゾチーム、アンジオテンシン変換酵素およびKL-6を用いた。解析には気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞分画や胸部単純X線写真などを用いた。 結果:肺野に陰影を有する患者では、有さない患者と比較して血中のsIL-2R、リゾチーム、KL-6、BALF中の総細胞数、リンパ球数が有意に高値を示した。さらに、血中sIL-2R、リゾチーム、KL-6は BALF中の総細胞数、リンパ球数、CD4リンパ球数と正の相関を示した。肺野陰影の増加の予測因子に関する検討においては、単変量解析では診断時の血中sIL-2R、リゾチーム、KL-6およびBALF中リンパ球数が陰影の増加と関連していたが、多変量解析では診断時のKL-6のみが陰影の増加と関連していた。 結語:血中sIL-2R、リゾチーム、KL-6は肺サルコイドーシスの胞隔炎を反映することが示唆された。診断時のKL-6は肺サルコイドーシスの肺野陰影の増加の予測因子となることが示唆された。

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2010/05/06

大脳皮質神経細胞局在化におけるセプチン(Sept14とSept4)の重要性

論文タイトル
Septin 14 Is Involved in Cortical Neuronal Migration via Interaction with Septin 4
論文タイトル(訳)
大脳皮質神経細胞局在化におけるセプチン(Sept14とSept4)の重要性
DOI
10.1091/mbc.E09-10-0869
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
April 2010|Vol. 21|Issue 8|1324-1334
著者名(敬称略)
篠田 友靖、永田 浩一、他
所属
愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所・神経制御学部

抄訳

Septinは、酵母から哺乳類まで保存された細胞骨格関連のGTP/GDP結合蛋白質である。哺乳類には14種類のホモログ(Sept1~Sept14)が存在し、分子ファミリーを形成する。著者らは、大脳皮質形成におけるSept14の機能を検証するため、子宮内胎仔脳遺伝子導入法を用いて、胎生期マウスの脳室帯細胞でSept14の発現を抑制した。その結果、Sept14発現抑制細胞は局在異常(細胞移動の異常)を示した。ついで、この現象の分子基盤を解明する目的で相互作用分子の探索を行い、Sept4を同定した。免疫沈降実験の結果、Sept14とSept4が相互作用すること、およびSept14のC末側に存在するcoiled-coil領域がSept4との相互作用に必要であった。さらに、Sept4の発現抑制やSept14とSep4の結合阻害も、大脳皮質神経細胞の局在異常を生じた。一方、神経細胞の形態に着目したところ、Sept14およびSept4の発現抑制細胞では先導突起の長さが短縮していた。Sept14やSept4の発現抑制により、海馬培養神経細胞でも軸索および樹状突起の伸張が抑制された。これらの結果から、Sept14およびSept4は神経細胞の形態制御に関与し、それによって神経細胞の移動・局在に機能的に関与することが示唆された。

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2010/04/08

3T領域別灌流画像を用いた富血管性脳実質外腫瘍の血管供給の評価

論文タイトル
Assessment of Vascular Supply of Hypervascular Extra-Axial Brain Tumors with 3T MR Regional Perfusion Imaging
論文タイトル(訳)
3T領域別灌流画像を用いた富血管性脳実質外腫瘍の血管供給の評価
DOI
10.3174/ajnr.A1847
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 31, No. 3 (554-558)
著者名(敬称略)
笹尾 明、平井 俊範 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部 放射線診断学分野

抄訳

目的:外頸動脈から栄養される脳実質外腫瘍の血管供給は領域別灌流画像で検討されていない。本研究の目的は領域別灌流画像にて富血管性脳実質外腫瘍の血管供給の評価ができるかどうか、また、情報が得られるかどうかを明らかにすることである。 方法:対象は連続する8例の髄膜腫症例において3T MRIで通常のASLと領域別灌流画像を施行した。MRAの結果に基づき、外頸動脈に選択的ラベリングスラブを置いて領域別灌流画像を施行した。5例は外科手術前にDSAを行った。2名の神経放射線科医が独立して、画質、腫瘍灌流の程度、腫瘍血管領域の範囲を通常のASLと領域別灌流画像で評価した。 結果:通常のASLと領域別灌流画像の画質において読影に影響するものはなかった。通常のASLと領域別灌流画像によって同定された腫瘍血管領域の範囲の比較において、3例で一致、4例で部分的に異なり、1例で完全に不一致であった。観察者間の一致率は大変良好であった(κ=0.82)。DSAを施行した5例において、主要な血管供給が外頸動脈であった4例は一致もしくは部分的に不一致として評価された。血管供給が内頸動脈のみであった1例は完全に不一致と評価された。 結語:外頸動脈の選択的ラベリングによる領域別灌流画像は施行可能であり、富血管性脳実質外腫瘍の血管供給についての情報を提供する。

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2010/02/24

新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNJ15の同定 ―肥満のない2型糖尿病で関連―

論文タイトル
Identification of KCNJ15 as a Susceptibility Gene in Asian Patients with Type 2 Diabetes Mellitus
論文タイトル(訳)
新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNJ15の同定 ―肥満のない2型糖尿病で関連―
DOI
10.1016/j.ajhg.2009.12.009
ジャーナル名
American Journal of Human Genetics Cell Press
巻号
2010|Vol. 86|Issue 1|54-64
著者名(敬称略)
岡本好司※1、岩直子※2、他
所属
※1 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 先端腎疾患病態研究グループ
※2 東京女子医科大学大学院 医学研究科 第三内科学(糖尿病センター)

抄訳

アジア人に多い肥満を伴わない2型糖尿病の遺伝素因を解明するために、ゲノム全域を探索し、新規の糖尿病感受性遺伝子としてKCNJ15遺伝子を同定した。本遺伝子エクソン4に位置するSNP(rs3746876, C566T)のリスクアレルTを有する集団では2型糖尿病発症リスクが1.76倍となり、さらに肥満のない患者に限ると1.93~2.54倍に増加した。従来の報告においては2型糖尿病感受性SNPのリスクは2未満であることから、本遺伝子の発症リスクは大きいと考えられる。
 我々は罹患同胞対解析の結果から得られた染色体21番領域上の遺伝子を検討し、最終的に1568人の2型糖尿病患者と1700人の健常対照者を用いた解析によりKCNJ15遺伝子をつきとめた。また、デンマークとの共同研究の結果、本遺伝子の2型糖尿病との関連が極めて小さいことを見出し、遺伝背景における人種差を明らかにした。
 KCNJ15遺伝子は膵臓のインスリン分泌細胞で発現するチャネルをコードしており、培養インスリン分泌細胞に過剰発現させるとインスリン分泌が減少することも明らかにした。リスク型をもつ人では遺伝子のmRNAおよび蛋白の発現レベルが高く、本遺伝子は発症促進遺伝子と考えられる。今後、新しい糖尿病発症機構の解明とともに、新たな治療法や予防法の開発につながると期待される。

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