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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2020/06/29

組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。

論文タイトル
Measurement of the AST to LD Ratio in Parathyroid Tissue Suspension Can Precisely Differentiate a
Hyperfunctioning Parathyroid
論文タイトル(訳)
組織懸濁液中のAST/LDH比測定によって、正確に機能亢進状態の副甲状腺を鑑別できる。
(英文タイトルではLDHをLDと表記してある。)
DOI
10.1210/clinem/dgaa264
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.105 No.8 (dgaa264)
著者名(敬称略)
菊森 豊根 他
所属
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科

抄訳

原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療の際に、責任病変の摘出の確認は主に凍結切片の術中迅速病理検査により行われている。しかし、病理医不足は発展途上国で深刻であり、責任病変摘出の確認が容易に行えない。我々のグループは最近、正常副甲状腺の可能性がある組織の懸濁液中のAST/LDH(ともに一般生化学的検査項目であり、日常的に測定されている。)比が0.27より高い場合、その組織が副甲状腺であることを明らかにした(Kikumori et al. Surgery, 2020, p385-9)。
今回の研究では、副甲状腺機能亢進症を来す副甲状腺過形成や腺腫組織が懸濁液中のAST/LDH比により、副甲状腺組織と判別可能かを検討した。22名の原発性副甲状腺機能亢進症の症例で得られた副甲状腺過形成または腺腫を対象とした。他の組織のデータは以前の我々の報告を用いた(上記引用文献)。
この検討により、機能亢進状態の副甲状腺は懸濁液中のAST/LDH比が0.36より高い場合、100%の精度で他の組織と判別できることが示された。
この研究により、組織懸濁液中のAST/LDH比が迅速病理検査の代替として原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科治療の際の新たな責任病変確認手段となりうることが示された。

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2020/06/24

2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析

論文タイトル
Characterization of tick-borne encephalitis virus isolated from a tick in central Hokkaido in 2017
論文タイトル(訳)
2017年に北海道道央地域でマダニから分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの性状解析
DOI
10.1099/jgv.0.001400
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology Volume 101, Issue 5
著者名(敬称略)
髙橋 侑嗣、好井 健太朗 他
所属
長崎大学 感染症共同研究拠点 研究部門

抄訳

 ダニ媒介性脳炎はユーラシア大陸の広域で発生しているダニ媒介性の重要な人獣共通感染症です。日本では北海道において重症脳炎患者が発生し、疫学調査によって北海道を含む日本の各地で原因となるダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)が分布している可能性が示唆されていますが、北海道南部の一部地域以外からはウイルスは分離されていませんでした。
 今回、我々は札幌市付近の道央地域でマダニの捕集を行い、マダニからのTBEV分離を試みた所、札幌市内で捕集されたマダニからTBEVが分離されました。分離されたウイルス株の解析を行った所、以前に北海道南部で分離されたウイルス株とは異なる遺伝子グループに属する事が分かり、国内に複数回ウイルスが侵入している可能性が示されました。また病原性について解析した所、ウイルスの非構造蛋白領域の遺伝子の相違によって、脳内での病原性が影響を受ける事が明らかになりました。
 今回の研究成果は日本におけるTBEVの疫学的危険度を評価する上での重要な知見となるとともに、ウイルスの性状解析による予防・治療法開発の進展へとつながるものと考えられます。

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2020/06/22

ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす

論文タイトル
A Peptidoglycan Amidase Activator Impacts Salmonella enterica Serovar Typhimurium Gut Infection
論文タイトル(訳)
ペプチドグリカンアミダーゼの活性化因子はサルモネラの腸感染に影響を及ぼす
DOI
10.1128/IAI.00187-20
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 88, Issue 6
著者名(敬称略)
中村 奈央、三木 剛志 他
所属
北里大学薬学部 微生物学教室

抄訳

 サルモネラ属のネズミチフス菌は感染性胃腸炎の原因菌である。本菌は腸管内に定着することにより、感染を成立させるが、その定着メカニズムの全貌は明らかになっていない。これまでに、私たちはネズミチフス菌のペプチドグリカン(PG)アミダーゼに依存した細胞分裂が腸管内定着に寄与することを明らかにした。PGアミダーゼは特異的な活性化因子により制御されていることから、本研究では、ネズミチフス菌が保持するPGアミダーゼの活性化因子であるNlpDおよびEnvCがサルモネラの腸感染にどのような影響を及ぼすか否かを明らかにした。
 マウスを用いた感染実験より、EnvCを発現しないネズミチフス菌株(envC変異株)では野生株と比較して、腸管内定着レベルが減弱した。また、誘導される腸炎レベルも減弱していた。PGアミダーゼを発現しないネズミチフス菌株における腸管内定着レベルの減弱は、胆汁酸に対する抵抗能の減弱が原因であったが、驚いたことに、envC変異株では走化性運動の減弱が主な要因であった。
 本研究により、ネズミチフス菌の腸感染におけるPGアミダーゼ活性化因子の新たな役割が明らかになり、EnvCは本菌の腸感染を制御するためのターゲットとなる可能性が示唆された。

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2020/06/02

ワオキツネザルのメスを惹き付けるオスの匂い―霊長類のフェロモン様物質の同定に初めて成功―

論文タイトル
Key Male Glandular Odorants Attracting Female Ring-Tailed Lemurs
論文タイトル(訳)
ワオキツネザルのメスを惹き付けるオスの匂い―霊長類のフェロモン様物質の同定に初めて成功―
DOI
10.1016/j.cub.2020.03.037
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology April 16,2020
著者名(敬称略)
白須未香、伊藤聡美(以上筆頭著者)、今井啓雄、東原 和成(以上連絡著者)
所属
東京大学農学生命科学研究科 生物化学研究室(白須・東原) 京都大学霊長類研究所 ゲノム細胞研究部門(伊藤・今井)

抄訳

 多くの動物において、配偶者選択や同性間の縄張りあらそいなど、種の繁殖のために必須な行動には、体臭を介した嗅覚コニュニケーションが重要な役割を果たしています。我々は、特徴的な嗅覚コミュニケーションを行うワオキツネザルに注目し、ヒトを含む霊長類で初めて、異性を惹き付けるフェロモン様効果のある匂い物質の同定に成功しました。
 ワオキツネザルのオスは、手首の内側にある臭腺を自身の長い尻尾にこすりつけてその尻尾を大きくゆらし、メスへのアピールや他オス個体への威嚇を行います。我々は、行動観察により、メス個体が、繁殖期のオスの前腕腺分泌液の匂いをより長く、より注意深く嗅ぐ一方で、非繁殖期の分泌液にはあまり興味を示さないことを明らかにしました。
 次に、分泌液の成分分析を行い、繁殖期の分泌液中には、体内の男性ホルモン(テストステロン)の増加に伴い、フローラル・フルーティー様の香りを持つ三種類の長鎖アルデヒド群が増加していることを見出しました。さらに、これらの成分のみを染み込ませた綿球に対しては、繁殖期のメスのみが興味を示し、非繁殖期のメスは興味を示さないことが分かりました。すなわち、今回同定されたオスの繁殖期を特徴づける匂い成分が、メスを誘引するフェロモン様の匂いシグナルとして機能していることがわかりました。
 本成果は、未だ謎の多い霊長類の嗅覚コミュニケーションの実態を物質レベルで裏付ける最初の知見であると同時に、野生での絶滅が危惧されるワオキツネザルの繁殖管理や保全に役立つと考えられます。

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2020/05/27

静脈グラフトを用いた血行再建手術における動脈圧負荷での内膜肥厚に関する研究のためのウサギ頚静脈置換モデル

論文タイトル
A Rabbit Venous Interposition Model Mimicking Revascularization Surgery using Vein Grafts to Assess Intimal Hyperplasia under Arterial Blood Pressure
論文タイトル(訳)
静脈グラフトを用いた血行再建手術における動脈圧負荷での内膜肥厚に関する研究のためのウサギ頚静脈置換モデル
DOI
10.3791/60931
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (159), e60931, doi:10.3791/60931 (2020)
著者名(敬称略)
西尾 博臣、升本 英利 他
所属
京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科学

抄訳

 静脈グラフト(移植片)は、虚血性疾患の血行再建手術における自家血管グラフトとして一般的に使用されていますが、静脈に対する動脈圧負荷による内膜肥厚のため、長期開存性は依然として低いままです。本プロトコルは、ウサギ頚静脈を同側頚動脈に移植することにより、実験的に静脈内膜肥厚を再現するものです。このプロトコルは体表・皮下脂肪層までの深さの外科的処置のみで完結でき、切開の範囲も限られているため、動物にとって侵襲が低く、移植後の長期観察が可能です。このプロトコルにより、研究者は移植された静脈グラフトの内膜肥厚の進行を抑制する方法に関する研究を行うことができます。例えばこのプロトコルを使用して、我々はこれまでに、血管平滑筋細胞の表現型を増殖型から分化型(非増殖型)に制御することが知られているmicroRNA-145による静脈グラフトの内膜肥厚抑制効果を示すことが出来ました。

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2020/05/18

日本の高齢者介護施設入所者間で広がっている大腸菌ST131 C1/H30Rが保有するblaCTX-M-27/F1:A2:B20プラスミドの特徴

論文タイトル
Characterization of blaCTX-M-27/F1:A2:B20 Plasmids Harbored by Escherichia coli Sequence Type 131 Sublineage C1/H30R Isolates Spreading among Elderly Japanese in Nonacute-Care Settings
論文タイトル(訳)
日本の高齢者介護施設入所者間で広がっている大腸菌ST131 C1/H30Rが保有するblaCTX-M-27/F1:A2:B20プラスミドの特徴
DOI
10.1128/AAC.00202-20
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 64, Issue 3
著者名(敬称略)
松尾 奈緒、野々垣里奈、川村 久美子 他
所属
名古屋大学大学院医学系研究科 医療技術学専攻 病態解析学講座

抄訳

 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌においては、CTX-M-27産生大腸菌ST131 C1/H30Rクローンの世界的蔓延が問題視されているが、そのプラスミドの特徴や拡散プロセスについては未だ不明な点が多い。
 本研究では高齢者介護施設入所者由来のCTX-M-27産生大腸菌ST131 C1/H30Rが保有するプラスミドの全塩基配列を特定し、健常人由来のそれと比較することで、blaCTX-M-27保有プラスミドの特徴を明らかにすることを目的とした。
 高齢者由来プラスミドのMLSTは多くがF1:A2:B20に属しており、その特徴から3つのグループに分類することができた。1つめは耐性遺伝子としてblaCTX-M-27のみを有し、senB遺伝子を含む約30kbpの領域を欠くもの、2つめはblaCTX-M-27以外にテトラサイクリンやストレプトマイシンなど数種類の耐性遺伝子を保有するプラスミドで、タイで分離されたプラスミドに類似するもの、3つめはさらにアミノグリコシド耐性遺伝子など9種類の耐性遺伝子を保有するプラスミドで、ドイツで報告された臨床分離株由来のプラスミドと高い類似性(100% query coverage, >98% nucleotide identity)を示すものであった。
 このように、我が国の介護施設で生活する高齢者の間にも、すでに海外で広まっているblaCTX-M-27/F1:A2:B20プラスミドと基本構造が類似する複数のプラスミドが広まっていることが明らかとなった。さらなる研究として、blaCTX-M-27保有プラスミド拡散プロセスを明らかにすることが必要であると考える。

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2020/04/27

ホスホイノシタイド代謝酵素synaptojanin1、PI3K-C2αおよびINPP4Bを介するホスホイノシタイド変換がTGFβ受容体エンドサイトーシス及びSmad2/3活性化に必須である

論文タイトル
TGFβ receptor endocytosis and Smad signaling require synaptojanin1, PI3K–C2α-, and INPP4B-mediated phosphoinositide conversions
論文タイトル(訳)
ホスホイノシタイド代謝酵素synaptojanin1、PI3K-C2αおよびINPP4Bを介するホスホイノシタイド変換がTGFβ受容体エンドサイトーシス及びSmad2/3活性化に必須である
DOI
10.1091/mbc.E19-11-0662
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 5(319-396)
著者名(敬称略)
安藝 翔, 多久和 陽
所属
金沢大学医薬保健研究域 医学系 血管分子生理学分野

抄訳

 膜動現象の作動には形質膜や細胞内小器官膜の適所におけるグリセロリン脂質ホスホイノシタイド (PPI)の産生と分解が必要である。3’リン酸化PPIの合成酵素PI3KにはI〜III型の3クラスが存在し、最も研究の進んでいるI型PI3KはPI(3,4,5)P3を産生して細胞遊走や細胞増殖に関与し、III型PI3K-Vps34はPI(3)Pを産生してオートファジーを制御する。
 一方、主としてPI(3,4)P2を産生するII型PI3Kの機能は、著者らがPI3K-C2α KOマウスの致死性血管新生障害の表現型を報告するまで不明の点が多かった。血管内皮細胞において血管新生因子TGFβは形質膜でPI3K-C2α依存的にPI(3,4)P2産生を誘導し、Smadシグナル活性化した。
 TGFβによるSmadシグナル活性化はクラスリン依存的なTGFβ受容体エンドサイトーシスに依存し、エンドサイトーシスには、PI3K-C2αの他に5’-ホスファターゼsynaptojanin1 (Synj1) および4’-ホスファターゼINPP4Bが必要であった。TGFβはTGFβ受容体I型サブユニットALK5活性化を介してSynj1による形質膜PI(4,5)P2のPI(4)Pへの変換を引き起こし、次いで産生されたPI(4)PはPI3K-C2αによりPI(3,4)P2に変換され、さらにPI(3,4)P2はINPP4BによってPI(3)Pに変換された。TGFβ受容体エンドサイトーシスとSmad活性化には、Synj1、PI3K-C2α、INPP4Bのすべてが必要であった。TGFβはALK5を介してSynj1の形質膜への移行をひきおこしたが、興味深いことにSynj1の形質膜移行およびPI(4,5)P2のPI(4)Pへの変換にはPI3K-C2αが必要であり、形質膜でSynj1とPI3K-C2αは共局在した。
 以上から、PI3K-C2αはSynj1、INPP4Bと共同してPPIカスケードを賦活し、このカスケードはTGFβ受容体エンドサイトーシスとその後のエンドソームでのシグナリングに必須であった。また、TGFβはALK5を介したPI3K-C2α依存的な機構によって、Synj1の形質膜移行とPPIカスケード活性化を惹起することが明らかとなった。

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2020/04/22

Surveyor Nuclease assayによるAspergillus fumigatusでの変異cyp51Aの簡易検出法

論文タイトル
A Simple Method To Detect Point Mutations in Aspergillus fumigatus cyp51A Gene Using a Surveyor Nuclease Assay
論文タイトル(訳)
Surveyor Nuclease assayによるAspergillus fumigatusでの変異cyp51Aの簡易検出法
DOI
10.1128/AAC.02271-19
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 64, Issue 4
著者名(敬称略)
新居 鉄平、渡辺 哲 他
所属
千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野

抄訳

深在性真菌症、とくにアスペルギルス症は増加傾向にある。本症は極めて重篤で致死率も高く、医療上の問題となっている。主要な原因菌はAspergillus fumigatusであり、治療の第一選択薬はアゾール系抗真菌薬である。一方、近年アゾール耐性A. fumigatusの増加が世界的に深刻化している。耐性の主要なメカニズムは、アゾール標的分子Cyp51Aのhot spotアミノ酸変異による薬物親和性の低下であると考えられている。この研究では、2本鎖DNA内のミスマッチ箇所を特異的に切断するendonuclease であるSurveyor Nucleaseを用い、cyp51Aの変異検出方法の開発を試みた。cyp51Aに点変異を有するアゾール耐性株(変異株)17株と同遺伝子に変異を持たないアゾール感性株(野生株)31株とを使用して、検出法の性能を検証した。Surveyor Nuclease assayによって、cyp51A変異株と野生株とは明確に区別可能で、単一のプライマーセットで複数の変異を検出できた。Surveyor Nuclease assayは、cyp51Aの変異を簡便迅速に検出でき、アスペルギルス症の適切な治療薬の選択に寄与しうる検査法である。

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2020/04/22

地域住民において塩分過剰摂取の成人を抽出するためのスクリーニングツールの開発と妥当性の検証

論文タイトル
Screening tool for identifying adults with excessive salt intake among community-dwelling adults: a population-based cohort study
論文タイトル(訳)
地域住民において塩分過剰摂取の成人を抽出するためのスクリーニングツールの開発と妥当性の検証
DOI
10.1093/ajcn/nqaa003
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.111 No.4 (814–820)
著者名(敬称略)
佐々木 彰 福間 真悟 他
所属
飯塚病院 腎臓内科/臨床研究支援室
京都大学大学院 社会健康医学系専攻 医療疫学分野

抄訳

塩分過剰摂取は、高血圧や血管イベントなどの原因となりうるため重要な因子であることが広く知られている。一方で、地域住民レベルでの減塩は未だ十分ではない。減塩を推進するためには、塩分摂取量を測定し塩分過剰摂取の対象を抽出するのが効率的であり、尿からの1日塩分摂取量の測定が一般的に実施されている。しかし、尿検査には、検査機器および尿検体が必須であり、コストも要するため、検査を広く実施するには制約が多いのが問題であった。今回、我々は、Delphi法を用いて作成した質問紙を用い、福島県の棚倉町で住民を対象とした調査を経て、塩分過剰の可能性の高い対象を抽出するための簡便なスクリーニングツールを開発し妥当性を検証した。質問紙の内容は、国や地域で変わりうるが、本スクリーニングツール作成のプロセスは、他地域でも比較的容易に実装可能と考えられる。

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2020/04/10

RhoAのグアニンヌクレオチド交換因子であるSoloはケラチンネットワークとRho-ROCK経路を介して細胞集団移動の移動速度を減速する

論文タイトル
The Rho-guanine nucleotide exchange factor Solo decelerates collective cell
migration by modulating the Rho-ROCK pathway and keratin networks
論文タイトル(訳)
RhoAのグアニンヌクレオチド交換因子であるSoloはケラチンネットワークとRho-ROCK経路を介して細胞集団移動の移動速度を減速する
DOI
10.1091/mbc.E19-07-0357
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 8
著者名(敬称略)
磯崎友亮、大橋 一正 他
所属
東北大学 大学院生命科学研究科

抄訳

細胞の集団移動は組織形態形成や創傷治癒、癌の浸潤などに重要な働きをする細胞の振る舞いであるが、その分子機構は不明な点が多い。私たちは、これまで、RhoAのグアニンヌクレオチド交換因子であるSolo (別名ARHGEF40)が、細胞への張力負荷によるRhoAの活性化とケラチン8/18(K8/K18)繊維の細胞質における正常な配置に必要であることを明らかにしていた。本論文では、上皮細胞の集団移動に注目しSoloの機能解析を行った。腎上皮由来MDCK細胞においてSoloを発現抑制した場合、集団移動の速度が有意に加速し、一方、ばらばらな状態では個々の細胞の移動速度に影響しないことを発見した。また、Soloは、集団移動時の細胞の前後の細胞間接着部位に集積し、K8/K18繊維束の細胞前方への集積に必要であった。さらに、ROCKの阻害、K18やデスモソーム蛋白質のプラコグロビンの発現抑制によっても集団移動速度が上昇した。これらの結果から、Soloは、デスモソームを含む細胞間接着部位において、ケラチン繊維とRho-ROCK経路を介して前方の細胞を引っ張り返す力の発生に寄与し、集団移動のブレーキとして機能すると考えられる。

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