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国内研究者論文紹介

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2020/03/26

妊娠ウシにおける子宮内エクソソームのIFNT非依存的な効果

論文タイトル
IFNT-independent effects of intrauterine extracellular vesicles (EVs) in cattle
論文タイトル(訳)
妊娠ウシにおける子宮内エクソソームのIFNT非依存的な効果
DOI
10.1530/REP-19-0314
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Vol.159 No.5 (503-511)
著者名(敬称略)
中村 圭吾, 草間 和哉 他
所属
東京薬科大学  薬学部 薬理学教室

抄訳

子宮内に存在するエクソソームを始めとした細胞外小胞(EVs)は胚着床期の胞胚と子宮内膜の相互作用に関与している。しかしながら、これらEVsは、ウシの妊娠認識物質であるIFNTを含むため、それにより効果がマスクされ、その詳細な作用が不明である。本研究では、胚由来EVsの子宮内膜へのIFNT非依存的な効果を調べるため、非妊娠または妊娠子宮内EVs、さらにIFNTを初代培養ウシ子宮内膜細胞に処置し、それぞれの遺伝子発現をRNA-seqにより網羅的に調べた。3群の比較により、IFNT非依存的に変化する82の遺伝子を同定し、その多くがTNF関連因子であった。さらに、妊娠子宮内EVsにはTNFファミリーであるCD40Lが多く存在しており、これが子宮内膜のCD40と結合することでNF-kBシグナリングを活性化させることを示した。これらの結果から、ウシ妊娠着床期における胚由来EVsは、子宮内膜に作用し、IFNT非依存的に炎症反応を起こすことで、子宮内膜の受容能の調節と、胚着床を誘導することが示唆された。

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2020/03/25

門脈塞栓術後の予定残肝肥大率に関する画像予測因子の評価

論文タイトル
Portal Vein Embolization: Radiological Findings Predicting Future Liver Remnant Hypertrophy
論文タイトル(訳)
門脈塞栓術後の予定残肝肥大率に関する画像予測因子の評価
DOI
10.2214/AJR.19.21440
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
Vol.214 Number. 3 687-693
著者名(敬称略)
光野 重芝, 磯田 裕義 他
所属
京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座(画像診断学・核医学)

抄訳

門脈塞栓術後の予定残肝肥大率に関して、様々な予測因子が報告されているが、これまでに塞栓術前のCT画像からの予測因子は報告されていない。本研究の目的は、肝右葉切除前に施行される門脈塞栓術の術前CTから得られる画像所見のうち、塞栓術後の予定残肝肥大率に関連しうる因子を評価することであった。対象は門脈右枝塞栓術をうけた79人の患者で、塞栓術前のCT画像から得られる因子として、塞栓手技を困難にする所見(肝右葉における前区域の容積率、門脈前区域枝・後区域枝の近位分枝数、主門脈の分岐破格)と、門脈血流低下を示唆する所見(腫瘍による門脈浸潤、肝実質の早期濃染像)を選択した。潜在的交絡因子としては、年齢、塞栓術前の予定残肝容積率、indocyanine green clearance rate、塞栓術前の最大血清ビリルビン値、化学療法歴を選択し、これら10つの因子と門脈塞栓術後の予定残肝肥大率との相関を評価した。結果は、門脈前区域枝・後区域枝の近位分枝数、主門脈の分岐破格、腫瘍による門脈浸潤、肝実質の早期濃染像の4つの画像因子と予定残肝肥大率の間に有意な相関がみられ、門脈塞栓術の適応決定への有用性が示唆された。

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2020/03/23

アルドステロン濃度とカリウム所見に基づくPA診断手順の簡素化

論文タイトル
Role of Aldosterone and Potassium Levels in Sparing Confirmatory Tests in Primary Aldosteronism
論文タイトル(訳)
アルドステロン濃度とカリウム所見に基づくPA診断手順の簡素化
DOI
10.1210/clinem/dgz148
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.105 No.4 (dgz148)
著者名(敬称略)
馬越 洋宜, 坂本 竜一 他
所属
九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学講座 (第三内科)

抄訳

【背景】原発性アルドステロン症(PA)は、スクリーニング陽性例に対して機能確認検査を施行し、確定診断に至る。近年のガイドラインでは、血漿アルドステロン濃度(PAC)やカリウム所見に応じて機能確認検査が省略可能とされるが、ガイドライン毎に省略可能条件が異なり、根拠となるエビデンスも乏しい。
【目的】PACとカリウム所見に基づき機能確認検査が省略可能となる条件を明らかにする。
【方法】2007年1月から2019年4月に当院でアルドステロン・レニン比>200かつ血漿レニン活性<1 ng/ml/hでカプトプリル試験(CCT)を施行した327例を対象とした。PAの診断はCCT結果に基づいて行い、PAC基礎値と低カリウム血症の有無からPA・非PAを分類した。
【結果】327例中252例がPAと診断された。PAC>30ng/dLを示した61例は全例がPAと診断された。20≦PAC≦30 ng/dLでは低カリウム血症を有する例は全例PA (26/26)と診断されたが、有さない例には非PA (11/29)が含まれていた。PAC<20ng/dLではカリウム所見に関わらず非PAが含まれていた。
【結語】PAC>300 pg/ml、または200≦PAC≦300 pg/mlかつ低カリウム血症を有する例では機能確認検査を省略できることが示唆された。

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2020/03/19

FDG-PET/CTの定量指標を用いた血管肉腫患者の予後予測

論文タイトル
Prognostic Value of Quantitative Parameters of 18F-FDG PET/CT for Patients With Angiosarcoma
論文タイトル(訳)
FDG-PET/CTの定量指標を用いた血管肉腫患者の予後予測
DOI
10.2214/AJR.19.21635
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
Vol.214 Number.3 649-657
著者名(敬称略)
加藤 彩子 中本 裕士 他
所属
京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座(画像診断学・核医学)

抄訳

血管肉腫の組織学的グレード分類および全生存率におけるFDG-PET/CT上の定量指標を評価することを目的とした。組織学的に血管肉腫と診断され、治療前にFDG-PET/CT検査を受けた16人の患者を解析した。原発巣における1ピクセルあたりの最大SUV(pSUVmax)、一定のSUV以上を示す全病変の腫瘍容積、全病変における腫瘍内のSUVの総和、pSUVmaxと血液のSUVの比(TBR)、全病変における腫瘍血液比の総和、の5つの定量指標を算出した。腫瘍は病理所見に基づき、high gradeとlow gradeに分け、各定量指標との関連を調査した。またこれらの定量指標と臨床病理要因に対して、全生存率の予後予測能をCox比例ハザードモデルにて解析した。組織学的検討によりhigh gradeは10例、low gradeは6例であった。定量指標の中でpSUVmaxとTBRの2つがhigh grade腫瘍で有意に大きかった。追跡期間中10人の患者が死亡し、いずれの定量指標も大きい患者で有意に予後不良であった。初診時の単発病変および根治手術が行われたかは予後良好を示す強い要因であったが、組織学的グレードは有意な予後予測因子ではなかった。結論として、血管肉腫はhigh grade腫瘍でFDG-PET/CT上のpSUVmaxおよびTBRが有意に高く、5つの定量指標はいずれも全生存率に対する有意な予後予測因子であった。

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2020/03/16

GIP分泌の欠損が、加齢性肥満やインスリン抵抗性を軽減する

論文タイトル
Absence of GIP secretion alleviates age-related obesity and insulin resistance
論文タイトル(訳)
GIP分泌の欠損が、加齢性肥満やインスリン抵抗性を軽減する
DOI
10.1530/JOE-19-0477
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Vol.245 No.1 (13-20)
著者名(敬称略)
金丸 良徳, 原田 範雄, 稲垣 暢也 他
所属
京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学

抄訳

glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は、栄養素の摂取によって腸管内分泌K細胞から分泌されるインクレチンである。栄養素の中で脂質はGIP分泌を強く刺激し、GIP分泌の亢進は高脂肪食摂取下の肥満やインスリン抵抗性の形成に関与する。加齢においてもGIP分泌の亢進が認められるが、GIP分泌の亢進が体重増加やインスリン感受性への影響については不明である。本研究では、野生型マウスに比較してGIP分泌が欠損および半減しているGIPホモ欠損 (GIP-/-) 、 ヘテロ欠損 (GIP+/-) マウスを用いて、加齢に伴う体重増加やインスリン抵抗性形成へのGIPの影響について検討した。総エネルギーの12%に相当する脂肪を含有する通常食摂取下では、野生型 (WT)マウスに比較してGIP-/-マウスは38週齢以降に有意な体重の低下を認めた。一方で、WTマウスとGIP+/-マウスの体重に有意な差を認めなかった。GIP-/-マウスの内臓脂肪と皮下脂肪量は、WTおよびGIP+/-マウスに比較して有意に減少した。経口ブドウ糖負荷試験時の血糖値は、3群間で有意な差を認めなかった。しかしインスリン値は、WTおよびGIP+/-マウスに比較してGIP-/-マウスで有意な低下を認めた。インスリン負荷試験では、GIP-/-マウスのインスリン感受性が最も高く、WTマウスとGIP+/-マウス間で有意な差を認めなかった。これらの結果から、GIPが加齢に伴う肥満やインスリン抵抗性に関与すること、そしてGIP分泌の阻害が加齢性の脂肪量増加やインスリン抵抗性の軽減に作用することが明らかとなった。

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2020/03/11

アクネ菌における新規マクロライド・クリンダマイシン耐性遺伝子erm(50)をコードする転移性多剤耐性プラスミドの発見

論文タイトル
Transferable Multidrug-Resistance Plasmid Carrying a Novel Macrolide-Clindamycin Resistance Gene, erm(50), in Cutibacterium acnes
論文タイトル(訳)
アクネ菌における新規マクロライド・クリンダマイシン耐性遺伝子erm(50)をコードする転移性多剤耐性プラスミドの発見
DOI
10.1128/AAC.01810-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 64, Issue 3
著者名(敬称略)
青木 沙恵、中瀬 恵亮 他
所属
東京薬科大学 薬学部 病原微生物学教室

抄訳

 薬剤耐性アクネ菌 (Cutibacterium acnes) は、世界中で出現および流行している。アクネ菌における主要なマクロライドおよびクリンダマイシン耐性因子として、23S rRNA変異およびerm(X)遺伝子の獲得が知られている。我々は、2008年および2013-2015年にそれらの耐性因子を有さない8株の高度マクロライド・クリンダマイシン耐性アクネ菌を異なるざ瘡患者から分離した。そこで、新規の耐性因子を同定するための研究を行った。Whole genome sequenceにより、新規の薬剤耐性遺伝子であるerm(50)とtet(W)をコードする新規のプラスミドpTZC1 (length, 31,440 bp) を見出した。pTZC1は耐性因子が認められなかった8株すべてから検出され、これらの株はマクロライド・クリンダマイシンに高度耐性を示した (MIC, ≥256 μg/ml)。また、pTZC1はアクネ菌株間を接合伝達で伝播し、マクロライド・クリンダマイシン耐性およびテトラサイクリン耐性を付与した。
 本研究では、アクネ菌で転移する多剤耐性プラスミドを初めて発見した。本プラスミドの流行は、ざ瘡の抗菌薬治療における大きな脅威となりうる。

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2020/03/10

大腸菌細胞内におけるメタン生成アーキアMethanosarcina mazei由来「アーキア型」メバロン酸経路の再構築

論文タイトル
Reconstruction of the “Archaeal” Mevalonate Pathway from the Methanogenic Archaeon Methanosarcina mazei in Escherichia coli Cells
論文タイトル(訳)
大腸菌細胞内におけるメタン生成アーキアMethanosarcina mazei由来「アーキア型」メバロン酸経路の再構築
DOI
10.1128/AEM.02889-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 86, Issue 6
著者名(敬称略)
吉田 稜、邊見 久 他
所属
名古屋大学大学院生命農学研究科 応用生命科学専攻 応用酵素学研究室

抄訳

  メバロン酸経路は、天然物医薬品などの有用化合物を数多く含むイソプレノイドの前駆体供給経路である。我々は最近、Crenarchaeota門に属する超好熱性アーキアから、大半のアーキアが持つと推定される変形メバロン酸経路(「アーキア型」メバロン酸経路)を発見した。同経路は一般のメバロン酸経路に比べてATP消費量が少ないため、有用イソプレノイドの生物生産への応用が期待される。本研究では、Euryarchaeota門に属するメタン生成アーキアMethanosarcina mazeiから同経路の推定遺伝子群を単離し、カロテノイド色素の生産経路とともに大腸菌に導入した。同株を準嫌気的条件下で培養したところ、メバロン酸経路を持たない株に比べてカロテノイド生産量が大幅に向上した。この結果は、「アーキア型」メバロン酸経路が幅広い分類群で保存されており、かつ大腸菌内でも機能しうることを示すものである。

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2020/03/10

C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)投与治療は欠損酵素補充治療を併用することでムコ多糖症Ⅶ型マウスの成長障害を回復させる

論文タイトル
C-Type Natriuretic Peptide Restores Growth Impairment Under Enzyme Replacement in Mice With Mucopolysaccharidosis VII
論文タイトル(訳)
C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)投与治療は欠損酵素補充治療を併用することでムコ多糖症Ⅶ型マウスの成長障害を回復させる
DOI
10.1210/endocr/bqaa008
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.161 No. 2 (bqaa008)
著者名(敬称略)
山下 貴史, 藤井 寿人 他
所属
京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学

抄訳

【背景・目的】ムコ多糖症(MPSs)はグリコサミノグリカン(GAG)を分解する酵素の欠損により引き起こされるライソソーム病であり、GAGの蓄積により全身の臓器が障害され様々な症候を呈するが、既存の治療である欠損酵素の補充療法では成長障害は改善しない。本研究ではMPSⅦ型の成長障害に対する強い成長促進作用があるCNPの効果を調べる事を目的とした。
【方法・結果】6週齢のMPSⅦ型モデルであるGusbmps-2jマウスに対し、ハイドロダイナミック遺伝子導入法を用いてGUSB補充とCNP投与のモデルを作成した。成長曲線からGUSB群およびCNP群では体長の有意な伸長は認めなかったが、GUSB/CNP共発現群では有意な体長の伸長が得られ、4週間後に野生型マウスと同等の体長となった。
【考察】MPSⅦ型の成長障害を酵素補充療法とCNPの併用により治療できることが示唆され、患者数が多いⅠ型やⅡ型への応用も期待される。

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2020/02/27

自己免疫性下垂体疾患:新たな疾患概念とその臨床的意義

論文タイトル
Autoimmune Pituitary Disease: New Concepts With Clinical Implications
論文タイトル(訳)
自己免疫性下垂体疾患:新たな疾患概念とその臨床的意義
DOI
10.1210/endrev/bnz003
ジャーナル名
Endocrine Reviews
巻号
Vol.41 No.2 (bnz003)
著者名(敬称略)
山本 雅昭, 高橋 裕 他
所属
神戸大学大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学

抄訳

リンパ球性下垂体炎やACTH単独欠損症などの下垂体疾患は自己免疫が示唆されているが、その機序は明らかではない。
抗PIT-1抗体症候群(抗PIT-1下垂体炎)は最近報告された下垂体炎の亜型であり、後天性に下垂体ホルモンの中でGH, PRL, TSHの特異的欠損をきたす新しい疾患概念である。その原因として胸腺腫や悪性腫瘍が、GH, PRL, TSH産生細胞に特異的な転写因子であるPIT-1を異所性に発現し、免疫寛容破綻を生じることが示されている。そしてマーカーとして血中に自己抗体である抗PIT-1抗体を認めるとともに、PIT-1タンパクを認識する細胞障害性T細胞が下垂体細胞を特異的に障害することが明らかになった。
最近、ACTH単独欠損症に肺大細胞神経内分泌癌を合併した症例が報告された。興味深いことに、腫瘍がACTHを異所性に発現しており、血中には抗POMC(ACTHの前駆体)抗体とPOMC特異細胞障害性T細胞を認めたことから、傍腫瘍症候群特に傍腫瘍性神経症候群と同様の機序で発症したことが示された。
これらの結果は、原因不明の自己免疫性下垂体疾患の少なくとも一部の成因が傍腫瘍症候群であることを示しており、本総説ではこれらの新しい疾患概念とともにその臨床的意義を解説する。

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2020/02/25

援助付き雇用の低再現プログラムと高再現プログラムにおけるサービスの内容と密度:縦断調査の結果から

論文タイトル
Contents and Intensity of Services in Low- and High-Fidelity Programs for Supported Employment: Results of a Longitudinal Survey
論文タイトル(訳)
援助付き雇用の低再現プログラムと高再現プログラムにおけるサービスの内容と密度:縦断調査の結果から
DOI
10.1176/appi.ps.201900255
ジャーナル名
Psychiatric Services
巻号
Psychiatric Services Published online 3 Jan 2020
著者名(敬称略)
山口創生
所属
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部

抄訳

目的 援助付き雇用プログラムにおけるサービス密度とプログラムの再現性との関連については検証が不十分である。本研究は、ある施設が科学的に効果的とされる援助付き雇用プログラムを実践する際に、どの程度再現しているかについて得点化するフィデリティ尺度を用いて、低再現グループと高再現グループにおけるサービス内容と密度を比較し、日本版個別型援助付き雇用フィデリティ尺度の妥当性を検証することを目的とした。
方法 13施設の援助付き雇用プログラムにおける統合失調症を持つ利用者51名を対象とした。12ヵ月間に渡って、彼らの就労アウトカムとサービス受給データを収集した。本研究は、低再現グループ(7施設のプログラム, 29名)と高再現グループ(6施設のプログラム, 22名)における就労アウトカムやサービス内容、サービス密度を比較した。
結果 両グループにおいて、サービス全体の70%が、就労支援サービスの開始後の最初の6ヵ月間に提供されていた。また、低再現グループの就労率(38%)と比較し、高再現グループは高い就労率(68%)を有していた。高再現グループの就労支援員は施設外の職場開発に最も大きなエフォートを費やしていたが、低再現グループは集団サービスにより多くの時間を費やしていた。加えて、低再現グループと比べ、高再現グループの利用者は、就労前に施設外での支援(アウトリーチサービス)や施設内での就労相談などの個別サービスをより集中的に受けていた。しかしながら、就労後の定着支援について、グループ間のサービス密度の差は観察されなかった。
結論 再現性の高い援助付き雇用プログラムは、特に利用者が就職する前に、施設内外で集中的な個別支援を提供していた。今後の課題として、フィデリティ尺度が計測する組織レベルのサービスの質と個人レベルの定着支援の量、利用者の個別ニーズとの関連を検証することがあげられる。

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