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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2020/07/22

SARS-CoV-2とインフルエンザA型ウィルスの重複感染

論文タイトル
Coinfection with SARS-CoV-2 and influenza A virus
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2とインフルエンザA型ウィルスの重複感染
DOI
10.1136/bcr-2020-236812
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 13, Issue 7
著者名(敬称略)
近藤 友喜 , 宮崎 晋一 他
所属
市立四日市病院 呼吸器内科

抄訳

 症例は57歳、日本人男性で、インフルエンザ罹患後の遷延する発熱にて当科入院となった。入院6日前、発熱、乾性咳嗽にて近医受診し、インフルエンザ迅速検査キットはA型が陽性であった。 抗インフルエンザ薬投与にも関わらず自覚症状の改善に乏しく、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査が陽性であったため入院対応となった。既往歴には異形狭心症、糖尿病があり、海外渡航歴、 濃厚接触歴はなかった。入院時、発熱、呼吸苦、味覚・嗅覚障害を認め、酸素飽和度は91%(室内気であった。採血上、白血球増多はなく、肝機能障害、CRP・フェリチン高値を認め、プロカルシトニン は陰性であった。胸部CTでは両肺野胸膜直下にスリガラス影を認め、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に矛盾しなかった。シクレソニド、ファビピラビルなどを投与し、自覚症状は軽快し、 入院1か月後、外来管理となった。
 SARS-CoV-2はインフルエンザウィルスと重複感染することは稀であり、単独感染と比較して、その臨床的特徴に差異は認められない。SARS-CoV-2の流行期では、他の病原体が検出されても、COVID-19の 可能性を常に考慮する必要がある。

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2020/07/09

転写因子NRF3はがん抑制因子をユビキチン非依存的に分解することでがん増悪を促進する

論文タイトル
NRF3-POMP-20S Proteasome Assembly Axis Promotes Cancer Development via Ubiquitin-Independent Proteolysis of p53 and Retinoblastoma Protein
論文タイトル(訳)
転写因子NRF3はがん抑制因子をユビキチン非依存的に分解することでがん増悪を促進する
DOI
10.1128/MCB.00597-19
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 40, Issue 10
著者名(敬称略)
和久 剛、小林 聡 他
所属
同志社大学大学院生命医科学研究科 遺伝情報研究室

抄訳

がん抑制因子の働きが失われる場合の多くはDNAに傷が入る遺伝子変異に起因すると考えられてきたが、近年ではがん抑制因子が遺伝子変異していない癌患者も数多く報告されてきている。しかし、そのような遺伝子変異を伴わないがん増悪メカニズムには不明な点が多く残されていた。本研究では、がん抑制因子の働きを阻害する新たながん遺伝子として転写因子NRF3(NFE2L3)を発見した。NRF3は大腸癌をはじめとする様々なヒト腫瘍組織で発現が上昇していた。またNRF3過剰発現によって腫瘍が大きくなり転移しやすくなることをマウス解析によって確認した。興味深いことに、NRF3はタンパク質分解酵素であるプロテアソームの活性を上昇させ、p53やRetinoblastomaなどのがん抑制因子のタンパク質をユビキチン非依存的に分解することを見出した。このように本研究では、NRF3は遺伝子変異ではなく、タンパク質分解活性を異常に高めることでがん抑制因子の機能を阻害することを明らかにした。

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2020/07/09

転写因子NFE2L1とNFE2L3は翻訳制御を介して癌細胞のプロテアソーム活性を補完的に維持する

論文タイトル
NFE2L1 and NFE2L3 Complementarily Maintain Basal Proteasome Activity in Cancer Cells through CPEB3-Mediated Translational Repression
論文タイトル(訳)
転写因子NFE2L1とNFE2L3は翻訳制御を介して癌細胞のプロテアソーム活性を補完的に維持する
DOI
10.1128/MCB.00010-20
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology  Volume 40, Issue 14
著者名(敬称略)
和久 剛、小林 聡 他
所属
同志社大学大学院生命医科学研究科 遺伝情報研究室

抄訳

タンパク質分解酵素であるプロテアソームは、正常な細胞だけでなく癌細胞の生存や増殖にも必須である。我々はこれまでに、NFE2L1(NRF1)がプロテアソーム構成遺伝子を発現誘導する転写因子であることを報告してきた、また最近になり、そのホモログであるNFE2L3(NRF3)が腫瘍増大や転移促進に寄与することを発見し、NFE2L1とNFE2L3がプロテアソーム制御を介してがん増悪に関与する可能性を見出しつつあったが、その詳細は不明なままだった。本研究では、NFE2L3が翻訳調節因子CPEB3を直接転写することでNFE2L1の翻訳を制御し、癌細胞のプロテアソーム構成遺伝子の発現を補完的に維持していることを明らかにした。またNFE2L3-CPEB3-NFE2L1軸の異常が、プロテアソーム阻害作用を有する抗がん剤ボルテゾミブへの薬剤抵抗性や大腸癌患者の予後不良にも影響を及ぼすことを確認した。以上の本研究成果は、NFE2L3を標的とした新たな抗がん剤開発につながると期待できる。

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2020/07/09

芳香族化合物生産菌の育種に利用可能なプラスミド非依存型のフェニルアラニンおよびチロシン高生産大腸菌を作製するための染色体工学的手法

論文タイトル
Chromosome Engineering To Generate Plasmid-Free Phenylalanine- and Tyrosine-Overproducing Escherichia coli Strains That Can Be Applied in the Generation of Aromatic-Compound-Producing Bacteria
論文タイトル(訳)
芳香族化合物生産菌の育種に利用可能なプラスミド非依存型のフェニルアラニンおよびチロシン高生産大腸菌を作製するための染色体工学的手法
DOI
10.1128/AEM.00525-20
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 86, Issue 14
著者名(敬称略)
駒 大輔 他
所属
地方独立行政法人大阪産業技術研究所 環境技術研究部

抄訳

 フェニルアラニンおよびチロシン生産菌の開発では、合成経路の遺伝子発現にプラスミドが用いられるのが一般的である。一方、プラスミド非依存型の生産菌は培養コストと安全性の点で優れているが、目的物の収量や収率が低い。そこで本研究では、大腸菌の染色体DNAを改変し、プラスミド非依存型にもかかわらず優れた収量や収率を示す生産菌の作製を試みた。
 中央代謝経路とシキミ酸経路の10種類の遺伝子(aroAaroBaroCaroDaroEaroGfbraroLpheAfbrppsA、およびtktA)をT7lacプロモーターに連結して大腸菌の染色体へ導入したところ、当該菌株は非常に高い収量と収率でフェニルアラニンを生産した。導入したPheAfbr遺伝子をtyrAfbr遺伝子に変更することで、優れたチロシン生産菌を作製することにも成功した。さらに導入した10種類の遺伝子のうち、aroDaroE、およびaroLを除いた7種類が優れた菌株を作製するために必要な最小遺伝子セットであることを明らかにした。育種した生産菌は、チロソールやフェニル乳酸などを高生産するための有用な宿主として利用できることを実証した。

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2020/07/08

ラットにおけるStreptococcus mutans誘発性重度う蝕が及ぼす感染性心内膜炎に対する病原性の検討

論文タイトル
Contribution of Severe Dental Caries Induced by Streptococcus mutans to the Pathogenicity of Infective Endocarditis
論文タイトル(訳)
ラットにおけるStreptococcus mutans誘発性重度う蝕が及ぼす感染性心内膜炎に対する病原性の検討
DOI
10.1128/IAI.00897-19
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 88, Issue 7
著者名(敬称略)
野村 良太、又吉 紗綾、仲野 和彦 他
所属
大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)

抄訳

 う蝕の主要な病原細菌であるStreptococcus mutansは、感染性心内膜炎(Infective endocarditis; IE)の起炎菌でもある。心疾患患者では心内膜や弁膜に内皮傷害を生じやすく、侵襲的な歯科処置で生じる菌血症によって、IE発症リスクが高まることが知られている。S. mutansの菌体表層には、コラーゲン結合タンパク(Collagen-binding protein; CBP)を発現している株が存在し、内皮傷害部位に付着しやすいことからIEに対する病原性への関与が取りざたされている。本研究では、重度う蝕病変部に存在するCBP 陽性S. mutansが、歯冠の崩壊により露出した毛細血管を介して傷害を受けた心臓弁に到達し、IEを発症する可能性について検討した。
  18日齢のラットの口腔内にCBP陽性S. mutansを5日間連続して投与するとともに、スクロース56%配合う蝕誘発性飼料を常時与えることによりう蝕を誘発させた。その後、90日齢になったラットの右頸動脈より全身麻酔下にてカテーテルを挿入して大動脈弁に傷害を与えた。これらのラットでは長期的な飼育を行うほどう蝕が重症化し、心臓検体からS. mutansが分離される割合が増加した。特に、う蝕の進行により約半数の歯の歯冠が崩壊した場合に、心臓弁からS. mutansが分離されるリスクが有意に増加することが明らかになった。本研究結果から、心疾患患者において重度のう蝕病変を放置することは、IEの発症リスクを高めることが示唆された。

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2020/07/07

AMPKはSRSF1のリン酸化を介して選択的スプライシングを制御する

論文タイトル
AMP-activated protein kinase regulates alternative pre-mRNA splicing by phosphorylation of SRSF1
論文タイトル(訳)
AMPKはSRSF1のリン酸化を介して選択的スプライシングを制御する
DOI
10.1042/BCJ20190894
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Biochemical Journal Vol.477 No.12 (2237–2248)
著者名(敬称略)
松本 英里, 鈴木 司 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科

抄訳

 AMP-activated protein kinase (AMPK)は、細胞内のエネルギー恒常性に関与するセリン・スレオニンキナーゼである。近年、AMPKの活性化剤であるメトホルミンは選択的スプライシングに影響を与えることが報告されているものの、AMPKがどの基質を介して選択的スプライシングを制御するかに関しては不明であった。
 本論文では、AMPKの新たな基質としてスプライシング因子であるserine/arginine-rich splicing factor 1 (SRSF1)を同定した。AMPKはSRSF1のRNA認識モチーフ領域内に存在するSer133を直接リン酸化し、これによりRNA認識モチーフを介したSRSF1とRNAとの結合が抑制された。また、マクロファージ刺激タンパク質受容体をコードするRon遺伝子はSRSF1依存的に選択的スプライシング制御を受けるが、実際に、AMPKの活性状態の変化によってSRSF1を介したRon遺伝子のスプライシングパターンの変化も確認できた。
 これらの結果から、AMPKはSRSF1をリン酸化することでRNAとの結合を阻害し、選択的スプライシングを制御することが明らかとなった。

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2020/07/06

膵神経内分泌腫瘍において、オートファジー阻害剤クロロキンは小胞体ストレスを介してアポトーシスを誘導する

論文タイトル
Chloroquine induces apoptosis in pancreatic neuroendocrine neoplasms via endoplasmic reticulum stress
論文タイトル(訳)
膵神経内分泌腫瘍において、オートファジー阻害剤クロロキンは小胞体ストレスを介してアポトーシスを誘導する
DOI
10.1530/ERC-20-0028
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer Vol.27 No.7 (431–439)
著者名(敬称略)
仲野 健三, 増井 俊彦 他
所属
京都大学肝胆膵・移植外科/小児外科

抄訳

オートファジー阻害剤のクロロキン(CQ)が神経内分泌細胞株の増殖を抑制する報告はあるが、そのメカニズムと高分化膵神経内分泌腫瘍に対する効果は明らかとなっていない。本研究では低分化、高分化膵神経内分泌腫瘍(PanNEN)におけるCQの増殖抑制メカニズムを検討した。PanNEN細胞株のMIN6, QGP-1にCQを投与するとアポトーシスが誘導された。電子顕微鏡画像で小胞体の拡張を認め、小胞体ストレス応答の主要経路であるPERK-eIF2α-ATF4経路のATF4、その下流のCHOPの発現亢進を認め、この経路を介したアポトーシスが示唆された。MIN6, QGP-1は遺伝子変異を伴う低分化神経内分泌癌株であることから、高分化PanNENにおける効果を検討するため、Men1+/ΔN3-8マウスにCQの誘導体であるヒドロキシクロロキン(HCQ)を投与したところ、腫瘍の縮小効果を認めた。HCQ投与群の腫瘍部ではCHOP陽性細胞が大部分を占め、アポトーシスが誘導されていた。これらの結果から、CQ/HCQは低分化および高分化のPanNENいずれにおいて小胞体ストレスを介したアポトーシスを誘導し、有効な治療法となる可能性が示唆された。

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2020/06/29

組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。

論文タイトル
Measurement of the AST to LD Ratio in Parathyroid Tissue Suspension Can Precisely Differentiate a
Hyperfunctioning Parathyroid
論文タイトル(訳)
組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。
(英文タイトルではLDHをLDと表記してある。)
DOI
10.1210/clinem/dgaa264
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.105 No.8 (dgaa264)
著者名(敬称略)
菊森 豊根 他
所属
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科

抄訳

原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療の際に、責任病変の摘出の確認は主に凍結切片の術中迅速病理検査により行われている。しかし、病理医不足は発展途上国で深刻であり、責任病変摘出の確認が容易に行えない。我々のグループは最近、正常副甲状腺の可能性がある組織の懸濁液中のAST/LDH(ともに一般生化学的検査項目であり、日常的に測定されている。)比が0.27より高い場合、その組織が副甲状腺であることを明らかにした(Kikumori et al. Surgery, 2020, p385-9)。
今回の研究では、副甲状腺機能亢進症を来す副甲状腺過形成や腺腫組織が懸濁液中のAST/LDH比により、副甲状腺組織と判別可能かを検討した。22名の原発性副甲状腺機能亢進症の症例で得られた副甲状腺過形成または腺腫を対象とした。他の組織のデータは以前の我々の報告を用いた(上記引用文献)。
この検討により、機能亢進状態の副甲状腺は懸濁液中のAST/LDH比が0.36より高い場合、100%の精度で他の組織と判別できることが示された。
この研究により、組織懸濁液中のAST/LDH比が迅速病理検査の代替として原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科治療の際の新たな責任病変確認手段となりうることが示された。

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2020/06/24

2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析

論文タイトル
Characterization of tick-borne encephalitis virus isolated from a tick in central Hokkaido in 2017
論文タイトル(訳)
2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析
DOI
10.1099/jgv.0.001400
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology Volume 101, Issue 5
著者名(敬称略)
髙橋 侑嗣、好井 健太朗 他
所属
長崎大学 感染症共同研究拠点 研究部門

抄訳

 ダニ媒介性脳炎はユーラシア大陸の広域で発生しているダニ媒介性の重要な人獣共通感染症です。日本では北海道において重症脳炎患者が発生し、疫学調査によって北海道を含む日本の各地で原因となるダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)が分布している可能性が示唆されていますが、北海道南部の一部地域以外からはウイルスは分離されていませんでした。
 今回、我々は札幌市付近の道央地域でマダニの捕集を行い、マダニからのTBEV分離を試みた所、札幌市内で捕集されたマダニからTBEVが分離されました。分離されたウイルス株の解析を行った所、以前に北海道南部で分離されたウイルス株とは異なる遺伝子グループに属する事が分かり、国内に複数回ウイルスが侵入している可能性が示されました。また病原性について解析した所、ウイルスの非構造蛋白領域の遺伝子の相違によって、脳内での病原性が影響を受ける事が明らかになりました。
 今回の研究成果は日本におけるTBEVの疫学的危険度を評価する上での重要な知見となるとともに、ウイルスの性状解析による予防・治療法開発の進展へとつながるものと考えられます。

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2020/06/22

ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす

論文タイトル
A Peptidoglycan Amidase Activator Impacts Salmonella enterica Serovar Typhimurium Gut Infection
論文タイトル(訳)
ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす
DOI
10.1128/IAI.00187-20
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 88, Issue 6
著者名(敬称略)
中村 奈央、三木 剛志 他
所属
北里大学薬学部 微生物学教室

抄訳

 サルモネラ属のネズミチフス菌は感染性胃腸炎の原因菌である。本菌は腸管内に定着することにより、感染を成立させるが、その定着メカニズムの全貌は明らかになっていない。これまでに、私たちはネズミチフス菌のペプチドグリカン(PG)アミダーゼに依存した細胞分裂が腸管内定着に寄与することを明らかにした。PGアミダーゼは特異的な活性化因子により制御されていることから、本研究では、ネズミチフス菌が保持するPGアミダーゼの活性化因子であるNlpDおよびEnvCがサルモネラの腸感染にどのような影響を及ぼすか否かを明らかにした。
 マウスを用いた感染実験より、EnvCを発現しないネズミチフス菌株(envC変異株)では野生株と比較して、腸管内定着レベルが減弱した。また、誘導される腸炎レベルも減弱していた。PGアミダーゼを発現しないネズミチフス菌株における腸管内定着レベルの減弱は、胆汁酸に対する抵抗能の減弱が原因であったが、驚いたことに、envC変異株では走化性運動の減弱が主な要因であった。
 本研究により、ネズミチフス菌の腸感染におけるPGアミダーゼ活性化因子の新たな役割が明らかになり、EnvCは本菌の腸感染を制御するためのターゲットとなる可能性が示唆された。

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