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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2020/01/10

ユリアーキアPyrococcus furiosus由来、エンドヌクレアーゼQの基質認識

論文タイトル
Molecular Basis of Substrate Recognition of Endonuclease Q from the Euryarchaeon Pyrococcus furiosus
論文タイトル(訳)
ユリアーキアPyrococcus furiosus由来、エンドヌクレアーゼQの基質認識
DOI
10.1128/JB.00542-19
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 202, Issue 2
著者名(敬称略)
白石 都 他
所属
大阪大学 大学院基礎工学研究科

抄訳

エンドヌクレアーゼQ (EndoQ) は2015年に発見されたDNAエンドヌクレーゼである。EndoQはDNA中のウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、脱塩基部位を認識し、その5′側のDNA主鎖にニックを入れる。このためEndoQは一部のアーキア、真正細菌においてDNA修復に関与すると考えられているが、EndoQの基質認識機構については未だに理解が乏しい。我々は生化学的手法を用いて、EndoQの基質特異性の範囲とその選択性、損傷塩基の対塩基による活性への影響を調べた。これらの結果より、P. furiosus由来のEndoQは変異原性の損傷塩基に特徴的なイミド構造を認識し、損傷塩基の認識は自然発生的な塩基のフリップアウトが重要であることが示唆された。さらに、上述の損傷塩基に加え、新たにEndoQが5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシウラシル、5-ヒドロキシシトシンに対して活性を示すことが明らかとなった。

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2019/12/23

嫌気性繊毛虫とそのヒドロゲノソームに付随する2つの細胞内共生体、ホロスポラ類縁α- Proteobacteriaとメタン生成アーキアからなる3者間共生系

論文タイトル
Tripartite Symbiosis of an Anaerobic Scuticociliate with Two Hydrogenosome-Associated Endosymbionts, a Holospora-Related Alphaproteobacterium and a Methanogenic Archaeon
論文タイトル(訳)
嫌気性繊毛虫とそのヒドロゲノソームに付随する2つの細胞内共生体、ホロスポラ類縁α- Proteobacteriaとメタン生成アーキアからなる3者間共生系
DOI
10.1128/AEM.00854-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 24
著者名(敬称略)
竹下 和貴、新里 尚也
所属
琉球大学・熱帯生物圏研究センター

抄訳

嫌気性繊毛虫の多くは細胞内にメタン生成アーキアとバクテリアを細胞内共生させているが、培養による維持が難しいためにその生理や生態について解析が進んでいない。本研究では、排水処理施設より嫌気性繊毛虫GW7株の安定培養株を確立し、電子顕微鏡観察とドメイン特異的な蛍光 is situ ハイブリダイゼーション(FISH)により、GW7株が細胞質内にアーキアとバクテリアの細胞内共生体を保持していることを明らかにした。これらの細胞内共生体は、嫌気環境下で水素とATPを生産する細胞内小器官であるヒドロゲノソームにそれぞれ付随しており、16S rRNA遺伝子のクローン解析や共生体特異的なFISHにより、細胞内共生アーキアはMethanoregula属のメタン生成アーキアであり、これは以前にGW7株とは系統的に離れたMetopus属繊毛虫の細胞内共生体として報告されていたものに近縁であった。細胞内共生バクテリアは、様々な繊毛虫の細胞内共生体が含まれるα-ProteobacteriaのHolosporaceae科に属していた。本研究では、この細胞内共生体について、Candidatus Hydrogenosomobacter endosymbioticusとして新属、新種提案を行った。

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2019/12/20

真核生物由来のピロロキノリンキノン依存性脱水素酵素の触媒ドメインとシトクロムドメインの結晶構造解析

論文タイトル
Crystal Structure of the Catalytic and Cytochrome b Domains in a Eukaryotic Pyrroloquinoline Quinone-Dependent Dehydrogenase
論文タイトル(訳)
真核生物由来のピロロキノリンキノン依存性脱水素酵素の触媒ドメインとシトクロムドメインの結晶構造解析
DOI
10.1128/AEM.01692-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 24
著者名(敬称略)
武田 康太、中村 暢文 他
所属
東京農工大学 工学部生命工学科

抄訳

1960年代のピロロキノリンキノン(PQQ)の発見以来、多くのPQQ依存性酵素が原核生物で見出されてきた。一方で、真核生物におけるPQQ依存性酵素の存在は長らく疑問視されていたが、2014年に真核生物で初となる、担子菌Coprinopsis cinerea由来のPQQ依存性ピラノース脱水素酵素を我々が報告した。本酵素はPQQドメインに加え、シトクロムドメインとセルロース結合性ドメインを有したキノヘモプロテインである。本研究ではPQQドメインとシトクロムドメインの立体構造を決定することに成功し、構造学的な証拠をもって、このピラノース脱水素酵素の補酵素がPQQであることを証明した。アミノ酸配列の相同性が低いにもかかわらず、既知のPQQ依存性酵素と同じく6枚羽根のスーパーバレル構造であった。シトクロムドメインでは、ヘムプロピオン酸近傍の正電荷を有するアルギニン残基の存在が本酵素の特徴であった。

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2019/12/18

IncP-9群分解プラスミドの接合伝達には未解析だったmpfK遺伝子が必要; mpfKホモログは様々なMPFT型プラスミドに良く保存されている

論文タイトル
Conjugative transfer of IncP-9 catabolic plasmids requires a previously uncharacterized gene, mpfK, whose homologs are conserved in various MPFT-type plasmids
論文タイトル(訳)
IncP-9群分解プラスミドの接合伝達には未解析だったmpfK遺伝子が必要; mpfKホモログは様々なMPFT型プラスミドに良く保存されている
DOI
10.1128/AEM.01850-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 24
著者名(敬称略)
岸田 康平・津田 雅孝 他
所属
東北大学 大学院生命科学研究科

抄訳

細菌プラスミドの接合伝達は、プラスミド支配で供与菌細胞表層に構築される4型分泌装置(T4SS)を介して起きる。ただ、接合特異的T4SS形成に必須な最小遺伝子セットが実験的に提示されたプラスミドは数例に限定される。我々は、ナフタレン分解プラスミドNAH7の接合伝達に、T4SS形成のいわゆる最小遺伝子セットに加え、未解析だったmpfKの必須性を見出した。MpfKはペリプラズムに局在し、MpfK内のシステイン残基間ジスルフィド結合がプラスミドの効率的伝達に必要だった。mpfKホモログは多様な不和合性群由来のプラスミド上に存在するものの、いずれのプラスミドともMPFT型のT4SSを有していた。当該プラスミドのうち、NAH7と同一のIncP-9群pWW0のmpfKホモログは自身の接合伝達に必要だったが、他不和合性群のR388やR751のホモログは各々の接合伝達に不必要だった。一方で、後3者のmpfKホモログはいずれもNAH7 mpfK変異体の接合伝達欠損を相補可能という特色があった。

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2019/12/16

2014年から2016年の間に本邦の82医療施設で分離されたClostridioides difficileの薬剤感受性および全ゲノム解析による特徴付け

論文タイトル
Antimicrobial Susceptibility and Molecular Characterization Using Whole-Genome Sequencing of Clostridioides difficile Collected in 82 Hospitals in Japan between 2014 and 2016
論文タイトル(訳)
2014年から2016年の間に本邦の82医療施設で分離されたClostridioides difficileの薬剤感受性および全ゲノム解析による特徴付け
DOI
10.1128/AAC.01259-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 63, Issue 12
著者名(敬称略)
青木 弘太郎 他
所属
東邦大学医学部 微生物・感染症学講座

抄訳

全国の医療施設で実施されたバンコマイシン (VCM) 対照二重盲検無作為化並行群間比較フィダキソマイシン (FDX) 第三相試験に参加した成人Clostridioides difficile感染症 (CDI) 患者から治療前後に分離されたC. difficileについて、薬剤感受性測定ならびに全ゲノム解析による分子生物学的特徴づけを行った。全285株のC. difficileが82施設の患者から分離され、うち188株が治療前に分離された。さらにそのうち87株がFDX、101株がVCM治療群だった。治療前に分離された菌株はFDXに低感受性あるいはバンコマイシンに耐性を示さなかった。それらの菌株は32のsequence types (STs)に分けられ、最も高率に検出されたのはST17 (n=61 [32.4%])であり、次いで ST8 (n=26 [13.8%])、ST2 (n=21 [11.2%])だった. コアゲノム分子系統解析の結果、各施設におけるアウトブレイク発生は否定的だった。トキシンA+B+バイナリトキシン-の遺伝子型の菌株が最も多かった (n=149 [79.3%])。FDX治療群87症例のうち6症例でFDX低感受性株が分離された。それら6症例の治療前後に分離された菌株のFDX標的酵素アミノ酸配列を比較した結果、FDX感受性低下に寄与する既知の変異RpoB Val1143Leu/Gly/AspあるいはRpoC Arg89Glyおよび未報告の変異RpoB Gln1149ProあるいはRpoC Arg326Cysが検出された。アリル組換え実験は実施しなかった。本邦のFDX治験参加患者において、FDX使用前にはFDX低感受性株は分離されなかったが、同薬剤の使用後にはFDX低感受性変異株が検出された。

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2019/11/28

健常および肥満の肝G6pcレポーターマウスにおけるSGLT2阻害剤の単回および長期投与に対する肝糖新生応答

論文タイトル
Hepatic Gluconeogenic Response to Single and Long-Term SGLT2 Inhibition in Lean/Obese Male Hepatic G6pc-Reporter Mice
論文タイトル(訳)
健常および肥満の肝G6pcレポーターマウスにおけるSGLT2阻害剤の単回および長期投与に対する肝糖新生応答
DOI
10.1210/en.2019-00422
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.12 (2811–2824)
著者名(敬称略)
稲葉 有香、橋内 咲実 他
所属
金沢大学新学術創成研究機構栄養・代謝研究ユニット

抄訳

 ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害剤(SGLT2i)は、2型糖尿病患者の血糖値を持続的に低下させる。一方で、肝糖新生酵素遺伝子発現・肝糖産生を増加させることが報告されている。本研究は、肝糖新生応答に対するSGLT2iの作用、及びそのメカニズムを解明することを目的とした。
 肝糖新生応答の経時的モニタリングを行うため、肝糖新生酵素遺伝子であるG6pcのプロモーター制御により、分泌型ルシフェラーゼ(GLuc)が肝特異的に発現するレポーターマウスを作出した。本レポーターマウスに対し、SGLT2iの単回または長期投与を行い、肝糖新生応答を検討した。健常マウスへの単回投与は、血糖値・インスリンを低下させ、GLuc活性を上昇させた。自由摂餌下で、肥満マウスのGLuc活性は、健常時の約10倍に増強した。肥満マウスへの単回投与は、血糖値・インスリン値を低下させたが、GLuc活性には影響しなかった。健常マウスで認められた、インスリンの低下に伴う肝Aktリン酸化の減弱が、肥満マウスでは認められなかった。健常マウスへのSGLT2i長期投与は、GLuc活性を上昇させたが、肥満マウスでは、投与開始後3週間からGLuc活性を減少させた。この時、肥満マウスのSGLT2i群では、肝Aktリン酸化が、対照と比較し増強した。
  本研究により、1)健常マウスへのSGLT2iの単回投与による肝糖新生応答の増加が、肥満マウスでは認められないこと、2)肥満マウスへの長期投与は、インスリンシグナル伝達障害を改善させ、肥満誘導性の肝糖新生応答の増加を軽減させること、を明らかにした。

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2019/11/25

日本人集団におけるビタミン摂取量,ABCA1遺伝子のDNAメチル化率,脂質指標との関連

論文タイトル
Associations between dietary vitamin intake, ABCA1 gene promoter DNA methylation, and lipid profiles in a Japanese population
論文タイトル(訳)
日本人集団におけるビタミン摂取量,ABCA1遺伝子のDNAメチル化率,脂質指標との関連
DOI
10.1093/ajcn/nqz181
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.110 Issue 5
著者名(敬称略)
藤井 亮輔、鈴木 康司 他
所属
藤田医科大学 医療科学部 臨床検査学科

抄訳

 本研究では、HDLコレステロールの生成に重要な役割を果たしているATP-binding cassette protein A1(ABCA1)という分子に注目した。近年の研究によって、ABCA1遺伝子のDNAのメチル化によって血清HDLコレステロール値が低下し、循環器疾患を発症していることは明らかになっていた。その一方で、どのような生活習慣によってABCA1のDNAメチル化が変化するか、はそれほど明らかになっていなかった。  そこで、ABCA1 DNAメチル化を変化させる生活習慣として、野菜の摂取とりわけビタミン摂取量に着目した。これらの摂取量とABCA1 DNAメチル化率との関連、さらにそれを介したHDLコレステロール値との関連を約230名の日本人集団を対象として媒介分析によって検討した。その結果、ビタミンCの摂取量が多い人は、ABCA1 DNAメチル化低値を介して、血清HDLコレステロール値が有意に高いということが明らかになった。今回の研究成果は、ビタミンCの循環器疾患に対する予防的な効果をABCA1のDNAメチル化が媒介している可能性を示唆するものであり、一般的な日本人集団においての循環器疾患予防について新たな分子メカニズムとなり得ると考えている。

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2019/11/22

ウイルスポリメラーゼであるPB1のTyr82残基に変異を導入した組換えインフルエンザウイルスは、Mutator株(高頻度変異導入株)として機能する

論文タイトル
Tyr82 Amino Acid Mutation in PB1 Polymerase Induces an Influenza Virus Mutator Phenotype
論文タイトル(訳)
ウイルスポリメラーゼであるPB1のTyr82残基に変異を導入した組換えインフルエンザウイルスは、Mutator株(高頻度変異導入株)として機能する
DOI
10.1128/JVI.00834-19
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology  Volume 93, Issue 22
著者名(敬称略)
内藤 忠相 他
所属
川崎医科大学 微生物学教室

抄訳

 インフルエンザウイルスのゲノムは8本に分節化された1本鎖RNAであり、ウイルス由来RNAポリメラーゼであるPB1蛋白質(Polymerase Basic Protein 1)によって複製されるが、新規合成されたRNAゲノム内には1万塩基あたり約1個の頻度で変異が生じる。
 著者らは、PB1ポリメラーゼを構成するアミノ酸の中で、82番目のTyr残基がゲノム複製忠実度の制御に重要であることを明らかにした。具体的には、インフルエンザウイルス実験室株(PR8株:A/Puerto Rico/8/1934/H1N1株)を用いて、PB1のTyr82残基をCys残基に置換した組換えウイルス(PR8-PB1-Y82C株)を作出して変異導入効率を算出した結果、PR8野生株より約2倍の頻度で複製エラーが起きやすいことがわかった。このような組換えPB1-Y82Cウイルスを高頻度変異導入株(Mutator株)として利用することで、実験室内においてウイルス進化速度を加速させることが可能となり、将来的に市中流行株として出現の可能性がある“抗原変異株”や“抗ウイルス薬耐性株”を先回りして予測するシステムの開発が期待できる。

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2019/11/19

小胞体膜タンパク質複合体はロドプシンの後続膜貫通ヘリックスの挿入に必要である

論文タイトル
ER membrane protein complex is required for the insertions of late-synthesized transmembrane helices of Rh1 in Drosophila photoreceptors
論文タイトル(訳)
小胞体膜タンパク質複合体はロドプシンの後続膜貫通ヘリックスの挿入に必要である
DOI
10.1091/mbc.E19-08-0434
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 30, No 23
著者名(敬称略)
平松 直樹、佐藤 卓至 他
所属
広島大学 総合科学部 総合科学研究科 人間科学部門

抄訳

  ER膜上のリボソームにより合成される複数回膜貫通型タンパク質は、翻訳と同時にトランスロコンによりER膜に挿入され、適切に折りたたまれ機能的なタンパク質となるが、その挿入・折りたたみの過程はよく分かっていない。私達は、小胞体膜タンパク質複合体(EMC)がロドプシンを含む複数膜貫通ドメインを持つ膜タンパク質の生合成に必要であり、その欠損が網膜変性を引き起こすことを報告していた(Satoh et al., 2015 eLife)。本研究では、EMCの機能を詳細に解析し、EMCがロドプシンの生合成とはじめの3つのヘリックスの挿入には必要がないが、それにひき続いて合成されるヘリックスの挿入に必要であることを示した。この結果は、EMCが複数膜貫通タンパク質の膜への挿入過程において、トランスロコンからの離脱が困難な膜貫通ヘリックスを認識し離脱を促進することによって、後方のヘリックスにトランスロコンを開放し、適切に挿入が行われることを可能にしていることを示している。

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2019/11/19

バンコマイシン感受性腸球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌によるマウス眼内炎に対するバクテリオファージ硝子体投与の治療効果

論文タイトル
Therapeutic Effects of Intravitreously Administered Bacteriophage in a Mouse Model of Endophthalmitis Caused by Vancomycin-Sensitive or -Resistant Enterococcus faecalis
論文タイトル(訳)
バンコマイシン感受性腸球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌によるマウス眼内炎に対するバクテリオファージ硝子体投与の治療効果
DOI
10.1128/AAC.01088-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 63, Issue 11
著者名(敬称略)
岸本 達真、福田 憲 他
所属
高知大学医学部眼科学講座

抄訳

  内眼手術後の腸球菌性眼内炎は,進行が早く、視力予後が不良な重篤な疾患である。またバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による術後眼内炎も増加している。バクテリオファージは細菌特異的に感染し溶菌させるウイルスである。我々は、マウス腸球菌眼内炎モデルに対しファージ硝子体投与の治療効果について検討した。
  バンコマイシン感受性腸球菌あるいはVREを硝子体に投与し眼内炎を誘導すると、24時間後には眼内炎が生じ,眼底は出血や硝子体混濁で透見不能となり、網膜電図での網膜機能は消失し、病理学的検討では網膜剥離を認めた。感染6時間後にファージを硝子体に投与すると,臨床スコア,生細菌数すべて有意に低下し、病理学的に網膜構造は保たれ、網膜電図でも網膜機能は維持されていた。
  ファージの硝子体投与は,薬剤感受性あるいは耐性に関わらずマウス眼内炎に対する治療効果があり,抗菌薬非依存性の新規治療法となる可能性が示唆された。

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